説明

光アクチュエータシステム

【課題】光アクチュエータシステムにおいて、各アクチュエータのコストダウン及び重量軽減を図る。
【解決手段】アクチュエータ部21と、外部からの入力信号に基づいてアクチュエータ部21を駆動するための制御量を演算しかつ、その制御量信号を出力するアクチュエータコントローラ部12と、アクチュエータ部21に設けられかつ、アクチュエータコントローラ部12からの制御量信号に従って電力制御を行うことによりアクチュエータ部21を駆動するドライバ部22と、アクチュエータコントローラ部12とドライバ部22との間での光信号による信号伝送を行う光信号伝送路3と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光アクチュエータシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空機の操縦システムとして、フライトコントロールコンピュータに接続されるアクチュエータコントローラと操縦翼面を作動させる油圧式のアクチュエータとの間を、電気信号を伝送するワイヤで接続した、いわゆるフライバイワイヤが知られている。
【0003】
また近年、航空機の分野においては、燃費向上や重量軽減、また信頼性向上や整備コスト低減等を目的として、エンジン抽気系統及び油圧系統を廃止した全電気式航空機が検討されている。こうした全電気式航空機では、消費電力が増加することになるため電源電圧の増昇が必要となる。一方で、航空機に搭載されるディジタル機器の数が増加しており、フライバイワイヤでは、電磁干渉の増加を招くという問題がある。
【0004】
そこで、そうした電磁干渉を回避すべく、電気信号を伝送するワイヤを光信号を伝送する光ケーブルに置換した、いわゆるフライバイライトが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
このフライバイライトは、例えば図2に示すように、機体データバス4に接続されたフライトコントロールコンピュータ5と、アクチュエータコントローラ及びドライバを有するスマートアクチュエータ6と、上記フライトコントロールコンピュータ5とスマートアクチュエータ6とを互いに接続する光ケーブル34と、を備えており、上記アクチュエータコントローラが、フライトコントロールコンピュータ5から光ケーブル34を介して入力される指令信号に応じてアクチュエータ6の制御量を演算すると共に、ドライバがその演算された制御量に従って電力制御を行うことにより上記アクチュエータ6を駆動するようになっている(スマート化光アクチュエータシステム)。
【特許文献1】特許第3520982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のスマート化光アクチュエータシステムでは、アクチュエータにアクチュエータコントローラ、つまり制御コンピュータが備えられていることから、個々のアクチュエータのコストアップを招くと共に、重量の増加を招くことになる。
【0007】
また、上記の操縦翼面を作動させる各アクチュエータは翼に配置されることから、アクチュエータコントローラの対環境要求が厳しくなるという問題もある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、光アクチュエータシステムにおいてコストダウン及び重量軽減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光アクチュエータシステムは、アクチュエータと、外部からの入力信号に基づいて上記アクチュエータを駆動するための制御量を演算しかつ、その制御量信号を出力するアクチュエータコントローラと、上記アクチュエータに設けられかつ、上記アクチュエータコントローラからの制御量信号に従って上記アクチュエータを駆動するドライバと、上記アクチュエータコントローラとドライバとを互いに接続しかつ、上記アクチュエータコントローラとドライバとの間での光信号による信号伝送を行う光信号伝送路と、を備える。
【0010】
この構成によると、アクチュエータにはドライバのみが設けられ、従来のスマート化光アクチュエータシステムにおいてアクチュエータに設けられていたアクチュエータコントローラは、アクチュエータとは別に配置することになる。そうして、上記アクチュエータコントローラとドライバとが、光信号伝送路によって互いに接続され、アクチュエータコントローラが演算した制御量信号に従ってドライバがアクチュエータを駆動する。
【0011】
このように、アクチュエータコントローラをアクチュエータとは別に設けることによって、個々のアクチュエータのコストダウン及び重量低減が図られる。
【0012】
上記光アクチュエータシステムは、上記アクチュエータに設けられかつ、該アクチュエータの駆動状態を検出すると共にその検出値信号を、上記光信号伝送路を介して上記アクチュエータコントローラに出力するセンサをさらに備える、としてもよい。このことによって、アクチュエータコントローラによるアクチュエータのフィードバック制御が実行される。
【0013】
上記光信号伝送路は、光多重伝送を行う、としてもよい。このことにより、アクチュエータコントローラに対して複数のアクチュエータを1本の光ケーブルによって接続することができ、光ケーブルの本数を少なくすることができる。それによってシステムのコストダウン及び、製造・整備作業の簡素化が図られる。
【0014】
上記アクチュエータコントローラは、航空機のデータバスに接続されかつ、当該データバスからの入力信号に基づいて上記アクチュエータコントローラに対し上記アクチュエータ制御の指令信号を出力するフライトコントロールコンピュータの一部を構成する、としてもよい。
【0015】
つまり、上記光アクチュエータシステムは、航空機に搭載されるシステムとしてもよい。上述したように、上記システムは、重量低減やコスト低減が図られるため、航空機に搭載されるシステムとして有利である。また、本システムは、アクチュエータコントローラとドライバとの間を光信号伝送路によって信号伝送を行うため、従来のスマート化光アクチュエータシステム同様に、航空機における電磁干渉を低減することができる。
【0016】
また、上記アクチュエータは、上記航空機の操縦翼面を作動させるアクチュエータを含む、としてもよい。
【0017】
つまり、上記光アクチュエータシステムは、航空機の操縦システムに適用することができる。航空機の操縦翼面を作動させるアクチュエータは翼に配置されることになるが、本システムでは、アクチュエータコントローラを上記アクチュエータとは別に設けるため、アクチュエータコントローラを翼に配置する必要がなく、それに伴いアクチュエータコントローラに高い耐環境性が必要なくなる点で、有効である。
【0018】
尚、上記光アクチュエータシステムは、航空機に搭載されるシステムに限らず、その他の移動体、例えば自動車において各種アクチュエータを駆動させるための車内LANに適用することもできる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の光アクチュエータシステムによると、アクチュエータにはドライバのみを設け、アクチュエータコントローラとドライバとの間の信号伝送を光信号伝送路によって行うようにしたから、個々のアクチュエータのコストダウン及び重量低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る光アクチュエータシステムを示し、このシステムは航空機の操縦系統に適用されたシステムの一例である。
【0022】
同図において、符号1はフライトコントロールコンピュータであり、2はアクチュエータであり、3はフライトコントロールコンピュータ1側とアクチュエータ2側とを互いに接続して光信号による信号伝送を行う、光ケーブル34を備えた光信号伝送路である。ここで、光ケーブル34はバス形式の配線を構成し、このバス形式の光ケーブル34には、図1では一つのみ図示するが複数のアクチュエータ2が接続されるものとする。
【0023】
フライトコントロールコンピュータ1は、機体データバス4に接続されたフライトコントロールコンピュータ部11と、アクチュエータコントローラ部12と、を有している。
【0024】
機体データバス4には、図示を省略するが、例えば操縦桿や操縦輪等の操縦装置等が接続されている。パイロットが操縦装置を操作することに伴う操縦信号等は、機体データバス4を介して上記フライトコントロールコンピュータ部11に入力される。尚、機体データバス4は、光信号を伝送する光伝送路によって構成されていてもよいし、電気信号を伝送する電気伝送路によって構成されていてもよい。
【0025】
フライトコントロールコンピュータ部11は、機体データバス4を介して入力された操縦信号等に基づいて、操縦翼面を作動させるための指令信号をアクチュエータコントローラ部12に出力する。
【0026】
上記アクチュエータコントローラ部12は、指令信号を受けてアクチュエータ2を駆動するための制御量を演算し、その制御量信号を光信号伝送路3を介してアクチュエータ2側に出力する。
【0027】
上記アクチュエータ2は、電動アクチュエータ部21、アクチュエータコントローラ部12からの制御量信号に従って電力制御を行うことにより電動アクチュエータ部21を駆動するドライバ部22及び、電動アクチュエータ部21の駆動状態を検出するセンサ部23、を備えている。
【0028】
上記電動アクチュエータ部21は、エレベータ、ラダー、エルロンを含む主操縦翼面、及びスポイラー、フラップ、タブを含む二次操縦翼面をそれぞれ作動させるアクチュエータであり、図示は省略するが、航空機の主翼、水平尾翼及び垂直尾翼の各翼に配置されている。
【0029】
光信号伝送路3は、フライトコントロールコンピュータ1側及びアクチュエータ2側のそれぞれに設けられた、電気信号を光信号に変換するE/O変換器31a,31b、光信号を電気信号に変換するO/E変換器32a,32b、及び信号の多重化及び多重化信号の分配を行うマルチプレクサ/デマルチプレクサ33a,33b、並びに、フライトコントロールコンピュータ1側のマルチプレクサ/デマルチプレクサ33aと、アクチュエータ2側のマルチプレクサ/デマルチプレクサ33bとに接続される光ケーブル34、とから構成される。
【0030】
上記の構成により、アクチュエータコントローラ部12から出力された制御量信号(電気信号)は、E/O変換器31aによって光信号に変換されると共に、マルチプレクサ33aによって多重化されて光ファイバ34を介してアクチュエータ2側に出力される。
【0031】
そして、アクチュエータ2のデマルチプレクサ33bによって多重化した光信号が分けられかつ、O/E変換器32bによって電気信号に変換されて、ドライバ部22に入力される。
【0032】
ドライバ部22は、入力された制御量信号に従って電力制御を行うことにより、電動アクチュエータ部21を駆動する。
【0033】
アクチュエータ部21の駆動状態はセンサ部23によって検出され、その検出値信号はE/O変換器31bにより光信号に変換され、マルチプレクサ33bにより多重化されて光ファイバ34を介してフライトコントロールコンピュータ1側に出力される。
【0034】
そして、フライトコントロールコンピュータ1のデマルチプレクサ33aによって多重化した光信号が分けられかつ、O/E変換器32aによって電気信号に変換されて、アクチュエータコントローラ部12に入力される。
【0035】
アクチュエータコントローラ部12は、センサ部23の検出値信号等に基づいて制御量信号を演算し、その制御量信号を上述したようにアクチュエータ2側に出力する。こうして、操縦装置の操作に応じた電動アクチュエータ部21のフィードバック制御が実行される。
【0036】
このように、本実施形態に係る光アクチュエータシステムでは、従来のスマート化光アクチュエータシステムとは異なり、アクチュエータ2にはドライバ部22のみが設けられ、アクチュエータコントローラ部12は、アクチュエータ2とは別に配置されるため、個々のアクチュエータ2のコストダウン及び重量低減を図ることができる。
【0037】
また、この光アクチュエータシステムは、アクチュエータコントローラ部12とドライバ部22との間を光信号伝送路3によって信号伝送を行うため、従来のスマート化光アクチュエータシステム同様に、航空機における電磁干渉を低減することができる。また、光多重伝送を行うことにより、光ケーブル34の本数を少なくすることができ、システムのコストダウン及び、製造・整備作業の簡素化が図られる。
【0038】
さらに、操縦翼面を作動させるアクチュエータ2は翼に配置されることになるが、本システムでは、アクチュエータコントローラ部12がアクチュエータ2とは離れて設けられるため、アクチュエータコントローラ部12に高い耐環境性が必要なくなる点で有利である。
【0039】
尚、上記実施形態に係る光アクチュエータシステムの構成は一例であり、本発明の光アクチュエータシステムを適用した航空機の操縦系システムの構成は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。
【0040】
上記実施形態では、光アクチュエータシステムを航空機の操縦系システムに適用した例を示したが、本発明の光アクチュエータシステムは操縦系システムに限らず、その他のアクチュエータを駆動するためのシステムとすることができる。また、航空機だけに限らず、例えば自動車において各種アクチュエータを駆動させるための車内LANに適用することもできる。さらに、船舶その他の移動体においてアクチュエータを駆動するためのシステムに広く適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上説明したように、本発明は、航空機を始めとする種々の移動体においてアクチュエータを駆動するための光アクチュエータシステムについて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係る光アクチュエータシステムの一例を示すブロック図である。
【図2】従来のスマート化光アクチュエータシステムを示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 フライトコントロールコンピュータ
12 アクチュエータコントローラ部
2 アクチュエータ
21 電動アクチュエータ部
22 ドライバ部
23 センサ部
3 光信号伝送路
34 光ケーブル
4 機体データバス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータと、
外部からの入力信号に基づいて上記アクチュエータを駆動するための制御量を演算しかつ、その制御量信号を出力するアクチュエータコントローラと、
上記アクチュエータに設けられかつ、上記アクチュエータコントローラからの制御量信号に従って電力制御を行うことにより上記アクチュエータを駆動するドライバと、
上記アクチュエータコントローラとドライバとを互いに接続しかつ、上記アクチュエータコントローラとドライバとの間での光信号による信号伝送を行う光信号伝送路と、を備える光アクチュエータシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の光アクチュエータシステムにおいて、
上記アクチュエータに設けられかつ、該アクチュエータの駆動状態を検出すると共にその検出値信号を、上記光信号伝送路を介して上記アクチュエータコントローラに出力するセンサをさらに備える光アクチュエータシステム。
【請求項3】
請求項1に記載の光アクチュエータシステムにおいて、
上記光信号伝送路は、光多重伝送を行う光アクチュエータシステム。
【請求項4】
請求項1に記載の光アクチュエータシステムにおいて、
上記アクチュエータコントローラは、航空機のデータバスに接続されかつ、当該データバスからの入力信号に基づき上記アクチュエータコントローラに対し上記アクチュエータ制御の指令信号を出力するフライトコントロールコンピュータの一部を構成する光アクチュエータシステム。
【請求項5】
請求項4に記載の光アクチュエータシステムにおいて、
上記アクチュエータは、上記航空機の操縦翼面を作動させるアクチュエータを含む光アクチュエータシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−96632(P2007−96632A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281989(P2005−281989)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】