説明

光ケーブル接続用クロージャ

【課題】構成のシンプル化を図ることで装置全体の小型化及び軽量化が図れ、さらに、表裏面においてコネクタ接続が可能な成端トレイに対する作業をより簡便に行うことができる構成とすることで、作業者の作業効率を向上させる光ケーブル接続用クロージャを提供すること。
【解決手段】光ケーブル接続用クロージャ10を一方の面に上流側と下流側の光ファイバ心線同士を接続させるためのコネクタを収納する第1のコネクタ収納部14と、他方の面に上流側の光ファイバ心線と下流側の単心ドロップケーブルとを接続するためのコネクタを収納する第2のコネクタ収納部16とを備えた成端トレイ12と、成端トレイ12を覆う片面が開閉自在の構成とされたスリーブ22とを備えるクロージャ本体20が設けられ、成端トレイ12は、クロージャ本体20内に形成されたトレイ係止部24に取り付けられることで、トレイ係止部24を軸中心としてクロージャ本体20内において回動自在に備えられる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ケーブル、特に光ファイバ心線を有する光ケーブルの架空区間のアクセス区間において、固定配線区間の配線点やケーブル接続点における通過心線接続並びに架空光ケーブルとドロップケーブルの接続のために用いられ、光ケーブルの接続部を保護して、光ケーブルからの引き落とし配線及び分岐接続配線の際に、他の心線に影響を与えずに運用できる光ケーブル接続用クロージャに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、光ケーブルの分岐や、引き込み、接続等を行う場合、クロージャ内において光ケーブル心線相互を接続するとともに、この接続部と、光ケーブル心線の余長分とを収納するための心線接続余長収納トレイを備えた光ケーブル接続用クロージャが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、光ファイバ心線を接続するためのコネクタを収納するコネクタ収納部と、該コネクタ収納部に隣接して設けた分岐光ファイバ心線の心線余長を収納する心線余長 収納部とを備えた成端トレイと、該心線余長収納部に収納されている分岐光ファイバ心線を配線するための配線用把持具ベースとをクロージャ本体内に左右非対 称に設けた光ケーブル接続用クロージャであって、前記クロージャ本体のスリーブが片面および/または両面を開閉自在の構成とし、該クロージャ本体内に設置される成端トレイを固定するフレームの両側上面にケーブルテンションメンバの固定部を上面側から固定できる構成として備えると共に、前記成端トレイに複数の心線接続部のコネクタ収納部と、全接用接続部と、通信事業者側および加入者側の保留心線接続部と、接続部ホルダとの収納部とした多目的接続部収納部とを配備したことを特徴とする光ケーブル接続用クロージャが開示されている。
【0004】
この技術によると、上部側(上流側の通信事業者側)、下部側(下流側の加入者側)に対する光ケーブル接続用クロージャの設置方向を決定する際に、事前に固定されたクロージャ全体を左右反対にひっくり返すことで即座に対応することができるため、現場での心線接続作業の簡素化が図れるとされている。
【0005】
また、クロージャの組状態にて、心線把持具ベースが一方側に設置されているので、接続固定部を付け替える必要がなく、心線接続作業を楽に行えるとともに、支持線、テンションメンバの固定作業もクロージャの上面からアクセスでき、光ケーブルからの引き落とし配線及び分岐接続配線の際に、コネクタ固定ベースを上部側、下部側に付け替える必要がなく、上部側に事前固定しておけばよいため、他の心線に影響を与えることなく単心運用でき、空いている心線は、その後のユーザーの加入等に必要な単心線として用いることができるため、心線使用効率を高めることができるとされている。
【0006】
さらに、心線接続・収納は、コネクタ接続可能の構成となっているため、接続作業や心線収納作業、接続状況の点検補修等の保守作業を含め、施工性を大幅に向上させることができるほか、単心に分離した心線を保護することができるため、光ケーブルの有効利用が可能となり、また、心線の下部延ばしや、架空ループ配線にも対応でき、しかも、一端分岐した心線を再度本線に戻すこともできるといった、光アクセスサービスを迅速で安価に提供することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−65037公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されている光ケーブル接続用クロージャは、その構成に必要な部品が多いことから(例えば、成端トレイを支持するフレーム等)、全体として大型な構成となってしまい、そのため、重量も重くなってしまい、設置作業が煩雑なものとなってしまうといった指摘がされている。
【0009】
また、成端トレイがフレームに一定の方向で固定される構成となっているため、一方の面でしかコネクタ接続することができない成端トレイを用いらざるを得ず、光ケーブルの保守管理や、後の分岐作業等が煩雑なものとなってしまうという指摘もあった。また、仮に、表裏面においてコネクタ接続が可能な成端トレイを用いたとしても、その成端トレイに対する作業を行う際には、例えば、作業者が光ケーブル接続用クロージャの下側に回り込むといった動作が必要となり、作業効率の面における改善が必要となる。
【0010】
本発明は、上述の問題を解決するためのもので、構成のシンプル化を図ることで装置全体の小型化及び軽量化が図れ、さらに、表裏面においてコネクタ接続が可能な成端トレイに対する作業をより簡便に行うことができる構成とすることで、作業者の作業効率を向上させる光ケーブル接続用クロージャを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題に対応するため、本発明は、以下の技術的手段を講じている。
即ち、請求項1記載の発明は、一方の面に上流側と下流側の光ファイバ心線同士を接続させるためのコネクタを収納する第1のコネクタ収納部と、他方の面に上流側の光ファイバ心線と下流側の単心ドロップケーブルとを接続するためのコネクタを収納する第2のコネクタ収納部とを備えた成端トレイと、前記成端トレイを覆う片面が開閉自在の構成とされたスリーブと、を備えるクロージャ本体が設けられた光ケーブル接続用クロージャであって、前記成端トレイは、前記クロージャ本体内に形成されたトレイ係止部に取り付けられることで、当該トレイ係止部を軸中心として前記クロージャ本体内において回動自在に備えられていることを特徴とする光ケーブル接続用クロージャである。
【0012】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の光ケーブル接続用クロージャであって、前記成端トレイの他方の面には、前記単心ドロップケーブルを配線把持するための配線用把持部材が一体形成されていることを特徴としている。さらに、請求項3記載の発明は、請求項2記載の光ケーブル接続用クロージャであって、前記配線用把持部材は、一方の面に前記単心ドロップケーブルを把持する溝が形成された把持部と、当該把持部の前記一方の面を開閉自在に覆う蓋部とからなり、前記蓋部は、前記把持部に対向する面にリブが形成されており、前記単心ドロップケーブルを前記把持部の溝に嵌合させた状態で前記蓋部により前記把持部を覆うことで、前記リブが前記単心ドロップケーブルを押圧し、当該単心ドロップケーブルを前記把持部に固定させる構成となっていることを特徴としている。
【0013】
そして、請求項4記載の発明は、請求項1〜3いずれか1項記載の光ケーブル接続用クロージャであって、前記成端トレイの他方の面には、前記コネクタに接続させない前記単心ドロップケーブルを挿脱自在に固定するドロップケーブル固定部が設けられていることを特徴としている。さらに、請求項5記載の発明は、請求項1〜4いずれか1項記載の光ケーブル接続用クロージャであって、一端が前記クロージャ本体内に導出入され当該クロージャ本体を架空支持する支持線に取り付けられたストッパーにより、前記成端トレイが所定の位置で係止可能に構成されていることを特徴としている。
【0014】
さらに、請求項6記載の発明は、請求項1〜5いずれか1項記載の光ケーブル接続用クロージャであって、前記スリーブが、分割スリーブからなるとともに、前記クロージャ本体の設置位置により作業が可能の方向のスリーブ面を開放可能の構成とし、片開きに開放されたスリーブを所定位置に保持するスリーブストッパーを前記分割スリーブ間に跨がって係脱自在に設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、光ケーブル接続用クロージャの構成をシンプルなものとすることができるため(例えば、成端トレイを支持するためのフレームを必要としない)、装置全体の小型化及び軽量化が望める。また、成端トレイが回動自在にクロージャ本体内に取り付けられているため、作業面側において表裏どちらからでもアクセスが容易なものとなり、作業が簡便に行える。さらに、支持線と成端トレイとの間のスペースが大きく取れるため、成端トレイへのアクセス性がより向上する。
【0016】
またさらに、表裏面においてコネクタ接続が可能となっている成端トレイの構成により、例えば、一旦単心ドロップケーブルに接続した光ファイバ心線を下流側の光ファイバ心線(本線)に接続しなおす(下部延ばし)といった作業も容易に行うことができる。また、スリーブの開閉状態を容易に調整することが可能なため、作業性の向上も望める。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る光ケーブル接続用クロージャの実施形態を示した図で、(a)は成端トレイの第1のコネクタ収納部側を上方に向けた状態の縦断面概略図、(b)は成端トレイを係止部材により係止した状態の縦断面概略図である。
【図2】本発明に係る光ケーブル接続用クロージャの実施形態における成端トレイを示したもので、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図、(d)は平面図、(e)はドロップケーブル固定部の概略図である。
【図3】本発明に係る光ケーブル接続用クロージャの実施形態における成端トレイに一体形成されている配線用把持部材の構成を示した概略図である。
【図4】本発明に係る光ケーブル接続用クロージャの実施形態におけるクロージャ本体の使用状態のうち、成端トレイを係止部材により係止した状態の縦断面図である。
【図5】本発明に係る光ケーブル接続用クロージャの実施形態におけるクロージャ本体の使用状態を示した図で、(a)は密閉状態の正面図、(b)は一方の作業面を開けた状態の正面図、(c)は一方の作業面を開けた状態を示した縦断面図を表している。
【図6】本発明に係る光ケーブル接続用クロージャの実施形態において用いられるコネクタ固定ベースを示し、(a)はコネクタ固定ベースの側面図、(b)はコネクタ固定ベースの設置状態を示した側面図、(c)はコネクタ挿脱時の開放状態の側面図である。
【図7】本発明に係る光ケーブル接続用クロージャの実施形態におけるドロップケーブル意外のケーブルを把持する把持部材を示した図で、(a)はケーブル固定部、(b)はケーブル把持具、(c)はケーブルを把持具によりケーブル固定部に固定させた状態を示した図である。
【図8】本発明に係る光ケーブル接続用クロージャの実施形態における配線リングをスリーブへと嵌合させる流れを説明した図で、(a)は、配線リングをスリーブの嵌合用の孔に挿入する前の関係を示した概略図、(b)は、配線リングをスリーブの嵌合用の孔に挿入した状態を示した概略図である。
【図9】本発明に係る光ケーブル接続用クロージャの実施形態における端面板を示した図で、(a)は上流側端面板、(b)は下流側端面板を表している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る光ケーブル接続用クロージャの実施形態について図1〜4を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る光ケーブル接続用クロージャの実施形態を示した図で、(a)は成端トレイの第1のコネクタ収納部側を上方に向けた状態の縦断面概略図、(b)は成端トレイを係止部材により係止した状態の縦断面概略図である。また、図2は、本発明に係る光ケーブル接続用クロージャの実施形態における成端トレイを示したもので、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図、(d)は平面図、(e)はドロップケーブル固定部の概略図である。
【0019】
さらに、図3は、本発明に係る光ケーブル接続用クロージャの実施形態における成端トレイに一体形成されている配線用把持部材の構成を示した概略図である。また、図4は、本発明に係る光ケーブル接続用クロージャの実施形態におけるクロージャ本体の使用状態のうち、成端トレイを係止部材により係止した状態の縦断面図である。
【0020】
なお、10は光ケーブル接続用クロージャ、12は成端トレイ、14は第1のコネクタ収納部、16は第2のコネクタ収納部、18は配線用把持部材、20はクロージャ本体、22はスリーブ、23は引っ掛け部、24はトレイ係止部、25は結束バンド、26は通過心線ガイド、28は第1のコネクタ、30は第2のコネクタ、32はコネクタ固定ベース、34はつまみ片、36は係止突起、37は係止凹部、38は上流側端面板、40は下流側端面板、42はケーブル把持部材、44はケーブル固定部、46はケーブル把持具、48はアースボルトを示している。
【0021】
また、50はスリーブストッパー、52はドロップケーブル把持部、54は蓋部、56はリブ、58はドロップケーブル固定部、59は単心ドロップケーブル挿入孔、60はトレイストッパー、64は主ケーブルベース、66はピン、68は係止溝、70は引っ掛け片、72は係止片、74は配線リング、Aは光ケーブル、Bは光ファイバ心線、Cは単心ドロップケーブル、Dは支持線、Eは多心ドロップケーブル、Fは分岐ケーブルを示している。
【0022】
図1に示すように、本実施形態における光ケーブル接続用クロージャ10のクロージャ本体20は、まず、ヒンジにて一体に連接され、片面が開閉自在に構成されたスリーブ22に覆われる構成となっており、さらに、光ケーブルA及び光ケーブル接続用クロージャ10を架空支持する支持線Dをシール部材を介して導入させる端面板38と、光ケーブルA、支持線D、多心ドロップケーブルE及び分岐ケーブルFをシール部材を介して導出入させる端面板40が両端にそれぞれ着脱自在に備えられている。
【0023】
なお、端面板38及び40は、図9に示すように、上流側端面板38には、支持線D挿入部と、主ケーブル(光ケーブルA)挿入部が形成されており、また、下流側端面板40には、支持線D挿入部と、主ケーブル(光ケーブルA)挿入部、そして、多心ドロップケーブルE及び分岐ケーブルFの挿入部が形成されている。そして、ゴムやプラスチックの組み合わせにて、防滴が可能となっている。
【0024】
そして、端面板38、40から導出入される光ケーブルAは、ケーブル把持部材42によって把持される構成となっており、詳しくは、図7に示すように、光ケーブルAを側面視コ字状のケーブル把持具46の側壁間に挟み込んだ状態で(図7(a)参照)、ケーブル把持具46の両側壁をケーブル固定部44のそれぞれ対応する嵌合孔に挿入させることで(図7(b)参照)、光ケーブルAをケーブル把持部材42に把持させるようになっている(図7(c)参照)。
【0025】
また、図1(a)に示すように、ケーブル把持部材42は、端面板40から導入される分岐ケーブルFのテンションメンバもアースボルト48により固定させることができるように構成され、アースが確実に確保できるようになっている。このように、ケーブル把持部材42にてアース確保もできるようになっていることから、従来の光ケーブル接続用クロージャのようにテンションメンバを把持する把持具を別途設ける必要がないため、より軽量化が図れるわけである。
【0026】
そして、クロージャ本体20内には、一方の面に上流側の光ファイバAから所定箇所にて切り出した光ファイバ心線Bを下流側の多心ドロップケーブルEや分岐ケーブルFの光ファイバ心線Bに接続するための第1のコネクタ28を収納する第1のコネクタ収納部14(図1(a)、図2参照)、他方の面に上流側の光ケーブルAから切り出した光ファイバ心線Bと下流側の単心ドロップケーブルCを接続するための第2のコネクタ30を収納する第2のコネクタ収納部16(図1(b)、図2参照)とを備えた成端トレイ12が、その一端に形成されている引っ掛け部23をクロージャ本体20内に形成されたトレイ係止部24に引っ掛けることよって、トレイ係止部24を軸中心として回動自在に設けられている。
【0027】
成端トレイ12は、その一端に形成された2箇所の引っ掛け部23をトレイ係止部24にそれぞれ引っ掛けることにより、クロージャ本体20内に係止させた状態で、トレイ係止部24を軸中心に回動させることができるため、成端トレイ12の表裏面に対する作業を作業者がわざわざ移動することなく行えるようになっており、作業効率の大幅な向上が可能となっている。
【0028】
また、成端トレイ12は、一方の面が、多心ドロップケーブルE及び分岐ケーブルFへの接続に用いられる面、他方の面が、単心ドロップケーブルCへの接続に用いられる面と表裏面で用途を異なるものとして分離配置しているため、光ファイバ心線等の保守作業がしやすいとともに、分岐作業等の作業効率や識別性の向上が図られる。
【0029】
また、光通信加入者の解約等の際の、光ファイバ心線Bの下部延ばし作業がしやすくなるという効果も奏する。なお、本実施形態では、コネクタ収納部は、表裏面合わせて12個としているが、本発明はこれに限定するものではない。またさらに、成端トレイ12に備えられている第1のコネクタ収納部14及び第2のコネクタ収納部16は、縦壁を複数間隔あけて縦格子状に並列させた状態で形成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
なお、図1(a)に示すように、光ケーブルAは、上流側から下流側に向けて、テンションメンバ切断せずに結束バンド25により収束させ、接続させない光ファイバ心線Bは、通過心線ガイド26に保持させた状態で、引き通す構成となっており、また、多心ドロップケーブルE及び分岐ケーブルFのうち、上流側の光ファイバ心線Bと接続させない光ファイバ心線Bも通過心線ガイド26によって保持させることができるようになっている。
【0031】
続いて、成端トレイ12のうち、他方の面の下流側(単心ドロップケーブルCの配線側)には、単心ドロップケーブル挿入孔59から挿入される単心ドロップケーブルCを配線するための配線用把持部材18が一体形成されている(図2(b)参照)。この配線用把持部材18は、詳しくは、図3に示すように、単心ドロップケーブルCを把持するドロップケーブル把持部52と、それを開閉自在に覆う蓋部54とからなり、さらに、蓋部54のドロップケーブル把持部52に対向する面には、リブ56が形成されている。
【0032】
配線用把持部材18に単心ドロップケーブルCを把持させる際には、ドロップケーブル把持部52の溝に単心ドロップケーブルCを嵌合させた状態(仮止め)で、蓋部54を閉じ、蓋部54のドロップケーブル把持部52に対向する面に形成されているリブ56によって、ドロップケーブル把持部52の溝にさらに押し込む(本止め)ことにより行う。このような構成とすることにより、単心ドロップケーブルCを確実に把持固定することが可能となるわけである。
【0033】
またさらに、成端トレイ12のうち、他方の面には、図2(e)に示すように、光ファイバ心線Bと接続しない状態(未接続状態)で余っている単心ドロップケーブルCを挿入孔に挿脱自在に固定することで収納保管することができるドロップケーブル固定部58が設けられており、単心ドロップケーブルCの保管及び管理がしやすくなるという効果を奏している。
【0034】
そして、成端トレイ12は、図1(a)及び図4に示すように、クロージャ本体20内に導出入され、クロージャ本体20を支持する支持線Dに取り付けられたトレイストッパー60によって、所定の位置で係止可能に構成されている。なお、トレイストッパー60は図に示すように、両端が鉤形状となっており、一端は、支持線Dに他端は、成端トレイ12の所定位置に引っ掛け、成端トレイ12を係止することができるようになっている。このような構成となっているため、安定して成端トレイ12を固定し、クロージャ本体20内に収納することができ、また、成端トレイ12の裏面に対する作業もやりやすくなる。
【0035】
なお、成端トレイ12に光ファイバ心線Bの心線余長部分を巻回させた状態で収納するための、心線余長収納部をコネクタ収納部の近傍に形成させておけば、光ファイバ心線Bの安全な保護管理を図れるようになるため、実施形態として、より好ましい。
【0036】
次に、図5に示すように、スリーブ22は、片面を開閉自在に構成された分割スリーブからなるとともに、クロージャ設置位置により作業が可能の方向のスリーブ面を開放可能の構成とし、片開きに開放されたスリーブ22を所定位置に保持するスリーブストッパー50を分割スリーブ間に跨がって係脱自在に設けられている。そのため、作業時にスリーブを外すことなく開拡するスリーブの開放状態を保持でき、作業効率の向上が望まれる。
【0037】
本実施形態では、スリーブ22は、ヒンジ構造により分割可能に一体で連接されているとともに、先端にフランジのあるピン66が両端面に一対突設され、このピン66に嵌合する係止溝68が両端それぞれに設けられたスリーブストッパー50が係脱自在に備えられるといった構成となっている。
【0038】
スリーブ22を閉じた状態では、スリーブストッパー50の一端の係止溝68をフリーにしておき(図5(a)参照)、一方の作業面側のスリーブ22を開けた状態では、スリーブストッパー50の一端の係止溝68を開けたスリーブ22のピン66に嵌合係止することで、スリーブ22の解放状態を維持することができるようになっている(図5(b)参照)。
【0039】
また、図5(c)に断面図として示すように、スリーブ22に形成された凸部と主ケーブル(光ケーブルA)ベース64に形成された凹部を互いに嵌合することにより、スリーブ22の天井部分を固定することができる構成となっているため、片面(作業面側)のスリーブ22のみを開放可能とすることが可能である。
【0040】
続いて、クロージャ本体20内に設けられた成端トレイ12に備えられた第1のコネクタ収納部14及び第2のコネクタ収納部16にそれぞれ対応する第1のコネクタ28及び第2のコネクタ30を収納させる際に用いられるコネクタ固定ベース32について説明する。
【0041】
図6(a)に示すように、コネクタ固定ベース32は、側面視L字状を呈しており、コネクタ収納部の縦壁に設けた係止突起36に係合させるための係止凹部37と、一端につまみ片34が備えられており、コネクタ固定ベース32が縦壁に上向き若しくは水平方向或いは下向きにそれぞれ位置できるように、コネクタ収納部の縦壁に設けた係止突起36を中心として回動自在に支持されるようになっている。
【0042】
また、図6(b)に示すように、コネクタ固定ベース32には、縦壁に設けられた引っ掛け片70に引っ掛けることでコネクタ収納部からの上向き或いは下向きの動きをロックできる係止片72が設けられており、このロックを解除する場合には、図6(c)に示すように、コネクタ固定ベース32に形成されているつまみ片34を上方向或いは下方向に向けて引っ張り、係止片72を引っ掛け片70から外すことにより行うようになっている。
【0043】
第1のコネクタ28及び第2のコネクタ30を収納或いは取り外しさせる際には、上記のようにロックを解除し、コネクタ固定ベース32を上方或いは下方に向けて傾けることにより、その作業を行うことができるようになっている。
【0044】
なお、コネクタ固定ベース32を水平方向に固定させる場合は、図6(c)に示す矢印方向と逆に、つまみ片34を上方向或いは下方向に向けて押し、係止片72を引っ掛け片70に引っ掛けることでロックさせるようになっている。また、例えば、下部延ばし作業を行う際、割入れ心線が短い場合には、図6(d)に示すように、コネクタ固定ベース32を矢印方向へ移動させることにより対応することが可能となっている。
【0045】
次に、本発明に係る光ケーブル接続用クロージャの実施形態における配線リングをスリーブへと嵌合させる流れを説明する。図8(a)に示すように、配線リング74は、側面視長方形のリングと、それに延設してなるL字状の挿入棒からなっており、図8(b)に示すように、この挿入棒の一端をスリーブ22の嵌合用の孔に挿入することにより、配線リング74をスリーブ22に固定することができるようになっている。このような構成となっているため、配線リングをスリーブにネジ留め等する必要がなく、光ケーブル接続用クロージャ10全体の軽量化を図ることができる。なお、この形状は、本発明を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係る光ケーブル接続用クロージャは、小型化及び軽量化、そして、作業効率が大幅に改善されるものであるため、多種多様な設置場所において作業する際に、好適に用いることができるものである。
【符号の説明】
【0047】
10 光ケーブル接続用クロージャ
12 成端トレイ
14 第1のコネクタ収納部
16 第2のコネクタ収納部
18 配線用把持部材
20 クロージャ本体
22 スリーブ
23 引っ掛け部
24 トレイ係止部
25 結束バンド
26 通過心線ガイド
28 第1のコネクタ
30 第2のコネクタ
32 コネクタ固定ベース
34 つまみ片
36 係止突起
37 係止凹部
38 上流側端面板
40 下流側端面板
42 ケーブル把持部材
44 ケーブル固定部
46 ケーブル把持具
48 アースボルト
50 スリーブストッパー
52 ドロップケーブル把持部
54 蓋部
56 リブ
58 ドロップケーブル固定部
59 単心ドロップケーブル挿入孔
60 トレイストッパー
64 主ケーブルベース
66 ピン
68 係止溝
70 引っ掛け片
72 係止片
74 配線リング
A 光ケーブル
B 光ファイバ心線
C 単心ドロップケーブル
D 支持線
E 多心ドロップケーブル
F 分岐ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に上流側と下流側の光ファイバ心線同士を接続させるためのコネクタを収納する第1のコネクタ収納部と、他方の面に上流側の光ファイバ心線と下流側の単心ドロップケーブルとを接続するためのコネクタを収納する第2のコネクタ収納部とを備えた成端トレイと、
前記成端トレイを覆う片面が開閉自在の構成とされたスリーブと、を備えるクロージャ本体が設けられた光ケーブル接続用クロージャであって、
前記成端トレイは、前記クロージャ本体内に形成されたトレイ係止部に取り付けられることで、当該トレイ係止部を軸中心として前記クロージャ本体内において回動自在に備えられていること
を特徴とする光ケーブル接続用クロージャ。
【請求項2】
前記成端トレイの他方の面には、前記単心ドロップケーブルを配線把持するための配線用把持部材が一体形成されていることを特徴とする請求項1記載の光ケーブル接続用クロージャ。
【請求項3】
前記配線用把持部材は、一方の面に前記単心ドロップケーブルを把持する溝が形成された把持部と、当該把持部の前記一方の面を開閉自在に覆う蓋部とからなり、
前記蓋部は、前記把持部に対向する面にリブが形成されており、
前記単心ドロップケーブルを前記把持部の溝に嵌合させた状態で前記蓋部により前記把持部を覆うことで、前記リブが前記単心ドロップケーブルを押圧し、当該単心ドロップケーブルを前記把持部に固定させる構成となっていることを特徴とする請求項2記載の光ケーブル接続用クロージャ。
【請求項4】
前記成端トレイの他方の面には、前記コネクタに接続させない前記単心ドロップケーブルを挿脱自在に固定するドロップケーブル固定部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の光ケーブル接続用クロージャ。
【請求項5】
一端が前記クロージャ本体内に導出入され当該クロージャ本体を架空支持する支持線に取り付けられたストッパーにより、前記成端トレイが所定の位置で係止可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の光ケーブル接続用クロージャ。
【請求項6】
前記スリーブが、分割スリーブからなるとともに、前記クロージャ本体の設置位置により作業が可能の方向であるスリーブ面を開放可能の構成とし、片開きに開放されたスリーブを所定位置に保持するスリーブストッパを前記分割スリーブ間に跨がって係脱自在に設けたことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の光ケーブル接続用クロージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−113889(P2013−113889A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257488(P2011−257488)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(595083051)株式会社ジャパンリーコム (40)
【出願人】(000231936)日本通信電材株式会社 (98)
【出願人】(591199590)株式会社正電社 (34)
【Fターム(参考)】