説明

光スイッチ監視装置、光スイッチシステム、及び光スイッチ監視方法

【課題】光スイッチにおける誤接続を、波長多重・偏波多重したまま検出することができ、かつ主信号の劣化を抑制する。
【解決手段】光スイッチ監視装置100は、偏波変動部120,偏波変動測定部140、及び判断部160を有している。偏波変動部120は、光スイッチ200の入力ポート202より前、すなわち入力用光ファイバ10に設けられている。偏波変動部120は、入力ポート202に入力される光信号を第1の出力ポート204から出力させる場合に、当該光信号の偏波状態を第1周波数で変動させる。偏波変動測定部140は、光スイッチのいずれかの出力ポート204から出力される光信号の偏波状態の時間変動を測定する。判断部160は、偏波状態の時間変動に含まれる周波数成分の大きさに基づいて、光スイッチの誤動作の有無を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光スイッチの誤接続を検出することができる光スイッチ監視装置、光スイッチシステム、及び光スイッチ監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信量が爆発的に拡大しており、例えば最も情報量が集中する基幹ネットワークでは光ノードが利用されるようになってきている。光ノードとしては、光ファイバ毎に、例えば80の波長を多重化した光信号が伝送され、その光ファイバを100以上入出力するような大規模なものも検討されている。この場合、光ノードが取り扱うチャネル数は8000以上となる。波長毎、入出力方路毎にチャネルの振り分けを行う場合、振り分けのために必要となる光スイッチ素子は、数万〜数十万個にもなることがある。このような多数の光スイッチ素子がすべて正しく設定及び動作することで、初めて意図する光パスが形成され、意図する情報通信を行うことができる。
【0003】
しかしながら、対象となる光スイッチ素子数が多いほど、ハードウェア的な故障や、設定ミスによって意図する光パスが形成されない確率、すなわち誤接続の確率が上昇する。誤接続は通信障害に直結するため、インサービスではゼロとすることが望ましい。そのため、光ノードにはインサービスで、常時光パスの接続状態を監視し、誤接続を未然に防ぐ機能が要求されている。
【0004】
例えば特許文献1に記載の技術では、波長チャネル毎に固有の周波数を割り当て、光ノード入力時にその固有周波数で強度変調を印加する。光ノード出力時に波長チャネル毎に付加した強度変調周波数を検出することによって、これが意図した周波数であるかどうか、すなわち、意図する波長チャネルが出力されているかどうかを判定する。
【0005】
また特許文献2に記載の技術では、光信号に光パワー、波長、偏波、光SN比を波長パスの識別子として使用することが記載されている。
【0006】
また特許文献3には、入力光信号の一部を分岐し、分岐光の光強度が予め定めた一定値以下の場合に誤接続とみなすことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−312256号公報
【特許文献2】特開2006−050143号公報
【特許文献3】特開2010−114507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1,2のように強度変調、波長又は光SN比を識別子として使用する場合、これらの識別子によって、主信号品質が劣化してしまう。また、特許文献3のように波長フィルタを用いる方式の場合、波長多重したままでは誤検出の判断を行えない。
【0009】
本発明の目的は、上述したような従来技術が有する問題点を鑑みてなされたものであって、光スイッチにおける誤接続を、波長多重・偏波多重したまま検出することができ、かつ主信号の劣化を抑制することができる光スイッチ監視装置、光スイッチシステム、及び光スイッチ監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、光スイッチの入力ポートより前に設けられ、前記入力ポートに入力される光信号を前記光スイッチの第1の出力ポートから出力させる場合に、当該光信号の偏波状態を第1周波数で変動させる偏波変動手段と、
前記光スイッチのいずれかの出力ポートから出力される光信号の偏波状態の時間変動を測定する偏波変動測定手段と、
前記偏波状態の時間変動に含まれる周波数成分の大きさに基づいて、前記光スイッチの誤動作の有無を判断する判断手段と、
を備える光スイッチ監視装置が提供される。
【0011】
本発明によれば、光スイッチと、
前記光スイッチの入力ポートより前に設けられ、前記入力ポートに入力される光信号の偏波状態を第1周波数で変動させる偏波変動手段と、
前記光スイッチの出力ポートから出力される光信号の偏波状態の時間変動を測定する偏波変動測定手段と、
前記偏波状態の時間変動に含まれる前記第1周波数成分の大きさに基づいて、前記光スイッチの誤動作の有無を判断する判断手段と、
を備える光スイッチシステムが提供される。
【0012】
本発明によれば、入力ポートに入力される光信号を前記光スイッチの第1の出力ポートから出力させる場合に、当該光信号の偏波状態を第1周波数で変動させ、
前記光スイッチのいずれかの出力ポートから出力される光信号の偏波状態の時間変動を測定し、
前記偏波状態の時間変動に含まれる周波数成分の大きさに基づいて、前記光スイッチの誤動作の有無を判断する光スイッチ監視方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光スイッチにおける誤接続を、波長多重・偏波多重したまま検出することができ、かつ主信号の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態に係る光スイッチ監視装置の構成を示す図である。
【図2】第2の実施形態に係る光スイッチ監視装置の構成を示す図である。
【図3】第3の実施形態に係る光スイッチシステムの構成を示す図である。
【図4】光スイッチの変形例を示す図である。
【図5】偏波状態検出部で測定されるストークスベクトルを示す図である。
【図6】偏波成分検出部が検出した光信号の偏波状態変動の周波数成分の一例を示す図である。
【図7】偏波状態検出部で測定されるストークスベクトルを示す図である。
【図8】偏波成分検出部が検出した光信号の偏波状態変動の周波数成分の一例を示す図である。
【図9】第4の実施形態に係る光スイッチシステムの構成を示す図である。
【図10】第5の実施形態に係る光スイッチシステムの構成を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る光スイッチ監視装置100の構成を示す図である。光スイッチ監視装置100は、光スイッチシステムの一部として使用されている。この光スイッチシステムは、光スイッチ200を有している。光スイッチ200は、入力用光ファイバ10を介して入力ポート202に入力された光信号を、2つの出力ポート204のいずれかを介して、出力用光ファイバ22,24のいずれかに出力する。光スイッチ監視装置100は、光スイッチ200の誤接続を検出するために設けられている。
【0017】
光スイッチ監視装置100は、偏波変動部120、偏波変動測定部140、及び判断部160を有している。偏波変動部120は、光スイッチ200の入力ポート202より前、すなわち入力用光ファイバ10に設けられている。偏波変動部120は、入力ポート202に入力される光信号を第1の出力ポート204から出力させる場合に、当該光信号の偏波状態を第1周波数で変動させる。第1周波数は、例えば1Hz以上50kHz以下である。偏波変動測定部140は、光スイッチのいずれかの出力ポート204から出力される光信号の偏波状態の時間変動を測定する。判断部160は、偏波状態の時間変動に含まれる周波数成分の大きさに基づいて、光スイッチの誤動作の有無を判断する。
【0018】
図1に示す例では、出力用光ファイバ22に分岐部210が設けられている。このため、出力用光ファイバ22に出力された光信号の一部が分岐して偏波変動測定部140に入力される。偏波変動測定部140は、出力用光ファイバ22に出力された光信号の偏波状態の時間変動を測定する。
【0019】
例えば偏波変動部120が、出力用光ファイバ22に光信号を出力する場合に光信号の偏波状態を第1周波数で変動させた場合を考える。この場合、判断部160は、例えば、偏波変動測定部140で測定された光信号の偏波状態の時間変動のうち、第1周波数成分の大きさが基準値以上であった場合、正常に光スイッチ200が動作していると判断する。一方、判断部160は、偏波変動測定部140で測定された光信号の偏波状態の時間変動のうち、第1周波数成分の大きさが基準値未満であった場合、光スイッチ200が誤接続していると判断する。
【0020】
なお判断部160は、偏波変動測定部140で測定された光信号の偏波状態の時間変動のうち、最大の周波数成分が第1周波数であった場合に、正常に光スイッチ200が動作していると判断することもできる。この場合において判断部160は、最大の周波数成分が第1周波数であり、かつ第1周波数成分の大きさが基準値以上であった場合、正常に光スイッチ200が動作していると判断してもよい。一方、判断部160は、それ以外の場合、光スイッチ200が誤接続していると判断する。
【0021】
一方、偏波変動部120が、出力用光ファイバ24に光信号を出力する場合に光信号の偏波状態を第1周波数で変動させた場合を考える。この場合、判断部160は、例えば、偏波変動測定部140で測定された光信号の偏波状態の時間変動のうち、第1周波数成分の大きさが基準値未満であった場合、正常に光スイッチ200が動作していると判断する。一方、判断部160は、偏波変動測定部140で測定された光信号の偏波状態の時間変動のうち、第1周波数成分の大きさが基準値以上であった場合、光スイッチ200が誤接続していると判断する。
【0022】
なお判断部160は、偏波変動測定部140で測定された光信号の偏波状態の時間変動のうち、最大の周波数成分が第1周波数ではなかった場合、正常に光スイッチ200が動作していると判断することもできる。一方、判断部160は、それ以外の場合、光スイッチ200が誤接続していると判断する。この場合において判断部160は、最大の周波数成分が第1周波数であり、かつ第1周波数成分の大きさが基準値以上であった場合にのみ、光スイッチ200が誤接続していると判断してもよい。
【0023】
すなわち本実施形態では、光信号の偏波状態の変動の周波数成分を、光スイッチ200が接続しようとしている出力ポート204の識別子として用いる。従って、光スイッチ200の誤接続を検出することができる。また、光信号の偏波状態を周期的に変動させればよい。このため、光信号が波長多重・偏波多重した状態であっても、インサービスで光スイッチ200の誤接続を検出することができる。また主信号の劣化を抑制することができる。
【0024】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態に係る光スイッチ監視装置100の構成を示す図である。本実施形態に係る光スイッチ監視装置100は、以下の点を除いて第1の実施形態に係る光スイッチ監視装置100と同様の構成である。
【0025】
まず、偏波変動部120は、偏波状態変動素子122及びドライバ部123を有している。ドライバ部123は、ドライバ124及び周波数源125を有している。
【0026】
また、偏波変動測定部140は、偏波状態検出部142及び偏波成分検出部144を有している。偏波状態検出部142は、例えばポラリメータであり、出力用光ファイバ22に出力される光信号の偏波状態を連続的に検出する。偏波成分検出部144は、例えばFFT(First Fourier Transfer)を有しており、偏波状態検出部142が検出した偏波状態を例えばフーリエ変換することにより、その偏波状態の変動の周波数成分を検出する。偏波成分検出部144の検出結果は、判断部160に入力される。本実施形態において判断部160は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)である。
【0027】
また光スイッチ監視装置100は、コントローラ180を備えている。コントローラ180は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、周波数源125、偏波変動測定部140、及び判断部160を制御している。
【0028】
コントローラ180は、管理装置300に接続している。管理装置300は、光スイッチ200を制御しており、いずれの出力ポート204に光信号を出力するかを決定している。コントローラ180は、管理装置300から、光信号がいずれの出力ポート204に出力されるかを示す情報を受信する。
【0029】
図2において、偏波状態変動素子122は、例えば偏波スクランブラである。入力用光ファイバ10に入力された光信号は、偏波状態変動素子122を通過する時に偏波状態が変化する。どのような変化を起こすかは、偏波状態変動素子122のドライバ124や周波数源125によって決まる。偏波状態変動素子122で偏波状態が変化した後、光信号は、光スイッチ200の入力ポート202に入力される。光スイッチ200の入力ポート202に入力された光信号は、管理装置300からの制御に応じて2つの出力ポート204のいずれかにスイッチングにより振り分けられる。
【0030】
例えば出力用光ファイバ24に接続している出力ポート204へ振り分けられた場合、光信号は、出力用光ファイバ24を介して後段の光伝送システムや光ノードに出力される。
【0031】
また出力用光ファイバ22に接続している出力ポート204へ振り分けられた場合、光信号は、分岐部210によって2つに分岐される。分岐した光信号の一方は、例えば、主信号系光受信機に入力される。分岐した光信号の他方は、光スイッチ監視装置100の偏波状態検出部142へ導かれる。
【0032】
偏波状態検出部142に入力された光信号は、偏波状態がモニタされる。そのモニタ結果が偏波成分検出部144へと入力され、偏波状態変動の周波数成分がモニタされる。偏波成分検出部144の解析結果は、判断部160へと入力される。判断部160における判断結果は、コントローラ180へ出力される。コントローラ180は、偏波状態検出部142、偏波成分検出部144、及び判断部160に対して初期設定を行うこともできる。また、コントローラ180は、誤接続検出結果を管理装置300へ通知する。
【0033】
以下、図2に示した光スイッチ監視装置100の機能を具体的に説明する。例えば、周波数源125が周波数f0の正弦波を発生し、ドライバ124がその周波数f0の正弦波を増幅し、偏波状態変動素子122を駆動するとする。この場合、偏波状態変動素子122を通過する光信号は、その偏波状態が周波数f0の速度で周期的に変化することになる。ただし、入力用光ファイバ10を通過してきた段階で、光信号には既に何らかの偏波状態変動が加わっていることが多い。この既存の偏波状態変動は、光伝送中に加わったものであると考えられ、不規則に変動していると考えられる。このように不規則な変動をしている場合の変動周波数スペクトルは、一般的に周波数成分の範囲は広いが、個々の周波数成分強度はそれほど大きくない。一方、偏波状態変動素子122によって加えられる変動の周波数成分f0は周波数成分強度が大きく、既存の偏波状態変動に起因した周波数成分と明確に区別することができる。このため、この周波数成分は、入力ポート202から光スイッチ200に入力する光信号(光パス)の識別子として機能する。なお、偏波状態変動素子122によって光信号に印加される偏波状態変動の周波数成分は、好ましくは、出力ポート204別に異なる値に設定されている。
【0034】
光スイッチ200では、管理装置300の制御の下、適切な光パスのルーティングが行われる。その結果、光信号は、一方の出力ポート204及び出力用光ファイバ24を介して後段の光ノードに向けて出力されるか、又は他方の出力ポート204、出力用光ファイバ22及び主信号系光受信機を介して、局側の伝送装置に出力される。ここで、光スイッチ200による光パスのルーティングを確実なものとするためには、ハードウェア的(物理的)に誤接続をモニタすることが必要不可欠である。そのため、出力ポート204からの光パス識別子付きの光信号を、分岐部210によって一部を光スイッチ監視装置100の偏波状態検出部142へと導く。
【0035】
偏波状態検出部142は、偏波状態を検出する。偏波状態の検出方法はいくつかあるが、一例としてストークスベクトルを測定する方法がある。ストークスベクトルを取得することによって、光信号の偏波状態を一意に把握することができる。偏波状態検出部142より、ストークスベクトルが電気信号として偏波成分検出部144に出力される。偏波成分検出部144は、電気信号として入力されたストークスベクトルから、時間平均RFスペクトルを算出する。また、偏波成分検出部144は、そのRFスペクトルから強度が極大となる周波数成分を検出し、判断部160に極大周波数成分および強度情報を出力する。判断部160には、コントローラ180から、周波数源125に設定した基準周波数f0が予め入力されている。
【0036】
出力ポート204から出力される光信号が所望の信号であるかどうかは、例えば、判断部160に設定された基準周波数情報と、偏波成分検出部144から入力される極大周波数情報を比較することによって判定される。入力ポート202から入力され、光スイッチ200にて所望のルーティングが行われて出力ポート204から出力される光信号の偏波状態は、前述したように、偏波状態変動素子122によってf0の周波数成分を強く持つ。ここで、偏波成分検出部144にて検出された極大周波数をf1とする。f0とf1が一致すれば光スイッチ200にて所望のルーティングが行われていると判断できる。逆に、f0とf1が一致していない場合、光スイッチ200が誤接続を行っていると判断できる。
【0037】
判断部160にて誤接続と判定された場合、判断部160からコントローラ180に対してアラームが発令される。コントローラ180は、受け取ったアラームを管理装置300に転送する。管理装置300は、予め定められたアクションを実行することで、光スイッチ200における誤接続を解消するような制御を行う。光スイッチ200における誤接続状態が復旧すれば、判断部160で基準周波数情報と、偏波成分検出部144から入力される極大周波数情報が一致することになるため、判断部160は、コントローラ180へのアラームの発信を終了する。すると、コントローラ180から管理装置300へのアラームの転送も解除される。これにより、管理装置300は、誤接続が解消したことを認識することができる。
【0038】
(第3の実施形態)
図3は、第3の実施形態に係る光スイッチシステムの構成を示す図である。この光スイッチシステムは、以下の点を除いて、第2の実施形態に係る光スイッチシステムと同様である。
【0039】
まず、光スイッチ200は、2入力2出力である。ただし光スイッチ200は、図4に示すように、4入力4出力の光スイッチであっても良い。図4に示す例において、光スイッチ200は2つのサブスイッチ206を有している。
【0040】
また、この光スイッチシステムは、光スイッチ監視装置100を2つ有している。一方の光スイッチ監視装置100は入力用光ファイバ10及び出力用光ファイバ24に接続しており、他方の光スイッチ監視装置100は入力用光ファイバ12及び出力用光ファイバ22に接続している。そして、出力用光ファイバ22で観測される識別子の周波数をf1、出力用光ファイバ24で観測される識別子の周波数をf2とする。
【0041】
そして光スイッチ200の誤接続の形態は、ある入力ポート202に入力された光信号が意図しない出力ポート204に出力される場合のほか、2つの入力ポート202に入力された光信号がいずれも同一の出力ポート204に出力される場合が考えられる。
【0042】
最初に、誤接続がない場合について詳細に説明する。光スイッチ200が正しく動作している場合、入力用光ファイバ12に接続している入力ポート202は、出力用光ファイバ22に接続している出力ポート204に接続されている。出力用光ファイバ22に出力される光信号の一部が光スイッチ監視装置100の偏波状態検出部142へ入力される。偏波状態検出部142では、入力された光信号の基本偏光成分毎の光強度が測定することにより、ストークスベクトルが算出される。測定されたストークスベクトルは、電気信号として偏波成分検出部144へと入力される。
【0043】
図5は、偏波変動部120によって設定された周波数f0=50Hzとした場合に偏波状態検出部142で測定されるストークスベクトルをプロットしたものである。入力ポート202に入力される光信号の偏波状態変動は、偏波状態変動素子122によって付加されるだけでなく、偏波状態変動素子122入力前段までに光ファイバの振動等によってランダムに付加される成分もある。このため、図5に示す偏波状態の変動は、純粋な正弦波にはなっていない。
【0044】
図6は、偏波成分検出部144が検出した光信号の偏波状態変動の周波数成分の一例を示す。本図に示す例では、50Hzに強い強度ピークが存在する。このため、判断部160は、強度が極大となる周波数成分すなわちf1を50Hzと認識する。また、判断部160は、コントローラ180から、周波数源125に設定した基準周波数f0が50Hzであることが与えられている。そして判断部160は、f1=f0の条件が成立することを認識する。これにより、光スイッチ200で意図したルーティングが行われていること、すなわち誤接続していないことがわかる。
【0045】
次に、誤接続がある場合について詳細に説明する。ここで、入力用光ファイバ10を出力用光ファイバ24に接続し、かつ入力用光ファイバ12を出力用光ファイバ22に接続すべき場合を考える。入力用光ファイバ10に接続する光スイッチ監視装置100は、入力用光ファイバ10を伝達する光信号に付加する識別子の周波数を、例えば55Hzに設定する。また入力用光ファイバ12を伝達する光信号に付加する識別子の周波数を、例えば50Hzに設定する。
【0046】
誤接続がなければ、前述のように、出力用光ファイバ22に接続する判断部160で検出される極大周波数成分は50Hzになるはずであり、出力用光ファイバ24に接続する判断部160で検出される極大周波数成分は55Hzになるはずである。
【0047】
一方、例えば、入力用光ファイバ10を出力用光ファイバ22へ接続し、入力用光ファイバ12を出力用光ファイバ24に接続してしまった場合、判断部160は、極大周波数成分f1が50Hzとならないため、f0≠f1であることを認識する。
【0048】
また、入力用光ファイバ10及び入力用光ファイバ12の双方が出力用光ファイバ22に接続されてしまった場合、出力用光ファイバ22に接続する偏波状態検出部142で観測されるストークスベクトルの時間変化は、図7のようになる。そして偏波成分検出部144では図8のような周波数スペクトルが観測される。判断部160は、強度が基準値以上となる周波数成分が複数あることを認識し、これにより、出力用光ファイバ22に複数の入力用光ファイバ10,12が接続されていると判断できる。従って、判断部160は誤接続があると判断できる。
【0049】
上述のように、誤接続有りと判断された場合、判断部160はコントローラ180にアラームを発信する。コントローラ180は管理装置300にアラームを転送する。これによって、管理装置300は光スイッチ200に誤接続が発生していることを認識することができる。
【0050】
(第4の実施形態)
図9は、第4の実施形態に係る光スイッチシステムの構成を示す図である。本実施形態に係る光スイッチシステムは、光スイッチ監視装置100が偏波変動除去部130を有している点を除いて、第2の実施形態に係る光スイッチ監視装置100と同様の構成である。
【0051】
偏波変動除去部130は、出力用光ファイバ22のうち分岐部210より後に設けられている。偏波変動除去部130は、光信号の偏波状態を、偏波状態変動素子122と同一の周波数(第1周波数)で変動させることにより、光信号の偏波状態に含まれる第1周波数の成分を減衰(又は消去)させる。
【0052】
偏波変動除去部130は、偏波状態変動素子132及びドライバ134を備えている。ドライバ134は、偏波状態変動素子122と同一の周波数源125から周波数f0が電気信号として入力される。ドライバ134は、周波数源125から入力された電気信号を位相反転させた後、偏波状態変動素子132に入力する。偏波状態変動素子132は例えば偏波スクランブラであり、ドライバ134から入力された信号に従って、光信号に偏波変動を加える。
【0053】
本実施形態によれば、出力用光ファイバ22から出力される光信号から、偏波状態に含まれる第1周波数の成分を減衰させる。これにより、出力用光ファイバ22から出力される光信号に、光パスの識別子が残ることを防止できる。従って、後段ノードにおいて光パスの識別子用の周波数の選択肢を増やすことができる。
【0054】
(第5の実施形態)
図10は、第5の実施形態に係る光スイッチシステムの構成を示す図である。本実施形態に係る光スイッチシステムは、以下の点を除いて第2の実施形態に係る光スイッチ監視装置100と同様の構成である。
【0055】
まず、出力用光ファイバ24にも分岐部210が設けられている。そして出力用光ファイバ24から分岐した光信号と、出力用光ファイバ22から分岐した光信号は、それぞれ異なる偏波状態検出部142に入力される。それぞれの偏波状態検出部142は、入力された光信号の偏波状態をモニタする。そしてそのモニタ結果は、同一の偏波成分検出部144に入力され、同一の判断部160によって接続の判断が行われる。
【0056】
なお、本図に示す例において、図3に示した例と同様に、複数の入力ポート202が設けれていても良い。この場合、複数の入力ポート202のそれぞれに対して、偏波変動部120が設けられる。これら複数の偏波変動部120は、同一のコントローラ180によって制御されても良い。
【0057】
本実施形態によっても、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、光スイッチ200が有する複数の出力ポート204の全てを、同一の光スイッチ監視装置100で管理することができる。したがって、入力ポート202と出力ポート204の組み合わせがどのようになった場合でも、光スイッチ200による誤接続を検出することができる。
【0058】
なお上記した実施形態によれば、以下の発明が開示されている。
(付記1)
光スイッチの入力ポートより前に設けられ、前記入力ポートに入力される光信号を前記光スイッチの第1の出力ポートから出力させる場合に、当該光信号の偏波状態を第1周波数で変動させる偏波変動手段と、
前記光スイッチのいずれかの出力ポートから出力される光信号の偏波状態の時間変動を測定する偏波変動測定手段と、
前記偏波状態の時間変動に含まれる周波数成分の大きさに基づいて、前記光スイッチの誤動作の有無を判断する判断手段と、
を備える光スイッチ監視装置。
(付記2)
付記1に記載の光スイッチ監視装置において、
前記偏波変動測定手段は、前記第1の出力ポートから出力される光信号の偏波状態の時間変動を測定する光スイッチ監視装置。
(付記3)
付記2に記載の光スイッチ監視装置において、
前記判断手段は、前記時間変動における前記第1周波数大きさが閾値以下である場合に、前記光スイッチの誤動作があると判断する光スイッチ監視装置。
(付記4)
付記2に記載の光スイッチ監視装置において、
前記判断手段は、前記時間変動における最大周波数成分が前記第1周波数に一致しない場合に、前記光スイッチの誤動作があると判断する光スイッチ監視装置。
(付記5)
付記1〜4のいずれか一つに記載の光スイッチ監視装置において、
前記偏波変動手段は、前記光信号を出力すべき前記出力ポート別に、前記第1周波数を異なる値に設定する光スイッチ監視装置。
(付記6)
付記1〜5のいずれか一つに記載の光スイッチ監視装置において、
前記第1の出力ポートに設けられ、前記光信号の偏波状態を前記第1周波数で変動させることにより、前記光信号の偏波状態に含まれる前記第1周波数の成分を減衰させる偏波変動除去手段を備える光スイッチ監視装置。
(付記7)
付記1〜6のいずれか一つに記載の光スイッチ監視装置において、
前記偏波変動測定手段は、複数の前記出力ポートそれぞれに設けられており、
前記判断手段は、前記複数の偏波変動測定手段の測定結果に基づいて、前記光スイッチの誤動作の有無を判断する光スイッチ監視装置。
(付記8)
光スイッチと、
前記光スイッチの入力ポートより前に設けられ、前記入力ポートに入力される光信号の偏波状態を第1周波数で変動させる偏波変動手段と、
前記光スイッチの出力ポートから出力される光信号の偏波状態の時間変動を測定する偏波変動測定手段と、
前記偏波状態の時間変動に含まれる前記第1周波数成分の大きさに基づいて、前記光スイッチの誤動作の有無を判断する判断手段と、
を備える光スイッチシステム。
(付記9)
付記8に記載の光スイッチシステムにおいて、
前記偏波変動測定手段は、前記出力ポートから出力される光信号の偏波状態の時間変動を測定する光スイッチシステム。
(付記10)
付記9に記載の光スイッチシステムにおいて、
前記判断手段は、前記時間変動における前記第1周波数大きさが閾値以下である場合に、前記光スイッチの誤動作があると判断する光スイッチシステム。
(付記11)
付記9に記載の光スイッチシステムにおいて、
前記判断手段は、前記時間変動における最大周波数成分が前記第1周波数に一致しない場合に、前記光スイッチの誤動作があると判断する光スイッチシステム。
(付記12)
付記8〜11のいずれか一つに記載の光スイッチシステムにおいて、
前記偏波変動手段は、前記光信号を出力すべき前記出力ポート別に、前記第1周波数を異なる値に設定する光スイッチシステム。
(付記13)
付記8〜12のいずれか一つに記載の光スイッチシステムにおいて、
前記出力ポートに設けられ、前記光信号の偏波状態を前記第1周波数で変動させることにより、前記光信号の偏波状態に含まれる前記第1周波数の成分を減衰させる偏波変動除去手段を備える光スイッチシステム。
(付記14)
付記8〜13のいずれか一つに記載の光スイッチシステムにおいて、
前記偏波変動測定手段は、複数の前記出力ポートそれぞれに設けられており、
前記判断手段は、前記複数の偏波変動測定手段の測定結果に基づいて、前記光スイッチの誤動作の有無を判断する光スイッチシステム。
(付記15)
入力ポートに入力される光信号を前記光スイッチの第1の出力ポートから出力させる場合に、当該光信号の偏波状態を第1周波数で変動させ、
前記光スイッチのいずれかの出力ポートから出力される光信号の偏波状態の時間変動を測定し、
前記偏波状態の時間変動に含まれる周波数成分の大きさに基づいて、前記光スイッチの誤動作の有無を判断する光スイッチ監視方法。
(付記16)
付記15に記載の光スイッチ監視方法において、
前記第1の出力ポートから出力される光信号の偏波状態の時間変動を測定する光スイッチ監視方法。
(付記17)
付記16に記載の光スイッチ監視方法において、
前記時間変動における前記第1周波数大きさが閾値以下である場合に、前記光スイッチの誤動作があると判断する光スイッチ監視方法。
(付記18)
付記16に記載の光スイッチ監視方法において、
前記時間変動における最大周波数成分が前記第1周波数に一致しない場合に、前記光スイッチの誤動作があると判断する光スイッチ監視方法。
(付記19)
付記15〜18のいずれか一つに記載の光スイッチ監視方法において、
前記光信号を出力すべき前記出力ポート別に、前記第1周波数を異なる値に設定する光スイッチ監視方法。
(付記20)
付記15〜19のいずれか一つに記載の光スイッチ監視方法において、
前記第1の出力ポートにおいて、前記光信号の偏波状態を前記第1周波数で変動させることにより、前記光信号の偏波状態に含まれる前記第1周波数の成分を減衰させる光スイッチ監視方法。
(付記21)
付記15〜20のいずれか一つに記載の光スイッチ監視方法において、
前記偏波変動測定手段は、複数の前記出力ポートそれぞれに設けられており、
前記判断手段は、前記複数の偏波変動測定手段の測定結果に基づいて、前記光スイッチの誤動作の有無を判断する光スイッチ監視方法。
【0059】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0060】
10 入力用光ファイバ
12 入力用光ファイバ
22 出力用光ファイバ
24 出力用光ファイバ
100 光スイッチ監視装置
120 偏波変動部
122 偏波状態変動素子
123 ドライバ部
124 ドライバ
125 周波数源
130 偏波変動除去部
132 偏波状態変動素子
134 ドライバ
140 偏波変動測定部
142 偏波状態検出部
144 偏波成分検出部
160 判断部
180 コントローラ
200 光スイッチ
202 入力ポート
204 出力ポート
206 サブスイッチ
210 分岐部
300 管理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光スイッチの入力ポートより前に設けられ、前記入力ポートに入力される光信号を前記光スイッチの第1の出力ポートから出力させる場合に、当該光信号の偏波状態を第1周波数で変動させる偏波変動手段と、
前記光スイッチのいずれかの出力ポートから出力される光信号の偏波状態の時間変動を測定する偏波変動測定手段と、
前記偏波状態の時間変動に含まれる周波数成分の大きさに基づいて、前記光スイッチの誤動作の有無を判断する判断手段と、
を備える光スイッチ監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光スイッチ監視装置において、
前記偏波変動測定手段は、前記第1の出力ポートから出力される光信号の偏波状態の時間変動を測定する光スイッチ監視装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光スイッチ監視装置において、
前記判断手段は、前記時間変動における前記第1周波数大きさが閾値以下である場合に、前記光スイッチの誤動作があると判断する光スイッチ監視装置。
【請求項4】
請求項2に記載の光スイッチ監視装置において、
前記判断手段は、前記時間変動における最大周波数成分が前記第1周波数に一致しない場合に、前記光スイッチの誤動作があると判断する光スイッチ監視装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の光スイッチ監視装置において、
前記偏波変動手段は、前記光信号を出力すべき前記出力ポート別に、前記第1周波数を異なる値に設定する光スイッチ監視装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の光スイッチ監視装置において、
前記第1の出力ポートに設けられ、前記光信号の偏波状態を前記第1周波数で変動させることにより、前記光信号の偏波状態に含まれる前記第1周波数の成分を減衰させる偏波変動除去手段を備える光スイッチ監視装置。
【請求項7】
光スイッチと、
前記光スイッチの入力ポートより前に設けられ、前記入力ポートに入力される光信号の偏波状態を第1周波数で変動させる偏波変動手段と、
前記光スイッチの出力ポートから出力される光信号の偏波状態の時間変動を測定する偏波変動測定手段と、
前記偏波状態の時間変動に含まれる前記第1周波数成分の大きさに基づいて、前記光スイッチの誤動作の有無を判断する判断手段と、
を備える光スイッチシステム。
【請求項8】
入力ポートに入力される光信号を前記光スイッチの第1の出力ポートから出力させる場合に、当該光信号の偏波状態を第1周波数で変動させ、
前記光スイッチのいずれかの出力ポートから出力される光信号の偏波状態の時間変動を測定し、
前記偏波状態の時間変動に含まれる周波数成分の大きさに基づいて、前記光スイッチの誤動作の有無を判断する光スイッチ監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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