説明

光ケーブルの端末処理方法および端末構造

【課題】予め光ケーブルにケーブル外被を固定する固定部材が取付けられた後においても、固定部材と光ファイバ心線の先端との離間距離を調整することができる光ケーブルの端末処理方法とその端末構造を提供する。
【解決手段】光ケーブル10の端末部のケーブル外被12を剥ぎ取って所定長さの光ファイバ心線11を露出し、ケーブル外被の端部に光ケーブルを把持固定するための固定部材14を取付け、ケーブル外被の一部に輪切り状の切込み15を形成して、固定部材14と共にケーブル外被の端部側12aを光ファイバ心線11に対して長手方向に移動可能とし、固定部材14を通信機器筐体の光ケーブル固定部25に固定した後、固定部材14と光ファイバ心線11の先端との離間距離Dを調整して光ファイバ心線の先端を通信機器に端接続固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ心線を外被で覆い、通信機器間の光接続に用いられる光ケーブルの端末処理方法および端末構造に関する。
【背景技術】
【0002】
多量の情報を高速で伝送するのに、光ケーブルを用いた光通信が増大している。光通信には、光トランシーバ等の光データリンクからなる通信機器等が用いられ、通信機器内に搭載された送信用または受信用の光モジュールあるいは送受信の双方を行う光モジュールに、光ケーブル(光コードを含む)が固定または着脱可能な形態で光接続される。光ケーブルには、単心あるいは多心の光ファイバ心線を外被で覆ったものが用いられる。
【0003】
光ケーブルを光通信機器等に引き止め固定して機器内の光モジュールに光接続する場合、通常、光ケーブルの端末部のケーブル外被を所定長さ除去して光ファイバ心線を露出させ、その先端に光接続のための光コネクタが取付けられる。そして、光ケーブルの端末部は、ケーブル外被に固定部材を取付けて通信機器の筐体部で把持し、光コネクタ部分には、外部張力が及ばないようにして光通信機器内の基板等に実装された光モジュールの光素子等に光結合される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−133940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ケーブルが光通信機器等に固定的に接続する場合、機器筐体等で把持固定されるケーブル外被の端部と、通信機器内の光モジュールと光接続を行う光コネクタとの離間距離(光ファイバ心線の露出長さ)が重要となる。光ケーブルの接続において、この長さが短いと光接続ができなくなり、長すぎると露出された光ファイバ心線が屈曲され、ファイバ屈曲による伝送損失を増大させる。
【0006】
光モジュールが搭載された小型の光通信機器は、通常、上記の光コネクタとケーブル外被との離間距離は、通常、数mm程度で収納スペースも小さい。このため、露出される光ファイバ心線に、上記の離間距離を調整のための余長を設けるスペースを有していないことが多い。このため、光ケーブルの端末部において、予め取付けられた光接続のための光コネクタと機器筐体への固定部材の離間距離が、光通信機器の光ケーブルの固定部分から光接続部分までの離間距離と差があるような場合は、光ケーブルの端末部の作製をやり直す必要があった。
【0007】
本発明は、上述した実状に鑑みてなされたもので、予め光ケーブルにケーブル外被を固定する固定部材が取付けられた後においても、固定部材と光ファイバ心線の先端との離間距離を調整することができる光ケーブルの端末処理方法とその端末構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による光ケーブルの端末処理方法並びに端末構造は、光ファイバ心線をケーブル外被で覆った光ケーブルを光モジュールを搭載した通信機器に接続する光ケーブルの端末処理方法と端末構造であって、光ケーブルの端末部のケーブル外被を剥ぎ取って所定長さの光ファイバ心線を露出し、ケーブル外被の端部に光ケーブルを把持固定するための固定部材を取付け、ケーブル外被の一部に輪切り状の切込みを形成し、固定部材と共にケーブル外被の端部側を光ファイバ心線に対して長手方向に移動可能とし、固定部材を通信機器筐体の光ケーブル固定部に固定した後、固定部材と光ファイバ心線の先端との離間距離を調整して光ファイバ心線の先端を通信機器に端接続固定する。
なお、固定部材と光ファイバ心線の先端との離間距離を調整した後、ケーブル外被に入れられた切込みは、保護部材により覆っておくことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通信機器に光ケーブルを接続固定する場合、予め光ケーブルの端末部に光コネクタおよび光ケーブルの固定部材を取付けておいても、光コネクタと固定部材との離間距離を容易に調整することができ、光ケーブルの接続固定の作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明における光ケーブルの端末部の概略を説明する模式図である。
【図2】本発明における光コネクタと固定部材間の離間距離を狭めるように調整する方法を説明する図である。
【図3】本発明における光コネクタと固定部材間の離間距離を広げるように調整する方法を説明する図である。
【図4】本発明におけるケーブル外被の保護部材の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図により本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の概略を説明する図で、図において、10は光ケーブル、11は光ファイバ心線、12はケーブル外被、13は光コネクタ、14は固定部材、15は切込み、20は通信機器、21は機器筐体、22は回路基板、23は光モジュール、24は外部回路接続部、25は光ケーブル固定部を示す。
【0012】
本発明における光ケーブル10とは、単心の光ファイバ心線から多心の光ファイバ心線11(多心のテープ心線を含む)を、ケーブル外被12で被覆したもので、光ファイバ心線11とケーブル外被12との間に抗張力繊維等の介在を配した形態の光ケーブル(光コードという場合もある)も含むものとする。また、光モジュールを搭載した通信機器20とは、光信号を光ファイバを用いて送受信し、光信号を電気信号に変換して通信を行う機器を対象とするもので、例えば、光送信モジュール(TOSA)や光受信モジュール(ROSA)等を搭載した光データリンクに適用される。
【0013】
また、本発明においては、光ケーブル10を通信機器20の機器筐体21にケーブル外被12を引き止めて固定的に接続する形態のものを対象としている。光ケーブル10の光ファイバ心線11は、先端部分のケーブル外被12を剥ぎ取って露出され、機器内の光素子に光結合される。この光結合には、例えば、MTコネクタと称されている光コネクタ13を用いることができる。そして、通信機器20内に搭載されている光モジュール23の光接続部23aに、光コネクタ13のフェルール13aを挿入して光接続される。
【0014】
光ケーブル10の端末部は、上述した形態で通信機器20に接続するために、光ケーブル10の先端部分に、予め固定部材14と光コネクタ13が取付けられる。固定部材14は、機器筐体21の光ケーブル固定部25で固定されて、光ケーブル10を通信機器20に引き止め固定するもので、ケーブル外被12の端部を把持固定する形状のものが用いられる。また、ケーブル外被12内に抗張力繊維が介在されている場合は、ケーブル外被12と共に把持固定される。
【0015】
光ケーブル10と通信機器20内に搭載された光モジュール23とは、光コネクタ13により光結合される。このための光コネクタ13は、ケーブル外被12が除去されて所定長さで露出された光ファイバ心線11の先端に取付けられる。この光コネクタ13は、光ファイバを位置決めするフェルール13aを備え、該フェルールに光ファイバ心線11のファイバ被覆が除去されたファイバ端を挿着してなる。
【0016】
通信機器20には、機器筐体21に上述した光モジュール23の他に、光信号を電気的に処理し制御する回路部品や電子回路等を実装した回路基板22が収納されている。また、通信機器20は、ホスト装置等の外部機器に接続する外部回路接続部(電気コネクタ)24を有する。さらには、上述の光ケーブル固定部25の他に、特許文献1に開示の給電用電気ケーブル(図示せず)を接続するための構成を備えていてもよい。
【0017】
光ケーブル10を通信機器20に固定的に接続するには、光ケーブルの端末部に予め固定された固定部材14を、機器筐体21の光ケーブル固定部25で把持するように取付ける。次いで、回路基板22等に実装されている光モジュール23の光接続部23aに、光コネクタ13のフェルール13aを嵌入させて光接続する。
この場合、通信機器20側の光ケーブル固定部25と光モジュールの光接続部23aとの離間距離Dは、回路基板22等の取付け位置等により決定される。他方、光ケーブル10側の光コネクタ13と固定部材14との離間距離dは、光ファイバ心線11の露出長や固定部材の固定位置で決定される。
【0018】
この構成で、通信機器20側の離間距離Dに対して、製造上の誤差等により光ケーブル10側の離間距離dが短かったり、長すぎたりして整合しないことがある。この場合、光コネクタ13と光モジュール23との光接続に不具合が生じる。例えば、光コネクタ13と固定部材14間の光ファイバ心線11の長さが短く、離間距離dが不足する場合は、光コネクタ13と光モジュール23とは、光接続ができなくなる。他方、光ファイバ心線11が長く、離間距離dに余長が生じる場合は、光ファイバ心線11を湾曲させる必要があり、湾曲による損失の増大や湾曲を許容するスペースがない場合は、同じく光接続ができなくなる。
【0019】
本発明においては、上記のような場合に対応可能なように、ケーブル外被12の端部に固定した固定部材14の位置から後方近傍の部分で、ケーブル外被12に輪切り状の切込み15を入れておく。この切込み15を入れておくことにより切り離された短尺のケーブル外被部分12aは、固定部材14が固定された状態で光ファイバ心線11に対して移動可能となる。そして、光コネクタ13から固定部材14までの離間距離dを調整し、通信機器側の光ケーブル固定部25と光モジュールの光接続部23aとの離間距離Dに整合させる。
【0020】
図2は、光コネクタ13から固定部材14までの離間距離dを調整する方法を説明する図で、離間距離dに余長が生じる(長すぎる)場合である。図2(A)に示すように、固定部材14が固定された状態のままで、ケーブル外被12の後方近傍に輪切り状の切込み15を入れておき、短尺のケーブル外被部分12aを分割しておく。そして、離間距離dに余長が生じる場合は、図2(B)に示すように、分割されたケーブル外被部分12aを固定部材14と共に光コネクタ13側に移動させて、上記の離間距離dを狭めるように調整する。分割されたケーブル外被部分12aの移動により生じたケーブル外被12の間隙部分15aは、テープ等で塞ぐだけでもよいが、後述するような保護部材16で保護するのが好ましい。
【0021】
図3は、光コネクタ13から固定部材14までの離間距離dが不足する場合にも対応
可能とする例を説明する図である。図3(A)に示すように、図2(A)と同様に、固定部材14が固定された状態のままで、ケーブル外被12の後方近傍に輪切り状の切込み15を2箇所に入れて輪切り片12bを剥ぎ取り間隙を開けた状態で、短尺のケーブル外被部分12aを分割しておく。そして、離間距離dが不足する場合は、図3(B)に示すように、輪切り片12bを剥ぎ取りにより生じた間隙を利用して、分割されたケーブル外被部分12aを固定部材14と共に光コネクタ13側から離れる方向に移動させて、上記の離間距離dを広げるように調整する。分割されたケーブル外被部分12aの移動により生じたケーブル外被12の間隙部分15aは、前記と同様に保護部材16で保護する。
【0022】
図4は、切込み15により生じたケーブル外被12の間隙部分15aを塞ぐ保護部材16の一例を示す図である。保護部材16は、例えば、プラスチック等で形成された円筒部材を2つ割りして、半円筒部材16a,16bとし、その分割エッジ部分に、結合用の突起17と該突起が嵌合する穴18を設けた形状のものを用いることができる。間隙部分15aが中間位置にして、半円筒部材16aと16bで分割されたケーブル外被部分12aと残りのケーブル外被12とに跨るように被せることにより、切込み15による間隙部分15aを容易に保護することができる。なお、保護部材16としては、この他にも支持部材を熱収縮チューブを用いて固定するなど、外被12の間隙部分15aを支持して固定する機能を有する部品を代替して適用することもできる。
【符号の説明】
【0023】
10…光ケーブル、11…光ファイバ心線、12…ケーブル外被、13…光コネクタ、14…固定部材、15…切込み、16…保護部材、17…突起、18…穴、20…通信機器、21…機器筐体、22…回路基板、23…光モジュール、23a…光接続部、24…外部回路接続部、25…光ケーブル固定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線をケーブル外被で覆った光ケーブルを、光モジュールを搭載した通信機器に接続する光ケーブルの端末処理方法であって、
光ケーブルの端末部のケーブル外被を剥ぎ取って所定長さの光ファイバ心線を露出し、前記ケーブル外被の端部に光ケーブルを把持固定するための固定部材を取付け、前記ケーブル外被の一部に輪切り状の切込みを形成して、前記固定部材と共に前記ケーブル外被の端部側を前記光ファイバ心線に対して長手方向に移動可能とし、前記固定部材を通信機器筐体の光ケーブル固定部に固定した後、前記固定部材と前記光ファイバ心線の先端との離間距離を調整して前記光ファイバ心線の先端を前記通信機器に接続固定することを特徴とする光ケーブルの端末処理方法。
【請求項2】
前記固定部材と前記光ファイバ心線の先端との離間距離を調整した後に、前記ケーブル外被に入れられた切込みを、保護部材により覆うことを特徴とする請求項1に記載の光ケーブルの端末処理方法。
【請求項3】
光ファイバ心線をケーブル外被で覆った光ケーブルの端末構造であって、
光ケーブルの端末部のケーブル外被を剥ぎ取って露出された所定長さの光ファイバ心線部と、前記ケーブル外被の端部に、光通信機器の筐体の光ケーブル固定部に前記光ケーブルを把持固定する固定部材と、を備え、
前記光ケーブル外被は輪切り状の切込みを備え、前記切込みは保護部材で覆われており、前記保護部材を除去した状態では、前記固定部材と共に前記ケーブル外被の端部側を前記光ファイバ心線に対して長手方向に移動可能であることを特徴とする光ケーブルの端末構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−173472(P2012−173472A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34597(P2011−34597)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】