説明

先進的糖化最終産物(AGE)形成の新規阻害剤

タンパク質の非酵素的糖化及び架橋は、年齢とともに増加する長命なタンパク質の糖化最終産物及び架橋を伴う加齢プロセスの一部である。このプロセスは、糖尿病とともに発生するような血中及び細胞内環境における還元糖の濃度上昇で増加する。影響される分子の構造及び機能の完全な状態は、これらの修飾によって崩壊するようになり、深刻な結果に帰着し得る。本発明の化合物は、非酵素的な糖化のこのプロセスを阻害し、従って、糖尿病又は加齢によって引き起こされるいくつかの病的影響を阻害するために使用することができる。該化合物は、早発な加齢、食品中のタンパク質の損傷を妨げることに有用でもあり、歯の変色を予防することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロスリファレンス
[0001]本出願は、1999年4月5日出願の仮出願第60/127,835号に関連し、2000年4月5日出願の出願第09/543,703(現、米国特許第6,337,350号)の一部継続出願である、2001年3月8日出願の出願第09/800,976号(現、米国特許第6,605、642号)の一部継続出願であり、これら全ては参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
[0002]本発明は、一般的に、グルコース及び他の還元糖、例えばフルクトース又はリボースとの反応を通じてタンパク質の修飾や老化に関し、より具体的には先進的糖化最終産物や架橋の形成にしばしば帰着するタンパク質の非酵素的糖化の阻害に関する。
【0003】
[0003]血中及び細胞内環境における還元糖の濃度上昇は、先進的糖化最終産物(AGE)として知られる糖化及び脱水縮合複合体の非酵素的形成に至る。非酵素的糖化は、還元糖と、タンパク質、脂質、DNAのアミノ基との複雑な反応系列である。これらの複雑な産物は、タンパク質、脂質、及びDNAの遊離アミノ基上に形成する(Bucala and Cerami,1992; Bucala et al.,1993; Bucala et al.,1984)。この現象は、「褐変」又は「メイラード」反応と呼ばれ、食品産業によって今世紀初頭に発見された(Maillard,1916)。この反応は、転位を受けるシッフ塩基の可逆的な形成で開始され、安定なアマドリ(Amadori)産物を形成する。シッフ塩基とアマドリ産物との両者は、さらにジカルボニル中間体を通して一連の反応を受け、AGEを形成する。糖付加したヘモグロビンの発見と糖尿病患者においてそれらの存在が増加しているという発見によってはじめて生物学において同様のプロセスの重要性が明らかになった(Rahbar,1968; Rahbar et al.,1969)。ヒト糖尿病患者と動物の糖尿病モデルにおいて、これらの非酵素的反応が加速され、AGE形成の増加、並びにヘモグロビン及びアルブミンに加えて、コラーゲン、フィブロネクチン、チューブリン、レンズクリスタリン、ミエリン、ラミニン及びアクチンのような長命のタンパク質の糖化の増加の原因となり、同様にLDL関連脂質及びアポタンパク質の糖化の増加原因となる。さらに、後期のメイラード産物に類似したスペクトルと蛍光の特性をもつ茶色の色素はまた、老齢者由来のレンズクリスタリンとコラーゲンのようないくつかの長命なタンパク質との関係でインビボに見出されている。年齢に関連した色素の直線的増加は、20−90歳の間のヒト硬膜のコラーゲンにおいて観察された。AGE修飾タンパク質は年齢とともにゆっくり増加し、正常組織の再構築に寄与すると考えられる。それらのレベルは、血糖の高レベルが維持された結果として、糖尿病患者において顕著に増加し、組織タンパク質の構造及び機能の変化、AGE特異的受容体を介した細胞応答の刺激、又は活性酸素種(ROS)の発生を含む様々なメカニズムを通じて組織損傷へと導く(最近の概要のためにBoel et al.,1995を参照)。細胞機能において主要な役割をしばしば有する影響を受けた分子の構造及び機能の完全な状態が、これらの修飾によって妨害されるようになり、影響を受けた臓器、例えば、腎臓、目、神経、及び微小血管機能に重篤な結果をもたらす(Silbiger et al.,1993; Brownlee et al.,1985)。
【0004】
[0004]AGEによる巨大分子の構造変化は、年齢の増加とともに正常な環境下で蓄積されることが知られている。この蓄積は、糖尿病によって激しく加速され、高血糖症と強く関連している。例えば、亜内皮基底膜中のタンパク質におけるAGE形成は、血管壁でのタンパク質/タンパク質及びタンパク質/細胞相互作用における激しい構造及び機能変化へと導く広範囲な架橋形成の原因となる(Haitoglou et al.,1992; Airaksinen et al.,1993)。
【0005】
[0005]先進的糖化最終産物(AGE)の形成及び蓄積の増加は、糖尿病の合併症、正常な加齢、アテローム性動脈硬化症、及びアルツハイマー症へと導く主な病因のプロセスとして関連付けられている。このプロセスは、糖尿病によって加速され、腎障害(Nicholls and Mandel,1989)、網膜症(Hammes et al.,1991)、及び神経障害(Cameron et al.,1992)を含む各種の糖尿病の合併症の発症に寄与すると仮定されている。具体的には、AGEによる腎臓への組織損傷は、腎機能における進行性減退、末期の腎疾患(ESRD)(Makita et al.,1994)、及びESRDを患う患者の血清中の低分子量(LMW)のAGEペプチド(グリコトキシン(glycotoxin))(Koschinsky et al.,1997)の蓄積へと導く(Makita et al.,1991)。これらの低分子量(LMW)−AGEは、血漿又は組織成分、例えば、低密度リポプロテイン(LDL)(Bucala et al.,1994)又はコラーゲン(Miyata et al.,1993)と容易に新しい架橋を形成することができ、糖尿病患者における組織損傷及び罹病の進行を加速する。
【0006】
[0006]腎臓やラットのレンズの異なる損傷及びアテローム性動脈硬化症での糖尿病の合併症の進行におけるAGEの寄与を直接指示する証拠が報告されている(Vlassara et al.,1994; Vlassara et al.,1995; Horie et al.,1997; Matsumoto et al.,1997; Soulis−Liparota et al.,1991; Bucala and Vlassara,1997; Bucala and Rahbar,1998; Park et al.,1998)。確かに、健常なラットへの予備形成したAGEの注入は、腎糸球体肥大及びメサンギウム硬化症、マトリックスタンパク質の遺伝子発現、並びに増殖因子の産生を誘導する(Brosnlee et al.,1991; Vlassara et al.,1995)。証拠のいくつかの方向は、反応性のカルボニル中間体(メチルグリオキサル、グリコールアルデヒド、グリオキサル、3−デオキシグルコソン、マロンジアルデヒド及びヒドロキシノネナール)における増加が糖尿病の高血糖症の帰結であることを示す。「カルボニルストレス」は、タンパク質及び脂質の修飾の増加へと導き、オキシダントストレス及び組織損傷へと続く(Baynes and Thorpe,1999; Onorato et al.,1998; McLellan et al.,1994)。さらなる研究により、アミノグアニジン(AG)はAGE形成の阻害剤であるが、これは糸球体の組織障害を改善し、誘導した糖尿病ラットにおけるアルブミン尿症を減少することが示されている(Soulis−Liparota et al.,1991; Itakura et al.,1991)。ヒトでは、糖尿病患者におけるアミノグアニジン治療の結果として、腎機能の向上と同時に生じるヘモグロビン(Hb)−AGEレベルの減少(Makita et al.,1992)は、糖尿病の合併症の病因におけるAGEの重要性についての多くの証拠を提供する(Bucala and Vlassara,1997)。
【0007】
[0007]真性糖尿病の世界的な流行は、特に米国において、罹患率と致死率の重大な増加を伴って数百万人を悩まし、並びに米国において糖尿病の合併症治療のために非常な財務上の重責となり、該疾患の合併症を予防し及び治療する可能性を有する薬物の探索と開発への主な動機付けとなる。これまで、糖尿病における高血糖に誘導される組織損傷のメカニズムについては、十分に理解されていない。しかしながら、4つの発病のメカニズムが提案され、ポリオール経路の活性の増大、特異的プロテインキナーゼC(PKC)異性体の活性化、先進的糖化最終産物の形成と蓄積、及び活性酸素種(ROS)の発生の増加を含む(Kennedy and Lyons,1997)。ESRD患者(Horie et al.,1997)及び糖尿病ラットのレンズ(Matsumoto et al.,1997)から得た腎臓由来の異なる組織におけるごく最近の免疫組織化学的研究は、カルボキシルメチルリジン(CML)、ペントシジン、2つの既知の糖化産物、及びピラリンに対する特異的抗体を用いることによって、腎臓とラットレンズの異なる障害におけるこれらAGE成分の局在を突き止め、そして、組織タンパク質の永久的及び不可逆的修飾の原因となる主な因子となるROSの発生と密接に関連して、タンパク質−AGE形成のための多くの証拠を提供してきた。したがって、AGE形成と抗オキシダントの阻害は、糖尿病の合併症の予防及び治療の有効な手段として約束を保持する。
【0008】
[0008]糖尿病制御及び合併症試験(The Diabetic Control and Complications Trial)(DCCT)は、糖尿病の合併症の発生に対する主要なリスク因子として高血糖であることを明らかにしている(The Diabetes Control and Complications Trial Research Group,1993)。説得力のある証拠が、高血糖と長期間の糖尿病の合併症との間の主要な発病の連結として先進的糖化最終産物の形成を同定している(Makita et al.,1994; Koschinsky et al.,1997; Makita et al.,1993; Bucala et al.,1994; Bailey et al.,1998)。
【0009】
[0009]還元糖と、タンパク質、脂質及びDNAのアミノ基との間の反応は、ジカルボニル中間体を介して一連の反応を受け、先進的糖化最終産物を生じる(Bucala and Cerami,1992; Bucala et al.,1993; Bucala et al.,1984)。
【0010】
[00010]ヒトの糖尿病患者と動物の糖尿病モデルにおいて、AGE形成と長命の構造タンパク質とリポプロテインの蓄積が報告されている。ごく最近の報告は、糖化が代謝性酵素を不活性化することを示している(Yan and Harding,1999; Kato et al.,2000; Verbeke et al.,2000; O’Harte et al.,2000)。糖化誘導による免疫グロブリンGの変化は、非常に興味深い。糖尿病患者におけるIgGのFab断片の糖化についての報告は、これらの患者において観察された免疫不全がこの現象によって説明されるかもしれないことを示唆する(Lapolla et al.,2000)。さらに、糖化によって損傷を受けたIgGに対するIgM応答と慢性関節リウマチにおける疾患の活性との間の関連性が報告されている(Lucey et al.,2000)。また、糖化による高密度リポプロテインの減損が記載されている(Hedrick et al.,2000)。
【0011】
[00011]最近、メチルグリオキサル(MG)は、共通の仲介人であり、AGEを形成する最も反応性のジカルボニルとして相当の注目を受けている(Phillips and Thornalley,1993; Beisswenger et al.,1998)。それはまた、糖化反応過程での活性酸素種(ROS)(フリーラジカル)発生の原因でもある(Yim et al.,1995)。
【0012】
[00012]自然は、「カルボニルストレス」及びAGEの蓄積の有害な効果から組織を保護するためのいくつかの体液性及び細胞性防御メカニズムを案出しており、例えば、グリオキシラーゼシステム(I及びII)及びアルドース還元酵素は、MGのD−ラクトースへの無毒化を触媒する(McLellan et al.,1994)。アマドリ酵素(Amadoriase)はまた、アマドリ産物の脱糖化を触媒するコウジカビ属の菌(Aspergillus)に見出された新規な酵素のクラスである(Takahashi et al.,1997)。さらに、いくつかのAGE受容体は、単球の表面膜上、並びにマクロファージ、内皮細胞、メサンギウム細胞、及び肝細胞上に特徴付けられている。これらの受容体の1つであるRAGEは、免疫グロブリンスーパーファミリーの一員であるが、幅広い組織分布があることが見出されている(Schmidt et al.,1994; Yan et al.,1997)。糖化及びAGE形成に対する様々な天然の防御メカニズムの発見は、糖尿病の血管及び末梢神経の障害の病因におけるAGEの重要な役割を示唆する。MGは、タンパク質のアルギニン及びリジン残基に結合し、不可逆的に修飾する。MGにより修飾されたタンパク質は、AGE受容体に対するリガンドとなることが示されており(Westwood et al.,1997)、MGにより修飾されたタンパク質がAGEに見出されるタンパク質に類似している(Schalkwijk et al.,1998)ことを示している。さらに、グリコールアルデヒドは、AGE形成における反応性中間体であり、マクロファージスカベンジャー受容体に対する活性リガンドを生じる(Nagai et al.,2000)。LDLにおけるMGの効果は、インビボ及びインビトロで特徴付けられている(Bucala et al.,1993)。
【0013】
[00013]アラキドン酸塩のような多価不飽和脂肪酸(PUFA)の脂質の過酸化はまたカルボニル化合物を生じる;いくつかはMGやGOのような炭水化物から形成されるものと同一であり(Al−Abed et al.,1996)、そして、他はマロンジアルデヒド(MDA)や4−ヒドロキシノネナール(HNE)のような脂質の特性を示す(Requena et al.,1997)。後者の2つのカルボニル化合物は、脂質過酸化(lipoxidation)産物を生産する(Al−Abed et al.,1996; Requena et al.,1997)。最近の報告では、修飾されたコラーゲンの架橋及び真性糖尿病における脂質誘導のMDAの重要性を強調する(Slatter et al.,2000)。いくつかのAGE、フルオロフォア(fluorophore)でもあり非蛍光性でもあり、架橋しているタンパク質に関係し、特徴付けられている(Baynes and Thorpe,1999)。グルコース誘導のAGE−タンパク質架橋に加えて、AGE架橋はまた、組織タンパク質と、AGE−タンパク質消化や代謝回転から形成したAGE含有ペプチド断片との間にも発生する。これらの反応性AGE−ペプチドは、現在、グリコトキシン(glycotoxin)と呼ばれ、正常は腎臓によって消化される。糖尿病患者では、これらグリコトキンは血清タンパク質と反応し、幅広い組織損傷の原因となる(He et al.,1999)。しかしながら、架橋構造の化学的性質に関する詳細な情報は不明のままである。現在までに特徴付けられている架橋構造は、化学的及びスペクトル分析に基づき、今でも未知な主要な架橋構造とともに、インビボで発生するAGE架橋の小さな断片だけから構成される。ごく最近、新規な酸に不安定なAGE構造であるN−オメガ−カルボキシメチルアルギニン(CMA)が、コラーゲンの酵素的加水分解によって同定されている。その濃度は、ペントシジンの濃度よりも100倍大きいことが見出され(Iijima et al.,2000)、主要なAGE架橋構造であると仮定される。
【0014】
[00014]加齢及び糖尿病に加えて、AGEの形成は、いくつか他の病理学的な状態と関連している。IgM 抗IgG−AGEは慢性関節リウマチ活性の臨床測定に関連付けられるようである(Lucey et al.,2000)。AGEと慢性関節リウマチとの間の対比が、北アメリカンインディアンにおいてなされた(Newkirk et al.,1998)。AGEは、アルツハイマー症における脳プラークに存在し、そして、AGEの存在は、アルツハイマー症の発生を補助し、促進するかもしれない(Durany et al.,1999; Munch et al.,1998; Munch et al.,1997)。尿毒症患者は、年齢に見合った制御に比べて血清AGEのレベルが上昇している(Odani et al.,1999; Dawnay and Millar,1998)。AGEはまた、神経毒症状と相関している(Kikuchi et al.,1999)。AGEタンパク質は、マウスにおけるアテローム性動脈硬化症と関連し(Sano et al.,1999)、そして、血液透析を受けている患者におけるアテローム性動脈硬化症と関連している(Takayama et al.,1998)。アミノグアニジンをウサギに与えた研究は、アミノグアニジン量の増加が大動脈のプラーク形成の減少へと導くことが示され、先進的糖化が粥腫(atherogenesis)に関係するかもしれないことを示唆し、先進的糖化の阻害物がそのプロセスを遅らせるかもしれない可能性を挙げている(Panagiotopoulos et al.,1998)。先進的糖化最終産物のN(イプシロン)−カルボキシメチルリジン(CML)のかなり堆積は、家族性筋萎縮性側索硬化症を患う患者における星状細胞の透明な封入体中に見られるが、正常の対照サンプルでは見られない(Kato et al.,1999; Shibata et al.,1999)。喫煙はまた、血漿の低密度リポプロテイン、血管壁の構造タンパク質、及び目のレンズタンパク質上のAGE堆積の増加、並びにアテローム性動脈硬化症の原因に導く可能性のある何らかのこれらの効果と、タバコの常用と関連する他の疾患に結び付けられる(Nicholl and Bucala,1998)。最後に、アミノグアニジンをラットに与えた研究は、その処置が進行性の心血管と腎臓の減退に対して保護することを示した(Li et al.,1996)。
【0015】
[00015]糖付加(glycosylation)現象のカスケードにおけるアミノグアニジンの阻害効果のメカニズムが調査されている。これまで、AGE形成のAG仲介による阻害の正確なメカニズムは、完全には知られていない。インビトロの実験のいくつかの系統は、結論に対照をなしているという結果であった。簡単には、還元糖の濃度上昇は、炭水化物のカルボニル基とタンパク質のアミノ基との間の反応を引き起こし、下記:
1.シッフ塩基の可逆的形成、それに続く
2.アマドリ凝縮/脱水産物、例えば、3−デオキシグルカソン(3−DG)、高反応性ジカルボニル化合物(Kato et al.,1990)。
3.不可逆性であり高反応性の先進的糖付加最終産物。初期のアマドリ産物の例は、さらに後期のAGEを形成する凝縮反応を受けるケトアミンである。いくつかのAGE産物は、最近、精製され特徴付けられている。各々はインビボで生じたAGEの主要な断片のみから構成されている。例は、ピラリン、ペントシジン、カルボキシメチル−リジン(CML)、カルボキシエチル−リジン(CEL)、クロスリン、ピロロピリジニウム、メチルグリオキサルリジン二量体(MOLD)、Arg−Lysイミダゾール、アルギニン、ピリジニウム、サイペントジン(cypentodine)、ピペリジンジオンエノール及びアルキル、ホルミル、ジグリコシル−ピロールである(Vlassara,1994)
に導く。
【0016】
[00016]合成ペプチドにおけるインビトロで形成した糖化産物の解析は、アミノグアニジンが初期のアマドリ産物の形成を阻害しないことを示している(Edelstein and Brownlee,1992)。BSAに形成した糖化産物の解析によって同様の結論に達した(Requena et al.,1993)。両実験では、AGE形成は、蛍光測定及び質量スペクトル分析によって解析されるように、AGによって強力に阻害された。質量スペクトル分析では、複合体へのAGの導入に対応する分子量を有するペプチド複合体は検出されなかった。NMR、質量分析、及びX線回折を用いた詳細な機械論的研究は、アミノグアニジンがAGEの前駆体である3−DGと反応し、3−アミノ−5−及び3−アミノ−6−置換トリアジンを形成することを示している(Hirsch et al.,1992)。対照的に、標識した14C−AGを用いたレンズタンパク質の他の実験は、AGが該タンパク質に結合するようになり、同時に遊離糖の活性なアルドース形態と反応することを示唆する(Harding,1990)。
【0017】
[00017]AGE阻害剤としていくつかの他の潜在的な薬物候補が報告されている。これらの研究は、インビトロ及びインビボの評価を通じて、アミノグアニジン(AG)と比較したAGE形成及びAGE−タンパク質架橋を阻害する試薬の能力を評価した(Nakamura et al.,1997; Kochakian et al.,1996)。この分野における最近の進展は、インビトロ及びインビボにおけるAGE誘導のタンパク質の架橋を選択的に切断する化合物、N−フェンアクリルチアゾリウムブロミド(PTB)の発見である(Vasan et al.,1996; Ulrich and Zhang,1997)。不可逆的なAGE仲介タンパク質架橋を壊す薬理学的な能力は、潜在的な治療用途を提供する。
【0018】
[00018]高血糖症誘導による架橋の長期の結果に対する初期の薬学的な介入は、糖尿病の深刻な後期の合併症の発症を妨げることが十分に示されている。組織及び体液におけるグルコースを介した架橋を完全に止める無毒であり高効果的な薬物の開発は、非常に期待される目標である。タンパク質上のAGEの形成を邪魔するためのインビトロ及びインビボの両方において調査された薬学的な化合物のプロトタイプは、アミノグアニジン(AG)、小ヒドラジン様化合物である(Brownlee et al.,1986)。しかしながら、いくつかの他の化合物は、そのようなAGE形成における阻害効果を有することが見出された。例えば、アミノグアニジンに構造的類似性を有しないD−リジン(Sensi et al.,1993)、デスフェリオキサミン(Takagi et al.,1995)、D−ペニシラミン(McPherson et al.,1988)、チアミンピロホスフェート及びピリドキサミン(Booth et al.,1997)である。
【0019】
[00019]AGE形成を阻害することが意図される第一の薬物候補としてのAGの臨床試験は、進行中である(Corbett et al.,1992)。いくつかのヒドラジン様及び非ヒドラジン化合物が調査されている。これまで、AGは、先行技術の他の試験した化合物よりも副作用がより少なく最も有用であることが見出されている。AGはまた一酸化窒素(NO)の周知な選択的阻害剤であり、抗酸化効果をも有することができる(Tilton et al.,1993)。
【0020】
[00020]AG阻害剤として使用されるいくつかの他の潜在的な薬物候補が最近発見され、インビトロ及びインビボの両方で評価されている(Nakamura et al.,1997; Soulis et al.,1997)。アミノグアニジン及び類似化合物を用いた研究の成功が将来有望である一方、AGEの追加阻害剤を開発する必要性があり、それはこの活性と治療用途の利用可能性と範囲を広げるためである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
発明の概要
[00021]フェノキシイソブチル酸誘導体及び安息香酸誘導体は、アリール及び複素環式ウレイド誘導体並びにアリール及び複素環式カルボキサミド誘導体を含み、しばしば先進的糖化最終産物及び架橋の形成に帰着するタンパク質の非酵素的糖化を阻害することが見出されている。多くの他のフェノキシイソブチル酸誘導体並びに下記に詳述するようなある種の他の化合物はまた、タンパク質の非酵素的糖化を阻害することが見出されている。タンパク質の非酵素的糖化及び架橋は、年齢とともに増加する長命なタンパク質の糖化最終産物及び架橋を伴う加齢プロセスの一部である。このプロセスは、糖尿病とともに発生するように血中及び細胞内環境における還元糖の上昇した濃度で増加する。影響される分子の構造的及び機能的な完全な状態は、これらの修飾によって妨害され、深刻な結果に至る可能性がある。本発明の化合物は、非酵素的な糖化及び架橋のこのプロセスを阻害し、したがって、糖尿病又は加齢によって引き起こされるいくつかの病的影響を阻害するために使用され得る。化合物はまた、早発の加齢、慢性関節リウマチ、アルツハイマー症、尿毒症、神経毒症、アテローム性動脈硬化症、及び食物中のタンパク質の損傷を妨げるのに有用であり、歯の変色を妨げることができる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
発明の詳細な説明
[00038]本出願人は、糖化及びAGE形成の阻害剤として、アリール(及び複素環式)ウレイド及びアリール(及び複素環式)カルボキシアミドフェノキシイソブチル酸、並びに安息香酸誘導体及び関連する化合物である新クラスの化合物を以前に報告している(Rahbar et al.,1999; Rahbar et al.,2000; Rahbar et al.,2002)。先進的糖化最終産物(AGE)への可能な阻害効果の調査に関する有機化合物の異なるクラスをスクリーニングするに際して、本出願人は、試験した大部分のフェニルウレイド置換フェノキシプロピオン酸誘導体が阻害効果を有し、これらのいくつかの化合物は、アミノグアニジンの等しい阻害濃度よりも非常に低い濃度のAGE形成の強力な阻害剤であった。本研究の目的は、糖化、AGE形成及びAGE架橋の新規な阻害剤のクラスを開発することであり、インビトロの化学的及び免疫化学的アッセイを通じてそれらの効果を調査することであった。全115個の化合物を設計し、合成した。最初の102個の化合物は、他の場所で報告されている。本明細書で報告される13個の新規な化合物は、以前に報告された最も強力な阻害剤の1つである以前に報告されたLR23(4−(3,5−ジクロロフェニルウレイド)−フェノキシイソブチル−1−アミノシクロヘキサン−1−カルボン酸)に基づいて設計し、開発した(Rahbar et al.,1999; 米国特許第6,337,350B1号、参照により本明細書に援用される)。これらの化合物は、LR3に基づいており(図20参照)、その合成は、Lalezari and Lalezari(1989)に報告され、本明細書に援用される。特にAGE−タンパク質−架橋の阻害における阻害潜在性のかなりの増加は、プロトタイプのLR23と比較される化合物中に見出され、20−30倍の大きな効果である(Khalifah et al.,1999)。
【0023】
[00039]このクラスの化合物が糖化、AGE形成、及び架橋を阻害するメカニズムは、さらに詳細に知られるべきである。2つの主要なメカニズム、銅と鉄のような一時的な金属キレート化、及び反応性カルボニル中間体の回収又は捕捉は、既知のAGE阻害剤のAGE阻害機能に原因があると提案されている。本研究は、これらの化合物が糖化及びAGE形成の複数の工程、即ち、δ−Gluアッセイ、糖化の初期の段階(タイプA又はB阻害剤)に対する特異的なアッセイにおけるHbAlcレベルを低下させることによって証明される初期の段階で作用する強力な阻害剤であることを示している。大部分のこれらの化合物は、BSA−グルコース及びG.K.−リボースアッセイによって示されるようなアマドリ転移後(post−Amadori)の糖化を強力に阻害し(タイプD阻害剤)、それらの非常に多くは、特異的なELISAアッセイによって証明されるAGEタンパク質架橋の強力な阻害剤である(Baynes Classificationにより記載されるようなタイプE阻害剤)(Khalifah et al.,1999)。
【0024】
[00040]2つの既知の糖化の阻害剤(アミノグアニジン及びメトホルミン)のようなグアニジノ化合物阻害剤の阻害活性のメカニズムは、それらがMG及び他の糖化のα−ジカルボニル中間体を捕捉することを要求することである。ごく最近の研究は、この考えをさらに支持するグアニジノ−ジカルボニル付加物を形成する、メトホルミンと、MG及びグリオキサール(GO)の反応を証明している(Ruggiero−Lopez et al.,1999)。
【0025】
[00041]糖化の初期段階(アマドリ)及び後期段階(アマドリ転移後)に特異的な新規アッセイ方法を用いて、糖化の初期段階においてより大きな効果を有し、後期段階において幾分の効果を有するいくつかの阻害剤を明らかにした。しかしながら、本出願人が調査した大部分の阻害化合物は、多段階の阻害剤である。還元糖とタンパク質のα−及びε−アミノ基との反応は、無作為プロセスではなく、むしろこれらの化学基の性質や近辺に依存する部位特異的な反応である。将来の課題は、AGE形成及び架橋に導く、複雑に連続した反応及び中間の基質における阻害化合物の相互作用の部位及び/又はその部位を特異的に定義することである。
【0026】
[00042]糖化、AGE形成、及びAGE−タンパク質架橋の新規阻害剤の開発は、糖尿病の合併症を予防する治療応用、並びにタンパク質又は脂質の糖化の増加と関連する他の疾患を予防する治療応用を見出すことができる糖化反応の阻害剤の既存の蓄積を拡張する。さらに、これらの化合物の利用可能性は、AGE形成とAGE−タンパク質架橋のプロセスにおける反応のカスケード及び中間体の基質を研究するツールとして有用であることを証明できる。
【0027】
[00043]本発明に利用される化合物及びそれらの有効な組成物は、初期の糖化産物の非常に活性なカルボニル中間体と反応することが可能な試薬を含み、それによってタンパク質の架橋及びタンパク質の老化へと導く先進的糖化最終産物を後に形成することから初期産物を妨害する。
【0028】
[00044]本発明について想到される他の有用性は、早発の加齢の予防、及び食品におけるタンパク質の損傷の予防である(米国特許第5,661,139号)。本発明の試薬はまた、歯の変色を予防するような口腔衛生の分野において有用でもある。
【0029】
化合物
[00045]本発明の化合物は、LR103−LR115のように図7−19に示され、タンパク質糖化及びAGE形成における阻害効果についてスクリーニングした。開示の目的で、これらの構造に割り当てられた名称は、下記の通りである:
LR103: 1−[(4−クロロベンジル)−3−(3,4−ジクロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸、
LR104: 4−(4−フルオロ−3−クロロフェニルウレイド)フェノキシイソブチリルアミドフェニル−2−カルボン酸、
LR105: 1[(2−フルオロ−6−クロロベンジル)−3−(3,4−ジクロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸、
LR106: 4−(4−クロロベンジルアミノフェノキシイソブチル)酸、
LR107: 2−クロロベンゼン−1,4−ビス(4−ウレイドフェノキシイソブチル酸)、
LR108: 1−[(4−クロロベンジル)−3−(3,5−ジクロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸、
LR109: 1−[(2−フルオロ−6−クロロベンジル)−3−(2−フルオロ−6−クロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸
LR110: 4−(1,2,3,4−テトラヒドロアクリジン−9−カルボキサミドフェノキシイソブチル)酸、
LR111: 8−キノリノキシ酢酸、
LR112: 4,4’−ビス[(メチレンオキシエチレンアミノ)フェノキシ]イソブチル酸、
LR113: L−8−キノリノリル(アセチルヒスチジン)、
LR114: 4−[(3,5−ジクロロフェニルウレイド)フェノキシイソブチリルアミド]−2−ヒドロキシベンゼン−4−カルボン酸、及び
LR115: L,α−4−[(3,5−ジクロロフェニルウレイド)フェノキシイソブチリルアミド]フェニルアラニン。
【0030】
[00046]上記の化合物は、標的タンパク質及び結果として生じるタンパク質架橋における先進的糖化最終産物を阻害することが可能である。本発明においては、以前に報告された糖化及びAGE形成の阻害剤の誘導である13個の新規な化合物を調査し、それらが多段階の糖化、AGE形成及びAGE−タンパク質−架橋の阻害剤であることも見出されている。理想の試薬は、発色団やその関連したタンパク質の架橋の形成を妨げ、動脈や腎臓に発生するような他のタンパク質におけるタンパク質の捕捉を妨げるものであろう。本発明の化合物は、ヒトを含む動物に投与することができ、タンパク質の糖化及び架橋(タンパク質の老化)を阻害又は低下する。該化合物は、各試薬の活性に応じて、1回又は個別の量で変化可能な服用量で経口的に投与することができる。加えて、該化合物は、非経口又は直腸に投与することができる。本発明の化合物、本発明の合理的な異なるアッセイ方法、及びそれらの使用は、下記の実施例によって例証される。
【0031】
実施例1
ヘモグロビン−δ−グルコノラクトン(δ−Glu)アッセイ
[00047]δ−Gluアッセイは、糖化の初期段階の阻害剤を調査するための特異的な方法である。ヘモグロビン(HbAlC)上の初期の糖化産物(アマドリ)形成の評価は、阻害化合物の存在及び不存在におけるグルコースの酸化形態とともに赤血球細胞を培養し、試験対対照におけるHbAlCの決定によって実行される(Rahobar and Nadler,1999)。本試験は、Lindsayら(1997)による報告に基づいている。δ−Glu、グルコースの酸化類似体は、赤血球細胞内のヘモグロビンと即座に反応することができ、インキュベーションの数時間以内にHbAlCレベルを有意に増加させる。対照的に、グルコースは生じるために等しい反応について数週間を要する。本出願人は、ヘモグロビンの初期段階の糖化(アマドリ産物)の能力を測定するためのアッセイ、及びHbAlC形成を阻害する阻害剤の能力を評価するためのアッセイを考案するためにこの発見を使用した。簡単には、新鮮な血液をカリウム−EDTA中に吸出し、200μLの血液と40μLのリン酸緩衝液(PBS)、pH7.4単独、50ミリモル/Lのδ−Glu(Sigma)含有PBS、又は50ミリモル/Lのδ−Glu+1ミリモル/Lの阻害剤含有PBSの何れかと混合することにより、回収30分以内にインキュベーション用に調製した。37℃で16時間インキュベーション後、糖化したヘモグロビン存在のパーセントを決定した。糖化したHb(HbAlC)のパーセントは、専用のイオン交換HPLCシステム(BIORAD DIAMAT)を用いて決定した。血液サンプルは3回の試験で分析した。該化合物によるHbAlC形成の阻害%は、下記の式:
((B−C)/(B−A))×100
[ここで、Aは、δ−Gluで未処理の基底の対照試験管におけるHbAlC濃度であり、Bは、δ−Gluでインキュベートした血液のHbAlC濃度であり、Cは、δ−Glu及び阻害化合物の両方で処理した試験管HbAlC内容物である]
により計算した。
【0032】
[00048]1ミリモル/Lの化合物を使用した正常な志願者由来のδ−Glu処理の全血を用いて(HbAlC)形成の量を計算した。結果は、HbAlC形成の阻害パーセントとして計算し、表1に示す。各種の阻害剤(化合物LR103−LR115)は、それらの阻害の潜在能力に応じて異なるHbAlCレベルを示す。13個の化合物全てがインビトロアッセイ方法によって検出されるように阻害活性を示し、そして、9個の化合物は、全試験において中高程度の阻害パーセント(PI)を示し、アミノグアニジンより20−30倍強力であった。
【0033】
【表1】

【0034】
[00049]上記の実験は、このタイプの薬物療法が初期の糖化産物、先進的糖化最終産物形成における予備段階と関連する病状を低下する点に利益があることを示唆する。
【0035】
実施例2
BSA−グルコースアッセイ
[00050]本試験は、グルコースを介したBSAの蛍光の発生を阻害する阻害剤の能力を評価するために使用される(Ikeda et al.,1996)。NaN 0.2g/Lを含有する1.5Mのリン酸緩衝液 pH7.4中のSigma 50mg/mL及び800mM グルコース(144mg/mL)由来のBSA(断片V、基本的には脂肪酸無し、低エンドトキシン)の3重のサンプルを、化合物の各種濃度の存在又は不存在で7日間37℃で無菌状態でインキュベートした。インキュベーションの7日後、各サンプルを特異的な蛍光の発生について調べた(励起、330nm;放射、410nm)。試験サンプル対対照におけるAGE形成の阻害%は、各阻害化合物について計算した。アミノグアニジン(50mM)を正の対照として使用した。結果を表2に示す。
【0036】
[00051]この方法は、後期の糖化及びAGE形成(アマドリ転移後)の阻害物を分析する。結果は、試験した13個の化合物の大部分がアマドリ転移後の糖化、AGE形成及びAGE架橋を強力に阻害することを示す。
【0037】
【表2】

【0038】
実施例3
N−アセチル−グリシル−リジンメチルエステル(G.K.ペプチド)−リボースアッセイ
[00052]後期の糖化産物(AGE)、及び新規阻害化合物によるAGE阻害の評価は、試薬の存在又は不存在におけるリボースのG.K.ペプチドのインキュベーションによって試験し、それらの特異的な蛍光の測定を通した糖化及びAGE形成の過程において発生した蛍光団を決定した。リボースの存在下でN−アセチルグリシル−リジンメチルエステルの架橋を阻害する本発明の化合物の能力を評価するために使用したNagarajら(1996)の方法は、下記:
保存液:
NaN 0.2g/Lを含む0.5M リン酸ナトリウム緩衝液 pH7.4
0.5M リン酸ナトリウム緩衝液 pH7.4中のGKペプチド(Sigma) 80mg/mL
0.5M リン酸緩衝液中のリボース800mM(120mg/mL)
の通りであった。
【0039】
[00053]3つの保存液の等しい体積(0.1mL)の3重のサンプルを一緒に混合し、0.2ミクロンフィルター(Corning)を通してろ過し、37℃で24時間無菌状態でインキュベートした。阻害化合物を最終濃度1ミリモル/Lに加えた。インキュベーション時間の終わりに、サンプルをそれらの特異的な蛍光について分析した(励起、330nm;放出、415nm)。阻害剤の異なる濃度による阻害%は、上述のように評価した。アミノグアニジンは正の対照として50mMで使用した。
【0040】
[00054]表3は、G.K.ペプチド−リボースアッセイを用いて、これら別個の決定においてタンパク質−AGEの特異的な蛍光を遮断する化合物の阻害効果を示す。このアッセイの結果は、調査した13個の化合物の大部分が強力な阻害効果を有することを示す。
【0041】
【表3】

【0042】
実施例4
アマドリ転移後のタンパク質アッセイ
[00055]糖としてのリボースを使用してAGEを含まないアマドリが豊富なタンパク質を調製するための詳細なアプローチは、最近、報告されている(Khalifa et al.,1999)。タンパク質は、はじめに0.5Mのリボースとともに24時間37℃でインキュベートし、続いて、過剰の遊離リボースを除去し、4℃で透析によってシッフ塩基を除く。その後、AGEタンパク質への転換は、候補のアマドリ転移後の阻害剤の存在及び不存在で、37℃まで温めることによって開始する。このアッセイは、推定の化合物に対する阻害効果の評価について使用した。簡単には、タンパク質としてのBSA及び糖化試薬としてのリボースを用いて、AGEを含まない、アマドリが豊富であるタンパク質をKhalifaらに従って調製し、リン酸緩衝液に対して4℃で24時間長期の透析を行った。その後、透析した調製物を希釈し、加温し、候補阻害剤の存在及び不存在下で7日間37℃でインキュベートした。AGE産物のELISA検出は、0.5−1(0.3の代わりに)μgのタンパク質を各ポリスチレンウェルに被覆し、Superblot緩衝液をウェルをブロックするために使用したことを除き、Khalifaらによって記載したように実行した。ウサギのポリクローナル抗RNase−AGEを確立したプロトコール(Makita et al.,1992)を用いて調製し、1:1000に希釈して使用した。化合物LR103−LR115を用いた結果を図1及び2に示す。
【0043】
実施例5
アスコルビン酸の銅触媒の自動酸化の阻害
[00056]本アッセイは、Priceら(2001)に従って実行した。265nmの吸光度の減少の割合でアスコルビン酸(AA)の酸化の動力学を測定した。AGE阻害剤の研究について、アスコルビン酸は反応を開始するために添加した。アリコートを0、15、30、45、及び60分で回収し、DPTAを含有する自動注射バイアルに移動した。XterraTM RP18カラム(250×4.6mm、5μm)を用いて自動注入器を備えた逆相HPLC(Waters 2690 Millenium 32 Separator Module)によってサンプルを分析した。溶媒及び勾配はすべて、Priceら(2001)に記載されるように使用した。AA酸化の割合を50%まで阻害した各阻害化合物の濃度は、Prism(Graph Pad−San Diego)を用いて計算した。いくつかの新規化合物の銅をキレートする活性の実施例は、図3及び4に示される。
【0044】
実施例6
AGE形成のカルボニル中間体の回収
[00057]実験手法、インキュベーション条件、CML−BSAのELISA検出、反応性カルボニル及びジカルボニル基の決定は全てVoziyanら(2002)に従って行った。図5及び6は、全化合物のジカルボニルの除去性質を示す。図5は、メチルグリオキサル(MGO)捕捉のデータを示す。図6は、全ての化合物について、グリコールアルデヒド捕捉のデータを示す。データは、これらの化合物のクラスが一時的な金属キレート化及びジカルボニル回収の性質の両方を有することを示す。
【0045】
[00058]本発明は、本発明の好ましい態様の詳細に参照することによって本特許出願に開示されているが、開示は限定的な意味においてというよりはむしろ例証的であると意図されることが理解されるべきである。これは、当業者にとって、発明の精神と添付した特許請求の範囲の範囲内において、修飾が容易に生じるであろうということが予期される。
【0046】
参照文献のリスト
【0047】
【化1】

【0048】
【化2】

【0049】
【化3】

【0050】
【化4】

【0051】
【化5】

【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】[00022]図1は、アマドリ転移後のタンパク質アッセイにおける化合物LR103−115についての結果を示す。図1は、0.05、0.10、1.00及び5.00mMの濃度でのLR103−108によるアモドリ転移後のAGE形成の阻害を示す。
【図2】[00022]図2は、アマドリ転移後のタンパク質アッセイにおける化合物LR103−115についての結果を示す。図2は、0.05、0.10、0.50、1.00及び5.00mMの濃度でのLR109−115によるアモドリ転移後のAGE形成の阻害を示す。
【図3】[00023]図3は、LR103、LR104、LR105及びLR106を含むいくつかの新規化合物の銅キレート化活性の例を示す。LR103のIC50は〜75μMであり、LR104のIC50は〜100μMであり、これらの化合物が銅の強力なキレート剤であることを示す。
【図4】図4は、LR103、LR104、LR105及びLR106を含むいくつかの新規化合物の銅キレート化活性の例を示す。LR103のIC50は〜75μMであり、LR104のIC50は〜100μMであり、これらの化合物が銅の強力なキレート剤であることを示す。
【図5】[00024]図5は、化合物LR103−LR115についてのジカルボニルの回収の性質を示す。図5は、化合物のMGO捕捉活性のデータを示す。これらのクラスの化合物は、一時的な金属キレートとジカルボニル回収の性質との両方を有する。
【図6】図6は、化合物LR103−LR115についてのジカルボニル除去の性質を示す。図6は、化合物のグリコールアルデヒド捕捉活性のデータを示す。これらのクラスの化合物は、一時的な金属キレートとジカルボニル回収の性質との両方を有する。
【図7】[00025]図7は、化合物LR103の構造を示す。
【図8】[00026]図8は、化合物LR104の構造を示す。
【図9】[00027]図9は、化合物LR105の構造を示す。
【図10】[00028]図10は、化合物LR106の構造を示す。
【図11】[00029]図11は、化合物LR107の構造を示す。
【図12】[00030]図12は、化合物LR108の構造を示す。
【図13】[00031]図13は、化合物LR109の構造を示す。
【図14】[00032]図14は、化合物LR110の構造を示す。
【図15】[00033]図15は、化合物LR111の構造を示す。
【図16】[00034]図16は、化合物LR112の構造を示す。
【図17】[00035]図17は、化合物LR113の構造を示す。
【図18】[00036]図18は、化合物LR114の構造を示す。
【図19】[00037]図19は、化合物LR115の構造を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物における糖化最終産物又はタンパク質架橋の形成を阻害する方法であって、当該方法が有効量の化合物又はその化合物の薬学的に許容可能な塩を前記生物に投与することを含み、前記化合物が:
LR103: 1−[(4−クロロベンジル)−3−(3,4−ジクロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸、
LR104: 4−(4−フルオロ−3−クロロフェニルウレイド)フェノキシイソブチリルアミドフェニル−2−カルボン酸、
LR105: 1[(2−フルオロ−6−クロロベンジル)−3−(3,4−ジクロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸、
LR106: 4−(4−クロロベンジルアミノフェノキシイソブチル)酸、
LR107: 2−クロロベンゼン−1,4−ビス(4−ウレイドフェノキシイソブチル酸)、
LR108: 1−[(4−クロロベンジル)−3−(3,5−ジクロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸、
LR109: 1−[(2−フルオロ−6−クロロベンジル)−3−(2−フルオロ−6−クロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸
LR110: 4−(1,2,3,4−テトラヒドロアクリジン−9−カルボキサミドフェノキシイソブチル)酸、
LR111: 8−キノリノキシ酢酸、
LR112: 4,4’−ビス[(メチレンオキシエチレンアミノ)フェノキシ]イソブチル酸、
LR113: L−8−キノリノリル(アセチルヒスチジン)、
LR114: 4−[(3,5−ジクロロフェニルウレイド)フェノキシイソブチリルアミド]−2−ヒドロキシベンゼン−4−カルボン酸、及び
LR115: L,α−4−[(3,5−ジクロロフェニルウレイド)フェノキシイソブチリルアミド]フェニルアラニン
からなる群から選択される、前記方法。
【請求項2】
生物における加齢の有害な効果を遅らせる方法であって、前記効果が糖化した最終産物又はタンパク質架橋の形成であり、前記方法が有効量の化合物又はその化合物の薬学的に許容可能な塩を前記生物に投与することを含み、前記化合物が:
LR103: 1−[(4−クロロベンジル)−3−(3,4−ジクロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸、
LR104: 4−(4−フルオロ−3−クロロフェニルウレイド)フェノキシイソブチリルアミドフェニル−2−カルボン酸、
LR105: 1[(2−フルオロ−6−クロロベンジル)−3−(3,4−ジクロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸、
LR106: 4−(4−クロロベンジルアミノフェノキシイソブチル)酸、
LR107: 2−クロロベンゼン−1,4−ビス(4−ウレイドフェノキシイソブチル酸)、
LR108: 1−[(4−クロロベンジル)−3−(3,5−ジクロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸、
LR109: 1−[(2−フルオロ−6−クロロベンジル)−3−(2−フルオロ−6−クロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸
LR110: 4−(1,2,3,4−テトラヒドロアクリジン−9−カルボキサミドフェノキシイソブチル)酸、
LR111: 8−キノリノキシ酢酸、
LR112: 4,4’−ビス[(メチレンオキシエチレンアミノ)フェノキシ]イソブチル酸、
LR113: L−8−キノリノリル(アセチルヒスチジン)、
LR114: 4−[(3,5−ジクロロフェニルウレイド)フェノキシイソブチリルアミド]−2−ヒドロキシベンゼン−4−カルボン酸、及び
LR115: L,α−4−[(3,5−ジクロロフェニルウレイド)フェノキシイソブチリルアミド]フェニルアラニン
からなる群から選択される、前記方法。
【請求項3】
糖尿病に起因する合併症の患者の進行を遅らせる方法であって、前記合併症が糖化最終産物又はタンパク質架橋の形成に起因し、前記方法が有効量の化合物又はその化合物の薬学的に許容可能な塩を前記患者に投与することを含み、前記化合物が:
LR103: 1−[(4−クロロベンジル)−3−(3,4−ジクロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸、
LR104: 4−(4−フルオロ−3−クロロフェニルウレイド)フェノキシイソブチリルアミドフェニル−2−カルボン酸、
LR105: 1[(2−フルオロ−6−クロロベンジル)−3−(3,4−ジクロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸、
LR106: 4−(4−クロロベンジルアミノフェノキシイソブチル)酸、
LR107: 2−クロロベンゼン−1,4−ビス(4−ウレイドフェノキシイソブチル酸)、
LR108: 1−[(4−クロロベンジル)−3−(3,5−ジクロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸、
LR109: 1−[(2−フルオロ−6−クロロベンジル)−3−(2−フルオロ−6−クロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸
LR110: 4−(1,2,3,4−テトラヒドロアクリジン−9−カルボキサミドフェノキシイソブチル)酸、
LR111: 8−キノリノキシ酢酸、
LR112: 4,4’−ビス[(メチレンオキシエチレンアミノ)フェノキシ]イソブチル酸、
LR113: L−8−キノリノリル(アセチルヒスチジン)、
LR114: 4−[(3,5−ジクロロフェニルウレイド)フェノキシイソブチリルアミド]−2−ヒドロキシベンゼン−4−カルボン酸、及び
LR115: L,α−4−[(3,5−ジクロロフェニルウレイド)フェノキシイソブチリルアミド]フェニルアラニン
からなる群から選択される、前記方法。
【請求項4】
慢性関節リウマチ、アルツハイマー症、尿毒症、神経毒症、又はアテローム性動脈硬化症の患者の進行を遅らせる方法であって、前記方法が有効量の化合物又はその化合物の薬学的に許容可能な塩を前記患者に投与することを含み、前記化合物が:
LR103: 1−[(4−クロロベンジル)−3−(3,4−ジクロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸、
LR104: 4−(4−フルオロ−3−クロロフェニルウレイド)フェノキシイソブチリルアミドフェニル−2−カルボン酸、
LR105: 1[(2−フルオロ−6−クロロベンジル)−3−(3,4−ジクロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸、
LR106: 4−(4−クロロベンジルアミノフェノキシイソブチル)酸、
LR107: 2−クロロベンゼン−1,4−ビス(4−ウレイドフェノキシイソブチル酸)、
LR108: 1−[(4−クロロベンジル)−3−(3,5−ジクロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸、
LR109: 1−[(2−フルオロ−6−クロロベンジル)−3−(2−フルオロ−6−クロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸
LR110: 4−(1,2,3,4−テトラヒドロアクリジン−9−カルボキサミドフェノキシイソブチル)酸、
LR111: 8−キノリノキシ酢酸、
LR112: 4,4’−ビス[(メチレンオキシエチレンアミノ)フェノキシ]イソブチル酸、
LR113: L−8−キノリノリル(アセチルヒスチジン)、
LR114: 4−[(3,5−ジクロロフェニルウレイド)フェノキシイソブチリルアミド]−2−ヒドロキシベンゼン−4−カルボン酸、及び
LR115: L,α−4−[(3,5−ジクロロフェニルウレイド)フェノキシイソブチリルアミド]フェニルアラニン
からなる群から選択される、前記方法。
【請求項5】
食料品におけるタンパク質の損傷を防ぐ方法であって、前記方法が有効量の化合物又はその化合物の薬学的に許容可能な塩と前記食料品とを混合することを含み、前記有効量が糖化最終産物又はタンパク質架橋の形成を阻害し、前記化合物が:
LR103: 1−[(4−クロロベンジル)−3−(3,4−ジクロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸、
LR104: 4−(4−フルオロ−3−クロロフェニルウレイド)フェノキシイソブチリルアミドフェニル−2−カルボン酸、
LR105: 1[(2−フルオロ−6−クロロベンジル)−3−(3,4−ジクロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸、
LR106: 4−(4−クロロベンジルアミノフェノキシイソブチル)酸、
LR107: 2−クロロベンゼン−1,4−ビス(4−ウレイドフェノキシイソブチル酸)、
LR108: 1−[(4−クロロベンジル)−3−(3,5−ジクロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸、
LR109: 1−[(2−フルオロ−6−クロロベンジル)−3−(2−フルオロ−6−クロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸
LR110: 4−(1,2,3,4−テトラヒドロアクリジン−9−カルボキサミドフェノキシイソブチル)酸、
LR111: 8−キノリノキシ酢酸、
LR112: 4,4’−ビス[(メチレンオキシエチレンアミノ)フェノキシ]イソブチル酸、
LR113: L−8−キノリノリル(アセチルヒスチジン)、
LR114: 4−[(3,5−ジクロロフェニルウレイド)フェノキシイソブチリルアミド]−2−ヒドロキシベンゼン−4−カルボン酸、及び
LR115: L,α−4−[(3,5−ジクロロフェニルウレイド)フェノキシイソブチリルアミド]フェニルアラニン
からなる群から選択される、前記方法。
【請求項6】
LR103: 1−[(4−クロロベンジル)−3−(3,4−ジクロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸、
LR104: 4−(4−フルオロ−3−クロロフェニルウレイド)フェノキシイソブチリルアミドフェニル−2−カルボン酸、
LR105: 1[(2−フルオロ−6−クロロベンジル)−3−(3,4−ジクロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸、
LR106: 4−(4−クロロベンジルアミノフェノキシイソブチル)酸、
LR107: 2−クロロベンゼン−1,4−ビス(4−ウレイドフェノキシイソブチル酸)、
LR108: 1−[(4−クロロベンジル)−3−(3,5−ジクロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸、
LR109: 1−[(2−フルオロ−6−クロロベンジル)−3−(2−フルオロ−6−クロロフェニルウレイド)]−4−フェノキシイソブチル酸
LR110: 4−(1,2,3,4−テトラヒドロアクリジン−9−カルボキサミドフェノキシイソブチル)酸、
LR111: 8−キノリノキシ酢酸、
LR112: 4,4’−ビス[(メチレンオキシエチレンアミノ)フェノキシ]イソブチル酸、
LR113: L−8−キノリノリル(アセチルヒスチジン)、
LR114: 4−[(3,5−ジクロロフェニルウレイド)フェノキシイソブチリルアミド]−2−ヒドロキシベンゼン−4−カルボン酸、及び
LR115: L,α−4−[(3,5−ジクロロフェニルウレイド)フェノキシイソブチリルアミド]フェニルアラニン
からなる群から選択される化合物、又はその化合物の薬学的に許容可能な塩。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2007−525418(P2007−525418A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503321(P2006−503321)
【出願日】平成16年2月5日(2004.2.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/003203
【国際公開番号】WO2004/071416
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(598004424)シティ・オブ・ホープ (15)
【氏名又は名称原語表記】City of Hope
【住所又は居所原語表記】1500 East,Duarte Road,Duarte,California 91010−0269,United States of America
【Fターム(参考)】