説明

光スペクトラムアナライザ

【課題】入射光の直交する偏光毎の強度測定が行え、且つ高分解能、低コスト、小型な光スペクトラムアナライザを提供する。
【解決手段】被測定光Pxを第1レンズ22で平行光にして偏光分離部23に入射して直交偏光成分を分離し、その一方の偏光方向を1/2波長板24で90度回転させて、他方の偏光方向に合わせて、波長選択部29の回折格子30に入射させている。また、偏光保存型光ファイバ41、42へ各偏光成分を集光入射するためのレンズと、偏光保存型光ファイバ41、42で折り返された各偏光成分を平行ビームにして回折格子30へ再入射させるためのレンズとを単一の第2レンズ40によって共通化している。さらに、最終次選択光(この例では第4次選択光)を、第3、第4レンズ45、46で集光しスリット47、48を通過させて受光器50、51で受光している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光の直交する偏光毎の強度測定が行え、且つ高分解能、低コスト、小型な光スペクトラムアナライザを実現するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、インターネットの急激な進歩による光通信の大容量化に伴い、WDM(Wavelength Division Multiplexing)の波長高密度化が進み、それらのスペクトラムを評価する光スペクトラムアナライザの性能として、より高分解能が要求されてきた。
【0003】
また、ROADM(Reconfigurable Optical
Add/Drop Multiplexer)ベースのネットワークにおいては、従来の信号品質評価法である隣接ピーク間のノイズレベルがフラットであることを前提したOSNR(Optical
Signal-to-Noise Ratio 光信号対雑音比)を測定するOut Band OSNR法だけでなく、信号帯域内におけるIn Band OSNR法が要求されてきている。
【0004】
In Band OSNRの測定では、WDM信号光の波長について、直交する偏光毎の信号強度を測定する必要がある。そのための構成として、入力光を互いに直交する偏光成分に偏光分離し、回折格子とミラーとからなるリトマン型の分光部に入射し、回折格子で特定波長帯について2回の波長選択処理を受けた各偏光成分の光を偏光保存型光ファイバ(PMF)によって取り出し、再び分光部に入射してさらに2回の波長選択処理を行い、出射用光ファイバで取り出して受光器にそれぞれ入射させている。
【0005】
なお、上記構成の光スペクトラムアナライザの例は、次の特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許 US6930776 B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記した特許文献1の従来構成の光スペクトラムアナライザでは、偏光保存型光ファイバが4本、出射用光ファイバが2本、レンズが6個必要であり、そのために大型で、コスト高になるという問題があった。
【0008】
本発明は、この問題を解決し、入射光の直交する偏光毎の強度測定が行え、且つ高分解能、低コスト、小型な光スペクトラムアナライザを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の光スペクトラムアナライザは、
被測定光を入射させるための光入射端子(20a)と、
前記光入射端子に入射された被測定光を平行光にする第1レンズ(22)と、
前記第1レンズから出射された平行光を受けて、互いに直交する偏光成分に分離する偏光分離部(23)と、
前記偏光分離部から出射された偏光成分の一方を受けてその偏光方向を90度回転させ、他方の偏光成分の偏光方向に合わせる1/2波長板(24)と、
一面側に刻線が平行に設けられた少なくとも一つの回折格子(30、31)を有し、前記偏光方向が合わされた各偏光成分を、前記刻線の長さ方向にずれた位置に同一入射角で受けて、特定波長帯の光を特定方向に選択的に出射する波長選択部(29)と、
前記波長選択部の前記回折格子の前記刻線に直交する平面上で互いに直交する2つの反射面(35a、35b)をもち、前記波長選択部から前記特定方向に出射される前記特定波長帯の選択光を一方の反射面で受けて他方の反射面へ反射させ、該他方の反射面でさらに反射させて、入射時と平行で前記刻線方向にずれた光軸で折り返す直交ミラー(35)と、
前記直交ミラーまたは前記波長選択部の回折格子を前記刻線と平行な軸で所定角度範囲回動させて、前記直交ミラーから前記波長選択部に折り返される前記特定波長帯の光の中心波長を掃引させる回動装置(36)と、
前記波長選択部に対する入射光軸と平行で且つ前記刻線方向にずれた光軸上にそれぞれ配置された集光用の第2、第3、第4のレンズ(40、45、46)と、
前記第2レンズで集光された光を一端側で受けて所定距離伝搬させ、他端側から入射時と同一の偏光状態で前記第2レンズへ折り返す第1、第2の偏光保存型光ファイバ(41、42)と、
前記第3、第4のレンズによって集光された光の前記刻線に直交する方向の幅をそれぞれ制限して波長選択度を高くするための第1、第2のスリット(47、48)と、
前記第1、第2のスリットを通過した光を受けてその強度を検出する第1、第2の受光器(50、51)とを備え、
前記偏光方向が合わされた各偏光成分に対して前記波長選択部が前記特定方向に出射する第1次選択光を前記直交ミラーにより前記刻線方向にずれた光軸で前記波長選択部に折り返し、
該折り返し光に対して前記波長選択部が示す入射時と可逆な波長選択作用によって選択される前記特定波長帯の第2次選択光を前記第2レンズに入射して、その各偏光成分を前記第1、第2の偏光保存型光ファイバに入射させ、
該第1、第2の偏光保存型光ファイバで折り返されて前記第2レンズを介して入射された光に対して前記波長選択部が前記特定方向に出射する前記特定波長帯の第3次選択光を前記直交ミラーにより再度折り返し、
該直交ミラーにより再度折り返された光に対して前記波長選択部が出射する前記特定波長帯の第4次選択光の各偏光成分を前記第3、第4のレンズにより集光し、前記第1、第2のスリットを通過させて、前記第1、第2の受光器に入射させ、該第1、第2の受光器の出力に基づいて、前記被測定光の直交する偏光成分のスペクトラム特性を求めることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2の光スペクトラムアナライザは、請求項1記載の光スペクトラムアナライザにおいて、
前記波長選択部が単一の回折格子によって構成されていることを特徴とする。
【0011】
また、また、本発明の請求項2の光スペクトラムアナライザは、請求項1記載の光スペクトラムアナライザにおいて、
前記波長選択部が、互いに対向する二つの回折格子によって構成されており、
前記波長選択部に入射された光は、前記特定波長帯について前記二つの回折格子による2度の波長選択作用を受けて出射されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項3の光スペクトラムアナライザは、請求項1または請求項2記載の光スペクトラムアナライザにおいて、
前記光入射端子と前記偏光分離部の間に、前記偏光分離部に入射される被測定光の偏光を制御するための偏光コントローラ(70)を配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明の光スペクトラムアナライザは、被測定光を第1レンズで平行光にして偏光分離部に入射して直交偏光成分を分離し、その一方の偏光方向を1/2波長板で90度回転させて、他方の偏光方向に合わせて、波長選択部の回折格子に入射させている。また、第1、第2の偏光保存型光ファイバへ各偏光成分を集光入射するためのレンズと、第1、第2の偏光保存型光ファイバでそれぞれ折り返された各偏光成分を平行ビームにして波長選択部へ再入射させるためのレンズとを単一の第2レンズによって共通化している。さらに、最終選択光を、第3、第4レンズで集光し第1、第2のスリットを通過させて受光器でそれぞれ受光している。
【0014】
このため、従来装置に比べて、偏光保存型ファイバが2本で済み、出射用光ファイバが不要となり、さらにレンズが4個で構成でき、格段に小型化、低コスト化できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態の構成図
【図2】第1実施形態の光経路を平面的に表した模式図
【図3】偏光分離部の構成例を示す図
【図4】ビームエキスパンダの構成例を示す図
【図5】第2レンズと偏光保存型光ファイバの位置関係を表す図
【図6】本発明の第2の実施形態の構成図
【図7】第2実施形態の光経路を平面的に表した模式図
【図8】二つの回折格子の配置に関する説明図
【図9】光入射部に偏光コントローラを設けた例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、図面に基づいて本発明の第1の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した光スペクトラムアナライザ20の構成を示し、図2は、その光学系を平面的に示した模式図である。
【0017】
これらの図において、光スペクトラムアナライザ20は、光入射端子20a(光コネクタ)から入射された被測定光Px(偏光多重信号光)を、ファイバ21を介して第1レンズ(コリメータ)22に入射させ、平行光に変換して偏光分離部23に入射し、直交する二つの偏光成分Pp、Psに分離し、平行な光軸で出射する。
【0018】
なお、ここで、実施形態の光学系に対して、xyzの3次元直交座標空間を定義し、第1レンズ22の光軸(偏光分離部23の入射光軸)の方向をx軸方向、被測定光Pxの一方の偏光成分Psの偏光方向がz軸方向(光軸に直交し且つ鉛直方向に沿った方向)、他方の偏光成分Ppの偏光がy軸方向(光軸に直交しかつ水平方向に沿った方向)とする。
【0019】
偏光分離部23は、図3に示しているように、被測定光Pxの偏光成分Psを入射光軸を延長した光軸で出射し、他方の偏光成分Ppを入射光軸と直交する方向に出射する偏光ビームスプリッタ23aと、偏光ビームスプリッタ23aから出射された他方の偏光成分Ppの光軸に対して45度の傾きをもち、偏光成分Ppを一方の偏光成分Psと平行な光軸で出射させる平面ミラー23bとで構成されている(なお、図3に示した偏光方向は、光の進行方向x軸側から見た図である)。
【0020】
偏光分離部23で分離された偏光成分Pp、Psのうち、偏光方向が水平の成分Ppは、1/2波長板24に入射され、その偏光方向が90度回転されて、偏光成分Psと同じようにz軸に沿った方向に合わされて、偏光成分Pp′として出射される。
【0021】
これら二つの偏光成分Pp′、Psは、z軸方向に離間した平行な光軸でビームエキスパンダ25に入射され、それぞれのビーム幅が拡げられた状態で、この実施形態の波長選択部29を構成する回折格子30に入射される。
【0022】
ビームエキスパンダ25は、例えば、図4に示すように、z軸方向に延びた2つの三角柱状のレンズ25a、25bによって、入射する偏光成分Pp′、Psのy軸方向のビーム幅WaをWbに拡げる。なお、ここではビームエキスパンダ25を用い、狭い間隔をもってz軸方向に延びた回折格子30の一面側に微細な間隔で平行に設けられた刻線(回折溝)に対する入射光のスポット幅を広くすることで回折効率を高くしているが、このビームエキスパンダ25を省略し、二つの偏光成分Pp′、Psを直接回折格子30に入射させてもよい。
【0023】
ビームエキスパンダ25からz軸方向に離間した平行な光軸で出射された偏光成分Pp(0)(=Pp′)、Ps(0)(=Ps)は、回折格子30の刻線の長さ方向(z軸方向)にずれた位置に同一入射角でそれぞれ入射され、その光に含まれる波長成分が回折格子30の回折作用により波長に応じた角度(xy平面上において)で出射される。
【0024】
なお、この実施形態では波長選択部29が単一の回折格子30で構成された例を示すが、後述のように波長選択部29を二つの回折格子で構成することも可能でである。
【0025】
回折格子30の一面側には直交ミラー35が配置されている。直交ミラー35は、回折格子30の刻線に直交する平面上で互いに直交する2つの反射面35a、35bを有し、それらの反射面35a、35bを、回折格子30の刻線に対して45度傾けた状態でその刻線が設けられた面に向けて配置されている。なお、二つの反射面35a、35bがなす角度は90度であるが、反射面35a、35bの刻線に対する角度は等しい(45度)必要はなく、その和が90度であれば、例えば30度と60度、40度と50度等のように異なっていてもよい。
【0026】
この直交ミラー35は、回動装置36によって回折格子30の刻線に平行な軸(z軸に平行な軸)で所定角度範囲回動駆動される。
【0027】
ここで、各偏光成分Pp(0)、Ps(0)に対して回折格子30が回折した光のうち、直交ミラー35の反射面35a、35bの境界線35cに直交する向き(特定方向)に、特定波長帯(中心波長λ1とする)の光が第1次選択光Pp(1)、Ps(1)として出射され、直交ミラー35の一方の反射面(ここでは下側の反射面35bとする)に45度の角度で入射し、z軸に沿って上方に反射され、上側の反射面35aに45度の角度で入射して、回折格子30に対してz軸方向にずれた平行な光軸で折り返される。
【0028】
この折り返し光Pp(1)′、Ps(1)′は、第1次選択光Pp(1)、Ps(1)の出射角と同じ入射角で回折格子30に再入射される。
【0029】
したがって、回折格子30の回折特性の可逆性から、再入射した光Pp(1)′、Ps(1)′に対する回折光のうち、最初の入射光Pp(0)、Ps(0)の入射光軸に平行でz軸に沿って上方にシフトした方向には、前記特定波長帯の光が第2次選択光Pp(2)、Ps(2)として選択的に出射され、その第2次選択光Pp(2)、Ps(2)がビームエキスパンダ25に入射されて、ビーム幅が元の幅に狭められて第2レンズ40に入射される。
【0030】
ここで、図5に示すように、第2レンズ40に入射された第2次選択光Pp(2)、Ps(2)の光軸は、第2レンズ40の中心軸よりz軸方向(ここでは下方とする)に僅かにずれていて、第2レンズ40の焦点距離の位置の近傍でその光軸のずれ分だけz軸方向にずれた位置に集光され、その位置に配置された偏光保存型光ファイバ(PMF)41、42の一端41a、42aに入射される。
【0031】
偏光保存型光ファイバ41、42の他端41b、42bは、第2レンズ40の焦点距離の位置で且つレンズ中心軸から前記一端41a、42aと同じ距離z軸方向の上方側にずれた位置に配置されており、一端41a、42aで受けた光を所定距離伝搬させ、他端41b、42b側から入射時と同一の偏光状態で第2レンズ40へ折り返す。
【0032】
偏光保存型光ファイバ41、42からの折り返し光Pp(2)′、Ps(2)′は、第2レンズ40によって平行光に変換され、ビームエキスパンダ25によりそのビーム幅が拡げられて、再び回折格子30に入射される。
【0033】
ここで、回折格子30に再入射される折り返し光Pp(2)′、Ps(2)′の光軸は、最初の入射光Pp(0)、Ps(0)の光軸と平行でz軸方向にずれており、また、第2次選択光Pp(2)、Ps(2)の光軸に対してもz軸方向にずれている。
【0034】
したがって、最初の入射光Pp(0)、Ps(0)に対する2回の波長選択動作と同様の動作が、折り返し光Pp(2)′、Ps(2)′に対しても互いの動作を妨げることなく行われる。
【0035】
即ち、折り返し光Pp(2)′、Ps(2)′が回折格子30に入射され、その回折光のうち特定波長帯の偏光成分Pp(3)、Ps(3)が、第3次選択光として直交ミラー35に入射されて、その折り返し光Pp(3)′、Ps(3)′が回折格子30に再入射され、特定波長帯について4度目の選択処理を受けた第4次選択光Pp(4)、Ps(4)が、折り返し光Pp(2)′、Ps(2)′の光軸に対してz軸方向に平行にずれた光軸でビームエキスパンダ25に入射され、元のビーム幅に狭められて出射される。
【0036】
第4次選択光Pp(4)、Ps(4)は、それぞれ第3レンズ45、第4レンズ46によって集光され、その焦点位置にz軸方向に延びた第1スリット47、第2スリット48により、その通過する光の幅方向(刻線と直交する方向)が制限されて、余分な波長成分がさらに除去されて、第1の受光器50と第2の受光器51にそれぞれ入射される。
【0037】
したがって、第1の受光器50と第2の受光器51には、入射光Pxの直交する二つの偏光成分のうち、回折格子30への光入射角、回折格子30に対する直交ミラー35の角度によって決まる特定波長帯の成分が、4回の波長選択処理を受けてそれぞれ入射され、その強度が検出されることになる。そして、直交ミラー35の回動に伴い、選択される特定波長帯が掃引され、その被測定光の波長毎の偏光成分の強度を表す信号PDp(λ)、PDs(λ)が出力される。
【0038】
これらの信号PDp(λ)、PDs(λ)は、A/D変換器52、53により、デジタル値に変換されて、演算処理部60に入力される。
【0039】
演算処理部60は、二つの偏光成分についての波長対強度の情報(スペクトラム情報)を求めるとともに、入射光Pxの特性、品質などを評価するための種々の演算処理を行い、その結果を表示部61に出力するが、ここでは、WDM信号光のIn Band OSNRを求める場合の処理について説明する。
【0040】
所定の波長領域の掃引によって得られたスペクトラムデータPDp(λ1)〜PDp(λN)、PDs(λ1)〜PDs(λN)について、WDMスペクトラムデータ、つまり両偏光成分の強度の和のスペクトラムデータを、
PD(λ1)=PDp(λ1)+PDs(λ1)
PD(λ2)=PDp(λ2)+PDs(λ2)
……
PD(λN)=PDp(λN)+PDs(λN)
によって求める。
【0041】
次にこのWDMスペクトラムから、信号光のセンター波長(またはピーク波長)、信号光レベルPsignalを求める。この信号光レベルPsignalは、スペクトラムのピークレベル、またはそれを含む波長範囲の信号光の強度を積分したレベルとする。
【0042】
次に、WDMの各チャンネルの信号光毎に、センタ波長から任意の波長範囲のデータを用いて、複数のデータグループを作成する。
【0043】
例えば、
PDp(λ1)→PD1(λa1)
PDs(λ1)→PD2(λa1)
PDp(λ2)→PD3(λa2)
PDs(λ2)→PD4(λa2)
……
……
PDp(λ[N−1])→PD1(λm1)
PDs(λ[N−1])→PD2(λm1)
PDp(λN)→PD3(λm2)
PDs(λN)→PD4(λm2)
【0044】
各データグループ、
{PD1(λa1),PD2(λa1),PD3(λa2),PD4(λa2)}
……
{PD1(λm1),PD2(λm1),PD3(λm2),PD4(λm2)}
について、Pase(λa)、…、Pase(λm)を算出する。
【0045】
そして、上記求めた複数のPase(λa)、…、Pase(λm)を、任意のフィッティング関数(例えば、1次〜5次までの関数、ガウス関数など)を用いてフィッティング処理し、Pase関数を求める。
【0046】
Pase関数からスペクトラムのセンタ波長(もしくはピーク波長)におけるASEノイズレベル(Amplified Spontaneous Emission noise :増幅された自然放出ノイズレベル)Paseを算出し、そのPaseと信号光レベル(Psignal)からOSNRを算出する。
【0047】
ここで、ASEノイズレベルPaseの演算について詳しく説明する。
異なる波長における光スペクトラムPDs、PDpの検出レベルのデータグループを、PD1(λm1)、PD2(λm1)、PD3(λm2)、PD4(λm2)とすると、伝送路のAdd/Dropのフィルタの帯域内においては、信号光レベルは光スペクトラムアナライザの波長掃引位置によって異なるが、ASEノイズレベルについては、偏光分離された直交成分の分離比率αは変わらない。
【0048】
したがって、検出データPD1(λm1)、PD2(λm1)、PD3(λm2)、PD4(λm2)は、ASEノイズパワーをPase、信号光パワーをPs、OSNRをPs/Pase、光スペクトラムアナライザの光バンドパスフィルタの帯域幅をB0、偏光成分の光分離比率をαとすると、以下のように表される。
【0049】
PD1(λm1)=Ps(λm1)(1−α)+Pase・B0/2 ……(1)
PD2(λm1)=Ps(λm1)・α+Pase・B0/2 ……(2)
PD3(λm2)=Ps(λm2)(1−α)+Pase・B0/2 ……(3)
PD4(λm2)=Ps(λm2)・α+Pase・B0/2 ……(4)
【0050】
式(1)−式(3)から、
PD1(λm1)−PD3(λm2)
=(1−α)[Ps(λm1)−Ps(λm2)]……(5)
【0051】
式(2)−式(4)から、
PD2(λm1)−PD4(λm2)
=α[Ps(λm1)−Ps(λm2)]……(6)
【0052】
式(5)/式(6)の演算により、
α=[PD2(λm1)−PD4(λm2)]
/[PD1(λm1)−PD3(λm2)+PD2(λm1)−PD4(λm2)]
……(7)
が得られる。
【0053】
一方、式(1)×α−式(2)×(1−α)の演算から、
Pase=2×[α・PD1(λm1)−(1−α)PD2(λm1)]
/[B0(2α−1)] ……(8)
となり、この式の演算により、Paseが求められる。
【0054】
そして、前記したように、
OSNR=(Psignal−Pase)/Pase
の演算により、In BandのOSNRが得られる。ただし、Psignalは、トータルスペクトラム(各偏光成分の和)を任意の範囲で積分したパワーもしくはピークパワーとする。また、Paseは、平均化処理あるいはフィッティング処理によって求めたASEノイズレベルである。
【0055】
このように、第1の実施形態の光スペクトラムアナライザ20は、被測定光Pxを第1レンズ22で平行光にして偏光分離部23に入射して直交偏光成分を分離し、その一方の偏光方向を1/2波長板24で90度回転させて、他方の偏光方向に合わせて、波長選択部29の回折格子30に入射させている。また、偏光保存型光ファイバ41、42へ各偏光成分を集光入射するためのレンズと、偏光保存型光ファイバ41、42で折り返された各偏光成分を平行ビームにして回折格子30へ再入射させるためのレンズとを単一の第2レンズ40によって共通化している。さらに、最終次選択光(この例では第4次選択光)を、第3、第4レンズ45、46で集光しスリット47、48を通過させて受光器50、51で受光している。
【0056】
このため、従来装置に比べて、偏光保存型光ファイバが2本で済み、出射用光ファイバが不要となり、さらにレンズが4個で構成でき、格段に小型化、低コスト化できる。
【0057】
(第2の実施形態)
前記実施形態の波長選択部29は単一の回折格子30で構成され、特定波長帯について回折格子30による4回の波長選択処理を行っていたが、さらに高い波長選択性が求められる場合には、図4、図5に示す光スペクトラムアナライザ20′のように、波長選択部29を二つの対向する回折格子30、31で構成し、波長選択部29に入射する光に対し、特定波長帯について回折格子30、31による波長選択処理をそれぞれ行って出射することで、計8回の波長選択処理がなされた光を得ることができる。
【0058】
この場合、二つの回折格子30、31は同一特性(刻線間隔が等しい)でその刻線がz軸と平行となり、後述する所定の位置関係を満たした状態で対向配置されている。
【0059】
ここで、回折格子30は、偏光方向が合わされた各偏光成分Pp(0)、Ps(0)を刻線の方向(z軸方向)にずれた位置に同一入射角で受け、その回折光を第2の回折格子31に出射する。
【0060】
また、回折格子31は、回折格子30から出射される回折光のうち、特定波長帯の回折光Pp(1)、Ps(1)を所定入射角で受け、直交ミラー35の反射面35a、35bの境界線35cに直交する向き(特定方向)に特定波長帯の光を第1次選択光Pp(2)、Ps(2)として出射する。なお、以下の説明では、前記第1の実施形態と対応させるために、波長選択部29から出射される光を第n次選択光と称し、回折格子30、31間の光を単に回折光と称す。
【0061】
直交ミラー35は、回折格子31の刻線に直交する平面上で互いに直交する2つの反射面35a、35bを有し、回折格子31から出射される第1次選択光Pp(2)、Ps(2)を、前記同様に、入射時と平行で刻線方向にずれた光軸で回折格子31に折り返す。なお、回動装置36は、回折格子30、31のいずれか一方(ここでは回折格子30)の角度を他方に対して所定範囲内で変化させて、特定波長を掃引する。
【0062】
この折り返し光を受けた回折格子31から特定波長帯の回折光Pp(3)、Ps(3)が、回折光Pp(1)、Ps(1)の光軸に対してz軸方向にずれた状態で回折格子30に再入射され、その回折光Pp(3)、Ps(3)に対して回折格子30が入射光Pp(0)、Ps(0)の光軸と平行な光軸で前記特定波長帯の第2次選択光Pp(4)、Ps(4)を出射する。
【0063】
この第2次選択光Pp(4)、Ps(4)は、前記同様に、ビームエキスパンダ25を介して第2レンズ40に入射され、偏光保存型光ファイバ41、42の一端41a、42a側に集光され、折り返されて他端41b、42b側から同一の偏光状態で第2レンズ40に出射される。
【0064】
その折り返し光Pp(4)′、Ps(4)′は、ビームエキスパンダ25を介して回折格子30に、最初の入射光Pp(0)、Ps(0)と同一入射角で入射され、その回折格子30の波長選択処理で特定波長帯の回折光Pp(5)、Ps(5)が得られ、この回折光Pp(5)、Ps(5)に対する回折格子31の波長選択処理により特定波長帯の第3次選択光Pp(6)、Ps(6)が得られ、それが直交ミラー35によって再度折り返され、その折り返し光Pp(6)′、Ps(6)′に対する回折格子31の波長選択処理により特定波長帯の回折光Pp(7)、Ps(7)が得られ、その回折光Pp(7)、Ps(7)に対する回折格子30の波長選択処理で特定波長帯の第4次選択光Pp(8)、Ps(8)が得られる。
【0065】
このようにして最終的に得られた第4次選択光Pp(8)、Ps(8)は、前記同様に、入射光Pp(0)、Ps(0)の光軸と平行でz軸方向にずれた光軸に沿ってそれぞれ第3レンズ45、第4レンズ46に入射されて、第1のスリット47、第2のスリット48を通過してさらに高い波長選択度でそれぞれ第1の受光器50、第2の受光器51に入射される。
【0066】
したがって、第1の受光器50と第2受光器51には、入射光Pxの直交する二つの偏光成分のうち、回折格子30への光入射角、回折格子30、31および直交ミラー35の角度、位置によって決まる特定波長帯の成分が、8回の波長選択処理を受けてそれぞれ入射され、その強度が検出されることになる。そして、一方の回折格子30の回動に伴い、選択される特定波長帯が掃引され、その被測定光の波長毎の偏光成分の強度を表す信号PDp(λ)、PDs(λ)が出力される。
【0067】
そして、この信号PDp(λ)、PDs(λ)に対する処理が前記同様に行われて、各偏光成分毎のスペクトラム特性やIn Band OSNRが求められる。
【0068】
次に、上記動作を実現するための二つの回折格子30、31の配置について説明する。図8に示すように、測定波長範囲のセンタ波長における回折格子30への入射角をi1、回折角をβ1、入射角と回折角のなす角を2・γ1とし、回折格子31の入射角をi2、回折角をβ2、入射角と回折角のなす角を2・γ2とする。
【0069】
ここで、図8に示しているように、回折格子30と架空の回折格子31′とを、2つの等しい角が(90−β1)となる2等辺三角形EBFの頂点B、Fに対称配置する。また、回折格子30の入射光の光軸が線分ABに一致し、回折光の光軸が線分BFに一致するものとする。ただし、点Aは、頂点Eから辺BFに引いた2等分線上の点である。
【0070】
回折格子30と架空の回折格子31′の入射角と回折角について考えると、図の対称性から明らかなように、A→Bへ向かって入射角i1で入射される光に対して回折格子30は、回折角β1でB→Fへ向かって回折光を出射し、回折格子31′に対してβ1と等しい入射角i2で入射させ、その入射光に対して回折格子31′はi1と等しい回折角β2でF→Aへ向かって回折光を出射する。
【0071】
続いて、このF→Aへ出射された回折光が、その光軸と平行で刻線方向にずれた光軸で折り返されて、A→Fへβ2と等しい入射角i3で回折格子31′に入射され、i2と等しい回折角β3でF→Bへ出射される。
【0072】
この回折光は、回折格子30に対してβ1と等しい入射角i4で入射され、i1と等しい回折角β4でB→A方向に出射される。
【0073】
したがって、架空の回折格子31′を、図の回折格子31のように、回折格子30により近い実装可能な位置まで、線分BFに沿って平行移動し、その回折格子31の回折面から線分AFと平行な光軸上に直交ミラー35を配置すれば、上記光軸の角度関係を維持したままで特定波長帯の2度ずつの波長選択と折り返しとを小型化した状態で実現できる。
【0074】
そして、この回折格子31に対して回折格子30を、刻線に平行な軸で回動させることで、選択波長の掃引が行える。
【0075】
この際、固定された回折格子31について、直交ミラー35で180度反射(折り返し)させるためには、回折格子31の回折角β2が一定(光軸が平行移動する)である必要があり、その固定された回折角β2に対し、波長λと入射角i2とが次の条件を満たすように変化する必要がある。
【0076】
sin(i2)=m・λ/d−sin(β2)
ここで、sin(β2)は、直交ミラー35の配置角度と回折格子31によって決定される定数、mは回折次数、dは回折格子の溝間隔を表す。
【0077】
上記条件を満たした状態で、回折格子30を回転させることで、波長λの掃引が可能となる。
【0078】
このように、第2の実施形態の光スペクトラムアナライザ20′は、第1の実施形態の光スペクトラムアナライザ20に比べて波長選択部29の回折格子が一つ増えるが、被測定光Pxを第1レンズ22で平行光にして偏光分離部23に入射して直交偏光成分を分離し、その一方の偏光方向を1/2波長板24で90度回転させて、他方の偏光方向に合わせて、波長選択部29に入射させている点、また、偏光保存型光ファイバ41、42へ各偏光成分を集光入射するためのレンズと、偏光保存型光ファイバ41、42で折り返された各偏光成分を平行ビームにして波長選択部29へ再入射させるためのレンズとを単一の第2レンズ40によって共通化している点、および、最終次選択光(第4次選択光)を、第3、第4レンズ45、46で集光しスリット47、48を通過させて受光器50、51で受光している点は共通である。
【0079】
このため、従来装置に比べて、偏光保存型ファイバが2本で済み、出射用光ファイバが不要となり、さらにレンズが4個で構成でき、格段に小型、低コストに高い波長選択性を持ち光スペクトラムアナライザが実現できる。
【0080】
なお、前記実施形態では、被測定光Pxの直交する二つの偏光成分がそれぞれx軸、y軸に沿っている最良の状態で偏光分離部23に入射させて、二つの偏光成分を正しく分離させていたが、偏光多重された光信号の場合、入射時の偏光面にずれがあると、互いの偏光成分が正しく分離されず、精度の高い測定が行えない。
【0081】
そのような場合には、図9に示すように、光入射端子20aと偏光分離部23の間に偏光コントロラー70を挿入し、被測定光Pxの偏光面を偏光コントローラ70によって調整して、被測定光Pxの直交する偏光成分を偏光分離部23で正しく分離できる状態(例えば、両偏光成分のレベルの和が最大となる状態)にすればよい。
【符号の説明】
【0082】
20、20′……光スペクトラムアナライザ、20a……光入射端子、22……第1レンズ、23……偏光分離部、23a……偏光ビームスプリッタ、23b……平面ミラー、24……1/2波長板、25……ビームキエスパンダ、29……波長選択部、30、31……回折格子、35……直交ミラー、36……回動装置、40……第2レンズ、41、42……偏光保存型光ファイバ、45……第3レンズ、46……第4レンズ、47……第1のスリット、48……第2のスリット、50……第1の受光器、51……第2の受光器、52、53……A/D変換器、60……演算処理部、61……表示部、70……偏光コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定光を入射させるための光入射端子(20a)と、
前記光入射端子に入射された被測定光を平行光にする第1レンズ(22)と、
前記第1レンズから出射された平行光を受けて、互いに直交する偏光成分に分離する偏光分離部(23)と、
前記偏光分離部から出射された偏光成分の一方を受けてその偏光方向を90度回転させ、他方の偏光成分の偏光方向に合わせる1/2波長板(24)と、
一面側に刻線が平行に設けられた少なくとも一つの回折格子(30、31)を有し、前記偏光方向が合わされた各偏光成分を、前記刻線の長さ方向にずれた位置に同一入射角で受けて、特定波長帯の光を特定方向に選択的に出射する波長選択部(29)と、
前記波長選択部の前記回折格子の前記刻線に直交する平面上で互いに直交する2つの反射面(35a、35b)をもち、前記波長選択部から前記特定方向に出射される前記特定波長帯の選択光を一方の反射面で受けて他方の反射面へ反射させ、該他方の反射面でさらに反射させて、入射時と平行で前記刻線方向にずれた光軸で折り返す直交ミラー(35)と、
前記直交ミラーまたは前記波長選択部の回折格子を前記刻線と平行な軸で所定角度範囲回動させて、前記直交ミラーから前記波長選択部に折り返される前記特定波長帯の光の中心波長を掃引させる回動装置(36)と、
前記波長選択部に対する入射光軸と平行で且つ前記刻線方向にずれた光軸上にそれぞれ配置された集光用の第2、第3、第4のレンズ(40、45、46)と、
前記第2レンズで集光された光を一端側で受けて所定距離伝搬させ、他端側から入射時と同一の偏光状態で前記第2レンズへ折り返す第1、第2の偏光保存型光ファイバ(41、42)と、
前記第3、第4のレンズによって集光された光の前記刻線に直交する方向の幅をそれぞれ制限して波長選択度を高くするための第1、第2のスリット(47、48)と、
前記第1、第2のスリットを通過した光を受けてその強度を検出する第1、第2の受光器(50、51)とを備え、
前記偏光方向が合わされた各偏光成分に対して前記波長選択部が前記特定方向に出射する第1次選択光を前記直交ミラーにより前記刻線方向にずれた光軸で前記波長選択部に折り返し、
該折り返し光に対して前記波長選択部が示す入射時と可逆な波長選択作用によって選択される前記特定波長帯の第2次選択光を前記第2レンズに入射して、その各偏光成分を前記第1、第2の偏光保存型光ファイバに入射させ、
該第1、第2の偏光保存型光ファイバで折り返されて前記第2レンズを介して入射された光に対して前記波長選択部が前記特定方向に出射する前記特定波長帯の第3次選択光を前記直交ミラーにより再度折り返し、
該直交ミラーにより再度折り返された光に対して前記波長選択部が出射する前記特定波長帯の第4次選択光の各偏光成分を前記第3、第4のレンズにより集光し、前記第1、第2のスリットを通過させて、前記第1、第2の受光器に入射させ、該第1、第2の受光器の出力に基づいて、前記被測定光の直交する偏光成分のスペクトラム特性を求めることを特徴とする光スペクトラムアナライザ。
【請求項2】
前記波長選択部が単一の回折格子によって構成されていることを特徴とする請求項1記載の光スペクトラムアナライザ。
【請求項3】
前記波長選択部が、互いに対向する二つの回折格子によって構成されており、
前記波長選択部に入射された光は、前記特定波長帯について前記二つの回折格子による2度の波長選択作用を受けて出射されることを特徴とする請求項1記載の光スペクトラムアナライザ。
【請求項4】
前記光入射端子と前記偏光分離部の間に、前記偏光分離部に入射される被測定光の偏光を制御するための偏光コントローラ(70)を配置したことを特徴とする請求項1または請求項2記載の光スペクトラムアナライザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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