説明

光コネクタキット

【課題】多種類にわたる光コネクタ部品を1種のケースに収納した光コネクタキットを提供する。
【解決手段】光ファイバ付きフェルール10と、挿通部品20と、光コネクタを構成するすべてのコネクタ部品を収納しておく収納ケースとを備え、挿通部品20は、前記光ファイバに挿通する順序にしたがって1列に配置されており、収納ケースは、下部ハウジングと上部ハウジングとが開閉可能に構成され、下部ハウジングの両側壁に、光ファイバを挿通可能な光ファイバ挿通口をそれぞれ備え、下部ハウジング部と上部ハウジング部の両部に挿通部品を収納する挿通部品収容部を有し、挿通部品を下部ハウジング部と上部ハウジング部で挟み込むことにより保持する光コネクタキット1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタを構成する部品が揃い、現地において光ファイバの先端に光コネクタを取り付ける作業を容易にした光コネクタキットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ファイバによるアクセス網構築や構内光配線等を実現するため、製造工場と比べて作業性に制約のある現地で、光ファイバの先端に光コネクタを取付けることが要求されている。
【0003】
一般に、光コネクタは部品点数が多く、光ファイバの先端に光コネクタを取付ける際には、まず、必要なコネクタ部品を1個づつ手作業により光ファイバに挿通しなければならない。
【0004】
そのため、特に現地での取付け作業の場合は、光ファイバにコネクタ部品を入れ忘れたり、コネクタ部品の順番や向きを間違えたりする作業ミスが発生し易く、単純な作業であるにも拘らずコネクタ部品の挿通に手間がかかり、作業性が悪い。
【0005】
従来から、このような事情を解消するものとして、光ファイバの先端に光コネクタを取付ける際にまず光ファイバに予め挿通しておく複数のコネクタ部品を、挿通する順序に並べてケースに収納したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
このような光コネクタ部品ケースを用いることで、光ファイバへのコネクタ部品の入れ忘れや、コネクタ部品の順番や向きを間違えたりする作業ミスの発生が未然に解消されることが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−25132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のような従来の光コネクタ部品ケースは、多種類にわたる光コネクタに対し、それぞれの種類に適した光コネクタ部品ケースが必要となり、光コネクタ部品ケースも光コネクタ部品同様に多種類になってしまい、製造設備投資、在庫管理などが複雑となりコスト上昇の一因となっていた。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、多種類にわたる光コネクタ部品を1種のケースに収納した光コネクタキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る光コネクタキットは、短尺光ファイバがフェルールに予め装着され端面研磨処理された光ファイバ付きフェルールと、前記短尺光ファイバの後端と、別の光ファイバの先端とが融着接続されるのに先だって、当該光ファイバに予め挿通しておく複数のコネクタ部品(挿通部品)と、前記光ファイバ付きフェルールおよび前記挿通部品を含む、光コネクタを構成するすべてのコネクタ部品を収納しておく収納ケースと、を備え、前記挿通部品は、前記光ファイバに挿通する順序にしたがって1列に配置されており、
前記収納ケースは、下部ハウジングと上部ハウジングとが開閉可能に構成され、前記下部ハウジングの両側壁に、前記光ファイバを、前記下部ハウジングの一方の外側から前記挿通部品を経て当該下部ハウジングの他方の外側まで挿通可能な光ファイバ挿通口をそれぞれ備え、前記下部ハウジング部と、前記上部ハウジング部の両部に、前記挿通部品を収納する挿通部品収容部を有し、前記挿通部品は前記挿通部品収容部に収納され、前記下部ハウジング部と前記上部ハウジング部で挟み込むことにより前記挿通部品が保持されることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2に係る光コネクタキットは、請求項1記載の光コネクタキットにおいて、前記挿通部品収容部間には、挿通する光ファイバをガイドするテーパ形状を有していることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項3に係る光コネクタキットは、請求項1または請求項2記載の光コネクタキットにおいて、前記収納ケースは、周囲の側壁により隆起した底面を有する下部ハウジングと、蓋面を有する上部ハウジングとが、開閉可能に連結して構成され、前記下部ハウジングは、前記側壁の下部周囲にフランジを備え、前記上部ハウジングは周囲部にフランジを備え、前記下部ハウジングと前記上部ハウジングに、互いに係合可能な下係合部と上係合部とを備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項4に係る光コネクタキットは、請求項3記載の光コネクタキットにおいて、前記下部ハウジングの前記フランジと前記上部ハウジングの前記フランジは、前記収納ケースを閉じたとき互いに密着しないことで、前記収納ケースを開けるときの摘みとなるタブを備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項5に係る光コネクタキットは、請求項4記載の光コネクタキットにおいて、前記下部ハウジングの前記底面に前記光ファイバ付きフェルール収容部、前記挿通部品収容部、前記補強スリーブ収容部、および前記他部品収容部が、いずれも下方へ膨出するように形成されており、前記挿通部品収容部の膨出深さが、各収納部品高さよりも浅く形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以上のように、短尺光ファイバがフェルールに予め装着され端面研磨処理された光ファイバ付きフェルールと、前記短尺光ファイバの後端と、別の光ファイバの先端とが融着接続されるのに先だって、当該光ファイバに予め挿通しておく複数のコネクタ部品(挿通部品)と、前記光ファイバ付きフェルールおよび前記挿通部品を含む、光コネクタを構成するすべてのコネクタ部品を収納しておく収納ケースと、を備え、前記収納ケースは、前記光ファイバ付きフェルールおよび前記挿通部品を含む、前記融着接続に使用されるコネクタ部品(融着接続使用部品)が取り出し可能な状態で、他のコネクタ部品を収納状態に保持できるように構成したので、現地への携行に便利なだけでなく、光コネクタを構成する一部のコネクタ部品の携行を忘れるような心配がない。
【0016】
また、光コネクタを構成するすべてのコネクタ部品を収納しておく収納ケースは、多種類にわたる光コネクタ種類を1種の収納ケースにて収納可能なため、設備投資、在庫管理などの負担が軽減され、光コネクタキットの低価格が可能となる。
【0017】
また、短尺光ファイバがフェルールに予め装着され端面研磨処理された光ファイバ付きフェルールを採用したので、現地において、短尺光ファイバの後端と光ファイバの先端とを融着接続する融着接続作業が容易である。
【0018】
さらに、収納ケースは、融着接続使用部品が取り出し可能な状態で、他のコネクタ部品を収納状態に保持できるので、融着接続作業終了後に使用する他のコネクタ部品が、融着接続作業中に収納ケースから外れて紛失する虞がない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による光コネクタキットの一実施形態を示し、すべてのコネクタ部品を収納ケースに収納して閉じた状態を示す平面図である。
【図2】図1の光コネクタキットを部分開放状態まで開いた状態を示す平面図である。
【図3】図1の光コネクタキットを全開放状態まで開いた状態を示す平面図である。
【図4】コネクタ部品を一切収納していない空の収納ケースを全開放状態まで開いた状態を示す平面図である。
【図5】図4の収納ケースの右側面図である。
【図6】本発明による光コネクタキットに用いる光ファイバ付きフェルールの一実施形態を示す断面図である。
【図7】図6の光ファイバ付きフェルールに用いる短尺光ファイバの各部の長さを示す断面図である。
【図8】本発明による光コネクタキットを組み立てた光コネクタの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【実施例】
【0021】
図面は本発明による光コネクタキットの一実施形態を示し、図1は、すべてのコネクタ部品を収納してある収納ケースを閉じた状態を示す平面図、図2は、収納ケースを部分開放状態まで開いた状態を示す平面図、図3は、収納ケースを全開放状態まで開いた状態を示す平面図、図4は、コネクタ部品を一切収納していない空の収納ケースを全開放状態まで開いた状態を示す平面図である。
【0022】
この光コネクタキット1は、短尺光ファイバがフェルールに予め装着され端面研磨処理された光ファイバ付きフェルール10を含む、光コネクタを構成するすべてのコネクタ部品が、収納ケース5に収納されたものである。
【0023】
図6に示すように、光ファイバ付きフェルール10は、キャピラリ12と、キャピラリ12の後端部を保持するフランジ部15とを備えたフェルール11を備えている。そして、このフェルール11に、先端に被覆を除去した裸光ファイバ部分18aを有する短尺光ファイバ18が装着され、端面研磨処理されたものである。
【0024】
キャピラリ12には、短尺光ファイバ18の裸光ファイバ部分18aを収容する微細孔13が、先端から後端に向けて順に形成されている。
【0025】
フランジ部15には、被覆光ファイバ18bを収納する被覆部通孔16が形成されている。
【0026】
短尺光ファイバ18は、裸光ファイバ部分18aがキャピラリ12の微細孔13に収納固着され、かつ、裸光ファイバ18aに続く被覆光ファイバ18bが被覆部通孔16に収納固着されたとき、フランジ部15の被覆部通孔16から後方へ所要の接続余長18cだけ延出している。
【0027】
フランジ部15から後方へ延出する接続余長18cの長さは、この接続余長18cの後端と、この後端が光接続される別の光ファイバ101(図1参照)の先端とを光接続する、図示しない融着接続機器が要求する長さを少なくとも有する。
【0028】
そして、短尺光ファイバ18の接続余長18cは、被覆光ファイバ18bのままにしておいてもよいが、図6、図7に示すように、後端部分の被覆を除去した状態にしておくことも可能である。
【0029】
光コネクタキット1に収納されることで、短尺光ファイバ18が常温常湿下に長期保管される場合の強度劣化対策として、また、静疲労特性の改善を目的として、短尺光ファイバ18の外周には、金属またはカーボンのコーティング、すなわち、メタルコートやカーボンコートなどのハーメチックコーティングが施されることが望ましい。
【0030】
このような光ファイバ付きフェルール10の他、光コネクタを構成するコネクタ部品には、図3に示すように、短尺光ファイバ18の後端と、光ファイバ101の先端とを融着接続する前に、光ファイバ101に予め挿通しておく複数のコネクタ部品(挿通部品)20が含まれる。
【0031】
すなわち、挿通部品20には、図3に示すように、ブーツ21、スリーブ22、ストップリング23、クリップ24およびスプリング25が含まれる。これらの光ファイバ付きフェルール10および挿通部品20に、補強スリーブ28を加えたものが、融着接続に使用されるコネクタ部品(融着接続使用部品)である。
【0032】
補強スリーブ28は、短尺光ファイバ18の後端と光ファイバ101の先端とを融着接続したとき、その融着接続部を補強するものである。そのため、補強スリーブ28は、金属等の補強部材および熱可塑性樹脂を内包した熱収縮性チューブで構成される。
【0033】
また、光コネクタを構成するコネクタ部品には、融着接続使用部品10,20,28以外に、他のコネクタ部品(他部品)30が含まれる。すなわち、他のコネクタ部品(他部品)30には、図3に示すように、プラグフレーム31およびキャップ32が含まれる。
【0034】
上記のような、光コネクタを構成するすべてのコネクタ部品が収納される収納ケース5には、融着接続の際に光ファイバ付きフェルール10を保持する保持部材40も収納される。
【0035】
保持部材40は、光ファイバ付きフェルール10のフェルール11が先端から挿入されるキャップ41と、キャップ41の底部から延びた牽引部42とを備えている。保持部材40は、キャップ41にフェルール11が挿入されることで、光ファイバ付きフェルール10と一体化する。この状態で、光ファイバ付きフェルール10の短尺光ファイバ18の後端と、光ファイバ101の先端とを融着接続したのち、保持部材40は、フェルール11から取り外されるものである。
【0036】
図5に示すように、収納ケース5は、周囲の側壁52により隆起した底面51を有する下部ハウジング50と、蓋面56を有する上部ハウジング55とが、開閉可能に連結して構成されている。
【0037】
下部ハウジング50は、側壁52の下部周囲にフランジ53を備え、上部ハウジング55は、蓋面56にフランジ57を備えている。そして、下部ハウジング50の下係合部95、97と、上部ハウジング55の上係合部96、98を係合可能になっている。
【0038】
また、収納ケース5は、下部ハウジング50のフランジ53と、上部ハウジング55のフランジ57が、収納ケース5を閉じたとき互いに密着しないことで、収納ケース5を開けるときの摘みとなるタブ54,58を備えている。
【0039】
そして、収納ケース5には、下部ハウジング50の底面51に、光ファイバ付きフェルール10を収納しておく光ファイバ付きフェルール収容部60と、光ファイバ付きフェルール収容部60に装着された保持部材40を収納しておく保持部材収容部(下部)65と、挿通部品20を挿通順序にしたがって1列に並べて収納しておく挿通部品収容部(下部)70と、補強スリーブ28を収納しておく補強スリーブ収容部(下部)78と、他のコネクタ部品(他部品)30を収納しておく他部品収容部80とが、下方へ膨出するように形成されている。
【0040】
光ファイバ付きフェルール収容部60は、光ファイバ付きフェルール10のフェルール11が収納されるフェルール収容部(下部)61と、フェルール収容部(下部)61にフェルール11が収納されたとき、フェルール11後端から延出した光ファイバ部分(接続余長)18cの周囲に空間を形成する光ファイバ保護部62とを備えている。
この光ファイバ保護部62により、光ファイバ付きフェルール10は、光ファイバ付きフェルール収容部60に収納されたとき、フェルール11後端から延出していることで強度的に何も保護されていない接続余長18cが、空間をバリアとして保護されることになる。
【0041】
保持部材収容部(下部)65は、光ファイバ付きフェルール10のフェルール11が挿入された保持部材40のキャップ41が収納されるキャップ収容部66と、キャップ41の底部から延びた牽引部42が収納される牽引部収容部67とを備えている。
【0042】
また、保持部材収容部(下部)65は、保持部材収容部(下部)65に収納されている保持部材40が取り出されるとき、保持部材40に指を掛けるための指掛け部68を有する。すなわち、指掛け部68に指を差し込んで保持部材40の牽引部42を引き上げることで、保持部材40およびこれと一体になった光ファイバ付きフェルール10が、収納ケース5から取り外されるようになっている。
【0043】
挿通部品収容部(下部)70は、ブーツ21が収納されるブーツ収容部(下部)71と、スリーブ22が収納されるスリーブ収容部(下部)72と、ストップリング23が収納されるストップリング収容部(下部)73と、クリップ24が収納されるクリップ収容部(下部)74と、スプリング25が収納されるスプリング収容部(下部)75とを備えている。
【0044】
また、収納ケース5は、挿通部品収容部70の延長線上における収納ケース5の両側壁に、光ファイバ101を、収納ケース5の一方の外側から、1列に並べて収納されたコネクタ部品(挿通部品)20(ブーツ21、スリーブ22、ストップリング23、クリップ24、スプリング25)を通して収納ケース5の他方の外側まで挿通可能な光ファイバ挿通口76a,76bを備えている。
【0045】
補強スリーブ収容部(下部)78は、補強スリーブ28が収納されるものである。そして、補強スリーブ収容部(下部)78は、補強スリーブ収容部(下部)78に収納されている補強スリーブ28が取り出されるとき、補強スリーブ28に指を掛けるための指掛け部79を有する。すなわち、指掛け部79に指を差し込んで補強スリーブ28を引き上げることで、補強スリーブ28が、収納ケース5から取り外されるようになっている。
【0046】
他部品収容部80は、プラグフレーム31が収納されるプラグフレーム収容部81と、キャップ32が収納されるキャップ収容部85とを備えている。そして、プラグフレーム収容部81は、プラグフレーム収容部81に収納されているプラグフレーム31が取り出されるとき、プラグフレーム31に指を掛けるための指掛け部82を有する。すなわち、指掛け部82に指を差し込んでプラグフレーム31を引き上げることで、プラグフレーム31が、収納ケース5から取り外されるようになっている。
【0047】
また、キャップ収容部85は、キャップ収容部85に収納されているキャップ32が取り出されるとき、キャップ32に指を掛けるための指掛け部86を有する。すなわち、指掛け部86に指を差し込んでキャップ32を引き上げることで、キャップ32が、収納ケース5から取り外されるようになっている。
【0048】
このような収納ケース5は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂等の適宜の合成樹脂で成型することができる。その場合、例えば透明にすることで、収納ケース5を開けずにその外側から、内部に収納されているすべてのコネクタ部品10,20,28,30を確認することが可能である。
【0049】
また、収納ケース5は、図1〜図3に示すように、下部ハウジング50と上部ハウジング55との連結部分から離れた側に、融着接続使用部品10,20,28を収納しておく第1領域91を備え、連結部分に近い側に、他のコネクタ部品30を収納しておく第2領域92を備えている。
【0050】
そして、収納ケース5の上部ハウジング55は、第1領域91と第2領域92との境界部分で屈曲可能に構成されている。すなわち、上部ハウジング55の所定位置には、蓋面56の一部にかけて、多数の小孔94が形成されている。
【0051】
そのため、収納ケース5の上部ハウジング55は、多数の小孔94に沿って折り曲げることで、第1領域91だけを開放できるようになっている。したがって、収納ケース5は、下部ハウジング50と上部ハウジング55とが開閉可能に構成され、上部ハウジング55は、下部ハウジング50の融着接続使用部品の収納領域(第1領域91)を開放する部分開放状態と、下部ハウジング50の全領域を開放する全開放状態とを、切り換え可能に構成されている。
【0052】
さらに、収納ケース5は、下部ハウジング50の第2領域92と、上部ハウジング55の第2領域92とに、互いに係合可能な下係合部95と、上係合部96とを備えている(図1、図2、図4参照)。
【0053】
下係合部95および上係合部96は、収納ケース5が閉鎖状態にあるとき互いに係合した状態にあり(図1参照)、上部ハウジング55が部分開放状態まで開けられたときも係合状態を維持し(図2参照)、上部ハウジング55が全開放状態まで開けられるとき、係合状態が外れることで全開放状態を可能にするものである。
【0054】
なお、収納ケース5は、上記のように、第1領域91のみを開放する部分開放状態と、第1領域91および第2領域92をすべて開放する全開放状態だけでなく、これらを含む3段階以上の開放状態を切り換え可能に構成することも可能である。
【0055】
また、収納ケース5の上部ハウジング55には挿通部品収容部(上部)70’、補強スリーブ収容部(上部)78’、フェルール収容部(上部)61’、保持部材収容部(上部)65’が備わっている。
【0056】
挿通部品収容部(上部)70’は、ブーツ21が収容されるブーツ収容部(上部)71’と、スリーブ22が収容されるスリーブ収容部(上部)72’と、ストップリング23が収容されるストップリング収容部(上部)73’と、クリップ24が収容されるクリップ収容部(上部)74’と、スプリング25が収容されるスプリング収容部(上部)75’とを備えている。
【0057】
現地で使用する光コネクタは、例えば融着長5mm用の光コネクタのストップリング最外径は、例えばφ4.5mmであり、融着長10mm用の光コネクタのストップリング最外径は、例えばφ6.3mmとなるなど、光コネクタの種類は多種にわたる。この2つのストップリングの最外径には1.8mmの差があり、例えば最外径φ6.3mmに適した形状の収容部とすると、最外径φ4.5mmのストップリングに、光ファイバを挿通することが困難となる。しかし、本発明のように、下部ハウジングの収容部と、上部ハウジングの収容部で部品を保持することにより、位置ズレの差は半分の0.9mmとなり、また、光ファイバを挿通する中心は保たれるため、外径の異なる2つの部品を同一の収容部に収納しても、容易に光ファイバを挿通することができるようになっている。
【0058】
また、上部ハウジングを開放した状態において、上部ハウジングの前記挿通部品押さえ部の部分が各部品ともに、下部ハウジングより上方に剥き出しとなるため、各挿通部品は、各挿通部品収容部に指掛けがなくても、各挿通部品を容易に取出すことができる。
【0059】
また、挿通部品収容部(下部)70の各部品収容部の両サイドには挿通光ファイバ101をガイドするためのテーパ部111が備えられている。そして、挿通部品収容部(上部)70’の各部品押さえ部の両サイドにも挿通光ファイバ101をガイドするためのテーパ部111’が備えられている。この挿通部品をサンドイッチする構造、及び、挿通光ファイバ101をガイドする構造により、収納ケース5には異なる多種の光コネクタキットを1種の収納ケースに収納することが可能となり、光コネクタキットの価格を低減することが可能となる。
【0060】
次に、上記の光コネクタキット1を用いて光コネクタを組み立てる光コネクタの組立方法について説明する。
【0061】
まず、光コネクタキット1には、光ファイバ付きフェルール収容部60に光ファイバ付きフェルール10が収納され、光ファイバ付きフェルール10と一体になった保持部材40が保持部材収容部(下部)65に収納され、挿通部品収容部(下部)70に挿通部品20(ブーツ21、スリーブ22、ストップリング23、クリップ24、スプリング25)が収納され、補強スリーブ収容部(下部)78に補強スリーブ28が収納され、他部品収容部80に他のコネクタ部品(他部品)30(プラグフレーム31、キャップ32)が収納されている(図3、図4参照)。
【0062】
そして、下部ハウジング50の下係合部95、97と、上部ハウジング55の上係合部96、98が係合可能になっている(図1参照)。
このとき、下部ハウジング50の第2領域92に設けた下係合部95と、上部ハウジング55の第2領域92に設けた上係合部96とが、互いに係合した状態にある。
【0063】
このように収納ケース5が閉じた状態において、ブーツ21後端近傍の光ファイバ挿通口76aから光ファイバ101を収納ケース5の内部へ差し込み、反対側の光ファイバ挿通口76bから収納ケース5の外部へ突き出す。これにより、収納ケース5に1列に並べて収納された挿通部品20は、その並べられた順序(ブーツ21、スリーブ22、ストップリング23、クリップ24、スプリング25の順)にしたがって光ファイバ101に挿通される。
【0064】
つぎに、収納ケース5のタブ54,58に指を掛けて上部ハウジング55を持ち上げる。このとき、上部ハウジング55は、第2領域92に設けた上係合部96が、下部ハウジング50の第2領域92に設けた下係合部95と互いに係合した状態にあるため、第2領域92の部分は、持ち上がらないように保持される。
【0065】
すると、タブ58に指を掛けて持ち上げようとする力と、上下の係合部96,95により持ち上がらないように保持される力とによって、上部ハウジング55は、第1領域91と第2領域92との境界部分の多数の小孔94に沿って折れ曲がる。これにより、収納ケース5は、第2領域92を閉鎖状態に維持したまま、第1領域91のみが開放される(図2参照)。
【0066】
これにより、第1領域91に配置されている融着接続使用部品10,20,28は、収納ケース5から取り出し可能になる一方、第2領域92に配置されている他のコネクタ部品30は、依然として閉鎖状態にある収納ケース5内に保持される。
【0067】
そこで、保持部材40と一体になった光ファイバ付きフェルール10を、収納ケース5から取り出し、適宜の融着接続機器を使って、光ファイバ付きフェルール10の短尺光ファイバ18後端と、光ファイバ101先端とを融着接続する。
【0068】
この融着接続は、まず、短尺光ファイバ18の接続余長18cの後端所要長部分の被覆と、光ファイバ101の先端所要長部分の被覆とを除去する。つぎに、短尺光ファイバ18の後端と、光ファイバ101の先端とを相互に対向配置させ、コアまたはクラッドの位置を基準として調心した後に行う。
【0069】
この場合、短尺光ファイバ18の接続余長18cの後端部分の被覆を予め除去してあれば、その被覆除去の手間が省けるだけ、作業時間の短縮が図れる。そして、融着接続部に、金属等の補強部材および熱可塑性樹脂を内包した熱収縮性チューブで構成される補強スリーブ28を取り付けて補強する。
【0070】
その後、収納ケース5の上部ハウジング55をさらに持ち上げて、上下の係合部96,95の係合を外し、第2領域92まで開放する(図3参照)。これにより、第2領域92に配置されている他のコネクタ部品(他部品)30が、収納ケース5から取り出し可能になる。
【0071】
そして、光ファイバ101に挿通されている挿通部品20(ブーツ21、スリーブ22、ストップリング23、クリップ24、スプリング25)と、他のコネクタ部品(他部品)30(プラグフレーム31、キャップ32)を、所定の組立順序にしたがって組み立てる。これにより、図8に示すように、光コネクタ100が得られる。
【0072】
以上、本発明の光コネクタキットについて、それを用いた光コネクタ組立方法とともに具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の設計変更が可能である。
【0073】
例えば、図示は省略したが、収納ケース5の下部ハウジング50と上部ハウジング55との開閉機構は、ヒンジ方式、嵌めこみ方式など従来公知の機構を任意に採用することができる。その場合も、収納ケース5の部分開放、全開放は、任意に実現することが可能である。また、上記の実施形態ではLC型コネクタ部品を例にして説明したが、本発明はMU型、SC型、FC型等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 光コネクタキット
5 収納ケース
10 光ファイバ付きフェルール
11 フェルール
12 キャピラリ
13 微細孔
15 フランジ部
16 被覆部通孔
18 短尺光ファイバ
18a 裸光ファイバ部分
18b 被覆光ファイバ
18c 接続余長(延出した光ファイバ部分)
20 コネクタ部品(挿通部品)
21 ブーツ
22 スリーブ
23 ストップリング
24 クリップ
25 スプリング
28 補強スリーブ
30 他のコネクタ部品(他部品)
31 プラグフレーム
32 キャップ
40 保持部材
41 キャップ
42 牽引部
50 下部ハウジング
51 底面
52 側壁
53 フランジ
54 タブ
55 上部ハウジング
56 蓋面
57 フランジ
58 タブ
60 光ファイバ付きフェルール収容部
61 フェルール収容部(下部)
61’フェルール収容部(上部)
62 光ファイバ保護部
65 保持部材収容部(下部)
65’保持部材収容部(上部)
66 キャップ収容部
67 牽引部収容部
68 指掛け部
70 挿通部品収容部(下部)
70’挿通部品収容部(上部)
71 ブーツ収容部(下部)
71’ブーツ収容部(上部)
72 スリーブ収容部(下部)
72’スリーブ収容部(上部)
73 ストップリング収容部(下部)
73’ストップリング収容部(上部)
74 クリップ収容部(下部)
74’クリップ収容部(上部)
75 スプリング収容部(下部)
75’スプリング収容部(上部)
76a,76b 光ファイバ挿通口
78 補強スリーブ収容部(下部)
78’補強スリーブ収容部(上部)
79 指掛け部
80 他部品収容部
81 プラグフレーム収容部
82 指掛け部
85 キャップ収容部
86 指掛け部
91 第1領域
92 第2領域
94 多数の小孔
95,97 下係合部
96,98 上係合部
100 光コネクタ
101 光ファイバ
111,111’ テーパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短尺光ファイバがフェルールに予め装着され端面研磨処理された光ファイバ付きフェルールと、前記短尺光ファイバの後端と、別の光ファイバの先端とが融着接続されるのに先だって、当該光ファイバに予め挿通しておく複数のコネクタ部品(挿通部品)と、前記光ファイバ付きフェルールおよび前記挿通部品を含む、光コネクタを構成するすべてのコネクタ部品を収納しておく収納ケースと、を備え、
前記挿通部品は、前記光ファイバに挿通する順序にしたがって1列に配置されており、
前記収納ケースは、下部ハウジングと上部ハウジングとが開閉可能に構成され、
前記下部ハウジングの両側壁に、前記光ファイバを、前記下部ハウジングの一方の外側から前記挿通部品を経て当該下部ハウジングの他方の外側まで挿通可能な光ファイバ挿通口をそれぞれ備え、
前記下部ハウジング部と、前記上部ハウジング部の両部に、前記挿通部品を収納する挿通部品収容部を有し、前記挿通部品は前記挿通部品収容部に収納され、前記下部ハウジング部と前記上部ハウジング部で挟み込むことにより前記挿通部品が保持されることを特徴とする光コネクタキット。
【請求項2】
前記挿通部品収容部間には、挿通する光ファイバをガイドするテーパ形状を有していることを特徴とする請求項1記載の光コネクタキット。
【請求項3】
前記収納ケースは、周囲の側壁により隆起した底面を有する下部ハウジングと蓋面を有する上部ハウジングとが、開閉可能に連結して構成され、
前記下部ハウジングは、前記側壁の下部周囲にフランジを備え、
前記上部ハウジングは、周囲部にフランジを備え、
前記上部ハウジングと前記下部ハウジングとに、互いに係合可能な下係合部と、上係合部とを備えたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の光コネクタキット。
【請求項4】
前記下部ハウジングの前記フランジと前記上部ハウジングの前記フランジは、前記収納ケースを閉じたとき互いに密着しないことで、前記収納ケースを開けるときの摘みとなるタブを備えたことを特徴とする請求項3記載の光コネクタキット。
【請求項5】
前記下部ハウジングの前記底面に前記光ファイバ付きフェルール収容部、前記挿通部品収容部、前記補強スリーブ収容部、および前記他部品収容部が、いずれも下方へ膨出するように形成されており、前記挿通部品収容部の膨出深さが、各収納部品高さよりも浅く形成されていることを特徴とする請求項4記載の光コネクタキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−185975(P2011−185975A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47875(P2010−47875)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000147350)株式会社精工技研 (154)
【Fターム(参考)】