説明

光コネクタ及び信号処理装置

【課題】異なる2つの基板における光導波路同士を接続するための光コネクタにおいて、光学系の位置合わせを容易に行うことのできる光コネクタを提供すること。
【解決手段】第1基板20に形成された複数の第1光導波路22と、第1基板22と異なる第2基板30に形成された複数の第2光導波路32とを接続するための光コネクタ40であって、第1光導波路22と第2光導波路32との間に配置され、第1光導波路22及び第2光導波路32の一方の端部から射出された光を、第1光導波路22及び第2光導波路32の他方の端部に集光する複数の正立等倍光学系のレンズ50を含むレンズ部52と、第1光導波路22、第2光導波路32、及びレンズ50の位置関係を一定に保持する保持部材(60、70、80、82、84)と、を備えることを特徴とする光コネクタ40。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタ及び当該光コネクタを備えた信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品が搭載された回路基板(システムボード)を含むユニット装置が、ラックキャビネット内に多数積層して格納されたラックマウント型サーバーが知られている。システムボード上の電子部品は、システムボードに対し垂直に設置された回路基板(バックプレーン)を介して、他のシステムボード上の電子部品との間で信号伝送を行うことができるように構成されている。
【0003】
従来、システムボード同士の信号伝送には、金属配線や電気ケーブル等により伝送される電気信号を用いることが一般的であった。しかし、高速且つ大容量(例えば、GHzオーダー)の信号伝送を行う場合、電気信号を用いる方式では、ノイズ等により高品質の信号伝送が困難となる場合がある。そこで、システムボード及びバックプレーンに光導波路を形成し、光信号を用いて信号伝送を行う光伝送方式が提案されている。ここで、システムボードの光導波路とバックプレーンの光導波路とは、光コネクタにより接続される。光コネクタはレンズを含んでおり、例えばバックプレーンの光導波路から射出された光は、光コネクタ内のレンズにより集光されて、システムボードの光導波路に導入される(逆の場合も同様である)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−66281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の光コネクタでは、システムボード内の光導波路とバックプレーン内の光導波路とを接続する光学系に、一般的な倒立光学系のレンズを用いていた。このため、光導波路とレンズの位置関係がずれてしまうと、レンズの集光位置が大きくずれてしまい、光導波路とレンズの位置合わせを行うことが難しいという課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、異なる2つの基板における光導波路同士を接続するための光コネクタにおいて、光学系の位置合わせを容易に行うことのできる光コネクタ、及び当該光コネクタを備えた信号処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1基板に形成された複数の第1光導波路と、前記第1基板と異なる第2基板に形成された複数の第2光導波路とを接続するための光コネクタであって、前記第1光導波路と前記第2光導波路との間に配置され、前記第1光導波路及び前記第2光導波路の一方の端部から射出された光を、前記第1光導波路及び前記第2光導波路の他方の端部に集光する複数の正立等倍光学系のレンズを含むレンズ部と、前記第1光導波路、前記第2光導波路、及び前記レンズの位置関係を一定に保持する保持部材と、を備えることを特徴とする光コネクタである。
【0008】
上記構成において、1つの前記レンズに対応する前記第1光導波路及び前記第2光導波路の数は、それぞれ2つ以上である構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、1つの前記レンズに対応する前記第1光導波路及び前記第2光導波路の数は、それぞれ1つである構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記レンズ部は、光軸に対し交差する方向に配列された前記複数のレンズ同士の間に設けられ、前記複数のレンズのうち一のレンズに入射した光が、他のレンズに入射しないようにするための迷光防止部材を含む構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記複数のレンズの表面は、前記迷光防止部材の端部より内側に位置する構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記レンズは、屈折率分布型レンズである構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記レンズは、光軸が一致する複数の組レンズを含む構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記前記レンズ部は、光軸に対し交差する方向に配列された前記複数のレンズの集合体を、前記光軸の方向に2つに分離した第1レンズ及び第2レンズと、前記第1レンズ及び前記第2レンズの間に設けられ、前記光軸を中心とする領域に絞り孔が形成された絞り部材と、を含む構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記保持部材は、前記第1光導波路に位置合わせされ、ガイドピンを有する第1保持部材と、前記第2光導波路に位置合わせされ、ガイド孔を有する第2保持部材と、を含み、前記レンズ部は、前記第1保持部材及び前記第2保持部材に挟まれて保持され、前記ガイドピンが前記ガイド孔に挿入されている構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記保持部材は、前記第1保持部材と前記レンズ部との間に設けられ、前記レンズ部を前記第2保持部材に付勢するばね部材を含む構成とすることができる。
【0017】
上記構成において、前記保持部材は、前記レンズ部の光軸方向における位置調整を行うためのスペーサと、前記レンズ部を固定するための押え部材であって、前記レンズ部の外側に対応する領域に複数の圧入ピンが形成された押え部材と、をさらに含み、前記第2保持部材は、前記レンズ部を格納する凹形状の格納部と、前記格納部の周辺に形成された複数の圧入孔とをさらに有し、前記格納部には、前記第2保持部材の側から、前記スペーサ及び前記レンズ部が順に格納され、前記複数の圧入ピンが前記複数の圧入孔に挿入されることで、前記レンズ部及び前記スペーサが前記押え部材により前記第2保持部材に固定される構成とすることができる。
【0018】
上記構成において、前記第1基板及び前記第2基板は、互いに交差する平面上に配置される構成とすることができる。
【0019】
本発明は、複数の第1光導波路が形成された第1基板と、前記第1基板と交差する平面上に配置され、複数の第2光導波路が形成された第2基板と、前記複数の第1光導波路と前記複数の第2光導波路とを接続するための光コネクタと、を備え、前記光コネクタは、前記第1光導波路と前記第2光導波路との間に配置され、前記第1光導波路及び前記第2光導波路の一方の端部から射出された光を、前記第1光導波路及び前記第2光導波路の他方の端部に集光する複数の正立等倍光学系のレンズを含むレンズ部と、前記第1光導波路、前記第2光導波路、及び前記レンズの位置関係を一定に保持する保持部材と、を備えることを特徴とする信号処理装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、異なる2つの基板における光導波路同士を接続するための光コネクタにおいて、光学系の位置合わせを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、比較例及び実施例1〜2に係る光コネクタを含む信号処理装置の全体図である。
【図2】図2は、比較例に係る光コネクタ周辺の断面図である。
【図3】図3は、実施例1に係る光コネクタ周辺の断面図である。
【図4】図4は、光コネクタ周辺の斜視図である。
【図5】図5は、光コネクタの詳細な構成を示す斜視図である。
【図6】図6は、光コネクタの内部構造を示す断面図である。
【図7】図7は、レンズアレイ部分の詳細な構成を示す断面図である。
【図8】図8は、光コネクタの平面図である。
【図9】図9は、位置合わせのためのマークを示す図である。
【図10】図10は、実施例2に係る光コネクタのレンズアレイ部分の構成を示す断面図である。
【図11】図11は、実施例3に係る光コネクタ周辺の斜視図である。
【図12】図12は、光コネクタ周辺の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
最初に、比較例に係る光コネクタについて説明する。
【0023】
図1は、比較例及び実施例1〜3に係る光コネクタを含む信号処理装置の全体図であり、ラックキャビネットの内部を透過して見た図である。信号処理装置100は、ラックキャビネット10内に複数のシステムボード20a〜20cが複数積層して格納されたラックマウント型サーバーである。システムボード20a〜20cは、それぞれラックキャビネット10の底面に対し平行に配置されており、同底面に対し垂直に配置されたバックプレーン30を介して、互いに電気的に接続されている。ここで、システムボード20は電子部品が実装される第1基板の一例であり、バックプレーン30はシステムボード同士を接続する第2基板の一例である。
【0024】
システムボード20には、例えばCPU(Central Processing Unit)、メモリ回路、ブリッジ回路、ハードディスク等を含む電子部品(不図示)が実装されている。システムボード20の内部または表面には、複数の光導波路(以下、第1光導波路22と称する)が形成されている。第1光導波路22は、システムボード20上に設けられた発光素子24または受光素子26のいずれかと光接続されている。
【0025】
バックプレーン30には、システムボード20と同様に、内部または表面に複数の光導波路(以下、第2光導波路32と称する)が形成されている。バックプレーン30に形成された第2光導波路32は、光コネクタ40を介して、システムボード20に形成された第1光導波路22と光接続されている。
【0026】
上記電子部品から出力された電気信号は、発光素子24により光信号に変換され、第1光導波路22及び第2光導波路32を介して他のシステムボードへと伝送される。また、他のシステムボードより出力された光信号は、第1光導波路22及び第2光導波路32を介して受光素子26に入射し、電気信号に変換された上で上記電子部品へと入力される。これにより、一のシステムボード(例えば、20b)上の電子素子は、他のシステムボード(例えば、20a、20c)上の電子素子と信号の送受信を行うことができる。
【0027】
図2(a)〜(c)は、比較例に係る光コネクタ周辺の断面模式図であり、図中の矢印は光(信号)の導波方向を示す。本図では、光コネクタをレンズ150で置き換えて説明しているが、光学的な機能は同一である。なお、比較例に係る光コネクタでは、一般的な光コネクタに用いられる倒立光学系のレンズ150を用いている。図2(a)に示すように、バックプレーン30の第2光導波路32の端部には、ミラー34が設けられており、第2光導波路32の端面に到達した光は、ミラー34に反射されることで、バックプレーン30の表面に対し垂直方向(光軸L)を中心として拡散して射出される。
【0028】
第2光導波路32から射出された光のうちレンズ150に入射した光は、レンズ150によって所定の位置に集光する。図2(a)のように、第1光導波路22、第2光導波路32、及びレンズ150の位置関係が正しい場合には、レンズ150から射出された光は第1光導波路22の端面に収束し、第1光導波路22の内部へ導入される。これにより、第2光導波路32と第1光導波路22とは光学的に接続される。
【0029】
ここで、図2(b)及び図2(c)に示すように、レンズ150の位置が光軸L(第1光導波路22と第2光導波路32の端部同士を結ぶ光軸)に対し垂直にずれた場合、レンズ150から射出される光の集光位置も同様にずれてしまう。比較例のように、レンズ150に倒立光学系のレンズを用いた場合には、レンズ位置のずれに比べ、集光位置のずれは大きくなる。その結果、光が第1光導波路22に正しく導入されず、第1光導波路22と第2光導波路32とを光学的に接続できない場合がある。第1光導波路22から射出した光を第2光導波路32に導入する場合も、同様の現象が起こりうる。特に、比較例に係る光コネクタのように、互いに直交する基板上の光導波路同士を接続する場合には、光軸Lに垂直な方向にレンズの位置ずれが起こりやすい。
【0030】
以上のようなずれを抑制するために、比較例に係る光コネクタでは、第1光導波路22、第2光導波路32、及びレンズ150の位置合わせに高い精度が要求される。これに対し、以下に説明する実施例では、上記の位置合わせをより容易に行うことのできる光コネクタについて説明する。
【実施例1】
【0031】
図3(a)〜(c)は、実施例1に係る光コネクタ周辺の断面模式図であり、それぞれ比較例の図2(a)〜(c)に対応するものである。実施例1では、比較例における倒立光学系のレンズ150の代わりに、正立等倍光学系のレンズ50を用いている。レンズ50としては、例えば屈折率分布型のレンズを用いることができる。その他の構成については比較例と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0032】
正立等倍光学系は、物体側と同じ大きさ及び位置の像が、レンズの反対側に形成されるという特徴を有する。正立等倍光学系のレンズを複数並べた場合には、各レンズの形成する像は連続し、あたかも1つの大きなレンズであるかのような像が得られる。このため、図3(b)〜(c)のように、レンズ50の位置が光軸Lに対し垂直にずれた場合でも、レンズ50の集光位置は変化しない。従って、第1光導波路22及び第2光導波路32の位置関係が正しければ、第2光導波路32から射出された光を第1光導波路22に集光し、2つの光導波路同士を光学的に接続することができる。
【0033】
図4は、実施例1に係る光コネクタ周辺の詳細な構成を示す斜視図であり、バックプレーン30の裏側から光コネクタ等の構成部品を透過して見た図である。図示するように、システムボード20には、複数の第1光導波路(本図では不図示)の集合体を含む第1光導波部28が形成され、バックプレーン30には、複数の第2光導波路(本図では不図示)の集合体を含む第2光導波部38が形成されている。光コネクタ40の構成部品のうち、第1保持部材60が第1光導波部28に取り付けられ、第2保持部材70が第2光導波部38に取り付けられている。なお、本実施例では、第1光導波部28の端部はシステムボード20の表面から垂直方向に湾曲し、当該湾曲した端部に第1保持部材60が取り付けられた構成となっているが、第1保持部材60の取り付け方法は当該形態に限定されるものではない。
【0034】
第1保持部材60は、複数の第1光導波路22と位置合わせされており、第2保持部材70は、複数の第2光導波路32と位置合わせされている。第1保持部材60は、その表面に設けられたガイドピン62により、第2保持部材70と係合する。このとき、図3で示したレンズ50を含むレンズアレイが、第1保持部材60と第2保持部材70との間に挟まれて保持される。
【0035】
図5は、実施例1に係る光コネクタの詳細な構成を示す斜視図である。また、図6(a)は図5の平面Aに沿った断面図、図6(b)は平面Bに沿った断面図である。図示するように、光コネクタ40は、レンズ部の一例としてのレンズアレイ52と、レンズ部を保持する保持部材の一例としての第1保持部材60、第2保持部材70、ばね部材80、スペーサ82、及び押え部材84とを含む。
【0036】
第2保持部材70の中央部には、凹形状の格納部72が形成されており、スペーサ82及びレンズアレイ52がこの順に格納部72に格納される。スペーサ82は、レンズアレイ52の光軸方向の位置を調整するための部材であり、光を透過可能な材料が用いられる。第2保持部材70における格納部72の開口部の周辺には、複数のガイド孔74及び複数の圧入孔76が形成されている。ガイド孔74同士及び圧入孔76同士は、それぞれ対向する2つの辺上に形成されている。また、第2保持部材70の中央には、開口部79が形成されている。
【0037】
レンズアレイ52には、レンズが配置されたレンズ領域54の外側の表面に、ばね部材80を挿入するための受入孔56が設けられている。押え部材84には、レンズアレイ52のレンズ領域54に対応する位置に開口部86が形成され、その周辺に複数の圧入ピン88と、第1保持部材60のガイドピン62が貫通する貫通孔89が設けられている。押え部材84の圧入ピン88は、第2保持部材70の圧入孔76に挿入される。これにより、レンズアレイ52及びスペーサ82が、押え部材84により第2保持部材70に固定される。このとき、ばね部材80により、レンズアレイ52は第2保持部材70に付勢される。
【0038】
第1保持部材60には、レンズアレイ52のレンズ領域54に対応する位置に開口部64が形成され、第2保持部材70のガイド孔74に対応する位置にガイドピン62が形成されている。ガイドピン62は、押え部材84の貫通孔89を貫通して、ガイド孔74に挿入される。これにより、第1保持部材60と第2保持部材70とが互いに固定される。
【0039】
また、第1保持部材60及び第2保持部材70の外周部には、光導波路と位置合わせを行うための位置合わせ孔(68、78)がそれぞれ設けられている。この点については図9にて詳細に説明する。
【0040】
図7(a)〜(d)は、レンズアレイ52の詳細な構成を示す図であり、レンズアレイ52を複数のレンズの光軸を含む平面で切断した断面図である。レンズアレイ52の構成としては、図7(a)〜(d)のいずれを用いてもよい。全ての形態に共通する性質として、レンズアレイ52は光軸に対し交差する方向に配置された複数のレンズ50と、各レンズ50の間に設けられた迷光防止部材42とを含む。迷光防止部材42は、一のレンズに入射した光が他のレンズに入射(迷光)しないようにするための遮光部材であり、例えば黒色の遮光部材を用いることができる。迷光防止部材42は、レンズアレイ52における第1光導波路側の主面から第2光導波路側の主面にまで延在するように、光軸に対し平行に挿入されている。
【0041】
図7(a)は、レンズ50として単レンズを用い、且つその端面を迷光防止部材42の端部の外側(または同じ位置)に形成したものである。この構成によれば、より多くの光を集めることができる。図7(b)は、レンズ50として単レンズを用い、且つその端面を迷光防止部材42の内側に形成したものである。この構成によれば、迷光をより確実に抑制することができる。図7(c)〜(d)は、レンズ50として光軸の一致する2つの組レンズを用いた例である。組レンズを用いる場合、図7(c)のように、組レンズのそれぞれを迷光防止部材42の端部の外側(または同じ位置)に配置してもよいし、図7(d)のように、迷光防止部材42の内側に配置してもよい。
【0042】
図8は、光コネクタ40を第1保持部材60の側から透過して見た平面図である。図示するように、光コネクタ40には、ガイド孔74(ガイドピン62)、圧入孔76(圧入ピン88)、及び位置合わせ孔(68、78)が形成されている。このうち、位置合わせ孔68及び78は貫通孔である。図4及び図8に示すように、第1光導波路22と第1保持部材60との位置合わせを行う場合には、第2保持部材70の側から第1保持部材60の位置合わせ孔68を介して、第1光導波部28に描かれた位置合わせ用のマークを確認する。第2光導波路32と第2保持部材70との位置合わせを行う場合には、第1保持部材60の側から第2保持部材70の位置合わせ孔78を介して、第2光導波部38に描かれた位置合わせ用のマークを確認する。
【0043】
図9(a)及び(b)は、位置合わせ孔(68、78)及びマークの例である。マーク44の形状は、図9(a)のように十字型であってもよいし、図9(b)のように円形であってもよい。また、これ以外の形状のマークを用いてもよい。図示するように、マーク44が位置合わせ孔(68、78)の中心に位置するように位置合わせを行うことにより、光導波路と保持部材との位置合わせを容易に行うことができる。
【0044】
実施例1に係る光コネクタによれば、異なる基板に形成された複数の光導波路同士を接続する光コネクタのレンズ部に、正立等倍光学系のレンズを用いている。これにより、レンズの位置が光軸に対し垂直方向に少々ずれた場合であっても、レンズの集光位置は変化しないため、光導波路同士の光学的接続に影響は生じない。このため、比較例に係る光コネクタに比べ、光導波路及びレンズの位置合わせを容易に行うことができる。
【0045】
特に、実施例1のように、2つの交差する平面上に配置された基板の光導波路同士を接続する場合には、同一平面上に配置された基板の光導波路同士を接続する場合に比べ、上記のレンズ位置のずれが生じやすくなる。また、装置の小型化を図るために光導波路同士の間隔を狭くする場合には、レンズにはより高い精度の位置合わせが要求される。本実施例に係る光コネクタは、このような場合において特に好適である。
【実施例2】
【0046】
実施例2は、レンズアレイにおける迷光防止の構成を変更した例である。光コネクタのうちレンズアレイ部分以外の構成については実施例1と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0047】
図10(a)は、実施例2に係る光コネクタのレンズアレイ部分の構成を示す断面図(実施例1の図7(a)〜(c)に対応するもの)であり、図10(b)は図10(a)に示すレンズアレイを分解した図である。図示するように、レンズアレイ52は、光軸(図中点線)に対し交差する方向に配置された複数のレンズ50の集合体を、光軸の方向に2つに分離した第1レンズ50a及び第2レンズ50bを含む。実施例1と異なり、各レンズ50の間には迷光防止部材は設けられておらず、第1レンズ50a及び第2レンズ50bの間には、絞り部材46が配置されている。実施例2に係るレンズアレイも、実施例1と同じく正立等倍光学系となっている。
【0048】
絞り部材46には、各レンズ50の光軸を中心とする領域に絞り孔48が形成されており、その他の領域は例えば黒色の遮光部材となっている。第1レンズ50a及び第2レンズ50bは、各レンズの端部から入射された光が、自らの光軸上に位置する絞り孔48に集光するように調整されている。これにより、他のレンズから入射された光は絞り部材46により遮られるため、隣り合うレンズ同士における光の干渉(迷光)を抑制することができる。
【0049】
実施例2に係る光コネクタによれば、実施例1と同様に、レンズアレイにおける迷光を抑制することができる。また、正立等倍光学系のレンズアレイを用いることにより、光導波路及びレンズの位置合わせを容易に行うことができる。
【実施例3】
【0050】
実施例3は、1つのレンズに複数の光導波路を対応させた例である。
【0051】
図11は実施例3に係る光コネクタ周辺の斜視図であり、図12はその断面図(実施例1の図3に対応するもの)である。図12に示すように、システムボード20には、第1光導波路22a及び22bが上下の異なる層に形成されている。バックプレーン30には、上方から延在する第2光導波路32aと、下方から延在する第2光導波路32bとが形成されており、両者の間は分離されている。第2光導波路(32a、32b)の端部には、それぞれミラー(34a、34b)が設けられており、上側の第2光導波路32aから射出された光は上側の第1光導波路22aに、下側の第2光導波路32bから射出された光は下側の第1光導波路22bに、それぞれ入射する。
【0052】
本実施例では、図11に示すように、4本ずつの光導波路の組(図11の第1光導波路22a〜22d及び第2光導波路32a〜32d)に対し、1つの正立等倍光学系のレンズ50が対応するように構成されている。実施例1にて説明したように、正立等倍光学系では、物体側と同じ大きさ及び位置の像がレンズ50の反対側に形成される。このため、第2光導波路32a〜32dから射出された光は、レンズ50の反対側における元の位置(第1光導波路22a〜22dの端部)に集光する。例えば、図12では、上側の第2光導波路32aから射出された光は上側の第1光導波路22aに、下側の第2光導波路32bから射出された光は下側の第1光導波路22bにそれぞれ導入されている。なお、図11には示してはいないが、他の光導波路同士も上記と同様に、対応するレンズを介して接続されている。
【0053】
実施例3に係る光コネクタによれば、集光位置が物体側と同じになるという正立等倍光学系の性質を利用して、レンズのサイズを大きくし、1つのレンズに対応する第1光導波路及び第2光導波路の数を、それぞれ2つ以上とすることができる。これにより、実施例1〜2に比べて部品点数の削減や、製造工程の簡易化を図ることができる。
【0054】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 キャビネット
20 システムボード
22 第1光導波路
24 発光素子
26 受光素子
28 光導波部
30 バックプレーン
32 第2光導波路
34 ミラー
38 第2光導波部
40 光コネクタ
42 迷光防止部材
44 マーク
46 絞り部材
48 絞り孔
50 レンズ
50a 第1レンズ
50b 第2レンズ
52 レンズアレイ
60 第1保持部材
62 ガイドピン
68 位置合わせ孔
70 第2保持部材
72 格納部
74 ガイド孔
76 圧入孔
78 位置合わせ孔
80 ばね部材
82 スペーサ
84 押え部材
88 圧入ピン
100 信号処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板に形成された複数の第1光導波路と、前記第1基板と異なる第2基板に形成された複数の第2光導波路とを接続するための光コネクタであって、
前記第1光導波路と前記第2光導波路との間に配置され、前記第1光導波路及び前記第2光導波路の一方の端部から射出された光を、前記第1光導波路及び前記第2光導波路の他方の端部に集光する複数の正立等倍光学系のレンズを含むレンズ部と、
前記第1光導波路、前記第2光導波路、及び前記レンズの位置関係を一定に保持する保持部材と、
を備えることを特徴とする光コネクタ。
【請求項2】
1つの前記レンズに対応する前記第1光導波路及び前記第2光導波路の数は、それぞれ2つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の光コネクタ。
【請求項3】
1つの前記レンズに対応する前記第1光導波路及び前記第2光導波路の数は、それぞれ1つであることを特徴とする請求項1に記載の光コネクタ。
【請求項4】
前記レンズ部は、光軸に対し交差する方向に配列された前記複数のレンズ同士の間に設けられ、前記複数のレンズのうち一のレンズに入射した光が、他のレンズに入射しないようにするための迷光防止部材を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光コネクタ。
【請求項5】
前記複数のレンズの表面は、前記迷光防止部材の端部より内側に位置することを特徴とする請求項4に記載の光コネクタ。
【請求項6】
前記レンズは、屈折率分布型レンズであることを特徴とする請求項4または5に記載の光コネクタ。
【請求項7】
前記レンズは、光軸が一致する複数の組レンズを含むことを特徴とする請求項4または5に記載の光コネクタ。
【請求項8】
前記前記レンズ部は、
光軸に対し交差する方向に配列された前記複数のレンズの集合体を、前記光軸の方向に2つに分離した第1レンズ及び第2レンズと、
前記第1レンズ及び前記第2レンズの間に設けられ、前記光軸を中心とする領域に絞り孔が形成された絞り部材と、
を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光コネクタ。
【請求項9】
前記保持部材は、
前記第1光導波路に位置合わせされ、ガイドピンを有する第1保持部材と、
前記第2光導波路に位置合わせされ、ガイド孔を有する第2保持部材と、を含み、
前記レンズ部は、前記第1保持部材及び前記第2保持部材に挟まれて保持され、前記ガイドピンが前記ガイド孔に挿入されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の光コネクタ。
【請求項10】
前記保持部材は、前記第1保持部材と前記レンズ部との間に設けられ、前記レンズ部を前記第2保持部材に付勢するばね部材を含むことを特徴とする請求項9に記載の光コネクタ。
【請求項11】
前記保持部材は、
前記レンズ部の光軸方向における位置調整を行うためのスペーサと、
前記レンズ部を固定するための押え部材であって、前記レンズ部の外側に対応する領域に複数の圧入ピンが形成された押え部材と、をさらに含み、
前記第2保持部材は、前記レンズ部を格納する凹形状の格納部と、前記格納部の周辺に形成された複数の圧入孔とをさらに有し、
前記格納部には、前記第2保持部材の側から、前記スペーサ及び前記レンズ部が順に格納され、
前記複数の圧入ピンが前記複数の圧入孔に挿入されることで、前記レンズ部及び前記スペーサが前記押え部材により前記第2保持部材に固定されることを特徴とする請求項9または10に記載の光コネクタ。
【請求項12】
前記第1基板及び前記第2基板は、互いに交差する平面上に配置されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の光コネクタ。
【請求項13】
複数の第1光導波路が形成された第1基板と、
前記第1基板と交差する平面上に配置され、複数の第2光導波路が形成された第2基板と、
前記複数の第1光導波路と前記複数の第2光導波路とを接続するための光コネクタと、を備え、
前記光コネクタは、
前記第1光導波路と前記第2光導波路との間に配置され、前記第1光導波路及び前記第2光導波路の一方の端部から射出された光を、前記第1光導波路及び前記第2光導波路の他方の端部に集光する複数の正立等倍光学系のレンズを含むレンズ部と、
前記第1光導波路、前記第2光導波路、及び前記レンズの位置関係を一定に保持する保持部材と、
を備えることを特徴とする信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−83894(P2013−83894A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225246(P2011−225246)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】