光イオン化検出器及び関連する方法

【課題】呼気サンプル中に存在する各種化合物又はガスを選択的に測定する光イオン化検出器(PID)を提供する。
【解決手段】ガスイオン化チャンバ4、少なくとも1つのイオン検知電極対6、及び少なくとも1つの増幅回路12を含む基板10と、紫外(UV)光ビームをガスイオン化チャンバ4内に送出するUVイオン化源2とを、PID1に備える。また、PID1を備えたシステムを提供する。更に、PID1を用いて呼気中の各種化合物又はガスに対する応答パターンを検出する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性ガス検出器と呼気中の揮発性ガス成分を検出する方法とに関し、特に、光イオン化検出器と、光イオン化検出器を用いて呼気中の揮発性ガス成分を検出する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト個体の呼気中に存在する揮発性ガス成分は、その個体の健康状態を表すことがある。例えば、糖尿病、腎不全、又は高コレステロールの患者の場合は、それぞれ、呼気中のアセトン、アンモニア、又はイソプレンの濃度が高い。活性酸素種は、多価不飽和脂肪酸を酸化させて、脂質ベースの遊離基を排出し、最終的には揮発性アルカン及びメタノール変性アルカンを呼気中に排出するが、これが酸化ストレスマーカーになる。したがって、呼気分析は、特定の病気を早期発見するために、信頼性が高く、非侵襲的、無痛、且つ廉価で患者をスクリーニングする一方法である。特定の病気のバイオマーカとして作用する化合物の種類及び濃度は、様々な方法によって特定可能であり、例えば、ガスクロマトグラフィ、レーザ分光、イオン移動度分光、又はセンサ技術(電気化学センサ、光イオン化センサ、半導体センサなど)のような方法によって特定可能である。呼気分析における最新の進歩は、光イオン化検出器(PID)を用いた、特定の病気の患者のスクリーニングである。
【0003】
典型的なPIDは、高エネルギ光子を有するイオン化源、イオン化チャンバ、及びイオン検出器を含む。PIDで、揮発性有機ガスを検出できる。PIDでは、高エネルギ光子をイオン化チャンバに誘導してガス分子と衝突させる。このとき、光子のエネルギがガス分子のイオン化ポテンシャルより大きい場合には、光子によってガス分子がイオン化される。イオン化された分子は、イオン及び電子として、電気的に検出可能である。
【0004】
PIDベースのセンサを用いて、応答信号をイオン化の変化と相互に関連付けることが可能であるが、そのような応答信号は、他の干渉信号から悪影響を受けて信号アーチファクトを発生することがある。この信号アーチファクトには、不要な信号応答、例えば、1種類以上の干渉分子(水、エタノール、又は一酸化炭素等)から発生する応答も含まれることがある。これらの分子を、本明細書では干渉物質と称する。干渉物質は、イオン化ポテンシャルが高いため、UV光子を遮ったり吸収したりして検出器の感度を低下させることがある。従来のPIDにおける懸念材料の1つが、内部電極及び外部電極から放出されたサンプル原子及び金属原子によってもたらされる汚染物質である。これらは、UVランプの光窓に付着して被膜を形成して、ランプからのUV光の強度を低下させることがある。この被膜は、PIDの感度を低下させるため、既知濃度の検出可能ガスのサンプルを用いてPIDの再較正を行うことが必要になる。従来のPIDはまた、基線電流が不安定であるという問題がある。これは、金属電極が高エネルギ光子にさらされて自由電子を放出し、これによって、イオン化可能ガスが存在しない場合でも基線電流が流れる可能性があるためである。正確な基線電流に戻すためには、或る基準を用いたPIDを較正が必要になることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7530257号明細書
【発明の概要】
【0006】
したがって、高選択性及び高効率で呼気中の化学成分を検出できるPIDセンサを有することが望ましい。PIDは、エネルギ効率が良いことが望ましく、可搬用途向けに小型化が可能であり、頻繁な較正を必要とせず、周囲の揮発性ガスの濃度変化に素早く応答することが望ましい。
【0007】
本発明は、呼気サンプル中に存在する揮発性ガスを検知できるPID及び関連センサシステムに関し、且つ、これらのセンサを作製及び使用する方法に関する。これらのPID又はセンサシステムを使用することにより、高選択性及び高効率に関連する問題が解決する。
【0008】
一実施形態では、光イオン化検出器(PID)が、ガスイオン化チャンバ、少なくとも1つのイオン検知電極対、及び少なくとも1つの増幅回路を含む基板と、紫外(UV)光ビームをガスイオン化チャンバ内に送出するUVイオン化源と、を備える。
【0009】
別の実施形態では、光イオン化検出器(PID)が、ガスイオン化チャンバ、少なくとも1つのイオン検知電極対、及び加熱素子を含む基板と、紫外(UV)光ビームをガスイオン化チャンバ内に送出するUVイオン化源と、温度センサと、基板と作用的に関連する温度フィードバック制御回路と、を備える。
【0010】
別の実施形態では、ガス混合物中の化合物を測定するシステムが、光イオン化検出器(PID)及び圧力センサを備える。PIDは、少なくとも1つの紫外(UV)イオン化源と、ガスイオン化チャンバ、少なくとも1つのイオン検知電極対、及び少なくとも1つの増幅回路を含む基板と、を備える。
【0011】
本発明の方法の一例では、光イオン化検出器(PID)により、呼気サンプル中の化合物を測定する方法が、呼気サンプルを光イオン化検出器内に誘導するステップと、紫外(UV)光ビームを送出して呼気サンプルを貫通させるステップと、呼気サンプルをイオン化するステップと、呼気サンプル中の化合物の量を検出するステップと、を含む。
【0012】
同様の符号で同様のパーツを示した添付図面を参照しながら下記の詳細な説明を読めば、本発明のこれら及びその他の特徴、態様、及び利点の理解が深まるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】集積回路増幅器を含む、本発明の光イオン化検出器(PID)の非限定的な実施形態の概略上面図である。
【図2】一体化されたヒータ及び温度センサを含む、本発明のPIDの非限定的な実施形態の概略上面図である。
【図3A】交互積層配列の基板の概略断面図である。
【図3B】交互積層配列の基板の概略断面図である。
【図3C】交互積層配列の基板の概略断面図である。
【図3D】交互積層配列の基板の概略断面図である。
【図3E】交互積層配列の基板の概略断面図である。
【図3F】交互積層配列の基板の概略断面図である。
【図4A】穴を有する第1、第2、及び第3の層を含むPID基板設計の一例の概略上面図である。
【図4B】穴を有する第4の層を含む同じPID基板設計の概略上面図である。
【図5A】スロット開口を有する第1、第2、及び第3の層を含むPID基板設計の一例の概略上面図である。
【図5B】スロット開口を有する第4の層を含む同じPID基板設計の上面図である。
【図6A】穴を有する第1の層を含むPID基板設計の一例の概略上面図である。
【図6B】穴を有する第2の層を含むPID基板設計の一例の概略上面図である。
【図6C】穴を有する第3の層を含むPID基板設計の一例の概略上面図である。
【図6D】穴を有する第4の層を含むPID基板設計の一例の概略上面図である。
【図7A】相互にスタックされたイオン検知電極を有する第1、第2、及び第3の層を含むPID基板設計の一例の概略上面図である。
【図7B】相互にスタックされたイオン検知電極を有する第4の層を含む同じPID基板設計の概略上面図である。
【図8A】穴を有し、フェンス電極として機能するヒータを含む第1の層を含むPID基板設計の一例の概略上面図である。
【図8B】穴を有し、フェンス電極として機能するヒータを含む第2の層を含むPID基板設計の一例の概略上面図である。
【図8C】穴を有し、フェンス電極として機能するヒータを含む第3の層を含むPID基板設計の一例の概略上面図である。
【図8D】穴を有し、フェンス電極として機能するヒータを含む第4の層を含むPID基板設計の一例の概略上面図である。
【図9A】スロット開口を有し、フェンス電極として機能するヒータを含む第1の層を含むPID基板設計の一例の概略上面図である。
【図9B】スロット開口を有し、フェンス電極として機能するヒータを含む第2の層を含むPID基板設計の一例の概略上面図である。
【図9C】スロット開口を有し、フェンス電極として機能するヒータを含む第3の層を含むPID基板設計の一例の概略上面図である。
【図9D】スロット開口を有し、フェンス電極として機能するヒータを含む第4の層を含むPID基板設計の一例の概略上面図である。
【図10A】長尺の集積回路基板にスロット開口を有し、第2の層においてヒータを含む第1の層を含むPID基板設計の一例の概略上面図である。
【図10B】長尺の集積回路基板にスロット開口を有し、第2の層においてヒータを含む第2の層を含むPID基板設計の一例の概略上面図である。
【図10C】長尺の集積回路基板にスロット開口を有し、第2の層においてヒータを含む第3の層を含むPID基板設計の一例の概略上面図である。
【図10D】長尺の集積回路基板にスロット開口を有し、第2の層においてヒータを含む第4の層を含むPID基板設計の一例の概略上面図である。
【図11】本発明のPIDの較正グラフである。
【図12】食事摂取前の3人の異なる被験者から採取した呼気サンプルの各種成分を測定する、本発明のPIDの信号出力のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のPIDの1つ以上の実施形態は、呼気中に存在する揮発性ガス又は化合物の光イオン化検出に用いられる。実施形態によっては、PIDをシステム内で使用することもある。
【0015】
1つ以上の実施形態では、PIDは、ガスイオン化チャンバ、少なくとも1つのイオン検知電極対、及び少なくとも1つの増幅回路を含む基板と、UV光ビームをガスイオン化チャンバ内に送出するUVイオン化源と、を備える。
【0016】
この基板は更に、加熱素子を含む。加熱素子は、PIDの温度を安定させ、PID内の結露を防ぐ。加熱素子は、薄膜ヒータ、加熱パッド、固体ヒータ、フィラメントヒータ、加熱テープ、又は加熱素子を有する任意のヒータであってよい。一般に、加熱素子は、PIDのイオン化チャンバの温度をほぼ一定に保ち、流入ガスの結露を防ぐ。通常動作時、加熱素子はイオン化チャンバを約300℃まで加熱するが、PIDに流入するガスの温度より高温(例えば、40〜50℃)であれば、結露を防ぐには十分である。加熱素子がない場合は、PIDが周囲空気よりも低温のときに、湿気によって光窓や電極が結露する可能性がある。光窓が結露すると、UV光が遮られ、電極が結露すると、電極間に漏れ電流が発生する。加熱素子は、イオン化チャンバの光窓及び電極を加熱して結露を防ぐ。更に、加熱素子及び温度センサが、温度フィードバック制御ループにより、PIDを最適又は一定の動作温度に保ち、温度変化に起因するPIDの基線信号又はゼロ信号の変動を無くすことが可能である。一実施形態では、加熱素子及びイオン検知電極が基板と一体化している。
【0017】
基板は更に、温度センサを含む。この温度センサは、PID内の温度変化を検知するのに有用である。基板は更に、温度フィードバック制御回路を含む。温度センサ、温度フィードバック制御回路、及び加熱素子を作用的に関連して存在させることによって、PIDの温度が所望の動作温度と異なる場合に、温度センサの出力及び温度設定点に基づいてエラー信号が生成される。温度フィードバック制御回路は、このエラー信号に基づいて加熱素子を起動又はオフにすることにより、PIDの温度を、予め設定された温度点に保持する。
【0018】
別の実施形態では、PIDが、ガスイオン化チャンバ、少なくとも1つのイオン検知電極対、及び加熱素子を含む基板と、UV光ビームをガスイオン化チャンバ内に送出するUVイオン化源と、温度センサと、基板と作用的に関連する温度フィードバック制御回路とを備える。この実施形態では、PIDに更に増幅回路を備えてよい。
【0019】
電極対が基板上に配置され、この電極対がガスイオン化チャンバと結合される。一実施形態では、電極対が増幅回路上に配置され、この電極対がガスイオン化チャンバと結合される。電極の非限定例としては、くし形電極、イオン検知電極、光電子放出電極、放電電極等がある。実施形態によっては、2つの電極対が存在してもよい。この2つの電極対のうち、一方の対をイオン化分子の測定に用い、他方の対を光電子放出電流の監視に用いることができる。イオン検出器の電極の形状は、様々であってよい。電極の構成例としては、くし形電極、組み合わせ電極、分離電極、平行板電極、単層電極、多層電極等がある。多層電極には、導体層と誘電体層とを交互に含み得る。多層電極の実施形態によっては、電極が、複数の導体層から作られたり複数の誘電体層から作られたりする。基板には更に、基板電流干渉(substrate current interference)を無くすために、イオン検知電極対の間に1つ以上の電極を含めてよい。イオン検知電流対の間で使用するこの電極を、本明細書ではフェンス電極とも称する。フェンス電極は、2つのイオン検知電極の間のイオン漏れを防ぐ。
【0020】
2つの電極の間の漏れ電流に起因する干渉は、基板電流干渉(substrate current interference)とよばれている。この電流は、電圧が高い場合に、電極の表面又はエッジから漏れる。イオン検知電極は、絶縁基板上に2つの導体を配置して形成される。検知動作時には、2つの電極の間にバイアス電圧を印加して、ガスサンプルのイオン電流を測定する(本明細書では、これらの電極をイオン電流測定電極として用いる)。しかし、絶縁基板の表面を漏れ電流が流れる可能性がある。この漏れ電流は、イオン電流に対する干渉を引き起こす。漏れ電流を減らす一方法は、2つのイオン検知電極の間に第3の電極を使用することである。第3の電極をグラウンド又は特定の電圧源に接続することにより、漏れ電流は、2つの測定電極に到達せずに、第3の電極を通ってグラウンド又は特定の電圧源に流れることになる。
【0021】
イオン検知電極は、UV光子がイオン化可能ガス分子と衝突した際に形成される正イオンを引き付ける。また、イオン検知電極と作用的に関連する電位計がある。イオン検知電極は、イオン電流を測定し、電位計は、このイオン電流を電圧に変換する。この電圧は、イオン濃度に正比例する。イオン濃度は、ガスサンプル中に存在する化合物の当量の測定値を与える。UV光子が光電子放出電流と衝突すると、電子が遊離する可能性があるが、これらの電子は、通常は光電子放出電極に引き付けられて戻り、イオン検知電極間の基線電流に寄与しない。光電子放出電極は、電子の数を測定する。電子の数は、UVランプの状態を表す。
【0022】
基板は、1つ以上の導体層、誘電体層、又は導体層と誘電体層とを組み合わせたものから作製される。基板は、金属、セラミック、ガラス、ポリマー、又はこれらを組み合わせたものから作製される。一実施形態では、基板は、シリコン、ゲルマニウム、シリコンカーバイド、シリコン窒化物、アルミニウム窒化物、アルミニウムリン化物、ボロン窒化物、ボロンリン化物、及びこれらを組み合わせたものから成る群から選択される半導体材料から作製される。基板は、例えば、セラミック基板、プリント回路基板、又はシリコン基板であってよい。セラミックベースの多層基板は、低温同時焼結セラミック技術により形成可能である。一実施形態では、基板はプリント回路基板である。基板の上面に導体層を付着させ、パターニングを行うことにより、イオン検知電極が形成される。基板の上面又は基板の底面には、加熱素子を設けてもよい。一実施形態では、基板の導体層を加熱素子として機能させる。
【0023】
基板は、単層でも多層でもよい。多層基板には、導体層と誘電体(又は非導体)層とを交互に含んでよい。実施形態によっては、多層基板が、複数の導体層又は複数の誘電体層を含む。多層基板は、第1の層、第2の層、第3の層、及び第4の層を含み得る。非限定的な一実施形態では、基板が5つ以上の層を含む。一実施形態では、基板の第1の層が、イオン検知電極対、増幅回路、及び少なくとも1つのイオン化チャンバを少なくとも含む。基板の第2の層は、UVランプに接続された電極対、及びUVランプを保持するランプホルダを含み得、このランプホルダは基板に接続されている。別の実施形態では、基板の第1の層が更に、基板上に加熱素子を含む。基板の第1の層が、基板上に温度センサを含み得る。その他、実施形態によっては、基板の第2の層が、基板上に加熱素子及び温度センサを含み得る。多層基板は、2つ以上の導体層の間に1つ以上のギャップ又はチャネルを有し得る。イオン化チャンバは、基板上の2つの誘電体層の間の1つ以上のギャップ又はチャネルの中に形成可能である。
【0024】
基板は、穴又は開口スロットの配列を含む。これらの穴又は開口スロットは、分子をイオン化するための空間を提供し、ガスイオン化チャンバとして構成されている。穴又は開口スロットはまた、各層間の接続ピンとしても機能する。開口スロットの形状は、主に矩形である。実施形態によっては、基板が、最上層及び最下層に穴又はスロット開口がある複数の層を含む。それらの実施形態では、中間層に空間があり、これがガスイオン化チャンバを形成する。ガスは、穴又はスロット開口を通って空間に達し、UV光ビームがガス内を垂直方向に通過する。この結果、ガス分子のイオン化が行われる。ガスイオン化チャンバは、イオン電流を測定するイオン検知電極を含み得る。ガスイオン化チャンバは更に、ガスイオン化チャンバに入る被制御ガス流を調整するディフューザを含む。
【0025】
UVイオン化源は、紫外ランプ(UVランプ)、又は発光ダイオード(LED)である。一実施形態では、UVイオン化源は、ランプドライバボード上に直接固定される。UVイオン化源は、UV光を、約100nmから210nmの周波数レンジで送出する。UVランプが外部電界によって励起されると、UV光ビームの形であり得るUV放射線が生成される。UV光ビームは、ガス流の経路に垂直なガスイオン化チャンバ内に誘導される。実施形態によっては、UVイオン化源が基板に直接固定される。実施形態によっては、呼気サンプル中に存在する様々な化合物に対して、複数のUVランプを選択的に用いる。呼気中の様々な化合物は、PIDポテンシャルが様々であるため、低エネルギUVランプ、及び/又は様々なUVランプを組み合わせたものを用いることにより、固有の選択性を示す。UVイオン化源は、複数のエネルギレベルのUV光を選択的に提供することが可能である。UVイオン化源は、8.4eV、9.6eV、9.8eV、10eV、10.2eV、10.6eV、又は11.6eVのUVランプ、又はこれらのUVランプのうちの複数種類を組み合わせたものから選択される。ガスの種類が異なれば放出波長も異なるので、イオン化エネルギも異なる。UVランプに使用する代表的な不活性ガスは、クリプトン、キセノン、及びアルゴンである。例えば、クリプトンのイオン化エネルギは、約10〜10.6eVの範囲にあり、キセノンのイオン化エネルギは、約8.4〜9.6eVの範囲にあり、アルゴンのイオン化エネルギは、11.7eVである。
【0026】
従来のPID用ガス放電UVランプは、2つのプレートを収容した密封ガラスエンベロープである。これらのプレートからガラスエンベロープの外に延びるリードを介して、これらのプレートに印加される高電圧が、エンベロープに閉じ込められたガス中にグロー放電プロセスを生じる。このグロー放電プロセスで発生したUV光子が、エンベロープの光窓から出て、PIDのイオン化チャンバを照らす。
【0027】
このUVイオン化源がイオン化チャンバ内のガスをイオン化し、これらのイオンがイオン検知電極で測定されることで、応答信号が発生する。イオン検知電極上のイオン濃度の変化に応じて応答信号を発生させ、制御に対して応答信号を検出することができる。各化合物のイオン化の程度は、イオン化エネルギに対して様々であり、各化合物をイオン化させるとイオンが発生することで、各化合物を表す応答信号が発生する。
【0028】
PIDは更に、直流(DC)電圧源を備える。このDC電圧源は、イオン検知電極に対して高電圧を発生させる。イオン検知電極は、10〜200VのDC電圧を供給する高電圧DC源に接続されている。
【0029】
典型的なPIDは、イオンを検知して、ピコアンペアからマイクロアンペアオーダーの信号出力を発生させる。この微弱電流を正確に測定するために、電流増幅器を用いて、信号を記録可能な十分な大きさの電圧信号に増幅する。PIDは、少なくとも1つの増幅回路を備え、増幅回路は、イオン検知電極で発生した応答信号を増幅して増幅信号を形成する。この増幅信号を、PIDと作用的に関連して存在可能な処理装置に送信する。この少なくとも1つの増幅回路は、インピーダンス変換増幅回路又は電流−電流増幅回路から選択される。インピーダンス変換増幅器は、電流を電圧に変換して、その信号を増幅する。インピーダンス変換増幅器を形成する一方法は、高利得演算増幅器を抵抗帰還で使用することである。インピーダンス変換利得は、帰還抵抗によって決まる。バイアス電圧(Vb1等)が、演算増幅器の正端子に印加されて、基線出力電圧を決定する。高感度用途の場合は、ガードリングを追加して漂遊漏れ電流を低減することにより、増幅器に向かう信号が破損しないようにすることができる。
【0030】
基板には、フィルタリング回路を設けてよい。フィルタリング回路で、測定ノイズを減らすことができる。信号にノイズが発生する原因となるのは、基板電流干渉、温度変動、湿度干渉、電磁干渉、容量結合、誘導結合、又は他の電気化学干渉である。基板電流干渉を減らすには、電極対の一方の電極を、グラウンド又は電圧源に接続する。この電極は、漏れ電流を無くす。温度変動は、温度に起因するノイズを発生させる可能性があるが、温度フィードバック制御回路を用いることによってこのノイズを除去できる。加熱素子を用いることにより、湿度に起因するノイズを除去できる。加熱素子は、PIDの内部温度を維持して結露しにくくする。PIDを金属シールドの内部にパッケージすることにより、電磁干渉を除去できる。容量結合又は誘導結合によって発生するノイズを最小化するには、増幅器を用いる。イオン検知電極の近傍に増幅器を配置することにより、電気化学干渉その他の干渉を低減できる。ppb以下からppmのレンジの低濃度のターゲット分子を測定する場合、イオン電流は非常に微弱である。測定ノイズや干渉があると、そのような微弱な電流の測定に影響を及ぼす可能性がある。ノイズや干渉を減らす一方法は、イオン検知電極の近傍に増幅回路を設けて、結合ノイズ及び干渉を最小限に抑えることである。ノイズを大幅に減らすことにより、顕著でクリアな信号を発生させることができるので、各種化合物のイオン化分子の正確な測定が可能になる。
【0031】
PIDは、ガス混合物中に存在する化合物、揮発性ガス、又は揮発性有機化合物(VOC)を検出する。例えば、PIDは、呼気サンプル中に存在する化合物、揮発性ガス、又は揮発性有機化合物(VOC)を検出する。PIDは、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、アルデヒド、ケトン、又はアルコールを検出するように構成されている。PIDは、アセトン、イソプレン、アンモニア、エタノール、メタノール、エタン、ペンタン、又はベンゼンを検出するように構成されている。或る特定の実施形態では、PIDは、アセトンを検出するように構成されている。PIDを用いて呼気中の化合物の選択的検出を行うには、異なる複数のUVランプを組み合わせて用い、他の化合物の干渉の寄与分を除去又は補償してもよい。特定の化合物だけを採取してPID検出器に誘導することによって干渉を防ぐ採取方法も実施可能である。この採取方法は、メンブレンベース、プリコンセントレータトラップベース、又は他のタイプの分離方法(例えば、ガスクロマトグラフィ、又はガスフィルタ)であってよいが、或る種の半分離方法が有効な場合もある。例えば、プリコンセントレータトラップベースの一方法の場合、アセトンは、Carbotrap Xでトラップ可能だが、より大きい分子は、この材料ではトラップされない。別のシナリオとして、他の殆どの干渉物質がトラップされている間に、対象の検体を保持することなく、選択したプリコンセントレータトラップに流すことが可能である。例えば、アセトンは、Carbotrap Y及びCarbotrap Bを通過するが、Carbotrap Y及びCarbotrap Bは、C5〜C20の長さの炭素鎖を有する広範囲のVOCをトラップすることが可能である。
【0032】
ガス混合物中の化合物を測定するシステムは、PID及び圧力センサを備える。本システムは更に、ガス混合物中の化合物の量を表すセンサ応答パターンを生成するように構成された処理装置を備える。PIDは、基板と、UV光ビームをガスイオン化チャンバ内に送出するUVイオン化源とを備える。基板は、ガスイオン化チャンバ、少なくとも1つのイオン検知電極対、及び少なくとも1つの増幅回路を含む。代替実施形態では、ガス混合物中の化合物を測定するシステムは、基板を備えたPID、圧力センサ、及び処理装置を備える。基板は、UV光ビームをガスイオン化チャンバ内に送出するUVイオン化源と、温度センサと、基板と作用的に関連する温度フィードバック制御回路と、を含む。本実施形態では、基板は、ガスイオン化チャンバ、少なくとも1つのイオン検知電極対、及び少なくとも1つの加熱素子を含む。
【0033】
呼気サンプルの圧力を測定する場合は、圧力測定レンジが0〜30水柱インチである絶対圧力センサを用いる。圧力センサを用いるのは、PIDの対象となる呼気サンプルに、圧力一定の正常な吹き込みパターンをもたせるためである。正確なデータが生成されるように、測定中は圧力一定が望ましい。PID内の2箇所での差分圧力測定に基づいて呼気サンプルの流量を測定する場合は、0〜1水柱インチのレンジを有する差分圧力センサを用いる。流量測定の目的は、正確な測定のために、十分な量の呼気をPIDに供給することである。典型的には、呼気終末呼気だけが適正なイオン濃度を含んでいるが、或る一定量の呼気サンプルが通過した後の呼気サンプルの流量とPID信号とを監視することにより、この呼気終末呼気を捕捉可能である。呼気サンプルの初期死体積は、ユーザの年齢、健康状態、及び他の関連するパラメータに応じて異なる可能性がある。本システムは更に、ガス混合物の流れを調整するディフューザを備える。このディフューザは、ガスイオン化チャンバと結合されている。上記の少なくとも1つのイオン検知電極対は、アセトン検知電極である。本システムは更に、ガス流量センサを備える。ガス流量センサは、ガスがガスイオン化チャンバを通過している間のガスの流量を検出するように構成されている。
【0034】
本システムは更に、CO2センサを備える。CO2測定は、呼気分析の重要な側面である。CO2濃度のレベルによって、本システムの様々なパラメータが決定される。例えば、ユーザの呼気が本システムにおける終末呼気に達し得るかどうかが、CO2濃度によって決まる。呼気終末呼気の所望のCO2濃度は、5%前後である。このように、CO2センサによって、正確な呼気終末測定が可能になる。CO2センサを用いる第2の目的は、異なる被験者の間で測定データを比較する際の正規化パラメータを与えることである。被験者(ヒト個体)ごとに代謝量及び肺換気量が異なるため、呼気中のVOC濃度も異なる。したがって、絶対VOC濃度データを比較するのは困難である。しかし、呼気CO2濃度で濃度を正規化すれば、呼気分析用途のための大規模データベースにおいて比較を確立することが可能である。
【0035】
本システムは更に、PIDと作用的に関連して存在する制御装置を備える。制御装置は主に、PIDの温度に応じて、温度フィードバック制御ユニット及び加熱素子を調整する。制御装置はまた、加熱素子を用いて、湿度及び結露を低減するように本システムを制御する。
【0036】
呼気サンプル中の化合物をPIDで測定する一方法は、呼気サンプルを採取するステップと、呼気サンプルをPIDに誘導するステップと、UV光ビームを送出して呼気サンプルを貫通させるステップと、呼気サンプルをイオン化するステップと、呼気サンプル中の化合物の量を検出するステップと、を含む。本方法は更に、センサ応答パターンを生成する。センサ応答パターンは、呼気サンプル中に存在する各化合物の量を定量化する。本方法は更に、PID内部の温度を維持するために、加熱素子を用いてPIDを加熱するステップを含む。本方法は更に、PID内に設けられた温度センサでPIDの温度を測定するステップを含む。本方法は更に、温度センサ及び加熱素子を用いて温度フィードバック制御メカニズムを制御する。
【0037】
ここで図1及び図2を参照すると、PIDセンサ1の異なる2つの実施形態が図示されている。PIDセンサ1は、イオン化チャンバ4、PIDのイオン検知電極6、及び加熱素子8を含む一体型基板構造10を採用している。一実施形態では、基板10が、厚さが少なくとも0.1mmのセラミックで作製されている。PIDは、紫外(UV)光ビームをガスイオン化チャンバ内に送出するUVイオン化源2を備える。図1の実施形態では、PIDは、増幅器又は増幅回路12を備えている。図2の実施形態では、PIDは、温度センサ14及び温度フィードバック制御回路16を備えている。
【0038】
図3Aから図3Fは、基板10の交互積層配列の断面図である。基板の一例は、4つの導体層と3つの非導体層とを含む。第1、第2、第3、及び第4の導体層をそれぞれ、L1、L2、L3、及びL4で示した。この4つの導体層は、3つの非導体層によって電気的に絶縁されている。図3Aでは、L1及びL3がイオン検知電極6を含み、その間に存在する層L2がフェンス電極20を含む。フェンス電極20は、イオン検知電極間の電流の漏れを防ぐ。L4は、加熱素子(ヒータ)8を含む。図3Bでは、L1及びL3がイオン検知電極6であり、その間に層L2がフェンス電極20として存在する。L4は、温度センサ22を含む。図3Cでは、L1及びL2がUVモニタ18を含み、L3及びL4がイオン検知電極6を含み、L4が更に温度センサ22を含む。図3Dでは、L1はUVモニタ18を含み、L2及びL4がイオン検知電極6を含み、その間にある層L3が加熱素子8を含む。図3Eでは、L1がUVモニタ18を含み、L2が加熱素子8を含み、L3がイオン検知電極6を含み、L4が温度センサ22を含む。図3Fは、検出器の一設計の断面図である。第1の導体層L1は温度センサ22として使用され、第2の層L2及び第3の層L3はイオン検出器6として使用され、第4の層L4は加熱素子8として使用される。
【0039】
図4A及び図4Bは、穴を有する基板を含むPID 1の上面図である。PIDは、集積回路基板28を含む。基板10の各層は、図4A及び図4Bに示したように、穴24によって相互接続されている。穴の大きさは、約0.1から1mmの範囲である。どの2つの穴も、エッジ間距離は、0.1から0.5mmである。或る特定の実施形態では、どの2つの穴もエッジ間距離が0.3mmである。各層は、1つ以上の接続ピン26を含む。図4Aは、3つの層L1、L2、及びL3を示しており、3つの層L1、L2、L3の全ての表面に加熱素子(ヒータ)が設けられており、これらの加熱素子が穴を介して直列に接続されている。加熱素子は、長い、曲がりくねった設計であり、長さは約1mであってよい。図4Bは層L4を示している。層L4は、加熱素子8及び温度フィードバック制御回路16を含む。
【0040】
図5A及び図5Bは、スロット開口を有する基板を含むPID 1の上面図である。一例では、これらのスロットが矩形形状である。PIDは、集積回路基板28を含む。基板の各層は、図5A及び図5Bに示したように、スロット開口30によって相互接続されている。一例では、各スロットの長さは8mmである。或る特定の実施形態では、スロットのエッジと集積回路基板のエッジとの間の距離は、約2mmである。各層は、1つ以上の接続ピン26を含む。PIDは集積回路基板28を含み、集積回路基板28は、長さが16mm、幅が12mmである。図5Aは、3つの層L1、L2、及びL3を示しており、3つの層L1、L2、L3の全ての表面に加熱素子(ヒータ)が設けられており、これらの加熱素子は、層間相互接続を介して直列に接続されている。図5Bは、層L4を示しており、層L4は、加熱素子8及び温度フィードバック制御回路16を含む。
【0041】
図6Aから図6Dは、穴を有する集積回路基板28を含むPID 1の上面図である。基板の各層は、穴24によって相互接続されている。各層は、1つ以上の接続ピン26を含む。図6A、6B、6C、及び6Dは、異なる4つの層L1、L2、L3、及びL4をそれぞれ示しており、4つの層の全ての表面に加熱素子(ヒータ)が設けられており、これらの加熱素子は、層間相互接続を介して直列に接続されている。図6Dは層L4を示しており、層L4は更に、温度フィードバック制御回路16を含む。スロット開口を有する場合も、同様の設計が行われる。
【0042】
図7A及び図7Bは、穴を有する集積回路基板28を含むPID 1の上面図である。図7Aは、3つの層L1、L2、及びL3を示しており、3つの層L1、L2、L3の全ての表面に加熱素子(ヒータ)が設けられており、これらの加熱素子は、層間相互接続を介して直列に接続されている。加熱素子は、長い、曲がりくねった設計であり、長さは約1mであってよい。図7Bは、層L4を示しており、層L4は、加熱素子8及び温度フィードバック制御回路16を含む。スロット開口を有する場合も、同様の設計が行われる。
【0043】
図8Aから図8Dは、穴を有する集積回路基板28を含むPID 1の上面図である。図8A、8B、8C、及び8Dは、異なる4つの層L1、L2、L3、及びL4をそれぞれ示している。4つの層の全ての表面に加熱素子(ヒータ)が設けられており、これらの加熱素子は、層間相互接続を介して直列に接続されている。L1、L2、L3、及びL4では、加熱素子は、フェンス電極としても動作する。層L3では、加熱素子は、長い、曲がりくねった設計であり、長さは約1mであってよい。図8Dは層L4を示している。層L4は更に、温度フィードバック制御回路16を含む。図8Aの電極は、直線電極である。図9Aから図9Dに示したスロット開口を有する場合も、同様の設計が行われる。様々な設計の集積回路基板を有する、別の幾つかのPIDの例を、図10Aから図10Dに示す。図10Aから図10Dの設計は、上述のものと同様であるが、集積回路基板28が上述のものより長尺となっている。この集積回路基板は、長さが約38mm、幅が約12mmである。
【実施例】
【0044】
図5に示したようなイオン検知電極対を用いて、イオン化電流を測定した。インピーダンス変換増幅器を用いて、イオン電流を電圧に変換した。取得した信号を、Labviewソフトウェアを用いて分析した。PIDの機能性を評価するために、ヒトの呼気による試験を実施した。呼気サンプル試験では、ガス管に直接接続したバクテリアフィルタマウスピース(Vacumed MQ303)を通してヒトからサンプルを採取した。呼気中に存在する水分によって結露が生じることがある。結露を避けるために、PIDセンサチップを内蔵オンチップヒータで約80℃まで加熱した。
【0045】
[実施例1]
ヒトの呼吸において、呼吸時のガス流量又は圧力は、人によって異なる。別々にいくつかの試験を行った結果、呼気流量は、2〜15L/分の範囲で変動する可能性のあることがわかった。流量が変化すると、その影響がPIDセンサの基線信号(アセトンがない場合の背景信号)に及び、イオンの測定が不正確になる。試験では、ガス流量を1L/分から20L/分まで変化させると、PIDの基線電圧が最大70mV変化することがあった。基線の変化の原因は、部分的には、流入ガスがランプ及びセンサ電極に直接当たったことであると考えられる。結果的に幾つかの影響があるが、それらは例えば、イオン化ゾーンにおける温度、流量、相対位置、及び湿度の急激な変動である。これらのいずれか又はこれらが組み合わさって、センサの基線電圧の変化を引き起こした可能性もある。この問題を緩和するために、ガスディフューザプレートを設計して、ガスチャンバ内の、PIDセンサの直前に実装した。この「I」形ディフューザは、流入ガスを2つの支流に分割して、ガス流がセンサ電極に直接当たらないようにする。幾つかの試験では、この方法により、1L/分から20L/分までの流量範囲に対して、基線電圧の変動を約6mVにまで低減することができた。
【0046】
較正に際し、PIDセンサを、様々なアセトン濃度の無水アセトン−窒素ガス混合物にさらした。図11は、10eVのUVランプを使用した場合のPIDセンサの較正データを示しており、信号ピークは、様々なアセトン濃度におけるセンサの出力電圧を示している。参照符号の34、36、38、及び40はそれぞれ、アセトン濃度が0.1ppm、0.5ppm、1ppm、及び2ppmの場合の信号ピークである。
【0047】
[実施例2]
脂質代謝では、アセトアセテートの脱カルボキシル化によってアセトンが生成される。これは、ヒトの呼気中で最も豊富な内因性化合物の1つである。健康な被験者のアセトンの量は、約0.2〜10ppmの範囲であり、コントロール不良の糖尿病の患者のアセトンの量はそれより多い。一日の間の異なる2つの時刻に3人のヒト個体からサンプルを採取することにより、幾つか試験を実施した。ガス管に直接接続したバクテリアフィルタマウスピース(Vacumed MQ303)を通して、各ヒト個体から2つの呼気サンプルを採取した。ヒトの呼気からの結露を防ぐために、PIDセンサを事前に79℃まで加熱した。一方のサンプルは、昼食の約1時間前に採取した。もう一方のサンプルは、昼食の約1時間後に採取した。図12及び表1は、PIDで検出された呼気アセトンのセンサ応答パターン(出力電圧)を示す。昼食前(図12)及び昼食後(データは図示せず)に取得した信号を比較すると、表1に示すように、呼気アセトン濃度は昼食後に約20%低下した。(図12のプロットにおける)センサ出力(ボルト単位)は、呼気サンプル中に存在したアセトンの量(ppm単位)を表している。この結果は、食後に脂質代謝が減るという一般認識と一致しているが、アセトンの量は、呼気アセトンの典型的な範囲に収まる。各信号ピークからのゆっくりした低下(テール)は、ガス管内の残留ガスの排出が遅いためである可能性があり、この試験のベンチトップセットアップでは、ガス管は約5フィート(内径4mm、体積にして最大19mL)である。結果として、PIDは、呼気サンプルの様々なガス混合物中に存在する各種化合物の量を定量化することができた。
【0048】
【表1】

比較のために、2つの市販PIDセンサ(例えば、センサ1及び2)を対照として用いたところ、ヒトの呼気の試験において異なるレベルの誤動作を示した(データは図示せず)。センサ1の応答パターン(信号)は、時間が経過しても基線に戻ることができず、データは、同じヒト個体から連続して採取された2つの別々のサンプルの間で一致しなかった。センサ2は、呼気サンプルが与えられた際に、正の信号ピークを示さずに、基線からのわずかな低下を示した(データは図示せず)。センサ1及び2は、事前の無水ガス試験では良好に機能していたので、ヒトの呼気サンプルに対してセンサが誤動作を起こしたのは、ヒトの呼気の高い湿気が原因であると考えられる。即ち、室温において呼気が結露して、センサ電極間に導電経路が形成された可能性がある。したがって、本開示のPIDは、許容誤差マージンの範囲内で様々なガスの量を定量化することができた。
【0049】
[実施例3]
PIDに好適な、様々な呼気採取方法を試験した。実験では、3通りの採取方法を試験した。それらの方法は、バクテリアフィルタマウスピースを通して直接吹き込む方法(Vacumed MQ303)、予め採取した呼気を5Lの採取袋に保管する方法(SKC)、及び予め採取した呼気を0.25LのGaSampler袋に保管する方法(Quintron)である。
【0050】
5Lの採取袋は、他の2つの採取方法と比較して、最も一貫性のある結果を示した。5L袋は、体積が大きいので、一定時間にわたって安定したガス流をPIDに供給して、安定した信号出力が得られた。直接吹き込む方法及び0.25L袋による方法では、ガス流が止まった(吹き込みが止まった、又は袋が空になった)途端にセンサ信号の低下が見られた。袋を用いて呼気サンプルを採取する場合には、水蒸気が袋の内壁に結露しがちであり、これによって、PIDセンサチャンバに流入する水濃度が低下して、水とイオンの干渉が減ることが予想される。5L及び0.25Lの袋の場合に信号振幅が小さいのは、そのためであると考えられる。0.25Lのサンプルでは、信号振幅が最小になる。これは、試験セットアップの死体積が主な原因である。また、呼気試験信号及び基線が試験データより小さいことも目を引く。これは、UVランプの寿命を延ばすためにUVランプの駆動電圧を低くした(4Vを3.5Vに下げた)ためである。駆動電圧を下げたことにより、ランプから発せられるUV強度が低下し、PIDセンサの感度が40mV/ppmから10mV/ppmに変化した。
【0051】
本発明の一部の特徴のみについて図示及び記述したが、当業者には多くの修正及び改変が想到可能であろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、そうした修正及び改変も全て、本発明の概念に含まれるものとして包含するものとすることを理解されたい。
【符号の説明】
【0052】
1 PIDセンサ
2 UVランプ
4 イオン化チャンバ穴/スロット
6 イオン検知電極対
8 ヒータ
10 基板
12 増幅器
14 温度センサ
16 温度フィードバック制御回路
18 UVモニタ
20 フェンス
22 温度センサ
24 穴
26 接続ピン
28 集積回路基板
30 スロット
34 アセトン濃度が0.1ppmの場合の信号ピーク
36 アセトン濃度が0.5ppmの場合の信号ピーク
38 アセトン濃度が1ppmの信号ピーク
40 アセトン濃度が2ppmの場合の信号ピーク
42 昼食前の被験者1からのヒトの呼気サンプル中のアセトン濃度ピーク
44 昼食前の被験者2からのヒトの呼気サンプル中のアセトン濃度ピーク
46 昼食前の被験者3からのヒトの呼気サンプル中のアセトン濃度ピーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスイオン化チャンバと、少なくとも1つのイオン検知電極対と、少なくとも1つの増幅回路とを含む基板と、
紫外(UV)光ビームを前記基板内の前記ガスイオン化チャンバ内に送出する、少なくとも1つのUVイオン化源と、
を備える光イオン化検出器(PID)。
【請求項2】
前記基板が更に加熱素子を含む、請求項1に記載の光イオン化検出器。
【請求項3】
前記基板が更に温度センサを含む、請求項1に記載の光イオン化検出器。
【請求項4】
前記基板が更に温度フィードバック制御回路を含む、請求項1に記載の光イオン化検出器。
【請求項5】
前記少なくとも1つの増幅回路及び前記少なくとも1つのイオン検知電極対が、漏れ電流信号を減らすための電気的ガードリングを内蔵する、請求項1に記載の光イオン化検出器。
【請求項6】
ガスイオン化チャンバと、少なくとも1つのイオン検知電極対と、加熱素子とを含む基板と、
紫外(UV)光ビームを前記ガスイオン化チャンバ内に送出するUVイオン化源と、
を備える光イオン化検出器(PID)。
【請求項7】
温度センサと、前記基板と作用的に関連する温度フィードバック制御回路とを更に備える、請求項6に記載の光イオン化検出器。
【請求項8】
アセトンを検出するように構成された、請求項6に記載の光イオン化検出器。
【請求項9】
光イオン化検出器(PID)及び圧力センサを備えた、ガス混合物中の化合物を測定するシステムであって、
前記PIDが、少なくとも1つの紫外(UV)イオン化源と、ガスイオン化チャンバ、少なくとも1つのイオン検知電極対、及び少なくとも1つの増幅回路を含む基板と、を備えるシステム。
【請求項10】
光イオン化検出器(PID)により、呼気サンプル中の化合物を測定する方法であって、
前記呼気サンプルを前記光イオン化検出器内に誘導するステップと、
紫外(UV)光ビームを送出して前記呼気サンプルを貫通させるステップと、
前記呼気サンプルをイオン化するステップと、
前記呼気サンプル中の前記化合物の量を検出するステップと、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11】
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【図12】
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