説明

充電制御装置

【課題】バッテリ走行を優先したいユーザにとって利便性が向上した充電制御装置を提供すること。
【解決手段】内燃機関及び/又は電気モータで推進可能なハイブリッド車両に搭載されたバッテリへの充電を制御する充電制御装置に、少なくとも走行開始前に充電された電力によって電気モータを駆動させることによって目的地までバッテリ走行する場合に第一の電力量を目的地までの走行予定経路に関する情報に基づいて算出する算出手段と、電装機器の負荷履歴を記録する記録手段と、この負荷履歴に基づいて走行予定経路を通って目的地まで走行したときに電装機器によって消費される第二の電力量を推定する推定手段と、上記第一の電力量と上記第二の電力量との和からバッテリに残存する現充電量を引いた値を走行開始前にバッテリへ充電する電力量とする充電量決定手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、内燃機関及び/又は電気モータで推進可能なハイブリッド車両に搭載されたバッテリへの充電を制御する充電制御装置に係り、特に、バッテリ走行を優先したいユーザにとって利便性が向上した充電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関及び/又は電気モータで推進可能なハイブリッド車両に搭載されたバッテリへの充電を制御する充電制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、「走行予定路に関する情報を受信」し、「走行予定路に関する情報を解析しバッテリが消費する電力及びバッテリへの回生電力を予測」し、「予測した消費電力及びバッテリの回生電力に応じて充電方法を変更する」「ハイブリッド車両の充電制御装置」が開示されている(段落番号0007参照)。
【特許文献1】特開2000−188802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1記載の従来装置は、バッテリに充電された電力が車載電装機器(例えば、エアコン、カーオーディオシステム、シガレットライター、ワイパー、ヘッドライト、ウィンカー、など)によっても消費され得る点について考慮していない。
【0005】
したがって、上記特許文献1記載の従来装置によれば、車載電装機器によって想定以上にバッテリ電力が消費されてしまった場合に、回生分を考慮したとしてもバッテリに充電された電力のみによる走行では目的地に到達できず、ガソリンを利用した走行を併用せざるを得ない、という状況が生じ得る。
【0006】
このような状況は、エコの観点からガソリン走行をできるだけ避けたいと望むユーザや、その時々のガソリン代と電気代とを比較した上でコストの観点からできるだけバッテリ走行をしようと判断したユーザにとっては、好ましくないと言い得る。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、バッテリ走行を優先したいユーザにとって利便性が向上した充電制御装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の第一の態様は、内燃機関及び/又は電気モータで推進可能なハイブリッド車両に搭載されたバッテリへの充電を制御する充電制御装置であって、当該ハイブリッド車両が、少なくとも走行開始前に充電された電力によって上記電気モータを駆動させることによって目的地まで走行する場合に、第一の電力量を上記目的地までの走行予定経路に関する情報(例えば、道路情報、又は、天候情報など)に基づいて算出する算出手段と、当該ハイブリッド車両に搭載された電装機器の負荷履歴を記録する記録手段と、上記記録手段により記録された上記負荷履歴に基づいて、当該ハイブリッド車両が上記走行予定経路を通って上記目的地まで走行したときに上記電装機器によって消費される第二の電力量を推定する推定手段と、上記算出手段により算出された上記第一の電力量と上記推定手段により推定された上記第二の電力量との和から上記バッテリに残存する現充電量を引いた値を走行開始前に上記バッテリへ充電する電力量とする充電量決定手段と、を有する充電制御装置である。
【0009】
上記第一の態様において、上記ハイブリッド車は、外部電源から上記バッテリを充電可能に構成されたプラグインハイブリッド車である。
【0010】
また、上記第一の態様において、上記充電制御装置は、ユーザにより指定された、当該ハイブリッド車両が上記目的地へ向けて出発する時刻までに、上記充電量決定手段により決定された上記電力量を上記バッテリへ充電する充電手段を更に有する。この充電手段は、急速充電をできる限り回避してバッテリ寿命を延ばすために、上記出発時刻までに上記充電量決定手段により決定された上記電力量の上記バッテリへの充電が完了する範囲内で、単位時間あたりの充電量をできる限り少なくすることが好ましい。
【0011】
上記第一の態様によれば、目的地までバッテリ走行するのに必要なバッテリ充電量だけでなく、ユーザによる電装機器の過去の使用履歴に基づいて、目的地に到着するまでに電装機器によって消費されるバッテリ電力を推定し、この推定電力量も考慮した上で予め充電しておく電力量が決定されるため、上記従来技術のように電装機器により消費されるバッテリ電力を全く考慮しない場合と比べて、バッテリ電力のみによる走行で目的地に到達できる可能性を大幅に高めることができ、よって、バッテリ走行を優先したいユーザの利便性を向上させることができる。
【0012】
なお、上記第一の態様において、上記充電制御装置は、1)上記ハイブリッド車両に搭載されてもよく、或いは、2)構成要素の一部が上記ハイブリッド車両に搭載され、残部が車両外の独立した装置として構成されてもよい。
【0013】
上記目的を達成するための本発明の第二の態様は、内燃機関及び/又は電気モータで推進可能なハイブリッド車両に搭載されたバッテリへの充電を制御する充電制御装置であって、当該ハイブリッド車両が、少なくとも走行中に充電された電力によって上記電気モータを駆動させることによって目的地まで走行する場合に、第一の電力量を上記目的地までの走行予定経路に関する情報(例えば、道路情報、又は、天候情報など)に基づいて算出する算出手段と、当該ハイブリッド車両に搭載された電装機器の負荷履歴を記録する記録手段と、上記記録手段により記録された上記負荷履歴に基づいて、当該ハイブリッド車両が上記走行予定経路を通って上記目的地まで走行したときに上記電装機器によって消費される第二の電力量を推定する推定手段と、上記算出手段により算出された上記第一の電力量と上記推定手段により推定された上記第二の電力量との和から上記バッテリに残存する現充電量を引いた値に基づいて走行中に上記バッテリへ充電する電力量を決定する充電量決定手段と、を有する充電制御装置である。
【0014】
上記第二の態様によれば、目的地までバッテリ走行するのに必要なバッテリ充電量だけでなく、ユーザによる電装機器の過去の使用履歴に基づいて、目的地に到着するまでに電装機器によって消費されるバッテリ電力を推定し、この推定電力量も考慮した上で走行中に充電される電力量が決定されるため、上記従来技術のように電装機器により消費されるバッテリ電力を全く考慮しない場合と比べて、バッテリ電力のみによる走行で目的地に到達できる可能性を大幅に高めることができ、よって、バッテリ走行を優先したいユーザの利便性を向上させることができる。
【0015】
なお、上記第一及び第二の態様において、上記電装機器とは、バッテリ電力により駆動され得るあらゆる任意の機器/システムを指し、例えば、エアコン、カーオーディオシステム、シガレットライター、ワイパー、ヘッドライト、ウィンカー、などである。
【0016】
また、上記第一及び第二の態様において、上記充電制御装置は、例えば、通信手段を用いて、前記走行予定経路に関する情報を外部通信局から取得する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、バッテリ走行を優先したいユーザにとって利便性が向上した充電制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。なお、下記の一実施例は、外部電源から車載バッテリを充電することが可能ないわゆるプラグインハイブリッド車両を用いて説明するが、このようなプラグインハイブリッド車の基本概念、主要なハードウェア構成、作動原理、及び基本的な制御手法等については当業者には既知であるため、詳しい説明を省略する。
【実施例】
【0019】
以下、添付の図1及び2を参照して、本発明の一実施例に係る充電制御装置100について説明する。本実施例においては、一例として、充電制御装置100が、装置全体が車両に搭載されるように設計された車載装置であるものとする。
【0020】
図1は、プラグインハイブリッド車に搭載されたバッテリへの充電を制御する、本発明の一実施例に係る充電制御装置100の概略構成図である。
【0021】
充電制御装置100は、図示しない外部通信局(以下、「センタ」と称す)との間で無線通信を利用して情報を送受信するための通信部101を有する。通信部101とセンタの間の通信接続は、直接的な無線通信接続に限られず、車車間通信、路車間通信、及び/又は衛星通信を介した間接的な通信接続であってもよい。また、採用される通信方式・通信規格も任意でよい。
【0022】
ここで、通信部101が通信するセンタは、最新の地図情報(道路形状・高低差)を備えているとともに、最新の渋滞情報を取得する機能を備えており、要求に応じて現在地から目的地までの経路を探索し、要求元に送り返す経路探索機能を有するものとする。
【0023】
充電制御装置100は、更に、例えばGPS(Global Positioning System;全地球測位システム)を利用して当該プラグインハイブリッド車の位置を検出する自車両位置検出部102有する。自車両位置検出部102の検出精度(分解能)は高い(細かい)ほど好ましく、例えばRTK(Real Time Kinematic)−GPSなどの高精度GPSが利用されることが好ましい。
【0024】
充電制御装置100は、更に、充電対象であるプラグインハイブリッド車両に搭載された電装機器の負荷状態を監視する負荷監視部103を有する。ここで、電装機器とは、例えば、エアコン、カーオーディオシステム、シガレットライター、ワイパー、ヘッドライト、ウィンカー、などである。
【0025】
充電制御装置100は、更に、ユーザが目的地及び出発時刻を入力・設定するためのユーザ入力部104を有する。ユーザ入力部104は、ユーザが容易に操作できる位置に設けられることが望ましい。
【0026】
充電制御装置100は、更に、負荷監視部103によりモニタリングされたユーザによる電装機器の負荷履歴(換言すれば、使用履歴/使用傾向/個人習慣)に関する統計情報や、当該プラグインハイブリッド車両の燃費(特に、バッテリ走行時の単位距離あたりの平均バッテリ電力消費量=バッテリ電力消費率)や回生率(単位距離あたりに回生できるバッテリ電力量)などの情報を含む車両情報などを予め記憶保持する記憶部105を有する。記憶部105は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)や、メモリ、DVDディスクなどの任意の種類・規格の記憶媒体でよい。
【0027】
充電制御装置100は、更に、ユーザ入力部104を通じてユーザにより入力された目的地や出発時刻などの情報や、目的地までの経路情報、バッテリ走行のみで目的地へ到達するのに最低限必要な充電量(後述)などの情報をユーザに提示する表示部106を有する。表示部106は、ユーザに視覚的に情報を提示するディスプレイ装置であり、その種類や規格やサイズ等は任意でよい。
【0028】
当業者には明らかなように、ユーザ入力部104と表示部106とは、一体化されたタッチパネル式ディスプレイ装置として構成することも可能である。
【0029】
充電制御装置100は、更に、例えば家庭用100V電源や商用200V電源などの外部電源(図示せず)から供給された電力を車載バッテリ(図示せず)に充電する充電部107を有する。充電部107は、バッテリ残量(例えば、満充電を100%としたときの残%)を計測し、所定の充電%まで充電を行うように機能する。
【0030】
充電制御装置100は、更に、各種の演算を実行すると共に、充電制御装置100の各構成要素を統括的に制御する演算・制御部108を有する。本実施例において、演算・制御部108は、例えば、ECU(Electronic Control Unit;電子制御装置)である。
【0031】
図2のフローチャートは、上記のような構成を持つ充電制御装置100によるバッテリ充電処理の流れを示している。ここでは、プラグインハイブリッド車のユーザが、ワントリップ終了後、次のドライブを開始するまでに、次のドライブにおいてバッテリ走行のみで目的地まで到達するのに必要最低限のバッテリ充電を行うものとする。
【0032】
まず、プラグインハイブリッド車のユーザが、ワントリップ終了後に、ユーザ入力部104を通じて、次のドライブの目的地及び出発時刻を充電制御装置100に入力する(S201)。
【0033】
演算・制御部108は、ユーザ入力部104を通じてユーザから目的地及び出発時刻が指定されると、指定された目的地までの経路を探索し、表示部106を通じてユーザに提示する(S202)。
【0034】
より具体的には、指定された目的地と、自車両位置検出部102により検出された当該プラグインハイブリッド車の現在位置と、出発時刻とを通信部101を通じてセンタへ送信することによって、当該現在位置からユーザ指定の目的地までの経路探索の実行をセンタに要求する。このとき、センタは、指定された出発時刻における渋滞予測も考慮して経路を探索するものとする。
【0035】
センタは、1以上の経路を探索し、要求元の充電制御装置100へ送信する。センタから送り返されてきた探索結果(1以上の経路を含む)が通信部101を通じて受信されると、演算・制御部108は、表示部106を通じて当該探索結果をユーザに提示し、いずれかの経路を選択する(又は、探索条件を新規設定/追加/変更した上での探索のやり直しを指示する)ことを促す。
【0036】
ユーザによりいずれかの経路が選択されると(S203)、演算・制御部108は、次いで、選択された経路を通って目的地までバッテリ走行する場合に必要なバッテリ電力量を算出する(S204)。
【0037】
この目的地までのバッテリ走行に必要な電力量は、選択された経路の経路総距離から当該経路中に含まれる回生可能区間総距離を引いた値に、記憶部105に予め記憶保持されたバッテリ電力消費率を乗算することによって求められる。経路距離は、探索結果受信時に併せてセンタから受信されてもよく、或いは、ユーザによりいずれかの経路が選択されてからセンタへ要求してもよい。
【0038】
次いで、演算・制御部108は、選択された経路を通って目的地まで走行したときに回生ブレーキ機能により車載バッテリへ充電できる電力量について算出する(S205)。
【0039】
この目的地までに回生できる電力量は、当該経路中に含まれる回生可能区間(主として下り坂部分)の総距離に、記憶部105に予め記憶保持された回生率を乗算することによって求められる。
【0040】
次いで、演算・制御部108は、ユーザ指定の時刻に出発し、ユーザにより選択された経路を通って、ユーザ指定の目的地まで走行したときに当該プラグインハイブリッド車に搭載された電装機器により消費されるバッテリ電力量を推定する(S206)。
【0041】
より具体的には、まず、演算・制御部108は、通信部101を通じて、選択された経路に関する道路情報(右左折、トンネル、等)及び天候情報(走行予定時刻における天気及び気温等の予報)を取得して、走行シーンを予測する。
【0042】
次いで、演算・制御部108は、記憶部105からユーザの個人的習慣の統計データである負荷履歴を読み出す。ここで、負荷履歴には、例えば、エアコン、カーオーディオ、ワイパー、及びシガレットライターの使用頻度・使用傾向、が含まれる。
【0043】
次いで、演算・制御部108は、予測された走行シーンに、読み出した負荷履歴を照らして、ユーザにより選択された経路を通ってユーザ指定の目的地まで走行したときに各電装機器により消費される電力量を個々具体的に推定する。
【0044】
例えば、エアコンについては、当該経路走行時の予想気温・湿度・天候(晴れ、曇り、雨、雪、等)とそのような気温・湿度・天候のときにユーザが過去どのようにエアコンを使用する傾向にあるかという統計データとに応じて、オート運転が用いられるか否か、設定温度が何度に設定されるか、及び/又は、曇り止め(デフォッガ)が用いられるか否か、などの使用態様が推定されて、その推定からエアコンによる消費電力が算出される。
【0045】
同様に、カーオーディオについては、例えば、雨の日は交通情報を聴くためにラジオを掛ける傾向にある、高速道路ではCDを聴く傾向にある、夕方の渋滞中であればテレビを見る傾向にある、といった統計データから、当該経路を走行したときのカーオーディオの使用態様が推定されて、その推定から消費電力が算出される。
【0046】
また、過去のシガレットライター使用頻度(例えば時間あたり)から、当該経路を走行したときに目的地に到達するまでにシガレットライターにより消費される電力量が推定される。
【0047】
また、目的地に到達するまでの経路上の天候情報に過去のワイパーの強弱レベル(速/中/遅)ごとの使用頻度を照らし合わせて、当該経路を走行して目的地に到達するまでにワイパーによって消費される電力量が推定される。
【0048】
また、天候情報、走行時間帯、トンネルの有無、過去のハイビーム使用頻度などから、当該経路を走行して目的地に到達するまでのヘッドライト(ハイビーム/ロービーム)及び車幅灯(スモールランプ)の使用態様を予測し、この予測からライト類により消費される電力量が推定される。
【0049】
また、道路形状(右左折)や、過去の車線変更頻度などから、当該経路を走行して目的地に到達するまでの左右ウィンカーの使用態様を予測し、この予測からウィンカーにより消費される電力量が推定される。
【0050】
このようにして算出・推定された個々の車載電装機器による消費電力を最後に合計して、ユーザ指定時刻に出発し、ユーザにより選択された経路を通って、ユーザ指定の目的地まで走行したときに車載電装機器により消費される電力量とする。
【0051】
このようにして、走行に必要な電力量(S204)、回生できる電力量(S205)、及び、車載電装機器による消費電力(S206)が算出/推定されると、演算・制御部108は、選択された経路を通って指定の目的地までバッテリ走行するために走行前にバッテリに充電しておくべき最低限の充電電力量を算出する(S207)。
【0052】
より具体的には、走行に必要な電力量(S204)と電装機器に必要な電力量(S206)とを加えた値から、その時点でのバッテリ残量と回生できる電力量(S205)とを引いた値を最終的な充電量として算出する。
【0053】
このようにして、選択された経路を通って指定された目的地までバッテリ走行するために走行前にバッテリに充電しておくべき電力量が算出されると、充電部107による充電が行われることになるが、バッテリへの実際の充電は、例えば、a)充電量算出後、直ちに開始されるようにしてもよく、或いは、b)表示部106により算出された充電量がユーザに表示され、ユーザが充電量を確認し、ユーザ入力部104を通じて充電開始操作をしてから、開始されるようにしてもよい。後者b)の場合、充電量とともに対応する電気料金がユーザに提示されてもよい。
【0054】
また、充電部107は、充電を実行する際に、急速充電をできる限り回避することを狙いとして、ユーザ指定の出発時刻までに充電が完了する限りにおいて、できる限り充電速度が遅くなるように、単位時間あたりの充電量を決定する。
【0055】
以上、図2を参照して、充電量を決定する処理の流れについて説明した。ここで、この充電量の決定処理について、具体的な数字の例を挙げて更に説明する。
【0056】
まず、ユーザ指定の出発時刻が「6月14日の17:30」、ユーザにより選択された経路に沿ったユーザ指定目的地までの距離が「30キロメートル(km)」、走行予定時間が「60分」、充電開始前の時点におけるバッテリ充電残量が「20%」(満充電状態を100%とする)、記憶部105に車両情報として記憶保持された当該プラグインハイブリッド車のバッテリ電力消費率及び回生率がそれぞれ「5%/km」及び「1%/km」、であるものとする。
【0057】
次いで、走行に必要な電力量を算出する際には(S204)、経路総距離である30kmから、回生可能区間総距離を減算する。ここでは、選択された経路中に回生可能区間が2カ所(10km、5km)あり、それら総距離が「15km」であるものとする。すると、電力消費率5%/kmを用いて、走行に必要な電力量をバッテリ残量%で表すと、(30km−15km)×5%/km=「75%」と求めることができる。
【0058】
次いで、回生できる電力量(S205)は、上記の回線区間総距離15kmに、回生率1%/kmを乗算して、15km×1%/km=「15%」と求めることができる。
【0059】
次いで、電装機器に必要な電力量を推定する際には(S206)、まず、道路情報と天候情報を取得する。ここでは、道路情報として、「経路上に3kmのトンネル区間が存在する」、「右左折予定回数が10回である」、及び、「2車線以上の道路が経路上に5km存在する」、という情報が得られたものとする。また、天候情報として、「0km地点〜10km地点の区間は、天候:曇り、気温26℃、湿度40%」、「10km地点〜20km地点の区間は、天候:雨(降雨量:200ミリ(mm))、気温24℃、湿度:90%」、という情報が得られたものとする。
【0060】
次いで、負荷履歴(個人習慣)が読み出される。ここでは、電装機器:エアコン、カーオーディオ、及び、シガレットライターに関する過去の負荷履歴から、A)エアコンについて、「6〜8月の間はエアコンを作動させる確率が高い」、「6月のエアコン設定温度は25℃」、「7月のエアコン設定温度は24℃」、「8月のエアコン設定温度は23℃」、「オート(AUTO)に設定されている頻度が高い」、というユーザ傾向が、B)カーオーディオについて、「一旦楽曲再生を開始すると目的地到着まで停止させない」、「CDの利用頻度が高い」、というユーザ傾向が、C)シガレットライターについて、「平均して走行1時間あたりに2回使用されている」、というユーザ傾向が、D)ウィンカーについて、「2車線以上の道路を走行中、10kmあたり4回の車線変更をする」、というユーザ傾向が、それぞれ把握されたものとする。
【0061】
次いで、上記のようなユーザの個人習慣を上述の道路情報及び天候情報に照らし合わせて、次回ドライブにおいて電装機器によって消費される電力量を推定・計算する。
【0062】
まず、エアコンについて、「出発日が6月である」という日時情報と、「6月のエアコン設定温度は25℃」及び「オート(AUTO)に設定されている頻度が高い」という負荷履歴(個人習慣)とから、「設定温度25℃のオート運転」で出発から目的地到着まで利用されるものと推定する。また、「10km地点〜20km地点において湿度が90%である」という天候情報から、「10km地点〜20km地点走行中に曇り止め(デフォッガ)機能を利用する」ものと推定する。これらの推定に基づき、設定温度25℃でオート運転時の単位時間あたりの消費電力量に走行予定時間の60分(1時間)を乗算した値と、曇り止め機能の単位時間あたりの消費電力量に10km地点から20km地点までの走行予定時間(20分)を乗算した値との和を、目的地到着までにエアコンにより消費されるバッテリ電力量(ここでは、例えば、計5%)とする。
【0063】
また、カーオーディオについて、負荷履歴(個人習慣)から、出発から目的地到着までCDの再生が行われるものと推定する。この推定に基づき、CD再生時の単位時間あたりの消費電力量に走行予定時間の60分(1時間)を乗算して、目的地到着までにカーオーディオにより消費されるバッテリ電力量(ここでは、例えば、1%)を算出する。
【0064】
また、シガレットライターについて、1時間あたり2回使用されるという負荷履歴(個人習慣)から、走行時間が60分と予定されている目的地到着までにシガレットライターが2回使用されると推定する。この推定に基づき、シガレットライターにより消費されるバッテリ電力量は無視できるほど微量であるものと判断する。
【0065】
また、ワイパーについて、「10km地点〜20km地点において降水量が200mmである」という天候情報から、「10km地点〜20km地点走行中に強弱レベル“中”で作動される」と推定する。この推定に基づき、ワイパーを強弱レベル“中”で作動させた時の単位時間あたりの消費電力量に10km地点から20km地点までの走行予定時間(20分)を乗算して、目的地到着までにワイパーにより消費されるバッテリ電力量(ここでは、例えば、2%)を算出する。
【0066】
また、ライトについて、「17:30から60分間運転する」という日時情報及び走行予定時間から、「17:30〜18:00は車幅灯(スモールランプ)を点灯させる」、「18:00〜18:30は前照灯(ヘッドライト)を点灯させる」、と推定する。この推定に基づき、スモールランプ及びヘッドライト点灯時の単位時間あたりの消費電力量にそれぞれの走行予定時間の30分を乗算して、目的地到着までにスモールランプ及びヘッドライトにより消費されるバッテリ電力量(ここでは、例えば、計4%)を算出する。
【0067】
また、ウィンカーについて、「右左折予定回数が10回である」及び「2車線以上の道路が経路上に5km存在する」という道路情報と「2車線以上の道路を走行中、10kmあたり4回の車線変更をする」という負荷履歴(個人習慣)とから、出発から目的地到着までに、10回+(4回/10km×5km)=12回のウィンカー操作が行われるものと推定する。この推定に基づき、1回のウィンカー操作による消費電力量に操作回数12回を乗算して、目的地到着までにウィンカーにより消費されるバッテリ電力量(ここでは、例えば、1%)を算出する。
【0068】
このようにして、各電装機器について算出された推定消費電力量を合計すると、目的地到着までの電装機器により消費される電力量が算出される(ここでは、エアコン5%+カーオーディオ1%+シガレットライター0%+ワイパー2%+ライト4%+ウィンカー1%=「13%」と算出される)。
【0069】
このようにして、走行に必要な電力量:75%、回生できる電力量:15%、及び、車載電装機器による消費電力:13%が算出/推定されると、走行に必要な電力量(75%)と電装機器に必要な電力量(13%)とを加えた値から、バッテリ残量(20%)と回生できる電力量(15%)とを引いた値(75%+13%−20%−15%=「53%」)が不足するバッテリ電力量として算出される。
【0070】
すなわち、上記のような数値例の場合、バッテリ満充電に対して53%分を出発までに充電しておけば(換言すれば、バッテリ残量73%の状態で出発すれば)、バッテリ走行のみで目的地に到着できると推定・算出されたことになる。
【0071】
以上、具体的な数字の例も挙げて説明してきたように、本実施例によれば、走行予定経路を通って目的地までバッテリ走行するのに最低限必要な分だけ充電されるため、充電効率が良いとともに、電気代が低減される。
【0072】
また、本実施例によれば、走行予定経路を通って目的地までバッテリ走行するのに必要な電力量を算出する際に、当該走行予定経路において目的地に到達するまでに回生できる電力量を考慮するだけでなく、当該走行予定経路を通って目的地に到達するまでに電装機器により消費される電力量をも考慮するため、電装機器による消費電力を考慮しない場合と比べて、目的地までのバッテリ走行に必要最低限の電力量の算出精度が向上し、バッテリでの走行を優先したいユーザがバッテリ残量がなくなったためにしかたなくガソリン走行を余儀なくされるという事態の発生を大幅に低減することができる。
【0073】
また、本実施例によれば、走行予定経路を通って目的地までバッテリ走行するのに最低限必要な分の電力量のみが出発時刻までに充電されればよくなるため、多くの場合、急速充電する必要がなくなり、よって急速充電によりバッテリを傷める可能性が大幅に減り、頻繁に急速充電を行う場合と比べてバッテリ寿命を大幅に延ばすことができる。
【0074】
なお、上記一実施例においては、一例として、出発時刻までに充電が完了するように単位時間あたりに充電される電力量が決定されるものとしたが、当業者には明らかなように、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。例えば、ユーザがユーザ入力部103を通じて出発時刻とは別に出発時刻より前の任意の時刻を充電完了時刻として指定することができるようにし、この充電完了時刻までに充電が完了するように単位時間あたりの充電量が決定されるものとしてもよい。また、ユーザが自らの意思で急速充電を選択できるようにすることも当然可能である。
【0075】
また、上記一実施例においては、一例として、ユーザが次回のドライブの出発時刻と目的地を入力した上で充電するときには常に、次回のドライブにおいて目的地までバッテリ走行するのに最低限必要なバッテリ充電量が算出され、充電されるものとしたが、当業者には明らかなように、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。例えば、充電開始前に、ユーザが、次回のドライブにおいて目的地までバッテリ走行するのに最低限必要な電力量だけバッテリに充電するか、或いは、念のためバッテリを満充電まで充電するかを選択できるようにし、満充電が選択された場合には、図2のフローチャートを参照して説明したような最低限の充電量を算出する処理を行わずに、出発時刻までに満充電を行うものとしてもよい。
【0076】
また、上記一実施例においては、走行が開始されてからも、図2のフローチャートを参照して説明したような目的地までバッテリ走行するのに必要なバッテリ電力量の算出処理を動的に実行するようにしてもよい。この場合、充電前の推定よりも電装機器による消費電力量が増えた場合(例えば、雨が降っている区間が推定より長く、より長い時間ワイパーとエアコンの曇り止め機能を作動させた場合、など)に、負荷履歴を参照して、ユーザの使用頻度が低く、よって優先順位が低いと推定される機器から順に電源を自動的にOFFにして、目的地までガソリン走行せずにバッテリ走行で到達することが優先されるようにしてもよい。ただし、この場合であっても、例えば「バッテリ走行で目的地へ到達するためにカーオーディオの電源を切ります」といった趣旨の音声メッセージ及び/又は文字メッセージをユーザへ提示するなどのユーザへの事前の通知(又は、承認を求める)は、ユーザフレンドリーの観点から必要であると考えられる。
【0077】
また、上記一実施例においては、一例として、本発明に係る充電制御装置が単体の車載装置として具現化された場合の例について説明したが、当業者には明らかなように、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。例えば、図1に示した構成要素の一部が車外に設置された別体の充電器(例えば、各家庭に備えられたプラグインハイブリッド車用充電装置)内に備えられるようにしてもよい。
【0078】
また、上記一実施例においては、一例として、経路探索はセンタにおいて行われるものとしたが、当業者には明らかなように、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、経路探索は充電制御装置内で実行されてもよい。ただし、この場合であっても、充電制御装置は、センタとの通信により、最新の地図情報や道路情報、天候情報などを取得するものとする。
【0079】
また、上記一実施例においては、車載電装機器の例として、エアコン、カーオーディオ、シガレットライター、ワイパー、ライト、及び、ウィンカーを挙げて説明したが、当業者には明らかなように、本発明の実施において消費電力量が考慮される電装機器はこれらに限定されるものではなく、バッテリから駆動電力を得ているすべての車載機器を対象とし得る。また、モータジェネレータ、電動パワーステアリング(EPS)システム、又は、例えばECB(登録商標)などの呼称で知られるブレーキ・バイ・ワイヤシステム、などの車両制御系の電動装置についても、バッテリ電力を利用する限り、本発明における消費電力量推定の対象とし得ることは明らかである。
【0080】
さらに、上記一実施例においては、一例として、外部電源からプラグインハイブリッド車に搭載されたバッテリを充電する場合について説明したが、当業者には明らかなように、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、車載バッテリに外部電源からは充電できないタイプのハイブリッド車にも適用可能である。この場合、内燃機関により推進しているときに車載バッテリに回生するする電力量を、目的地までの走行予定経路に関する情報に基づく電力量と、電装機器の負荷履歴に基づく電力量とに基づいて決定することになる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、ハイブリッド車に搭載されたバッテリへの充電を制御する充電制御装置に利用できる。対象となるハイブリッド車の内燃機関の形式・燃料種類や、バッテリの種類・サイズ、車両全体の外観デザイン、重量、サイズ、走行性能等はいずれも不問である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施例に係る充電制御装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施例に係る充電制御装置によるバッテリ充電量決定処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0083】
100 充電制御装置
101 通信部
102 自車両位置検出部
103 負荷監視部
104 ユーザ入力部
105 記憶部
106 表示部
107 充電部
108 演算・制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関及び/又は電気モータで推進可能なハイブリッド車両に搭載されたバッテリへの充電を制御する充電制御装置であって、
前記ハイブリッド車両が、少なくとも走行開始前に充電された電力によって前記電気モータを駆動させることによって目的地まで走行する場合に、第一の電力量を前記目的地までの走行予定経路に関する情報に基づいて算出する算出手段と、
前記ハイブリッド車両に搭載された電装機器の負荷履歴を記録する記録手段と、
前記記録手段により記録された前記負荷履歴に基づいて、前記ハイブリッド車両が前記走行予定経路を通って前記目的地まで走行したときに前記電装機器によって消費される第二の電力量を推定する推定手段と、
前記算出手段により算出された前記第一の電力量と前記推定手段により推定された前記第二の電力量との和から前記バッテリに残存する現充電量を引いた値を走行開始前に前記バッテリへ充電する電力量とする充電量決定手段と、を有することを特徴とする充電制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の充電制御装置であって、
ユーザにより指定された、前記ハイブリッド車両が前記目的地へ向けて出発する時刻までに、前記充電量決定手段により決定された前記電力量を前記バッテリへ充電する充電手段を更に有する、ことを特徴とする充電制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の充電制御装置であって、
前記充電手段は、前記出発時刻までに前記充電量決定手段により決定された前記電力量の前記バッテリへの充電が完了する範囲内で、単位時間あたりの充電量をできる限り少なくする、ことを特徴とする充電制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項記載の充電制御装置であって、
前記ハイブリッド車両に搭載された、ことを特徴とする充電制御装置。
【請求項5】
内燃機関及び/又は電気モータで推進可能なハイブリッド車両に搭載されたバッテリへの充電を制御する充電制御装置であって、
前記ハイブリッド車両が、少なくとも走行中に充電された電力によって前記電気モータを駆動させることによって目的地まで走行する場合に、第一の電力量を前記目的地までの走行予定経路に関する情報に基づいて算出する算出手段と、
前記ハイブリッド車両に搭載された電装機器の負荷履歴を記録する記録手段と、
前記記録手段により記録された前記負荷履歴に基づいて、前記ハイブリッド車両が前記走行予定経路を通って前記目的地まで走行したときに前記電装機器によって消費される第二の電力量を推定する推定手段と、
前記算出手段により算出された前記第一の電力量と前記推定手段により推定された前記第二の電力量との和から前記バッテリに残存する現充電量を引いた値に基づいて走行中に前記バッテリへ充電する電力量を決定する充電量決定手段と、を有することを特徴とする充電制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項記載の充電制御装置であって、
前記走行予定経路に関する情報には、道路情報、又は、天候情報が含まれる、ことを特徴とする充電制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項記載の充電制御装置であって、
前記走行予定経路に関する情報を外部通信局から取得するための通信手段を更に有する、ことを特徴とする充電制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−137456(P2009−137456A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316179(P2007−316179)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】