説明

光ケーブル接続用クロージャ

【課題】光ケーブル接続用クロージャにおける光ファイバ心線の取り扱い作業の作業効率を向上させることができる光ケーブル接続用クロージャを提供する。
【解決手段】光ファイバ心線同士の接続部及び余長を収納するクロージャ筐体1と、クロージャ筐体の内部に多心の光ファイバテープ心線を単心に分岐するための分岐部分を内蔵した分岐心線モジュール2又は光信号を分岐結合するためのスプリッタを内蔵したスプリッタモジュール3の少なくともいずれか一方と、分岐心線モジュール2又はスプリッタモジュール3の少なくともいずれか一方に光ファイバ心線接続用コネクタと、光ファイバ心線の端部に光ファイバ心線光コネクタと、分岐心線モジュール2又はスプリッタモジュール3に光ファイバ心線接続用コネクタとを備え、光ファイバ心線光コネクタと光ファイバ心線接続用コネクタとを接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ケーブル接続用クロージャに関する。
【背景技術】
【0002】
光ケーブルの分岐、引込み、接続などを行う場合、光ケーブル接続用クロージャを使用する(例えば、下記特許文献1参照)。クロージャ筐体内に設置される光ファイバ接続部及び光ファイバ余長の収納部品により、光ファイバ心線の接続部及び光ファイバ心線の余長を収容し保護する。
【0003】
図7は、従来の光ケーブル接続用クロージャの模式図である。
図7に示すように、従来の光ケーブル接続用クロージャは、クロージャ筐体100内において、成端盤101、スプリッタモジュールケース102、光コネクタ成端ケース103、接続トレイ104、センタートレイ105により構成されている。主ケーブル106aからクロージャ筐体100内部に引き込まれた光ファイバ心線107a,107bの収納は、分岐ケーブル108により導出される分岐心線109、ドロップ光ファイバ110により導出される引き落とし心線111、モジュールコード112との接続部であるモジュールコード光コネクタ113及びモジュールコード112の余長ごとに収納ケース(図示省略)が配置されている。
【0004】
主ケーブル106aの外被はクロージャ筐体100の導入出部100a,100bで把持される。主ケーブル106aが多心光ファイバケーブルである場合、主ケーブル106aは主にテープ心線を有する光ファイバ心線107a,107bで構成されている。光ファイバ心線107aはテープ心線のコーティングを剥ぎ取り単心線114に分岐され、単心線114の状態でクロージャ筐体100内を取り回す。
【0005】
主ケーブル106aの光ファイバ心線107bを分岐ケーブル106又はドロップ光ファイバ109と接続しない場合は、そのままクロージャ筐体100内から主ケーブル106bにより導出させる形態となる。光ファイバ心線107a,107bはセンタートレイ105で光ファイバ心線107a,107bごとに分岐して収納される。
【0006】
また、多心光ファイバケーブルである主ケーブル106aと分岐ケーブル108とを接続する場合は、接続トレイ104内において接続部115において接続した光ファイバ心線107a及び分岐心線109の曲げ半径が30mm以上となるように輪を束ねた状態とし、接続トレイ104内の心線押さえ片(図示省略)で光ファイバ心線107a及び分岐心線109の飛び出しを防止した状態で光ファイバ心線107a及び分岐心線109の余長を収納する。
【0007】
ここで、多心光ファイバケーブルである主ケーブル106aとドロップ光ファイバ110とを接続する場合において、スプリッタモジュール116を介して主ケーブル106aの光ファイバ心線107aをドロップ光ファイバ110と接続して引き落とす例について図7,8により説明する。
【0008】
図8は、従来の光ケーブル接続用クロージャにおけるスプリッタモジュールケース及び光コネクタ成端ケースの模式図である。
図8に示すように、スプリッタモジュール116は光信号を分岐結合するためのスプリッタである石英系平面導波回路(以下、PLCという)を有し、入力した光信号を8分岐又は4分岐することができる。スプリッタモジュール116はクロージャ筐体100ではスプリッタモジュールケース117に収容した状態で使用する。スプリッタモジュール116には、光信号の入力側にスプリッタモジュール入力部コード117と光信号の出力側にモジュールコード112が接続されている。
【0009】
スプリッタモジュール116の入力側にはスプリッタモジュール入力部コード117として単心のピグテイルファイバが接着剤により固定されており、スプリッタモジュール116の出力側にはモジュールコード112として8心又は4心のテープ心線のピグテイルファイバが接着剤により固定されている。これらモジュールコード112の長さは700mm以上であり、モジュールコード112の端部にはモジュールコード光コネクタ113が装着されている。
【0010】
図7に示すように、光ファイバ心線107aを単心に分岐した単心線114に単心線114を成端盤101に接続するための単心線光コネクタ118を装着し、単心線光コネクタ118を成端盤101に接続する。スプリッタモジュール入力部コード117の端部に成端盤101に接続するための入力部コード光コネクタ119を装着し、入力部コード光コネクタ119を成端盤101に接続する。
【0011】
図8に示すように、スプリッタモジュール116は、スプリッタモジュールケース102の下層のトレイである下層トレイ102aに設置されている。モジュールコード112をスプリッタモジュールケース102の上層のトレイである上層トレイ102bにおいてモジュールコード112の余長を収納した後、光コネクタ成端ケース103においてモジュールコード112の光コネクタ113とドロップ光ファイバ110の引き落とし心線111とを接続する。
【0012】
従来の光ファイバは、コアとクラッドの材料による屈折率差のみで光を閉じ込める構造であり、光ファイバの曲げ半径を小さくすると曲げによる放射損失が増大するため、クロージャ筐体100内では曲げ半径の限界値を30mm程度として、光ファイバの曲げ半径が30mm以上となるように取り回す必要があった。
【0013】
このため、例えば、クロージャ筐体100内のスプリッタモジュールケース102、光コネクタ成端ケース103、接続トレイ104及びセンタートレイ105等では曲げ半径30mm以上を確保するためのスペースを設ける必要があった。また、クロージャ筐体100内のスプリッタモジュールケース102、光コネクタ成端ケース103、接続トレイ104及びセンタートレイ105等を経由する光ファイバがクロージャ筐体100内のスプリッタモジュールケース102、光コネクタ成端ケース103、接続トレイ104及びセンタートレイ105間で縦方向の曲率半径30mmを確保することができるレイアウトとする必要もあった。
【0014】
ところで、従来の光ファイバの曲げ半径の限界値にくらべて、曲げ半径を小さくできる光ファイバとしてホーリー光ファイバがある(例えば、下記特許文献2参照)。このホーリー光ファイバは、コア周囲のクラッド部に空孔を存在させることでクラッドの実効的な屈折率を下げて、コアとクラッドとの間の屈折率差を大きくして、曲げによる放射損失の増加を抑える光ファイバである。このように、ホーリー光ファイバは、曲げや捻りへの耐性が大きいため、従来の光ファイバでは成し得ない径で光ファイバを曲げることができる。
【0015】
【特許文献1】特開2000−121840号公報
【特許文献2】特開2005−17650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述したように従来の光ケーブル接続用クロージャでは、光ファイバの曲げ半径を30mm以上確保する設計としていた。このため、図7,8に示すように、クロージャ筺体100のサイズをできる限り大きくせずに、光ファイバの曲げ半径30mm以上を確保するため、スプリッタモジュールケース102、光コネクタ成端ケース103、接続トレイ104及びセンタートレイ105等を多段設置し、光ファイバはスプリッタモジュールケース102、光コネクタ成端ケース103、接続トレイ104及びセンタートレイ105等を経由しながら取り回される構成であった。
【0017】
例えば、図7,8で示したような従来のスプリッタモジュール116は、700mm以上の光コネクタ113付きのモジュールコード112を有し、クロージャ筐体100内に縦方向にモジュールコード112の余長を配線する作業が必要であった。このように、クロージャ筐体100内で多段設置した各ケースを経由しながら光ファイバを収納することは作業効率を向上させる上で課題となる。
【0018】
しかし、ホーリー光ファイバを用いることとすれば曲げ半径を小さくできるため、ホーリー光ファイバの使用により光ファイバ心線余長の収納スペースを小型化することができる。その効果として、多段設置したケースを経由する配線ではなく、水平に配置するレイアウトも可能になる。しかしながら、小型化した収納スペースへ光ファイバを取り回して収納する作業は困難であり、作業効率が低下するという課題がある。
【0019】
また、収納する光ファイバ心線の長さが現状と変わらない構成を採用した場合、小型化に伴い輪取り1周で巻ける光ファイバ心線の長さが短くなることで一定の長さの光ファイバを収納する作業時間が増大するという課題もある。
【0020】
以上のことから、本発明は、光ケーブル接続用クロージャにおける光ファイバ心線の取り扱い作業の作業効率を向上させることができる光ケーブル接続用クロージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の課題を解決する第1の発明に係る光ケーブル接続用クロージャは、
光ファイバ心線同士の接続部及び余長を収納するクロージャ筐体と、
前記クロージャ筐体の内部に多心の光ファイバテープ心線を単心に分岐するための分岐部分を内蔵した分岐心線モジュール又は光信号を分岐結合するためのスプリッタを内蔵したスプリッタモジュールの少なくともいずれか一方と、
前記分岐心線モジュール又は前記スプリッタモジュールの少なくともいずれか一方に光ファイバ心線接続用コネクタと、
前記光ファイバ心線の端部に光ファイバ心線光コネクタと、
前記分岐心線モジュール又は前記スプリッタモジュールに光ファイバ心線接続用コネクタと
を備え、
前記光ファイバ心線光コネクタと前記光ファイバ心線接続用コネクタとを接続する
ことを特徴とする。
【0022】
上記の課題を解決する第2の発明に係る光ケーブル接続用クロージャは、第1の発明に係る光ケーブル接続用クロージャにおいて、
前記分岐心線モジュール又は前記スプリッタモジュールにモジュール間接続用コネクタを備え、
前記モジュール間接続用コネクタを介して前記分岐心線モジュールと前記スプリッタモジュールとを接続する
ことを特徴とする。
【0023】
上記の課題を解決する第3の発明に係る光ケーブル接続用クロージャは、第1の発明又は第2の発明に係る光ケーブル接続用クロージャにおいて、
前記光ファイバ分岐心線モジュール又は前記スプリッタモジュールの少なくともいずれか一方に内蔵する光ファイバは、該光ファイバの断面において空孔を有する光ファイバである
ことを特徴とする。
【0024】
上記の課題を解決する第4の発明に係る光ケーブル接続用クロージャは、第1の発明から第3の発明のいずれかひとつに係る光ケーブル接続用クロージャにおいて、
前記光ファイバ分岐心線モジュール又は前記スプリッタモジュールの少なくともいずれか一方は収納ケース内に収納固定され、前記クロージャ筐体の内部には複数の前記収納ケースを備える
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、光ケーブル接続用クロージャにおける光ファイバ心線の取り扱い作業の作業効率を向上させることができる光ケーブル接続用クロージャを実現することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る光ケーブル接続用クロージャの実施例について図を参照しながら説明する。ここで、図1は本発明の第1の実施例に係る光ケーブル接続用クロージャの模式図、図2は本発明の第2の実施例に係る分岐心線モジュールの種々の構成例の模式図、図3は本発明の第2の実施例に係る8分岐スプリッタモジュールの種々の構成例の模式図、図4は本発明の第2の実施例に係る4分岐スプリッタモジュールの種々の構成例の模式図、図5は本発明の第3の実施例に係る光ケーブル接続用クロージャの模式図、図6は本発明の第3の実施例に係る光ケーブル接続用クロージャの模式図である。
【実施例1】
【0027】
本発明に係る光ケーブル接続用クロージャの第1の実施例について説明する。
図1に示すように、本実施例に係る光ケーブル接続用クロージャにおいては、後述する分岐心線モジュール2及びスプリッタモジュール3をクロージャ筺体1に直接固定する構造となっている。なお、本実施例においては、分岐心線モジュール2及びスプリッタモジュール3の両方を備えているが、分岐心線モジュール2又はスプリッタモジュール3のいずれか一方を備える構成とすることも可能である。
【0028】
分岐心線モジュール2は、分岐心線モジュール2の側面に、多心のテープ光ファイバ8を接続するための多心用光コネクタ5と、単心の光ファイバ9を接続するための単心用光コネクタ6とを具備する。
【0029】
スプリッタモジュール3は、スプリッタモジュール3の側面に、分岐心線モジュール2の単心用光コネクタ6とスプリッタモジュール3の単心の光ファイバ11とを接続する単心用光コネクタ4と、単心の光ファイバ12を接続するための単心用光コネクタ7とを具備する。
【0030】
次に、本実施例に係る光ケーブル接続用クロージャにおける分岐心線モジュール2の構成例について説明する。
図1に示すように、多心のテープ光ファイバ8は、分岐心線モジュール2のケース2a内で単心の光ファイバ9へ分岐される。この分岐は多心のテープ光ファイバ8を裂いて単心の光ファイバ9としている。多心のテープ光ファイバ8を裂いて分岐させた分岐部は分岐部保護部材10により覆われている。
【0031】
多心のテープ光ファイバ8の端部には、多心用光コネクタ5を装着している。単心の光ファイバ9の端部には、それぞれ多心用光コネクタ5を装着している。分岐心線モジュール2における多心用光コネクタ5及び多心用光コネクタ5は分岐心線モジュール2のケース2aに固定し、多心のテープ光ファイバ8及び単心の光ファイバ9は分岐心線モジュール2のケース2a内に収納する。
【0032】
次に、本実施例に係る光ケーブル接続用クロージャにおけるスプリッタモジュール3の構成例について説明する。
図1に示すように、スプリッタモジュール3は単心用光コネクタ4を具備する。スプリッタモジュール3のケース3a内で単心の光ファイバ11により導波されていた光信号を別の単心の光ファイバ12へ分岐する。この分岐は光信号を分岐結合するためのスプリッタである石英系平面導波回路(以下、PLCという)13により行う。このPLC13と単心の光ファイバ11及び単心の光ファイバ12は接着剤によりスプリッタモジュール3のケース3aに固定している。
【0033】
8分岐するスプリッタモジュール3の場合、片方の側面には単心の光ファイバ11が接着剤により固定され、それと対向する側面には8心のテープ光ファイバ12を単心ごとに分岐した単心の光ファイバ12aが接着剤により固定されている。この単心の光ファイバ11の端部には、単心用光コネクタ7を装着している。スプリッタモジュール3における単心用光コネクタ4及び単心用光コネクタ7はスプリッタモジュール3のケース3aに固定し、単心の光ファイバ11及び単心の光ファイバ12aはスプリッタモジュール3のケース3a内に収納する。
【0034】
次に、主ケーブル20のうちの1心である光ファイバ心線21を単心のドロップ光ファイバ22と接続する例について説明する。
図1に示すように、クロージャ筐体1内へ導入出される主ケーブル20は、外被を剥がして光ファイバ心線21の状態でクロージャ筐体1内を取り回される。この光ファイバ心線21は多心のテープ光ファイバ又は単心のテープ光ファイバであるが、本実施例においては光ファイバ心線21は多心のテープ光ファイバであるものとする。
【0035】
クロージャ筐体1内へ導入した光ファイバ心線21を一定の長さの所で切断して、切断した光ファイバ心線21の端部に多心用光コネクタ23を装着する。この多心用光コネクタ23は分岐心線モジュール2の多心用光コネクタ5と接続する。分岐心線モジュール2のケース2a内において多心のテープ光ファイバ8は単心の光ファイバ9ごとに分岐部(図示省略)において分岐される。
【0036】
この分岐部には、分岐部を保護する分岐部保護部材10により覆われている。分岐心線モジュール2のケース2a内で分岐された光ファイバ9の端部には単心用光コネクタ6を装着する。この単心用光コネクタ6は、分岐心線モジュール2のケース2aに固定されている。
【0037】
分岐心線モジュール2のケース2aにおける単心用光コネクタ6の固定位置は、一つはスプリッタモジュール3の単心用光コネクタ4の取り付け位置と対向して固定され、他の3つは他の面に固定されている。分岐心線モジュール2の多心用光コネクタ5の取り付け位置の反対側に固定した分岐心線モジュール2の単心用光コネクタ6は、スプリッタモジュール3のケース3aに固定した単心用光コネクタ4と接続する。
【0038】
分岐心線モジュール2と単心用光コネクタ4,6を介して接続したスプリッタモジュール3において、スプリッタモジュール3に内蔵したPLC13により光信号を8分岐する。分岐心線モジュール2と接続する側のPLC13の端部には単心の光ファイバ11が接着剤により固定されており、その反対側のPLC13の端部には8心のテープ光ファイバ12が接着剤により固定されている。
【0039】
スプリッタモジュール3のケース3a内で8心のテープ光ファイバ12は単心ごとに分岐され単心光ファイバ12aとされ、この単心光ファイバ12aの端部に単心用光コネクタ7を装着する。この単心光コネクタ7は、スプリッタモジュール3のケース3aに固定される。なお、図1では8個の単心用光コネクタ7をスプリッタモジュール3のケース3aの一つの側面に8個並べた例を示している。
【0040】
ドロップ光ファイバ22の外被を裂いてクロージャ筐体1内に導入したドロップ光ファイバ22の単心の引き落とし心線24に単心用光コネクタ25を装着し、スプリッタモジュール3のケース3aに8個並べて固定した単心用光コネクタ7の一つと接続する。
以上のような形態により主ケーブル20のうちの1心である光ファイバ心線21を単心のドロップ光ファイバ22と接続する。
【0041】
次に、主ケーブル20のうちの1心である光ファイバ心線21を分岐心線モジュール2と接続した後でスプリッタモジュール3を介さずにドロップ光ファイバ26と接続する例について説明する。
図1に示すように、クロージャ筐体1内へ導入した光ファイバ心線21を一定の長さの所で切断して、切断した光ファイバ心線21の端部に多心用光コネクタ23を装着する。
【0042】
主ケーブル20の光ファイバ心線21へ装着した多心用光コネクタ23を分岐心線モジュール2のケース2aに装着した多心用光コネクタ5と接続する。ドロップ光ファイバ26の単心の引き落とし心線27に単心用光コネクタ28を装着し、分岐心線モジュール2のケース2aに固定した単心用光コネクタ6と接続する。
【0043】
スプリッタモジュール3に固定する単心用光コネクタ4と接続される分岐心線モジュール2の単心用光コネクタ6と、スプリッタモジュール3を介さずに直接ドロップ光ファイバ26と接続する単心用光コネクタ6は、分岐心線モジュール2のケース2aにおける固定位置が異なる。
以上のような形態により、主ケーブル20のうちの1心である光ファイバ心線21をスプリッタモジュール3を介さずに単心の引き落とし心線27と接続する。
【0044】
次に、主ケーブルのうちの多心テープ光ファイバ29を分岐ケーブル30の多心テープ光ファイバ31と接続する例について説明する。
図1に示すように、主ケーブル20の多心のテープ光ファイバ29と分岐ケーブル30の多心のテープ光ファイバ31をそれぞれを一定の長さの所で切断する。主ケーブル20の多心のテープ光ファイバ29の端部に多心用光コネクタ32を装着し、分岐ケーブル30の多心のテープ光ファイバ31の端部に多心用光コネクタ33を装着する。そして、主ケーブル20の多心のテープ光ファイバ29と分岐ケーブル30の多心のテープ光ファイバ31をクロージャ筐体1内の底面の接続トレイ34に多心用光コネクタ32と多心用光コネクタ33とを接続した状態で収納する。
【0045】
なお、この接続形態では主ケーブル20の多心のテープ光ファイバ29の端部と分岐ケーブル30の多心のテープ光ファイバ31の端部とを融着接続する場合もある。融着接続する場合は、融着接続の失敗に備えて複数回の融着接続ができるように主ケーブル20の多心のテープ光ファイバ29と分岐ケーブル30の多心のテープ光ファイバ31に余長がある状態で接続トレイ34へ収納する。
【実施例2】
【0046】
本発明に係る光ケーブル接続用クロージャの第2の実施例について説明する。
本実施例に係る光ケーブル接続用クロージャにおいては、分岐心線モジュール2とスプリッタモジュール3とに内蔵する光ファイバとして、光ファイバの断面において空孔を有する光ファイバを使用する。
【0047】
次に、本実施例に係る光ケーブル接続用クロージャにおける分岐心線モジュール2の種々の構成例について説明する。
図2に示すように、本実施例に係る分岐心線モジュール2において、多心のテープ光ファイバ8と、分岐部保護部材10と、単心の光ファイバ9と、単心の光ファイバ9に装着した単心用光コネクタ6とを具備するレイアウトを示している。
【0048】
なお、図2(a)は直列型、図2(b)は多面光コネクタ型、図2(c)は分岐部横設置型の分岐心線モジュール2の構造例を示した模式図である。
また、図2(d)は、多心用光コネクタ5が取り外しできる構造例を示した模式図である。例えば、主ケーブル20からの光ファイバ心線21の余長が足りない場合、分岐心線モジュール2から多心用光コネクタ5を取り外し、接続することが可能となる。
このように、本実施例に係る光ケーブル接続用クロージャによれば、分岐心線モジュール2は種々の形態をとることが可能である。
【0049】
次に、本実施例に係る光ケーブル接続用クロージャにおけるスプリッタモジュール3の種々の構成例について説明する。
図3及び図4に示すように、本実施例に係るスプリッタモジュール3において、PLC13と、PLC13に接着剤により固定した8心のテープ光ファイバ12と、テープ光ファイバ12を単心ごとに分岐した単心光ファイバ12aと、単心光ファイバ12aの端部に装着した単心用光コネクタ7とを具備するレイアウトを示している。
【0050】
なお、図3(a)は8分岐直列型、図3(b)は4心×2段の8分岐直列型、図3(d)は8分岐PLC横設置型、図3(e)は4心×2段の8分岐PLC横設置型、図3(f)はスプリッタモジュール光コネクタ4及び分岐心線モジュール単心用光コネクタ7同一側面配置の8分岐PLC横設置型、図3(h)は4心×2本のテープ心線14の8分岐テープ型のスプリッタモジュールの構造例を示した模式図である。
【0051】
また、図3(c)及び図3(g)は、多心用光コネクタ5が取り外しできる構造例を示した模式図である。例えば、複数のスプリッタモジュール3を縦方向に積み重ねて設置し、同一の分岐心線モジュール2と接続する場合、又は、スプリッタモジュール3と接続する下部側のドロップ光ファイバ22の単心の引き落とし心線24の余長が足りない場合、スプリッタモジュール3から単心用光コネクタ4,7を取り出し、接続することができる。
【0052】
また、図4(a)は4分岐直列型、図4(c)は4分岐PLC横設置型、図4(d)はスプリッタモジュール光コネクタ4及び分岐心線モジュール単心用光コネクタ7同一側面配置の4分岐PLC横設置型、図4(f)は4心×1本のテープ心線14の4分岐テープ型のスプリッタモジュールの構造例を示した模式図である。
【0053】
また、図4(b)及び図4(e)は、多心用光コネクタ5が取り外しできる構造例を示した模式図である。例えば、複数のスプリッタモジュール3を縦方向に積み重ねて設置し、同一の分岐心線モジュール2と接続する場合、又は、スプリッタモジュール3と接続する下部側のドロップ光ファイバ22の単心の引き落とし心線24の余長が足りない場合、スプリッタモジュール3から単心用光コネクタ4,7を取り出し、接続することができる。
このように、本発実施例に係る光ケーブル接続用クロージャによれば、スプリッタモジュール3は種々の形態をとることが可能である。
【0054】
なお、図2〜4で示した光ファイバは、全てその断面において空孔を有する光ファイバである。例えば、コア周囲のクラッド部に空孔を存在させることでクラッドの実効的な屈折率を下げて、コアとクラッドとの間の屈折率差を大きくして、曲げによる放射損失の増加を抑えるホーリー光ファイバである。
【0055】
分岐心線モジュール2とスプリッタモジュール3内でホーリー光ファイバを使用することで、光ファイバの曲げ半径を5mm程度まで小さくすることができるため、分岐心線モジュール2のケース2aとスプリッタモジュール3のケース3aを小型化することができる。そして、分岐心線モジュール2のケース2aとスプリッタモジュール3のケース3aが小型化することで、分岐心線モジュール2とスプリッタモジュール3とを並列して設置することが可能になる。
【0056】
また、図2〜4で示したように、分岐心線モジュール2とスプリッタモジュール3内に収める各光ファイバ8,9,11,12やPLC13や分岐部保護部材10のレイアウト設計の自由度が向上する。あわせて、分岐心線モジュール2のケース2aとスプリッタモジュール3のケース3aへ固定する各光コネクタ4,5,6,7の位置も図2〜4で示したように多様にすることができる。例えば、図3(b)に示すように、8個の光コネクタ7をスプリッタモジュール3のケース3aの側面に固定する場合、一つの側面に4個ずつ上下に並べて設置することもできる。
【0057】
なお、分岐心線モジュール2とスプリッタモジュール3内の各光ファイバ8,9,11,12は、各光コネクタ4,5,6,7の装着の失敗に備えて余長を持たせることが望ましい。各光ファイバ8,9,11,12の余長の分岐心線モジュール2のケース2aとスプリッタモジュール3のケース3a内での収納形態は、PLC13や分岐保護部材10を周回させる場合と、各光ファイバ8,9,11,12をカールさせる場合がある。いずれの場合も各光ファイバ8,9,11,12はホーリー光ファイバであるため、曲げ半径5mm程度で収納でき分岐心線モジュール2のケース2aとスプリッタモジュール3のケース3aを小型化することができる。
【実施例3】
【0058】
本発明に係る光ケーブル接続用クロージャの第3の実施例について説明する。
図5,6に示すように、本実施例に係る光ケーブル接続用クロージャは、分岐心線モジュール2及びスプリッタモジュール3をモジュール収納ケース35へ固定することでクロージャ筐体1側に固定する構造となっている。なお、図5,6においては、図1において説明したものと同一の部材に対しては、図1で使用したものと同一の符号を付するものとする。
【0059】
図5に示す光ケーブル接続用クロージャは、図1で示した光ケーブル接続用クロージャの接続形態とほぼ同様であるが、分岐心線モジュール2とスプリッタモジュール3をモジュール収納ケース35へ固定している点が図1で示した光ケーブル接続用クロージャと異なる。
【0060】
また、図6に示す光ケーブル接続用クロージャは、複数個の分岐心線モジュール2のみをクロージャ筺体1へ収納する場合の接続形態を示している。この場合、モジュール収納ケース35に分岐心線モジュール2を並列して固定している。モジュール収納ケース35を利用することで、分岐心線モジュール2と接続する分岐ケーブル30の多心のテープ光ファイバ31やドロップ光ファイバ26の単心の引き落とし心線27等が絡むことがなく、視認性良くテープ光ファイバ31や引き落とし心線27等を取り回すことができる。なお、本実施例においては、複数個の分岐心線モジュール2のみをクロージャ筺体1へ収納する場合について説明したが、複数個のスプリッタモジュール3のみをクロージャ筺体1へ収納する構成とすることも可能である。
【0061】
多数の分岐心線モジュール2やスプリッタモジュール3をクロージャ筺体1へ収納する必要がある場合、これら多数の分岐心線モジュール2やスプリッタモジュール3をモジュール収納ケース35に固定することでクロージャ筐体1内の空間を有効に使用することができる。例えば、モジュール収納ケース35を多段に積むことで収納可能な分岐心線モジュール2やスプリッタモジュール3の数を増やすことができる。また、クロージャ筐体1内での分岐心線モジュール2やスプリッタモジュール3の収納位置の視認性が向上する。
【0062】
以上、第1〜第3の実施例において説明したように、本発明に係る光ケーブル接続用クロージャは、分岐部保護部材10及びPLC13に接続された各光ファイバ8,9,11,12の端部に各光コネクタ4,5,6,7を装着して分岐心線モジュール2のケース2a及びスプリッタモジュール3のケース3aへ固定した分岐心線モジュール2及びスプリッタモジュール3として構成し、クロージャ筐体1内へ導入出する主ケーブル20、分岐ケーブル30及びドロップ光ファイバ22,26の端部へ各光コネクタ23,25,28を装着して、各光コネクタ23,25,28と各光コネクタ4,5,6,7とを接続するだけで、光ケーブルの接続収納を実現することができる。
【0063】
また、各光コネクタ4,5,6,7を備えた分岐心線モジュール2及びスプリッタモジュール3により、従来の光ケーブル接続用クロージャで必要であったスプリッタモジュールケース102(図7,8参照)及び光コネクタ成端ケース103(図7,8参照)等の複数多段のケースを経由するモジュールコード112(図7,8参照)の余長の取り回しが不要になり、クロージャ筐体1内での光ファイバの接続収納作業を簡略化することができる。
【0064】
また、分岐心線モジュール2及びスプリッタモジュール3内の光ファイバを曲げ半径を小さくできるホーリー光ファイバとすることで分岐心線モジュール2及びスプリッタモジュール3を小型化することができ、さらに、クロージャ筺体1も小型化することができる。
【0065】
また、分岐心線モジュール2及びスプリッタモジュール3を小型化することで、従来の光ケーブル接続用クロージャで必要であった、スプリッタモジュールケース102及び光コネクタ成端ケース103等の複数枚のケースを経由する必要であったモジュールコード112の余長の取り回しを1枚のモジュール収納ケース35へ収納することができるだけでなく、1枚のモジュール収納ケース35に多数の分岐心線モジュール2及びスプリッタモジュール3を固定できるため、光ファイバの接続収納作業の作業効率を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、例えば、光ケーブルの分岐、引込み、接続などを行う場合に用いる光ケーブル接続用クロージャに利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施例に係る光ケーブル接続用クロージャの模式図である。
【図2】本発明の第2の実施例に係る分岐心線モジュールの種々の構成例の模式図である。
【図3】本発明の第2の実施例に係る8分岐スプリッタモジュールの種々の構成例の模式図である。
【図4】本発明の第2の実施例に係る4分岐スプリッタモジュールの種々の構成例の模式図である。
【図5】本発明の第3の実施例に係る光ケーブル接続用クロージャの模式図である。
【図6】本発明の第3の実施例に係る光ケーブル接続用クロージャの模式図である。
【図7】従来の光ケーブル接続用クロージャの模式図である。
【図8】従来の光ケーブル接続用クロージャにおけるスプリッタモジュールケース及び光コネクタ成端ケースの模式図である。
【符号の説明】
【0068】
1 クロージャ筺体
2 分岐心線モジュール
2a 分岐心線モジュールのケース
3 スプリッタモジュール
3a スプリッタモジュールのケース
4,6,7 単心用光コネクタ
5 多心用光コネクタ
8,12 多心のテープ光ファイバ
9,11,12a 単心の光ファイバ
10 分岐部保護部材
13 PLC
35 モジュール収納ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線同士の接続部及び余長を収納するクロージャ筐体と、
前記クロージャ筐体の内部に多心の光ファイバテープ心線を単心に分岐するための分岐部分を内蔵した分岐心線モジュール又は光信号を分岐結合するためのスプリッタを内蔵したスプリッタモジュールの少なくともいずれか一方と、
前記分岐心線モジュール又は前記スプリッタモジュールの少なくともいずれか一方に光ファイバ心線接続用コネクタと、
前記光ファイバ心線の端部に光ファイバ心線光コネクタと、
前記分岐心線モジュール又は前記スプリッタモジュールに光ファイバ心線接続用コネクタと
を備え、
前記光ファイバ心線光コネクタと前記光ファイバ心線接続用コネクタとを接続する
ことを特徴とする光ケーブル接続用クロージャ。
【請求項2】
前記分岐心線モジュール又は前記スプリッタモジュールにモジュール間接続用コネクタを備え、
前記モジュール間接続用コネクタを介して前記分岐心線モジュールと前記スプリッタモジュールとを接続する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ケーブル接続用クロージャ。
【請求項3】
前記光ファイバ分岐心線モジュール又は前記スプリッタモジュールの少なくともいずれか一方に内蔵する光ファイバは、該光ファイバの断面において空孔を有する光ファイバである
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光ケーブル接続用クロージャ。
【請求項4】
前記光ファイバ分岐心線モジュール又は前記スプリッタモジュールの少なくともいずれか一方は収納ケース内に収納固定され、前記クロージャ筐体の内部には複数の前記収納ケースを備える
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光ケーブル接続用クロージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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