説明

光エネルギーまたは熱エネルギーにより形成された導電性材料、導電性材料の製造方法および導電性組成物

【課題】 単純にナノ線で製作された導電層を用いるとなると、網状構造に数多くのホールが生じてしまう。このホールは導電層の緻密度を低下させて、導電層の導電率および平坦度に影響を及ぼしてしまう。
【解決手段】 本発明は、比率が9:1ないし1:9の間であるナノ線材と、ナノ結合子とを含む導電性材料に関する。前記ナノ結合子は熱エネルギーまたは光エネルギーにより溶融した後、周囲のナノ結合子またはナノ線材に結合して、ひいては導電性材料の導電率を高めるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性材料であり、特にナノ構造を持つ導電性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
人類の文明が21世紀に入り、情報機器製品には軽量、薄型、短く、小さく、柔らかく、そして可撓性などの六つの特長が求められるようになっている。IDTechEXによる2005年の統計によれば、未来におけるフレキシブルエレクトロニクス市場規模は2010年には47億5千万ドルとなり、2025年には2500億ドルに達するものと見込まれている。フレキシブルエレクトロニクスの登場に伴い、基板上に導電層を製作することが可能な導電性インクはさらに重要になってくるのは明らかである。NanoMarkets社では2006年に、導電性インク市場の規模は2007年の0.11億ドルから2013年の13.61億ドルにまで成長し、年平均成長率は100%に近づくと予測している。これから判るように、導電性インクの発展は「フレキシブルエレクトロニクス」および「フレキシブルセンサ」などの新興産業を牽引するものである。また、導電性インクはインクジェットまたはスクリーン印刷方式を導入して基板上に導電性のパターンを作製することで、露光、フォトリソグラフィまたは蒸着などの製造工程は必要なくなるので、「省エネ・低炭素化」および「低コスト」などの未来の動向により一層符合することができる。
【0003】
現在、導電性インクの導電性充填材料としては、金、銀、銅、鉄およびアルミニウムなどの金属材料が使用されるが、上記金属はナノ化した後には、その表面積が急激に増加して、金属材料の融点が降下し、導電層が焼結しやすくなる。例えば、銀の融点は690℃であるが、2nmのナノ銀の融点は約100℃前後であり、つまりわずか100℃の温度でもナノ銀粒子をアニール処理して、導電性を向上させることができる。現在、産業界で最も一般的に使用される導電性インクの充填物はナノ銀であり、他の金属と比べても、中低価格で、導電性が高く、酸化物が導電性を備え、焼結温度が低く、そして安定性に優れているなどの特長を備えていることから、広く使用されている。銅は、コスト的に確かに銀よりも低く、しかも導電性も大差ないが、酸化しやすいため、使用における制限が比較的大きい。統計によれば、現在開発されている導電性インクにおいては、95%以上がナノ銀を充填物として採用している。
【0004】
導電性インクは、導電性粒子、結合剤および助剤(揺変剤など)などの組成物からなり、インクがインクジェットまたはスクリーン印刷などの工程により基材上に塗布されるとき、その内部の結合物またはその他混合物質と高温で焼結して焼成した後、さらに導電性粒子に焼結作用を発生させなければ、導電性材料の導電率を効果的に向上させることはできない。しかしながら、高温焼結の工程において、熱により基材の破損が生じてしまい、特に数多くの異なる材質からなる基材を使用するときには、各材質の熱膨張・収縮係数が異なり、熱での断裂または湾曲などの不具合が発生しやすくなる。また、もし融点の低い軟質基板上(例えば、PETまたはPMMA)に使用するとなると、基板の焼け付きまたは熱変形などの熱破損が生じてしまう。
【0005】
特許文献1には、基板と複数のナノ銀ワイヤとを備えた透明導電体(transparent conductor)が開示されている。前記複数のナノ銀ワイヤは基板内部に形成されている網状構造で、導電体の導電率を高め、ひいては「透明および導電性」の効果を達成することができる。
【0006】
特許文献2には、インクジェットプリンタの導電性インクが開示されている。その組成は二種類の形態の材料組成とすることができる。第1の形態は線状、テーパ状、円盤状および平板状などとするものであり、そのアスペクト比は1:3より大きいことが必須となる。また他方の材料を円形状、楕円形状、円柱形状または四角錐状とすることで、第1の形態材料におけるホールを補てんして、導電層の平坦度を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0074316号明細書
【特許文献2】米国特許公開第7,341,680号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
つまり、現在の導電性材料では、ナノ粒子の導電性インクまたは塗料を使用して製作する場合、例えば焼結温度が高すぎることで導電率の低下を招くというように、不具合を引き起こしやすい高温焼結の工程が必要となる。そしてナノ線だけの材料で製作された導電性材料を使用するとなると、平坦度および緻密度が低下するという不具合が生じて、しかも導電率をさらに高めることができなくなる。したがって、高い平坦度を備え、しかも導電率を高めることができる導電性材料およびその製造方法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施例には、両者の重量比が9:1ないし1:9の間であるナノ線材と、ナノ結合子とを含む導電性材料を開示する。
【0010】
本発明の実施例には、両者の重量比が9:1ないし1:9の間であるナノ線材とナノ結合子とを含む混成溶液を提供する工程と、前記ナノ線材と前記ナノ結合子とからなる導電性混合物を得られるよう、前記混成溶液を固化する工程と、を含む光エネルギーまたは熱エネルギーによって導電率を高めることができる導電性材料の製造方法を開示する。
【0011】
本発明の実施例には、混成溶液と、ナノ線材と、ナノ結合子とを含むナノ構造を持つ導電性組成物を開示する。このうち、前記ナノ線材と前記ナノ結合子とが占める重量比が9:1ないし1:9の間である。
【発明の効果】
【0012】
図1および図2に示すところを参照されたい。特許文献1と本発明との相違点は、本発明ではナノ結合子101とナノ線材102とからなる導電性インク104を用いて、スクリーン印刷またはインクジェット方式で、基板100上にパターンニングされた導電層103を形成し、続いて外部から熱エネルギーまたは光エネルギーを付与することで導電性インク104のナノ結合子101に焼結作用をもたらし、ひいては周囲のナノ結合子101またはナノ線材102を結合させて、導電層103は、ナノ線材102のみを有する類似した導電層の場合よりも、導電率を50%以上高めることができる。
【0013】
また、特許文献2と比べて、本発明にて採用する第1の形態は、金、銀、銅、インジウム、バナジウムおよびアルミニウムまたは上記材料の複合物を材料として含むナノ線材102(AR>10)である。第2の形態材料は、光エネルギーまたは熱エネルギーにより周囲の材料に結合する、例えば直径が100nm未満である金、銀、銅、インジウム、バナジウムまたはアルミニウムなどであるナノ結合子101である。二種類の材料を混合した後、光エネルギーまたは熱エネルギーの影響により、その第2の形態のナノ材料が溶融して周囲の材料と結着して、導電層が連続体として形成される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例における導電性材料のナノ結合子に光照射または熱エネルギーが付与された後、周囲のナノ線材またはナノ結合子に結合する概略図である。
【図2】本発明の実施例における導電性材料のナノ結合子に光照射または熱エネルギーが付与された後、周囲のナノ線材またはナノ結合子に結合する概略図である。
【図3】本発明の実施例における導電性材料中のナノ銀線材と銀ナノ結合子との混合比が4:1の重量比である場合の走査型電子顕微鏡の画像である。
【図4】本発明の実施例における導電性材料中のナノ銀線材と銀ナノ結合子との混合比が3:2の重量比である場合の走査型電子顕微鏡の画像である。
【図5】本発明の実施例における導電性材料中のナノ銀線材と銀ナノ結合子との混合比が2:3の重量比である場合の走査型電子顕微鏡の画像である。
【図6】本発明の実施例における導電性材料中のナノ銀線材と銀ナノ結合子との混合比が1:4の重量比である場合の走査型電子顕微鏡の画像である。
【図7】本発明の実施例において、異なる比率で銀ナノ結合子とナノ銀線とを混合した後の導電性材料の面粗度の実験データである。
【図8】200℃で加熱した後の導電性材料の走査型電子顕微鏡の画像である。
【図9】200℃で加熱した後の導電性材料の走査型電子顕微鏡の画像である。
【図10】200℃で加熱した後の導電性材料の走査型電子顕微鏡の画像である。
【図11】200℃で加熱した後の導電性材料の走査型電子顕微鏡の画像である。
【図12】異なる比率で銀ナノ結合子と銀ナノ線とを混合した後の導電性材料のシート抵抗の実験データである。
【図13】本発明の実施例におけるインクジェット工程を導入して導電性膜を製造する方法の最初の手順の概略図である。
【図14】図13に続く手順の概略図である。
【図15】図14に続く手順の概略図である。
【図16】本発明の実施例におけるスクリーン印刷工程を導入して導電性膜を製造する方法の最初の手順の概略図である。
【図17】図16に続く手順の概略図である。
【図18】図17に続く手順の概略図である。
【図19】図18に続く手順の概略図である。
【図20】図19に続く手順の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施例には、ナノ銀線材とナノ結合子とを含むナノ構造を持つ導電性材料を開示する。ナノ線材は基板上に網状構造または網状に似た構造を形成できる導電性材料であるとともに、導電性材料に高い導電特性を持たせるものである。ナノ線材が形成する網状構造または網状に似た構造は多孔性構造であって、導電性材料のナノ結合子は前記多孔性の網状構造または網状に似た構造の中に補てんされることで、導電性材料内部がより緻密になる。しかも、ナノ線材で構成される網状構造または網状に似た構造は、導電性材料の表面の平坦度の悪化をもたらしやすいので、ナノ結合子をナノ線材で構成される網状構造または網状に似た構造に補てんすることで、導電性材料の表面の平坦度を改善することができる。また、ナノ結合子は、特定の波長を吸収する特性と、低融点の特性を持つ高い表面積比により、熱エネルギーまたは光エネルギーによりナノ結合子を溶融して、ひいては導電性材料の導電率の向上を達成している。
【0016】
本発明の導電性材料において、ナノ線材102で形成されている網状構造に、適度な比率のナノ結合子101を添加することで、網状構造の間の隙間を補てんするとともに、これにより導電性材料の導電特性を高めている。本発明の導電性材料においては、ナノ線材102とナノ結合子101との比率は1:9ないし9:1の間(比率値は0.1〜9の間)である。他の実施例においては、本発明の導電性材料は、比率が1:4ないし2:3の間(比率値は0.2〜4)であるナノ線材102とナノ結合子101とを含む。
【0017】
ナノ線材102は、アスペクト比を持つ一次元のナノ構造を意味している。本発明の一実施例のナノ線材102のアスペクト比は10ないし800であり、そして他の実施例においては、ナノ線材102のアスペクト比は200ないし500である。これに対して、本発明の実施例において、ナノ結合子101の粒径は100nm未満である。
【0018】
ナノ結合子101の材料は、純金属、または一種類以上の純金属からなる複合金属である。一実施例において、ナノ結合子101の材質は、直径が100nm未満である金、銀、銅、インジウム、バナジウムまたはアルミニウムなどの金属である。ナノ結合子101は、金、銀、銅、インジウム、バナジウムまたはアルミニウムなどからなるナノ複合金属結合子101としてもよく、このうちナノ複合金属結合子は、金被覆銀ナノ粒子、銀被覆金ナノ粒子、金被覆銅ナノ粒子、銅被覆金ナノ粒子、銀被覆銅ナノ粒子、銅被覆銀ナノ粒子またはこれらの組合せを含む。また、ナノ線材の材料は、純金属、または一種類以上の純金属からなる複合金属である。一実施例において、ナノ線材102の材質は、金、銀、銅、インジウム、バナジウムまたはアルミニウムなどの金属である。ナノ線材102は、金、銀、銅、インジウム、バナジウムまたはアルミニウムなどからなるナノ複合金属線材としてもよく、このうちナノ複合金属線材は、金被覆銀ナノ線材、銀被覆金ナノ線材、金被覆銅ナノ線材、銅被覆金ナノ線材、銀被覆銅ナノ線材、銅被覆銀ナノ線材またはこれらの組合せを含む。
【0019】
一実施例において、本発明の導電性材料では、ナノ線材102により形成されている網状構造に、適度な比率のナノ結合子101を添加するだけで、常温で成型された後の網状構造の間の隙間を補てんして、低温加熱または光照射の方式で、ナノ結合子を溶融するとともに周囲のナノ線材またはナノ結合子に結合して、これにより導電性材料の平坦度、緻密度および導電特性を高めている。加熱温度は導電率に影響を及ぼす一因である。なぜならばナノ粒子は熱により溶解したとき、その凝集力により凝集してしまい、ひいては島状物を形成し、全体の導電率の低下を招くからである。一実施例において、ナノ線材102とナノ結合子101とを混合した導電性材料は、200℃以下まで加熱して、約1時間経過させることで、ナノ線材102とナノ結合子101とを混合した間の結合性を強化している。例えば銀ナノ結合子または銀ナノ線材という具合に、融点の低いナノ線材102とナノ結合子101を部分的に使用する場合、その融点(180℃以下)は200℃未満となるので、ナノ線材102とナノ結合子101との間には低温焼結の現象が発生して、導電性材料内に大きな連続した部分を有することになる。ナノ線材102はナノ結合子101との焼結により緊密な結合が発生して、導電性材料の導電率をさらに高めることができる。本発明の導電性材料では高温焼結を必要としないため、高温焼結により生じる不具合を回避することができる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例を挙げて、本発明のより詳細な説明を行う。
【0021】
実験例1
実験例1は導電性材料の製造方法を説明している。溶剤としてエチレングリコールを100グラム準備する。銀ナノ結合子および銀ナノ線材の混合物を15グラム添加した後、撹拌機で撹拌する。ポリビニルピロリドン(polyvinyl−pyrrolidone)を結合剤として1.5グラム添加して、引き続き撹拌する。最後に、レオロジー調整剤(Byk−Chemie製のBYK−410)を約0.3グラム加えて、撹拌した後にインクジェット用導電性インクの製造が完了する。得られた混成溶液(resulting solution)を基板上に塗布するとともに、約110℃で約15分間加熱してこれを固化させて、基板上に導電層を製作する第一段階が完了する。実験例1において、銀ナノ線材と銀ナノ結合子は異なる比率で調合されており、その比率値は0.1〜9の重量比で調合することができる。
【0022】
固化後の導電性材料は、その銀ナノ結合子は銀のナノ線材が形成した網状構造の間の隙間を補てんすることができる。
【0023】
図3には、本発明の実施例における導電性材料中のナノ線材とナノ結合子との比が4:1(比率値は4.0)である場合の走査型電子顕微鏡の画像が示されている。前記画像は、銀ナノ結合子が銀ナノ線の間の一部隙間を補てんすることができることを示している。
【0024】
図4には、本発明の実施例における導電性材料中のナノ線材とナノ結合子との比が3:2(比率値は1.5)である場合の走査型電子顕微鏡の画像が示されている。前記画像は、銀ナノ結合子が銀ナノ線の間の隙間を明らかに補てんするとともに、補てん率はナノ線材とナノ結合子の比率が4:1の導電性材料よりも高くなっていることを示している。
【0025】
図5には、本発明の実施例における導電性材料中のナノ線材とナノ結合子との比が2:3(比率値は0.7)である場合の走査型電子顕微鏡の画像が示されている。前記画像は、銀ナノ結合子が銀ナノ線の間を十分に補てんするとともに、かなり平坦な表面を形成していることを示している。
【0026】
図6には、本発明の実施例における導電性材料中のナノ線材とナノ結合子との比が1:4(比率値は0.3)である場合の走査型電子顕微鏡の画像が示されている。前記画像は、銀ナノ結合子が銀ナノ線の間を完全に補てんするとともに、平坦な表面を形成していることを示している。
【0027】
図7には、本発明の実施例において異なる比率で銀ナノ結合子とナノ銀線とを混合した後の導電性材料の面粗度の実験データが示されている。明らかなことは、銀ナノ結合子が一切添加されていない導電性材料の、測定された面粗度は500nmを超えていることである。ナノ線材とナノ結合子との比率が4:1の場合、導電性材料の面粗度は250nm以下にまで低減することができる。ナノ銀線の比率を3:2にまで低下した場合、導電性材料の面粗度は50nm以下にまで低減することができる。その後、銀ナノ結合子を添加する比率を増加させるに伴って、導電性材料の面粗度は徐々に低下する傾向を示す。また、銀ナノ結合子の添加量が40%以内である場合、導電性材料の面粗度の改善は顕著になる。40%重量パーセントに達したときには、添加されていない導電性材料に比べて、面粗度は93%改善される。したがって、銀ナノ結合子を銀ナノ線に混入することで、導電性材料の面粗度は明らかに改善されることになる。
【0028】
混成溶液を製作するための溶剤は、水、メタノール、ブタノール、イソプロパノール、テルピネオールまたはエチレングリコールなどのアルコール類、アセトンまたはシクロヘキサンといったケトン類、トルエンまたはジメチルベンゼンなどの芳香族、エチレングリコールモノエチルエーテルまたはエチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル類、またはポリビニルアセテートなどのエステル類とすることができる。導電性インクの結合剤としては、ポリエチレン(PE)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)などの高分子材料を使用することができる。その他助剤としては、メチルセルロース(methylcellulose)、エチルセルロース(ethylcellulose)、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethylcellulose)およびアルギン酸ナトリウム(sodium alginate)などがある。
【0029】
また、前記した固化した後の導電性材料を200℃で1時間加熱するか、または低エネルギーの光を照射するだけで、導電率を高めている。
【0030】
図8には、200℃で加熱した後の導電性材料の走査型電子顕微鏡の画像が示されており、この導電性材料内のナノ線材とナノ結合子との混合比率は重量比で4:1である。画像では、焼結の後、導電性材料内には互いに結合した比較的粗い一部の連続構造、長尺状バルク構造(elongated bulk structure)および粒径が200nmを超える大粒(bulk particle)が形成されていることが示されている。
【0031】
図9には、200℃で加熱した後の導電性材料の走査型電子顕微鏡の画像が示されており、この導電性材料内のナノ線材とナノ結合子との混合比率は重量比で3:2である。画像では、焼結の後、導電性材料内には互いに結合した比較的粗い連続構造、長尺状バルク構造、大粒およびシート状構造が形成されていることが示されている。
【0032】
図10には、200℃で加熱した後の導電性材料の走査型電子顕微鏡の画像が示されており、この導電性材料内のナノ線材とナノ結合子との混合比率は重量比で2:3である。画像では、焼結の後、導電性材料内には連続構造、バルク構造(bulk structure)および大粒が形成されていることが示されている。
【0033】
図11には、200℃で加熱した後の導電性材料の走査型電子顕微鏡の画像が示されており、この導電性材料内のナノ線材とナノ結合子との混合比率は重量比で1:4である。画像では、焼結の後、導電性材料内にはバルク構造およびバルク構造に付着している大粒が形成されていることが示されている。
【0034】
図12には、異なる比率で銀ナノ結合子と銀ナノ銀線とを混合した後の導電性材料のシート抵抗(sheet resistance)の実験データが示されており、その単位はohm/sqである。図12によれば、異なる比率の銀ナノ結合子と銀ナノ線とで製作された導電性材料は、そのシート抵抗は明らかに異なっている。固化工程のみで、加熱焼結されていない導電性材料(点線で示す)は、少量の銀ナノ結合子を銀ナノ線の網状構造内に添加した後、シート抵抗値は徐々に低下し、銀ナノ結合子を銀ナノ線の網状構造内に20重量パーセント添加するまで、シート抵抗値は約20%にまで低下していくので、導電率を高める効果を備える。その後、シート抵抗値はまた銀ナノ結合子の添加比率の増加に伴って増加していく。
【0035】
また、200℃の加熱により、すべての導電性材料(実線で示す)のシート抵抗値が低下していき、とりわけ銀ナノ結合子の含有量が高くなった場合には、降下の程度は顕著となり、このうち銀ナノ結合子を重量パーセントで20%ないし60%添加した導電性材料のシート抵抗値は比較的低い。
【0036】
実験例2
実験例2は常温で成型可能な導電性材料の製造方法を説明している。溶剤として融点の低い溶剤(例えばエタノール、イソプロパノール)を100グラム準備する。銀ナノ結合子および銀ナノ線の混合物(ナノ線材:ナノ結合子=4:1)を20グラム添加した後、撹拌機で撹拌する。ポリビニルピロリドンを結合剤として1.5グラム添加して、引き続き撹拌する。最後に、レオロジー調整剤(Byk−Chemie製のBYK−410)を約0.3グラム加えて、撹拌した後にインクジェット用導電性インクの製造が完了する。得られた混成溶液(resulting solution)を基板上に塗布するとともに、常温下に約20分間放置して固化させて、基板上に導電層を製作する第一段階が完了する。測定結果では、導電性材料を3μmの厚さで塗布したとき、その導電率は3.0×10 S/m(シート抵抗が0.11 ohm/sq)にまで達することになる。ナノ結合子の比率が増加したときには、そのシート抵抗もこれに伴って増加する。
【0037】
実験例3
実験例3はスクリーン印刷工程に導入可能な導電性材料の製造方法を説明している。溶剤として水を50グラム準備する。続いて、増粘剤としてメチルセルロース(methylcellulose)を1.5グラム添加した後、撹拌機で撹拌する。銀ナノ結合子および銀ナノ線材の混合物(ナノ線材:ナノ結合子=4:1)を50グラム添加した後、引き続き撹拌機で撹拌する。最後に、レオロジー調整剤(Byk−Chemie製のBYK−410)を約0.3グラム加えて、撹拌した後にスクリーン印刷の導電性インクの製造が完了する。混成溶液(resulting solution)をスクリーン版によって基板上に塗布するとともに、約100℃で約20分間加熱して固化させて、基板上に導電層を製作する第一段階が完了する。測定結果では、導電性材料を124μmの厚さで塗布したとき、そのシート抵抗が0.09ohm/sqにまで達することになる。
【0038】
図13ないし図15には、本発明の実施例におけるインクジェット工程を導入して導電性膜3および3’を製造する方法の手順概略図が示されている。図13に示すように、まず、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、シリコンウェハまたはガラス基板などの基材とすることができる基板1を提供する。前記製造しておいたインクジェット可能な混成溶液をノズル2から基板1上に塗布して、導電性膜3を形成する。ノズル2が移動する位置(矢印20、21が指す)間における基板上方の位置に導電性膜3が生成される。図15に示すように、続いてプログラミング可能な設計によりノズル2をその他の位置(矢印22で示す位置)にまで移動させて、導電性膜3’の製作を実行する。最後にパターンニングされた導電性膜が得られる。パターンニングされた導電性膜3および3’は加熱または光照射により、その導電率が高められる。前記した導電性膜3は電磁シールド性、耐静電気性を付与するために用いることができ、しかも製造方法は液晶ディスプレイ、太陽光電池などの装置の導電層に用いることができる。
【0039】
図16ないし図20には、本発明の実施例におけるスクリーン印刷工程を導入して導電性膜6’および6’’を製造する方法の手順概略図が示されている。図16に示すように、まず、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、シリコンウェハまたはガラス基板などの基材とすることができる基板1を提供する。さらにはその上方にはパターンが施されているスクリーン版4と、スクレイパ5とが配設されている。図17に示すように、前記製造しておいたスクリーン印刷可能な混成溶液6をスクリーン版4の上方に塗布する。図18に示すように、スクレイパ5を水平方向に矢印30で示す位置に移動させるが、移動経路におけるスクリーン版4上の孔が導電性材料6により埋められて、基板と接触する導電性膜6’が形成される。図19に示すように、余剰の混成溶液6はスクレイパの移動により別の位置にまで移動させられるとともに、スクリーン版4に設計されている切欠きを補てんするとともに、導電性膜6’’が形成される。図20に示すように、基板1上のスクリーン版4、スクレイパ5および余剰の混成溶液6を除去した後、パターンニングされた導電性材を備えた基板が得られる。パターンニングされた導電性膜6’および6’’は加熱または光照射により、その導電率を高めることができる。
【0040】
上記をまとめるに、本発明の導電性材料内にはナノ結合子とナノ線材とを同時に混合することで、その導電率および平坦度を高めることができる。そして導電性材料は加熱した後、その導電率はさらに高められる。
【0041】
本発明の技術内容および技術的特徴は上記のように開示したが、本発明が属する技術分野における当業者であれば、本発明の教示および開示に基づいて、本発明の技術的思想に違わない様々な置換および付加を行うことは可能である。したがって、本発明の保護範囲は実施例に開示するものに限定されることなく、本発明に違わない様々な置換および付加が含まれるものであるとともに、別紙の特許請求の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0042】
1 基板
2、2’、2’’、2’’’ ノズル
3、3’ インクジェット型の導電性膜
4 スクリーン版
5 スクレイパ
6 混成溶液
6’、6’’ スクリーン印刷型の導電性材
20、21、22、 位置
30、31 位置
100 基板
101 ナノ結合子
102 ナノ線材
103 導電層
104 導電性インク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のナノ線材と、
複数のナノ結合子と、を含む光エネルギーまたは熱エネルギーにより形成された導電性材料であって、
前記ナノ線材と前記ナノ結合子との重量比が9:1ないし1:9であることを特徴とする導電性材料。
【請求項2】
前記ナノ線材のアスペクト比が10ないし800であることを特徴とする請求項1に記載の導電性材料。
【請求項3】
前記ナノ結合子の粒径が100nm未満であることを特徴とする請求項1に記載の導電性材料。
【請求項4】
前記ナノ線材と前記ナノ結合子との重量比が8:2ないし4:6であることを特徴とする請求項1に記載の導電性材料。
【請求項5】
前記ナノ線材と前記ナノ結合子との材質が、金、銀、銅またはそれらの組合せであることを特徴とする請求項1に記載の導電性材料。
【請求項6】
前記ナノ線材および前記ナノ結合子が、金被覆銀ナノ線材、銀被覆金ナノ線材、金被覆銅ナノ線材、銅被覆金ナノ線材、銀被覆銅ナノ線材、銅被覆銀ナノ線材またはそれらの組合せであることを特徴とする請求項1に記載の導電性材料。
【請求項7】
前記導電性材料が導電性膜であることを特徴とする請求項1に記載の導電性材料。
【請求項8】
導電性材料の製造方法であって、
両者の重量比が9:1ないし1:9の間であるナノ線材とナノ結合子とを含む混成溶液を提供する工程と、
前記ナノ線材と前記ナノ結合子とからなる混合物を得るために、前記混成溶液を固化する工程と、
を含むことを特徴とするナノ構造を持つ導電性材料の製造方法。
【請求項9】
前記混合物に光を照射することで、その導電率を高めることをさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ナノ線材のアスペクト比が10ないし800であることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項11】
前記ナノ結合子の粒径が100nm未満であることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項12】
前記ナノ線材と前記ナノ結合子との重量比が4:1ないし2:3であることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項13】
前記ナノ線材と前記ナノ結合子との材質が、金、銀、銅またはそれらの組合せであることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項14】
前記ナノ線材および前記ナノ結合子が、金被覆銀ナノ線材、銀被覆金ナノ線材、金被覆銅ナノ線材、銅被覆金ナノ線材、銀被覆銅ナノ線材、銅被覆銀ナノ線材またはそれらの組合せであることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項15】
前記混成溶液が、水、アルコール類、ケトン類、芳香族、エーテル類、エステル類またはそれらの混合物である溶剤を含み、前記溶剤の重量が前記混成溶液の重量の10%ないし80%を占めることを特徴とする請求項8の製造方法。
【請求項16】
ナノ線材と、ナノ結合子とを含み、前記ナノ線材と前記ナノ結合子とが占める重量比が約1:9ないし9:1の間であることを特徴とする光エネルギーまたは熱エネルギーにより形成された導電性材料。
【請求項17】
前記ナノ線材のアスペクト比が10ないし800であることを特徴とする請求項16に記載の導電性材料。
【請求項18】
前記ナノ結合子の粒径が100nm未満であることを特徴とする請求項16に記載の導電性材料。
【請求項19】
前記ナノ線材と前記ナノ結合子との重量比が8:2ないし4:6であることを特徴とする請求項16に記載の導電性材料。
【請求項20】
前記ナノ線材と前記ナノ結合子との材質が、金、銀、銅またはそれらの組合せであることを特徴とする請求項16に記載の導電性材料。
【請求項21】
前記ナノ線材および前記ナノ結合子が、金被覆銀ナノ線材、銀被覆金ナノ線材、金被覆銅ナノ線材、銅被覆金ナノ線材、銀被覆銅ナノ線材、銅被覆銀ナノ線材またはそれらの組合せであることを特徴とする請求項16に記載の導電性材料。
【請求項22】
混成溶液をさらに含み、前記混成溶液が、水、アルコール類、ケトン類、芳香族、エーテル類、エステル類またはそれらの混合物である溶剤を含み、前記溶剤の重量が前記導電性組成物の重量の10%ないし80%を占めることを特徴とする請求項16に記載の導電性材料。
【請求項23】
占める重量が前記導電性組成物の重量の20%以下である高分子材料をさらに含み、前記高分子材料が、ポリエチレン(PE)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、メチルセルロース(methylcellulose)、エチルセルロース(ethylcellulose)、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethylcellulose)またはアルギン酸ナトリウム(sodium alginate)であることを特徴とする請求項16に記載の導電性材料。
【請求項24】
占める重量が前記導電性組成物の重量の5%以下である粘度調整剤をさらに含むことを特徴とする請求項16に記載の導電性材料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図7】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−60751(P2011−60751A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149137(P2010−149137)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(507084073)インダストリアル テクノロジー リサーチ インスティテュート (22)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【Fターム(参考)】