説明

充電器

【課題】 電極端子となるバネ性の接触片の組み付けが簡単,容易であり、部品点数を削減することができ、組み立てを容易に行える充電器を提供すること
【解決手段】 上ケース1,下ケース2の内部に回路基板3,コイルバネ端子4を組み付ける。コイルバネ端子4はコイル部40の一方端を鉤状に曲げ加工して接続端41とし、他方端は2段に折り曲げて突起形状の接触片42とする。下ケース2の底面に凹部20を形成してコイル部40を嵌め込ませる。凹部20には、一方の壁にコイル部40と嵌め合うガイド軸21を形成し、ガイド軸21に隣接する両側の壁に、コイル40部から延びる延線部位と嵌め合う溝22,23をそれぞれ形成する。この凹部20によりコイルバネ端子4を所定の立ち姿勢に保持し、上側に回路基板3を組み付けて接続端41をはんだ付けし、上ケース1を被せて組み付けし、長孔11から接触片42が突き出る状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックや携帯電話機などの充電対象を着脱可能に装着して2次電池に充電を行うような充電器に関するもので、より具体的には、充電対象の電極端子とバネ性により接触させる接触片の組み付け構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の充電器は、例えば特許文献1〜3などに見られるように、ケースに形成した装着部に、バネ性の接触片を突き出し状態に配置する構成にする。そして、その装着部に、電池パックや携帯電話機などの充電対象を着脱可能に装着し、接触片を充電対象の電極端子と接触させて2次電池に充電を行うようになっている。
【0003】
バネ性の接触片は、いわゆるコイルバネを利用した構成が多く用いられている。つまり、コイル部(巻線)から延びる延線部位を適宜に曲げ加工して形成した屈曲部位を接触片とし、ケースに連係する支持軸に、コイル部を嵌め合わせることで組み付けるとともに、電力ライン側と適宜に結線することによりバネ性を有した電極端子にしている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−118608号公報
【特許文献2】特開2000−195561号公報
【特許文献3】特開平10−64595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、そうした従来の充電器では以下に示す問題がある。まず、特許文献1に開示された発明では、バネ性の接触片(端子バネ)は下ケースの支持部に直接に装着させるので組み立て性がよくなるものの、配線するためにリード線で基板と接続している。そのため、配線材料が必要で手間がかかる。
【0006】
特許文献2に開示された発明は、バネ性の接触片(接点)は基板に取り付ける構成であるが、支持体により支持している。そのため、部品点数が増加し、組み立てに手間がかかる。
【0007】
特許文献3に開示された発明では、バネ性の接触片(接触バネ)は基板に直接的に取り付ける構成なので、部品点数を低減でき、組み立て性も良好にし得る。しかし、コイルバネの位置決めを基板で行なっているため基板のサイズやケースのサイズが大きくなるという問題や、その分コストアップになるという問題がある。
【0008】
この発明は上記した課題を解決するもので、その目的は、電極端子を構成するバネ性の接触片の組み付けが簡単,容易であり、部品点数を削減することができ、組み立てが容易に行える充電器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、本発明に係る充電器は、電池パックや携帯電話機などの充電対象を着脱可能に装着し、バネ性の接触片を前記充電対象の電極端子と接触させて2次電池に充電を行う充電器であって、前記接触片を突き出させるための長孔を前記電極端子との対応位置に有する上ケースと、回路基板と、前記回路基板を組み付けする下ケースと、コイル部の一方端が鉤状の接続端であり他方端に前記接触片を有するコイルバネ端子とを備えて、前記下ケースの底面に前記コイル部を嵌め込む凹部を形成し、前記凹部には、一方の壁に前記コイル部と嵌め合うガイド軸を形成するとともに、前記ガイド軸に隣接する両側の壁に、前記コイル部から延びる延線部位と嵌め合う溝をそれぞれ形成し、前記ガイド軸の外形状が、前記コイル部の内周と非接触部分が生じ、その非接触部分と前記コイル部との間に所定の空間が形成されるように構成した。
【0010】
また、前記ガイド軸は、前記コイル部の内周に少なくとも2所で接する長円形状の断面に形成し、当該長円断面の長手を、前記溝を形成した両壁に沿う向きにするとよい。さらにまた、前記回路基板には前記接続端と嵌め合う取付孔を設けて、前記凹部に前記コイル部を組み付けて当該コイルバネ端子を所定の姿勢に保持し、これらの上側に前記回路基板を組み付けるようにするとよい。
【0011】
係る構成にすることにより本発明では、コイルバネ端子のコイル部を下ケースの凹部に嵌め入れることで当該コイルバネ端子を所定の立ち姿勢に保持でき、自立するので保持用の特別な治具がいらない。そして、回路基板を上から組み付けるので、その取付孔にコイルバネ端子の該当部位(接続端)が嵌め合い、これをはんだ付けすればよい。さらに、この製造は下ケースに対して各パーツを上から順に組み付けする作業工程であり、作業工程の流れがよい。
【0012】
この場合、コイルバネ端子を所定の立ち姿勢に保持することのために、支持部材を個別部品として用意することが不要となり、回路基板に直接に取り付けるので部品点数を削減することができ、コストを低減できる。
【0013】
また、凹部についてガイド軸および溝を形成しているので、ガイド軸にコイル部が嵌め合うとともに、延線部位が該当溝に嵌め合うので、凹部に組み付けたコイルバネ端子の姿勢の保持を確実に行える。
【0014】
また、ガイド軸を長円形状の断面として隣接する両壁に沿う向きにすると、隣接する両壁との隙間が広がるので、コイル部をガイド軸へ嵌め合わせしやすく、コイルバネ端子の組み付けが容易になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る充電器では、コイルバネ端子はコイル部を下ケースの凹部に嵌め入れることで所定の立ち姿勢に保持でき、そして、回路基板を上から組み付けるので、その取付孔にコイルバネ端子の該当部位(接続端)が嵌め合い、これをはんだ付けすればよい。このため、保持用治具をセットする工数を減らすことができ、電極端子となるバネ性の接触片の組み付けを簡単,容易に行える。
【0016】
したがって、コイルバネ端子を所定の立ち姿勢に保持することのために、支持部材を個別部品として用意することが不要となり、回路基板に直接に取り付けることができるので部品点数を削減することができ、組み立てが容易に行えてコスト面に有利となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明に係る充電器の好適な一実施の形態を分離して示す斜視図である。本実施の形態において、充電器は、連結して一体にする上ケース1,下ケース2の内部に回路基板3,コイルバネ端子4を組み付けし、上ケース1の上面に形成した装着部10に、電池パックや携帯電話機などの充電対象を着脱可能に装着し、バネ性の接触片42を充電対象の電極端子と接触させて2次電池に充電を行う構成になっている。
【0018】
上ケース1は、上面を大きく窪ませて装着部10に形成し、その装着部10の背面に、接触片42を突き出させるための長孔11を2つ形成してある。長孔11,11は充電対象の電極端子との対応位置に配置している。
【0019】
下ケース2には、回路基板3を支持するための受け面を形成してあって、回路基板3を所定に組み付けする。そして、下ケース2の底面には凹部20を形成してあり、その奥部20にコイルバネ端子4のコイル部40を嵌め込むようになっている。
【0020】
凹部20には、一方の壁にコイル部40と嵌め合うガイド軸21を形成するとともに、ガイド軸21に隣接する両側の壁に、コイル40部から延びる延線部位と嵌め合う溝22,23をそれぞれ形成している。ガイド軸21は、コイル部40の内周に少なくとも2所で接する長円形状の断面に形成し、当該長円断面の長手を、溝22,23を形成した両壁に沿う向きにする。また、ガイド軸21の長径は、コイル部40の内径に対して90%程度とすることが好ましい。
【0021】
回路基板3は、所定の回路パターンを形成してあって、コンデンサ31,電源ジャック32等の電子部品を所定に実装している。そして、回路基板3には2つの取付孔30を所定の位置に設けている。これら取付孔30,30は電力ラインの電極端部であって、コイルバネ端子4の接続端41と嵌め合い、はんだ付けにより電気的に接続する構成になっている。
【0022】
コイルバネ端子4は、バネ性を発現するコイル部40の両端を延長させて加工してある。そして、一方端は鉤状に曲げ加工して接続端41とし、他方端は2段に折り曲げて突起形状の接触片42としてあり、接触片42が充電対象の電極端子と接触するようになっている。
【0023】
図2(a)〜(c)は、組み立て作業を順に説明する斜視図である。組み立ては、図2(a)に示すように、まず、下ケース2の凹部20に、コイルバネ端子4のコイル部40を嵌め込み入れてガイド軸21に嵌め合わせるとともに、延線部位を溝22,23に嵌め合わせし、コイル部40の反発力によりコイルバネ端子4を所定の立ち姿勢に保持する。
【0024】
次に、図2(b)に示すように、これらの上側に回路基板3を組み付ける。このとき、取付孔30,30に接続端41,41が嵌め合うので、当該部位をはんだ付けし、これにより電気的に接続する。
そして、図2(c)に示すように、下ケース2に上から上ケース1を被せて組み付けし、このとき、装着部10の長孔11から接触片42が突き出ることになる。
【0025】
したがって、充電の際は図3に示すように、装着部10に上方から充電対象5を嵌め込み入れればよく、接触片42が充電対象5に押されて長孔11側に押し戻され、最終的に対面する電極端子と接触することになる。
【0026】
このように、組み立て作業では、コイルバネ端子4はそのコイル部40を凹部20に嵌め入れることで所定の立ち姿勢に保持でき、自立するので保持用の特別な治具がいらない。そして、回路基板3を上から組み付けるので、その取付孔30にコイルバネ端子4の該当部位(接続端41)が嵌め合い、これをはんだ付けすればよい。このため、保持用治具をセットする工数を減らすことができ、組み立てが容易に行える。さらに、この製造は下ケース2に対して各パーツを上から順に組み付けする作業工程であり、作業工程の流れがよい。
【0027】
また、ガイド軸21は、断面が長円形状で隣接する両壁との隙間が広がる設定なので、コイル部40をガイド軸21へ嵌め合わせしやすく、コイルバネ端子4の組み付けが容易となる。
【0028】
この場合、コイルバネ端子4を所定の立ち姿勢に保持することのために、支持部材を個別部品として用意することが不要となり、回路基板3に直接に取り付けるので部品点数を削減することができ、コストを低減できる。
【0029】
なお、ガイド軸21については、隣接する両壁との隙間を広くできればよいので、断面形状は長円に限定されなく、例えば下側が半円で上側を尖らせた略三角形状にしてもよい。そして、断面の長手も溝22,23を形成した両壁に沿う向きに限らなく、何れかの壁側に傾斜させてもよい。
【0030】
また、凹部20については、ガイド軸21を設けない構成を採ることもよい。つまり、凹部20はコイル部40が嵌め合う深さに形成するので、ガイド軸21を設けなくとも嵌め込み入れたコイル部40を支持することが可能であり、コイルバネ端子4を立ち姿勢に保持できる。そして次に、この上側に回路基板3を組み付けて接続端41は取付孔30にはんだ付けするので、コイルバネ端子4を正しい姿勢に組み付けることができ、コイル部40の内側に軸がない状態でも、接触片42にはバネ性が発現することになる。この場合は、ガイド軸21をなしとするので凹部20について金型がシンプルになり、その分はコスト面で有利になり下ケース2の成形が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る充電器の好適な一実施の形態を分離して示す斜視図である。
【図2】組み立て作業を順に説明する斜視図であり、(a)はコイルバネ端子の組み付け作業を示し、(b)は回路基板の組み付け作業を示し、(c)は上ケースの組み付け作業を示している。
【図3】組み立てを完了した充電器の断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 上ケース
2 下ケース
3 回路基板
4 コイルバネ端子
5 充電対象
10 装着部
11 長孔
20 凹部
21 ガイド軸
22,23 溝
30 取付孔
31 コンデンサ
32 電源ジャック
40 コイル部
41 接続端
42 接触片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池パックや携帯電話機などの充電対象を着脱可能に装着し、バネ性の接触片を前記充電対象の電極端子と接触させて2次電池に充電を行う充電器であって、
前記接触片を突き出させるための長孔を前記電極端子との対応位置に有する上ケースと、回路基板と、前記回路基板を組み付けする下ケースと、コイル部の一方端が鉤状の接続端であり他方端に前記接触片を有するコイルバネ端子とを備えて、
前記下ケースの底面に前記コイル部を嵌め込む凹部を形成し、
前記凹部には、一方の壁に前記コイル部と嵌め合うガイド軸を形成するとともに、前記ガイド軸に隣接する両側の壁に、前記コイル部から延びる延線部位と嵌め合う溝をそれぞれ形成し、
前記ガイド軸の外形状が、前記コイル部の内周と非接触部分が生じ、その非接触部分と前記コイル部との間に所定の空間が形成されるようにしたことを特徴とする充電器。
【請求項2】
前記ガイド軸は、前記コイル部の内周に少なくとも2所で接する長円形状の断面に形成し、当該長円断面の長手を、前記溝を形成した両壁に沿う向きにすることを特徴とする請求項1に記載の充電器。
【請求項3】
前記回路基板には前記接続端と嵌め合う取付孔を設けて、前記凹部に前記コイル部を組み付けて当該コイルバネ端子を所定の姿勢に保持し、これらの上側に前記回路基板を組み付けることを特徴とする請求項1または2に記載の充電器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−67717(P2006−67717A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248110(P2004−248110)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(391001848)ユピテル工業株式会社 (238)
【Fターム(参考)】