説明

光を熱に変換する混紡糸及びそれを用いた発熱性布帛

【課題】太陽光を利用した暖かい素材を提供すること、そして、それを用いて、保温性に優れると共に適度の吸放湿性を有し、更に、軽くて風合いの調整も容易な布帛を提供すること。
【解決手段】レーヨン等のセルロース系繊維の綿20〜50重量%とアクリル綿80〜50重量%の混合綿100重量部に対し、粒径が10μm以下の竹炭を0.1〜5重量%含有するポリエステル綿を1〜10重量部添加・混合し、紡績して得られる光を熱に変換する混紡糸と、それから得られる発熱性布帛。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竹炭を含有するポリエステル綿を含む光発熱性の混紡糸、及びそれを用いた発熱性布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣服等の繊維製品の保温性を高める方法としては、生地を厚くする、生地の織目や網目を密にする等の方法で生地の断熱性を高め、身体等の内部の熱を逃さないようにする方法が一般的であった。また、中空繊維等の中空部分に空気の層を形成させることにより、保温性を高めた繊維製品も開発されている。これらの方法は、いずれも繊維製品で覆われた身体等のそれ自体の熱が、外部に逃げるのを防ぐことによる保温効果を利用するものであり、積極的な発熱効果は期待できない。
【0003】
これに対して、太陽光を吸収しこれを熱に変換して衣服内部に放散させることで、発熱及び蓄熱効果を得ようとする試みもなされている。例えば、赤外線吸収剤を繊維製品に分散あるいは固着させて、赤外線領域の光を選択的に吸収し、内部に蓄熱する効果を有する繊維製品を得る方法が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【特許文献1】特開平8−3870号公報
【特許文献2】特開平9−255890号公報
【特許文献3】特開平11−131376号公報
【特許文献4】特開2004−149931号公報
【0004】
また、発熱及び蓄熱効果を有する繊維製品を得るために、繊維の吸放湿性を利用したものも提案されている(例えば、特許文献5〜7参照)。特許文献5には、アクリレート系吸放湿発熱性繊維とポリエステル繊維の混紡糸が、特許文献6には、羊毛等の動物性繊維、ポリエステル等の疎水性合成繊維、及びアクリル系の吸放湿性発熱性繊維からなる混紡糸が開示されている。しかしながら、衣服として使用される繊維製品は、発熱性だけではなく風合い、吸湿性、適度の軽さ等の要件も要求される場合があり、従来提案されたものは、必ずしも全ての条件を満足するものではなかった。
【特許文献5】特開2001−254240号公報
【特許文献6】特開2004−300584号公報
【特許文献7】特開2004−115952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、太陽光を利用した暖かい素材を提供すること、そして、それを用いて、保温性に優れると共に適度の吸放湿性を有し、更に、軽くて風合いの調整も容易な布帛を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載された発明は、セルロース系繊維の綿20〜50重量%とアクリル綿80〜50重量%の混合綿100重量部に対し、粒径が10μm以下の竹炭を0.1〜5重量%含有するポリエステル綿を1〜10重量部添加・混合し、紡績して得られる光を熱に変換する混紡糸である。
【0007】
請求項2記載の発明は、セルロース系繊維の綿が、レーヨン綿である請求項1記載の光を熱に変換する混紡糸である。
【0008】
そして、請求項3に記載された発明は、前記請求項1又は2に記載された光を熱に変換する混紡糸を用いた発熱性布帛である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、太陽光を利用した暖かい混紡糸が提供される。混紡糸の主体は合成繊維であるアクリル綿であるから、繊度を自由に変化させることが出来、風合いの調整が容易である。アクリル繊維の異形断面糸を選ぶことで、保温性も付与することが出来る。更に、比重の軽いアクリル綿を使用することで、軽くて暖かい布帛を作成することが可能である。
また、混紡糸としてレーヨン綿等のセルロース系繊維が併用されているので、適度の吸放湿性も有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の混紡糸は、セルロース系繊維の綿20〜50重量%、好ましくは35〜45重量%と、アクリル綿80〜50重量%、好ましくは65〜55重量%の混合綿100重量部に対し、粒径が10μm以下、好ましくは1μm以下の竹炭を、0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜0.5重量%含有するポリエステル綿を、1〜10重量部添加・混合し、紡績して得られたものである。混紡する各綿の量が前記の範囲外の場合には、本発明の目的・効果が十分には発揮されない。竹炭を含有するポリエステル綿は、太陽光等の光を熱に変換する作用効果を発揮する。
【0011】
本発明において、セルロース系繊維の綿とは、木綿、麻、レーヨン、キュプラ、アセテート等のセルロース系繊維のステープル・ファイバー(短繊維)を意味する。これらの中で好ましいのは、レーヨン綿である。アクリル綿とは、アクリロニトリルのモノマー単独あるいはこれと他のモノマーとの共重合体からなるポリマーを主成分として、各種の方法で得られるアクリル繊維の短繊維を意味する。
【0012】
そして、本発明の他の態様は、前記光を熱に変換する混紡糸を用いた発熱性布帛である。混紡糸を用いた発熱性布帛としては、織物、編物、不織布等が挙げられるが、本発明の特徴を損なわない範囲で、他の繊維や糸を併用して混紡、精紡交撚、交織、交編等の手段で得られた織物、編物、不織布等であっても良い。
【0013】
本発明において用いられる、竹炭を含有するポリエステル綿は、竹を通常の製炭法で炭化させ、これを粉砕して粒径が10μm以下の微粉末としたものを、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルの樹脂(ポリマー)に添加混合し、得られた混合物を通常の方法で溶融紡糸して製造される。竹炭をポリエステルの樹脂に混合させる方法は、先ず竹炭を高濃度で含有するポリエステルのマスターチップを作り、これをポリエステルの樹脂と混合する方法でも、あるいは直接、竹炭とポリエステルの樹脂を混合する方法であっても良い。竹炭を含有するポリエステル綿の添加・混合量は、セルロース系繊維の綿とアクリル綿の混合綿100重量部に対し、1〜10重量部、好ましくは5〜8重量部である。
【0014】
本発明の混紡糸又はこれを用いて得られた発熱性布帛は、太陽光を利用した暖かい素材として、ジャケット、ズボン、トレーナー、セーター、スラックス、スカート、肌着、裏地、布団側地、座布団、椅子の側地、靴下、手袋、マフラー、帽子等に用いられる。
【実施例】
【0015】
(1)竹炭含有マスターチップの製造
常法によって得られた竹炭を、粒径が平均で約100nmの微粉末とした。ポリエチレンテレフタレートのチップに、この竹炭の微粉末を3重量%(全重量基準)添加混合し、マスターチップを製造した。
【0016】
(2)竹炭含有ポリエステル綿の製造
前記マスターチップ110kgとポリエチレンテレフタレートチップ1000kgを用いて、通常の溶融紡糸・延伸方法により、単糸デニール1.0dtex、カット長35mmのポリエステル綿を製造した。得られた竹炭含有ポリエステル綿中の竹炭の含有量は0.3重量%であった。
【0017】
(3)竹炭含有ポリエステル綿を用いた紡績糸の製造
上記竹炭含有ポリエステル綿を5重量%、レーヨン綿(0.9dtex×38mm)を35重量%、アクリル綿(0.8dtex×38mm)を60重量%の割合で混合し、常法により紡績して本発明の紡績糸(綿番手24番)を得た。
【0018】
前記紡績糸を用いて、目付が245g/mの針抜きスムースの生地を製作した。かくして得られた編地は、表1(レフランプ照射試験)と表2(サーモグラフィー試験)に示したような性能を有していた。なお、比較品として、レーヨン綿40重量%とアクリル綿60重量%の混紡糸から得られた同組織の編地を用いた。竹炭を含有する本発明の編地は、太陽の光を素早く熱に変え、繊維内の温度を上昇させることが分かる。
【0019】
【表1】

【0020】
表1の試験は、下記の条件下に行ったものである。
温度の測定条件:2枚重ねの試験布の間に熱電対を挿入し、下記の条件でレフランプを照射した時の上昇温度を測定した。
使用ランプ:PRF100V500W(フラット)東芝製
生地とランプの距離:50cm
照射面 :表
照射時間:20分
測定環境:20℃×65%RH
【0021】
【表2】

【0022】
表2の試験は、下記の条件下に行ったものである。
温度の測定条件:試料表面より下記条件でレフランプを照射する。この系が熱的に平衡に達した時の試料裏面(光照射反対面)の表面温度をサーモグラフィーにて測定。
使用ランプ:約70V
照射距離約:75cm
測定環境 :20℃×65%RH


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系繊維の綿20〜50重量%とアクリル綿80〜50重量%の混合綿100重量部に対し、粒径が10μm以下の竹炭を0.1〜5重量%含有するポリエステル綿を1〜10重量部添加・混合し、紡績して得られる光を熱に変換する混紡糸。
【請求項2】
セルロース系繊維の綿が、レーヨン綿である請求項1記載の光を熱に変換する混紡糸。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された光を熱に変換する混紡糸を用いた発熱性布帛。


【公開番号】特開2009−1927(P2009−1927A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162537(P2007−162537)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000003090)東邦テナックス株式会社 (246)
【Fターム(参考)】