説明

光インターコネクトモジュールおよび光電気ハイブリッド混載ボード

【課題】データ処理装置において、チップ間やボード間で送受信される高速光信号を伝送する際に、光インターコネクトモジュールおよび、それを用いてボード上にて光及び電気の信号処理を、低損失且つ高速に行う光電気ハイブリッド混載ボードを提供すること。
【解決手段】レーザ光源素子101から発光された後、変調器素子部102内を伝播し光路変換構造によって基板垂直方向に折り曲げられた光信号と、半導体基板外部から入射され、半導体同一基板上に設けられた受光素子部103との間でやりとりされる光信号が、それぞれ半導体基板100内を介して、半導体基板外部との間で基板垂直方向に光学接続される構造の光インターコネクトモジュールとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理装置などの機器間又は機器内において、チップ間やボード間で送受信される高速光信号を伝送する際の送受信部となる光インターコネクトモジュールおよび、それを用いてボード上にて光及び電気の信号処理を行う光電気ハイブリッド混載ボードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年情報通信分野において、光を用いて大容量のデータを高速でやりとりする情報通信トラフィックの整備が急速に行われつつあり、これまで基幹、メトロ、アクセス系といった数km以上の比較的長い距離について光ファイバ網が展開されてきた。今後はさらに、ルータやサーバなどのIT機器間(数m〜数百m)或いは機器内(数cm〜数十cm)といった極めて近距離についても、大容量データを遅延なく処理するため、信号配線を光化することが有効である。
【0003】
機器間/内の光配線化に関して、例えばルータ/スイッチなどの伝送装置では、イーサなど外部から光ファイバを通して伝送された高周波信号をラインカードと呼ばれる回路ボードに入力する。このラインカードは1枚のバックプレーンに対して数枚で構成されており、各ラインカードへの入力信号はさらにバックプレーンを介してスイッチカードと呼ばれる回路ボードに集められ、スイッチカード内のLSIにて処理した後、再度バックプレーンを介して各ラインカードに出力している。ここで、現状の装置では各ラインカードから現状1Tbps以上の信号がバックプレーンを介してスイッチカードに集まる。これを現状の電気配線で伝送するには、伝播損失の関係で配線1本あたり1〜8Gbps程度に分割する必要があるため、100本以上の配線数が必要となる。
【0004】
さらに、これら高周波線路に対して波形成形回路や、反射、或いは配線間クロストークの対策が必要である。今後、さらにシステムの大容量化が進み、Tbps以上の情報を処理する装置になると、従来の電気配線では配線本数やクロストーク対策等の課題がますます深刻となってくる。これに対し、装置内ラインカード〜バックプレーン〜スイッチカードのボード間、さらにはボード内チップ間の信号伝送線路を光化することによって、10Gbps以上の高周波信号を低損失で伝播可能となるため、配線本数が少なくすむことと、高周波信号に対しても上記の対策が必要無くなるため有望である。また、上記ルータ/スイッチの他にも、ビデオカメラなどの映像機器やPC、携帯電話などの民生機器においても、今後画像高精細化にあたりモニタと端末間での映像信号伝送の高速・大容量化が求められるとともに、従来の電気配線では信号遅延、ノイズ対策等の課題が顕著となるため、信号伝送線路の光化が有効である。
【0005】
このような高速光インターコネクト回路を実現し、機器間/内に適用するためには、安価な作製手段で性能面、小型・集積化、および部品実装性に優れる光モジュール、回路が必要となる。そこで、配線媒体に従来の光ファイバより安価で高密度化に有利な光導波路を用い、基板上に光学部品と光導波路を集積した小型、高速の光モジュールが提案されている。インターコネクト伝送速度は、現状の10Gbps/chをベースとした光モジュールから、今後更に25Gbps/chや40Gbps/chの高速化が必要になると予想される。これに関し、光インターコネクト向け光源としては、現状面発光レーザ(VCSEL)等に代表される直接変調方式が主流である。しかし、上記25Gbps/ch以上の伝送速度は直接変調方式の限界と予想されるため、今後外部変調方式光源を用いた光モジュールが高速化アプローチの一つになると考えられる。
【0006】
光インターコネクトモジュールの従来方式の例として、光導波路配線基板上に、発光素子アレイと受光素子アレイ、および集積回路がそれぞれ集積された光モジュールを、半田ボールによって実装する光インターコネクト実装形態が特許文献1に開示されている。本例では、光導波路配線基板上に光モジュールを実装した際に、発光素子アレイ或いは受光素子アレイと光導波路間で、基板垂直方向に光の接続が行われると同時に、光モジュールと光導波路配線基板間で電気的な接続が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−294226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されている光インターコネクトモジュールの実装形態によれば、光モジュールには面発光レーザ(VCSEL)などの表面出射型発光素子や、表面入射型受光素子が実装される。すなわち、光信号がやりとりされる発受光面と、電気信号がやりとりされる電極が、光素子の同一面上に形成されているため、ワイヤボンド実装により光素子と光導波路間の空間的光学距離が増大することになる。これにより、空間部分での光のビーム拡がりによる光素子−光導波路間光接続損失の増大を引き起こすこととなる。特に受光部では、今後の光モジュール高速化(20Gbps/ch以上)に対して、受光素子の受光径が小さく(20μmφ以下)となるため、光のビーム拡がりによる光接続損失増大の影響が益々顕著となる。さらに、今後25Gbps/chや40Gbps/chの伝送速度高速化が進むにつれて、光源素子と面発光レーザ(VCSEL)等に代表される直接変調方式の限界や、ワイヤボンド実装におけるインダクタンス(L)の影響による電気信号の劣化の影響も顕著となってくると予想される。
【0009】
以上より、本発明の目的は、データ処理装置などの機器間又は機器内において、チップ間やボード間で送受信される高速光信号を伝送する際に、安価な作製手段で伝送速度高速化、小型・集積化、および部品実装性に優れる光インターコネクトモジュールおよび、それを用いてボード上にて光及び電気の信号処理を、低損失且つ高速に行う光電気ハイブリッド混載ボードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の光インターコネクトモジュールの主要な構成は、次の通りとなる。
【0011】
半導体基板上に搭載された光を放出する光源素子と、半導体基板に集積された該光を半導体基板表面に対して水平方向に導波する導波路と該導波路を通過した光を水平方向と異なる方向に進路を変換する光路変換手段とを含む変調器素子部と、半導体基板外部より入射する光を受光する受光素子と、受光素子を含む光素子を駆動する光素子駆動回路とを有し、光路変換手段を通過した光は、半導体基板の一主面から入射し、半導体基板内を通過し、一主面に対向する他の主面から半導体基板外部に出射されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の光電気ハイブリッド混載ボードの主要な構成は、次の通りとなる。
【0013】
上述の光インターコネクトモジュールが搭載された光電気ハイブリッド混載ボードであって、基板上に設けられたクラッド層と、該クラッド層よりも屈折率の高い材料で囲まれてなる配線コアと、該配線コアの端部に光路変換ミラー構造を具備する光導波路を具備した光配線基板を有し、光インターコネクトモジュールは光配線基板上に実装され、光インターコネクトモジュールに設けられたレーザ素子および外部変調器と光導波路、または光導波路と受光素子部との間でやりとりされる信号が、シリコン基板を介して基板垂直方向で光学的に接続されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光素子と駆動回路がSiの1チップに高密度に実装されるとともに、光変調器と受光素子がモノリシックに集積された高速・送受信一体の光インターコネクトモジュールを得ることができる。また、本発明の光インターコネクトモジュールを、光路変換ミラー構造を具備する光導波路を設けた基板上に実装することにより、光素子と光導波路間でやりとりされる信号が、Si基板を介して高効率に光学接続された光電気ハイブリッド混載ボードを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】本発明の第一の実施例である光インターコネクトモジュールの断面図である。
【図1B】本発明の第一の実施例である光インターコネクトモジュールの上面図である。
【図2】本発明の第二の実施例である光インターコネクトモジュールの断面図である。
【図3A】本発明の第三の実施例である光インターコネクトモジュールの製造方法の一例の、半導体基板上に変調器素子部を構成する材料層を形成した図である。
【図3B】本発明の第三の実施例である光インターコネクトモジュールの製造方法の一例の、半導体基板上に変調器素子部を形成した図である。
【図3C】本発明の第三の実施例である光インターコネクトモジュールの製造方法の一例の、半導体基板上に光素子駆動回路を形成した図である。
【図3D】本発明の第三の実施例である光インターコネクトモジュールの製造方法の一例の、半導体基板上に受光素子部を形成した図である。
【図3E】本発明の第三の実施例である光インターコネクトモジュールの製造方法の一例の、変調器素子部の光出力端に、光路変換部設けた図である。
【図3F】本発明の第三の実施例である光インターコネクトモジュールの製造方法の一例の、レーザ光源素子を駆動するためのバイアス電源ラインを形成した図である。
【図3G】本発明の第三の実施例である光インターコネクトモジュールの製造方法の一例の、光インターコネクトモジュールの配線パタン上に、レーザ光源素子を搭載した図である。
【図4】本発明の第四の実施例である光インターコネクションモジュールの上面図である。
【図5】本発明の第五の実施例である光インターコネクトモジュールが実装された光電気ハイブリッド混載ボードの断面図である。
【図6】本発明の第六の実施例である光インターコネクトモジュールが実装された光電気ハイブリッド混載ボードの断面図である。
【図7】本発明の第六の実施例である第一および第二の光インターコネクトモジュールがそれぞれ実装された光電気ハイブリッド混載ボードの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を用いて、本発明の実施の形態を詳細に述べる。
【実施例1】
【0017】
図1Aおよび図1Bは、それぞれ本発明の第一の実施例である光インターコネクトモジュールの概要を示す断面図および上面図である。図1Aの断面図に示すように、本実施例では、Si材料でできたSOI(Silicon−Oxide−Insulator)などの半導体基板100と、同半導体基板100上に、レーザ光源素子101、および同光源素子101と光学的に接続され、基板水平方向にSi導波路で形成した変調器素子部102を形成している。ここで、変調器素子部102の光出力端には、Si導波路の先端部を45度テーパ加工した光路変換部114を設けることによって、基板水平方向にSi導波路内を伝播する光が、基板垂直下方に90度折り曲げられる構造としている。
【0018】
本実施例では、一例として、Si導波路の先端部のテーパ角度は、45度の場合を示したが、一般に、加工精度のばらつきは±10度程度が想定される。従って、実際の仕上がりテーパ角度は、設計上45度の場合には、35〜55度の範囲内で仕上がる。
【0019】
この程度の角度の範囲内であれば、出射光あるいは入射光の光路、あるいは特性に影響を与える恐れはないものと考えられる。
【0020】
また、前記同一の半導体基板100上には受光素子部103と、光素子駆動回路104Aがモノリシックに集積されている。光素子駆動回路104は、前記変調器素子部102を駆動するドライバ回路104と、前記受光素子部103からの出力電気信号を増幅するトランスインピーダンス増幅回路115を構成している。
【0021】
図1Bでは、図1Aで図示していないバイアス電源ライン116a、bや高周波電気線路117a〜dが示されている。従って、図1Aにおいても図1Bと同様に電気的に配線されているものとする。
【0022】
本構造によれば、レーザ光源素子101から出射された光105aは、変調器素子部102と光学接続され、基板水平方向にSi導波路内を伝播する際に高速変調される。この時、変調器素子部102は同一の半導体基板100上に集積されたドライバ回路104と電気的に接続されているとともに、ドライバ回路104からの高周波電気信号が変調器素子部102に入力されている。さらに、Si導波路内伝播の変調光は、導波路先端の光路変換部114によって、基板垂直下方に90度折り曲げられた後、Si半導体基板100内を通過し、基板外部に出射される。
【0023】
同様に、基板下方の外部から、基板垂直方向の上部に向かって入射された光信号は、Si半導体基板100内を通過した後、受光素子部103と光学的に接続され電気信号に変換された後、同一の半導体基板100上に集積されたトランスインピーダンス増幅回路115を介して信号出力される。
【0024】
上述のように、本構造によって、レーザ光源素子101と変調器素子部102とを集積した光源を適用することにより、光通信や光インターコネクト用の光デバイスとして良く用いられている直接変調型のレーザ素子と比較して、20Gbps以上の超高速な光信号伝送が可能となる。さらに、図1Aのように、変調器素子部102、受光素子103、駆動回路104、115をそれぞれSiの1チップにモノリシックに集積することで、光デバイスおよび回路をSiウェハプロセスで一括に作製でき、安価且つチップスケールに小型化された光インターコネクトモジュールが実現可能である。
【0025】
なお、Si半導体基板100上に載置されるレーザ光源素子101は、インジウム燐(InP)などの化合物半導体材料を用いた基板上に作製されたレーザ素子を用いる。また、本光インターコネクトモジュールはSi材料を用いた基板および変調器素子部で構成されているため、レーザ光源素子101の発振波長はSiでの光吸収の問題を回避するため1μm以上の赤外波長帯とする。同様に、Si半導体基板100上に形成する受光素子部103は、受光部に上記1μm以上の赤外波長帯に吸収感度を有し、Siのウェハプロセスにて作製可能なゲルマニウム(Ge)材料を用いて形成している。ここで、Ge材料を用いるのは、言うまでもなく、本発明で使用する光の波長帯域が1μm以上であることを鑑みて、赤外波長帯において吸収感度を向上させるためである。
【0026】
図1Bは、本発明の第一の実施例である光インターコネクトモジュールの上面図を示す。図1Bのように、Si半導体基板100上に載置されるレーザ光源素子101、変調器素子部102と、受光素子部103、および光素子駆動回路104、115がそれぞれ2チャンネル以上(ここでは、4チャンネルの場合を示す)のアレイで構成されている。
【0027】
また、図1Bの構成では変調器素子部102アレイと受光素子103アレイがそれぞれ半導体基板100上で対向する位置に配置され、同変調器素子部102アレイと受光素子103アレイとの間に、ドライバ回路104とトランスインピーダンス増幅回路115をそれぞれ載置している。
【0028】
さらに、レーザ光源素子101を駆動するための電源やグランド(GND)等のバイアス電源ライン116a、116bを、レーザ光源素子101の光出射面と反対の面の後方部の半導体基板100上に形成している。また、変調器素子部102アレイとドライバ回路104間、および受光素子103アレイとトランスインピーダンス増幅回路115間を繋ぐ、高周波電気線路117a、117b、117c、117dについても半導体基板100上に形成している。
【0029】
図1Bに示すように、バイアス電源ライン116a、116bは、本図の左方に引き出され、一方、高周波電気線路117a、117b、117c、117dは、右方に引き出されていることが分かる。これは、高周波の電気的変動がバイアス電源ラインにノイズとして干渉を生じないように考慮して配置しているからである。高周波電気線路と電源ラインとは、互いに並走して配線することなく、できるだけ距離を離し、かつ、異なる方向に配線を行うことが好ましい。
【0030】
上述した構成によって、変調器素子部102、受光素子103、駆動回路104、115をそれぞれ多チャンネルアレイ形態でSiの1チップにモノリシックに集積することで、小型および高密度で大容量の信号伝送を可能とする光インターコネクトモジュールを実現できる。
【実施例2】
【0031】
図2は、本発明の第二の実施例である光インターコネクトモジュールの断面図である。本実施例では半導体基板100の表面上に形成している、変調器素子部102の前端に設けた光路変換部114とは反対の基板面(裏面)の、光路変換部114から基板垂直方向に引いた延長線上にレンズ113aを設けた構造としている。
【0032】
本構造によって、Si導波路内伝播の変調光は、導波路先端の光路変換部114によって、基板垂直下方に90度折り曲げられた後、Si半導体基板100内を通過し、基板外部に出射される。この際、基板外部への出射光のビーム拡がりは、基板裏面に設けたレンズ113aによって抑制或いは集光されるため、本光インターコネクトモジュールとその外部の光配線との間の高効率な光接続が可能となる。
【0033】
また、同様に受光側についても、半導体基板100の表面上に形成している受光素子部103とは反対の基板面(裏面)の、受光素子部103から基板垂直方向に引いた延長線上にレンズ113bを設けた構造としている。本構造によっても、基板外部からの入射光は、基板裏面に設けたレンズ113bによって集光され、基板表面の受光素子部103と高効率に光接続される。なお、上記Si半導体基板100の裏面に設けるレンズは、光源側レンズ113aのような任意の曲率の球面或いは非球面レンズ、若しくは受光側レンズ113bのようなフレネルレンズ形状のものでも良い。
【0034】
ここで、光源側レンズ113aに、球面或いは非球面レンズのみならず、フレネルレンズ形状のレンズを適用しても良いし、逆に、受光側レンズ113bにフレネルレンズ形状のレンズのみならず、球面或いは非球面レンズを適用しても良い。光源側レンズ113aおよび受光側レンズ113bの両方に上述の同種のレンズを用いても構わない。
【実施例3】
【0035】
図3A〜図3Gは、本発明の第三の実施例である光インターコネクトモジュールの製造方法の一例を示す図である。
【0036】
先ず、図3Aに示すように、半導体基板100に絶縁層(酸化ケイ素層)106と、シリコン層などの半導体層が積層されたSOI基板が用意され、そのSOI基板上に、変調器素子部102を構成する材料層102’が形成される。
【0037】
次に、図3Bに示すように、材料層102’は、マスクを用いてパターニングされて、変調器素子部102に加工される。変調器素子部102の材料や作製方法については特に言及しないが、SiやSiO、SiNなどを用いて、エピタキシャル成長や堆積法、或いはエッチング等によって作製可能である。
【0038】
本実施例では、変調器素子部102を半導体基板100上に形成する構造の例を示したが、用途に応じては、半導体基板100内に埋め込んで、半導体基板の表面に突出しないような構造とすることができる。その際の形成方法としては、半導体基板100に溝を形成し、その溝内に変調器素子部を構成する材料を埋め込む方法がある。
【0039】
引き続いて、図3Cのように、半導体基板100上の変調器素子部102の近傍部分に、光素子駆動回路104、トランスインピーダンス増幅回路115を形成する。この時、光素子駆動回路は後のウェハプロセス工程を考慮して、メタル配線の前段階まで実施しておいても良い。
【0040】
次に、図3Dのように、また、同半導体基板100上のトランスインピーダンス増幅回路115の近傍部分に、受光素子部103を形成する。この際も、実施例1で説明したように、受光素子部103にゲルマニウム(Ge)材料を用いて、エピタキシャル成長等のSiのウェハプロセスにて基板上に一体作製可能である。
【0041】
図3C−3Dにおいては、光素子駆動回路104、トランスインピーダンス増幅回路115、あるいは受光素子部103を半導体基板100内に、拡散層を形成し回路あるいは素子を形成したが、用途に応じては、半導体基板100上に薄膜を堆積し、それをパターニングし拡散層を形成して回路、あるいは素子を形成することも可能である。
【0042】
次に、図3Eに示すように、変調器素子部102の光出力端に、Si導波路の先端部を45度テーパ加工した光路変換部114を設けることによって、基板水平方向にSi導波路内を伝播する光が、基板垂直下方に90度折り曲げられる構造としている。45度テーパの作製方法としては、ドライエッチングやダイシングなどの物理加工や、異方性ウェットエッチング等を用いることができる。
【0043】
次に、図3Fのように、レーザ光源素子101を駆動するための電源やグランド(GND)等のバイアス電源ライン116a、116bを、レーザ光源素子101の光出射面と反対の面の後方部の半導体基板100上に形成する。また、変調器素子部102アレイとドライバ回路104間、および受光素子103アレイとトランスインピーダンス増幅回路115間を繋ぐ、高周波電気線路117a、117b、117c、117dについても半導体基板100上に上記バイアス電源ライン116a、116bと同時に形成しても良い。また、この際に光素子駆動回路104、115のメタル配線(未実施であれば)工程を実施しても良い。
【0044】
最後に、図3Gのように、Siウェハ300上に複数個配列した各々の光インターコネクトモジュール107の配線パタン上に、レーザ光源素子101を搭載することによってモジュールが完成される。なお、レーザ光源素子101の搭載は、あらかじめSiウェハ300上で実施し、その後各モジュール単位に切削等で分割しても良いし、Siウェハから各モジュール単位に分割した後、各々のモジュール上にレーザ光源素子101を搭載しても良い。
【0045】
本実施例で説明したようなプロセス工程によって、光デバイスおよび回路をSiウェハプロセスで一括に作製でき、安価且つチップスケールに小型化された光インターコネクトモジュールが実現可能である。
【実施例4】
【0046】
図4は、本発明の第四の実施例である光インターコネクトモジュールの上面図である。本実施例では、Siの半導体基板100上に集積された、変調器素子部102と、受光素子部103、および光素子駆動回路104、115がそれぞれ4チャンネルアレイで構成されている。また、レーザ光源素子101と変調器素子部アレイ102との間に、1:N(Nは、2以上の自然数とし、ここではN=4、即ち、1:4とする)の分岐構造を有する光導波路カプラ130を設けており、同光導波路カプラ130を介してレーザ光源素子101と変調器素子部アレイ102とが、それぞれ光学的に接続されている形態の光インターコネクトモジュールとしている。光導波路カプラ130は変調器素子部102と同様のSi、或いはSiO、SiNなどを用いて、エピタキシャル成長や堆積法、またはエッチング等によって作製可能である。また、光導波路カプラ130と、レーザ光源素子101または変調器素子部アレイ102との光接続部分に、入出射光モード結合を低損失で行うためのスポットサイズ変換器構造を設けることも有効である。
【0047】
本構成によって、部品点数と実装工程を削減し安価にできるとともに、さらなるチップスケールの小型化に優れた光インターコネクトモジュールが実現可能である。
【実施例5】
【0048】
図5は、本発明の第五の実施例である光インターコネクトモジュールが実装された光電気ハイブリッド混載ボードの断面図である。本実施例では、図5のように、ガラスエポキシなどの基板112上に、クラッド層111に囲まれてクラッド層よりも屈折率の高い材料でできた配線コア110a、110bから形成された光導波路配線ボードを設けている。また、各配線コア110a、110bの端部に光路変換ミラー113a、113bを載置している。本構成によれば、レーザ光源素子101から出射された光105aは、変調器素子部102と光学接続され、基板水平方向にSi導波路内を伝播する際に高速変調される。その後、Si導波路内伝播の変調光は、導波路先端の光路変換部114によって、基板垂直下方に90度折り曲げられた後、Si半導体基板100内を通過し、基板外部に出射される。さらに、同出射光113aは、Si半導体基板100に集積したレンズ105aによって集光された後、光導波路配線ボード内に設けられた光路変換ミラー113aで基板水平方向に折り曲げられ、配線コア110bと光学的に接続されるとともに、コア内を伝搬する。
【0049】
同様に、光導波路配線ボード内の配線コア110aを伝搬する光信号は、光路変換ミラー113aで基板垂直方向に折り曲げられ、光インターコネクトモジュール107の基板100に向かって入射される。その後、レンズ105bによって集光された後、Si半導体基板100内を通過し、受光素子部103と光学的に接続され電気信号に変換された後、トランスインピーダンス増幅回路115を介して信号出力される。
【0050】
なお、前記各配線コア110a、110bや光路変換ミラー113a、113bはポリマ材料等で形成しても良い。また、図5のように、光導波路の光インターコネクトモジュールと光学的に接続されている部分において、変調器素子部102と光学的に接続された光導波路の配線コア110bと、受光素子部103と光学的に接続された光導波路の配線コア110aとを、それぞれ異なる層に形成した構成としても良い。
【0051】
本構成のように、変調器素子部102、受光素子103、駆動回路104、115をそれぞれSi(シリコン)の1チップにモノリシックに集積した光インターコネクトモジュールを、光路変換ミラー構造を具備する光導波路を設けた基板上に実装することにより、光素子と光導波路間でやりとりされる信号が、Si基板を介して高効率に光学接続された高速且つ大容量の光電気ハイブリッド混載ボードを実現できる。
【実施例6】
【0052】
図6および図7は、本発明の第六の実施例である光インターコネクトモジュールが実装された光電気ハイブリッド混載ボードの断面図である。本実施例では、図6のように、光インターコネクトモジュール107の直上に電気ビア500a、500b、500cを具備したインターポーザ基板504を設けており、同インターポーザ基板504上に、スイッチや論理などのLSI501を載置している。
【0053】
本構成によれば、光インターコネクトモジュール107に集積された変調器素子部102、受光素子部103、またはドライバ回路104とトランスインピーダンス増幅回路115とLSI501との間でやりとりされる高周波の電気信号が、インターポーザ基板504のビア500a、500bを介して電気的に接続される。また、光インターコネクトモジュール107に集積されたレーザ光源素子101のバイアスは、インターポーザ基板504のビア500e、および光導波路配線ボードに形成されたビア500fを介して供給される。同様に、LSI501のバイアスやGNDについても、インターポーザ基板504のビア500cや光導波路配線ボードに形成されたビア500dを介して供給される構成としている。
【0054】
本構成によって、変調器素子部102からの光信号の出射方向と、ドライバ回路104とLSI501間の高周波電気配線ビア500aをそれぞれ上下方向に分離することで、光モジュールを3次元的に高密度の実装が可能となるとともに、ワイヤボンディングによる電気配線部分の離間を必要とせず、光インターコネクトモジュール107と光導波路間を近接可能となり、高効率に光学接続できる。さらに、レーザ光源素子101のバイアス配線を素子後方のインターポーザ基板504で引き回すことで、高周波電気配線(ビア)500aと、レーザ光源素子101のバイアス配線(ビア)500eを分離でき、高周波電気配線(ビア)500aからバイアス配線への高周波信号漏れ込みの抑制が可能となるとともに、LSI 501から発生する熱と、レーザ光源素子101の自己発熱パスをそれぞれ分離できる。
【0055】
さらに図7は、インターポーザ基板504aとLSI 501aを搭載した第一の光インターコネクトモジュール107aと、インターポーザ基板504bとLSI 501bを搭載した第二の光インターコネクトモジュール107bとを、二層構成された配線コア110a、110bおよび光路変換ミラー109a、109b、109c、109dを具備する光導波路配線ボードに搭載した形態の光電気ハイブリッド混載ボードの実装例を示す。
【0056】
本構成によって、ボード上に実装されたチップ間での、光を用いた高速・大容量の送受信信号伝送が実現できる。
【符号の説明】
【0057】
100…半導体基板、
101,101a,101b…レーザ光源素子、
102,102a,102b…変調器素子部、
102’… 変調器素子部を構成する材料層,
103,103a,103b…受光素子部、
104A…光素子駆動回路、
104…ドライバ回路、
105a,105b…光信号
106…酸化ケイ素層、
107…光インターコネクトモジュール、
108…電気配線層、
109a,109b,109c,109d,114…光路変換ミラー、
110a,110b…配線コア、
111…クラッド層、
112…基板、
113a,113b…レンズ、
114…光路変換部、
115…トランスインピーダンス増幅回路、
116a,116b…バイアス電源ライン、
117a,117b,117c,117d…高周波電気線路、
130…光導波路カプラ、
300…Siウェハ、
500a,500b,500c,500d,500e,500f…ビア、
501,501a,501b…LSI、
502a,502b…バンプ、
504,504a,504b…インターポーザ基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に搭載された光を放出する光源素子と、
前記半導体基板に集積された該光を前記半導体基板表面に対して水平方向に導波する導波路と該導波路を通過した光を前記水平方向と異なる方向に進路を変換する光路変換手段とを含む変調器素子部と、前記半導体基板外部より入射する光を受光する受光素子と、前記受光素子を含む光素子を駆動する光素子駆動回路とを有し、
前記光路変換手段を通過した光は、前記半導体基板の一主面から入射し、前記半導体基板内を通過し、前記一主面に対向する他の主面から前記半導体基板外部に出射されることを特徴とする光インターコネクトモジュール。
【請求項2】
前記半導体基板は、シリコン材料で構成され、前記光源素子は、化合物半導体に形成されたレーザ光源素子であり、前記光源素子から発振される光の波長が1μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の光インターコネクトモジュール。
【請求項3】
前記光路変換手段を通過し、光路変換された光が進行する方向と前記半導体基板の他の主面とが交差する位置を含む領域に設けられたレンズ機能を有する第1の構造体と、
前記半導体基板外部より進入し前記受光素子に入射する光が進む方向と前記半導体基板の他の主面とが交差する位置を含む領域に設けられたレンズ機能を有する第2の構造体とを設けたことを特徴とする請求項1に記載の光インターコネクトモジュール。
【請求項4】
前記光路変換手段は、前記導波路の一端を35〜55度の角度を有するテーパ加工して得られる構造を有することを特徴とする請求項1に記載の光インターコネクトモジュール。
【請求項5】
前記受光素子部は、受光部にゲルマニウム材料を用いることを特徴とする請求項1に記載の光インターコネクトモジュール。
【請求項6】
前記光素子駆動回路は、前記変調器素子部を駆動するドライバ回路と、前記受光素子からの出力電気信号を増幅するトランスインピーダンス増幅回路を含むことを特徴とする請求項2に記載の光インターコネクトモジュール。
【請求項7】
前記レーザ光源素子と、前記変調器素子部と、前記受光素子部と、前記光素子駆動回路とが、前記半導体基板上にそれぞれ2チャンネル以上のアレイをなすように配置され、
前記変調器素子部で構成された変調器素子部アレイと前記受光素子部で構成された受光素子アレイとが前記半導体基板上で対向するように配置され、
前記変調器素子部アレイと前記受光素子アレイとの間に、前記変調器素子部を駆動するドライバ回路と前記トランスインピーダンス回路がそれぞれ載置されていることを特徴とする請求項6に記載の光インターコネクトモジュール。
【請求項8】
前記半導体基板上に変調器素子部と、前記受光素子部と、前記光素子駆動回路とがそれぞれ2チャンネル以上のアレイをなすように配置され、
前記レーザ光源素子一つに対して前記変調器素子部がN個(N≧2)からなるアレイを有し、
前記レーザ光源素子から放出される光を1:N(Nは、2以上の自然数)に分岐する分岐構造を有する光導波路を介して光学的に接続されていることを特徴とする請求項6に記載の光インターコネクトモジュール。
【請求項9】
請求項2に記載の光インターコネクトモジュールが搭載された光電気ハイブリッド混載ボードであって、
基板上に設けられたクラッド層と、該クラッド層よりも屈折率の高い材料で囲まれてなる配線コアと、該配線コアの端部に光路変換ミラー構造を具備する光導波路を具備した光配線基板を有し、
前記光インターコネクトモジュールは前記光配線基板上に実装され、
前記光インターコネクトモジュールに設けられたレーザ素子および外部変調器と前記光導波路、または前記光導波路と受光素子部との間でやりとりされる信号が、シリコン基板を介して基板垂直方向で光学的に接続された光電気ハイブリッド混載ボード。
【請求項10】
前記光導波路は、ポリマ材料で形成されていることを特徴とする請求項9に記載の光電気ハイブリッド混載ボード。
【請求項11】
前記光導波路を少なくとも2層以上有し、前記光インターコネクトモジュールと光学的に接続された前記光配線基板において、
前記変調器素子部と光学的に接続された第1の光導波路と、前記受光素子部と光学的に接続された第2の光導波路とが、それぞれ異なる層に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の光電気ハイブリッド混載ボード。
【請求項12】
前記光インターコネクトモジュール上に電気ビアを具備したインターポーザ基板が設けられ、
該インターポーザ基板上にLSI回路が載置され、
前記光インターコネクトモジュールに集積された前記変調器素子部、受光素子部、または前記駆動回路と前記LSI回路とが前記インターポーザ基板を介して電気的に接続されていることを特徴とする請求項9に記載の光電気ハイブリッド混載ボード。
【請求項13】
前記インターポーザ基板は、セラミックまたは半導体材料によって形成されていることを特徴とする請求項12に記載の光電気ハイブリッド混載ボード。
【請求項14】
前記光インターコネクトモジュールに集積されたレーザ光源素子にバイアスを供給する第1の電気配線の引き出し方向と、
前記変調器素子部を駆動するために設けられた第2の電気配線の引き出し方向とは、互いに異なる方向に配線され、
前記第1の電気配線は、前記インターポーザ基板を介して前記光配線基板上と電気的に接続されていることを特徴とする請求項12に記載の光電気ハイブリッド混載ボード。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図3D】
image rotate

【図3E】
image rotate

【図3F】
image rotate

【図3G】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−208137(P2012−208137A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71261(P2011−71261)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】