説明

光インプリント用硬化性組成物およびそれを用いた硬化物の製造方法

【課題】インプリント性に優れ、かつ、基板密着および経時安定性に優れた、新規な光硬化性に優れたインプリント用硬化性組成物を提供する。
【解決手段】A)光重合性モノマーと、B)重合開始剤と、C)下記式(1)で表される化合物を含み、かつ、分子量が1000以上の化合物が全固形分中の10重量%以下であり、前記C)下記式(1)で表される化合物の含量が、全固形分中の0.3〜10.0重量%である光インプリント用硬化性組成物。
式(1)


(式(1)中、Zは脂肪族炭化水素基であり、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、R3およびR4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、メトキシ基またはエトキシ基を表し、R5はメトキシ基またはエトキシ基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光インプリント用硬化性組成物およびそれを用いた硬化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノインプリント法は、光ディスク製作では良く知られているエンボス技術を発展させ、凹凸のパターンを形成した金型原器(一般的にモールド、スタンパ、テンプレートと呼ばれる)を、レジストにプレスして力学的に変形させて微細パターンを精密に転写する技術である。モールドを一度作製すれば、ナノ構造が簡単に繰り返して成型できるため経済的であるとともに、有害な廃棄・排出物が少ないナノ加工技術であるため、近年、さまざまな分野への応用が期待されている。
【0003】
ナノインプリント法として、特に透明モールドを通して光を照射し、インプリント用硬化性組成物を光硬化させる光ナノインプリント方式では、室温でのインプリントが可能になる点で有用である(非特許文献1)。最近では、従来のリソグラフィに代わって高密度半導体集積回路の作製に応用したり、液晶ディスプレイのトランジスタの作成、セル内保護膜等に適用しようとするものであり、実用化への取り組みが活発化している。そのため、光ナノインプリントに用いる硬化性組成物の要求は年々高まっている。しかしながら、ナノインプリント性に優れた硬化性組成物を提供しようとすると、基板密着性等の他の要件が問題となる。また、ナノインプリント技術が工業化されるに伴い、経時安定性等も問題となる。
【0004】
一方、特許文献1には、バインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤および特定の構造を有するオルガノシラン化合物を含む感光性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−316247号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】M.Colbun et al,:Proc.SPIE,Vol.676,78(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて成し遂げられたものであり、インプリント性に優れ、かつ、基板密着および経時安定性に優れた、新規な光硬化性に優れたインプリント用硬化性組成物を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題のもと、発明者が鋭意検討した結果、下記手段により上記課題を解決しうることを見出した。
(1)A)光重合性モノマーと、B)重合開始剤と、C)下記式(1)で表される化合物を含み、かつ、分子量が1000以上の化合物が全固形分中の10重量%以下であり、前記C)下記式(1)で表される化合物の含量が、全固形分中の0.3〜10.0重量%である光インプリント用硬化性組成物。
式(1)
【化1】

(式(1)中、Zは脂肪族炭化水素基であり、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、R3およびR4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、メトキシ基またはエトキシ基を表し、R5はメトキシ基またはエトキシ基を表す。)
(2)前記式(1)中のZが直鎖または分岐の炭化水素基である、(1)に記載の光インプリント用硬化性組成物。
(3)前記式(1)中のZがアルキレン基である、(1)に記載の光インプリント用硬化性組成物。
(4)前記式(1)中のZが炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基である、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の光インプリント用硬化性組成物。
(5)前記式(1)中のR1およびR2の少なくとも一方が(メタ)アクリロイルオキシ基を含む置換基である、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の光インプリント用硬化性組成物。
(6)前記式(1)中のR1およびR2の少なくとも一方がアルコキシシリル基を含む置換基である、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の光インプリント用硬化性組成物。
(7)前記式(1)が下記式(2)で表される、(1)に記載の光インプリント用硬化性組成物。
【化2】

(式(2)中、R5は置換基を表し、R6およびR7は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、メトキシ基またはエトキシ基を表し、R8はメトキシ基またはエトキシ基を表す。mおよびnは、それぞれ独立に、1〜4の整数である。)
(8)さらに、界面活性剤を含有する、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の光インプリント用硬化性組成物。
(9)前記A)光重合性モノマーの少なくとも1種が、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーであることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の光インプリント用硬化性組成物。
(10)前記ウレタン(メタ)アクリレートが、3官能以上であることを特徴とする、(9)に記載の光インプリント用硬化性組成物。
(11)前記ウレタン(メタ)アクリレートが前記A)光重合性モノマーの合計量の1〜30重量%である、(9)または(10)に記載の光インプリント用硬化性組成物。
(12)(1)〜(11)のいずれか1項に記載の光インプリント用硬化性組成物を用いることを含む、硬化物の製造方法。
(13)(1)〜(11)のいずれか1項に記載の光インプリント用硬化性組成物を基材上に適用してパターン形成層を形成する工程と、前記パターン形成層表面にモールドを押圧する工程と、前記パターン形成層に光を照射する工程と、を含むことを特徴とする硬化物の製造方法。
(14)さらに、光が照射された前記パターン形成層を加熱する工程を含むことを特徴とする(13)に記載の硬化物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、パターン精度に優れた光インプリント用硬化性組成物を提供可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0011】
また、本明細書中において、“(メタ)アクリレート”は“アクリレート”および“メタクリレート”を表し、“(メタ)アクリル”は“アクリル”および“メタクリル”を表し、“(メタ)アクリロイル”は“アクリロイル”および“メタクリロイル”を表す。さらに、本明細書中において、“単量体”と“モノマー”は同義である。本発明における単量体は、オリゴマーおよびポリマーと区別され、重量平均分子量が1,000以下の化合物をいう。本明細書中において、“官能基”は重合に関与する基をいう。
なお、本発明でいう“インプリント”は、好ましくは、1nm〜10mmのサイズのパターン転写をいい、より好ましくは、およそ10nm〜100μmのサイズ(ナノインプリント)のパターン転写をいう。
【0012】
[光インプリント用硬化性組成物]
本発明の光インプリント用硬化性組成物(以下、単に「本発明の組成物」ということがある)は、A)光重合性モノマーと、B)重合開始剤と、C)式(1)で表される化合物を含み、かつ、ポリマーの含有量が10重量%以下であり、前記C)式(1)で表される化合物の含量が、全固形分中の0.3〜10.0重量%であることを特徴とする。
式(1)
【化3】

(式(1)中、Zは脂肪族炭化水素基であり、R1およびR2は、それぞれ、水素原子または置換基を表し、R3およびR4は、それぞれ、メチル基、エチル基、メトキシ基またはエトキシ基を表し、R5はメトキシ基またはエトキシ基を表す。)
【0013】
また、本発明の光インプリント用硬化性組成物は、光インプリントリソグラフィに広く用いることができ、以下のような特徴を有するものとすることができる。
(1)本発明の組成物は、室温での溶液流動性に優れるため、モールド凹部のキャビティ内に該組成物が流れ込みやすく、大気が取り込まれにくいためバブル欠陥を引き起こすことがなく、モールド凸部、凹部のいずれにおいても光硬化後に残渣が残りにくい、
(2)本発明の組成物を硬化した後の硬化膜は、機械的性質に優れ、塗膜と基材との密着性に優れ、かつ、塗膜とモールドとの剥離性に優れるため、モールドを引き剥がす際にパターン崩れや塗膜表面に糸引きが生じて表面荒れを引き起こすことがないため良好なパターンを形成できる(良好なインプリント性)、
(3)塗布均一性に優れるため、大型基材への塗布・微細加工分野などに適する、
(4)光硬化性、耐熱性、弾性回復率などの機械特性が高いので、各種の永久膜としてとして好適に用いることができる、
(5)電圧特性に優れるため、電子回路用材料などに適する、
等の特徴を有するものとすることができる。
【0014】
このため、本発明の光インプリント用硬化性組成物は、例えば、これまで展開が難しかった半導体集積回路や液晶表示装置用部材(特に、液晶ディスプレイの薄膜トランジタ、液晶カラーフィルタの保護膜、スペーサー、その他の液晶表示装置用部材の微細加工用途等)に好適に適用でき、その他の用途、例えば、プラズマディスプレイパネル用隔壁材、フラットスクリーン、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、光ディスク、高密度メモリーデイスク等の磁気記録媒体、回折格子ヤレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、光学フィルムや偏光素子、有機トランジスタ、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材、液晶配向用リブ材、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶等の作製にも幅広く適用することができる。
【0015】
本発明の光インプリント用硬化性組成物の粘度について説明する。本発明における粘度は特に述べない限り、25℃における粘度をいう。本発明の光インプリント用硬化性組成物は、25℃における粘度が、3〜50mPa・sであることが好ましく、さらに好ましくは3〜30mPa・sであり、特に好ましくは3〜20mPa・sである。本発明の組成物の粘度が3mPa・s未満では、基板塗布適性の問題や膜の機械的強度の低下が生じる場合がある。具体的には、粘度を3mPa・s以上とすることによって、組成物の塗布の際に面上ムラを生じたり、塗布時に基板から組成物が流れ出たりするのを抑止できる。また、粘度が3mPa・s以上の組成物は、粘度3mPa・s未満の組成物に較べて調製も容易である。一方、本発明の組成物の粘度を50mPa・s以下とすることにより、微細な凹凸パターンを有するモールドを組成物に密着させた場合でも、モールドの凹部のキャビティ内にも組成物が流れ込み、大気が取り込まれにくくなるため、バブル欠陥を引き起こしにくくなり、モールド凸部において光硬化後に残渣が残りにくくなる。また、本発明の組成物の粘度が50mPa・sを超えると、微細なパターンの形成に粘度が影響を与える。
一般的に、組成物の粘度は、粘度の異なる各種の単量体、ポリマーをブレンドすることで調整可能である。本発明の光インプリント用硬化性組成物の粘度を前記範囲内に設計するためには、単体の粘度が2〜5mPa・sの化合物を添加して粘度を調整することが好ましい。
【0016】
本発明の組成物には力学特性向上や離型性の付与などを目的としてポリマー等の高分子化合物を用いることもできるが、インプリント可能な低粘度にするためには、分子量が1000以上の化合物は、全固形分中の10重量%以下の含有量にしなければならない。より好ましくは5重量%以下の含有量がよい。
【0017】
(光重合性モノマー)
本発明の光インプリント用硬化性組成物には光重合性モノマーが含有される。本発明の組成物は、光重合性モノマーを含有することで、光照射後に良好なパターン精度(インプリント性)を得ることができる。本発明において、「光重合性モノマー」とは、光照射によって重合反応を起こし、高分子量体を形成することのできる単量体を意味する。
【0018】
本発明で用いられる光重合性モノマーは、組成物の粘度の調整の観点から、300Pa・s以下の粘度を有する化合物が好ましく、100mPa・s以下がさらに好ましく、30mPa・s以下が特に好ましい。
【0019】
また、本発明における光重合性モノマーは、光ラジカル重合性官能基を有することが好ましく、例えば、エチレン性不飽和結合を有する官能基が挙げられ、(メタ)アクリレート基、ビニル基、アリル基、スチリル基が好ましく、(メタ)アクリレート基がより好ましい。本発明の組成物に含まれる光重合性モノマーは、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。また、本発明の組成物は、他の光重合性モノマー(例えば、カチオン性重合性基を有する光重合性モノマー)を含んでいても良い。
【0020】
また、硬化膜の機械特性付与の観点からは、2官能以上の多官能単量体の使用が好ましい。このような多官能単量体は必然的に分子量が大きくなるため粘度が高く、組成物の高粘度化によりパターン精度が低下することもある。そこで、本発明に用いられる光重合性モノマーは、粘度の調整用の低粘度モノマーと硬化膜の機械特性付与の為の多官能モノマーとの組み合わせや、本発明におけるオキセタン化合物や官能性酸無水物の組み合せを考慮して、総合的に選択される。
【0021】
本発明の光インプリント用硬化性組成物において、全固形分中における光重合性モノマーの含有量は、光照射後のパターン精度の観点から、20〜95質量%が好ましく、30〜70質量%がさらに好ましい。
【0022】
本発明における光重合性モノマーとしては、エチレン性不飽和結合含有基を1個有する重合性不飽和単量体(1官能の重合性不飽和単量体)を挙げることができる。また、1官能の重合性不飽和単量体は、エチレン性不飽和結合含有基以外の官能基を有していてもよく、そのような官能基として、エポキシ基、オキセタニル基を好ましい例として挙げることができる。1官能の重合性不飽和単量体として、具体的には、2−アクリロイロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシ2−ヒドロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−アクリロイロキシプロピルフタレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレートや(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレートなどのオキセタニル基を有する(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(以下「EO」という。)クレゾール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロヘンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(以下「ECH」という)変性フェノキシアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、p−イソプロペニルフェノール、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾールが例示される。
これらの中でも特に、アクリレートモノマーが本発明に好適に用いられる。
【0023】
また、本発明における光重合性モノマーとしては、エチレン性不飽和結合含有基を2個有する2官能重合性不飽和単量体も好ましく用いることができる。前記2官能重合性不飽和単量体の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキシド(以後「PO」という。)変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、が例示される。
【0024】
これらの中で特に、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0025】
本発明における光重合性モノマーとしては、エチレン性不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体も好ましく用いることができる。前記多官能重合性不飽和単量体の例としては、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
これらの中で特に、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0027】
また、本発明では、レジスト上に形成される有機膜・無機膜、特に、ITO膜との密着性を向上させる目的で、光重合性モノマーとしてウレタン(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、多官能ウレタン(メタ)アクリレートがより好ましく、3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートがさらに好ましく、4〜6官能のウレタン(メタ)アクリレートが特に好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートの分子量は、300〜1000であることが好ましく、400〜700であることがより好ましい。さらに、ウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタンアクリレートであることが好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートは、A)重合性モノマーの合計量の1〜30重量%であることが好ましく、3〜20重量%であることがさらに好ましい。
例えば、新中村化学社から入手可能なU−2PPA、U−4HA、U−6HA、UA−100H、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A、U−4H、U−6H、U−108A、U−200PA、U−412A、UA−4200、UA−4400、UA−340P、UA−2235PE、UA−160TM、UA−122P、UA−5201、UA−512、UA−W2A、UA−W2、UA−7000、UA−7100、UA−7200(いずれも登録商標)や、共栄社化学社から入手可能なAH−600、AT−600、UA−306H、UA−306T、UA−306I、UA−510H、UF−8001Gなどがあり、それ以外にも任意の構造を持つウレタン(メタ)アクリレートを選択することができる。特に、光硬化性の良好なU−4HA、U−6HA、U−15HAが好適に用いられる。
【0028】
次に、本発明における光重合性モノマーの好ましいブレンド形態について説明する。
前記1官能の重合性不飽和単量体は、組成物粘度低下のために有効であり、通常、全重合性不飽和単量体の10〜100質量%の範囲で添加される。好ましくは、10〜80質量%、より好ましくは、10〜60質量%、さらに好ましくは、10〜30質量%の範囲で添加される。
前記不飽和結合含有基を2個以上有する単量体(2官能重合性不飽和単量体)は、硬化膜の機械特性を向上させるために有効であり、全重合性不飽和単量体の好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは、70質量%以上の範囲で添加される。2官能以上の重合性不飽和単量体を50質量%以上含ませることにより、硬化後の弾性回復率が改善された組成物が得られ好ましい。上限値は特に定めるものではないが、通常は、95質量%以下である。
【0029】
(光重合開始剤)
本発明の光インプリント用硬化性組成物には、光重合開始剤が含まれる。光重合開始剤は、通常、光ラジカル重合開始剤である。本発明の組成物は、光照射により重合反応を開始させる光重合開始剤を含むことで、光照射後のパターン精度を良好なものとすることができる。光重合開始剤の含有量としては、全固形分中、例えば、0.1〜15質量%が好ましく、さらに好ましくは0.2〜12質量%であり、特に好ましくは、0.3〜10質量%である。2種類以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
前記光重合開始剤の割合が0.1質量%以上であると、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。一方、光重合開始剤の割合を15質量%以下とすることにより、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。
本発明で用いる光ラジカル重合開始剤は、使用する光源の波長に対して活性を有するものが配合され、適切な活性種を発生させるものを用いる。
【0030】
本発明で使用されるラジカル光重合開始剤は、例えば、市販されている開始剤を用いることができる。これらの例としては、例えば、特開平2008−105414号公報の段落番号0091に記載のものを好ましく採用することができる。
【0031】
(式(1)で表される化合物)
本発明の組成物には、式(1)で表される化合物が含まれる。式(1)で表される化合物を添加することにより、得られる硬化物の微細凹凸パターンを有する表面構造の耐熱性や強度、組成物の露光後硬化前の金属蒸着層との密着性を高めることができる。
式(1)
【化4】

(式(1)中、Zは脂肪族炭化水素基であり、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、R3およびR4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、メトキシ基またはエトキシ基を表し、R5はメトキシ基またはエトキシ基を表す。)
Zは、好ましくは直鎖または分岐の炭化水素基であり、より好ましくは直鎖または分岐のアルキレン基であり、さらに好ましくは無置換のアルキレン基である。Zの炭素数は、通常、1〜10の整数であり、好ましくは1〜5の整数であり、より好ましくは1〜4の整数であり、さらに好ましくは1〜3の整数である。
1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、あるいは、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、シラノール基、アルキル基、エポキシ基、オキセタニル基、ビニル基、アリル基、ヒドロキシル基およびカルボキシル基のからなる群の1種以上を含む置換基(これらの置換基の1種に他の置換基がさらに置換していてもよい)が好ましい。R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する置換基(その中でも、(メタ)アクリロイルオキシ基を含むアルキル基が特に好ましく、(メタ)アクリロリルオキシ基を含む炭素数4以上のアルキル基がより特に好ましい。(メタ)アクリロイルオキシ基を含むアルキル基の炭素数は4〜20であることが好ましく、4〜15であることがより好ましく、4〜13であることがさらに好ましく、4〜10であることが特に好ましい。また、(メタ)アクリロイルオキシ基を含むアルキル基は、末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する直鎖アルキル基であることが好ましい。)、および置換または無置換のシラノール基を含む置換基(その中でも、アルコキシ基置換のシラノール基(すなわちアルコキシシリル基)を含む置換基が特に好ましく、アルコキシシリル基で置換されたアルキル基がより特に好ましく、アルコキシシリル基で置換された炭素原子数1〜4のアルキル基がさらに特に好ましく、メトキシ基またはエトキシ基で置換された炭素原子数2または3のアルキル基が最も好ましい)がより特に好ましい。
式(1)で表される化合物の含量は、全固形分中、0.3〜10.0重量%であり、0.3〜5.0重量%の範囲であることが好ましく、0.5〜2.0重量%であることが特に好ましい。このような範囲で添加することにより、粘度上昇を抑えながら、基板密着性を向上させることができる。
【0032】
式(1)で表される化合物は、下記式(2)で表されることが好ましい。
式(2)
【化5】

(式(2)中、R5は置換基を表し、R6およびR7は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、メトキシ基またはエトキシ基を表し、R8はメトキシ基またはエトキシ基を表す。mおよびnは、それぞれ独立に、1〜4の整数である。)
5はアルキル基であることが好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するアルキル基またはアルコキシシリル基で置換されたアルキル基であることがより好ましく、炭素数4以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するアルキル基であることがより好ましい。(メタ)アクリロイルオキシ基を有するアルキル基の炭素数は4〜20であることが好ましく、4〜15であることがより好ましく、4〜13であることがさらに好ましく、4〜10であることが特に好ましい。また、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するアルキル基は、末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する直鎖アルキル基であることが好ましい。
6およびR7は、それぞれ独立に、メトキシ基またはエトキシ基であることが好ましい。
mおよびnは、それぞれ独立に2または3であることが好ましい。
【0033】
式(1)で表される化合物は、当業者にとって公知の手段によって合成してもよいし、市販の網のシランカップリング剤を用いてもよい。市販品としては、例えば、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシランなどが挙げられる。
【0034】
(他の有機金属カップリング剤)
本発明の組成物には、他の有機金属カップリング剤を配合してもよい。有機金属カップリング剤を添加することにより、硬化後の密着性をより効果的に高めるためることができる。また、有機金属カップリング剤は、熱硬化反応を促進させる効果も持つため有効である。前記有機金属カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤(式(1)に該当するものを除く)、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、スズカップリング剤等の各種カップリング剤を使用できる。
【0035】
本発明の組成物に用いることのできるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシラン;および、その他のシランカップリング剤として、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0036】
前記チタンカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられる。
【0037】
前記ジルコニウムカップリング剤としては、例えば、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−ブトキシジルコニウム、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0038】
前記アルミニウムカップリング剤としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、アルミニウムエチレート、エチルアセトアセテエートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトアセテート)等を挙げることができる。
【0039】
前記有機金属カップリング剤は、本発明の光インプリント用硬化性組成物の固形分全量中に0.001〜10質量%の割合で任意に配合できる。有機金属カップリング剤の割合を0.001質量%以上とすることにより、耐熱性、強度、蒸着層との密着性の付与の向上についてより効果的な傾向にある。一方、有機金属カップリング剤の割合を10質量%以下とすることにより、本発明の組成物の安定性、成膜性の欠損を抑止できる傾向にあり好ましい。
【0040】
(溶剤)
本発明の組成物は、溶剤を含んでいてもよい。本発明の光インプリント用硬化性組成物における溶剤の含有量は、工程簡略化の観点から、全組成物中、2質量%以下とすることが好ましい。溶剤を2質量%以下とすることで、塗布後の乾燥工程が不要となる。なお、インプリント工程時に有機溶剤が含まれていると、有機溶剤が揮発した際にパターン形状が変化してしまうため、良好なパターン転写性が得られない。
【0041】
(界面活性剤)
本発明の光インプリント用硬化性組成物は界面活性剤を含んでいてもよい。本発明に用いられる界面活性剤は、全固形分中、例えば、0.001〜5質量%含有し、好ましくは0.002〜4質量%であり、さらに好ましくは、0.005〜3質量%である。2種類以上の界面活性剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。界面活性剤が組成物中0.001〜5質量%の範囲にあると、塗布の均一性の効果が良好であり、界面活性剤の過多によるモールド転写特性の悪化を招きにくい。
前記界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびフッ素・シリコーン系界面活性剤の少なくとも1種を含むことが好ましく、フッ素系界面活性剤とシリコーン系界面活性剤との両方または、フッ素・シリコーン系界面活性剤を含むことがより好ましく、フッ素・シリコーン系界面活性剤を含むことが最も好ましい。尚、前記フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤としては、非イオン性の界面活性剤が好ましい。
ここで、“フッ素・シリコーン系界面活性剤”とは、フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤の両方の要件を併せ持つものをいう。
このような界面活性剤を用いることによって、半導体素子製造用のシリコンウエハや、液晶素子製造用のガラス角基板、クロム膜、モリブデン膜、モリブデン合金膜、タンタル膜、タンタル合金膜、窒化珪素膜、アモルファスシリコーン膜、酸化錫をドープした酸化インジウム(ITO)膜や酸化錫膜などの、各種の膜が形成される基板上に本発明のインプリント硬化性組成物を塗布したときに起こるストリエーションや、鱗状の模様(レジスト膜の乾燥むら)などの塗布不良の問題を解決するが可能となる。また、モールド凹部のキャビティ内への本発明の組成物の流動性の向上、モールドとレジストとの間の剥離性の向上、レジストと基板間との密着性の向上、組成物の粘度を下げる等が可能になる。特に、本発明のインプリント組成物は、前記界面活性剤を添加することにより、塗布均一性を大幅に改良でき、スピンコーターやスリットスキャンコーターを用いた塗布において、基板サイズに依らず良好な塗布適性が得られる。
【0042】
本発明で用いることのできる、非イオン性のフッ素系界面活性剤の例としては、商品名フロラード FC−430、FC−431(住友スリーエム(株)製)、商品名サーフロン S−382(旭硝子(株)製)、EFTOP EF−122A、122B、122C、EF−121、EF−126、EF−127、MF−100((株)トーケムプロダクツ製)、商品名 PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520(いずれもOMNOVA Solutions, Inc.)、商品名フタージェントFT250、FT251、DFX18 (いずれも(株)ネオス製)、商品名ユニダインDS−401、DS−403、DS−451 (いずれもダイキン工業(株)製)、商品名メガファック171、172、173、178K、178A、(いずれも大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。
また、非イオン性の前記シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名SI−10シリーズ(竹本油脂(株)製)、メガファックペインタッド31(大日本インキ化学工業(株)製)、KP−341(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
また、前記フッ素・シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名 X−70−090、X−70−091、X−70−092、X−70−093、(いずれも、信越化学工業(株)製)、商品名メガフアックR−08、XRB−4(いずれも、大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。
【0043】
(酸化防止剤)
さらに、本発明の光インプリント用硬化性組成物は、酸化防止剤を含んでいてもよい。本発明に用いられる酸化防止剤の含有量は、全固形分中、例えば、0.01〜10質量%であり、好ましくは0.2〜5質量%である。2種類以上の酸化防止剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
前記酸化防止剤は、熱や光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NOx、SOx(Xは整数)などの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。特に本発明では、酸化防止剤を添加することにより、硬化膜の着色を防止や、分解による膜厚減少を低減できるという利点がある。このような酸化防止剤としては、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などを挙げることができる。この中でも、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が硬化膜の着色、膜厚減少の観点で好ましい。
【0044】
前記酸化防止剤の市販品としては、商品名 Irganox1010、1035FF、1076、1222(以上、チバガイギー(株)製)、商品名 Antigene P、3C、FR、スミライザーS、スミライザーGA80(住友化学工業(株)製)、商品名アデカスタブAO70、AO80、AO503、LA52、LA57、LA62、LA63、LA67、LA68LD、LA77((株)ADEKA製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0045】
(その他の成分)
本発明の組成物には前記成分の他に必要に応じて、非重合性分子、離型剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、密着促進剤、熱重合開始剤、光塩基発生剤、着色剤、エラストマー粒子、光増感剤、塩基性化合物、および、その他流動調整剤、消泡剤、分散剤等を添加してもよい。
本発明の組成物には、密着性の付与や硬化膜物性の制御を目的として、前記非重合性分子を添加することができる。このような非重合性分子の添加量は、光重合性分子の添加量を本発明の範囲に制御できる範囲で決めることができる。このような非重合性分子として、例えば、セバシン酸ジオクチルのようなアルキルエステル、(チオ)ウレア化合物、有機微粒子、無機微粒子などを挙げることができる。
【0046】
剥離性をさらに向上する目的で、本発明の組成物には、離型剤を任意に配合することができる。具体的には、本発明の組成物の層に押し付けたモールドを、樹脂層の面荒れや版取られを起こさずにきれいに剥離できるようにする目的で添加される。離型剤としては従来公知の離型剤、例えば、シリコーン系離型剤、ポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロンパウダー(テフロンは登録商標)等の固形ワックス、弗素系、リン酸エステル系化合物等が何れも使用可能である。また、これらの離型剤をモールドに付着させておくこともできる。
【0047】
前記シリコーン系離型剤は、本発明で用いられる前記光硬化性樹脂と組み合わせた時にモールドからの剥離性が特に良好であり、版取られ現象が起こり難くなる。前記シリコーン系離型剤は、オルガノポリシロキサン構造を基本構造とする離型剤であり、例えば、未変性または変性シリコーンオイル、トリメチルシロキシケイ酸を含有するポリシロキサン、シリコーン系アクリル樹脂等が該当し、一般的にハードコート用組成物で用いられているシリコーン系レベリング剤の適用も可能である。
【0048】
前記変性シリコーンオイルは、ポリシロキサンの側鎖および/または末端を変性したものであり、反応性シリコーンオイルと非反応性シリコーンオイルとに分けられる。反応性シリコーンオイルとしては、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、片末端反応性、異種官能基変性等が挙げられる。非反応性シリコーンオイルとしては、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪エステル変性、親水性特殊変性、高級アルコキシ変性、高級脂肪酸変性、フッ素変性等が挙げられる。
一つのポリシロキサン分子に前記したような変性方法の2つ以上を行うこともできる。単量体との相溶性の観点からはポリエーテル変性シリコーンオイルが好適に用いられ、KF−352A、KF−6004、KF−6012(いずれも信越化学)、BYK−307、BYK−333、BYK−378(いずれもBYKケミー)などが市販されている。
【0049】
前記変性シリコーンオイルは組成物成分との適度な相溶性があることが好ましい。特に、組成物中に必要に応じて配合される他の塗膜形成成分に対して反応性がある反応性シリコーンオイルを用いる場合には、本発明の組成物を硬化した硬化膜中に化学結合よって固定されるので、当該硬化膜の密着性阻害、汚染、劣化等の問題が起き難い。特に、蒸着工程での蒸着層との密着性向上には有効である。また、(メタ)アクリロイル変性シリコーン、ビニル変性シリコーン等の、光硬化性を有する官能基で変性されたシリコーンの場合は、本発明の組成物と架橋するため、硬化後の特性に優れる。
【0050】
前記トリメチルシロキシケイ酸を含有するポリシロキサンは表面にブリードアウトし易く剥離性に優れており、表面にブリードアウトしても密着性に優れ、金属蒸着やオーバーコート層との密着性にも優れている点で好ましい。
前記離型剤は1種類のみ或いは2種類以上を組み合わせて添加することができる。
【0051】
離型剤を本発明の光インプリント用硬化性組成物に添加する場合、組成物全量中に0.001〜10質量%の割合で配合することが好ましく、0.01〜5質量%の範囲で添加することがさらに好ましい。離型剤の含有量が0.01〜5質量%の範囲内にあると、モールドと光インプリント用硬化性組成物層との剥離性向上効果が向上し、さらに組成物の塗工時のはじきによる塗膜面の面荒れの問題が生じたり、製品において基材自身や近接する層、例えば、蒸着層の密着性を阻害したり、転写時における皮膜破壊等(膜強度が弱くなりすぎる)が生じるのを抑制することができる。
【0052】
本発明の光インプリント用硬化性組成物には、貯蔵安定性等を向上させるために、重合禁止剤を配合してもよい。前記重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のフェノール類;ベンゾキノン、ジフェニルベンゾキノン等のキノン類;フェノチアジン類;銅類等を用いることができる。重合禁止剤は、本発明の組成物の全量に対して任意に0.001〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0053】
本発明の光インプリント用硬化性組成物には紫外線吸収剤を用いることもできる。前記紫外線吸収剤の市販品としては、Tinuvin P、234、320、326、327、328、213(以上、チバガイギー(株)製)、Sumisorb110、130、140、220、250、300、320、340、350、400(以上、住友化学工業(株)製)等が挙げられる。紫外線吸収剤は、光インプリント用硬化性組成物の全量に対して任意に0.01〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0054】
本発明の光インプリント用硬化性組成物には光安定剤を用いることもできる。前記光安定剤の市販品としては、Tinuvin 292、144、622LD(以上、チバガイギー(株)製)、サノールLS−770、765、292、2626、1114、744(以上、三共化成工業(株)製)等が挙げられる。光安定剤は組成物の全量に対し、0.01〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0055】
本発明の光インプリント用硬化性組成物には老化防止剤を用いることもできる。前記老化防止剤の市販品としては、Antigene W、S、P、3C、6C、RD−G、FR、AW(以上、住友化学工業(株)製)等が挙げられる。老化防止剤は組成物の全量に対し、0.01〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0056】
本発明の光インプリント用硬化性組成物には基板との接着性や膜の柔軟性、硬度等を調整するために可塑剤を加えることが可能である。好ましい可塑剤の具体例としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン、ジメチルアジペート、ジエチルアジペート、ジ(n−ブチル)アジペート、ジメチルスベレート、ジエチルスベレート、ジ(n−ブチル)スベレート等があり、可塑剤は組成物中の30質量%以下で任意に添加することができる。好ましくは20質量%以下で、より好ましくは10質量%以下である。可塑剤の添加効果を得るためには、0.1質量%以上が好ましい。
【0057】
本発明の光インプリント用硬化性組成物には基板との接着性等を調整するために密着促進剤を添加してもよい。前記密着促進剤として、ベンズイミダゾール類やポリベンズイミダゾール類、低級ヒドロキシアルキル置換ピリジン誘導体、含窒素複素環化合物、ウレアまたはチオウレア、有機リン化合物、8−オキシキノリン、4−ヒドロキシプテリジン、1,10−フェナントロリン、2,2‘−ビピリジン誘導体、ベンゾトリアゾール類、有機リン化合物とフェニレンジアミン化合物、2−アミノ−1−フェニルエタノール、N−フェニルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン,N−エチルジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンおよび誘導体、ベンゾチアゾール誘導体などを使用することができる。密着促進剤は、組成物中の好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。密着促進剤の添加は効果を得るためには、0.1質量%以上が好ましい。
【0058】
本発明の組成物を硬化させる場合、必要に応じて熱重合開始剤も添加することができる。好ましい熱重合開始剤としては、例えば過酸化物、アゾ化合物を挙げることができる。具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチル−パーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。熱重合開始剤は、組成物中の好ましくは8.0質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下、さらに好ましくは4.0質量%以下である。熱重合開始剤の添加は効果を得るためには、3.0質量%以上が好ましい。
【0059】
本発明の光インプリント用硬化性組成物は、パターン形状、感度等を調整する目的で、必要に応じて光塩基発生剤を添加してもよい。光塩基発生剤としては、例えば、2−ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、トリフェニルメタノール、O−カルバモイルヒドロキシルアミド、O−カルバモイルオキシム、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサン1,6−ジアミン、4−(メチルチオベンゾイル)−1−メチル−1−モルホリノエタン、(4−モルホリノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパン、N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン、ヘキサアンミンコバルト(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、2,6−ジメチル−3,5−ジアセチル−4−(2’−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン、2,6−ジメチル−3,5−ジアセチル−4−(2’,4’−ジニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン等が好ましいものとして挙げられる。
【0060】
本発明の光インプリント用硬化性組成物には、塗膜の視認性を向上するなどの目的で、着色剤を任意に添加してもよい。着色剤は、UVインクジェット組成物、カラーフィルタ用組成物およびCCDイメージセンサ用組成物等で用いられている顔料や染料を本発明の目的を損なわない範囲で用いることができる。本発明で用いることができる顔料としては、例えば、特開平2008−105414号公報の段落番号0121に記載のものを好ましく採用することができる。着色剤は組成物の全量に対し、0.001〜2質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0061】
また、本発明の光インプリント用硬化性組成物では、機械的強度、柔軟性等を向上するなどの目的で、任意成分としてエラストマー粒子を添加してもよい。
本発明の組成物に任意成分として添加できるエラストマー粒子は、平均粒子サイズが好ましくは10nm〜700nm、より好ましくは30〜300nmである。例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/イソプレン共重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/α−オレフィン系共重合体、エチレン/α−オレフィン/ポリエン共重合体、アクリルゴム、ブタジエン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体などのエラストマーの粒子である。またこれらエラストマー粒子を、メチルメタアクリレートポリマー、メチルメタアクリレート/グリシジルメタアクリレート共重合体などで被覆したコア/シェル型の粒子を用いることができる。エラストマー粒子は架橋構造をとっていてもよい。
【0062】
エラストマー粒子の市販品としては、例えば、レジナスボンドRKB(レジナス化成(株)製)、テクノMBS−61、MBS−69(以上、テクノポリマー(株)製)等を挙げることができる。
【0063】
これらエラストマー粒子は単独で、または2種以上組み合わせて使用することができる。本発明の組成物におけるエラストマー成分の含有割合は、好ましくは1〜35質量%であり、より好ましくは2〜30質量%、特に好ましくは3〜20質量%である。
【0064】
さらに本発明の光インプリント用硬化性組成物には、光ラジカル重合開始剤の他に、光増感剤を加えて、UV領域の波長を調整することもできる。本発明において用いることができる典型的な増感剤としては、クリベロ〔J.V.Crivello,Adv.in Polymer Sci,62,1(1984)〕に開示しているものが挙げられ、具体的には、ピレン、ペリレン、アクリジンオレンジ、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、ベンゾフラビン、N−ビニルカルバゾール、9,10−ジブトキシアントラセン、アントラキノン、クマリン、ケトクマリン、フェナントレン、カンファキノン、フェノチアジン誘導体などを挙げることができる。
【0065】
本発明の組成物には、硬化収縮の抑制、熱安定性を向上するなどの目的で、塩基性化合物を任意に添加してもよい。塩基性化合物としては、アミン、キノリンおよびキノリジンなど含窒素複素環化合物、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物などが挙げられる。これらの中でも、光重合成モノマーとの相溶性の面からアミンが好ましく、例えば、オクチルアミン、ナフチルアミン、キシレンジアミン、ジベンジルアミン、ジフェニルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジメチルアニリン、キヌクリジン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミンおよびトリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0066】
本発明の組成物には、光硬化性向上のために、連鎖移動剤を添加してもよい。前記連鎖移動剤としては、具体的には、4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)を挙げることができる。
【0067】
なお、本発明の光インプリント用硬化性組成物は、調製時における水分量が好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%、さらに好ましくは1.0質量%以下である。調製時における水分量を2.0質量%以下とすることにより、本発明の組成物の保存性をより安定にすることができる。
【0068】
前記有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソフチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸エステル類等のエステル類などが挙げられる。
さらに、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテート等の高沸点溶剤を添加することもできる。これらは1種を単独使用してもよく、2種類以上を併用しても構わない。
これらの中でも、メトキシプロピレングリコールアセテート、2−ヒドロキシプロピン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノンなどが特に好ましい。
【0069】
本発明の光インプリント用硬化性組成物は、表面張力が、18〜30mN/mの範囲にあることが好ましく、20〜28mN/mの範囲にあることがより好ましい。このような範囲とすることにより、表面平滑性を向上させるという効果が得られる。
なお、本発明の光インプリント用硬化性組成物は、調製時における水分量が好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%、さらに好ましくは1.0質量%以下である。調製時における水分量を2.0質量%以下とすることにより、本発明の組成物の保存性をより安定にすることができる。
【0070】
[硬化物の製造方法]
次に、本発明の光インプリント用硬化性組成物を用いた硬化物(特に、微細凹凸パターン)の製造方法について説明する。本発明の光インプリント用硬化性組成物を基板または支持体(基材)上に適用してパターン形成層を形成する工程と、前記パターン形成層表面にモールドを押圧する工程と、前記パターン形成層に光を照射する工程と、を経て本発明の組成物を硬化することで、微細な凹凸パターンを形成することができる。特に本発明においては、硬化物の硬化度を向上させるために、さらに、光照射後にパターン形成層を加熱する工程を含むことが好ましい。即ち、本発明の光インプリント用硬化性組成物は、光および熱によって硬化させることが好ましい。
本発明の硬化物の製造方法によって得られた硬化物は、パターン精密度、硬化性、光透過性に優れ、特に、液晶カラーフィルタの保護膜、スペーサー、その他の液晶表示装置用部材として好適に用いることができる。
【0071】
具体的には、基材(基板または支持体)上に少なくとも本発明の組成物からなるパターン形成層を適用し、必要に応じて乾燥させて本発明の組成物からなる層(パターン形成層)を形成してパターン受容体(基材上にパターン形成層が設けられたもの)を作製し、当該パターン受容体のパターン形成層表面にモールドを圧接し、モールドパターンを転写する加工を行い、微細凹凸パターン形成層を光照射および加熱により硬化させる。光照射および加熱は複数回に渡って行ってもよい。本発明のパターン形成方法(硬化物の製造方法)による光インプリントリソグラフィは、積層化や多重パターニングもでき、通常の熱インプリントと組み合わせて用いることもできる。
【0072】
なお、本発明の光インプリント用硬化性組成物の応用として、基板または、支持体上に本発明の組成物を適用し、該組成物からなる層を露光、硬化、必要に応じて乾燥(ベーク)させることにより、オーバーコート層や絶縁膜などの永久膜を作製することもできる。
【0073】
液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)においては、ディスプレイの動作を阻害しないようにするため、レジスト中の金属あるいは有機物のイオン性不純物の混入を極力避けることが望ましく、その濃度としては、1000ppm以下、望ましくは100ppm以下である。
【0074】
以下において、本発明の光インプリント用硬化性組成物を用いた硬化物の製造方法(パターン形成方法(パターン転写方法))について具体的に述べる。
本発明の硬化物の製造方法においては、まず、本発明の組成物を基材上に適用してパターン形成層を形成する。
本発明の光インプリント用硬化性組成物を基材上に適用する際の方法としては、一般によく知られた適用方法、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート方法、スリットスキャン法などにより、塗布することにより形成することができる。また、本発明の組成物からなるパターン形成層の膜厚は、使用する用途によって異なるが、0.05μm〜30μm程度である。また、本発明の組成物を、多重塗布により塗布してもよい。尚、基材と本発明の組成物からなるパターン形成層との間には、例えば平坦化層等の他の有機層などを形成してもよい。これにより、パターン形成層と基板とが直接接しないことから、基板に対するごみの付着や基板の損傷等を防止することができる。
【0075】
本発明の組成物を適用(好ましくは塗布)するための基板または支持体は、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、紙、SOG、ポリエステルフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基板、TFTアレイ基板、PDPの電極板、ガラスや透明プラスチック基板、ITOや金属などの導電性基材、絶縁性基材、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの半導体作製基板など特に制約されない。基板の形状は、板状でも良いし、ロール状でもよい。
【0076】
次いで、本発明の硬化物の製造方法においては、パターン形成層にパターンを転写するために、パターン形成層表面にモールドを(押圧)押接する。これにより、モールドの押圧表面にあらかじめ形成された微細なパターンをパターン形成層に転写することができる。
【0077】
本発明の光インプリント用硬化性組成物を用いた光インプリントリソグラフィは、モールド材および/または基板の少なくとも一方に、光透過性の材料を選択する。本発明に適用される光インプリントリソグラフィでは、基材の上に本発明の光インプリント用硬化性組成物を適用(好ましくは塗布)してパターン形成層を形成し、この表面に光透過性のモールドを押圧し、モールドの裏面から光を照射し、前記パターン形成層を硬化させる。また、光透過性基材上に光インプリント用硬化性組成物を適用(好ましくは塗布)し、モールドを押し当て、基材の裏面から光を照射し、光インプリント用硬化性組成物を硬化させることもできる。
前記光照射は、モールドを付着させた状態で行ってもよいし、モールド剥離後に行ってもよいが、本発明では、モールドを密着させた状態で行うのが好ましい。
【0078】
本発明で用いることのできるモールドは、転写されるべきパターンを有するモールドが使われる。前記モールド上のパターンは、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じてパターンが形成できるが、本発明では、モールドパターン形成方法は特に制限されない。
本発明において用いられる光透過性モールド材は、特に限定されないが、所定の強度、耐久性を有するものであればよい。具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂などの光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が例示される。
【0079】
本発明の透明基板を用いた場合で使われる非光透過型モールド材としては、特に限定されないが、所定の強度を有するものであればよい。具体的には、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、SiC、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの基板などが例示され、特に制約されない。また、モールドの形状も特に制約されるものではなく、板状モールド、ロール状モールドのどちらでもよい。ロール状モールドは、特に転写の連続生産性が必要な場合に適用される。
【0080】
本発明の硬化物の製造方法で用いられるモールドは、光インプリント用硬化性組成物とモールド表面との剥離性を向上させるために離型処理を行ったものを用いてもよい。このようなモールドとしては、シリコーン系やフッソ系などのシランカップリング剤による処理を行ったもの、例えば、ダイキン工業(株)製のオプツールDSXや、住友スリーエム(株)製のNovec EGC−1720等、市販の離型剤も好適に用いることができる。
【0081】
本発明の組成物を用いて光インプリントリソグラフィを行う場合、本発明の硬化物の製造方法では、通常、モールド圧力を10気圧以下で行うのが好ましい。モールド圧力を10気圧以下とすることによって、モールドや基板が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にある。また、加圧が低いため装置を縮小できる傾向にある点からも好ましい。モールド圧力は、モールド凸部の光インプリント用硬化性組成物の残膜が少なくなる範囲で、モールド転写の均一性が確保できる領域を選択することが好ましい。
【0082】
本発明の硬化物の製造方法において、前記パターン形成層に光を照射する工程における光照射の照射量は、硬化に必要な照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、光インプリント用硬化性組成物の不飽和結合の消費量や硬化膜のタッキネスを調べて適宜決定される。
また、本発明に適用される光インプリントリソグラフィにおいて、光照射の際の基板温度は、通常、室温で行われるが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドと光インプリント用硬化性組成物との密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射してもよい。また、本発明の硬化物の製造方法中、光照射時における好ましい真空度は、10−1Paから常圧の範囲である。
【0083】
本発明の光インプリント用硬化性組成物を硬化させるために用いられる光は特に限定されず、例えば、高エネルギー電離放射線、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光または放射線が挙げられる。高エネルギー電離放射線源としては、例えば、コッククロフト型加速器、ハンデグラーフ型加速器、リニヤーアクセレーター、ベータトロン、サイクロトロン等の加速器によって加速された電子線が工業的に最も便利且つ経済的に使用されるが、その他に放射性同位元素や原子炉等から放射されるγ線、X線、α線、中性子線、陽子線等の放射線も使用できる。紫外線源としては、例えば、紫外線螢光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯、太陽灯等が挙げられる。放射線には、例えばマイクロ波、EUVが含まれる。また、LED、半導体レーザー光、あるいは248nmのKrFエキシマレーザー光や193nmArFエキシマレーザーなどの半導体の微細加工で用いられているレーザー光も本発明に好適に用いることができる。これらの光は、モノクロ光を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(ミックス光)でもよい。
【0084】
露光に際しては、露光照度を1mW/cm2〜50mW/cm2の範囲にすることが望ましい。1mW/cm2以上とすることにより、露光時間を短縮することができるため生産性が向上し、50mW/cm2以下とすることにより、副反応が生じることによる永久膜の特性の劣化を抑止できる傾向にあり好ましい。露光量は5mJ/cm2〜1000mJ/cm2の範囲にすることが望ましい。5mJ/cm2以上であると、露光マージンが狭くなり、光硬化が不十分となりモールドへの未反応物の付着などの問題が発生するのを防止できる。また。露光量が1000mJ/cm2以下であると組成物の分解による永久膜の劣化を抑制することができる。
さらに、露光に際しては、酸素によるラジカル重合の阻害を防ぐため、チッソやアルゴンなどの不活性ガスを流して、酸素濃度を100mg/L未満に制御してもよい。
【0085】
本発明の硬化物の製造方法においては、光照射によりパターン形成層を硬化させた後、硬化させたパターンに熱を加えてさらに硬化させる工程(ポストベーク工程)を含むのが好ましい。尚、加熱は、光照射後のパターン形成層からモールドを剥離する前後のいずれに行ってもよいが、モールドの剥離後にパターン形成層を加熱するほうが好ましい。光照射後に本発明の組成物を加熱硬化させる熱としては、150〜280℃が好ましく、200〜250℃がより好ましい。また、熱を付与する時間としては、5〜60分間が好ましく、15〜45分間がさらに好ましい。
【0086】
本発明において、光インプリントリソグラフィにおける光照射は、硬化に必要な照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、光インプリントリソグラフィ用硬化性組成物の不飽和結合の消費量や硬化膜のタッキネスを調べて決定される。
【0087】
また、本発明に適用される光インプリントリソグラフィにおいては、光照射の際の基板温度は、通常、室温で行われるが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドと光インプリントリソグラフィ用硬化性組成物の密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射してもよい。本発明において、好ましい真空度は、10-1Paから常圧の範囲で行われる。
【0088】
本発明の光インプリント用硬化性組成物は、上記各成分を混合した後、例えば、孔径0.05μm〜5.0μmのフィルターで濾過することによって溶液として調製することができる。光インプリント用硬化性組成物の混合・溶解は、通常、0℃〜100℃の範囲で行われる。濾過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、濾過した液を再濾過することもできる。濾過に使用する材質は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッソ樹脂、ナイロン樹脂などのものが使用できるが特に限定されない。
【0089】
[硬化物]
上述のように本発明の硬化物の製造方法によって形成された本発明の硬化物は、液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)やエッチングレジストとして使用することができる。また、前記永久膜は、製造後にガロン瓶やコート瓶などの容器にボトリングし、輸送、保管されるが、この場合に、劣化を防ぐ目的で、容器内を不活性なチッソ、またはアルゴンなどで置換しておいてもよい。また、輸送、保管に際しては、常温でもよいが、より永久膜の変質を防ぐため、−20℃から0℃の範囲に温度制御してもよい。勿論、反応が進行しないレベルで遮光することが好ましい。
【0090】
本発明の硬化物の弾性回復率は、液晶表示装置用部材として好適に用いる観点から、70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0091】
[液晶表示装置用部材]
また、本発明の光インプリント用硬化性組成物は、半導体集積回路、記録材料、液晶表示装置用部材として適用することができ、その中でも液晶表示装置用部材であることが好ましく、フラットパネルディスプレイなどのエッチングレジストとして適用することがより好ましい。
本発明のインプリント用組成物をエッチングレジストとして利用する場合には、まず、基材として例えばSiO2等の薄膜が形成されたシリコンウエハ等を用い、基材上に本発明の硬化物の製造方法によってナノオーダーの微細なパターンを形成する。その後、ウェットエッチングの場合にはフッ化水素等、ドライエッチングの場合にはCF4等のエッチングガスを用いてエッチングすることにより、基材上に所望のパターンを形成することができる。
【実施例】
【0092】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0093】
(光インプリント用硬化性組成物の調製)
下記表に示す光重合性モノマー、式(1)で表される化合物および光重合開始剤、ならびに必要に応じて、界面活性剤、ポリマー、シランカップリング剤、酸化防止剤からなる各組成物を調製し、攪拌して各組成物を調製した。尚、表における単位は質量%である。使用した材料は以下のとおりである。また、比較例10として特開2007−316247号公報の実施例1の組成物を作成した。
【0094】
<光重合性モノマー>
M−1:2官能アクリルモノマー、NPGDA(日本化薬)
M−2:3官能アクリルモノマー、M309(東亞合成)
M−3:2官能アクリルモノマー、ビスコート#260(大阪有機化学)
M−4:2官能アクリルモノマー、ビスコート#230(大阪有機化学)
M−5:2官能アクリルモノマー、ビスコート#195(大阪有機化学)
M−6:1官能アクリルモノマー、ビスコート#155(大阪有機化学)
M−7:4官能ウレタンアクリレートモノマー、U−4HA(新中村化学)
M−8:1官能アクリルモノマー、グリシジルメタクリレート(和光純薬)
M−9:1官能アクリルモノマー、ビスコート#160(大阪有機化学)
M−10:1官能アクリレートモノマー、OXE−10(大阪有機化学)
M−11:1官能メタクリレートモノマー、ライトエステルCH(共栄社)
M−12:1官能メタクリレートモノマー、メタクリル酸ヘキシル(東京化成)
M−13:1官能メタクリレートモノマー、ライトエステルEH(共栄社)
【0095】
<光重合開始剤>
I−1:TPO−L(日本シイベル製)
<界面活性剤>
W−1:メガファックF780F(大日本インキ化学製)
<離型剤>
R−1:KF−352A(信越化学)
R−2:BYK−307(BYKケミー)
R−3:BYK−333(BYKケミー)
R−4:BYK−378(BYKケミー)
<ポリマー>
P−1:AC−SQ(東亞合成)
<シランカップリング剤>
S−1:KBM5103(信越化学)
<酸化防止剤>
AO−1:スミライザー GA−80(住友化学)
AO−2:Irganox 1035FF(チバスペシャリティケミカル)
【0096】
<式(1)で表される化合物>
本発明における式(1)で表される化合物は、市販品のアミノ基を含有するシランカップリング剤を用いたり、合成することによって得ることができる。合成する場合、例えば、アミノ基を含有するシランカップリング剤と(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を攪拌混合することで合成することができる。
SC1:2−エチルヘキシルアクリレート(2HA、三菱化学製)とKBE903(信越化学製)を重量比1:1で混合し、攪拌混合することで得られた。
【化6】

SC2: KBM5103(信越化学製)とKBE903(信越化学製)を重量比1:1で混合し、攪拌混合することで得られた。
【化7】

SC3:NPGDA(日本化薬)とKBE903(信越化学製)を重量比1:1で混合し、攪拌混合することで得られた。
【化8】

SC4:ビスコート#260(大阪有機化学)とKBM903(信越化学)を重量比1:1で混合し、攪拌混合することで得られた。
【化9】

SC5:KBE903(信越化学製)
(CH3O)3SiC36NH2
【0097】
<基板密着性>
各組成物を膜厚3.0μmとなるようにガラス基板上にスピンコートし、モールドを圧着せず、窒素雰囲気下で露光量200mJ/cm2で露光して硬化させた膜を作製した。
その膜を用いてテープ剥離法(JIS C 0806-3. 1999に準拠)による密着力評価を行った。テープは12mm幅のものを使用した。本試験により、露光後硬化前の組成物の基板との密着性を調べることができる。
【0098】
5:テープ剥離力が30g/12mm以上
4:テープ剥離力が20g/12mm以上30g/12mm未満
3:テープ剥離力が10g/12mm以上20g/12mm未満
2:テープ剥離力が5g/12mm以上10g/12mm未満
1:テープ剥離力が5g/12mm未満
【0099】
<経時安定性>
各組成物の粘度を測定し、経時安定性を評価した。ここで、各組成物(硬化前)の粘度は、東機産業(株)社製のRE−80L型回転粘度計を用い、25±0.2℃で測定した。測定時の回転速度は、0.5mPa・s以上5mPa・s未満は100rpm、5mPa・s以上10mPa・s未満は50rpm、10mPa・s以上30mPa・s未満は20rpm、30mPa・s以上60mPa・s未満は10rpmで、それぞれ行った。
【0100】
5:5℃で3日保管時の粘度上昇が0%以上1%未満
4:5℃で3日保管時の粘度上昇が1%以上3%未満
3:5℃で3日保管時の粘度上昇が3%以上5%未満
2:5℃で3日保管時の粘度上昇が5%以上10%未満
1:5℃で3日保管時の粘度上昇が10%以上
【0101】
<インプリント性>
レジストに転写されたパターンがモールドの形状をどの程度再現できているかを評価した。具体的には、各組成物について、膜厚3.0μmとなるようにガラス基板上にスピンコートした。スピンコートした塗布基膜をORC社製の高圧水銀灯(ランプパワー2000mW/cm2)を光源とするナノインプリント装置にセットし、モールド加圧力0.8kN、露光中の真空度は10Torr(約1.33×104Pa)の条件で、モールドとして、10μmのライン/スペースパターンを有し、溝深さが4.0μmのポリジメチルシロキサン(東レ・ダウコーニング(株)製の「SILGARD184」を80℃60分で硬化させたもの)を材質とするものを用いて押圧し、さらに、モールドの表面から200mJ/cm2の条件で露光した。露光後、モールドを離し、レジストパターンを得た。
さらに、得られたレジストパターンをオーブンで230℃、30分間加熱して完全に硬化させた。転写後のパターン形状を走査型電子顕微鏡および光学顕微鏡にて観察し、パターン形状を以下の基準に従って評価した。
5:モールド形状の転写率95%以上
4:モールド形状の転写率90%以上95%未満
3:モールド形状の転写率80%以上90%未満
2:モールド形状の転写率70%以上80%未満
1:モールド形状の転写率70%未満
【0102】
上記の評価結果を表1、表2に示す。
【表1】

【表2】

【0103】
また、ウレタンアクリレートを添加することによる無機膜密着性向上効果を確認するため、下記表に示す組成物を調製し、ITO膜の密着性評価を行った。結果を表3、表4に示す。ここで、無機膜密着性が求められる用途は限られており、ITO密着性レベルが悪くても、無機膜密着性が求められない用途については、好ましく用いることができる。
【0104】
<ITO密着性>
ITOとの密着性を評価するため、レジスト上に製膜されたITO膜をエッチングした際に、エッチングレジストに対してどの程度パターン形状が変化するかを評価した。
各組成物を膜厚3.0μmとなるようにガラス基板上にスピンコートし、モールドを圧着せず、窒素雰囲気下で、10mW、200mJ/cm2の条件で露光した。その後、オーブンで230℃、15分間加熱して硬化させた。
硬化させた膜の上に、基板温度25℃でITOスパッタリング製膜を行い、膜厚500nmのITO膜を作製した。
その後、エッチングレジストとして汎用ポジレジストを用いて幅50μmのラインパターンを作製した。さらに、エッチング液(クリーンエッチITO、林純薬社製)を用いて40℃、5分のウェットエッチング処理を行った。
この時、ウェットエッチング処理後に残ったITOの線幅を測定し、その線幅をエッチングレジストであるポジレジストの線幅50μmから減じ、その数値をサイドエッチとして評価した。なお、通常レジストとITOの密着性が不足している場合には、残ったITOの線幅はポジレジストの線幅よりも小さくなる。
5:サイドエッチ量が2μm未満
4:サイドエッチ量が2μm以上5μm未満
3:サイドエッチ量が5μm以上10μm未満
2:サイドエッチ量が10μm以上20μm未満
1:サイドエッチ量が20μm以上
【0105】
【表3】

【0106】


【表4】

【0107】
【表5】

【0108】
上記表から明らかなとおり、本発明の組成物は、インプリント性に優れ、かつ、基板密着性および経時安定性に優れたものが得られた。一方、比較例の組成物は、インプリント性が著しく劣るか、経時安定性が著しく劣るものであった。また、比較例10の組成物は、特開2007−316247号公報(特許文献1)に記載の組成物であるが、ポリマーを含んでいるためインプリント性が不十分であった。また、ウレタン(メタ)アクリレートを添加することにより無機膜との密着性が向上していることが確認できた。これらの結果より、本発明の組成物に、一見、その組成が似ているように見える組成物であっても、本発明の範囲外の組成物は、インプリント性が極めて劣ることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)光重合性モノマーと、B)重合開始剤と、C)下記式(1)で表される化合物を含み、かつ、分子量が1000以上の化合物が全固形分中の10重量%以下であり、前記C)下記式(1)で表される化合物の含量が、全固形分中の0.3〜10.0重量%である光インプリント用硬化性組成物。
式(1)
【化1】

(式(1)中、Zは脂肪族炭化水素基であり、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、R3およびR4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、メトキシ基またはエトキシ基を表し、R5はメトキシ基またはエトキシ基を表す。)
【請求項2】
前記式(1)中のZが直鎖または分岐の炭化水素基である、請求項1に記載の光インプリント用硬化性組成物。
【請求項3】
前記式(1)中のZがアルキレン基である、請求項1に記載の光インプリント用硬化性組成物。
【請求項4】
前記式(1)中のZが炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光インプリント用硬化性組成物。
【請求項5】
前記式(1)中のR1およびR2の少なくとも一方が(メタ)アクリロイルオキシ基を含む置換基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光インプリント用硬化性組成物。
【請求項6】
前記式(1)中のR1およびR2の少なくとも一方がアルコキシシリル基を含む置換基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光インプリント用硬化性組成物。
【請求項7】
前記式(1)が下記式(2)で表される、請求項1に記載の光インプリント用硬化性組成物。
【化2】

(式(2)中、R5は置換基を表し、R6およびR7は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、メトキシ基またはエトキシ基を表し、R8はメトキシ基またはエトキシ基を表す。mおよびnは、それぞれ独立に、1〜4の整数である。)
【請求項8】
さらに、界面活性剤を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光インプリント用硬化性組成物。
【請求項9】
前記A)光重合性モノマーの少なくとも1種が、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の光インプリント用硬化性組成物。
【請求項10】
前記ウレタン(メタ)アクリレートが、3官能以上であることを特徴とする、請求項9に記載の光インプリント用硬化性組成物。
【請求項11】
前記ウレタン(メタ)アクリレートが前記A)光重合性モノマーの合計量の1〜30重量%である、請求項9または10に記載の光インプリント用硬化性組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の光インプリント用硬化性組成物を用いることを含む、硬化物の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の光インプリント用硬化性組成物を基材上に適用してパターン形成層を形成する工程と、前記パターン形成層表面にモールドを押圧する工程と、前記パターン形成層に光を照射する工程と、を含むことを特徴とする硬化物の製造方法。
【請求項14】
さらに、光が照射された前記パターン形成層を加熱する工程を含むことを特徴とする請求項13に記載の硬化物の製造方法。

【公開番号】特開2011−66370(P2011−66370A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233517(P2009−233517)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】