光コネクタおよび内視鏡システム
【課題】光コネクタにおいて、装置コストの増大や装置の大型化をまねくことなく、通す光の波長範囲の拡大による光伝送効率の低下を抑制する。
【解決手段】光源側に配されるSI型の光源側光ファイバ10と、受光側に配されるSI型の受光側光ファイバ20とを備え、光源側光ファイバ10の端面11と受光側光ファイバ20の端面21とを対向配置させて両光ファイバ10、20を光結合させるにあたり、光源側光ファイバ10と受光側光ファイバ20とを着脱可能なものとし、光源側光ファイバ10を、この光源側光ファイバ10の端面11に近づくほどコア部12の径が大きくなるように形成されたテーパ部14を有するものとする。
【解決手段】光源側に配されるSI型の光源側光ファイバ10と、受光側に配されるSI型の受光側光ファイバ20とを備え、光源側光ファイバ10の端面11と受光側光ファイバ20の端面21とを対向配置させて両光ファイバ10、20を光結合させるにあたり、光源側光ファイバ10と受光側光ファイバ20とを着脱可能なものとし、光源側光ファイバ10を、この光源側光ファイバ10の端面11に近づくほどコア部12の径が大きくなるように形成されたテーパ部14を有するものとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光コネクタに関し、詳しくは、光源側の光ファイバと受光側の光ファイバとを光結合させる光コネクタおよびそれを用いた内視鏡システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、非接触型の光コネクタとして、屈折率分布を持つコア部を有する光ファイバー(略してGI型光ファイバともいう)や屈折率が一定のコア部を有する光ファイバ(略してSI型光ファイバともいう)を用いたものが知られている。GI型光ファイバを使用した光コネクタであるGIコリメータは、後側焦点距離に顕著な波長依存性があり、通す光の波長範囲の拡大によって光伝送効率が大きく低下してしまうため、一般に、単色光を通すために用いられる。
【0003】
また、このようなGIコリメータに対して、単色光よりも広い波長範囲に亘る光、例えば赤外領域における互いに異なる波長を持つ光を通す手法が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、半導体レーザ素子から発せられたレーザ光を凸レンズに通して集光させ、そのレーザ光の集光点にテーパ形状をなす光ファイバの太径側の端面を配置して、この太径側から入射したレーザ光をそのテーパ形状の細径側に通してレーザ光を伝搬させる光伝播装置も知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2006−524845号公報
【特許文献2】特開2006−309146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記赤外領域で互いに異なる波長を持つ光を通すGIコリメータは、通す光の波長範囲の拡大による光伝送効率の低下を根本的に解消するものではなく、例えば、より広い波長範囲からなる白色光を通すような場合には、特定の波長については光伝送効率が大きく低下してしまう。また、上記テーパ形状をなす光ファイバを受光側に有する光伝播装置については、着脱可能な光コネクタへの適用が可能ではあるが、光伝送効率の波長依存性を解消するためには、色収差の発生を抑えたレンズ等を用いることが必要となるため、装置が大型化するとともに装置コストが増大するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、装置コストの増大や装置の大型化をまねくことなく、通す光の波長範囲の拡大による光伝送効率の低下を抑制することができる光コネクタおよびそれを用いた内視鏡システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光コネクタは、光源側に配されるSI型の光源側光ファイバと、受光側に配されるSI型の受光側光ファイバとを備え、光源側光ファイバの端面と受光側光ファイバの端面とを対向配置させて前記両光ファイバを光結合させる光コネクタであって、光源側光ファイバと受光側光ファイバとが着脱可能なものであり、光源側光ファイバが、この光源側光ファイバの前記端面に近づくほどコア部の径が大きくなるように形成されたテーパ部を有することを特徴とするものである。
【0009】
なお、SI型の光ファイバは、ステップ・インデックス型の光ファイバを意味する。すなわち、光源側光ファイバのコア部および受光側光ファイバのコア部の屈折率は一定であり屈折率分布を持つものではない。したがって、各コア部内を伝搬する光は、コア部の外壁面で反射されながら各光ファイバ中を伝播する。
【0010】
また、着脱可能とは、両光ファイバを対向配置させて光結合させた状態が維持されるように両光ファイバの位置関係を定める装着状態としたり、両光ファイバを離間させて対向配置させない離脱状態としたりすることが可能であることを意味する。
【0011】
また、「光源側光ファイバの前記端面に近づくほどコア部の径が大きくなるように形成されたテーパ部」とは、このテーパ部を構成するコア部の外壁面(反射面)におけるいずれの領域も、そのコア部内において光軸直交方向に伝播する光を、径が大きくなる側(光を射出する前記端面の側)に反射させるようにこの外壁面(反射面)が形成されたものである。すなわち、このテーパ部は、必ずしも円錐形状をなす場合に限らず、多角錐形状をなすものや、あるいは、自由曲面や多面体等を組み合わせた形状をなすものであってもよい。なお、前記光軸はコア部の断面の重心位置を通る中心軸とすることができる。また、前記コア部の断面は、このコア部の延びる方向に対して直交する平面で切断される断面とすることができる。
【0012】
前記光源側光ファイバのテーパ部は、コア部の断面の重心位置を通る中心軸が直線となるように形成されたものとすることが望ましい。
【0013】
前記受光側光ファイバは、この受光側光ファイバの前記端面に近づくほどコア部の径が大きくなるように形成されたテーパ部を有するものとすることができる。
【0014】
なお、「受光側光ファイバの前記端面に近づくほどコア部の径が大きくなるように形成されたテーパ部」は、このテーパ部を構成するコア部の外壁面(反射面)におけるいずれの領域も、そのコア部内において光軸直交方向に伝播する光を、径が大きくなる側(光を受光する前記端面の側)に反射させるようにこの外壁面(反射面)が形成されたものである。すなわち、このテーパ部は、必ずしも円錐形状をなす場合に限らず、多角錐形状をなすものや、あるいは、自由曲面や多面体等を組み合わせた形状をなすものであってもよい。なお、前記光軸はコア部の断面の重心位置を通る中心軸とすることができる。前記コア部の断面は、このコア部の延びる方向に対して直交する平面で切断される断面である。
【0015】
前記光源側光ファイバのテーパ部は、コア部の断面の重心位置を通る中心軸が直線となるように形成されたものであることが望ましい。
【0016】
前記受光側光ファイバは、コア部の断面の形状および大きさが一定となるように形成されたものとすることができる。
【0017】
前記光コネクタは、両光ファイバが光結合されたときに、光源側光ファイバの端面と受光側光ファイバの端面とが非接触で対向配置されるように構成されたものとすることができる。
【0018】
前記光コネクタは、互いに異なる2種類以上の波長の光を通すものとすることができる。
【0019】
前記光コネクタは、白色光を通すものとすることができる。
【0020】
前記光コネクタは、光源側光ファイバの端面におけるコア部の面積よりも受光側光ファイバの端面におけるコア部の面積の方が大きくなるように構成されたものとすることができる。
【0021】
前記光コネクタは、両光ファイバが光結合されたときに、受光側光ファイバのコア部の端面と光源側光ファイバのコア部の端面とが互いに過不足なく重なるように対向配置されるように構成されたものとすることができる。
【0022】
なお、過不足なく重なるとは、完全に過不足なく重なる場合に限らず、互いに90%以上の領域が重なる場合を意味する。
【0023】
前記光源側光ファイバは、条件式(1):0.5≦L1/ε1を満足するものとすることが望ましく、条件式(1A):2.6≦L1/ε1を満足するものとすることがより望ましい。ただし、L1を光源側光ファイバのテーパ部の長さ(mm)、ε1を光源側光ファイバのテーパ率とする。ここで、テーパ率ε1は、ε1=(光源側光ファイバにおけるテーパ部の最大コア径/光源側光ファイバにおけるテーパ部の最小コア径)で示される数式によって求められる値である。
【0024】
前記受光側光ファイバは、条件式(2):0.5≦L2/ε2を満足するものとすることが望ましく、条件式(2A):2.6≦L2/ε2を満足するものとすることがより望ましい。ただし、L2を受光側光ファイバのテーパ部の長さ(mm)、ε2を受光側光ファイバのテーパ率とする。ここで、テーパ率ε2は、ε2=(受光側光ファイバにおけるテーパ部の最大コア径/受光側光ファイバにおけるテーパ部の最小コア径)で示される数式によって求められる値である。
【0025】
本発明の内視鏡システムは、前記光コネクタと、光源と、内視鏡本体とを備え、光源から発せられた光束を光コネクタに通して内視鏡本体へ伝送し、この内視鏡本体から前記光束を射出するように構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の光コネクタおよびそれを用いた内視鏡システムによれば、光源側光ファイバのコア部の射出側の端面である射出側端面と受光側光ファイバのコア部の入射側の端面である入射側端面とを対向配置させて光結合させる光コネクタにおいて、光源側光ファイバを、射出側端面の側へ向かうほどコア部の径が大きくなるテーパ形状をなすものとしたので、装置コストの増大や装置の大型化、さらに、通す光の波長範囲の拡大による光伝送効率(結合効率)の低下を招くことなく、効率良く光コネクタ中に光を通すことができる。
【0027】
すなわち、光源側光ファイバのコア部を上記のようなテーパ形状をなすものとしたので、このコア部の延びる方向に対する(すなわち、光軸に対する)上記コア部の外壁面で反射した光線の角度をより小さくすることができ、そのコア部の射出側端面から射出される光束の発散角(拡がり角ともいう)を小さくすることができる。これにより、両光ファイバを光結合させたときの、受光側光ファイバの延びる方向に対する(光軸に対する)この受光側光ファイバヘ入射する光線の角度をより小さくすることができ、受光側光ファイバのコア部以外に入射する光の光量を抑えることができる。したがって、この光コネクタ中に効率良く光を通すことができる。
【0028】
さらに、光コネクタを通す光をGIコリメータのような屈折による作用ではなく反射による作用のみによって伝送させることができるので、光の波長を変えたり、波長の種類を増大させたりして、通す光の波長範囲を拡大しても光伝送効率を低下させないようにすることができる。
【0029】
また、光源側光ファイバのコア部をテーパ形状をなすものとしてそのコア部の射出側端面の面積を拡大させるようにしたので、このコア部の射出側端面を通る光のエネルギ密度を下げることができる。これにより、この射出側端面における汚染物質の吸着を抑制する効果を得ることができる。なお、この「汚染物質の吸着を抑制する効果」については、特開2006−309146号公報を参照することができる。
【0030】
また、上記光源側光ファイバのテーパ形状をなすコア部の太径側の径(コア部の射出側端面の径)が大きくなっても、このテーパ形状をなすコア部の細径側の径を小さくすることができるので、光伝送部を全体的に細径化できその可撓性をも確保することができる。
【0031】
なお、光源にレーザ光を用いる場合には、光源から発せられ光源側光ファイバに入射したレーザ光をテーパ形状をなすコア部の射出側端面(太径側の端面)から射出させるが、これにより、視角あたりのレーザ光の光強度を減少させることができる。ここで、機器のレーザクラスを判定するにあたり、射出側端面の視角を大きくすることは有利に働く。すなわち、同じクラスでより大きな光強度を持つレーザ光の使用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1A】本発明の実施の形態による光コネクタが接続され光結合された状態を示す断面図
【図1B】上記光コネクタを離間させて光結合が解除された状態を示す断面図
【図2A】受光側光ファイバのテーパ部の勾配を緩くした光コネクタを示す図
【図2B】受光側光ファイバのテーパ角を0にしてコア部全体の径を大きくした光コネクタを示す図
【図2C】受光側光ファイバのテーパ部の勾配を緩くしたまま入射側端面の径を大きくした光コネクタを示す図
【図2D】受光側光ファイバのテーパ部の勾配を急峻にして入射側端面の径を大きくした光コネクタを示す図である。
【図3】計算機シミュレーションの対象とする光源側光ファイバのコア部を通る光線の様子を示す図
【図4】光源側光ファイバにおけるテーパ率とそのテーパ率を持つテーパ部から射出される光束の拡がり角との関係を示す図である。
【図5】テーパ部を有する光ファイバを形成する様子を示す図
【図6】ストレート光ファイバとテーパ光ファイバから射出される光束の光強度分布を比較して示す図
【図7A】光源側光ファイバおよび受光側光ファイバの両方にストレート光ファイバを適用して光結合させたときの様子を示す図
【図7B】光源側光ファイバおよび受光側光ファイバの両方にテーパ光ファイバを適用して光結合させたときの様子を示す図
【図7C】光源側光ファイバにテーパ光ファイバを、受光側光ファイバにストレート光ファイバを適用して光結合させたときの様子を示す図
【図8】両光ファイバを光結合させたときの離間距離と光伝送効率との関係を示す図
【図9】光源側光ファイバのテーパ角のみを変化させたときに射出される光束の光強度分布のシミュレーション結果を示す図
【図10】テーパ光ファイバとストレート光ファイバとから射出される光束の光強度分布の実測値を比較して示す図
【図11】光源側光ファイバに関し、テーパ部の長さの変化に応じて変動する光束の拡がり角のシミュレーション結果を示す図
【図12】光源側光ファイバを通る光線の光路をシミュレーションした結果を示す図
【図13】テーパ部の長さを固定して、テーパ率と光伝送効率の関係をシミュレーションした結果を示す図
【図14】光結合させた光ファイバを通る光線の光路をシミュレーションした結果を示す図
【図15】照明用の光源としてレーザ光源のみを用いる内視鏡システムを示す図
【図16】照明用の光源としてレーザ光源とキセノンランプを併用する内視鏡システムを示す図
【図17】照明用の光源として蛍光照明用のレーザ光源を含む内視鏡システムを示す図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。図1A、Bは本発明の光コネクタの概略構成を示す断面図である。図1Aは本発明の光コネクタが接続され光結合された状態を示す断面図である。図1Bは本発明の光コネクタを互いに離間させて光結合が解除された状態を示す断面図である。
【0034】
本発明の実施の形態で説明する全ての光コネクタは、光源側光ファイバおよび受光側光ファイバに対してステップ・インデックス型(SI型)光ファイバを採用したものである。
【0035】
図1A、1Bに示す本発明の実施の形態による光コネクタ100は、光源側(図中矢印−Zの側)に配される光ファイバである光源側光ファイバ10と、受光側(図中矢印+Zの側)に配される光ファイバである受光側光ファイバ20とを備え、光源側光ファイバ10の端面11と受光側光ファイバ20の端面21とを対向配置させて両光ファイバ10、20を光結合させるためのものである。
【0036】
なお、光源側に配される光源側光ファイバ10はステップ・インデックス型の光ファイバであり、この光源側光ファイバ10は光源1から発せられる光に対して光接続されるものである。また、受光側に配される受光側光ファイバ20もステップ・インデックス型の光ファイバであり、この受光側光ファイバ20は、照明部5に光接続されるものである。光源側光ファイバ10と受光側光ファイバ20とが光結合されたときには、光源1から発せられた光が光コネクタ100を通して照明部5に伝送される。この光コネクタ100は、光源1から発せられ光源側光ファイバ10を通った光が受光側光ファイバ20に伝搬され照明部5に伝送されるように、光源側光ファイバ10によって形成される光路と受光側光ファイバ20によって形成される光路とを光結合させるものである。すなわち光コネクタ100は、光源側光ファイバ10から射出された光を受光側光ファイバ20へ入射させるように、両光ファイバ10、20を光結合させるものである。
【0037】
上記光コネクタ100は、光源側光ファイバ10と受光側光ファイバ20とを着脱可能(光源側光ファイバ10に対して受光側光ファイバ20を着脱可能)とするものである。すなわち、光コネクタ100は、両光ファイバ10、20を対向配置させて光結合させた状態(図1A参照)を維持するように両光ファイバ10、20の位置関係を固定したり、光源側光ファイバ10と受光側光ファイバ20とを離間させて対向配置させない状態(図1B参照)としたりすることが可能なものである。ここで、光結合させた状態においては、光源側光ファイバ10の端面11と受光側光ファイバ20の端面21との間には空気層が形成される。
【0038】
光源側光ファイバ10は、光源側から上記光結合させる端面11に向かうほどコア部12の径が大きくなるように形成されたテーパ部14を有する。
【0039】
この光源側光ファイバ10は、L1をテーパ部14の長さ(光軸C1方向の長さ)、ε1をテーパ率としたときに、条件式(1):0.5≦L1/ε1を満足するように構成されている。
【0040】
なお、テーパ率ε1は、ε1=φ1max/φ1minの数式によって求められる値である。ここで、φ1maxはテーパ部14におけるコア部12の最大径(最大コア径)、φ1minはテーパ部14におけるコア部12の最小径(最小コア径)である。
【0041】
さらに、この光源側光ファイバ10は、条件式(1A):2.6≦L1/ε1を満足するものとすることが望ましい。
【0042】
一方、受光側光ファイバ20は、光結合させる端面21に近づくほどコア部22の径が大きくなるテーパ部24を有するものである。すなわち、この受光側光ファイバ20は、光結合させる端面21から受光側(図中矢印+Zの側)へ離れるほど(照明部5の側に向かうほど)コア部22の径が小さくなるテーパ部24を有するものである。
【0043】
この受光側光ファイバ20も、上記と同様に、L2をテーパ部24の光軸C2方向の長さ、ε2をテーパ率としたときに、条件式(2):0.5≦L2/ε2を満足するものであり、さらに、条件式(2A):2.6≦L2/ε2を満足するものとすることが望ましい。
【0044】
図1A、1B中に示すテーパ角θ1は、コア部12におけるテーパ部14の外壁面と光軸C1とのなす角度であり、テーパ部14の長さL1、最大コア径φ1max、および最小コア径φ1minによって定められる角度である。
【0045】
また、図1中に示すテーパ角θ2は、コア部22におけるテーパ部24の外壁面と光軸C2とのなす角度であり、テーパ部24の長さL2、最大コア径φ2max、および最小コア径φ2minによって定められる角度である。
【0046】
なお、光源側光ファイバ10は、コア部12の外周にクラッド部18が配されたものであり、また、受光側光ファイバ20も、コア部22の外周にクラッド部28が配されたものである。そして、互いに屈折率の異なるコア部12(22)とクラッド部18(28)との境界であるコア部12(22)の外壁面で光が反射されるように構成されている。ここで、上記テーパ角θ1、θ2の値が小さくなると、光軸C1(C2)に対する上記境界、すなわちコア部12(22)の外壁面の勾配が緩やかになる。
【0047】
また、上記光コネクタ100は、両光ファイバ10、20が光結合されたときに、光源側光ファイバ10の光軸C1と受光側光ファイバ20の光軸C2とが一致するように構成されている。すなわち、光結合されたときに光源側光ファイバ10のコア部12の中心軸G1と受光側光ファイバ20のコア部22の中心軸G2とが一致するように構成されている。
【0048】
また、両光ファイバ10、20が光結合されたときには、上記のように、光源側光ファイバ10の端面11と受光側光ファイバ20の端面21とが空気層(離間距離d)を間に介して非接触で対向配置されるように光コネクタ100が構成されている。
【0049】
この光コネクタ100は、光を反射させて伝搬させることにより光結合させる方式を採用しているので、光結合させるときの波長依存性を小さくすることができ、大きな波長範囲を持つ光、例えば白色光等を色劣化させることなく通すことができる。
【0050】
さらに、上記光コネクタ100によれば、レンズなどの屈折光学系を使用しないで光源側光ファイバから射出される光束の発散角(拡がり角ともいう)を小さくすることができ、光源側光ファイバに対する受光側光ファイバの光軸直交方方向への位置ずれによる光伝送性能の低下を少なくすることができるので、両光ファイバの着脱による光伝送効率の低下を抑制することができる。
【0051】
なお、両光ファイバ10、20を光結合させたときの、対向配置された光源側光ファイバ10の端面11と受光側光ファイバ20の端面21との間隔である離間距離dは、例えば0.5mm以上、3mm以下とすることができる。また、テーパ部の長さであるテーパ長Lは、例えば2mm以上、10mm以下とすることができる。
【0052】
図2A〜2Dは、本発明の光コネクタの変形例を示すものであり、光ファイバのクラッド部18、28を省略してコア部12、22のみを示した図である。なお、図3以降の図中に示す光ファイバについても同様にクラッド部を省略してコア部のみを示す。
【0053】
図2Aは受光側光ファイバのテーパ部の勾配を緩くした光コネクタ100Aを示す図、図2Bは受光側光ファイバにテーパ部を設けないようにしてコア部全体の径を太くし一定にした光コネクタ100Bを示す図、図2Cは受光側光ファイバのテーパ部の勾配を緩くしたまま入射側端面の径を大きくした光コネクタ100Cを示す図、図2Dは受光側光ファイバのテーパ部の勾配を急峻にして入射側端面の径を大きくした光コネクタ100Dを示す図である。
【0054】
以下、光コネクタ100A〜100Dについて個別に説明する。なお、各光コネクタの説明は、受光側光ファイバ10と光源側のファイバ20とが両方共にテーパ部を有し形状が同等である場合を基準としている。ここで形状が同等である場合とは、両光ファイバの形状について、最大コア径φ1max=φ2max、最小コア径φ1min=φ2min、テーパ部の長さであるテーパ長L1=L2、テーパ角θ1=θ2の場合である。ここで上記基準となる光コネクタを基準光コネクタと称する。
【0055】
なお、離間間隔d、および光源側光ファイバ10に関する各寸法(最大コア径φ1max、最小コア径φ1min、テーパ長L1、テーパ角θ1)は、各光コネクタ100A〜100Dについて同等とする。
【0056】
<光コネクタ100Aについて>
図2Aに示す変形例Aの光コネクタ100Aは、基準光コネクタに対して、受光側光ファイバ20の最大コア径φ2max、および最小コア径φ2minを同等とし、テーパ部24の長さL2をより長く(すなわち、テーパ角θ2をより小さく)したものである。
【0057】
このように、光源側光ファイバ10の最大コア径φ1maxと受光側光ファイバ20の最大コア径φ2maxとを同径としつつ(さらに、コア部の端面11、21同士が過不足なく重なるようにしつつ)、受光側光ファイバ20のコア部22におけるテーパ角θ2を小さくすることにより、光結合させたときのこの光コネクタ100Aの光量損失をより小さくすることができる。すなわち、受光側光ファイバを上記のような形状にした方が、受光側と光源側のファイバの形状を同等にした場合よりも光量損失を小さくすることができる。
【0058】
上記光コネクタ100Aの利点は、光結合させたときのモード変換が有利なことである。また、欠点は、受光側光ファイバの太い部分が長くなるので、取り回しが多少悪くなる(可撓性が多少低下する)ことである。
【0059】
<光コネクタ100Bについて>
図2Bに示す変形例Bの光コネクタ100Bは、基準光コネクタに対して、受光側光ファイバ20の最大コア径φ2maxを同等としテーパ部を設けないようにした(テーパ角θ2=0とした)ものである。
【0060】
このように、光源側光ファイバ10の最大コア径φ1maxと受光側光ファイバ20の最大コア径φ2maxとを同径にしつつ(さらに、コア部の端面11、21同士が過不足なく重なるようにしつつ)、受光側光ファイバ20のコア部22の太さを一定(ストレート光ファイバ)にすることにより、光結合させたときのこの光コネクタ100Bの光量損失を、上記受光側と光源側の光ファイバの形状を同等にした場合よりも光量損失を小さくすることができる。
【0061】
上記光コネクタ100Bの利点は、受光側光ファイバを通る光の光量減衰を小さくできることである。また、欠点は、受光側光ファイバ全体が太径となるので取り回しが悪くなる(可撓性が低下する)ことである。
【0062】
<光コネクタ100Cについて>
図2Cに示す変形例Cの光コネクタ100Cは、基準光コネクタに対して、テーパ角θ2および最小コア径φ2minを変更することなくテーパ部24の長さL2を長くして最大コア径φ2maxを大きくしたものである。
【0063】
このように、光源側光ファイバ10の最大コア径φ1maxに対して受光側光ファイバ20の最大コア径φ2maxを大きくすることにより、光結合させたときのこの光コネクタ100Cの光量損失を、より小さくすることができる。すなわち、受光側光ファイバ20は、光源側光ファイバ10から射出された光の取りこぼし(漏れ光)を少なくして入射させることができるので光量損失を少なくすることができる。
【0064】
上記光コネクタ100Cの利点は、光結合させたときの光の取りこぼし(漏れ光)を小さくできることと、光結合させたときのモード変換が有利であることである。また、欠点は、受光側光ファイバの太い部分が長くなるので、取り回しが多少悪くなる(可撓性が多少低下する)ことである。
【0065】
<光コネクタ100Dについて>
図2Dに示す変形例Dの光コネクタ100Dは、基準光コネクタに対して、テーパ部24の長さL2および最小コア径φ2minを同等にしつつ、最大コア径φ2maxを大きくした(テーパ角θ2を大きくした)ものである。
【0066】
このように、光源側光ファイバ10の最大コア径φ1maxに対して受光側光ファイバ20の最大コア径φ2maxを大きくすることにより、光結合させたときのこの光コネクタ100Cの光量損失をより小さくすることができる(光コネクタ100Cの場合と同様)。一方、テーパ角θ2を大きくしたことにより、テーパ部24内での光量損失が大きくなる。
【0067】
上記光コネクタ100Dの利点は、光結合させたときの光の取りこぼし(漏れ光)を小さくできることである。また、欠点は、モード変換のロスが大きくなることである。
【0068】
次に、本発明に関する実施例等についてさらに説明する。
【0069】
<BPM法による光源側光ファイバの計算機シミュレーション>
BPM法は、光導波路や光ファイバ中を伝搬する電場の様子を計算機シミュレーションする手法である。
【0070】
図3は、計算機シミュレーションの対象とする光源側光ファイバのコア部と、そのコア部を通る光線の様子を示す模式図である。また、図4は、横軸にテーパ率ε、縦軸にテーパ部を通して射出される光束の拡がり半角α(全角2α)を定めた座標面上に、光源側光ファイバにおけるテーパ率とそのテーパ率を持つテーパ部から射出される光束の拡がり角との関係を示す図である。
【0071】
ここでは、テーパ長L1が10mm、および20mmのときのFFP(ファーフィールドパターン:遠視野像)について計算した。
【0072】
図3、図4からわかるように、テーパ長を10mmとした場合に、テーパ率εが増大して3.8になるまでは、テーパ部14から射出される光束Ku1の拡がり半角αが、このテーパ率に反比例する。すなわち、拡がり角の減少効果が見られた。また、テーパ率εが6.5以上になると上記反比例関係が大きく崩れ、拡がり半角αの下限が2°程度で一定になることがわかる。
【0073】
なお、テーパ長を20mmにすると、テーパ率εが6.5以上の場合にわずかに拡がり角の下限が改善され、拡がり半角αが1.6°程度で一定となった。
【0074】
今回の実験はテーパ率εが3.8(φ1min=60μm、φ1max=230μm)のため、エタンデュ保存の限界に近いことがわかる。
【0075】
以下にこの計算機シミュレーションを行ったときの条件を示す。
【0076】
計算機シミュレーションには、OPTIWAVE社が開発した光導波路シミュレーションプログラムを用いた。
【0077】
入射光束Kn1:波長780nmでスポット径0.5μmのガウシアンビーム
ストレート部の長さ:40mm(20mm)
テーパ長L1:10mm、20mm
コア部の屈折率:1.45
クラッド部の屈折率:1.433
媒質屈折率:1.00
テーパ形状:exp(−1)
括弧内の数値はテーパ率εが6.5以上の場合を示す。
【0078】
なお、NA×コア径(コア部の径)は一定で、入射側においてファイバNA以上のクラッドモードは除去され、射出側のテーパ部においてNAが減少する。また、コア部12内を伝播する光線Leの軌道(光路)を図中に示す。
【0079】
<テーパ部を有する光ファイバの製作>
以下、テーパ部を有する光ファイバの製作について説明する。
【0080】
図5は太径の光ファイバを加熱延伸して細径の光ファイバに溶着して、テーパ部を有する光ファイバを形成する様子を示す図である。図5中の上段の図は、太径光ファイバを加熱延伸する様子を示している。中段の図は、加熱延伸された太径光ファイバFと細径光ファイバHとを融着する様子を示している。下段の図は、上記融着された両光ファイバのテーパ部の太径側を切断しその端面を研磨する様子を示している。
【0081】
テーパ部を有する光ファイバを製作する際には、太径光ファイバFと細径光ファイバHとを用意する。
【0082】
ここでは、太径光ファイバFは、NA:0.22、コア径:230μm、クラッド径:250μm、コア部の形成材料は石英からなるストレート光ファイバである。
【0083】
細径光ファイバHは、NA:0.22、コア径:60μm、クラッド径:80μm、コア部の形成材料は石英である
はじめに、太径光ファイバFを約1400°のセラミックヒータで加熱延伸してテーパ形状をなすテーパ部Ftを形成する。
【0084】
次に、上記テーパ部Ftの端面におけるコア部と細径光ファイバの端面におけるコア部とを位置合わせする。
【0085】
つづいて、太径光ファイバにおけるテーパ部の端面と細径光ファイバの端面とを融着し接合する
上記テーパ部の太径側を切断後、細径光ファイバに融着して一体化している上記テーパ部の端面を光学研磨し、FCコネクタヘ固定する。
【0086】
このようにして、テーパ長L=10mm、テーパ率ε=3.8であるテーパ部を有する光ファイバが得られる。
【0087】
なお、太径光ファイバ、および細径光ファイバのコア径やクラッド径は、上記の場合に限るものではない。
【0088】
一般的な光ファイバのFCコネクタ用フェルールの外周サイズはφ2.5mmなので、最大クラッド径はφ2.5mm以下とすることが望ましい。
【0089】
なお、テーパ長Lの最適値については後述する。
【0090】
<テーパ部から射出される光束の拡がり角の測定>
次に、テーパ部を有する光源側光ファイバから射出される光束の拡がり角の測定について説明する。
【0091】
図6は横軸に光軸となす角度、縦軸に光強度を示す座標面上にストレート光ファイバとテーパ光ファイバから射出される光束の光強度分布を比較して示す図である。
【0092】
ストレート光ファイバは、コア径が60μmで一定である。
【0093】
テーパ光ファイバは、テーパ部中の最も細くなるコア径(最小コア径)が60μmで、テーパ部の最も太くなるコア径(最大コア径)が230μmであり、テーパ率εは3.8である(ε=3.8≒230/60)。
【0094】
図6からわかるように、光強度分布のピーク値の5%の光強度となる角度を拡がり角としてNAを計算すると、テーパ光ファイバのNAは0.058、ストレート光ファイバのNAは0.169となり、テーパ光ファイバのNAはストレート光ファイバのNAに対して1/3に減少している。
【0095】
<光伝送効率の測定>
次に、光ファイバを光結合させたときの光伝送効率の測定について説明する。
【0096】
図7Aは、光源側光ファイバおよび受光側光ファイバの両方にストレート光ファイバを適用して光結合させたときの様子を示す図、図7Bは、光源側光ファイバおよび受光側光ファイバの両方にテーパ光ファイバを適用して光結合させたときの様子を示す図、図7Cは、光源側光ファイバにテーパ光ファイバを、受光側光ファイバにストレート光ファイバを採用して光結合させたときの様子を示す図である。
【0097】
また、図8は横軸に離間距離d、縦軸に光伝送効率Eを表す座標面上に、両光ファイバを光結合させたときの離間距離と光伝送効率との関係を示す図である。
【0098】
光源側光ファイバとして2種類を用意した。すなわち、テーパ光ファイバ(テーパ部の最小コア径60μm、最大コア径230μm)、および細径ストレート光ファイバ(コア径60μmで一定)を用意した。
【0099】
受光側光ファイバとして3種類を用意した。すなわち、テーパ光ファイバ(テーパ部の最小コア径60μm、最大コア径230μm)、細径ストレート光ファイバ(コア径60μmで一定)、および太径ストレート光ファイバ(コア径230μmで一定)を用意した。
【0100】
また、レーザ光の波長として2種類を用意した。すなわち波長405nm、および785nmのレーザ光を発するレーザ光源を用意した。
【0101】
測定のパラメータとする離間距離は、両光ファイバの端面を密着させた状態(離間距離d=0)から、離間距離が3mm(d=3mm)となる距離まで段階的に多数の離間距離を設定し測定した。
【0102】
上記各光ファイバを組み合わせて光結合させてなる光コネクタにレーザ光を通し、離間距離を段階的に変更しつつ光伝送効率を測定した。
【0103】
なお、光伝送効率の測定対象とする光コネクタの態様は、図7A〜7Cに示す3種類である。図7Aは、光源側が細径ストレート光ファイバSh、受光側も細径ストレート光ファイバShからなる光コネクタを示している。図7Bは、光源側がテーパ光ファイバTe、受光側もテーパ光ファイバTeからなる光コネクタを示している。図7Cは、光源側がテーパ光ファイバTe、受光側が太径ストレート光ファイバSfからなる光コネクタを示している。
【0104】
図8から読み取れるように、両光ファイバを細径ストレート光ファイバとしたとき(図7A参照)を基準にすると、光源側をテーパ光ファイバとし受光側を太径ストレート光ファイバとしたとき(図7C参照)の方が、いずれの離間距離および波長においても光伝送効率が高いことがわかる。
【0105】
また、上記と同様に両光ファイバを細径ストレート光ファイバとしたときを基準にすると、離間距離が0〜0.5mmの間においては、両光ファイバをテーパ光ファイバとした場合の方が光伝送効率が低いが、離間距離が0.5〜1.0mmまでの間においては、両光ファイバをテーパ光ファイバとした場合の方が光伝送効率が高くなる。
【0106】
<最適なテーパ部の長さ>
以下、光源側光ファイバに設けられたテーパ部の最適な長さについて検討した結果を説明する。
【0107】
図9は、横軸にテーパ角θ1、縦軸に光強度を表す座標面上に、光源側光ファイバのテーパ部の最小コア径、最大コア径を変化させることなくテーパ角のみを変化させたとき(すなわち、テーパ長のみを変化させたとき)にテーパ部から射出される光束の光強度分布をシミュレーションした結果を示す図である。
【0108】
図10は、横軸にテーパ角、縦軸に光強度を表す座標面上に、ストレート光ファイバとテーパ長が10mmのテーパ光ファイバとから射出される光束の光強度分布の実測値を比較して示す図である。なお、ストレート光ファイバのコア径とテーパ光ファイバのテーパ部の最小コア径とは同径である。
【0109】
図11は、横軸にテーパ長、縦軸にテーパ部から射出される光束の拡がり全角2αを表す座標面上にテーパ長の変化に応じて変動する光束の拡がり角のシミュレーション結果を示す図である。
【0110】
図12は、光源側光ファイバを通る光線の軌道(光路)をシミュレーションした結果を示す図である。ここで得られたシミュレーション結果は、ZEMAX社が開発した汎用光学設計ツールを用いた光線追跡シミュレーションにより得られたものである。
【0111】
この計算機シミュレーションや実測においては、テーパ部の最小コア径を60μm、最大コア径を230μmとした。したがって、このテーパ部のテーパ率εは3.8である。
【0112】
また、この光源側光ファイバへの光束の入射角(全角)は20°とし、この光ファイバのNAを0.23として計算した。また、図11に示す光束の拡がり全角2αは、図9に示すプロットにおいて63%の光強度が含まれる角度として算出した(図11中の「ビーム拡がり角(1D d63)(deg)」の記載参照)。
【0113】
上記図9、図11のシミュレーション結果から読み取れるように、テーパ率εが3.8のときに、テーパ部の長さを少なくとも2mm以上にすることが望ましく、10mm以上とするこのがより望ましい。言い換えると、テーパ長をテーパ率で除算した値(テーパ長/テーパ率の数式によって求まる値)を0.5mm以上とすることが望ましく、2.6mm以上とすることがさらに望ましいことがわかる。
【0114】
また、図9のシミュレーション結果と図10の実測結果とからわかるように、シミュレーション結果と実測結果とは概略一致している。
【0115】
<最適なテーパ率>
次に、光結合させる光ファイバに設けられるテーパ部の最適なテーパ率について検討した結果を説明する。
【0116】
図13は、横軸にテーパ率、縦軸に光伝送効率を表す座標面上に、両光ファイバのテーパ長を10mmに固定して光結合させたときのテーパ率と光伝送効率の関係をシミュレーションした結果を示す図である。
【0117】
図14は、光結合させた光ファイバを通る光線の軌道(光路)をシミュレーションした結果を示す図である。
【0118】
ここで得られたシミュレーション結果は、ZEMAX社が開発した汎用光学設計ツールを用いた光線追跡シミュレーションにより得られたものである。
【0119】
この計算機シミュレーションでは、光源側光ファイバおよび受光側光ファイバの両方についてテーパ部の最小コア径φ1min、φ2minを60μm、テーパ長L1、L2を10mmとし、両光ファイバのテーパ部の最大コア径φ1max、φ2maxを一致させつつその大きさを変化させたときの光伝送効率の変化を計算で求めた。なお、離間間隔dは500μmで一定とした。
【0120】
図13から読み取れるように、テーパ率が1のときに光伝送効率が0.67、テーパ率が2.2のときに光伝送効率が0.91となり、その後、テーパ率が大きくなるほど光伝送効率が低下することがわかる。
【0121】
<内視鏡システムへの適用>
次に、本発明の光コネクタを内視鏡システムに適用する場合について説明する。
【0122】
図15は、照明用の光源としてレーザ光源のみを用いる実施例Aの内視鏡システムを示す図、図16は、照明用の光源としてレーザ光源とキセノンランプを併用する実施例Bの内視鏡システムを示す図、図17は、照明用の光源としてレーザ光源のみを用いるが蛍光照明用のレーザ光源を含む実施例Cの内視鏡システムを示す図である。
【0123】
図15に示すように、実施例Aの内視鏡システムは、互いに異なる波長を発するレーザ光源から射出された各光束を光カプラで合波してなる合波光束を、光結合させた状態の本発明の光コネクタに通して内視鏡本体に伝送し、この内視鏡本体から上記合波光束(レーザ光)を照射するものである。
【0124】
また、図16に示すように、実施例Bの内視鏡システムは、レーザ光源から射出された光束を本発明の光コネクタに通して内視鏡本体に伝送するとともに、キセノンランプから発せられた光束(白色光)を通常コネクタ(バンドルファイバ)に通して内視鏡本体に伝送し、この内視鏡本体から上記伝送された各光束を個別に照射するものである。
【0125】
また、図17に示すように、実施例Cの内視鏡システムは、複数のレーザ光源から発せられた光束と、蛍光照明用のレーザ光源から発せられた光束とを光カプラで合波してなる合波光束を、光結合させた状態の本発明の光コネクタに通して内視鏡本体に伝送し、この内視鏡本体から上記合波光束(レーザ光)を照射するものである。
【0126】
なお、本発明は、上記実施の形態および各実施例に限定されず、発明の要旨を変更しない限りにおいて種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0127】
10 光源側光ファイバ
11 光源側光ファイバの端面
12 光源側光ファイバのコア部
14 光源側光ファイバのテーパ部
20 受光側光ファイバ
21 受光側光ファイバの端面
【技術分野】
【0001】
本発明は光コネクタに関し、詳しくは、光源側の光ファイバと受光側の光ファイバとを光結合させる光コネクタおよびそれを用いた内視鏡システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、非接触型の光コネクタとして、屈折率分布を持つコア部を有する光ファイバー(略してGI型光ファイバともいう)や屈折率が一定のコア部を有する光ファイバ(略してSI型光ファイバともいう)を用いたものが知られている。GI型光ファイバを使用した光コネクタであるGIコリメータは、後側焦点距離に顕著な波長依存性があり、通す光の波長範囲の拡大によって光伝送効率が大きく低下してしまうため、一般に、単色光を通すために用いられる。
【0003】
また、このようなGIコリメータに対して、単色光よりも広い波長範囲に亘る光、例えば赤外領域における互いに異なる波長を持つ光を通す手法が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、半導体レーザ素子から発せられたレーザ光を凸レンズに通して集光させ、そのレーザ光の集光点にテーパ形状をなす光ファイバの太径側の端面を配置して、この太径側から入射したレーザ光をそのテーパ形状の細径側に通してレーザ光を伝搬させる光伝播装置も知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2006−524845号公報
【特許文献2】特開2006−309146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記赤外領域で互いに異なる波長を持つ光を通すGIコリメータは、通す光の波長範囲の拡大による光伝送効率の低下を根本的に解消するものではなく、例えば、より広い波長範囲からなる白色光を通すような場合には、特定の波長については光伝送効率が大きく低下してしまう。また、上記テーパ形状をなす光ファイバを受光側に有する光伝播装置については、着脱可能な光コネクタへの適用が可能ではあるが、光伝送効率の波長依存性を解消するためには、色収差の発生を抑えたレンズ等を用いることが必要となるため、装置が大型化するとともに装置コストが増大するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、装置コストの増大や装置の大型化をまねくことなく、通す光の波長範囲の拡大による光伝送効率の低下を抑制することができる光コネクタおよびそれを用いた内視鏡システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光コネクタは、光源側に配されるSI型の光源側光ファイバと、受光側に配されるSI型の受光側光ファイバとを備え、光源側光ファイバの端面と受光側光ファイバの端面とを対向配置させて前記両光ファイバを光結合させる光コネクタであって、光源側光ファイバと受光側光ファイバとが着脱可能なものであり、光源側光ファイバが、この光源側光ファイバの前記端面に近づくほどコア部の径が大きくなるように形成されたテーパ部を有することを特徴とするものである。
【0009】
なお、SI型の光ファイバは、ステップ・インデックス型の光ファイバを意味する。すなわち、光源側光ファイバのコア部および受光側光ファイバのコア部の屈折率は一定であり屈折率分布を持つものではない。したがって、各コア部内を伝搬する光は、コア部の外壁面で反射されながら各光ファイバ中を伝播する。
【0010】
また、着脱可能とは、両光ファイバを対向配置させて光結合させた状態が維持されるように両光ファイバの位置関係を定める装着状態としたり、両光ファイバを離間させて対向配置させない離脱状態としたりすることが可能であることを意味する。
【0011】
また、「光源側光ファイバの前記端面に近づくほどコア部の径が大きくなるように形成されたテーパ部」とは、このテーパ部を構成するコア部の外壁面(反射面)におけるいずれの領域も、そのコア部内において光軸直交方向に伝播する光を、径が大きくなる側(光を射出する前記端面の側)に反射させるようにこの外壁面(反射面)が形成されたものである。すなわち、このテーパ部は、必ずしも円錐形状をなす場合に限らず、多角錐形状をなすものや、あるいは、自由曲面や多面体等を組み合わせた形状をなすものであってもよい。なお、前記光軸はコア部の断面の重心位置を通る中心軸とすることができる。また、前記コア部の断面は、このコア部の延びる方向に対して直交する平面で切断される断面とすることができる。
【0012】
前記光源側光ファイバのテーパ部は、コア部の断面の重心位置を通る中心軸が直線となるように形成されたものとすることが望ましい。
【0013】
前記受光側光ファイバは、この受光側光ファイバの前記端面に近づくほどコア部の径が大きくなるように形成されたテーパ部を有するものとすることができる。
【0014】
なお、「受光側光ファイバの前記端面に近づくほどコア部の径が大きくなるように形成されたテーパ部」は、このテーパ部を構成するコア部の外壁面(反射面)におけるいずれの領域も、そのコア部内において光軸直交方向に伝播する光を、径が大きくなる側(光を受光する前記端面の側)に反射させるようにこの外壁面(反射面)が形成されたものである。すなわち、このテーパ部は、必ずしも円錐形状をなす場合に限らず、多角錐形状をなすものや、あるいは、自由曲面や多面体等を組み合わせた形状をなすものであってもよい。なお、前記光軸はコア部の断面の重心位置を通る中心軸とすることができる。前記コア部の断面は、このコア部の延びる方向に対して直交する平面で切断される断面である。
【0015】
前記光源側光ファイバのテーパ部は、コア部の断面の重心位置を通る中心軸が直線となるように形成されたものであることが望ましい。
【0016】
前記受光側光ファイバは、コア部の断面の形状および大きさが一定となるように形成されたものとすることができる。
【0017】
前記光コネクタは、両光ファイバが光結合されたときに、光源側光ファイバの端面と受光側光ファイバの端面とが非接触で対向配置されるように構成されたものとすることができる。
【0018】
前記光コネクタは、互いに異なる2種類以上の波長の光を通すものとすることができる。
【0019】
前記光コネクタは、白色光を通すものとすることができる。
【0020】
前記光コネクタは、光源側光ファイバの端面におけるコア部の面積よりも受光側光ファイバの端面におけるコア部の面積の方が大きくなるように構成されたものとすることができる。
【0021】
前記光コネクタは、両光ファイバが光結合されたときに、受光側光ファイバのコア部の端面と光源側光ファイバのコア部の端面とが互いに過不足なく重なるように対向配置されるように構成されたものとすることができる。
【0022】
なお、過不足なく重なるとは、完全に過不足なく重なる場合に限らず、互いに90%以上の領域が重なる場合を意味する。
【0023】
前記光源側光ファイバは、条件式(1):0.5≦L1/ε1を満足するものとすることが望ましく、条件式(1A):2.6≦L1/ε1を満足するものとすることがより望ましい。ただし、L1を光源側光ファイバのテーパ部の長さ(mm)、ε1を光源側光ファイバのテーパ率とする。ここで、テーパ率ε1は、ε1=(光源側光ファイバにおけるテーパ部の最大コア径/光源側光ファイバにおけるテーパ部の最小コア径)で示される数式によって求められる値である。
【0024】
前記受光側光ファイバは、条件式(2):0.5≦L2/ε2を満足するものとすることが望ましく、条件式(2A):2.6≦L2/ε2を満足するものとすることがより望ましい。ただし、L2を受光側光ファイバのテーパ部の長さ(mm)、ε2を受光側光ファイバのテーパ率とする。ここで、テーパ率ε2は、ε2=(受光側光ファイバにおけるテーパ部の最大コア径/受光側光ファイバにおけるテーパ部の最小コア径)で示される数式によって求められる値である。
【0025】
本発明の内視鏡システムは、前記光コネクタと、光源と、内視鏡本体とを備え、光源から発せられた光束を光コネクタに通して内視鏡本体へ伝送し、この内視鏡本体から前記光束を射出するように構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の光コネクタおよびそれを用いた内視鏡システムによれば、光源側光ファイバのコア部の射出側の端面である射出側端面と受光側光ファイバのコア部の入射側の端面である入射側端面とを対向配置させて光結合させる光コネクタにおいて、光源側光ファイバを、射出側端面の側へ向かうほどコア部の径が大きくなるテーパ形状をなすものとしたので、装置コストの増大や装置の大型化、さらに、通す光の波長範囲の拡大による光伝送効率(結合効率)の低下を招くことなく、効率良く光コネクタ中に光を通すことができる。
【0027】
すなわち、光源側光ファイバのコア部を上記のようなテーパ形状をなすものとしたので、このコア部の延びる方向に対する(すなわち、光軸に対する)上記コア部の外壁面で反射した光線の角度をより小さくすることができ、そのコア部の射出側端面から射出される光束の発散角(拡がり角ともいう)を小さくすることができる。これにより、両光ファイバを光結合させたときの、受光側光ファイバの延びる方向に対する(光軸に対する)この受光側光ファイバヘ入射する光線の角度をより小さくすることができ、受光側光ファイバのコア部以外に入射する光の光量を抑えることができる。したがって、この光コネクタ中に効率良く光を通すことができる。
【0028】
さらに、光コネクタを通す光をGIコリメータのような屈折による作用ではなく反射による作用のみによって伝送させることができるので、光の波長を変えたり、波長の種類を増大させたりして、通す光の波長範囲を拡大しても光伝送効率を低下させないようにすることができる。
【0029】
また、光源側光ファイバのコア部をテーパ形状をなすものとしてそのコア部の射出側端面の面積を拡大させるようにしたので、このコア部の射出側端面を通る光のエネルギ密度を下げることができる。これにより、この射出側端面における汚染物質の吸着を抑制する効果を得ることができる。なお、この「汚染物質の吸着を抑制する効果」については、特開2006−309146号公報を参照することができる。
【0030】
また、上記光源側光ファイバのテーパ形状をなすコア部の太径側の径(コア部の射出側端面の径)が大きくなっても、このテーパ形状をなすコア部の細径側の径を小さくすることができるので、光伝送部を全体的に細径化できその可撓性をも確保することができる。
【0031】
なお、光源にレーザ光を用いる場合には、光源から発せられ光源側光ファイバに入射したレーザ光をテーパ形状をなすコア部の射出側端面(太径側の端面)から射出させるが、これにより、視角あたりのレーザ光の光強度を減少させることができる。ここで、機器のレーザクラスを判定するにあたり、射出側端面の視角を大きくすることは有利に働く。すなわち、同じクラスでより大きな光強度を持つレーザ光の使用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1A】本発明の実施の形態による光コネクタが接続され光結合された状態を示す断面図
【図1B】上記光コネクタを離間させて光結合が解除された状態を示す断面図
【図2A】受光側光ファイバのテーパ部の勾配を緩くした光コネクタを示す図
【図2B】受光側光ファイバのテーパ角を0にしてコア部全体の径を大きくした光コネクタを示す図
【図2C】受光側光ファイバのテーパ部の勾配を緩くしたまま入射側端面の径を大きくした光コネクタを示す図
【図2D】受光側光ファイバのテーパ部の勾配を急峻にして入射側端面の径を大きくした光コネクタを示す図である。
【図3】計算機シミュレーションの対象とする光源側光ファイバのコア部を通る光線の様子を示す図
【図4】光源側光ファイバにおけるテーパ率とそのテーパ率を持つテーパ部から射出される光束の拡がり角との関係を示す図である。
【図5】テーパ部を有する光ファイバを形成する様子を示す図
【図6】ストレート光ファイバとテーパ光ファイバから射出される光束の光強度分布を比較して示す図
【図7A】光源側光ファイバおよび受光側光ファイバの両方にストレート光ファイバを適用して光結合させたときの様子を示す図
【図7B】光源側光ファイバおよび受光側光ファイバの両方にテーパ光ファイバを適用して光結合させたときの様子を示す図
【図7C】光源側光ファイバにテーパ光ファイバを、受光側光ファイバにストレート光ファイバを適用して光結合させたときの様子を示す図
【図8】両光ファイバを光結合させたときの離間距離と光伝送効率との関係を示す図
【図9】光源側光ファイバのテーパ角のみを変化させたときに射出される光束の光強度分布のシミュレーション結果を示す図
【図10】テーパ光ファイバとストレート光ファイバとから射出される光束の光強度分布の実測値を比較して示す図
【図11】光源側光ファイバに関し、テーパ部の長さの変化に応じて変動する光束の拡がり角のシミュレーション結果を示す図
【図12】光源側光ファイバを通る光線の光路をシミュレーションした結果を示す図
【図13】テーパ部の長さを固定して、テーパ率と光伝送効率の関係をシミュレーションした結果を示す図
【図14】光結合させた光ファイバを通る光線の光路をシミュレーションした結果を示す図
【図15】照明用の光源としてレーザ光源のみを用いる内視鏡システムを示す図
【図16】照明用の光源としてレーザ光源とキセノンランプを併用する内視鏡システムを示す図
【図17】照明用の光源として蛍光照明用のレーザ光源を含む内視鏡システムを示す図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。図1A、Bは本発明の光コネクタの概略構成を示す断面図である。図1Aは本発明の光コネクタが接続され光結合された状態を示す断面図である。図1Bは本発明の光コネクタを互いに離間させて光結合が解除された状態を示す断面図である。
【0034】
本発明の実施の形態で説明する全ての光コネクタは、光源側光ファイバおよび受光側光ファイバに対してステップ・インデックス型(SI型)光ファイバを採用したものである。
【0035】
図1A、1Bに示す本発明の実施の形態による光コネクタ100は、光源側(図中矢印−Zの側)に配される光ファイバである光源側光ファイバ10と、受光側(図中矢印+Zの側)に配される光ファイバである受光側光ファイバ20とを備え、光源側光ファイバ10の端面11と受光側光ファイバ20の端面21とを対向配置させて両光ファイバ10、20を光結合させるためのものである。
【0036】
なお、光源側に配される光源側光ファイバ10はステップ・インデックス型の光ファイバであり、この光源側光ファイバ10は光源1から発せられる光に対して光接続されるものである。また、受光側に配される受光側光ファイバ20もステップ・インデックス型の光ファイバであり、この受光側光ファイバ20は、照明部5に光接続されるものである。光源側光ファイバ10と受光側光ファイバ20とが光結合されたときには、光源1から発せられた光が光コネクタ100を通して照明部5に伝送される。この光コネクタ100は、光源1から発せられ光源側光ファイバ10を通った光が受光側光ファイバ20に伝搬され照明部5に伝送されるように、光源側光ファイバ10によって形成される光路と受光側光ファイバ20によって形成される光路とを光結合させるものである。すなわち光コネクタ100は、光源側光ファイバ10から射出された光を受光側光ファイバ20へ入射させるように、両光ファイバ10、20を光結合させるものである。
【0037】
上記光コネクタ100は、光源側光ファイバ10と受光側光ファイバ20とを着脱可能(光源側光ファイバ10に対して受光側光ファイバ20を着脱可能)とするものである。すなわち、光コネクタ100は、両光ファイバ10、20を対向配置させて光結合させた状態(図1A参照)を維持するように両光ファイバ10、20の位置関係を固定したり、光源側光ファイバ10と受光側光ファイバ20とを離間させて対向配置させない状態(図1B参照)としたりすることが可能なものである。ここで、光結合させた状態においては、光源側光ファイバ10の端面11と受光側光ファイバ20の端面21との間には空気層が形成される。
【0038】
光源側光ファイバ10は、光源側から上記光結合させる端面11に向かうほどコア部12の径が大きくなるように形成されたテーパ部14を有する。
【0039】
この光源側光ファイバ10は、L1をテーパ部14の長さ(光軸C1方向の長さ)、ε1をテーパ率としたときに、条件式(1):0.5≦L1/ε1を満足するように構成されている。
【0040】
なお、テーパ率ε1は、ε1=φ1max/φ1minの数式によって求められる値である。ここで、φ1maxはテーパ部14におけるコア部12の最大径(最大コア径)、φ1minはテーパ部14におけるコア部12の最小径(最小コア径)である。
【0041】
さらに、この光源側光ファイバ10は、条件式(1A):2.6≦L1/ε1を満足するものとすることが望ましい。
【0042】
一方、受光側光ファイバ20は、光結合させる端面21に近づくほどコア部22の径が大きくなるテーパ部24を有するものである。すなわち、この受光側光ファイバ20は、光結合させる端面21から受光側(図中矢印+Zの側)へ離れるほど(照明部5の側に向かうほど)コア部22の径が小さくなるテーパ部24を有するものである。
【0043】
この受光側光ファイバ20も、上記と同様に、L2をテーパ部24の光軸C2方向の長さ、ε2をテーパ率としたときに、条件式(2):0.5≦L2/ε2を満足するものであり、さらに、条件式(2A):2.6≦L2/ε2を満足するものとすることが望ましい。
【0044】
図1A、1B中に示すテーパ角θ1は、コア部12におけるテーパ部14の外壁面と光軸C1とのなす角度であり、テーパ部14の長さL1、最大コア径φ1max、および最小コア径φ1minによって定められる角度である。
【0045】
また、図1中に示すテーパ角θ2は、コア部22におけるテーパ部24の外壁面と光軸C2とのなす角度であり、テーパ部24の長さL2、最大コア径φ2max、および最小コア径φ2minによって定められる角度である。
【0046】
なお、光源側光ファイバ10は、コア部12の外周にクラッド部18が配されたものであり、また、受光側光ファイバ20も、コア部22の外周にクラッド部28が配されたものである。そして、互いに屈折率の異なるコア部12(22)とクラッド部18(28)との境界であるコア部12(22)の外壁面で光が反射されるように構成されている。ここで、上記テーパ角θ1、θ2の値が小さくなると、光軸C1(C2)に対する上記境界、すなわちコア部12(22)の外壁面の勾配が緩やかになる。
【0047】
また、上記光コネクタ100は、両光ファイバ10、20が光結合されたときに、光源側光ファイバ10の光軸C1と受光側光ファイバ20の光軸C2とが一致するように構成されている。すなわち、光結合されたときに光源側光ファイバ10のコア部12の中心軸G1と受光側光ファイバ20のコア部22の中心軸G2とが一致するように構成されている。
【0048】
また、両光ファイバ10、20が光結合されたときには、上記のように、光源側光ファイバ10の端面11と受光側光ファイバ20の端面21とが空気層(離間距離d)を間に介して非接触で対向配置されるように光コネクタ100が構成されている。
【0049】
この光コネクタ100は、光を反射させて伝搬させることにより光結合させる方式を採用しているので、光結合させるときの波長依存性を小さくすることができ、大きな波長範囲を持つ光、例えば白色光等を色劣化させることなく通すことができる。
【0050】
さらに、上記光コネクタ100によれば、レンズなどの屈折光学系を使用しないで光源側光ファイバから射出される光束の発散角(拡がり角ともいう)を小さくすることができ、光源側光ファイバに対する受光側光ファイバの光軸直交方方向への位置ずれによる光伝送性能の低下を少なくすることができるので、両光ファイバの着脱による光伝送効率の低下を抑制することができる。
【0051】
なお、両光ファイバ10、20を光結合させたときの、対向配置された光源側光ファイバ10の端面11と受光側光ファイバ20の端面21との間隔である離間距離dは、例えば0.5mm以上、3mm以下とすることができる。また、テーパ部の長さであるテーパ長Lは、例えば2mm以上、10mm以下とすることができる。
【0052】
図2A〜2Dは、本発明の光コネクタの変形例を示すものであり、光ファイバのクラッド部18、28を省略してコア部12、22のみを示した図である。なお、図3以降の図中に示す光ファイバについても同様にクラッド部を省略してコア部のみを示す。
【0053】
図2Aは受光側光ファイバのテーパ部の勾配を緩くした光コネクタ100Aを示す図、図2Bは受光側光ファイバにテーパ部を設けないようにしてコア部全体の径を太くし一定にした光コネクタ100Bを示す図、図2Cは受光側光ファイバのテーパ部の勾配を緩くしたまま入射側端面の径を大きくした光コネクタ100Cを示す図、図2Dは受光側光ファイバのテーパ部の勾配を急峻にして入射側端面の径を大きくした光コネクタ100Dを示す図である。
【0054】
以下、光コネクタ100A〜100Dについて個別に説明する。なお、各光コネクタの説明は、受光側光ファイバ10と光源側のファイバ20とが両方共にテーパ部を有し形状が同等である場合を基準としている。ここで形状が同等である場合とは、両光ファイバの形状について、最大コア径φ1max=φ2max、最小コア径φ1min=φ2min、テーパ部の長さであるテーパ長L1=L2、テーパ角θ1=θ2の場合である。ここで上記基準となる光コネクタを基準光コネクタと称する。
【0055】
なお、離間間隔d、および光源側光ファイバ10に関する各寸法(最大コア径φ1max、最小コア径φ1min、テーパ長L1、テーパ角θ1)は、各光コネクタ100A〜100Dについて同等とする。
【0056】
<光コネクタ100Aについて>
図2Aに示す変形例Aの光コネクタ100Aは、基準光コネクタに対して、受光側光ファイバ20の最大コア径φ2max、および最小コア径φ2minを同等とし、テーパ部24の長さL2をより長く(すなわち、テーパ角θ2をより小さく)したものである。
【0057】
このように、光源側光ファイバ10の最大コア径φ1maxと受光側光ファイバ20の最大コア径φ2maxとを同径としつつ(さらに、コア部の端面11、21同士が過不足なく重なるようにしつつ)、受光側光ファイバ20のコア部22におけるテーパ角θ2を小さくすることにより、光結合させたときのこの光コネクタ100Aの光量損失をより小さくすることができる。すなわち、受光側光ファイバを上記のような形状にした方が、受光側と光源側のファイバの形状を同等にした場合よりも光量損失を小さくすることができる。
【0058】
上記光コネクタ100Aの利点は、光結合させたときのモード変換が有利なことである。また、欠点は、受光側光ファイバの太い部分が長くなるので、取り回しが多少悪くなる(可撓性が多少低下する)ことである。
【0059】
<光コネクタ100Bについて>
図2Bに示す変形例Bの光コネクタ100Bは、基準光コネクタに対して、受光側光ファイバ20の最大コア径φ2maxを同等としテーパ部を設けないようにした(テーパ角θ2=0とした)ものである。
【0060】
このように、光源側光ファイバ10の最大コア径φ1maxと受光側光ファイバ20の最大コア径φ2maxとを同径にしつつ(さらに、コア部の端面11、21同士が過不足なく重なるようにしつつ)、受光側光ファイバ20のコア部22の太さを一定(ストレート光ファイバ)にすることにより、光結合させたときのこの光コネクタ100Bの光量損失を、上記受光側と光源側の光ファイバの形状を同等にした場合よりも光量損失を小さくすることができる。
【0061】
上記光コネクタ100Bの利点は、受光側光ファイバを通る光の光量減衰を小さくできることである。また、欠点は、受光側光ファイバ全体が太径となるので取り回しが悪くなる(可撓性が低下する)ことである。
【0062】
<光コネクタ100Cについて>
図2Cに示す変形例Cの光コネクタ100Cは、基準光コネクタに対して、テーパ角θ2および最小コア径φ2minを変更することなくテーパ部24の長さL2を長くして最大コア径φ2maxを大きくしたものである。
【0063】
このように、光源側光ファイバ10の最大コア径φ1maxに対して受光側光ファイバ20の最大コア径φ2maxを大きくすることにより、光結合させたときのこの光コネクタ100Cの光量損失を、より小さくすることができる。すなわち、受光側光ファイバ20は、光源側光ファイバ10から射出された光の取りこぼし(漏れ光)を少なくして入射させることができるので光量損失を少なくすることができる。
【0064】
上記光コネクタ100Cの利点は、光結合させたときの光の取りこぼし(漏れ光)を小さくできることと、光結合させたときのモード変換が有利であることである。また、欠点は、受光側光ファイバの太い部分が長くなるので、取り回しが多少悪くなる(可撓性が多少低下する)ことである。
【0065】
<光コネクタ100Dについて>
図2Dに示す変形例Dの光コネクタ100Dは、基準光コネクタに対して、テーパ部24の長さL2および最小コア径φ2minを同等にしつつ、最大コア径φ2maxを大きくした(テーパ角θ2を大きくした)ものである。
【0066】
このように、光源側光ファイバ10の最大コア径φ1maxに対して受光側光ファイバ20の最大コア径φ2maxを大きくすることにより、光結合させたときのこの光コネクタ100Cの光量損失をより小さくすることができる(光コネクタ100Cの場合と同様)。一方、テーパ角θ2を大きくしたことにより、テーパ部24内での光量損失が大きくなる。
【0067】
上記光コネクタ100Dの利点は、光結合させたときの光の取りこぼし(漏れ光)を小さくできることである。また、欠点は、モード変換のロスが大きくなることである。
【0068】
次に、本発明に関する実施例等についてさらに説明する。
【0069】
<BPM法による光源側光ファイバの計算機シミュレーション>
BPM法は、光導波路や光ファイバ中を伝搬する電場の様子を計算機シミュレーションする手法である。
【0070】
図3は、計算機シミュレーションの対象とする光源側光ファイバのコア部と、そのコア部を通る光線の様子を示す模式図である。また、図4は、横軸にテーパ率ε、縦軸にテーパ部を通して射出される光束の拡がり半角α(全角2α)を定めた座標面上に、光源側光ファイバにおけるテーパ率とそのテーパ率を持つテーパ部から射出される光束の拡がり角との関係を示す図である。
【0071】
ここでは、テーパ長L1が10mm、および20mmのときのFFP(ファーフィールドパターン:遠視野像)について計算した。
【0072】
図3、図4からわかるように、テーパ長を10mmとした場合に、テーパ率εが増大して3.8になるまでは、テーパ部14から射出される光束Ku1の拡がり半角αが、このテーパ率に反比例する。すなわち、拡がり角の減少効果が見られた。また、テーパ率εが6.5以上になると上記反比例関係が大きく崩れ、拡がり半角αの下限が2°程度で一定になることがわかる。
【0073】
なお、テーパ長を20mmにすると、テーパ率εが6.5以上の場合にわずかに拡がり角の下限が改善され、拡がり半角αが1.6°程度で一定となった。
【0074】
今回の実験はテーパ率εが3.8(φ1min=60μm、φ1max=230μm)のため、エタンデュ保存の限界に近いことがわかる。
【0075】
以下にこの計算機シミュレーションを行ったときの条件を示す。
【0076】
計算機シミュレーションには、OPTIWAVE社が開発した光導波路シミュレーションプログラムを用いた。
【0077】
入射光束Kn1:波長780nmでスポット径0.5μmのガウシアンビーム
ストレート部の長さ:40mm(20mm)
テーパ長L1:10mm、20mm
コア部の屈折率:1.45
クラッド部の屈折率:1.433
媒質屈折率:1.00
テーパ形状:exp(−1)
括弧内の数値はテーパ率εが6.5以上の場合を示す。
【0078】
なお、NA×コア径(コア部の径)は一定で、入射側においてファイバNA以上のクラッドモードは除去され、射出側のテーパ部においてNAが減少する。また、コア部12内を伝播する光線Leの軌道(光路)を図中に示す。
【0079】
<テーパ部を有する光ファイバの製作>
以下、テーパ部を有する光ファイバの製作について説明する。
【0080】
図5は太径の光ファイバを加熱延伸して細径の光ファイバに溶着して、テーパ部を有する光ファイバを形成する様子を示す図である。図5中の上段の図は、太径光ファイバを加熱延伸する様子を示している。中段の図は、加熱延伸された太径光ファイバFと細径光ファイバHとを融着する様子を示している。下段の図は、上記融着された両光ファイバのテーパ部の太径側を切断しその端面を研磨する様子を示している。
【0081】
テーパ部を有する光ファイバを製作する際には、太径光ファイバFと細径光ファイバHとを用意する。
【0082】
ここでは、太径光ファイバFは、NA:0.22、コア径:230μm、クラッド径:250μm、コア部の形成材料は石英からなるストレート光ファイバである。
【0083】
細径光ファイバHは、NA:0.22、コア径:60μm、クラッド径:80μm、コア部の形成材料は石英である
はじめに、太径光ファイバFを約1400°のセラミックヒータで加熱延伸してテーパ形状をなすテーパ部Ftを形成する。
【0084】
次に、上記テーパ部Ftの端面におけるコア部と細径光ファイバの端面におけるコア部とを位置合わせする。
【0085】
つづいて、太径光ファイバにおけるテーパ部の端面と細径光ファイバの端面とを融着し接合する
上記テーパ部の太径側を切断後、細径光ファイバに融着して一体化している上記テーパ部の端面を光学研磨し、FCコネクタヘ固定する。
【0086】
このようにして、テーパ長L=10mm、テーパ率ε=3.8であるテーパ部を有する光ファイバが得られる。
【0087】
なお、太径光ファイバ、および細径光ファイバのコア径やクラッド径は、上記の場合に限るものではない。
【0088】
一般的な光ファイバのFCコネクタ用フェルールの外周サイズはφ2.5mmなので、最大クラッド径はφ2.5mm以下とすることが望ましい。
【0089】
なお、テーパ長Lの最適値については後述する。
【0090】
<テーパ部から射出される光束の拡がり角の測定>
次に、テーパ部を有する光源側光ファイバから射出される光束の拡がり角の測定について説明する。
【0091】
図6は横軸に光軸となす角度、縦軸に光強度を示す座標面上にストレート光ファイバとテーパ光ファイバから射出される光束の光強度分布を比較して示す図である。
【0092】
ストレート光ファイバは、コア径が60μmで一定である。
【0093】
テーパ光ファイバは、テーパ部中の最も細くなるコア径(最小コア径)が60μmで、テーパ部の最も太くなるコア径(最大コア径)が230μmであり、テーパ率εは3.8である(ε=3.8≒230/60)。
【0094】
図6からわかるように、光強度分布のピーク値の5%の光強度となる角度を拡がり角としてNAを計算すると、テーパ光ファイバのNAは0.058、ストレート光ファイバのNAは0.169となり、テーパ光ファイバのNAはストレート光ファイバのNAに対して1/3に減少している。
【0095】
<光伝送効率の測定>
次に、光ファイバを光結合させたときの光伝送効率の測定について説明する。
【0096】
図7Aは、光源側光ファイバおよび受光側光ファイバの両方にストレート光ファイバを適用して光結合させたときの様子を示す図、図7Bは、光源側光ファイバおよび受光側光ファイバの両方にテーパ光ファイバを適用して光結合させたときの様子を示す図、図7Cは、光源側光ファイバにテーパ光ファイバを、受光側光ファイバにストレート光ファイバを採用して光結合させたときの様子を示す図である。
【0097】
また、図8は横軸に離間距離d、縦軸に光伝送効率Eを表す座標面上に、両光ファイバを光結合させたときの離間距離と光伝送効率との関係を示す図である。
【0098】
光源側光ファイバとして2種類を用意した。すなわち、テーパ光ファイバ(テーパ部の最小コア径60μm、最大コア径230μm)、および細径ストレート光ファイバ(コア径60μmで一定)を用意した。
【0099】
受光側光ファイバとして3種類を用意した。すなわち、テーパ光ファイバ(テーパ部の最小コア径60μm、最大コア径230μm)、細径ストレート光ファイバ(コア径60μmで一定)、および太径ストレート光ファイバ(コア径230μmで一定)を用意した。
【0100】
また、レーザ光の波長として2種類を用意した。すなわち波長405nm、および785nmのレーザ光を発するレーザ光源を用意した。
【0101】
測定のパラメータとする離間距離は、両光ファイバの端面を密着させた状態(離間距離d=0)から、離間距離が3mm(d=3mm)となる距離まで段階的に多数の離間距離を設定し測定した。
【0102】
上記各光ファイバを組み合わせて光結合させてなる光コネクタにレーザ光を通し、離間距離を段階的に変更しつつ光伝送効率を測定した。
【0103】
なお、光伝送効率の測定対象とする光コネクタの態様は、図7A〜7Cに示す3種類である。図7Aは、光源側が細径ストレート光ファイバSh、受光側も細径ストレート光ファイバShからなる光コネクタを示している。図7Bは、光源側がテーパ光ファイバTe、受光側もテーパ光ファイバTeからなる光コネクタを示している。図7Cは、光源側がテーパ光ファイバTe、受光側が太径ストレート光ファイバSfからなる光コネクタを示している。
【0104】
図8から読み取れるように、両光ファイバを細径ストレート光ファイバとしたとき(図7A参照)を基準にすると、光源側をテーパ光ファイバとし受光側を太径ストレート光ファイバとしたとき(図7C参照)の方が、いずれの離間距離および波長においても光伝送効率が高いことがわかる。
【0105】
また、上記と同様に両光ファイバを細径ストレート光ファイバとしたときを基準にすると、離間距離が0〜0.5mmの間においては、両光ファイバをテーパ光ファイバとした場合の方が光伝送効率が低いが、離間距離が0.5〜1.0mmまでの間においては、両光ファイバをテーパ光ファイバとした場合の方が光伝送効率が高くなる。
【0106】
<最適なテーパ部の長さ>
以下、光源側光ファイバに設けられたテーパ部の最適な長さについて検討した結果を説明する。
【0107】
図9は、横軸にテーパ角θ1、縦軸に光強度を表す座標面上に、光源側光ファイバのテーパ部の最小コア径、最大コア径を変化させることなくテーパ角のみを変化させたとき(すなわち、テーパ長のみを変化させたとき)にテーパ部から射出される光束の光強度分布をシミュレーションした結果を示す図である。
【0108】
図10は、横軸にテーパ角、縦軸に光強度を表す座標面上に、ストレート光ファイバとテーパ長が10mmのテーパ光ファイバとから射出される光束の光強度分布の実測値を比較して示す図である。なお、ストレート光ファイバのコア径とテーパ光ファイバのテーパ部の最小コア径とは同径である。
【0109】
図11は、横軸にテーパ長、縦軸にテーパ部から射出される光束の拡がり全角2αを表す座標面上にテーパ長の変化に応じて変動する光束の拡がり角のシミュレーション結果を示す図である。
【0110】
図12は、光源側光ファイバを通る光線の軌道(光路)をシミュレーションした結果を示す図である。ここで得られたシミュレーション結果は、ZEMAX社が開発した汎用光学設計ツールを用いた光線追跡シミュレーションにより得られたものである。
【0111】
この計算機シミュレーションや実測においては、テーパ部の最小コア径を60μm、最大コア径を230μmとした。したがって、このテーパ部のテーパ率εは3.8である。
【0112】
また、この光源側光ファイバへの光束の入射角(全角)は20°とし、この光ファイバのNAを0.23として計算した。また、図11に示す光束の拡がり全角2αは、図9に示すプロットにおいて63%の光強度が含まれる角度として算出した(図11中の「ビーム拡がり角(1D d63)(deg)」の記載参照)。
【0113】
上記図9、図11のシミュレーション結果から読み取れるように、テーパ率εが3.8のときに、テーパ部の長さを少なくとも2mm以上にすることが望ましく、10mm以上とするこのがより望ましい。言い換えると、テーパ長をテーパ率で除算した値(テーパ長/テーパ率の数式によって求まる値)を0.5mm以上とすることが望ましく、2.6mm以上とすることがさらに望ましいことがわかる。
【0114】
また、図9のシミュレーション結果と図10の実測結果とからわかるように、シミュレーション結果と実測結果とは概略一致している。
【0115】
<最適なテーパ率>
次に、光結合させる光ファイバに設けられるテーパ部の最適なテーパ率について検討した結果を説明する。
【0116】
図13は、横軸にテーパ率、縦軸に光伝送効率を表す座標面上に、両光ファイバのテーパ長を10mmに固定して光結合させたときのテーパ率と光伝送効率の関係をシミュレーションした結果を示す図である。
【0117】
図14は、光結合させた光ファイバを通る光線の軌道(光路)をシミュレーションした結果を示す図である。
【0118】
ここで得られたシミュレーション結果は、ZEMAX社が開発した汎用光学設計ツールを用いた光線追跡シミュレーションにより得られたものである。
【0119】
この計算機シミュレーションでは、光源側光ファイバおよび受光側光ファイバの両方についてテーパ部の最小コア径φ1min、φ2minを60μm、テーパ長L1、L2を10mmとし、両光ファイバのテーパ部の最大コア径φ1max、φ2maxを一致させつつその大きさを変化させたときの光伝送効率の変化を計算で求めた。なお、離間間隔dは500μmで一定とした。
【0120】
図13から読み取れるように、テーパ率が1のときに光伝送効率が0.67、テーパ率が2.2のときに光伝送効率が0.91となり、その後、テーパ率が大きくなるほど光伝送効率が低下することがわかる。
【0121】
<内視鏡システムへの適用>
次に、本発明の光コネクタを内視鏡システムに適用する場合について説明する。
【0122】
図15は、照明用の光源としてレーザ光源のみを用いる実施例Aの内視鏡システムを示す図、図16は、照明用の光源としてレーザ光源とキセノンランプを併用する実施例Bの内視鏡システムを示す図、図17は、照明用の光源としてレーザ光源のみを用いるが蛍光照明用のレーザ光源を含む実施例Cの内視鏡システムを示す図である。
【0123】
図15に示すように、実施例Aの内視鏡システムは、互いに異なる波長を発するレーザ光源から射出された各光束を光カプラで合波してなる合波光束を、光結合させた状態の本発明の光コネクタに通して内視鏡本体に伝送し、この内視鏡本体から上記合波光束(レーザ光)を照射するものである。
【0124】
また、図16に示すように、実施例Bの内視鏡システムは、レーザ光源から射出された光束を本発明の光コネクタに通して内視鏡本体に伝送するとともに、キセノンランプから発せられた光束(白色光)を通常コネクタ(バンドルファイバ)に通して内視鏡本体に伝送し、この内視鏡本体から上記伝送された各光束を個別に照射するものである。
【0125】
また、図17に示すように、実施例Cの内視鏡システムは、複数のレーザ光源から発せられた光束と、蛍光照明用のレーザ光源から発せられた光束とを光カプラで合波してなる合波光束を、光結合させた状態の本発明の光コネクタに通して内視鏡本体に伝送し、この内視鏡本体から上記合波光束(レーザ光)を照射するものである。
【0126】
なお、本発明は、上記実施の形態および各実施例に限定されず、発明の要旨を変更しない限りにおいて種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0127】
10 光源側光ファイバ
11 光源側光ファイバの端面
12 光源側光ファイバのコア部
14 光源側光ファイバのテーパ部
20 受光側光ファイバ
21 受光側光ファイバの端面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源側に配されるSI型の光源側光ファイバと、受光側に配されるSI型の受光側光ファイバとを備え、前記光源側光ファイバの端面と前記受光側光ファイバの端面とを対向配置させて前記両光ファイバを光結合させる光コネクタであって、
前記光源側光ファイバと前記受光側光ファイバとが着脱可能なものであり、
前記光源側光ファイバが、該光源側光ファイバの前記端面に近づくほどコア部の径が大きくなるように形成されたテーパ部を有するものであることを特徴とする光コネクタ。
【請求項2】
前記受光側光ファイバが、該受光側光ファイバの前記端面に近づくほどコア部の径が大きくなるように形成されたテーパ部を有するものであることを特徴とする請求項1記載の光コネクタ。
【請求項3】
前記受光側光ファイバが、前記コア部の断面の形状および大きさが一定となるように形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の光コネクタ。
【請求項4】
前記両光ファイバが光結合されたときに、前記光源側光ファイバの端面と前記受光側光ファイバの端面とが非接触で対向配置されるように構成されたものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の光コネクタ。
【請求項5】
前記光コネクタが、互いに異なる2種類以上の波長の光を通すものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の光コネクタ。
【請求項6】
前記光コネクタが、白色光を通すものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の光コネクタ。
【請求項7】
前記光源側光ファイバの前記端面におけるコア部の面積よりも前記受光側光ファイバの前記端面におけるコア部の面積の方が大きくなるように構成されたものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の光コネクタ。
【請求項8】
前記両光ファイバが光結合されたときに、前記受光側光ファイバの前記コア部の端面と前記光源側光ファイバの前記コア部の端面とが互いに過不足なく重なるように対向配置されるものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の光コネクタ。
【請求項9】
前記光源側光ファイバが、以下の条件式(1)を満足するものであることを特徴とする請求項1記載の光コネクタ。
0.5≦L1/ε1 ・・・(1)
ただし、
L1:光源側光ファイバのテーパ部の長さ
ε1:光源側光ファイバのテーパ率
【請求項10】
前記受光側光ファイバが、以下の条件式(2)を満足するものであることを特徴とする請求項2記載の光コネクタ。
0.5≦L2/ε2 ・・・(2)
L2:光源側光ファイバのテーパ部の長さ
ε2:光源側光ファイバのテーパ率
【請求項11】
請求項1から10に記載の光コネクタと、光源と、内視鏡本体とを備え、光源から発せられた光束を前記光コネクタに通して前記内視鏡本体へ伝送し、該内視鏡本体から前記光束が射出されるように構成されたものであることを特徴とする内視鏡システム。
【請求項1】
光源側に配されるSI型の光源側光ファイバと、受光側に配されるSI型の受光側光ファイバとを備え、前記光源側光ファイバの端面と前記受光側光ファイバの端面とを対向配置させて前記両光ファイバを光結合させる光コネクタであって、
前記光源側光ファイバと前記受光側光ファイバとが着脱可能なものであり、
前記光源側光ファイバが、該光源側光ファイバの前記端面に近づくほどコア部の径が大きくなるように形成されたテーパ部を有するものであることを特徴とする光コネクタ。
【請求項2】
前記受光側光ファイバが、該受光側光ファイバの前記端面に近づくほどコア部の径が大きくなるように形成されたテーパ部を有するものであることを特徴とする請求項1記載の光コネクタ。
【請求項3】
前記受光側光ファイバが、前記コア部の断面の形状および大きさが一定となるように形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の光コネクタ。
【請求項4】
前記両光ファイバが光結合されたときに、前記光源側光ファイバの端面と前記受光側光ファイバの端面とが非接触で対向配置されるように構成されたものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の光コネクタ。
【請求項5】
前記光コネクタが、互いに異なる2種類以上の波長の光を通すものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の光コネクタ。
【請求項6】
前記光コネクタが、白色光を通すものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の光コネクタ。
【請求項7】
前記光源側光ファイバの前記端面におけるコア部の面積よりも前記受光側光ファイバの前記端面におけるコア部の面積の方が大きくなるように構成されたものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の光コネクタ。
【請求項8】
前記両光ファイバが光結合されたときに、前記受光側光ファイバの前記コア部の端面と前記光源側光ファイバの前記コア部の端面とが互いに過不足なく重なるように対向配置されるものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の光コネクタ。
【請求項9】
前記光源側光ファイバが、以下の条件式(1)を満足するものであることを特徴とする請求項1記載の光コネクタ。
0.5≦L1/ε1 ・・・(1)
ただし、
L1:光源側光ファイバのテーパ部の長さ
ε1:光源側光ファイバのテーパ率
【請求項10】
前記受光側光ファイバが、以下の条件式(2)を満足するものであることを特徴とする請求項2記載の光コネクタ。
0.5≦L2/ε2 ・・・(2)
L2:光源側光ファイバのテーパ部の長さ
ε2:光源側光ファイバのテーパ率
【請求項11】
請求項1から10に記載の光コネクタと、光源と、内視鏡本体とを備え、光源から発せられた光束を前記光コネクタに通して前記内視鏡本体へ伝送し、該内視鏡本体から前記光束が射出されるように構成されたものであることを特徴とする内視鏡システム。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図15】
【図16】
【図17】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図15】
【図16】
【図17】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−194448(P2012−194448A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59406(P2011−59406)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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