説明

光ケーブル

【課題】光ファイバを損傷することなく、また、作業者のスキルや引き裂き紐を要することなく、安全にシースを切り裂くことができる光ケーブルを提供する。
【解決手段】複数の光ファイバが収容された集合コア12の外周に、シース14を被覆した光ケーブルであって、シース14の長手方向に沿ってシース内面からシース外面に達する引き裂き部材18〜18dが設けられていることを特徴とする。引き裂き部材18a〜18dは、シース外面より外側に突出していることが好ましい。また、引き裂き部材は、シースとは異なる樹脂で形成することが好ましく、予め形成された部材を縦添えして設けることができる。また、集合コア12は、複数の光ファイバを収容するスロットロッド15とその外周を覆う押え巻きテープ13を有し、引き裂き部材18a〜18dは、押え巻きテープに接している形態が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内外の光配線に用いられ、複数の光ファイバが収容された集合コアの外周に、シースを被覆した光ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の光ファイバが収容された光ケーブルは、幹線用の光ケーブルとして布設されるが、任意の地点でユーザに引き落とすために光ファイバの分岐(中間分岐とも言われる)が行われる。この場合、分岐に必要な長さ範囲(例えば、50cm程度)で、光ケーブルのシースを切り裂いて剥ぎ取り、収容されている何本かの光ファイバを取り出し、クロージャやドロップケーブル等を用いて分岐している。
光ケーブルには、例えば、特許文献1に示されるように、シースの内面側に引き裂き紐を配し、シースを引き裂いてその剥ぎ取りを容易に行えるようにしている。
【0003】
図3は、上記の特許文献1に開示されている従来のシースの引き裂き方法の一例を示す図である。光ケーブル1の中間部分から光ファイバを取り出す場合、まず、図3(A)に示すように、その中間部分にカッター4を用いて、ケーブルシース2に輪切り状に2つの切込み3aを入れる。次いで、図3(B)に示すように、2つの切込み3aを連結する切込み3bをケーブル軸方向に入れ、切込みにより生じた輪切り状のシース部分2aを除去する。輪切り状のシース部分2aを除去したとき、図3(C)に示すように、光ファイバの束またはスロットからなる集合コア5が露出される。このとき、ケーブル内に配されている引き裂き紐6が露出され、引っ張り出すことができる。この結果、図3(D)に示すように、引き裂き紐6によりシース2に引き裂き3cを入れ、所定範囲のシースを除去している。
【0004】
また、図4は、他のシースの引き裂き方法の一例を示す図である。まず、図4(A)に示すように、その中間部分にカッター4を用いてケーブルシース2に輪切り状に1つの切込み3aを入れる。次いで、図4(B)に示すように、切込み3aを始端としてケーブル軸方向に2つの切込み3b(例えば、間隔6〜8mm、長さ100mm程度)を入れ、この切込みにより形成された短冊片2bを引き剥がす。短冊片2bを引き剥がしたとき、図4(C)に示すように、光ファイバの束またはスロットからなる集合コア5が露出され、ケーブル内に配されている引き裂き紐6が露出され、引っ張り出すことができる。次いで、図4(D)に示すように、引き裂き紐6をカットして引き裂き端を形成して、図3の例と同様にシース2を引き裂く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−158368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図3,4に示すように、カッター4を用いて光ケーブルのシース2を除去する場合、特に軸方向の切込み3bを入れるときにカッター4の刃で光ファイバを傷つけないようにする必要がある。また、内部の光ファイバを傷つけないように、外側から徐々にケーブルシースを削り取る方法もあるが、確実ではなく時間を要する作業となる。通常、集合コア5の表面は押え巻テープが巻かれているので、カッター4の刃の切込み深さが、押え巻テープに達する寸前で止める必要があり、作業者にスキルが求められ、作業性がよくないという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した実状に鑑みてなされたもので、光ファイバを損傷することなく、また、作業者のスキルや引き裂き紐を要することなく、安全にシースを切り裂くことができる光ケーブルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による光ケーブルは、複数の光ファイバが収容された集合コアの外周に、シースを被覆した光ケーブルであって、シースの長手方向に沿ってシース内面からシース外面に達する引き裂き部材が設けられていることを特徴とする。引き裂き部材は、シース外面より外側に突出していることが好ましい。また、引き裂き部材は、シースとは異なる樹脂で形成することが好ましく、予め形成された部材を縦添えして設けることができる。
また、集合コアは、複数の光ファイバを収容するスロットロッドとその外周を覆う押え巻きテープを有し、引き裂き部材は、押え巻きテープに接している形態が好ましい。
【発明の効果】
【0009】
上記の本発明による光ケーブルによれば、引き裂き紐が不要となるため、引き裂き紐を取り出す工程がなくなり作業性を向上させることができ、また、ケーブル軸方向のカッターによる切込みを不要とすることができ、シースの切り裂きを安全に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による光ケーブルの実施形態を説明する図である。
【図2】本発明による光ケーブルのシース切り裂きの一例を説明する図である。
【図3】従来技術を説明する図である。
【図4】他の従来技術を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1により本発明の実施の形態を説明する。図1(A)は光ケーブルの概略を示し、図1(B)はスロット形光ケーブルへの適用例を説明する図である。また、図1(C)〜図1(F)は、本発明で用いる引き裂き部材の種々の例を示す図である。図中、11,11'は光ケーブル、12は集合コア、13は押え巻きテープ、14はシース、15はスロットロッド、15aはスロット溝、16はテンションメンバ、17は光ファイバ、18〜18dは引き裂き部材を示す。
【0012】
本発明による光ケーブル11は、図1(A)に示すように、複数の光ファイバが収容され束ねられた状態の集合コア2の外周を、シース(外被とも言う)14で被覆した構造の光ケーブルを対象とする。なお、本発明における集合コア12とは、複数本の光ファイバ心線を介在等を用いて集合させ、その外側を押え巻きテープ(上巻きテープとも言う)等を用いて束ねた状態のもの、または、図1(B)に示すスロットロッド15に複数の光ファイバテープ心線等を収容し、押え巻きテープ13等により保持した状態のものを言うものとする。
【0013】
図1(B)に示すスロット形の光ケーブル11’は、地下管路等に敷設される幹線用の光ケーブルとして多用されている光ケーブルである。この光ケーブル11’は、中心にテンションメンバ(抗張力体とも言う)16を埋設一体化し、複数のスロット溝15aを設けたプラスチック材からなるスロットロッド(スペーサロッドとも言う)15により構成される。スロットロッド15のスロット溝15aは、螺旋状またはSZ状に形成され、スロット溝15a内には、複数本の光ファイバ心線またはテープ状の光ファイバ心線(以下、テープ心線を含めて、単に光ファイバと言う)が収容される。
【0014】
光ファイバ17がスロット溝15a内に収納された状態で、スロットロッド15の外周に押え巻きテープ13が施される。この押え巻きテープ13は、スロット溝15aに収容された光ファイバ17が外に飛び出さないように保持すると共に、シース14の成形時の熱絶縁層、あるいは、光ケーブル内への止水のため吸水剤を付与して吸水層として機能させることもできる。また、押え巻きテープ13は、螺旋状に巻き付ける横巻き、または、長手方向に縦添えして巻き付けるかの何れかの形態を用いることができ、押え巻きテープ13が施された状態で、上述したように集合コア12とされる。
なお、シース14は、集合コア12の外周にポリエチレンまたは難燃ポリエチレン樹脂を押出し成形して、厚さ1.5mm〜2mm程度で形成される。
【0015】
本発明は上述した光ケーブル11,11’において、シース14の少なくとも1箇所に、ケーブル長手方向に沿ってシース内面からシース外面に達する引き裂き部材18を埋設した構成を特徴としている。なお、本発明において、引き裂き部材18がシース内面からシース外面に達するとは、引き裂き部材18が、シース14に埋設された状態で、シース内面とシース外面に、ほぼ接する状態にあることを言う。なお、引き裂き部材18は、シース14に1箇所に設ければよいが、対向する位置の2箇所に設けてもよい。
【0016】
引き裂き部材18は、図1(C)に示すように、シース14の外面より外側に多少突出させて、一部を露出状態にしておくのが好ましい。これにより、引き裂き部材18の埋設位置を明示し、引き出しを容易にすることができる。また、引き裂き部材18の形状は、図1(C)の円形状の部材18a以外に、図1(D)に示す矩形状の部材18b、図1(E)に示す三角形状の部材18c、図1(F)に示す台形状の部材18d、などの種々の形状のものを用いることができる。また、いずれの形状においても、引き裂き部材の一部を、シース14の外面より露出させておくことにより、引き裂き部材の埋設位置を明示させるようにすることができ、また、引き裂き部材のシース14からの引き出しを容易にすることができる。
【0017】
引き裂き部材18〜18dは、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリウレタン等のシース14とは異なる樹脂材を用いたり、または、ビニロン等の予め紐またはロープ状にしたものを用いることができる。また、引き裂き部材18が樹脂材である場合は、2色成形技術を用いてシース14の押出し成形と同時に形成することができる。引き裂き部材18に、予め形成された紐またはロープ状のものを用いる場合は、シース14の成形時に、集合コア12の押え巻きテープ13の外面に接するようにして縦添えされ、側面部がシース14で覆われるようにして埋設される。引き裂き部材18に、上記のようにシース14の樹脂材とは異なる樹脂材を用いることにより、シース14との接着力が弱く、引き出し時にはシース14から容易に引き剥がすことができる。
【0018】
図2は、上記の光ケーブル11の中間部分を切り裂いて剥ぎ取る一例を説明する図で、図1(C)に示したシース14の外面から円形状の引き裂き部材18aの一部を露出させた光ケーブルで説明する。
まず、図2(A)に示すように、カッター(例えば、電工カッター)21により、光ケーブル11のシース14に輪切り状切込み20を入れ、引き裂き部材18aも切断する。次いで、図2(B)に示すように、切断された引き裂き部材18aの端部分をニッパー等を用いて摘み出し、長手方向に沿って所定長さの引き裂き部材18a’を引き出す。引き裂き部材18a’の引き出し長さは、剥ぎ取るシース範囲(例えば、中間分岐に要する長さ範囲で、50cm程度)である。この引き裂き部材18a’の引き出しにより、シース14に裂け目19が生じる。
【0019】
次いで、図2(C)に示すように、引き裂き部材18a’の引き出しにより生じた裂け目19の終端に連結するようにカッター21で輪切り状切込み20を入れ、引き出した引き裂き部材18a’も切断する。なお、引き裂き部材18aが2箇所に設けられている場合は、もう1箇所の引き裂き部材も引き出す
結果として、図2(C)に示すように、引き裂き部材18a’の引き出しにより生じた裂け目19の両端に2つの輪切り状切込み20が連結していればよいので、初めに剥ぎ取るシース範囲の両端に輪切り状切込み20を入れ、次いで両端の2つの輪切り状切込み20間の引き裂き部材18aを引き出すようにしてもよい。
【0020】
この後、図2(D)に示すように、輪切り状切込み20と長手方向に生じた裂け目19により分割されたシース片14aを、ニッパー等で裂け目19を押し開いて集合コア12の表面から引き剥がし、集合コアの押え巻きテープ13を露出させる。
この後、露出状態となった集合コア12の押え巻きテープ13を切断除去し、収容されている光ファイバを取り出す。
【0021】
上述したように、引き裂き部材18aをシース14から引き出すことにより、シース14の長手方向に裂け目19を形成することができ、この裂け目19を大きく広げてシースを容易に剥ぎ取ることができる。この結果、従来のような引き裂き紐を用いることなく、また、シースの長手方向にカッターで切込みを入れる必要がなくなり、安全にシースを切り裂くことができると共に、作業性を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0022】
11,11'…光ケーブル、12…集合コア、13…押え巻きテープ、14…シース、14a…シース片、15…スロットロッド、15a…スロット溝、16…テンションメンバ、17…光ファイバ、18〜18d…引き裂き部材、19…裂け目、20…輪切り状切込み、21…カッター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバが収容された集合コアの外周に、シースを被覆した光ケーブルであって、前記シースの長手方向に沿ってシース内面からシース外面に達するき引き裂き部材が設けられていることを特徴とする光ケーブル。
【請求項2】
前記引き裂き部材は、前記シース外面より外側に突出していることを特徴とする請求項1に記載の光ケーブル。
【請求項3】
前記引き裂き部材は、前記シースとは異なる樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光ケーブル。
【請求項4】
前記引き裂き部材は、予め形成された紐からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ケーブル。
【請求項5】
前記集合コアは、前記複数の光ファイバを収容するスロットロッドとその外周を覆う押え巻きテープを有し、前記引き裂き部材は、前記押え巻きテープに接していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光ケーブル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate