説明

光コネクタ用アダプタ

【課題】光コネクタ用アダプタにおいて、部品点数を半減することで在庫管理を容易にし、また、組立て工数を低減する。
【解決手段】アダプタのハウジングは、挿抜方向に沿って2分割にされた分割体と、該分割体にそれぞれ一体にして前記挿抜方向に沿って背向させて設けられるとともに接続用の係合片を有するスリーブホルダと、前記両スリーブホルダに装着される割りスリーブと、前記分割体の一方の開口部に装着され防塵遮光機能を発揮する金属製バネ薄板で一体に形成されたシャッターとからなり、前記シャッターは、全体が略くの字に形成され、遮光部の側面の一部が内側に折り曲げられた補強部で補強され、略くの字に形成する屈曲部が設けられ、基部に対して遮光部が前記屈曲部の付勢力によって開口部の閉蓋方向に付勢され当該遮光部の先端部が一方の開口部の内壁に当接して遮光するように形成され、遮光部の先端部は、内側に屈曲されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信において使用されるシャッター付の光コネクタ用アダプタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザビームが目に障害を与えないように安全対策を施したシャッター付の光コネクタ用アダプタが知られている。例えば、図9に示すように、コネクタハウジング11aの両端に、光学軸が一致するように光コネクタの嵌合部と、光コネクタその他の光学部品とをそれぞれ備え、前記嵌合部を斜め配置で閉鎖するシャッター板11bと、該シャッター板を閉鎖方向へ付勢する板バネ11cとを配設し、前記嵌合部に光コネクタを嵌合することによって前記シャッター板11bを板バネ11cの押圧力に抗して開放するように構成した光コネクタ用アダプタ11が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−225133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の光コネクタ用アダプタ11においては、シャッター板11bとこれを付勢する板バネ11cと、割りスリーブ11dと二つのスリーブ11eと、二つのアダプタ(ハウジング本体11aと底板11f)とがそれぞれ用意され、部品点数が多くそれに伴って組立て工数が嵩むものである。本発明に係る光コネクタ用アダプタは、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る光コネクタ用アダプタの上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、光通信用に使用される光コネクタ用アダプタのハウジングは、挿抜方向に沿って2分割にされた分割体と、該分割体にそれぞれ一体にして前記挿抜方向に沿って背向させて設けられるとともに接続用の係合片を有するスリーブホルダと、前記両スリーブホルダに装着される割りスリーブと、前記分割体の一方の開口部に装着され防塵遮光機能を発揮する金属製バネ薄板で一体に形成されたシャッターとからなり、前記シャッターは、全体が略くの字に形成され、遮光部の側面の一部が内側に折り曲げられた補強部で補強され、前記シャッターは、略くの字に形成する屈曲部が設けられ、シャッターの基部に対して遮光部が前記屈曲部の付勢力によって開口部の閉蓋方向に付勢され当該遮光部の先端部が一方の開口部の内壁に当接して遮光するように形成され、前記シャッターにおける遮光部の先端部は、内側に屈曲されていることである。
【0006】
前記一方の開口部にシャッターが設けられる分割体のハウジングにおいて、前記一方の開口部の奥の壁面に衝撃吸収用の緩衝材が設けられていることを含むものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光コネクタ用アダプタによれば、アダプタ用ハウジングを挿抜方向に2分割してそれぞれにスリーブホルダを一体にして形成することで、且つ、シャッターを板バネで一体形成することで、全体の部品点数が半減され、在庫管理が容易になり、組立て工数が低減されてコスト低減となる。
【0008】
また、金属製のシャッターにおける遮光部に補強部を設けたので、遮光部の剛性が高まり、プラグ挿入時にはシャッター全体で撓みながら屈曲部を圧縮して開口部を拡開させる。これにより確実に開口部を密閉することができ、高い防塵性と遮光効果が得られると共に、前記シャッターを開口部に装着する際には、遮光部を基部側に付勢して折り曲げた状態で開口部に装着し、その後、付勢力を開放することで開口部に取り付けられるので、取付け方法が簡単であるとともに安定して閉蓋状態を維持することができる。
【0009】
前記シャッターが全面において金属製であるので、レーザーの内部反射による2次光及び、更なる反射の3次光までも遮断して、高い遮光性が得られるものである。
【0010】
更に、シャッター側の開口部において緩衝材があるので、この開口部に挿入されたプラグのハウジングが勢い良く奥の壁面に衝突した際の、音の発生を防止でき、作業者が嵌合時のロック音と誤解しないようになり、確実な光接続が可能となる。
【0011】
前記シャッターにおける遮光部の先端部の一部は内側に屈曲されているので、遮光部の剛性を補うと共に、開口部に装着されたプラグのハウジングが抜去されるときに、前記先端部のエッジで引っかかりが生じるということが防止され、スムーズな相手方プラグの脱着が維持される、と言う数々の優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る光コネクタ用アダプタ1の組立前の分解状態を示す斜め前方斜視図(A)と、斜め後方斜視図(B)とである。
【図2】同本発明の光コネクタ用アダプタ1の前方から見た斜視図(A)と、後方下から見た斜視図(B)とである。
【図3】同光コネクタ用アダプタ1の正面図(A)、側面図(B)、背面図(C)、平面図(D)、底面図(E)である。
【図4−A】光コネクタ用アダプタ1の分割体2を一方の開口部2a側から見た斜視図である。
【図4−B】同光コネクタ用アダプタ1におけるシャッター5の斜視図である。
【図5】光コネクタ用アダプタ1の一部を破断して内部を示す斜視図(A),(B)と、光コネクタプラグ10との嵌合時のプラグハウジング10aの衝突の様子を示す一部を破断して内部を示す嵌合斜視図(C)とである。
【図6】緩衝材8としてのコイルスプリングの正面図(A)、側面図(B)、平面図(C)、斜視図(D)である。
【図7−A】光コネクタ用アダプタ1と光コネクタプラグ10との嵌合の様子を示す斜視図(A),(B)である。
【図7−B】同光コネクタ用アダプタ1と光コネクタプラグ10との嵌合の様子を手順に示す縦断面図(A)〜(D)である。
【図8】図7−B(D)の一部を拡大して示す縦断面図である。
【図9】従来例に係る光コネクタ用アダプタ11の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る光コネクタ用アダプタ1は、図1に示すように、挿抜方向に沿って2分割にされた分割体とすることで金型の成形を可能とし、スリーブホルダを一体化し、且つ、シャッターも金属製板バネで一体化して閉蓋用バネを不要にして、部品点数を減少させたものである。
【実施例1】
【0014】
本発明に係る光コネクタ用アダプタ1は、図1(A),(B)に示すように、アダプタ用ハウジングは、前後方向である挿抜方向に沿って2分割にされた第1分割体2と第2分割体3となっている。嵌合・合体用に、係合片2c、係合孔2d、係合突起2e、ガイド片2f、ガイド位置決め部2gなどが突設もしくは穿設されている。第1分割体2と第2分割体3は同一部品であるので、第2分割体3にも同様な相補的係合固定部材が設けられている。
【0015】
前記第1分割体2と第2分割体3とには、それぞれ一体にして前記挿抜方向に沿って背向させて設けられるとともに接続用の係合片6a(図4−A参照)を有するスリーブホルダ7が設けられている。スリーブホルダ7は、挿抜方向に沿った貫通孔が設けられている。前記スリーブホルダ7は、従来ではアダプタ用ハウジングとは別体に成形され、組立てされていたが、本発明の光コネクタ用アダプタ1の場合には、前記両分割体2,3に一体成形されるものであり、部品点数の低減となっている。
【0016】
前記両スリーブホルダ7,7に装着される割りスリーブ4がある。この割りスリーブ4に両側から接続対象のプラグ等におけるフェルールが挿入され、光軸が一致されて光接続がなされるものである。
【0017】
前記分割体の一方の開口部、この実施例では第1分割体2の開口部2aに装着され防塵遮光機能を発揮する金属製バネ板で一体に形成されたシャッター5がある。
【0018】
前記シャッター5は、図4−B(A)に示すように、全体が略くの字に形成され、基部5aと、屈曲部5cと、遮光部5dとでなる薄板(t=0.02〜0.05mm)である。前記基部5aには第1分割体2に固定するための係合孔5bが設けられている。
【0019】
前記屈曲部5cは、図4−B(B)に示すように、前記遮光部5dの復帰用の付勢力を得るものである。これにより、復帰用のトーションバネ等をシャッターの別体として装備する必要が無くなるものである。
【0020】
前記屈曲部5cの端部から遮光部5dが延設されるのであるが、図4−B(B)に示すように、屈曲部5cの端部から接線方向に延設するのではなく、更に上側に角度θ多くして上に曲げられて延設されている。これにより、前記開口部2aの閉蓋状態のときに、屈曲部5cの付勢力で遮光部5dの先端部が開口部2aの内壁に当接し、確実に開口部2aを密閉して防塵及び遮光するものである。
【0021】
また、前記遮光部5dの側面の一部が内側に折り曲げられた補強部5eで補強されている。平板状の遮光部5dが嵌合相手方のプラグ等の衝突によって変形しないようにするためである。更に、図4−Bに示すように、シャッター5における遮光部5dの先端部も、内側に屈曲されて遮光部の補強とプラグの引っ掛かり防止を兼ねている内側曲げ部5fとなっている。
【0022】
前記第1分割体2において、図5(A)に示すように、前記開口部2aの奥の壁面に緩衝材取付け孔2bが設けられている。なお、図1(A)に示すように、第2分割体3の側にも、金型の対称性から同様な緩衝材取付け孔3aが設けられている。第2分割体3側の開口部にもシャッターは設けられるので、光コネクタ用アダプタの用途に合わせて、緩衝材及びシャッターを増設できる。
【0023】
前記緩衝材取付け孔2bには、図5(B)〜(C)に示す衝撃吸収用の緩衝材8が設けられている。この緩衝材8は、例えば、コイルスプリングであり、前記緩衝材取付け孔2bに差し込んで組み付けて抜け出さないように、スプリングの直径が2段になっている。
【0024】
また、図4−Aに示すように、第1分割体2における開口部2aの底面には、後方側に向って高さが次第に高くなるテーパ2kが2箇所に設けられている。このテーパ2kは、プラグを開口部2aに嵌合させる際に、意地悪嵌合(下に押し付ける等)した場合でも、押し倒されたシャッター5を下から支えて該シャッター5の変形を防止するとともに、前記プラグをガイドして支障なく嵌合させるものである。
【0025】
上記構成物件の第1分割体2、第2分割体3、割りスリーブ4、シャッター5、緩衝材8を用意して、図1(A),(B)に示すように、緩衝材8をその段差に注意して緩衝材取付け孔2bに、後方からシャッター5のある前方側へと所定の方向から差し入れ、割りスリーブ4を前後方向において両側から挟むようにしてスリーブホルダ7の内部に装着させる。
【0026】
前記第1分割体2と第2分割体3を嵌合合体させ、シャッター5を開口部2aに装着する。図1(B)に示すように、シャッター5の基部5aが第1分割体2の嵌合溝2jに差し込まれると、係合突起2hに係合孔5bが嵌り、抜け止めとなる。また、シャッター5の遮光部5dが、開口部2aに入って開放されると屈曲部5cの付勢力で拡開し当該開口部2aに密着して閉蓋する。こうして、図2及び図3に示す光コネクタ用アダプタ1となる。
【0027】
図7−A(A)に示すように、本発明に係る光コネクタ用アダプタ1に、相手方の光コネクタプラグ10を差し込むと、図7−B(A)〜(C)に示すように、前記光コネクタプラグ10のプラグハウジング10aによってシャッター5がアダプタ内側に倒され、屈曲部5cにおいて付勢力が増大し、シャッター先端がプラグハウジング10aの下面に密着する。
【0028】
前記光コネクタプラグ10のプラグハウジング10aは、前記シャッター5を押し倒して退避させた後は、開口部2aの奥の内壁に衝突するまで挿入される。そのとき、図5(B),(C)に示すように、緩衝材8であるコイルスプリングが前記奥の内壁から突出していて、このコイルスプリングに前記プラグハウジング10aの先端面が衝突する。よって、プラグハウジング10aの衝撃を吸収して、衝撃音の発生を防止し、図7−A(B)に示すように、光コネクタプラグ10と光コネクタ用アダプタ1との光接続が確実に行われる。
【0029】
また、図7−B(D)及び図8に示す状態から、光コネクタプラグを抜き去ると、シャッター5が屈曲部5cの付勢力によって拡開しようとするので、遮光部5dの先端部とプラグハウジング10aの下面とが擦れた状態となる。
【0030】
そこで、前記プラグハウジング10aが図7−B(D)の図示において前方に抜去されると、前記遮光部5dの先端部のエッジがプラグハウジング10aの下面に引っかかる恐れがある。この対策として、遮光部5dの先端部に設けた内側曲げ部5fにより、引っ掛かりがなくスムーズに前記プラグハウジング10aを第1分割体から脱着させることができる。
【実施例2】
【0031】
本発明に係る光コネクタ用アダプタ1は、部品点数を少なくして上記のように形成され構成されるが、緩衝材8においては、例えば、内壁にスポンジ、ウレタン等を貼着したり、合成樹脂製の内壁の一部を延設して弾性片を設けたりすることもできる。
【符号の説明】
【0032】
1 光コネクタ用アダプタ、
2 第1分割体、 2a 開口部、
2b 緩衝材取付け孔、 2c 係合片、
2d 係合孔、 2e 係合突起、
2f ガイド片、 2g ガイド位置決め部、
2h 係合突起、 2j 嵌合溝、
2k テーパ、
3 第2分割体、 3a 緩衝材取付け孔、
4 割りスリーブ、
5 シャッター、 5a 基部、
5b 係合孔、 5c 屈曲部、
5d 遮光部、 5e 補強部、
5f 内側曲げ部、
6a 係合片、
7 スリーブホルダ、
8 緩衝材、
10 光コネクタプラグ、 10a プラグハウジング、
11 従来の光コネクタ用アダプタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光通信用に使用される光コネクタ用アダプタのハウジングは、
挿抜方向に沿って2分割にされた分割体と、
該分割体にそれぞれ一体にして前記挿抜方向に沿って背向させて設けられるとともに接続用の係合片を有するスリーブホルダと、
前記両スリーブホルダに装着される割りスリーブと、
前記分割体の一方の開口部に装着され防塵遮光機能を発揮する金属製バネ薄板で一体に形成されたシャッターとからなり、
前記シャッターは、全体が略くの字に形成され、遮光部の側面の一部が内側に折り曲げられた補強部で補強され、
前記シャッターは、略くの字に形成する屈曲部が設けられ、シャッターの基部に対して遮光部が前記屈曲部の付勢力によって開口部の閉蓋方向に付勢され当該遮光部の先端部が一方の開口部の内壁に当接して遮光するように形成され、
前記シャッターにおける遮光部の先端部は、内側に屈曲されていること、
を特徴とする光コネクタ用アダプタ。
【請求項2】
一方の開口部にシャッターが設けられる分割体のハウジングにおいて、前記一方の開口部の奥の壁面に衝撃吸収用の緩衝材が設けられていること、
を特徴とする請求項1に記載の光コネクタ用アダプタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−A】
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【図4−B】
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【図5】
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【図6】
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【図7−A】
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【図7−B】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−113878(P2013−113878A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257305(P2011−257305)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000243342)本多通信工業株式会社 (92)
【Fターム(参考)】