説明

光コネクタケース

【課題】それぞれ光ケーブルに装着された光コネクタ同士の接続部を保護することができるとともに、戸内の壁際等にも設置可能な光コネクタケースを提供する。
【解決手段】上流側の光ケーブル11aに取り付けられている上流側光コネクタ20aと下流側の光ケーブル11bに取り付けられている下流側光コネクタ20bを対向して接続した状態で収容する光コネクタケース10であって、上流側光コネクタ20a及び下流側光コネクタ20bの全体を収容するベース30とカバー40とを有し、ベース30は、接続した状態の上流側光コネクタ20a及び下流側光コネクタ20bに沿う直線状の細長板形状を有し、少なくとも上流側光コネクタ20a及び下流側光コネクタ20bを配置する部分であるベース部31の上面31a及びベース部31の下面31bが平坦である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方側の光ケーブルに取り付けられている光コネクタと、他方側の光ケーブルに取り付けられている光コネクタとを接続状態で保護する光コネクタケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの急速な普及により高速データ通信の要求が高まっており、各家庭まで光ファイバを布設するFTTH(Fiber To The Home)のサービスが拡大している。そこで、一般家庭内においても光ケーブルが配線されることが見込まれている。例えば、幹線系の光ケーブルから分岐して戸内に引き込まれた上流側のインドア型光ケーブルを戸内の壁面に沿わせて配線し、戸内の光通信機器側(下流側)の光ケーブルと接続することが行われている。
【0003】
このような接続箇所では、光コネクタ同士の接続部を保護する部材として、一方側の光コネクタと余長を収納する光コネクタローゼット(例えば、特許文献1参照)が知られている。
この特許文献1に記載の保護部材は、円盤状のケースであって、ベースとカバーとで構成される筐体と、その内部にインカー部材を備えており、一方側光コネクタと他方側光コネクタとを接続する光コネクタ接続部及び光ケーブルの余長を巻いた状態で収容することができるようになっている。また、この保護部材では、一方側光コネクタとして、漏洩光を遮断するシャッター機能を有している。
【0004】
【特許文献1】特開2006−98610号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載の保護部材は円盤状であるため、光コネクタと比較して幅などが大きくなっている。そのため、戸内で配線する際に、壁際等狭い箇所の設置が困難であり、設置箇所に制約が生じてしまう。
また、他方側(下流側)光コネクタが露出しているため、接続部を完全に保護することができず、ユーザの接触等、光コネクタへの外的要因により接続品質が低下するおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、それぞれ光ケーブルに装着された光コネクタ同士の接続部を保護することができるとともに、戸内の壁際等にも設置可能な光コネクタケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することのできる本発明に係る光コネクタケースは、一方側の光ケーブルに取り付けられている一方側光コネクタと他方側の光ケーブルに取り付けられている他方側光コネクタを対向して接続した状態で収容する光コネクタケースであって、前記一方側光コネクタ及び前記他方側光コネクタの全体を収容するベースとカバーとを有し、前記ベースは、接続した状態の前記一方側光コネクタ及び前記他方側光コネクタに沿う直線状の細長板形状を有し、少なくとも前記一方側光コネクタ及び前記他方側光コネクタを配置する部分及びその裏面が平坦であることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る光コネクタケースにおいて、前記カバーは、前記一方側光コネクタを覆う部分である一方側カバーと、前記他方側光コネクタを覆う部分である他方側カバーとを有し、前記一方側カバー及び前記他方側カバーの少なくとも一方が、前記ベースに対して開閉可能であることが好ましい。
【0009】
本発明に係る光コネクタケースにおいて、前記カバーは、前記光ケーブルを通す端部の開口部側が開閉するように前記ベースに回動可能に支持されていることが好ましい。
【0010】
本発明に係る光コネクタケースにおいて、前記カバーは、一方側光コネクタと他方側コネクタとを接続する接続箇所を覆うセンターカバーを有し、前記ベースに対して、前記センターカバー、前記一方側カバー、及び前記他方側カバーが取り付けられていることが好ましい。
【0011】
本発明に係る光コネクタケースにおいて、前記光ケーブルを通す両端の開口部が矩形状であることが好ましい。
【0012】
本発明に係る光コネクタケースにおいて、前記光ケーブルを通す両端近傍に、前記光ケーブルに対して長さ方向で2箇所以上接触して前記光ケーブルの曲げを規制する曲げ規制部が設けられていることが好ましい。
【0013】
本発明に係る光コネクタケースにおいて、前記一方側光コネクタと前記他方側光コネクタとを接続するアダプタが前記ベースに取り付けられていることが好ましい。
【0014】
本発明に係る光コネクタケースにおいて、当該光コネクタケースの内側に、遮光用のシャッターを備えていることが好ましい。
【0015】
本発明に係る光コネクタケースにおいて、前記カバーの内側に、前記一方側光コネクタまたは前記他方側光コネクタの未装着状態で前記アダプタの開口部を覆う防塵蓋を有することが好ましい。
【0016】
本発明に係る光コネクタケースにおいて、前記ベースと前記カバーを組み合わせた状態で、前記光ケーブルを通す両端の開口部以外に開口した箇所がないように形成されていることが好ましい。
【0017】
本発明に係る光コネクタケースにおいて、前記光ケーブルを通す両端近傍に、前記光ケーブルを把持する把持爪を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、一方側の光ケーブルに取り付けられている一方側光コネクタと他方側の光ケーブルに取り付けられている他方側光コネクタとを対向して接続した状態で、ベースとカバーによって一方側光コネクタ及び他方側光コネクタの全体を収容することができる。したがって、一方側と他方側の両方の光コネクタを確実に保護することができる。また、ベースは、少なくとも一方側光コネクタ及び他方側光コネクタを配置する部分の裏面が平坦であり、接続した状態の一方側光コネクタ及び他方側光コネクタに沿う直線状の細長板形状を有しているため、光ケーブルの配線の際に、壁際等の角部にも密着するように沿わせて設置することができる。また、一方側光コネクタ及び他方側光コネクタを配置する部分が平坦であることにより、ベース上の光コネクタを摘み易く、光コネクタを着脱する作業性が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る光コネクタケースの実施形態の例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本実施形態の光コネクタケースを示す斜視図、図2は光コネクタケースのベースを示す斜視図、図3は図2に示したベースの各平面図、図4は光ケーブルを把持する把持爪を示すベースの部分平面図、図5は曲げ規制部を示すベースの部分平面図、図6は光コネクタカバーの斜視図、図7は図6に示した光コネクタカバーの各平面図、図8は光コネクタカバーに設けられている防塵蓋を示す側面図、図9はセンターカバーの斜視図、図10は図9に示したセンターカバーの各平面図、図11は接続状態を示す部分断面図及び底面図、図12は光コネクタカバーを開けた状態を示す各平面図、図13は光コネクタケースを取り付けた光ケーブルの配線例を示す斜視図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の光コネクタケース10は、幹線系の光ケーブルから分岐して戸内に引き込まれた上流側(一方側)の光ケーブル11aに取り付けられている上流側光コネクタ(一方側光コネクタ)20a(図12参照)、及び戸内の光通信機器に接続される下流側(他方側)の光ケーブル11bに取り付けられている下流側光コネクタ(他方側光コネクタ)20b(図12参照)を載置するベース30と、ベース30の上面を覆ってベース30との間に光コネクタ20a,20bを収容するカバー40とを有している。光コネクタ20a,20bは、現地付けSCコネクタ(図11及び図12参照)を好適に使用できる。
【0021】
カバー40は、光コネクタの光軸前後方向(図1において左右方向)中央にセンターカバー41を有し、センターカバー41の前後にそれぞれ上流側光コネクタカバー(一方側カバー)42、下流側光コネクタカバー(他方側カバー)43を有している。ベース30とセンターカバー41に囲まれた箇所で光コネクタ20a,20bが接続される。
【0022】
図2及び図3に示すように、ベース30は、接続した状態の光コネクタ20a,20bに沿う直線状の細長板形状をしたベース部31を有しており、ベース部31には壁面や床面への固定用のネジ穴31cが複数個(本実施形態では2個)設けられている。ベース部31の上面31aは平坦に形成されており、光コネクタ20a,20bを載置する部分が平坦になるため、光コネクタ20a,20bを手指で摘んで前後方向に移動させることが容易であり、着脱作業性が良い。また、ベース部31の下面31bも平坦であるため、配線の際に、床13や壁14に密着して配置することができる(図13参照)。
【0023】
ベース部31の軸線方向中央部上面31aには、アダプタ21(図11参照)をベース30上に固定するためのアダプタ挟持部32が設けられている。アダプタ挟持部32は、ベース部31の幅方向外縁において、ベース部31の上面31aから垂直上方に立設されて互いに対向する一対の挟持壁33,33を有している。挟持壁33は軸方向にアダプタ21の長さよりも若干長く形成されており、両挟持壁33,33の前端部付近の上部外側面には、上流側光コネクタカバー42を回動可能に支持する支持突起34aが各々外側に突出して設けられている。
【0024】
また、同様にして、両挟持壁33,33の後端部付近の上部外側面には、下流側光コネクタカバー43を回動可能に支持するための円柱形状をした支持突起34bが各々外側に突出して設けられている。さらに、両挟持壁33,33の外側面中央部には、後述するセンターカバー41の大きさに対応した凹部33aが設けられており、センターカバー41の位置決めを行うようになっている。凹部33aには、センターカバー41を固定するための係止突起35が外側に突出して各々設けられている。係止突起35は、上端から下端に向けて徐々に突出量が大きくなるような楔形状をしており、センターカバー41を凹部33aに合わせて上方から下方へ向けてスライドさせることにより、容易に取り付けて固定できるようになっている。
【0025】
また、ベース部31の上面31aの前後両端部には、左右に分割されたエンドブロック36,36が設けられており、左右のエンドブロック36,36の間には光ケーブル11a,11bが通過する間隙が設けられている。また、各エンドブロック36の外側面を前後両外側へ延長して、上流側光コネクタカバー42及び下流側光コネクタカバー43を閉じたときに開閉端を閉じた状態に保持する係止部36aが設けられている。
【0026】
なお、図4に示すように、エンドブロック36の対向する内側面36bに、光ケーブル11a,11bを圧入することにより外被に食い込んで光ケーブル11a,11bを把持する把持爪36cを設けることが望ましい。これにより、光ケーブル11a,11bを対向する把持爪36c間に位置決めして固定することができ、光ケーブル11a,11bに引張り力が作用した際に、接続部に力が作用することを防止して保護することができる。
【0027】
また、エンドブロック36と係止部36aは、光ケーブル11a,11bの曲げ半径を光ファイバ15(図11(B)参照)の許容曲げ半径よりも小さく曲がらないように規制する曲げ規制部として機能する。図5に示すように、エンドブロック36,係止部36aは、光ケーブル11a,11bを曲げた際にそれぞれ光ケーブル11a,11bに当接することで、光ケーブル11a,11bに対してその長さ方向で2箇所の接触箇所が設けられ、光ケーブル11a,11bを鋭角に曲がらないように規制することができる。また、これらのエンドブロック36,係止部36aの他に、光コネクタカバー42,43の開閉端が係止部36aとほぼ同じ箇所で光ケーブル11a,11bに当接するとともに、後述する光コネクタカバー42,43の仕切板48がエンドブロック36より光コネクタ20a,20bに近い位置で光ケーブル11a,11bに当接し、これらも曲げ規制部として機能する。
これにより、光ケーブル11a,11bに光コネクタケース10の横方向の力が作用した際に、所定の曲げ半径以下で曲げられることを防止して、光ケーブル11a,11b内の光ファイバ15の損傷や伝送光の曲げ損失増加を防止することができる。
【0028】
図6及び図7は、上流側光コネクタカバー42及び下流側光コネクタカバー43を示している。なお、両光コネクタカバー42,43は同じ構造を有し、一方の上流側光コネクタカバー42(以後、「光コネクタカバー42」と示す)について説明する。図6に示すように、光コネクタカバー42は左右の側壁42a,42b及び天板42cから構成されて断面コ字状をしており、内部空間に光コネクタ20aを収容するようになっている。したがって、光コネクタカバー42を閉じた状態では、ベース30とともに画成される端部の開口部10a(図1参照)は略長方形の矩形状となるので、光ケーブル11a等を配線した状態で保護するための一般的なモール12(図1参照)を隙間なく収容して接続しやすく、美観を考慮した配線を行うことができる。
【0029】
図6及び図7(A)に示すように、両側壁42a,42bは光コネクタケース10の中央部側(センターカバー41側)で天板42cよりも突出しており、突出部分には前述したベース30のアダプタ挟持部32に設けられている支持突起34aが回動可能に嵌合する支持穴44が各々設けられている。これにより、光コネクタカバー42は、中央部側端部の支持突起34a(34b)を回転軸として、前後端部(開口部10a側)を開閉することになる。また、天板42cが側壁42a,42bよりも短くなった空間42eが設けられているので、光コネクタカバー42の開閉の際に、センターカバー41に干渉することを防止することができる。
【0030】
また、両側壁42a,42bの開閉側端部(図6では上流側端部すなわち左側端部)下部には、ベース30の前後両端部に設けられている係止部36aが嵌合する形状の切欠き45が設けられている。したがって、カバー42を閉じて、係止部36aを切欠き45に嵌合させることにより、カバー42を閉じた状態でロックすることができる。また、図7(C)に示すように、光コネクタカバー42の開閉側(図7(C)において右側)端部付近の内部には、仕切板48が設けられており、仕切板48の下部中央には、光ケーブル11aが通過可能な切欠き48aが設けられている。
【0031】
これにより、下流側の光コネクタカバー43がベース30に対して開閉可能になるので、ユーザによる光コネクタ20bの着脱が容易であり、操作性が向上する。また、上流側光コネクタカバー42もベース30に対して同様に開閉可能なので、障害時の調査や修復等、メンテナンス作業を行い易いようになっている。
【0032】
図7(C)に示すように、光コネクタカバー42の天板42cの内面には、補強リブ42dが所定間隔で設けられており、外力が加わった場合でも天板42cの変形を防いで内部に収容される光コネクタ20aを保護することができる。また、図8に示すように、天板42cの内側には、防塵蓋47が設けられている。この防塵蓋47は、薄肉部47aを介して天板42cの内面に回動自在に一体成形されており、光コネクタカバー42を上方へ開けた場合や、光コネクタ20aが収容されていない場合には、光コネクタカバー42の天板42cに対して直角の位置にある。
【0033】
これにより、光コネクタ20aが収容されていないコネクタ未装着状態で光コネクタカバー42を閉じると、防塵蓋47が光コネクタケース10の内部を遮断し、少なくともアダプタ21の開口部を覆うため、アダプタ21へ埃等が侵入するのを防止することができる。
【0034】
一方、光コネクタ20aが収容されている場合には、光コネクタカバー42を下方へ閉じると、防塵蓋47の先端が光コネクタ20aに当接し、防塵蓋47は天板42cの方向へ回動して収納されることになる。
【0035】
なお、防塵蓋47を天板42cとは別体で成形し、ピンにより軸支して回動可能に取り付けるようにすることもできる。また、巻きばねなどにより光コネクタカバー42の閉じる方向へ付勢されていても良い。
【0036】
図9及び図10に、センターカバー41を示す。センターカバー41は、ベース30のアダプタ挟持部32により固定されているアダプタ21を覆って保護するものである。センターカバー41は、緩やかな凸状に湾曲した断面円弧状の天板41aと、天板41aの左右両外側縁から下方へ延びるアーム41bを有している。天板41aの内面には、補強リブ41cが所定間隔で設けられており(図10(C)参照)、変形を防いで内部に収容されるアダプタ21を保護する。また、アーム41bの中央には、ベース30のアダプタ挟持部32に設けられている係止突起35が嵌合して係止するための矩形状に貫通した係止穴46が設けられている。また、天板41aの上面前後両端縁にはテーパ48a及び段部48bが切り欠かれており、光コネクタカバー42を開閉する際に、光コネクタカバー42の天板42cがセンターカバー41の天板41aに干渉するのを防止するとともに、閉じた状態でセンターカバー41との間に隙間ができないようにしている。これにより、センターカバー41と光コネクタカバー42との間から、光コネクタケース10内部に埃等が侵入するのを防止している。
【0037】
したがって、センターカバー41をベース30のアダプタ挟持部32に上方から被せて、アーム41bを挟持壁33の凹部33aの外側面に沿って下方へ押し込むことにより、係止突起35がその傾斜に沿ってアーム41bを外側へ押し広げながら下降する。そして、係止突起35がアーム41bの係止穴46に嵌合することによりセンターカバー41をベース30に固定し、アダプタ21の脱落を防止することができる。
【0038】
このように、光コネクタケース10は、ベース30,上流側光コネクタカバー42,センターカバー41,下流側光コネクタカバー43の4分割構造となっている。このため、センターカバー41はアダプタ21の脱落を防ぎつつ独立して着脱可能であり、また、上流側光コネクタカバー42及び下流側光コネクタカバー43は上流側光コネクタ20a及び下流側光コネクタ20bをそれぞれ保護するとともに個別に開閉できるので、施工性及び保守性が良好である。また、各カバー41,42,43の間に隙間が設けられないようにしているため、防塵性を向上させることができる。
【0039】
図11(A)〜(C)は、光コネクタケース10内で上流側光コネクタ20aと下流側光コネクタ20bを接続した状態を示している。なお、光コネクタケース10はセンターカバー41を中心として光コネクタの光軸前後方向に対称となっており、図中、中央から右側(下流側)は断面図、中央から左側(上流側)は外観図を示している。
ベース30の中央に設けられているアダプタ挟持部32の挟持壁33,33の間にアダプタ21が取り付けられており、このアダプタ21に対して、図中右側から下流側の光ケーブル11bに取り付けられている光コネクタ20bが接続されている。光コネクタ20bに接続されている光ケーブル11bは、光コネクタ20bの後端から導出され、ベース30の端部近傍に設けられている左右一対のエンドブロック36間から光コネクタケース10の外部に出てモール12に保護された状態で配線される。
【0040】
このとき、光コネクタケース10から出てすぐに光ケーブル20bが屈曲して配線される場合には、一対のエンドブロック36,36間から出て光コネクタカバー42の側壁42aの先端に当接して屈曲する場合がある。このような場合に、曲げ規制部である光コネクタカバー42の仕切板48と、エンドブロック36と、側壁42a及び係止部36aの先端(開閉端)によって許容曲げ半径以下の屈曲が防止されるため、光ケーブル11bを保護することができる。
【0041】
なお、アダプタ21としては、内部に遮光用のシャッター(図示省略)を備えたものを用いるのが望ましい。これにより、アダプタ21に接続した光コネクタ20a,20bの通光時に光コネクタ20a,20bの一方を外しても遮光用のシャッターがアダプタ外への漏光を防止するため、ユーザやメンテナンス作業者の安全を確保することができる。
【0042】
また、図12(A)〜(E)には、光コネクタカバー42,43を開けた状態を示している。図12に示すように、光コネクタカバー42,43は、開口部10a側が開閉するようにベース30に回動可能に支持されている。このため、光コネクタケース10を壁面の角部等に設置した後でも、光コネクタカバー42,43の開閉動作を妨げず光コネクタの着脱を容易に行うことができる。また、接続作業時に光コネクタカバー42,43を開けても、カバーが脱落しないので、作業性が良好である。
【0043】
図13には、光コネクタケース10を設置して光ケーブル20a,20bを配線した例を示している。
前述したように、光コネクタケース10の断面は下面(ベース30)が平坦な細長板形状をしており、光ケーブル11a,11bの配線方向に沿った直線状をしているので、図13に示すように、床13と壁14との角部等に密着して沿わせた状態で配線することができる。また、光コネクタケース10を設置した状態で開口部10a以外には開口した箇所がないようにセンターカバー41,光コネクタカバー42,43が隙間なくベース30に組み付けられているため、防塵性が良好である。さらに、開口部10aの断面が矩形状であるため、断面が矩形状の一般的なモール12と隙間なく接続することができ、外観上も、防塵の観点からも良好な配線状態となる。
【0044】
また、光コネクタ20a,20bを保護している光コネクタカバー42,43は、開口部10a側が大きく上方へ開閉するので、光コネクタ20aの着脱を容易に行うことができ、作業性が良好である。また、光コネクタ20a,20bを載置するベース部31の上面31aは平坦かつアダプタ21はベース30に固定されているため、光コネクタ20a,20bを手指で摘んで前後方向に移動させることが容易であり、着脱作業性が良い。
【0045】
なお、上記実施形態においては、ベース30の中央にアダプタ21を設け、このアダプタ21の両側から光コネクタ20a,20bを接続する場合に付いて例示したが、アダプタ21を設けずに、光レセプタクルを備えた光コネクタを接続する場合にも適用できる。この場合には、光コネクタケース10の中央にセンターカバー41を設ける必要がなくなる。
【0046】
また、上記実施形態においては、上流側光コネクタカバー42及び下流側光コネクタカバー43の両方がそれぞれ独立して開閉可能となっているが、上流側光コネクタカバー42及び下流側光コネクタカバー43の一方のみが開閉可能であってもよい。
【0047】
また、アダプタ21内に設けた遮光用のシャッターは、アダプタ21以外の部材に設けられていても良く、例えばベース30の上面31aや、上流側光コネクタカバー42及び下流側光コネクタカバー43の内側等、光コネクタケースの内側の何れかの箇所に設けられていればよい。
【0048】
なお、光コネクタケース10は、図13に示したように水平に設置するだけではなく、壁面に沿って上下方向に取り付けることも可能である。また、光コネクタケース10をネジ止めではなく両面テープなどで接着する場合や、床面に載置する場合には、ネジ穴31cを設けなくても良い。
【0049】
また、本発明の光コネクタケースにおいて使用される光コネクタは、図11及び図12に示した外被把持型の現地付けSCコネクタの他、LCコネクタ、MUコネクタ等、様々なタイプのものを使用できる。また、配線する光ケーブルは、光ファイバ心線と抗張力線を樹脂被覆した断面矩形のインドア型の光ケーブルの他、光ファイバ心線の周囲に抗張力繊維を配してさらに樹脂被覆を施した断面円形の光コードの形態をなす光ケーブル等、戸内配線用の様々な光ケーブルを使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の光コネクタケースに係る実施形態の例を示す斜視図である。
【図2】図1に示した光コネクタケースのベースを示す斜視図である。
【図3】図2に示したベースの各平面図であり、(A)はベースの平面図、(B)はベースの側面図、(C)はベースの底面図、(D)はベースの端面図である。
【図4】光ケーブルを把持する把持爪を示すベースの部分平面図である。
【図5】曲げ規制部を示すベースの部分平面図である。
【図6】図1に示した光コネクタケースの光コネクタカバーを示す斜視図である。
【図7】図6に示した光コネクタカバーの各平面図であり、(A)は光コネクタカバーの平面図、(B)は光コネクタカバーの側面図、(C)は光コネクタカバーの底面図、(D)及び(E)は光コネクタカバーの端面図である。
【図8】光コネクタカバーに設けられた防塵蓋を示す側面図である。
【図9】図1に示した光コネクタケースのセンターカバーを示す斜視図である。
【図10】図9に示したセンターカバーの各平面図であり、(A)はベースの平面図、(B)はセンターカバーの側面図、(C)はセンターカバーの底面図、(D)はセンターカバーの端面図である。
【図11】(A)は接続状態を示す一部断面の平面図、(B)は接続状態を示す一部断面の側面図、(C)は底面図である。
【図12】光コネクタカバーを開けた状態を示す各平面図であり、(A)は光コネクタカバーを開けた状態を示す平面図、(B)は光コネクタカバーを開けた状態を示す側面図、(C)は底面図、(D)及び(E)は端面図である。
【図13】光コネクタケースを取り付けた光ケーブルの配線例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
10 光コネクタケース
10a,10b 開口部
11a 上流側(一方側)の光ケーブル
11b 下流側(他方側)の光ケーブル
20a 上流側光コネクタ(一方側光コネクタ)
20b 下流側光コネクタ(他方側光コネクタ)
21 アダプタ
30 ベース
31 ベース部
31a ベース部の上面
31b ベース部の下面
36c 把持爪
40 カバー
41 センターカバー
42 上流側光コネクタカバー(一方側カバー)
43 下流側光コネクタカバー(他方側カバー)
47 防塵蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側の光ケーブルに取り付けられている一方側光コネクタと他方側の光ケーブルに取り付けられている他方側光コネクタを対向して接続した状態で収容する光コネクタケースであって、
前記一方側光コネクタ及び前記他方側光コネクタの全体を収容するベースとカバーとを有し、
前記ベースは、接続した状態の前記一方側光コネクタ及び前記他方側光コネクタに沿う直線状の細長板形状を有し、少なくとも前記一方側光コネクタ及び前記他方側光コネクタを配置する部分及びその裏面が平坦であることを特徴とする光コネクタケース。
【請求項2】
請求項1に記載の光コネクタケースであって、
前記カバーは、前記一方側光コネクタを覆う部分である一方側カバーと、前記他方側光コネクタを覆う部分である他方側カバーとを有し、
前記一方側カバー及び前記他方側カバーの少なくとも一方が、前記ベースに対して開閉可能であることを特徴とする光コネクタケース。
【請求項3】
請求項2に記載の光コネクタケースであって、
前記カバーは、前記光ケーブルを通す端部の開口部側が開閉するように前記ベースに回動可能に支持されていることを特徴とする光コネクタケース。
【請求項4】
請求項2または3に記載の光コネクタケースであって、
前記カバーは、一方側光コネクタと他方側コネクタとを接続する接続箇所を覆うセンターカバーを有し、
前記ベースに対して、前記センターカバー、前記一方側カバー、及び前記他方側カバーが取り付けられていることを特徴とする光コネクタケース。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の光コネクタケースであって、
前記光ケーブルを通す両端の開口部が矩形状であることを特徴とする光コネクタケース。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の光コネクタケースであって、
前記光ケーブルを通す両端近傍に、前記光ケーブルに対して長さ方向で2箇所以上接触して前記光ケーブルの曲げを規制する曲げ規制部が設けられていることを特徴とする光コネクタケース。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の光コネクタケースであって、
前記一方側光コネクタと前記他方側光コネクタとを接続するアダプタが前記ベースに取り付けられていることを特徴とする記載の光コネクタケース。
【請求項8】
請求項7に記載の光コネクタケースであって、
当該光コネクタケースの内側に、遮光用のシャッターを備えていることを特徴とする光コネクタケース。
【請求項9】
請求項7または8に記載の光コネクタケースであって、
前記カバーの内側に、前記一方側光コネクタまたは前記他方側光コネクタの未装着状態で前記アダプタの開口部を覆う防塵蓋を有することを特徴とする光コネクタケース。
【請求項10】
請求項1から9の何れか一項に記載の光コネクタケースであって、
前記ベースと前記カバーを組み合わせた状態で、前記光ケーブルを通す両端の開口部以外に開口した箇所がないように形成されていることを特徴とする光コネクタケース。
【請求項11】
請求項1から10の何れか一項に記載の光コネクタケースであって、
前記光ケーブルを通す両端近傍に、前記光ケーブルを把持する把持爪を有することを特徴とする光コネクタケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−96540(P2008−96540A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275720(P2006−275720)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000231936)日本通信電材株式会社 (98)
【Fターム(参考)】