説明

先端がテーパー状にされたループ付き縫合糸

【課題】転移前は容易に組織を通して受け取られ、転移すると、よりしっかり組織と係合するループ付き縫合糸を提供する。
【解決手段】ループ付き縫合糸10は、その遠位端10bに形成されたループ12を備え、ループ付き縫合糸10の近位端10aは縫合針を備える。ループ12の少なくとも一部が形状記憶ポリマー材料を含み、一時的構成から永続的構成へと転移するときに、ループ12の収縮を引き起こし、よりしっかり組織と係合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本願は、2008年9月11日に出願された米国仮出願第61/096,145号の利益およびこの出願に対する優先権を主張する2009年8月27日に出願された米国特許出願第12/548,594号の一部継続出願であり、これらの各出願の全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
技術分野
本開示は、ループを持つ縫合糸に関する。より具体的には、本開示は、テーパーカットを持つループ付き縫合糸に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の背景
内部に形成されたループを備える縫合糸は公知である。製造中に縫合糸内に形成されるループは、縫合糸を組織に固定するために使用され得る。この様式では、一旦縫合糸のループが付いていない端部が組織を通して挿入されると、その端部は、ループに通されて引き結び様の構成を形成し得、これは、組織を固定するために結ばれ得る。別の用途では、ループは、結び目の代わりに縫合糸内に形成され得る。これは、手術室に運ばれ得る手持ちの機器の使用を必要とする。
【0004】
ループを形成するための理由とは無関係に、縫合糸内にループが形成される場合、接着剤を用いようと、熱を用いようと、超音波エネルギーを用いようと、2本の縫合糸の部分が重なる場所で、縫合糸の直径は2倍となる。縫合糸のループが組織への固定に使用される場合、ループをつくるために縫合糸の直径が2倍となることで、組織を通してループを引っ張るために必要とされる力の量が増し得る。この縫合糸に加えられる増加した力は、縫合される組織に対して、裂け目、または、他の不必要な外傷を生じ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえ、テーパーカットを備えるループ付き縫合糸、およびこのような縫合糸の製造方法を提供することが有益である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
要旨
ループ付き縫合糸が提供される。縫合糸は、近位端および遠位端を備える細長本体と、細長本体の遠位端上に一体に形成されたループとを備える。このループの少なくとも一部は形状記憶ポリマー材料を含む。この形状記憶ポリマー材料は、一時的構成から永続的構成へと転移するときに、半径方向に膨張するか、または、軸方向に短縮するように構成され得る。半径方向の膨張および/または軸方向の短縮は、ループの収縮を引き起こし得る。形状記憶ポリマー材料は、一時的構成から永続的構成へと転移するときに、半径方向に収縮するか、または、軸方向に伸長するように構成され得る。形状記憶ポリマー材料の半径方向の収縮および軸方向の伸長は、ループの拡大を引き起こし得る。
【0007】
ある実施形態では、縫合糸のループは、形状記憶ポリマー材料が一時的構成にあるとき、実質的に球根状であり、そして、形状記憶ポリマー材料が一時的構成から永続的構成へと転移するとき、実質的に平らになる。ある実施形態では、形状記憶ポリマー材料は、一時的構成から永続的構成への転移の間にループが広がるように構成され得る。
【0008】
本明細書において開示される実施形態のいずれか1つはさらに、棘、フック、ラッチ、突起部、葉(leaf)、歯および/またはこれらの組合せのような複数の表面特徴を備え得る。この表面特徴が形状記憶ポリマーを含み得る。
【0009】
また、ループ付き縫合糸の使用方法が提供される。この方法は、細長本体と、細長本体の遠位端上に形成されたループとを備える縫合糸を提供する工程であって、ループの少なくとも一部が形状記憶ポリマー材料から形成される、工程;細長本体の近位端を組織内に挿入する工程;組織を通して細長本体を引っ張る工程;ループを通して細長本体の近位端を受け取る工程;および形状記憶ポリマー材料の転移を実施する工程を包含する。
【0010】
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
【0011】
(項目1) 近位端および遠位端を備える細長本体と;
該細長本体の該遠位端上に一体に形成されたループと
を備える縫合糸であって、該ループの少なくとも一部が、形状記憶ポリマー材料を含む、縫合糸。
【0012】
(項目2) 前記形状記憶ポリマー材料が、一時的構成から永続的構成へと転移するときに、半径方向の膨張および軸方向の短縮の少なくとも一方を行うように構成される、上記項目に記載の縫合糸。
【0013】
(項目3) 前記半径方向の膨張および軸方向の短縮の少なくとも一方が、前記ループの収縮を引き起こす、上記項目のいずれかに記載の縫合糸。
【0014】
(項目4) 前記形状記憶ポリマー材料が、一時的構成から永続的構成へと転移するときに、半径方向の収縮および軸方向の伸長の少なくとも一方を行うように構成される、上記項目のいずれかに記載の縫合糸。
【0015】
(項目5) 前記半径方向の収縮および軸方向の伸長の少なくとも一方が、前記ループの膨張を引き起こす、上記項目のいずれかに記載の縫合糸。
【0016】
(項目6) 前記形状記憶ポリマー材料が一時的構成にあるとき、前記ループが実質的に球根状である、上記項目のいずれかに記載の縫合糸。
【0017】
(項目7) 前記形状記憶ポリマー材料が一時的構成から永続的構成へと転移するとき、前記ループが実質的に平らな形状である、上記項目のいずれかに記載の縫合糸。
【0018】
(項目8) 前記形状記憶ポリマー材料は、前記一時的構成から永続的構成への転移の間に前記ループが平らになるように構成される、上記項目のいずれかに記載の縫合糸。
【0019】
(項目9) 前記形状記憶ポリマー材料は、前記一時的構成から永続的構成への転移の間に前記ループが広がるように構成される、上記項目のいずれかに記載の縫合糸。
【0020】
(項目10) 前記形状記憶ポリマーが、分解性材料、非分解性材料およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のいずれかに記載の縫合糸。
【0021】
(項目11) 前記形状記憶ポリマーが、ポリオレフィン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリオレフィンコポリマー、フッ素化ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアミン、ポリイミン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリブタエステル、ポリウレタン、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ハロゲン化ビニルポリマーおよびハロゲン化ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリハロゲン化ビニリデン、ポリクロロフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアリールエーテルケトン、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族、ポリビニルエステル、ビニルモノマーのコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリホスファジン、ポリイミド、エポキシ樹脂、アラミド、レーヨン、スパンデックス、シリコーン、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される非分解性材料を含有する、上記項目のいずれかに記載の縫合糸。
【0022】
(項目12) 前記形状記憶ポリマーが、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリアミン、ポリアルキレンオキサレート、ポリ(酸無水物)、ポリアミドエステル、コポリ(エーテル−エステル)、ポリ(カーボネート)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリイミドカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリホスファゼン、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリウレタン、ポリマー薬物、生物学的に修飾された生体吸収性ポリマー、およびこれらのコポリマー、ホモポリマー、ならびに組み合わせからなる群より選択される生体吸収性材料を含有する、上記項目のいずれかに記載の縫合糸。
【0023】
(項目13) 前記形状記憶ポリマーが、ラクチド、グリコリド、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、2,5−ジケトモルホリン、ピバロラクトン、α,α−ジエチルプロピオラクトン、エチレンカーボネート、エチレンオキサレート、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オンの、ホモポリマーおよびコポリマー、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される脂肪族ポリエステルを含有する、上記項目のいずれかに記載の縫合糸。
【0024】
(項目14) 前記形状記憶ポリマーが、ポリ(アミノ酸)、コラーゲン、エラスチン、フィブリン、フィブリノゲン、絹、アルブミン、ラミニンおよびフィブロネクチンの配列を含むペプチド、ヒアルロン酸、デキストラン、アルギネート、キチン、キトサン、セルロース、グリコサミノグリカン、ガット、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、三酢酸セルロース、硫酸セルロースナトリウム塩、ニトロセルロース、キトサン、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される生分解性ポリマーを含有する、上記項目のいずれかに記載の縫合糸。
【0025】
(項目15) 前記形状記憶ポリマーが、オリゴ(ε−カプロラクトン)ジメタクリレート、オリゴ(ε−カプロラクトン)ブチルアクリレート、(アクリル酸n−ブチル)、オリゴ(ε−カプロラクトン)ジオール/オリゴ(p−ジオキサノン)ジオールコポリマー、ポリカプロラクトンジメタクリレートポリ(アクリル酸ブチル)ブレンド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマーを含有する、上記項目のいずれかに記載の縫合糸。
【0026】
(項目16) 前記形状記憶ポリマーが、ポリジオキサノンとポリラクチドとのブロックコポリマーを含有する、上記項目のいずれかに記載の縫合糸。
【0027】
(項目17) 前記ポリジオキサノンが、前記コポリマーの約5mol%〜約20mol%の量で存在し、そして前記ポリラクチドが、該コポリマーの約80mol%〜約95mol%の量で存在する、上記項目のいずれかに記載の縫合糸。
【0028】
(項目18) 前記形状記憶ポリマーが、トリメチレンカーボネートとポリラクチドとのブロックコポリマーを含有する、上記項目のいずれかに記載の縫合糸。
【0029】
(項目19) 前記トリメチレンカーボネートが、前記コポリマーの約5mol%〜約20mol%の量で存在し、そして前記ポリラクチドが、該コポリマーの約80mol%〜約85mol%の量で存在する、上記項目のいずれかに記載の縫合糸。
【0030】
(項目20) 棘、フック、ラッチ、突起部、葉、歯およびこれらの組合せからなる群より選択される複数の表面特徴をさらに備える、上記項目のいずれかに記載の縫合糸。
【0031】
(項目21) 前記表面特徴が形状記憶ポリマーを含む、上記項目のいずれかに記載の縫合糸。
【0032】
(項目22A) ループ付き縫合糸であって、以下:
細長本体と;
該細長本体の遠位端上に形成されたループであって、該ループの少なくとも一部が形状記憶ポリマー材料から形成される、ループと;
組織内に挿入されるように構成された該細長本体の近位端と;
を備え、
該細長本体は該組織を通して引っ張られるように構成され;
該細長本体の該近位端は該ループを通して受け取られるように構成され;
該形状記憶ポリマー材料は転移させるように構成される、ループ付き縫合糸。
【0033】
(項目23A) 前記形状記憶ポリマー材料の転移が、エネルギーを加える工程、熱を加える工程、化学物質を加える工程、活性化物質を加える工程、およびこれらの組合せからなる群より選択される方法によって実施されるように構成される、上記項目のいずれかに記載のループ付き縫合糸。
【0034】
(項目24A) 前記形状記憶ポリマー材料の転移が、前記ループを収縮させる、上記項目のいずれかに記載のループ付き縫合糸。
【0035】
(項目25A) 前記形状記憶ポリマー材料の転移が、前記ループを拡大させる、上記項目のいずれかに記載のループ付き縫合糸。
【0036】
(項目26A) 前記形状記憶ポリマー材料の転移が、前記ループを平らにさせる、上記項目のいずれかに記載のループ付き縫合糸。
【0037】
(項目27A) 前記形状記憶ポリマー材料の転移が、前記ループをより球根状にさせる、上記項目のいずれかに記載のループ付き縫合糸。
【0038】
(項目22B) ループ付き縫合糸の使用方法であって、該方法は、以下:
細長本体と、該細長本体の遠位端上に形成されたループとを備える縫合糸を提供する工程であって、該ループの少なくとも一部が形状記憶ポリマー材料から形成される、工程;
該細長本体の近位端を組織内に挿入する工程;
該組織を通して該細長本体を引っ張る工程;
該ループを通して該細長本体の該近位端を受け取る工程;および
該形状記憶ポリマー材料の転移を実施する工程
を包含する、方法。
【0039】
(項目23B) 前記形状記憶ポリマー材料の転移を実施する工程が、エネルギーを加える工程、熱を加える工程、化学物質を加える工程、活性化物質を加える工程、およびこれらの組合せからなる群より選択される、上記項目に記載の方法。
【0040】
(項目24B) 前記形状記憶ポリマー材料の転移を実施する工程が、前記ループを収縮させる、上記項目のいずれかに記載の方法。
【0041】
(項目25B) 前記形状記憶ポリマー材料の転移を実施する工程が、前記ループを膨張させる、上記項目のいずれかに記載の方法。
【0042】
(項目26B) 前記形状記憶ポリマー材料の転移を実施する工程が、前記ループを平らにさせる、上記項目のいずれかに記載の方法。
【0043】
(項目27B) 前記形状記憶ポリマー材料の転移を実施する工程が、前記ループをより球根状にさせる、上記項目のいずれかに記載の方法。
【0044】
(摘要)
テーパー状の端部を有するループを備える縫合糸が提供される。この縫合糸は、近位端および遠位端を備える細長本体と、細長本体の遠位端上に一体に形成されたループとを備える。このループの少なくとも一部は形状記憶ポリマー材料を含む。
【発明の効果】
【0045】
本発明により、テーパーカットを備えるループ付き縫合糸、およびこのような縫合糸の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本開示の実施形態を示し、そして、上に提供される開示の一般的な説明、および以下に提供される実施形態の詳細な説明と共に、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【図1】図1は、本開示の一実施形態に従うループ付き縫合糸の側面図である。
【図1A】図1Aは、本開示の別の実施形態に従うループ付き縫合糸の側面図である。
【図2】図2は、図1の線2−2に沿ってとったループ付き縫合糸の断面端面図である。
【図3】図3は、図1の部分3の拡大した側面図である。
【図4】図4A〜4Fは、円形(図4A)、楕円形(図4B)、矩形(正方形)(図4C)、フラットな形(図4D)、八角形(図4E)および矩形(図4F)の断面輪郭を有する糸の斜視図である。
【図5】図5A〜5Cは、本開示のループ付き縫合糸の代替的な実施形態の図である。
【図6】図6A〜6Cは、本開示のループ付き縫合糸のなお別の実施形態の図である。
【図7】図7A〜7Cは、本開示のループ付き縫合糸のさらに別の実施形態の図である。
【図8】図8〜8Bは、本開示のなお別の実施形態に従うループ付き縫合糸の、第一の構成(図8)および第二の構成(図8Aおよび8B)における側面図である。
【図9】図9〜9Bは、本開示のなお別の実施形態に従うループ付き縫合糸の、第一の構成(図9)および第二の構成(図9Aおよび9B)における側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
詳細な説明
図1に示されるように、本開示による縫合糸の実施形態は、一般にループ付き縫合糸10として示される。縫合糸10は、糸11から形成されており、その遠位端10bにループ12を備える。円形の断面幾何学形状を有するように示されるが、糸11の断面幾何学形状は、任意の適切な形状であり得る。例えば、図4A〜4Fは、糸11の種々の断面幾何学形状の代替的な実施形態(すなわち、円形(図4A)、楕円形(図4B)、正方形(図4C)、フラットな形(図4D)、八角形(図4E)および矩形(図4F))の断面図を示す。
【0048】
糸11は、例えば、分解性材料、非分解性材料、天然材料、合成材料、形状記憶材料、金属、合金およびこれらの組み合わせといった、当業者の知識の範囲内のあらゆる材料から形成され得る。
【0049】
より具体的には、糸11は、ポリエステル、ポリオルトエステル、ポリマー薬物、ポリヒドロキシブチレート、ラクトン、タンパク質、腸線、コラーゲン、カーボネート、これらのホモポリマー、これらのコポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される分解性材料から形成され得る。他の実施形態では、糸11を形成するために利用され得る適切な分解性材料としては、天然のコラーゲン材料または合成樹脂(トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネートなどのようなアルキレンカーボネート;カプロラクトン;ジオキサノン;グリコール酸;乳酸;これらのホモポリマー;これらのコポリマー;およびこれらの組み合わせから誘導されるものが挙げられる)が挙げられる。いくつかの実施形態では、グリコリドおよびラクチドベースのポリエステル、特に、グリコリドとラクチドとのコポリマーが、糸11を形成するために利用され得る。
【0050】
なお他の実施形態において、糸11を形成するために適切な材料としては、グリコール酸、乳酸、グリコリド、ラクチド、ジオキサノン、トリメチレンカプロラクトン、および上記のものの様々な組み合わせを有する、ホモポリマー、コポリマー、および/またはブレンドが挙げられる。例えば、いくつかの実施形態において、グリコリドとトリメチレンカーボネートとのコポリマーが糸11を形成するために使用され得る。このようなコポリマーを形成するための方法は、当業者の知識の範囲内であり、そして例えば、米国特許第4,300,565号および同第5,324,307号(これらの各々の全開示は、本明細書中に参考として援用される)に開示される方法が挙げられる。グリコリドとトリメチレンカーボネートとの適切なコポリマーは、このコポリマーの約60重量%〜約75重量%、ある実施形態において、このコポリマーの約65重量%〜約70重量%の量のグリコリドを有し得、トリメチレンカーボネートは、このコポリマーの約25重量%〜約40重量%、ある実施形態において、このコポリマーの約30重量%〜約35重量%の量で存在する。
【0051】
糸11を形成するための他の適切な材料としては、ラクチドとグリコリドとのコポリマーが挙げられ、ラクチドは、このコポリマーの約6重量%〜約12重量%の量で存在し、そしてグリコリドは、このコポリマーの約88重量%〜約94重量%の量で存在する。いくつかの実施形態において、ラクチドは、このコポリマーの約7重量%〜約11重量%で存在し、グリコリドは、このコポリマーの約89重量%〜約98重量%の量で存在する。いくつかの他の実施形態において、ラクチドは、このコポリマーの約9重量%の量で存在し、グリコリドは、このコポリマーの約91重量%の量で存在する。
【0052】
いくつかの実施形態において、糸11を形成するのに適切な材料は、グリコリドと、ジオキサノンと、トリメチレンカーボネートとのコポリマーを含有する。このような材料としては、例えば、このコポリマーの約55重量%〜約65重量%、ある実施形態において、このコポリマーの約58重量%〜約62重量%、いくつかの実施形態において、このコポリマーの約60重量%の量のグリコリド;このコポリマーの約10重量%〜約18重量%、ある実施形態において、このコポリマーの約12重量%〜約16重量%、いくつかの実施形態において、このコポリマーの約14重量%の量のジオキサノン;およびこのコポリマーの約17重量%〜約35重量%、ある実施形態において、このコポリマーの約22重量%〜約30重量%、いくつかの実施形態において、このコポリマーの約26重量%の量のトリメチレンカーボネートを有するコポリマーが挙げられ得る。
【0053】
糸11を形成するための他の適切な材料としては、グリコリドと、ラクチドと、トリメチレンカーボネートと、ε−カプロラクトンとのコポリマーが挙げられる。このような材料としては、例えば、このコポリマーの約14重量%〜約20重量%、ある実施形態において、このコポリマーの約16重量%〜約18重量%、いくつかの実施形態において、このコポリマーの約17重量%の量のε−カプロラクトン;このコポリマーの約4重量%〜約10重量%、ある実施形態において、このコポリマーの約6重量%〜約8重量%、いくつかの実施形態において、このコポリマーの約7重量%の量のラクチド;このコポリマーの約4重量%〜約10重量%、ある実施形態において、このコポリマーの約6重量%〜約8重量%、いくつかの実施形態において、このコポリマーの約7重量%の量のトリメチレンカーボネート;およびこのコポリマーの約60重量%〜約78重量%、ある実施形態において、このコポリマーの約66重量%〜約72重量%、いくつかの実施形態において、このコポリマーの約69重量%の量のグリコリドを有するランダムコポリマーが挙げられ得る。
【0054】
他の実施形態において、糸11は、非分解性材料から形成され得る。このような材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレンならびにこれらを含有するコポリマーおよびブレンドを含むポリオレフィン;ポリテトラフルオロエチレン;ポリエーテル−エステル(例えば、ポリブタエステル);絹;綿;麻;カーボンファイバーなどが挙げられる。ポリプロピレンは、アイソタクチックポリプロピレン、あるいは、アイソタクチックポリプロピレンと、シンジオタクチックまたはアタクチックポリプロピレンとの混合物であり得る。
【0055】
いくつかの実施形態において、糸11は、形状記憶材料から形成される。形状記憶材料は、永続的形状および一時的形状を有する。一般に、一時的形状は、糸11を患者の体内に導入する外科医の能力を高める構成のものである。熱または光のようなエネルギーを加えた際にインビボで呈される永続的形状は、組織内での糸11の保持を高める構成のものである。
【0056】
形状記憶ポリマーとは、糸11などの物体に形成される場合に、機械的な力により一時的に変形し得、次いで、エネルギーにより刺激を受ける場合に元の形状に復帰し得る、ポリマーのクラスである。形状記憶ポリマーは、それらの微細構造中の少なくとも二相の分離した微小ドメインによって、形状記憶特性を示す。第一のドメインは、硬い、共有架橋構造または他の様式で鎖の動きが制限された構造からなり、この構造は、その物体の元の形状を保持するためのアンカーとして働く。第二のドメインは、切り替え可能な柔らかい構造であり、この構造は、変形し得、次いで固定されて、二次形状または一時的形状を得る。
【0057】
熱で刺激される形状記憶ポリマーの場合、転移温度(TTrans)が存在し、この温度において、加熱中に形状変化が起こる。従って、これらの形状記憶ポリマーは、分子レベルで材料特性を変更すること、および加工パラメータを変化させることによって、調整され得る。物体の一次形状は、ソフトドメインが可撓性でありかつハードドメインが完全には形成されない温度で、熱および圧力を用いて形成され得る。次いで、この物体は、ハードドメインがより完全に形成され、そしてソフトドメインが硬くなるように、冷却され得る。二次形状または一時的形状は、この物体を機械的に変形させることにより形成され得、この変形は、TTransに近い温度またはより高温で、最も容易に達成される。次いで、この物体に導入される機械的応力は、この物体をTTrans未満の温度まで冷却して、ソフトセグメントを硬い状態に固化させることによって、適所にロックされる。一旦、この物体がTTransより高温であるTまで加熱されると、そのソフトセグメントが軟化し、そして弛緩してその元の構成に戻り、そしてその物体は、その一次形状または元の形状(本明細書中で時々、その永続的形状と称される)まで戻る。形状記憶材料がその永続的形状を回復する温度は、ある実施形態において、その永続温度(Tperm)と称され得る。
【0058】
糸11を構成するために使用され得る、形状記憶特性を有するポリマーとしては、例えば、合成材料、天然材料(例えば、生物学的材料)およびこれらの組み合わせが挙げられ、これらの材料は、生分解性および/または非生分解性であり得る。本明細書中で使用される場合、用語「生分解性」は、生体吸収性材料と生体再吸収性材料との両方を包含する。「生分解性」とは、その物質が身体条件下で分解するかまたは構造的一体性を失うか(例えば、酵素分解、加水分解)あるいは身体内の生理学的条件下で(物理的もしくは化学的に)分解(例えば、溶解)し、その結果、その分解生成物が身体により排出可能または吸収可能になることを意味する。
【0059】
糸11を形成するために使用され得る適切な非分解性材料としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン(超高分子量ポリエチレンが挙げられる)およびポリプロピレン(アタクチック、アイソタクチック、シンジオタクチック、およびこれらのブレンドが挙げられる));ポリエチレングリコール;エチレンオキシド;超高分子量ポリエチレン;ポリエチレンとポリプロピレンとのコポリマー;ポリイソブチレンとエチレン−αオレフィンとのコポリマー;フッ素化ポリオレフィン(例えば、ポリフルオロエチレン、ポリフルオロプロピレン、フルオロPEG、およびポリテトラフルオロエチレン);ポリアミド(例えば、ナイロン、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン11、ナイロン12、およびポリカプロラクタム);ポリアミン;ポリイミン;ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、およびポリブチレンテレフタレート);ポリエーテル;ポリテトラメチレンエーテルグリコール;ポリブタエステル、(ブチレンテレフタレートとポリテトラメチレンエーテルグリコールとのコポリマーが挙げられる);1,4−ブタンジオール;ポリウレタン;アクリルポリマー;メタクリル類;ハロゲン化ビニルポリマーおよびコポリマー(例えば、ポリ塩化ビニル);ポリビニルアルコール;ポリビニルエーテル(例えば、ポリビニルメチルエーテル);ポリハロゲン化ビニリデン(例えば、ポリフッ化ビニリデンおよびポリ塩化ビニリデン);ポリクロロフルオロエチレン;ポリアクリロニトリル;ポリアリールエーテルケトン;ポリビニルケトン;ポリビニル芳香族(例えば、ポリスチレン);ポリビニルエステル(例えば、ポリ酢酸ビニル);ビニルモノマー同士のコポリマーおよびビニルモノマーとオレフィンとのコポリマー(例えば、エチレン−メタクリル酸メチルコポリマー);アクリロニトリル−スチレンコポリマー;ABS樹脂;エチレン−酢酸ビニルコポリマー;アルキド樹脂;ポリカーボネート;ポリオキシメチレン;ポリホスファジン;ポリイミド;エポキシ樹脂;アラミド;レーヨン;レーヨン−トリアセテート;スパンデックス;シリコーン;ならびにこれらのコポリマーおよび組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、非生分解性のポリマーおよびモノマーが、互いに組み合わせられ得る。
【0060】
糸11を形成するための適切な生体吸収性ポリマーとしては、脂肪族ポリエステル;ポリアミド;ポリアミン;ポリアルキレンオキサレート;ポリ(酸無水物);ポリアミドエステル;コポリ(エーテル−エステル);ポリ(カーボネート)(チロシン由来のカーボネートが挙げられる);ポリ(ヒドロキシアルカノエート)(例えば、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)、およびポリ(ヒドロキシブチレート));ポリイミドカーボネート;ポリ(イミノカーボネート)(例えば、ポリ(ビスフェノールA−イミノカーボネート)など);ポリオルトエステル;ポリオキサエステル(アミノ基を含むものが挙げられる);ポリホスファゼン;ポリ(プロピレンフマレート);ポリウレタン;ポリマー薬物(例えば、ポリジフルニソール、ポリアスピリン、およびタンパク質治療剤);生物学的に修飾された(例えば、タンパク質、ペプチド)生体吸収性ポリマー;およびこれらのコポリマー、ブロックコポリマー、ホモポリマー、ブレンド、ならびに組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
糸11を形成するための適切な脂肪族ポリエステルとしては、ラクチド(乳酸、D−ラクチド、L−ラクチドおよびメソラクチドが挙げられる);グリコリド(グリコール酸が挙げられる);ε−カプロラクトン;p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン);トリメチレンカーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン);トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体;δ−バレロラクトン;β−ブチロラクトン;γ−ブチロラクトン;ε−デカラクトン;ヒドロキシブチレート;ヒドロキシバレレート;1,4−ジオキセパン−2−オン(その二量体である1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオンが挙げられる);1,5−ジオキセパン−2−オン;6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン;2,5−ジケトモルホリン;ピバロラクトン;α,α−ジエチルプロピオラクトン;エチレンカーボネート;エチレンオキサレート;3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン;3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン;6,8−ジオキサビシクロオクタン(dioxabicycloctane)−7−オンのホモポリマーおよびコポリマー;ならびにこれらのポリマーブレンドおよびコポリマーが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0062】
糸11を形成するための他の適切な生分解性ポリマーとしては、ポリ(アミノ酸)(コラーゲン(I、IIおよびIII)、エラスチン、フィブリン、フィブリノゲン、絹、およびアルブミンなどのタンパク質が挙げられる);ラミニンおよびフィブロネクチンの配列を含むペプチド(RGD);多糖類(例えば、ヒアルロン酸(HA)、デキストラン、アルギネート、キチン、キトサン、およびセルロース);グリコサミノグリカン;ガット;ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。コラーゲンは、本明細書中で使用される場合、天然コラーゲン(例えば、動物由来のコラーゲン、ゼラチン化コラーゲン)、または合成コラーゲン(例えば、ヒト組換えコラーゲンもしくは細菌組換えコラーゲン)を包含する。
【0063】
さらに、合成により修飾された天然ポリマー(例えば、セルロース誘導体および多糖類誘導体(アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、およびキトサンが挙げられる))が糸11を形成するために利用され得る。適切なセルロース誘導体の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、三酢酸セルロース、および硫酸セルロースナトリウム塩が挙げられる。これらは本明細書中でまとめて、ある実施形態において、「セルロース」と称され得る。
【0064】
いくつかの実施形態において、糸11は、分解性材料と非分解性材料との両方の組み合わせを含み得る。使用される分解性材料および/または非分解性材料は、形状記憶特徴を有し得る。
【0065】
他の実施形態において、糸11を形成するための形状記憶ポリマーは、異なる熱特性を有する2つの成分のコポリマー(例えば、オリゴ(ε−カプロラクトン)ジメタクリレートとアクリル酸ブチル(ポリ(ε−カプロラクトン)ジメタクリレート−ポリ(アクリル酸n−ブチル)が挙げられる)、またはジオールエステルとエーテル−エステルジオール(例えば、オリゴ(ε−カプロラクトン)ジオール/オリゴ(p−ジオキサノン)ジオールコポリマー))である。これらのマルチブロックオリゴ(ε−カプロラクトン)ジオール/オリゴ(p−ジオキサノン)ジオールコポリマーは、線状の鎖に一緒に連結された2つのブロックセグメント(すなわち、「ハード」セグメントおよび「スイッチ」セグメント)を有する。このような材料は、例えば、Lendlein,「Shape Memory Polymers−Biodegradable Sutures」,Materials World,第10巻,第7号,29−30頁(2002年7月)に開示されており、その全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0066】
なお他の実施形態において、糸11は、生体吸収性材料のブレンドから形成され、これらとしては、乳酸および/またはグリコール酸、これらのホモポリマーまたはこれらのコポリマーとブレンドされたウレタン、ならびにカプロラクトンとブレンドされたアクリレート(例えば、ポリカプロラクトンジメタクリレートポリ(アクリル酸ブチル)ブレンド)、ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
適切な形状記憶ポリマーならびにこれらを用いて永続的形状および一時的形状を形成するための手段の他の例は、Lendleinら,「Shape Memory Polymers as stimuli−sensitive implant materials」,Clinical Hemorheology and Microcirculation,32(2005)105−116、Lendleinら,「Biodegradable, Elastic Shape Memory Polymers for Potential Biomedical Applications」,Science,第269巻(2002)1673−1676、ならびにLendleinら,「Shape−Memory Polymers」,Angew.Chem.Int.Ed.,41(2002)2035−2057に記載されており、これらの各々の全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0068】
以下の表1は、形状記憶効果を示し、かつ糸11を形成するために使用され得る組成物をさらに説明する。各組成物のブロックコポリマーは、アニーリングされたワイヤの形式であり、示されるソフトセグメントおよびハードセグメントを有し、ガラス転移温度(T)は、示差走査熱量分析により、TTransに等しいと測定された。
表1
【0069】
【表1】

【0070】
表1のコポリマーは、Tに近付く場合に部分的なシフトを起こし得、そしてTTransは、これらの材料が水溶液中にある場合に低下し得る。これらのポリマーは水の吸収およびバルク加水分解により分解するので、ポリマーマトリックスに浸入する水分子が可塑剤として働き得、乾燥空気中においてよりも低温で、ソフトセグメントを軟化させ得る。従って、水溶液中でTTrans低下を示すポリマーは、乾燥状態での温度偏差(例えば、輸送中および保存中)によって一時的形状を維持し得る。そして移植の際に、体温でその永続的形状に形状シフトし得る。
【0071】
従って、ある実施形態において、この形状記憶ポリマーは、ポリジオキサノンとポリラクチドとのブロックコポリマーを含有し得、このポリジオキサノンは、このコポリマーの約5mol%〜約20mol%、ある実施形態において、このコポリマーの約15mol%〜約19mol%の量で存在し、そしてこのポリラクチドは、このコポリマーの約80mol%〜約95mol%、ある実施形態において、このコポリマーの約81mol%〜約85mol%の量で存在する。他の実施形態において、この形状記憶ポリマーは、トリメチレンカーボネートとポリラクチドとのブロックコポリマーを含有し得、このトリメチレンカーボネートは、このコポリマーの約5mol%〜約20mol%、ある実施形態において、このコポリマーの約15mol%〜約19mol%の量で存在し、そしてこのポリラクチドは、このコポリマーの約80mol%〜約95mol%、ある実施形態において、このコポリマーの約81mol%〜約85mol%の量で存在し得る。
【0072】
Transは、ブロックセグメントのモル比、ポリマーの分子量、およびハードセグメントを形成させる時間を変化させることによって、調整され得ることが想定される。ある実施形態において、TTransは、種々の量のソフトセグメントドメインの低分子量オリゴマーを、このコポリマーにブレンドすることにより調整され得る。このようなオリゴマーは、ソフトドメインへと分かれ、TTransの下方シフトを起こすための可塑剤として働き得る。
【0073】
さらに、糸11を形成するコポリマーは、乳化剤、可溶化剤、湿潤剤、味改変剤、可塑剤、活性剤、水溶性不活性充填剤、防腐剤、緩衝剤、着色剤、および安定剤を含有し得る。この調合物への可塑剤の添加は、可撓性を改善し得る。可塑剤または可塑剤混合物は、ポリエチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、スクロース、コーンシロップ、フルクトース、ジオクチル−ナトリウムスルホスクシネート、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、1,2−プロピレングリコール、グリセロールのモノ酢酸エステル、ジ酢酸エステルもしくはトリ酢酸エステル、または天然ゴムであり得る。
【0074】
いくつかの実施形態において、結晶性分解性塩または鉱物が、このブロックコポリマー組成物に添加されて、形状記憶特性を改善し得るポリマー複合体を作製し得る。ポリラクチドホモポリマーおよび結晶性ヒドロキシアパタイトを使用するこのような複合体の例は、Zhengら,「Shape memory properties of poly (D,L−lactide/hydroxyapatite composites」,Biomaterials,27(2006)4288−4295に記載されており、その全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0075】
他の形状記憶材料(形状記憶金属およびニチノールなどの金属合金が挙げられる)もまた、糸11を形成するために使用され得る。
【0076】
ある実施形態において、成形プロセスが、糸11を製造するために利用され得る。プラスチック成形方法は、当業者の知識の範囲内であり、そして融解成形、溶液成形などが挙げられるが、これらに限定されない。射出成形、押し出し成形、圧縮成形および他の方法もまた、融解成形技術として使用され得る。一旦、適切な寸法および構成で鋳型に入れられると、糸11を形成するために使用されるポリマー材料は、適切な温度(永続温度(Tperm)と称され、この温度は、ある実施形態において、外科的縫合糸を形成するために利用される形状記憶ポリマー材料の融点であり得る)まで加熱され得る。この糸11の加熱は、例えば、約40℃〜約180℃、いくつかの実施形態において、約80℃〜約150℃が挙げられる適切な温度で、約2分間〜約60分間、他の実施形態において、約15分間〜約20分間の期間であり得、永続的な形状および寸法を与える。
【0077】
予め記憶された形状で成形された糸11および/またはエンドエフェクタ10の変形処理のための温度は、亀裂を生じることなく容易な変形を可能にする温度であり、形状記憶のために採用される温度(例えば、Tperm)を超えるべきではない。最初の形状記憶についてのTpermを超える温度での変形処理は、この物体に、新たな変形後の形状を記憶/プログラムさせ得る。所望の形状を有する糸11および/またはエンドエフェクタ10が形成された後に、この糸11および/またはエンドエフェクタ10は、Ttransより高温で変形させられて、代替の一時的構成を得ることができる。
【0078】
変形のために適切な温度は、利用される形状記憶ポリマーに依存して変動するが、一般に、そのポリマーの転移温度(Ttrans)より高温であり得るが、Tpermより低温であり得る。ある実施形態において、形状記憶ポリマーは、そのTpermから、より低い温度(Ttransより高温なままである)まで冷却され、そしてある実施形態においては手でおよび/または機械的手段によって、変形させられる。他の実施形態において、この外科用縫合糸は、室温(約20℃〜約25℃)で変形させられて、その一時的形状を得るが、この温度は、使用される特定のポリマーに依存して異なり得る。次いで、この外科用縫合糸は、この縫合糸を形成するために利用される材料のTtrans未満の温度まで冷却され得、この時点で、糸11は、使用の準備ができる。Ttransは通常、室温より高温であるので、いくつかの実施形態において、室温まで冷却することは、一時的形状でロックするために充分であり得る。
【0079】
変形が達成され得る様式に関して特定の制限は存在しない。変形は、手で達成されても、糸11および/またはエンドエフェクタ10に所望の一時的構成を提供するために選択された適切なデバイスによって達成されても、いずれでもよい。
【0080】
いくつかの実施形態において、糸11および/またはエンドエフェクタ10の形状をその一時的形状に維持するために、糸11は、永続的形状への転移を引き起こさない温度で保存されるべきである。ある実施形態において、糸11は、冷蔵庫で保存され得る。
【0081】
他の実施形態において、本開示の形状記憶ポリマー材料は、その永続的形状より直径が小さいかまたは大きい一時的形状に、圧縮または拡張され得る。以下にさらに詳細に考察されるように、この様式においては、ループ12は、所望される用途に依存して締められたり緩められたりする。
【0082】
このように調製された糸11は、エネルギーの付与の際に(例えば、加熱(患者の体内への配置、または規定された温度での外部熱の付与のいずれかによる加熱、特定の実施形態においては利用される形状記憶ポリマーのTtransより高温への加熱)の際に)、その永続的形状を回復する。糸11は、生体内で利用されるので、体熱(約37℃)での加熱が可能である。このような場合、形状プログラミングのための温度は、可能な限り、永続的形状の回復が非常にゆっくりと起こり得るように、低いべきである。ある実施形態において、永続的形状の回復は、組織への挿入の約1秒後〜約5秒後に起こり得る。
【0083】
しかし、いくつかの実施形態において、形状の回復を体温よりわずかに高い温度で起こす目的で、より高い形状記憶温度が望ましくあり得る。従って、いくつかの場合において、糸11を変形状態から解放して永続的形状を回復することは、加熱によって達成され得る。約30℃〜約50℃、ある実施形態において、約39℃〜約43℃の温度で加熱すると、その一時的形状が解放され得、そして永続的形状が回復され得る。加熱のための温度が高くなるほど、最初に記憶された形状の回復のための時間が短くなる。この加熱のための手段は、限定されない。加熱は、気体または液体の加熱媒体、加熱デバイス、超音波、電気的誘導などを使用することにより、達成され得る。もちろん、生体が関与する用途においては、火傷を引き起こさない加熱温度を利用するように注意が払われなければならない。液体加熱媒体の例としては、生理食塩水溶液、アルコール、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0084】
同様に、他の実施形態において、電気的に活性なポリマー(電気活性ポリマーとしてもまた公知であり、電気の印加の際に構成を変更し得る)が、糸11を形作るために利用され得る。電気活性ポリマーの適切な例としては、ポリ(アニリン)、置換ポリ(アニリン)、ポリカルバゾール、置換ポリカルバゾール、ポリインドール、ポリ(ピロール)、置換ポリ(ピロール)、ポリ(チオフェン)、置換ポリ(チオフェン)、ポリ(アセチレン)、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(エチレンジオキシピロール)、ポリ(p−フェニレンビニレン)など、または上記電気活性ポリマーのうちの少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。上記電気活性ポリマーのブレンドまたはコポリマーまたは複合体もまた、使用され得る。
【0085】
エネルギー(例えば、熱)の付与の際に形状記憶材料が起こし得る形状の変化と同様に、いくつかの実施形態において、電気活性ポリマーは、低電圧電源(例えば、バッテリ)からの電気の印加の際に、形状変化を起こし得る。このような変化を起こすために印加され得る電気の適切な量は、利用される電気活性ポリマーと共に変動するが、約5ボルト〜約30ボルト、他の実施形態において、約10ボルト〜約20ボルトであり得る。電気の印加の結果として、電気活性ポリマーから構成された糸11の形状が変化する。
【0086】
電気活性ポリマーは、永続的形状および一時的形状との用語が形状記憶ポリマーに関連して上に記載された場合と同様の永続的形状および一時的形状を有さないが、本明細書中で使用される場合、用語「永続的形状」は、電気活性ポリマーに適用される場合、電気活性ポリマーが電気の印加の際に採用する形状を意味し、そして用語「一時的形状」は、電気活性ポリマーに適用される場合、電気活性ポリマーが電気の非存在下で採用する形状を意味する。
【0087】
本開示の縫合糸を形成するために使用されるフィラメントは、当業者の知識の範囲内である任意の技術(例えば、押し出し、成形および/または溶媒キャスティング)を使用して形成され得る。
【0088】
ある実施形態において、本開示の縫合糸は、1つより多くのフィラメントから作製されたヤーンを含み得、これらのフィラメントは、同じ材料または異なる材料の複数のフィラメントを含み得る。
【0089】
本明細書中で使用される場合、用語「繊維」、「フィラメント」および「ヤーン」の各々は、縫合糸を全体的にかまたは部分的に構成するために使用され得る。用語「繊維」は、その文脈において、一般に、その直径または幅よりおよそ3桁大きい長さを有する、天然構造体または合成構造体を指定するために使用される。用語「フィラメント」は、代表的に、無限または極端な長さの「繊維」を記載するために使用され、そして「ヤーン」は、一般的な用語として、編成、製織、編組または他の様式での織り込みに対して適切な形態の、撚糸または非撚糸の「繊維」または「フィラメント」の連続的なストランドに対して使用される。
【0090】
ある実施形態において、本開示の縫合糸は、コア/シース構成を有し得、繊維は、コア/シース構成を有し得、ヤーンは、コア/シース構成を有し得、またはこれらの両方である。本明細書中に記載される任意の材料(上記形状記憶材料を含む)が、コアもしくはシース、またはこれらの両方を形成するために利用され得る。
【0091】
本開示の縫合糸は、モノフィラメントであってもマルチフィラメント(例えば、編組されたもの)であってもよい。これらの適切な材料から縫合糸を作製するための方法は、当業者の知識の範囲内である(例えば、押し出しおよび成形)。これらのフィラメントは、当業者の知識の範囲内である任意の技術(例えば、混紡、撚糸、編組、製織、絡ませおよび編成)を使用して組み合わせられて、マルチフィラメント縫合糸を作製し得る。例えば、フィラメントが組み合わせられてヤーンを形成し得るか、またはこれらのフィラメントが編組され得る。別の例において、フィラメントが組み合わせられてヤーンを形成し得、次いで、これらのマルチフィラメントヤーンが編組され得る。本開示を読む当業者は、フィラメントが組み合わせられ得る他の方法を予測する。繊維はまた、組み合わせられて、不織マルチフィラメントの大直径縫合糸を製造し得る。特定の実施形態において、本開示による縫合糸を形成する際に有用なマルチフィラメント構造体は、編組により製造され得る。編組は、当業者の知識の範囲内である任意の方法によりなされ得る。例えば、縫合糸および他の医療デバイスのための編組構成物は、米国特許第5,019,093号;同第5,059,213号;同第5,133,738号;同第5,181,923号;同第5,226,912号;同第5,261,886号;同第5,306,289号;同第5,318,575号;同第5,370,031号;同第5,383,387号;同第5,662,682号;同第5,667,528号;および同第6,203,564号に記載されており、これらの各々の全開示は、本明細書中に参考として援用される。さらに、この縫合糸は、モノフィラメントである部分およびマルチフィラメントである部分を備え得る。
【0092】
一旦、この縫合糸が構成されると、この縫合糸は、当業者の知識の範囲内である任意の手段によって滅菌され得る。
【0093】
治療薬は、糸11とともに利用され得る(例えば、治療薬でコーティングされるか、または、治療薬が含浸される)。治療薬はときおり、本明細書において生物活性因子とも称され、以下に挙げられるが、これに限定されない。医薬品、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ポリサッカライド、ムテイン、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン(例えば、リンフォカイン、モノカイン、ケモカイン)、血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(1〜18)、インターフェロン(β−IFN、α−IFNおよびγ−IFN)、エリトロポイエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF)、インスリン、抗腫瘍薬および腫瘍抑制薬、血液タンパク質、フィブリン、トロンビン、フィブリノゲン、合成トロンビン、合成フィブリン、合成フィブリノゲン、ゴナドトロピン(例えば、FSH、LH、CG、など)、ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば、成長ホルモン、黄体形成ホルモン放出因子)、ワクチン(例えば、腫瘍性抗原、細菌性抗原およびウィルス性抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;成長因子(例えば、神経発育因子、インスリン様成長因子);骨形成タンパク質(bone morphogenic proteins)、TGF−B、タンパク質阻害剤、タンパク質アンタゴニスト、およびタンパク質アゴニスト;核酸、例えばアンチセンス分子、DNA、RNA、RNAi;オリゴヌクレオチド;ポリヌクレオチド;細胞、ウィルス、およびリボザイム。
【0094】
いくつかの実施形態において、治療薬は以下の医薬品を少なくとも1つ含有し、医薬品の併用ならびに医薬品の他の形態(例えば、他の塩形態、遊離酸形態、遊離塩基形態、プロドラッグおよび水和物)を含有する:鎮痛薬/解熱薬(例えば、アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセンナトリウム、ブプレノルフィン、塩酸プロポキシフェン、プロポキシフェンナプシレート、塩酸メペリジン、塩酸ヒドロモルホン、モルヒネ、オキシコドン、コデイン、酒石酸水素ジヒドロコデイン、ペンタゾシン、酒石酸水素ヒドロコドン、レボルファノール、ジフルニサル、サリチル酸トロラミン、塩酸ナルブフィン、メフェナム酸、ブトルファノール、サリチル酸コリン、ブタルビタール(butalbital)、クエン酸フェニルトロキサミン、クエン酸ジフェンヒドラミン、メトトリメプラジン、塩酸シンナメドリン(cinnamedrine hydrochloride)、およびメプロバメート);ぜん息治療薬(例えば、ケトチフェンおよびトラキサノクス);抗生物質(例えば、ネオマイシン、ストレプトマイシン、クロラムフェニコール、セファロスポリン、アンピシリン、ペニシリン、テトラサイクリン、およびシプロフロキサシン);抗うつ薬(例えば、ネオパム、オキシペルチン、ドキセピン、アモキサピン、トラゾドン、アミトリプチリン、マプロチリン、フェネルジン、デシプラミン、ノルトリプチリン、トラニルシプロミン、フルオキセチン、ドキセピン、イミプラミン、イミプラミンパモエート、イソカルボキサジド、トリミプラミン、およびプロトリプチリン);抗糖尿病薬(例えば、ビグアナイド類およびスルホニル尿素誘導体類);抗真菌薬(例えば、グリセオフルビン、ケトコナゾール、イトラコナゾール(itraconizole)、アンホテリシンB、ナイスタチン、およびカンジシジン);抗高血圧薬(例えば、プロプラノロール(propanolol)、プロパフェノン、オキシプレノロール(oxyprenolol)、ニフェジピン、レセルピン、トリメタファン、フェノキシベンザミン、塩酸パルジリン、デセルピジン、ジアゾキシド、硫酸グアネチジン(guanethidine monosulfate)、ミノキシジル、レシンナミン、ニトロプルシドナトリウム、インドジャボク(rauwolfia serpentina)、アルセロキシロン、およびフェントラミン);抗炎症薬(例えば、(非ステロイド性) インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ナプロキセン、イブプロフェン、ラミフェナゾン、ピロキシカム、(ステロイド性)コルチゾン、デキサメタゾン、フルアザコート、セレコキシブ、ロフェコキシブ、ヒドロコルチゾン、プレドニソロン、およびプレドニゾン);抗新生物薬(例えば、シクロホスファミド、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、メトトレキサート、フルオロウラシル、ゲムシタビン、カルボプラチン、カルムスチン(BCNU)、メチル−CCNU、シスプラチン、エトポシド、カンプトテシンおよびその誘導体、フェネステリン、パクリタキセルおよびその誘導体、ドセタキセルおよびその誘導体、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ゴセレリン、ロイプロリド、タモキシフェン、インターフェロンα、レチノイン酸(ATRA)、ナイトロジェンマスタードアルキル化剤、ならびにピポスルファン);抗不安薬(例えば、ロラゼパム、ブスピロン、プラゼパム、クロルジアゼポキシド、オキサゼパム、クロラゼペート二カリウム塩、ジアゼパム、ヒドロキシジンパモエート、塩酸ヒドロキシジン、アルプラゾラム、ドロペリドール、ハラゼパム、クロルメザノン、およびダントロレン);免疫抑制薬(例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、ミゾリビン、およびFK506(タクロリムス));抗片頭痛薬(例えば、エルゴタミン、プロプラノロール(propanolol)、ムチン酸イソメテプテン、およびジクロラルフェナゾン);鎮静薬/催眠薬(例えば、バルビツール酸類(例えば、ペントバルビタール、ペントバルビタールおよびセコバルビタール);およびベンゾジアゼピン(benzodiazapine)類(例えば、塩酸フルラゼパム、トリアゾラムおよびミダゾラム));抗狭心症薬(例えば、β−アドレナリン遮断薬;カルシウムチャネル遮断薬(例えば、ニフェジピン、およびジルチアゼム);およびニトレート類(例えば、ニトログリセリン、イソソルビドジニトレート、ペンタエリスリトールテトラニトレート(pentearythritol tetranitrate)、およびエリトリチルテトラニトレート);抗精神病薬(例えば、ハロペリドール、コハク酸ロクサピン、塩酸ロクサピン、チオリダジン、塩酸チオリダジン、チオチキセン、フルフェナジン、デカン酸フルフェナジン、エナント酸フルフェナジン、トリフルオペラジン、クロルプロマジン、パーフェナジン、クエン酸リチウム、およびプロクロルペラジン);抗躁病薬(例えば、炭酸リチウム);抗不整脈薬(例えば、ブレチリウムトシレート、エスモロール、ベラパミル、アミオダロン、エンカイニド、ジゴキシン、ジギトキシン、メキシレチン、リン酸ジソピラミド、プロカインアミド、硫酸キニジン、キニジングルコネート(quinidine gluconate)、キニジンポリガラクトロネート(quinidine polygalacturonate)、酢酸フレカイニド、トカイニド、およびリドカイン);抗関節炎薬(例えば、フェニルブタゾン、スリンダク、ペニシラミン(penicillanine)、サルサラート、ピロキシカム、アザチオプリン、インドメタシン、メクロフェナメート(meclofenamate)、金チオリンゴ酸ナトリウム、ケトプロフェン、オーラノフィン、金チオグルコース、およびトルメチンナトリウム);抗痛風薬(例えば、コルヒチン、およびアロプリノール);抗血液凝固薬(例えば、ヘパリン、ヘパリンナトリウム、およびワルファリンナトリウム);血栓溶解薬(例えば、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、およびアルテプラーゼ);抗線維素溶解薬(例えば、アミノカプロン酸);血液レオロジー剤(例えば、ペントキシフィリン);抗血小板薬(例えば、アスピリン);抗痙攣薬(例えば、バルプロ酸、ジバルプロックスナトリウム、フェニトイン、フェニトインナトリウム、クロナゼパム、プリミドン、フェノバルビタール(phenobarbitol)、カルバマゼピン、アモバルビタールナトリウム、メトスクシミド、メタルビタール、メフォバルビタール、メフェニトイン、フェンスクシミド、パラメタジオン、エトトイン、フェナセミド、セコバルビタールナトリウム(secobarbitol sodium)、クロラゼペート二カリウム塩、およびトリメタジオン);抗パーキンソン病薬(例えば、エトスクシミド);抗ヒスタミン薬/かゆみ止め薬(例えば、ヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、マレイン酸ブロムフェニルアミン、塩酸シプロヘプタジン、テルフェナジン、フマル酸クレマスチン、トリプロリジン、カルビノキサミン、ジフェニルピラリン、フェニンダミン、アザタジン、トリペレナミン、マレイン酸d−クロルフェニラミン、メトジラジン、および);カルシウム調節に有用な薬剤(例えば、カルシトニン、および副甲状腺ホルモン);抗菌薬(例えば、硫酸アミカシン、アズトレオナム、クロラムフェニコール、パルミチン酸クロラムフェニコール(chloramphenicol palirtate)、シプロフロキサシン、クリンダマイシン、パルミチン酸クリンダマイシン、リン酸クリンダマイシン、メトロニダゾール、塩酸メトロニダゾール、硫酸ゲンタマイシン、塩酸リンコマイシン、硫酸トブラマイシン、塩酸バンコマイシン、硫酸ポリミキシンB、コリスチンメタナトリウム、および硫酸コリスチン);抗ウィルス薬(例えば、インターフェロンα、βまたはγ、ジドブジン、塩酸アマンタジン、リバビリン、およびアシクロビル);抗微生物薬(例えば、セファロスポリン類(例えば、セファゾリンナトリウム、セフラジン、セファクロル、セファピリンナトリウム、セフチゾキシムナトリウム、セフォペラゾンナトリウム、セフォテタン二ナトリウム、セフロキシム アキセチル(cefuroxime e azotil)、セフォタキシムナトリウム、セファドロキシル一水和物、セファレキシン、セファロチンナトリウム、塩酸セファレキシン一水和物、セファマンドールナファート、セフォキシチンナトリウム、セフォニシドナトリウム、セフォラニド、セフトリアキソンナトリウム、セフタジジム、セファドロキシル、セフラジンおよびセフロキシムナトリウム);ペニシリン類(例えば、アンピシリン、アモキシシリン、ペニシリンGベンザチン、シクラシリン、アンピシリンナトリウム、ペニシリンGカリウム、ペニシリンVカリウム、ピペラシリンナトリウム、オキサシリンナトリウム、塩酸バカンピシリン、クロキサシリンナトリウム、チカルシリン二ナトリウム、アゾロシリンナトリウム、カルベニシリンインダニルナトリウム、ペニシリンGプロカイン、メチシリンナトリウムおよびナフシリンナトリウム);エリスロマイシン類(例えば、コハク酸エリスロマイシンエチル、エリスロマイシン、エリスロマイシンエストレート(erythromycin estolate)、ラクトビオン酸エリスロマイシン、ステアリン酸エリスロマイシンおよびコハク酸エリスロマイシンエチル);およびテトラサイクリン類(例えば、塩酸テトラサイクリン、塩酸ドキシサイクリン(doxycycline hyclate)および塩酸ミノサイクリン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン));抗感染症薬(例えば、GM−CSF);気管支拡張薬(例えば、交感神経作用薬(例えば、塩酸エピネフリン、硫酸メタプロテレノール、硫酸テルブタリン、イソエタリン、メシル酸イソエタリン、塩酸イソエタリン、硫酸アルブテロール、アルブテロール、ビトルテロルメシレート、塩酸イソプレテレノール、硫酸テルブタリン、酒石酸水素エピネフリン、硫酸メタプロテレノール、エピネフリンおよび酒石酸水素エピネフリン);抗コリン作用薬(例えば、臭化イプラトロピウム);キサンチン類(例えば、アミノフィリン、ジフィリン、硫酸メタプロテレノール、およびアミノフィリン);肥満細胞安定化剤(例えば、クロモリンナトリウム);吸入用コルチコステロイド(例えば、二プロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)および二プロピオン酸ベクロメタゾン一水和物);サルブタモール;臭化イプラトロピウム;ブデソニド;ケトチフェン;サルメテロール;キナフォエート;硫酸テルブタリン;トリアムシノロン;テオフィリン;ネドクロミルナトリウム;硫酸メタプロテレノール;アルブテロール;フルニソリド;プロピオン酸フルチカゾン);ステロイド化合物およびホルモン(例えば、アンドロゲン類(例えば、ダナゾール、テストステロンシピオネート、フルオキシメステロン、エチルテストステロン、エナント酸テストステロン、メチルテストステロン、フルオキシメステロン、およびテストステロンシピオネート);エストロゲン類(例えば、エストラジオール、エストロピペート(estropipate)、および抱合卵胞ホルモン);プロゲスチン類(例えば、酢酸メトキシプロゲステロン、および酢酸ノルエチンドロン);コルチコステロイド類(例えば、トリアムシノロン、ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、酢酸デキサメタゾン、プレドニゾン、酢酸プレドニゾロン懸濁物、トリアムシノロンアセトニド、メチルプレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、トリアムシノロンヘキサセトニド、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンシプロネート、プレドニゾロン、酢酸フルドロコルチゾン、酢酸パラメタゾン、プレドニゾロンテブテート、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、およびコハク酸

ヒドロコルチゾンナトリウム;および甲状腺ホルモン(例えば、レボチロキシンナトリウム);血糖降下薬(例えば、ヒトインスリン、精製ウシインスリン、精製ブタインスリン、グリブリド、クロルプロパミド、グリピジド、トルブタミド(tolbutarnide)、およびトラザミド);高脂質血症薬剤(例えば、クロフィブレート、デキストロサイロキシンナトリウム、プロブコール、プラバスタチン(pravastitin)、アトルバスタチン、ロバスタチン、およびナイアシン);タンパク質(例えば、DNase、アルギナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、およびリパーゼ);核酸(例えば、治療に有用な任意のタンパク質(例えば、本明細書に記載される任意のタンパク質が挙げられる)をコードするセンスまたはアンチセンス核酸);赤血球生成刺激に有用な薬剤(例えば、エリトロポイエチン);抗潰瘍/抗逆流剤(例えば、ファモチジン、シメチジン、および塩酸ラニチジン);制吐剤/鎮吐剤(例えば、塩酸メクリジン、ナビロン、プロクロルペラジン、ジメンヒドリネート、塩酸プロメタジン、チエチルペラジン、およびスコポラミン);ならびに本明細書中に記載される組成物および方法において有用な他の生理活性剤は以下が挙げられる。ミトーテン、ハロニトロソ尿素、アントラサイクリン(anthrocyclines)、エリプチシン(ellipticine)、セフトリアキソン、ケトコナゾール、セフタジジム、オキサプロジン、アルブテロール、バラシクロビル、尿性卵胞性刺激ホルモン、ファムシクロビル、フルタミド、エナラプリル、メトホルミン(mefformin)、イトラコナゾール、ブスピロン、ガバペンチン、ホシノプリル、トラマドール、アカルボース、ロラゼパム(lorazepan)、ホリトロピン、グリピジド、オメプラゾール、フルオキセチン、リシノプリル、トラマドール(tramsdol)、レボフロキサシン、ザフィルルーカスト、インターフェロン、成長ホルモン、インターロイキン、エリトロポイエチン、顆粒球刺激因子、ニザチジン、ブプロピオン、ペリンドプリル、エルブミン(erbumine)、アデノシン、アレンドロネート、アルプロスタジル、ベナゼプリル、ベタキソロール、硫酸ブレオマイシン、デキスフェンフルラミン、ジルチアゼム、フェンタニル、フレカイニド、ゲムシタビン、酢酸グラチラマー(glatiramer acetate)、グラニセトロン、ラミブジン、マンガフォジピール三ナトリウム(mangafodipir trisodium)、メサラミン、フマル酸メトプロロール、メトロニダゾール、ミグリトール、モエキシプリル(moexiprill)、モンテルカスト、酢酸オクトレオチド、オロパタジン、パリカルシトール(paricalcitol)、ソマトロピン、コハク酸スマトリプタン(sumatriptan succinate)、タクリン、ベラパミル、ナブメトン、トロバフロキサシン(trovafloxacin)、ドラセトロン(dolasetron)、ジドブジン、フィナステリド、トブラマイシン、イスラジピン、トルカポン(tolcapone)、エノキサパリン、フルコナゾール、ランソプラゾール、テルビナフィン、パミドロネート、ジダノシン、ジクロフェナク、シサプリド、ベンラファキシン、トログリタゾン、フルバスタチン、ロサルタン、イミグルセラーゼ、ドネペジル、オランザピン、バルサルタン、フェキソフェナジン、カルシトニン、および臭化イプラトロピウム。いくつかの実施形態において、薬物は、水溶性であり得る。他の実施形態において、薬物は、水溶性でなくてもよい。
【0095】
糸11は、当業者の技術範囲内のあらゆる技術(例えば、押出し、成形および/または紡績など)を用いて形成され得る。いくつかの実施形態では、糸11は、同じかまたは異なる材料の複数のフィラメントを含み得る、2以上のフィラメントから作製されたヤーンを備え得る。糸11が複数のフィラメントから作製される場合、糸11は、任意の公知技術(例えば、組紐、織る、編むなど)を用いて作製され得る。糸11はまた、不織縫合糸を製造するために一体にされ得る。糸11は、縫合糸形成プロセスの一部として、ヤーンを形成するために、紡いで取られ、配向され、縮らせられ、撚られ、一つに合わせられ、または、空気によって絡ませられ得る。一実施形態では、マルチフィラメント縫合糸は、組紐によって製造され得る。組紐は、当業者の技術範囲内のあらゆる方法によってなされ得る。
【0096】
なお図1を参照すると、ループ付き縫合糸10は、その遠位端10bに形成されたループ12を備える。ループ付き縫合糸10の近位端10aは、1以上の縫合針(図示されず)を備え得る。ループ12は、実質的に涙形の形状を形成し、そして、任意の大きさであり得る。一実施形態では、ループ12は、ループ付き縫合糸10の近位端10aを受容するような大きさである。モノフィラメント糸11の第一セクション13は、糸11の第二セクション14に重なってループ12を形成する。第一セクション13および第二セクション14の隣接する面は、接合されたセグメントすなわちジョイント15を形成する。
【0097】
一実施形態では、糸11の第一セクション13および第二セクション14は、互いに溶接される。この様式では、糸11の第一セクション13および第二セクション14は、各々が融合して溶接されたセグメント15を形成するまで、局部的に加熱される。種々のタイプのエネルギー(RF、超音波、レーザ、電気アーク放電および熱を含む)が、第一セクション13および第二セクション14を局部的に加熱して、接合されたセグメント15を形成するために使用され得る。あるいは、糸11の第一セクション13および第二セクション14は、膠剤、エポキシ、または他の接着剤を用いて接合され得る。
【0098】
特に図3を参照すると、第一セクション13の近位端13aは、テーパー状の表面17を形成するように角度を付けられる。テーパー状の表面17は、ループ付き縫合糸10の近位端10aに向かって下向きに角を成す。テーパー状の表面17は、第二セクション14の長手方向軸「X」に対して、0°〜90°、好ましくは、約5°〜約60°の角αを形成する。テーパー状の表面17は、ループ12の組織内または組織を通した挿入を容易にする。テーパー状の表面17は、第一セクション13と第二セクション14の接合の前、間または後に形成され得る。一実施形態では、テーパー状の表面17は、溶接プロセスの間に、切断面(図示されず)を持つダイ(図示されず)を用いて形成される。別の実施形態では、テーパー状の表面17は、刃(図示されず)によって形成される。テーパー状の表面17を形成するために使用される刃は、糸11の切断を容易にするために、加熱されるか、超音波により振動されるか、または、他の方法で適合され得る。第一セクション13のテーパー状の表面17は、接合されたセグメント15が糸11の第一セクション13を越えて延びるように形成され得る。この様式では、テーパー状の表面17は、糸11の第二セクション14と滑らかな推移を形成し、それによって、ループ付き縫合糸10が組織を通して引っ張られるときに、第一セクション13および第二セクション14が互いに分離するかまたは剥がれる可能性を低下させる。
【0099】
実質的に平坦なテーパーを有するように示されるが、テーパー状の表面17は、任意の数の構成を備え得る。例えば、図5A〜7Cは、傾斜のついたテーパー状の表面17a(図5A〜5C)、横方向および縦方向に凹状のテーパー状の表面17b(図6A〜6C)、横方向および縦方向に凸状のテーパー状の表面17c(図7A〜7C)またはこれらの任意の組み合わせを含む代替的な実施形態を示す。傾斜のついたテーパー状の表面、凹状のテーパー状の表面および凸状のテーパー状の表面(まとめて、輪郭を描く(contoured)テーパー状の表面17a〜c)はそれぞれ、平坦なテーパー状の表面17と同様の様式で形成され得る。すなわち、輪郭を描くテーパー状の表面17a〜cは、溶接プロセスの間に、適切な形状の切断面(図示されず)を持つダイ(図示されず)を用いて形成され得る。あるいは、輪郭を描くテーパー状の表面17a〜cは、適切な形状の切断面を持つ刃(図示されず)を用いて形成され得る。テーパー状の表面17は、縫合される組織、および/または、所望される組織内のループ12の進入の深さに依存して選択され得る。
【0100】
簡単に図1Aを参照すると、ループ付き縫合糸10は、内部に形成されるか、および/またはその上部に形成された棘3、フック、ラッチ、突起部、葉、歯、他の突出部またはこれらの組み合わせ(図示されず)を備え得る。棘3は、任意の適切なパターン(例えば、らせん状、直線状)で整列され得るか、または、ランダムに間隔を空けられ得る。パターンは、左右対称であっても左右非対称であってもよい。棘3の数、構成、間隔および表面積は、縫合糸10が使用される組織、ならびに糸11の材料の組成および幾何学形状に依存して多様であり得る。さらに、棘3の全体的な長さおよび棘3の間隔は接続される組織によって決定され得るが、棘3の割合は比較的一定に保たれ得る。例えば、縫合糸10が皮膚または腱の傷の縁部を接続するために使用される場合、棘3は、このかなり硬い組織内への進入を容易にするために、比較的短く、かつより剛性にされ得る。あるいは、縫合糸10が比較的軟らかい組織である脂肪組織における使用に意図される場合、棘3は、縫合糸10が軟らかい組織を掴む能力を高めるために、より長く、かつさらに間隔を空けられ得る。
【0101】
棘3の表面積もまた多様であり得る。例えば、特定の外科的用途のために設計された種々の大きさの縮絨先端の棘が作製され得る。脂肪および比較的軟らかい組織を接合するためには、より大きな棘が望ましくあり得るが、コラーゲンが密な組織には、より小さな棘がより適切であり得る。いくつかの実施形態では、例えば、異なる層の構造を用いた組織修復に縫合糸が使用される場合、同じ構造内での大小の棘の組み合わせが有益であり得る。同じ縫合糸における大小の棘の組み合わせ(棘の大きさは、各組織層についてカスタマイズされる)の使用は、最大の係留特性を確実なものとする。特定の実施形態では、単方向性の縫合糸は、大小の両方の棘を有し得る;他の実施形態では、双方向性の縫合糸は、大小の両方の棘を有し得る。棘3は、円形、三角形、正方形、斜め、楕円形、八角形、矩形およびフラットな形のような幾何学形状を備え得る。いくつかの実施形態では、組織を通したループ12の一方向性の動きを可能にするが、ループ12が組織内に移植された後には、縫合糸10の引き出しを阻止する棘3がループ12上に形成され得る。
【0102】
分解性材料から製造される場合、縫合糸10は、使用された特定のコポリマーの特性に依存して、移植後に所定の期間にわたってその構造的一体性を維持する。このような特性としては、例えば、コポリマーの成分(コポリマーを形成するために利用されたモノマーおよびこれに対する任意の添加物の両方を含む)、ならびに、加工条件(例えば、コポリマー化反応の速度、反応温度、圧力など)、および、得られたコポリマーの任意のさらなる処理(すなわち、コーティング、滅菌など)が挙げられる。ループ12の形成に関与する製造パラメータもまた、縫合糸10が吸収される速度に影響する。ジョイント15は、縫合糸10の残りの部分とは異なる速度で吸収され得る。
【0103】
縫合糸本体への棘3(図1A)の形成は、2006年11月2日に出願された米国特許出願第11/556,002号(発明の名称「Long Term Bioabsorbable Barbed Sutures」;この出願の全内容は本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、縫合糸10の分解時間を変更するために利用され得る。
【0104】
上記の治療薬は、当業者の知識の範囲内のあらゆる方法(例えば、浸漬、噴霧、蒸着、ブラッシング、溶媒蒸発、コンパウンディングなどが挙げられる)を利用して、縫合糸10上に塗布され得る。ある実施形態では、生物活性因子は、棘の角、すなわち、棘3と糸11との間に形成される角の中に入れられ得る。この棘3と糸11との間への生物活性因子の配置は、組織創傷閉鎖部内の正確に規定された位置に生物活性因子を配置し、それによって、独特の制御された持続放出性の投薬形態を提供する。
【0105】
糸11は、外科手術分野における縫合糸10の可視性を高めるために染色され得る。医療用デバイスに組み込むのに適切なあらゆる色素が使用され得る。このような色素としては、カーボンブラック、ボーンブラック、D&C Green No.6、およびD&C Violet No.2が挙げられるがこれらに限定されない。本開示に従うフィラメントは、約2〜3%までの量の染料を加えることによって染色され得る;他の実施形態では、フィラメントは、約0.2%の量の染料を加えることによって染色され得る;なおさらなる実施形態では、染料は、約0.06%〜約0.08%の量で加えられ得る。
【0106】
使用時に、ループ付き縫合糸10は、その近位端10aに針(図示されず)を備える。針は、組織の第一および第二のフラップ内に、これらのフラップを通して挿入される。ループ付き縫合糸10は、第一セクション13の近位端13aが組織に接するまで組織を通して引っ張られる。縫合糸10の近位端10aを引っ張り続けることで、テーパー状の近位端13aに組織を係合させる。近位端13aのテーパー状の表面17は、縫合糸10の重なりセクションが、組織への外傷を最小にしつつ、抵抗の減少を伴って組織内に受容されることを可能にする。いったん縫合糸10のループ12の一部が組織内に受容されると、縫合糸10の近位端10aがループ12を通して挿入され得る。次いで、縫合糸10の近位端10aは、きつく引っ張られ、それによって、第一および第二の組織フラップを互いに向けて近接させ得る。次いで、縫合糸10の近位端10aは、結ばれるか、または、他の方法でループ12に固定され得る。一実施形態では、結び目は、近位端10aがループ12から引き出されることを防止するために、近位端10a内に形成され得る。別の実施形態では、縫合糸10の近位端10aは、ループ12に直接結び付けられ得る。
【0107】
上で考察したように、本開示のループ付き縫合糸を形成する糸は、全体が、または、一部が、形状記憶材料から形成され得る。このような材料は、第一または永続的な構成と、第二または一時的な構成を備える。一時的構成から永続的構成への変態は、半径方向の膨張もしくは収縮、軸方向の伸長もしくは短縮、および/または、その長さに沿った糸の再方向付け(reorientation)をもたらし得る。
【0108】
ここで、図8〜8Bを参照すると、いくつかの実施形態において、ループ付き縫合糸110は、ループ112の少なくとも一部が、形状記憶ポリマー材料から成るように構成される。例えば、ループ112の内側部分に対応する糸111の第一の側部は、少なくとも部分的に形状記憶ポリマー材料から成り得る。ループ112の形状記憶ポリマー材料が、その長さに沿って、半径方向に膨張する(図8A)か、および/または、軸方向に短縮する(図8B)ように構成される場合、ループ112によって形成される開口部は、一時的構成から永続的構成への転移の間に収縮(contract or shrink)する。この様式では、ループ112によって形成される開口部の収縮は、その内部を通して受け取ったループ付き縫合糸110をその近位端の周囲で捕獲または締め付け得る。
【0109】
ここで、図9〜9Bを参照すると、代替的な実施形態において、糸211は、ループ212の形状記憶ポリマー材料が、その長さに沿って、半径方向に収縮する(図9A)か、および/または、軸方向に伸長する(図9B)ように構成される。したがって、ループ212内に形成される開口部は、一時的構成から永続的構成への転移の間に、拡大するか、または、弛緩する。この様式では、縫合糸210の近位端は、ループ212によって形成される開口部内から解放され得る。他の実施形態では、ループ12内に形成される開口部の弛緩は、開口部からの治療薬の放出を引き起こす。
【0110】
あるいは、または加えて、本開示に従うループ付き縫合糸は、ループが構成を変えるようにループの周りに位置決めされた形状記憶ポリマー材料の部分を備えるように構成される。ループは、一時的構成にあるとき、平らな形状、または、涙形形状を呈し得、そして、永続的構成に転移すると、ループは、より球根状となる。この様式では、ループの形状記憶部分が一時的構成にあるとき、ループ付き縫合糸は、より容易に組織を通して受け取られ得、そして、転移すると、ループ付き縫合糸は、よりしっかり組織と係合するようになる。あるいは、ループ付き縫合糸は、ループが一時的構成において実質的に球根状の形状を呈し、そして、転移すると、ループがより狭くなるように構成される。この様式では、ループ付き縫合糸は、一旦ループが一時的構成から永続的構成に転移すると、より容易に組織を通して引っ張られるように構成される。
【0111】
本開示の例示的な実施形態が添付の図面を参照して本明細書中に記載されてきたが、本開示は、これらの厳密な実施形態に限定されず、そして、これらの実施形態において種々の他の変更および修正が、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく当業者によってなされ得ることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0112】
3:棘
10、110、210:縫合糸
10a:縫合糸の近位部分(近位端)
10b:縫合糸の遠位部分(遠位端)
11、111、211:糸
12、112、212:ループ
13:第一の重なりセクション
13a:第一の重なりセクションの近位端
14:第二の重なりセクション
15:接合(溶接)されたセグメント、ジョイント
17:テーパー状の表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端および遠位端を備える細長本体と;
該細長本体の該遠位端上に一体に形成されたループと
を備える縫合糸であって、該ループの少なくとも一部が、形状記憶ポリマー材料を含む、縫合糸。
【請求項2】
前記形状記憶ポリマー材料が、一時的構成から永続的構成へと転移するときに、半径方向の膨張および軸方向の短縮の少なくとも一方を行うように構成される、請求項1に記載の縫合糸。
【請求項3】
前記半径方向の膨張および軸方向の短縮の少なくとも一方が、前記ループの収縮を引き起こす、請求項2に記載の縫合糸。
【請求項4】
前記形状記憶ポリマー材料が、一時的構成から永続的構成へと転移するときに、半径方向の収縮および軸方向の伸長の少なくとも一方を行うように構成される、請求項1に記載の縫合糸。
【請求項5】
前記半径方向の収縮および軸方向の伸長の少なくとも一方が、前記ループの膨張を引き起こす、請求項4に記載の縫合糸。
【請求項6】
前記形状記憶ポリマー材料が一時的構成にあるとき、前記ループが実質的に球根状である、請求項1に記載の縫合糸。
【請求項7】
前記形状記憶ポリマー材料が一時的構成から永続的構成へと転移するとき、前記ループが実質的に平らな形状である、請求項6に記載の縫合糸。
【請求項8】
前記形状記憶ポリマー材料は、前記一時的構成から永続的構成への転移の間に前記ループが平らになるように構成される、請求項1に記載の縫合糸。
【請求項9】
前記形状記憶ポリマー材料は、前記一時的構成から永続的構成への転移の間に前記ループが広がるように構成される、請求項1に記載の縫合糸。
【請求項10】
前記形状記憶ポリマーが、分解性材料、非分解性材料およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の縫合糸。
【請求項11】
前記形状記憶ポリマーが、ポリオレフィン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリオレフィンコポリマー、フッ素化ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアミン、ポリイミン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリブタエステル、ポリウレタン、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ハロゲン化ビニルポリマーおよびハロゲン化ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリハロゲン化ビニリデン、ポリクロロフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアリールエーテルケトン、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族、ポリビニルエステル、ビニルモノマーのコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリホスファジン、ポリイミド、エポキシ樹脂、アラミド、レーヨン、スパンデックス、シリコーン、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される非分解性材料を含有する、請求項1に記載の縫合糸。
【請求項12】
前記形状記憶ポリマーが、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリアミン、ポリアルキレンオキサレート、ポリ(酸無水物)、ポリアミドエステル、コポリ(エーテル−エステル)、ポリ(カーボネート)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリイミドカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリホスファゼン、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリウレタン、ポリマー薬物、生物学的に修飾された生体吸収性ポリマー、およびこれらのコポリマー、ホモポリマー、ならびに組み合わせからなる群より選択される生体吸収性材料を含有する、請求項1に記載の縫合糸。
【請求項13】
前記形状記憶ポリマーが、ラクチド、グリコリド、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、2,5−ジケトモルホリン、ピバロラクトン、α,α−ジエチルプロピオラクトン、エチレンカーボネート、エチレンオキサレート、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オンの、ホモポリマーおよびコポリマー、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される脂肪族ポリエステルを含有する、請求項12に記載の縫合糸。
【請求項14】
前記形状記憶ポリマーが、ポリ(アミノ酸)、コラーゲン、エラスチン、フィブリン、フィブリノゲン、絹、アルブミン、ラミニンおよびフィブロネクチンの配列を含むペプチド、ヒアルロン酸、デキストラン、アルギネート、キチン、キトサン、セルロース、グリコサミノグリカン、ガット、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、三酢酸セルロース、硫酸セルロースナトリウム塩、ニトロセルロース、キトサン、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される生分解性ポリマーを含有する、請求項1に記載の縫合糸。
【請求項15】
前記形状記憶ポリマーが、オリゴ(ε−カプロラクトン)ジメタクリレート、オリゴ(ε−カプロラクトン)ブチルアクリレート、(アクリル酸n−ブチル)、オリゴ(ε−カプロラクトン)ジオール/オリゴ(p−ジオキサノン)ジオールコポリマー、ポリカプロラクトンジメタクリレートポリ(アクリル酸ブチル)ブレンド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマーを含有する、請求項1に記載の縫合糸。
【請求項16】
前記形状記憶ポリマーが、ポリジオキサノンとポリラクチドとのブロックコポリマーを含有する、請求項1に記載の縫合糸。
【請求項17】
前記ポリジオキサノンが、前記コポリマーの約5mol%〜約20mol%の量で存在し、そして前記ポリラクチドが、該コポリマーの約80mol%〜約95mol%の量で存在する、請求項16に記載の縫合糸。
【請求項18】
前記形状記憶ポリマーが、トリメチレンカーボネートとポリラクチドとのブロックコポリマーを含有する、請求項1に記載の縫合糸。
【請求項19】
前記トリメチレンカーボネートが、前記コポリマーの約5mol%〜約20mol%の量で存在し、そして前記ポリラクチドが、該コポリマーの約80mol%〜約85mol%の量で存在する、請求項18に記載の縫合糸。
【請求項20】
棘、フック、ラッチ、突起部、葉、歯およびこれらの組合せからなる群より選択される複数の表面特徴をさらに備える、請求項1に記載の縫合糸。
【請求項21】
前記表面特徴が形状記憶ポリマーを含む、請求項20に記載の縫合糸。
【請求項22】
ループ付き縫合糸であって、以下:
細長本体と;
該細長本体の遠位端上に形成されたループであって、該ループの少なくとも一部が形状記憶ポリマー材料から形成される、ループと;
組織内に挿入されるように構成された該細長本体の近位端と;
を備え、
該細長本体は該組織を通して引っ張られるように構成され;
該細長本体の該近位端は該ループを通して受け取られるように構成され;
該形状記憶ポリマー材料は転移させるように構成される、ループ付き縫合糸。
【請求項23】
前記形状記憶ポリマー材料の転移が、エネルギーを加える工程、熱を加える工程、化学物質を加える工程、活性化物質を加える工程、およびこれらの組合せからなる群より選択される方法によって実施されるように構成される、請求項22に記載のループ付き縫合糸。
【請求項24】
前記形状記憶ポリマー材料の転移が、前記ループを収縮させる、請求項22に記載のループ付き縫合糸。
【請求項25】
前記形状記憶ポリマー材料の転移が、前記ループを拡大させる、請求項22に記載のループ付き縫合糸。
【請求項26】
前記形状記憶ポリマー材料の転移が、前記ループを平らにさせる、請求項22に記載のループ付き縫合糸。
【請求項27】
前記形状記憶ポリマー材料の転移が、前記ループをより球根状にさせる、請求項22に記載のループ付き縫合糸。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−194234(P2011−194234A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61391(P2011−61391)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】