説明

光ケーブル

【課題】作業現場で刃物等の工具を用いることなく、押え巻テープを安全で簡単かつ容易に切断して剥ぎ取りを行うことが可能な光ケーブルを提供する。
【解決手段】複数本の光ファイバ心線13を押え巻テープ15を巻付けて覆い、その外側をシース16で被覆する光ケーブルで、前記の押え巻テープ15に幅方向への切断が容易なテープ基材15aを用いることを特徴とする。また、押え巻テープ15は、シース16と接触する表面側に、シースと溶着する樹脂材をコーティングし、シースと溶着される構成としてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の光ファイバ心線を押え巻テープで覆い、その外側をシースで被覆した光ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の映像配信、IP電話、データ通信等のブロードバンドサービスの拡大により、光ファイバによる家庭向けのデータ通信サービス(FTTH:Fiber To The Home)の加入者が増加している。このFTTHでは、架空の幹線光ケーブルからドロップ光ケーブルを用いて加入者宅等に引き落されている。加入者宅への光ファイバの引き落しは、例えば、市街の電柱等に布設された幹線光ケーブルを、通常、クロージャと称されている接続函で分岐し、分岐された光ファイバ心線にドロップ光ケーブルを融着接続又は光コネクタを用いて接続している。
【0003】
幹線光ケーブルとしては、図3(A),(B)に示すように、例えば、SZ状に形成された複数条の溝4を有する樹脂製のロッドからなるスペーサ2(スロットロッドとも言う)を用いた形状の光ケーブルが多く使用されている。この光ケーブルは、前記の溝4に複数本の単心光ファイバ心線あるいは多心のテープ心線3を収納し、スペーサ2の外周に押え巻テープ5(上巻テープとも言う)を巻付けて光ファイバ心線やテープ心線3を覆っている。そして、押え巻テープ5の外側を、押出し成形で形成されたシース6(外被とも言う)で被覆した形状のものが一般的である。
【0004】
上述のような幹線光ケーブル1の途中部分から、光ファイバを加入者宅等に引き落すには、ケーブル内に収納されている複数本の光ファイバ心線の内から、1本〜数本の光ファイバ心線を引出す分岐作業が行われる。この分岐(中間分岐とも言われている)作業は、例えば、特許文献1に開示のように、光ケーブルの分岐部分のシース6を一定の長さ(20cm〜50cm程度)除去する。このシース6が除去された部分では、押え巻テープ5が露出されるが、図3(C)に示すように、この押え巻テープ5をニッパ7等より切り裂き開始端となる切れ目を形成してから切り裂く。次いで、押え巻テープ5をスペーサ上から巻ほぐして剥ぎ取り、内部の光ファイバ心線を取り出している。
【特許文献1】特開平8−220393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スペーサ2上に巻付けられる押え巻テープ5は、シース6を成形する樹脂材がスペーサの溝4内に落ち込んで、光ファイバ心線またはテープ心線3と密着して取り出せなくなったり、樹脂材の熱により光ファイバ心線またはテープ心線3の伝送損失が増加したりするのを防ぐ熱絶縁用として、さらには、光ケーブル内への止水のための吸水用として機能させることができる。また、この押え巻テープ5は、スペーサ2の溝4内に光ファイバ心線やテープ心線3を収納した後、光ファイバ心線またはテープ心線3が溝4から飛び出さないようにしている。
【0006】
押え巻テープ5は、通常、不職布や樹脂からなるテープが用いられ、スペーサ2上に巻き付けるときの張力で破断しないように、比較的に高い破断張力もっていて、人の手では容易には切断することができない場合がある。したがって、光ファイバの中間分岐を行うに際して、押え巻テープ5に切り裂き用の切れ目を形成したとしても、押え巻テープ5を切断するのが簡単ではないことがある。このような場合には、この押え巻テープ5をカッター等で切り裂くことになるが、その作業を誤るとスペーサ2内の光ファイバ心線やテープ心線3を傷つけてしまう恐れがある。また、光ファイバ心線の分岐作業は、電柱上やバケット車上というような作業環境の悪い状況で行うことが多く、できるだけ簡単で短時間に行えることが要望されている。
【0007】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたもので、作業現場で刃物等の工具を用いることなく、押え巻テープを安全で簡単かつ容易に切断して剥ぎ取りを行うことが可能な光ケーブルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による光ケーブルは、複数本の光ファイバ心線を押え巻テープを巻付けて覆い、その外側をシースで被覆する光ケーブルで、前記の押え巻テープに幅方向への切断が容易なテープ基材を用いることを特徴とする。また、押え巻テープは、シースと接触する表面側に、シースと溶着する樹脂材をコーティングし、シースと溶着される構成としてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光ケーブルのシースを除去し、露出された押え巻テープを剥ぎ取るのに、特別な工具を用いることなく幅方向に手で引き裂くことにより容易に切断することができる。この結果、ケーブル内の光ファイバ心線を傷めることなく、押え巻テープの剥ぎ取りを効率よく短時間で行うことができる。また、シースと押え巻テープを溶着させて、シースの除去と同時に押え巻テープを除去されるようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図により本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明による光ケーブルの概略を説明する図である。図中、11は光ケーブル、12はスペーサ、13はテープ心線、14は溝、15は押え巻テープ、15aはテープ基材、16はシース、17aは縦糸、17bは横糸を示す。
【0011】
本発明による光ケーブル11は、例えば、図1(A)に示すように、図3で説明したのと同様な光ケーブルを対象とすることができ、SZ状に形成された複数条の溝14を有する樹脂製のロッドからなるスペーサ12を用いて構成される。スペーサ12の溝14には、複数本の単心光ファイバ心線あるいは多心のテープ心線13が収納され、スペーサ12の外周に押え巻テープ15が巻付けられて、テープ心線13が収納保持される。そして、押え巻テープ15の外周は、押出し成形によるシース16で被覆される。
【0012】
なお、スペーサ12の外周で、かつ押え巻テープ15の内側に、ナイロン糸、プラスチックテープ等の粗巻きが施されることもある。この粗巻きは製造途中に溝14から光ファイバ心線あるいはテープ心線13が飛び出すのを防ぐ目的で施されるが、一般的に間隔をあけて巻かれるものであり、光ファイバ心線あるいはテープ心線13を刃物から保護するものではない。
【0013】
本発明において、押え巻テープ15には、長手方向に加えられた張力に対しては、比較的に強い破断張力を示すが、幅方向に対しては人の手で容易に切断することができるテープ基材15aが用いられる。例えば、梱包等の用途に用いられている布粘着テープの基材で、繊維の方向に沿って容易に手で切断することが可能なスフモス基材と称されているようなものを用いることができる。また、この他、縦糸にスフ糸を用い、横糸にPET繊維を用いたものなどもある。
【0014】
図1(B)は、スフモス基材を模擬したテープ基材の一例を示す図である。このテープ基材15aは、例えば、横糸17bに対して、長手方向に間欠的に補強繊維からなる縦糸17aを織り込み、テープ状に一体化したものである。このテープ基材15aは、テープ幅に均一に張力を加えることにより、所定の破断張力を持たせることができる。しかし、縦糸17aは間欠的に入れられているので、テープの幅方向に人の手で容易に切ること(手切り)を可能としている。
【0015】
このようなテープ基材15aを、光ケーブルの押え巻テープ15として用いた場合に、例えば、押え巻テープ15のテープ幅が10cm〜50cmにおいて、長手方向に対する破断張力が9.8N以上であることが望ましい。また、容易に手で切れるように、テープの幅方向に対する破断張力は9.8N以下であることが望ましい。なお、押え巻テープ15は、テープの巻き付けターン間に隙間がある開き巻きであってもよく、隙間ないように巻き付ける重ね巻きであってもよい。
【0016】
押え巻テープ15の外周には、押出し成形によりポリエチレン等の熱可塑性樹脂の被覆が施され、シース16とされる。このシース16は、スペーサ12の外周に押え巻テープ15が巻付けられてから一旦ドラム等に巻き取られた後に、押出し機に通して成形されるが、押え巻テープ15の巻付けに引続いて連続的に成形されるようにしてもよい。
【0017】
上記のように、テープ幅方向への切断が容易な押え巻テープ15が用いられ、その外周がシース16で被覆された光ケーブル11に対して中間分岐を行う場合、従来と同様に、まず、シース16が所定の範囲(例えば、50cm程度)で除去される。次いで、シース16の除去により露出された押え巻テープ15の任意の位置で、テープ幅方向の側縁部を手で摘まんでテープ幅方向に切り裂いて切断する。この後、シース16内に収納されている光ファイバ心線やテープ心線13を引き出し、分岐作業を行う。
【0018】
図2は本発明の他の実施形態を説明する図である。図中の符号は、図1で用いたのと同じ符号を用いることにより、詳細な説明を省略する。図2(A)は、光ケーブルの概略を示す図で、押え巻テープ15’以外の構成は、図1(A)で説明したのと同様な構成であるので、光ケーブル全体の構成に関する説明を省略する。
【0019】
この実施形態は、図2(B)、(C)に示すように、図1で説明した押え巻テープ15のテープ基材15aの片面に、樹脂材18をコーティングしたテープ基材15a’とし、これを押え巻テープ15’としたことを特徴としている。すなわち、長手方向に加えられた張力に対しては、比較的に強い破断張力を示すが、幅方向に対しては人の手で容易に切断することができるテープ基材15aに、樹脂材18をコーティングして2層構造のテープ基材15a’を用いる。テープ基材15aには、図1の例と同様にスフモス基材を用いることができ、その片面にコーティングされる樹脂材18は、光ケーブル11のシース16と溶着が可能な材料で形成され、シース16と同じか又は同種の樹脂材で形成することが望ましい。
【0020】
図1の例と同様に、スペーサ12の溝14に複数本の単心光ファイバ心線あるいは多心のテープ心線13が収納された後、上記のテープ基材15a’がコーティングされた樹脂材18が外面になるようにスペーサ12の外周に押え巻テープ15’として巻付け、テープ心線13を収納保持される。そして、押え巻テープ15’の外周に、押出し成形によりポリエチレン等の熱可塑性樹脂により被覆を施して、シース16とされる。このとき、シース16の内面は成形時の熱により、押え巻テープ15’のコーティングされた樹脂材18に溶着され一体化される。
【0021】
上記の如く構成された光ケーブル11の中間分岐を行う場合、図1の例と同様に、シース16が所定の範囲(例えば、50cm程度)で除去する。このとき、押え巻テープ15’は、シース16の内面に溶着されて一体化されているため、シース16の除去と共に、押え巻テープ15’も同時に破断張力が作用する。押え巻テープ15’は、上述したように、テープ幅方向には切断が容易なテープ基材で形成されているため、シース16の除去によって容易に破断され剥ぎ取ることができる。したがって、押え巻テープ15’は、シース16の除去と一体に行われ、中間分岐の作業性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による光ケーブルの実施形態の一例を説明する図である。
【図2】本発明による光ケーブルの他の実施形態の例を説明する図である。
【図3】従来の技術を説明する図である。
【符号の説明】
【0023】
11…光ケーブル、12…スペーサ、13…テープ心線、14…溝、15、15’…押え巻テープ、15a,15a’…テープ基材、16…シース、17a…縦糸、17b…横糸、18…樹脂材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の光ファイバ心線を押え巻テープを巻付けて覆い、その外側をシースで被覆する光ケーブルであって、前記押え巻テープに幅方向への切断が容易なテープ基材が用いられていることを特徴とする光ケーブル。
【請求項2】
前記押え巻テープの前記シースと接触する表面側に、前記シースと溶着可能な樹脂材がコーティングされ、前記シースと溶着されていることを特徴とする請求項1に記載の光ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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