説明

光センサによる検出物検知装置および検知方法

【課題】検出物を検知する運用時に受光素子の出力電圧レベルを逐次検出し、それを基に基準電圧を決定する処理を行うための処理時間がかかっていた。
【解決手段】発光素子と受光素子を有する光センサを含み前記発光素子から受光素子に至る光が検出物の位置を通過するように前記光センサを配置し、前記光センサの出力状態により前記検出物の有無を検知する検出物検知装置であり、基準電圧発生部と、光センサ出力と基準電圧発生部から出力する基準電圧とを比較してその結果により前記検出物の有無を検知する比較器と、基準電圧発生部に基準電圧を出力させるための制御信号を供給する制御部とを備え、制御部が検出物を検知する前に光センサ出力値を取得し、これをもとに検出物の有無を検知するときの基準電圧を決定する検出物検知装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検出物の有無を検知する装置および方法に関し、特に発光素子と受光素子を組み合わせた光センサにより検出物を検知する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光センサによる検出物の検知手段としては、従来から以下の技術が知られていた。まず、光センサを構成する発光ダイオード等の発光素子とフォトトランジスタ等の受光素子の間の光が通過する位置に検出物を配置する。そして受光素子からの光電流出力を抵抗により電圧出力に変換し、その電圧レベルを所定のスレッショルド電圧を基準として二値化して出力する。このようにして二値化された出力に基づき発光ダイオード等の発光素子から放射された光が通光もしくは遮光状態であるかを判断することによりその位置における検出物の有無を検知していた。
【0003】
しかしながら、「発光素子の放射強度」および「受光素子の光電流」の選別とランク分けを行っていない各素子を組み合わせた場合、素子の組み合わせによりセンサ出力に数十倍程度のバラツキが生じてしまう。
【0004】
ここでセンサ出力が大きくなる素子の組み合わせの場合、検出物の「厚さ/色/材質」等に起因する検出物の透過率により、発光素子から放射された光が検出物を透過してしまうケースを考える。このケースはセンサ出力の電圧レベルが二値化を行う為のスレッショルド電圧のレベルを越えてしまい、正常に遮光状態を検知できなくなり、センサとして正常に機能しないという問題が生じる。
【0005】
一方、センサ出力が小さくなる素子の組み合わせの場合、検出物の無い通光状態においてもセンサ出力の電圧レベルが二値化を行う為のスレッショルド電圧のレベルに達しない場合がある。この場合、正常に通光の状態を検知できなくなり、センサとして正常に機能しないという問題が生じる。
【0006】
また、発光素子における放射強度の経時劣化によるセンサ出力低下または塵埃によるセンサ出力の低下により、センサ出力のハイレベルの電圧レベルが二値化を行う為のスレッショルド電圧のレベルに達しない場合がある。この場合は正常に通光の状態を検知できなくなり、センサとして正常に機能しないという問題も生じる。
【0007】
このように、光センサにおける発光素子および受光素子のバラツキにより、センサ出力の不足により生じる誤検知、またはセンサ出力の過大による検出物透過により生じる誤検知、および塵埃および発光素子の経時劣化によるセンサ出力の低下により生じる誤検知の問題があった。
【0008】
特開平7−30398号公報(以下、特許文献1)は、比較手段による受光素子の出力電圧レベルと検出用基準電圧との比較結果に基づいて検出物の有無を判別することを開示している。それとともに出力レベルと調整用基準電圧との比較結果に基づいて発光素子の発光量を変化させて感度を調整することによりセンサ出力の低下により生じる誤検知の問題を解決しようとする技術を開示している。
【0009】
特開平11−248854号公報(以下、特許文献2)は、受光素子の出力電圧レベルの一定期間の平均値を求めてその値からその出力電圧レベルに応じて可変可能な定数を減算した値を比較器の基準電圧として用いる技術を開示している。
【0010】
【特許文献1】特開平7−30398号公報
【特許文献2】特開平11−248854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1においては、調整時に発光制御電圧に対する光センサの応答性の遅延により、光センサ出力電圧が安定するまで時間を要し、待機する期間が生じてしまうという問題点があった。その理由は調整時に光センサ出力レベルと調整用基準電圧との比較結果に基づいて発光素子の発光量を変化させて感度を調整するためである。
【0012】
加えて同文献では経時劣化および汚れ等でセンサ出力レベルが低下した際、最適なセンサ出力電圧を得る為に発光素子の発光量を増大させるが、発光量の増大は発光素子の経時劣化を加速させることになり、さらに消費電力の増加につながるという問題点もあった。
【0013】
また特許文献2においては、運用時の処理速度が低下し、センサレベルのAD変換やデジタル処理を施す必要があることによる制御回路(LSI)の負荷の増大等の問題点があった。その理由は検出物を検出する時(運用時)に現在の受光素子の出力電圧レベルを逐次検出し、それをもとに基準電圧を決定する処理を行う必要があるためである。
【0014】
そこで、本発明の目的は、上述した従来の課題である調整時に光センサ出力電圧が安定するまで時間を要する点を解決する光センサによる検出物検知装置および検知方法を提供することにある。また本発明の他の目的は上述した従来の課題である、運用時に現在の受光素子の出力電圧レベルを逐次検出や、基準電圧の決定処理による速度低下等の点を解決する光センサによる検出物検知装置および検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる課題を解決するために、本発明の検出物検知装置は、発光素子と受光素子を有する光センサを含み発光素子から受光素子に至る光が検出物の位置を通過するように光センサを配置し、光センサの出力状態により検出物の有無を検知する検出物検知装置であり、基準電圧発生部と、光センサ出力値と基準電圧発生部から出力する基準電圧とを比較してその結果により検出物の有無を検知する比較器と、基準電圧発生部に基準電圧を出力させるための制御信号を供給する制御部とを備え、制御部が必要に応じて、検出物を検知する前に光センサ出力値を取得し、光センサ出力値をもとに検出物の有無を検知するときの基準電圧を決定することを特徴とする。
【0016】
本発明の検出物検知装置は、好ましくは光センサ出力を通光状態であるか遮光状態であるかにより検出物の有無を検知する装置であり、制御部が必要に応じて、検出物を検知する前に基準電圧を変化させたときの比較器の出力の変化により光センサ出力値を取得し、その光センサ出力値をもとに検出物の有無を検知するときの基準電圧を決定することを特徴とする。
【0017】
本発明の検出物検知装置は、光センサ出力を通光状態とし基準電圧を減少方向に変化させたときの比較器の出力の変化により通光状態の光センサ出力値として取得し、その光センサ出力値をもとに検出物の有無を検知するときの基準電圧を決定してもよい。
本発明の検出物検知装置は、好ましくは光センサ出力を通光状態とし基準電圧を増加方向に変化させたときの比較器の出力の変化により通光状態の光センサ出力値として取得し、その光センサ出力値をもとに検出物の有無を検知するときの基準電圧を決定してもよい。
【0018】
本発明の検出物検知装置は、基準電圧を階段状に変化させていき比較器の出力が反転したときまたはその直前の基準電圧を通光状態の光センサ出力値として取得し、その光センサ出力値をもとに検出物の有無を検知するときの基準電圧を決定してもよい。
【0019】
本発明の検出物検知装置は、基準電圧を複数段階ずつ階段状に変化させていき比較器の出力が反転した後に反対方向に1段階ずつ変化させていき再度比較器の出力が反転したときまたはその直前の基準電圧を通光状態の光センサ出力値として取得し、その光センサ出力値をもとに検出物の有無を検知するときの基準電圧を決定してもよい。
【0020】
本発明の検出物検知装置は、通光状態での光センサ出力値から遮光状態での光センサ出力値を算出しその出力に一定値を加算した値を基準電圧としてもよい。
【0021】
本発明の検出物検知装置は、通光状態での光センサ出力値に検出物の透過率をかけた値に一定値αを加算した値を基準電圧としてもよい。
【0022】
本発明の検出物検知装置は、通光状態での光センサ出力値から遮光状態での光センサ出力値を算出しその出力に両者の光センサ出力の差分に所定値β(0<β<1)をかけた値を加算した値を基準電圧としてもよい。
【0023】
本発明の検出物検知装置は、通光状態での光センサ出力値に検出物の透過率をかけた値にその値と通光状態での光センサ出力との差分に所定値β(0<β<1)をかけた値を加算した値を基準電圧としてもよい。
【0024】
本発明の検出物検知装置は、発光素子をオンオフさせるスイッチをさらに備え、制御部がスイッチ素子にスイッチ素子をオンオフさせる制御信号を送ることにより発光素子にパルス状電流を流してもよい。
【0025】
本発明の検出物検知装置は、制御部は比較器の出力を発光素子のオンオフに同期して比較器の出力を発光素子のオンオフに同期して検出してもよい。
【0026】
本発明の制御装置は、発光素子と受光素子を有する光センサと、基準電圧発生部と、光センサの出力と基準電圧発生部から出力する基準電圧とを比較する比較器と、を含み、発光素子から受光素子に至る光が検出物の位置を通過するように光センサを配置し、光センサの出力状態により検出物の有無を検知する検出物検知装置を構成する制御装置であり、基準電圧発生部に基準電圧を出力させるための制御信号を供給し、必要に応じて、検出物を検知する前に光センサ出力値を取得し、光センサ出力値をもとに検出物の有無を検知するときの基準電圧を決定することを特徴とする。
【0027】
本発明の検出物検知方法は、発光素子と受光素子を有する光センサが通光状態と遮光状態のいずれであるかにより検出物の有無を検知する検出物検知方法であり、必要に応じて、検出物を検知する前に光センサ出力値を取得する第1ステップと、光センサ出力値をもとに検出物の有無を検知するときの光センサ出力値の基準電圧を決定する第2ステップと、光センサ出力値と基準電圧とを比較してその比較結果により検出物の有無を検知する第3ステップとを含むことを特徴とする。
【0028】
本発明の検出物検知方法は、好ましくは第1ステップが、必要に応じて、検出物を検知する前に基準電圧を変化させたときの比較結果の変化により光センサ出力値を取得することを特徴とする。
【0029】
本発明の検出物検知方法は、第1ステップは、光センサ出力を通光状態とし基準電圧を減少方向に変化させたときの比較結果の変化により通光状態の光センサ出力値として取得してもよい。
【0030】
本発明の検出物検知方法は、第1ステップが、光センサ出力を通光状態とし基準電圧を増加方向に変化させたときの比較結果の変化により通光状態の光センサ出力値として取得してもよい。
【0031】
本発明の検出物検知方法は、第1ステップが、基準電圧を階段状に変化させていき比較結果が反転したとき又はその直前の基準電圧を通光状態の光センサ出力値として取得してもよい。
【0032】
本発明の検出物検知方法は、第1ステップが、基準電圧を複数段階ずつ階段状に変化させていき比較結果が反転した後に反対方向に1段階ずつ変化させていき再度比較結果が反転したときまたはその直前の基準電圧を通光状態の光センサ出力値として取得してもよい。
【0033】
本発明の検出物検知方法は、第2ステップが、通光状態での光センサ出力値から遮光状態での光センサ出力値を算出しその出力に一定値を加算した値を基準電圧としてもよい。
【0034】
本発明の検出物検知方法は、第2ステップが、通光状態での光センサ出力値に検出物の透過率をかけた値に一定値αを加算した値を基準電圧としてもよい。
【0035】
本発明の検出物検知方法は、第2ステップが、通光状態での光センサ出力値から遮光状態での光センサ出力値を算出しその出力に両者の光センサ出力の差分に所定値β(0<β<1)をかけた値を加算した値を基準電圧としてもよい。
【0036】
本発明の検出物検知方法は、第2ステップが、通光状態での光センサ出力値に検出物の透過率をかけた値にその値と通光状態での光センサ出力との差分に所定値β(0<β<1)をかけた値を加算した値を基準電圧としてもよい。
【0037】
本発明の検出物検知方法は、第1および第3ステップにおいて発光素子をオンオフさせることにより発光素子にパルス状電流を流すことにしてもよい。
【0038】
本発明の検出物検知方法は、第1および第3ステップにおいて発光素子のオンオフに同期して光センサ出力値と基準電圧の比較結果を取り込むことにしてもよい。
【発明の効果】
【0039】
本発明は、検出物を検知する運用時において現在のセンサ出力レベルを逐次検出し、基準電圧を決定する処理を行う必要が無い為、運用時の処理速度の高速化が得られるという効果を有している。その理由は検出物の検知を行う運用の前に現在のセンサ出力レベルを取得し、その光センサ出力値をもとに検出物の有無を検知するときの前記基準電圧を決定して運用するためである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0041】
図1は本発明の実施例1の構成を示すブロック図である。
【0042】
本発明の光センサによる検出物検知装置は、発光素子2と受光素子3とを含む光センサ1と、受光素子3から出力されたセンサ出力電圧11とDAコンバータ5から出力されるアナログ電圧レベルの基準電圧としてのスレッショルド電圧14を入力して比較し、比較結果を二値化して出力する比較器4と、比較器4の出力としての二値化出力12を入力して、DAコンバータ5へ制御信号13を出力するLSI6と、LSI6からの制御信号13をDA変換して比較器4にスレッショルド電圧14を出力するDAコンバータ5とを備える。
【0043】
また、本発明の光センサによる検出物検知装置は、受光素子3の出力端子と接続し受光素子3の電流出力を電圧出力に変換する抵抗9と、発光素子2に接続された抵抗8をも備える。
【0044】
発光素子2は発光ダイオード等からなり、受光素子3はフォトトランジスタ等からなる。
【0045】
本実施形態では光センサ1を例に挙げて説明しているが、光センサ1には可視光線以外を用いる赤外線センサ等を使用するものも含まれる。
【0046】
光センサ1の発光素子2と受光素子3は、発光素子2から受光素子3に至る光が検出物の位置を通過するような位置に配置する。
【0047】
尚、コンパレータ等からなる比較器4はDAコンバータ5が出力するスレッショルド電圧14をうけとり、これを基準電圧として用いる。そしてセンサ出力電圧11がスレッショルド電圧14より大きければ比較器4の二値化出力12は1レベルとなり通光状態であると判断する。基準電圧としてのスレッショルド電圧14を出力するDAコンバータ5は基準電圧を発生するデバイスである。基準電圧がアナログ信号でLSI6の出力がデジタル信号の場合である本実施例の場合は、DAコンバータ5を用いているがこれは一例である。
【0048】
一方、センサ出力電圧11がスレッショルド電圧14より小さければ比較器4の二値化出力12は0レベルとなり遮光状態であると判断する。判断した結果は当該検知装置の外に信号として伝達してもよく、人間に知覚できる形で表示してもよい。
【0049】
LSI6は検出物検知装置全体の制御を行う制御部としての役割を果たす。また、LSI6は、現在の光センサ1の状態に応じて、最適なスレッショルド電圧14を算出し、DAコンバータ5を設定する機能を有する。具体的には現在の通光時のセンサ出力電圧11に検出物21の光線透過率(以下、単に透過率という)をかけた値を遮光時のセンサ出力電圧11と想定しこの値に一定値αを加算した値を最適なスレッショルド電圧14として決定し保存する。
【0050】
また次のように説明することもできる。光センサ1の出力電圧レベルが標準(ティピカル値)より大である場合はスレッショルド電圧14を標準より大きくするようにDAコンバータ5への制御信号13を設定する。 また光センサ1の出力電圧レベルが標準より小である場合はスレッショルド電圧14を標準より小さくするようにDAコンバータ5への制御信号13を設定する。
【0051】
LSI6は、比較器4からの二値化出力12を入力する入力部6aと全体の制御を行う主制御部6b、検出物21の透過率を加味した運用時のスレッショルド電圧を算出する演算部6c、検出物の透過率および算出したスレッショルド電圧14を記憶しておく記憶部6d、制御信号13を生成し、DAコンバータ5を制御するDAコンバータ制御部6eを備えている。
【0052】
検出物21がない状態でのセンサ出力電圧11を取得する動作において、主制御部6bは、入力部6aからの比較器4の二値化出力12が遮光状態から通光状態に変化するまで、DAコンバータ制御部6eを介し、DAコンバータ5から出力されるスレッショルド電圧14を1ステップずつ減少させる。
【0053】
DAコンバータ制御部6eは、DAコンバータ5への制御信号を生成する機能を有しており、主制御部6bにより指定された制御信号13を生成する。
次に、比較器4の二値化出力12が遮光状態から通光状態に変化したら、主制御部6bは通光状態に変化した際のスレッショルド電圧14の値を基に演算部6cにて運用時のスレッショルド電圧14を算出する。
【0054】
運用時におけるスレッショルド電圧14の算出においては、事前に記憶部6dに格納してある、検出物21の透過率の値を参照して行う。また、記憶部6dは、算出した運用時のスレッショルド電圧14をメンテナンス情報として記憶しておく。次に主制御部6bは、演算部6cで算出した運用時のスレッショルド電圧14を記憶部6dから読み出して、DAコンバータ制御部6eを介してDAコンバータ5へ制御信号13を送ることにより、DAコンバータ5にスレッショルド電圧14を出力させ、実運用に移行する。
【0055】
尚、検出物21の透過率のデータは記憶部6dのなかに製造時に作り込んでおいてもよい。また主制御部6bは図示しない上位インタフェース部を介して図示しない外部の上位システムと必要に応じて接続し、主制御部6bはその上位システムから透過率のデータを受け取って、記憶部6dに書き込むようにしてもよい。こうすれば検出物の変更などにより透過率を変更する必要が生じた場合も、主制御部6bはその上位システムから透過率のデータを受け取って、記憶部6dに書き込むことにより透過率の変更も可能である。
【0056】
検出物21の内容は1種類の場合だけでなく複数の種類がある場合でも対応は可能である。本発明の装置は、事前に検出物21が何であるか認識している場合には、検出物21にあわせてLSI6からDAコンバータ5へ検出物21に対応したスレッショルド電圧14が設定される様にLSI6が制御しても良い。また検出の対象となる複数の検出物21のなかで、最も透過率の大きいものにあわせて透過率データを記憶部6dのなかに格納してスレッショルド電圧14を設定しても良い。この場合最も透過率の大きいものにあわせるのは、遮光なのに通光状態の誤検出することを防止するためである。
【0057】
次に、本発明を実施するための第1の実施例の動作について図2を参照して説明する。
【0058】
本発明では、二値化を行う為のスレッショルド電圧14の可変制御が可能な様に受光側回路を構成する。そして現在の通光時におけるセンサ出力レベルとしてセンサ出力電圧11を認識し、センサ出力電圧11を基にして、最適なスレッショルド電圧14を決定し運用するものである。
【0059】
まず、光センサ1における光の経路中に検出物21の無い状態でDAコンバータ5の出力、すなわちスレッショルド電圧14を最大に設定する(ステップS1)。
【0060】
次に、通光状態でのセンサ出力電圧11を認識する為、スレッショルド電圧14を一段階下げる操作を行う(ステップS2)。ここでセンサ出力電圧11がスレッショルド電圧14よりも大きいかまたは等しいかどうかを判断し(ステップS3)、もし小さければ(ステップS3,NO)、ステップS2とステップS3を繰り返す。
【0061】
センサ出力電圧11がスレッショルド電圧14よりも大きいか等しくなったと判断すれば(ステップS3、YES)、比較器4の出力状態が遮光状態から通光状態に変移したとLSI6は判断し、その際のスレッショルド電圧をセンサ出力電圧11として検出・取得する(ステップS3)。
【0062】
次に、ステップS3で認識した通光状態でのセンサ出力電圧11を基に、検出物21の透過率を加味した実運用時のスレッショルド電圧14の値を算出する(ステップS4)。算出の一例をあげると、検出物の最大透過率が30%の場合、ステップS3で認識した通光状態でのセンサ出力電圧の「30%+α」の電圧値を実運用時のスレッショルド電圧とする。
【0063】
ここで図4はセンサ出力電圧11と比較器4の二値化出力12との関係を示す図であり、図4(a)、(b)、(c)はそれぞれセンサ出力電圧11が標準、小、大の場合の様子をスレッショルド電圧14を含めて示している。
【0064】
図4(a)を参照すると、ステップS3で認識した通光状態でのセンサ出力電圧11はVであり、遮光となるときのセンサ出力電圧11はVの30%の値であるV1となる。
【0065】
そこでスレッショルド電圧14はV+α=Vtoとする。この場合、スレッショルド電圧14の値Vtoは遮光時のセンサ出力電圧値VとVの間の値をとるため遮光時と通光時とを誤って検出することはない。
【0066】
次に最後の手順として、ステップS4で算出した実運用時のスレッショルド電圧14になる様にLSI6は制御信号13をDAコンバータ5に送る。このようにしてLSI6はスレッショルド電圧14の設定を行う(ステップS5)。その後、実運用に移行し、光センサ1により検出物21の有無を検知する(ステップS6)。
【0067】
ここで図4(b)を参照してセンサ出力電圧11が小さい場合のスレッショルド電圧14の値がどのようになるかを検討する。ステップS3で認識した通光状態でのセンサ出力電圧11はVであり、遮光となるときのセンサ出力電圧11はVの30%の値であるVとなる。そこでスレッショルド電圧14はV+α=Vt1とする。この場合、スレッショルド電圧14の値Vt1は遮光時のセンサ出力電圧値VとVの間の値をとるため遮光時と通光時とを誤って検出することはない。
【0068】
さらに図4(c)を参照してセンサ出力が過大である場合のスレッショルド電圧14の値がどのようになるかを検討する。ステップS3で認識した通光状態でのセンサ出力電圧11はVであり、遮光となるときのセンサ出力電圧11はVの30%の値であるVとなる。そこでスレッショルド電圧14はV+α=Vt2とする。この場合、スレッショルド電圧14の値Vt2は遮光時のセンサ出力電圧値VとVの間の値をとるため遮光時と通光時とを誤って検出することはない。
【0069】
尚、光センサ出力の取得とスレッショルド電圧の決定のプロセス(S1〜S5)は必要に応じて定期的に又は不定期に行えばよい。毎日、毎月、電源立ち上げ時毎回、定期点検時の光センサ1の清掃時等が考えられるがこれに限られるわけではない。
【0070】
尚、上記の例で仮にスレッショルド電圧14を、通光時のセンサ出力レベルの30%に設定した場合、センサ出力レベルが増加する方向に変動した際に誤検知してしまう。よってαの値はこのような誤検知を防ぐ為のマージンとして付加する。具体的には、電源/周囲温度/センサの対向(光軸)の変動および電気的ノイズ、外乱光などの影響を考慮して決定する。
【0071】
αの値が大きすぎると、センサ出力レベルが低下する方向に変動した際に誤検出するのでこれを防ぐことができる値を決定する必要がある。具体的には、電源/周囲温度/センサの対向(光軸)の変動および電気的ノイズと次回の調整までの期間に生じる発光素子2の経時劣化および塵埃による汚れを考慮する必要がある。
【0072】
検出物21の透過率は、材質・厚さ・色(顔料)によって値が異なる。さらに測定する際の光源の波長にもよる為、実際には検出物を評価・測定して透過率を求める必要がある。検出物21の透過率の測定方法は当業者にとって広く知られた手法であるため、ここでは説明を省略する。
【0073】
検出物21の光線透過率の一例として図11にプラスチック(ポリカーボネート)の透過率と波長と厚みとの関係を示す。また図12にプラスティックとプラスティック以外の透明材料(射出成形PC(ポリカーボネート[polycarbonate])、圧縮成形PC、射出成形PMMA(ポリメタクリル酸メチル[Polymethl Methacrylate]))の透過率と波長との関係を示す。これらに充填材又は顔料を加えると透過率はこれらより低い値になる。このデータは、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製であって、製品名がユーピロン(登録商標)/ノバレックス(登録商標)という製品のデータである。尚、図11、図12は三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社のホームページ掲載のテクニカルデータより引用した。
【0074】
検出物の一例としては、ATM(Automated Teller Machine)におけるキャッシュカード、レシート、通帳、伝票や、媒体交換型ストレージ装置における記録媒体等が考えられるが、これらは一例であってこれらに限定されるものではない。
【0075】
以上説明したように、本実施例は現在のセンサ状態に応じて、最適な「通光もしくは遮光状態であるか判断する為のスレッショルド電圧」を可変で設定し運用するすることができる。このため光センサにおける発光素子および受光素子のバラツキによる、「センサ出力の不足により生じる誤検知」、または「センサ出力の過大による検出物透過により生じる誤検知」の問題を回避できるという効果がある。
【0076】
また本発明は、検出物を検知する運用時において現在のセンサ出力レベルを逐次検出し、基準電圧を決定する処理を行う必要が無い為、運用時の処理速度の高速化が得られるという効果を有している。その理由は検出物の検知を行う運用の前に現在のセンサ出力レベルを取得し、その光センサ出力値をもとに検出物の有無を検知するときの前記基準電圧を決定して運用するためである。
【0077】
また、本実施例の発明は検出物を検知する前に行う調整が短い時間でできるという効果がある。その理由は以下の通りである。特許文献1では調整時において発光量を調整する為、発光制御電圧に対するセンサの応答性の遅延により、センサ出力電圧が安定するまで時間を要し、待機時間が必要になる。しかし本発明では、発光量の調整は行わずスレッショルド電圧を可変させるのみである為、待機時間が不要になるからである。
【0078】
さらに本実施例の発明は検出物が光線透過率が高い透明材料かそれに近いものであっても誤動作が少ない正確な検出物検知ができるという効果がある。その理由は検出物の透過率に応じてセンサ出力電圧の変動に対するマージンを確保できるようなスレッショルド電圧を設定する構成を有しているからである。
【0079】
次に実施例1の変形である変形例1を図5、図8に基づいて説明する。変形例1の構成要素は第1の実施例の図1、図8で示される。
【0080】
図8を参照すると検出物21がない状態でのセンサ出力電圧11を取得する動作において、主制御部6bは、入力部6aからの比較器4の二値化出力12が通光状態から遮光状態に変化するまで、DAコンバータ制御部6eを介し、DAコンバータ5から出力されるスレッショルド電圧14を1ステップずつ増加させる。
【0081】
DAコンバータ制御部6eは、DAコンバータ5への制御信号13を生成する機能を有しており、主制御部6bにより指定された制御信号13を生成する。
次に、比較器4の二値化出力12が通光状態から遮光状態に変化したら、主制御部6bは通光状態に変化した際のスレッショルド電圧14の値を基に演算部6cにて運用時のスレッショルド電圧14を算出する。
【0082】
運用時におけるスレッショルド電圧14の算出においては、事前に記憶部6dに格納してある、検出物の透過率の値を参照して行う。また、記憶部6dは、算出した運用時のスレッショルド電圧14をメンテナンス情報として記憶しておく。次に主制御部6bは、演算部6cで算出した運用時のスレッショルド電圧を記憶部6dから読み出して、DAコンバータ制御部6eを介してDAコンバータ5へ制御信号13を送ることにより、DAコンバータ5にスレッショルド電圧14を出力させ、実運用に移行する。
【0083】
次に変形例1の動作を図5により説明する。まず、光センサ1における光の経路中に検出物21の無い状態でDAコンバータ5の出力、すなわちスレッショルド電圧14を最小に設定する(ステップS11)。
【0084】
次に、通光状態でのセンサ出力電圧11を認識する為、スレッショルド電圧14を一段階上げる操作を行う(ステップS12)。ここでセンサ出力電圧11がスレッショルド電圧14よりも小さいかまたは等しいかどうかを判断し(ステップS13)、もし大きければ(ステップS13,NO)、ステップS12とステップS13を繰り返す。
【0085】
センサ出力電圧11がスレッショルド電圧14よりも小さいか等しくなったと判断すれば(ステップS13、YES)、比較器4の出力状態が通光状態から遮光状態に変移したとLSI6は判断し、その時の一つ手前のスレッショルド電圧14を検出・保存する(ステップS13)。その時のスレッショルド電圧14は厳密にはすでに遮光状態になっている。しかし1ステップ分のスレッショルド電圧14は誤差の範囲とも考えられるから、その時のスレッショルド電圧14を通光状態のセンサ出力電圧11と考え、その値を検出・保存しても良い(ステップ13)。
【0086】
次に、ステップS13で認識した通光状態でのセンサ出力電圧11を基に、検出物の透過率を加味した実運用時のスレッショルド電圧14の値を算出する(ステップS14)。算出の一例をあげると、検出物の最大透過率が30%の場合、ステップS13で認識した通光状態でのセンサ出力電圧11の「30%+α」の電圧値を実運用時のスレッショルド電圧14とする。
【0087】
ここで図4はセンサ出力電圧11と比較器4の二値化出力12との関係を示す図であり、図4(a)、(b)、(c)はそれぞれセンサ出力電圧11が標準、小、大の場合の様子をスレッショルド電圧14を含めて示している。この変形例1の動作についての図4に関する説明は実施例1と同様であるので省略する。
【0088】
次に最後の手順として、ステップS14で算出した実運用時のスレッショルド電圧になる様にLSI6は制御信号13をDAコンバータ5に送る。このようにしてLSI6はスレッショルド電圧14の設定を行う(ステップS15)。その後、実運用に移行し、光センサ1により検出物21の有無を検知する(ステップS16)。
【0089】
上述の変形例1に関する説明以外の点は作用効果の点も含め実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0090】
次に実施例1の変形例2について以下に説明する。実施例1と異なるのはステップS4であり、この点について図2および図10により説明する。
【0091】
ステップS3で認識した通光状態でのセンサ出力電圧11を基に、検出物21の透過率を加味した実運用時のスレッショルド電圧14の値を算出する(ステップS4)。検出物21が有る状態での光センサ出力を算出する方法として、ステップS3で認識した通光状態での光センサ出力電圧11に検出物21の透過率をかけた値を用いることにする。その値に、その値と通光状態での光センサ出力との差分に所定値β(0<β<1)をかけた値を加算した値をスレッショルド電圧14の値とする。
【0092】
ここで図10は、一例として、透過率が30%である検出物の場合であって、β=0.5としたときのセンサ出力電圧11と比較器4の二値化出力12との関係を示す図であり、図10(a)、(b)、(c)はそれぞれセンサ出力電圧11が標準、小、大の場合の様子をスレッショルド電圧14を含めて示している。
【0093】
図10(a)を参照すると、ステップS3で認識した通光状態でのセンサ出力電圧11はVであり、遮光となるときのセンサ出力電圧11はVの30%の値であるVとなる。
【0094】
そこでスレッショルド電圧14はV1+β(V−V1)=Vtoとする。この場合、スレッショルド電圧14の値Vtoは遮光時のセンサ出力電圧値VとVの間の値である(V+V)/2の値をとるため遮光時と通光時とを誤って検出することはない。
【0095】
ここで図10(b)を参照してセンサ出力電圧11が小さい場合のスレッショルド電圧14の値がどのようになるかを検討する。ステップS3で認識した通光状態でのセンサ出力電圧11はVであり、遮光となるときのセンサ出力電圧11はVの30%の値であるVとなる。そこでスレッショルド電圧14はV+β(V−V)=Vt1とする。この場合、スレッショルド電圧14の値Vt1は遮光時のセンサ出力電圧VとVとの間を2等分する値をとるため遮光時と通光時とを誤って検出することはない。また図4(b)と比較すると、通光側のマージンが大きくなっているため、さらにセンサ出力電圧が低くなるなどの変動があっても誤検出する可能性が低くなるという変形例2特有の効果がある。
【0096】
さらに図10(c)を参照してセンサ出力が過大である場合のスレッショルド電圧14の値がどのようになるかを検討する。ステップS3で認識した通光状態でのセンサ出力電圧11はVであり、遮光となるときのセンサ出力電圧11はVの30%の値であるVとなる。そこでスレッショルド電圧14はV+β(V−V)=Vt2とする。この場合、スレッショルド電圧14の値Vt2は遮光時のセンサ出力電圧VとVの間の値をとるため遮光時と通光時とを誤って検出することはない。
【0097】
変形例2では、実施例1の効果に加え、遮光となるときのセンサ出力電圧に対して、遮光となるときのセンサ出力電圧11と通光となるときのセンサ出力電圧11の差に比例した値を加算してスレッショルド電圧14を決めているため、マージンが少なくなるケースを避けることができ誤検出する可能性が低くなるという効果がある。
さらに変形例1の特徴と変形例2の特徴を組み合わせた変形例も考えられるが、この構成・効果は以上の説明から当業者が明らかに理解できるため詳細な説明は省略する。
【実施例2】
【0098】
次に、本発明を実施するための実施例2の動作について図1と図6を参照して説明する。実施例2のブロック図は図1で表現することができる。
【0099】
本発明の実施例2では、実施例1と同様、二値化を行う為のスレッショルド電圧14の可変制御が可能な様に受光側回路を構成する。そして現在の通光時におけるセンサ出力レベルとしてセンサ出力電圧11を認識し、センサ出力電圧11を基にして、最適なスレッショルド電圧を決定し運用するものである。
【0100】
まず、光センサ1における光の経路中に検出物21の無い状態でDAコンバータ5の出力、すなわちスレッショルド電圧14を最大に設定する(ステップS21)。
【0101】
次に、通光状態でのセンサ出力電圧11を認識する為、スレッショルド電圧14をX段階(Xは2以上の整数)下げる操作を行う(ステップS22)。ここでセンサ出力電圧11がスレッショルド電圧14よりも大きいか又は等しいかどうかを判断し(ステップS23)、もし小さければ(ステップS23,NO)、ステップS22とステップS23を繰り返す。
【0102】
センサ出力電圧11がスレッショルド電圧14よりも大きいか等しくなったと判断すれば(ステップS23、YES)、遮光状態から通光状態に変移したがスレッショルド電圧を下げすぎたとLSI6は判断し、次はスレッショルド電圧を1段階上げる(ステップS24)。ここでセンサ出力電圧11がスレッショルド電圧14より小さいか又は等しいかどうか判断し(ステップS25)、もし大きければステップS24とステップS25を繰り返す。
【0103】
センサ出力電圧11がスレッショルド電圧14よりも小さいか等しくなったと判断すれば(ステップS25、YES)、比較器4の出力状態が通光状態から遮光状態に変移したとLSI6は判断し、その時の一つ手前のスレッショルド電圧14を検出・保存する(ステップS25)。というのはその時のスレッショルド電圧14は厳密にはすでに遮光状態になっているからである。しかし1ステップ分のスレッショルド電圧14は誤差の範囲とも考えられるから、その時のスレッショルド電圧14を通光状態のセンサ出力電圧と考え、その値を検出・保存しても良い(ステップ25)。
【0104】
これ以降のステップS26,S27,S28は実施例1の図2のステップS4,S5,S6と同様であるので説明を省略する。
【0105】
本実施例では2ステップ以上の定数の幅をもって二値化出力12の状態が変化するまで可変させ、状態が変化後に逆方向に1ステップずつ二値化出力12の状態が変化するまで可変させ、検出するというステップをとる。このため、実施例1の効果に加え、センサ出力レベルの検出速度がさらに短縮するという本実施例特有の効果がある。
【0106】
次に実施例2の変形である変形例3について図1および図7を参照して説明する。
【0107】
変形例3のブロック図は図1で表現することができる。
【0108】
本発明の変形例3は、実施例1と同様、二値化を行う為のスレッショルド電圧14の可変制御が可能な様に受光側回路を構成する。そして現在の通光時におけるセンサ出力レベルとしてセンサ出力電圧11を認識し、センサ出力電圧11を基にして、最適なスレッショルド電圧14を決定し運用するものである。
【0109】
まず、光センサ1における光の経路中に検出物21の無い状態でDAコンバータ5の出力、すなわちスレッショルド電圧14を最小に設定する(ステップS31)。
【0110】
次に、通光状態でのセンサ出力電圧11を認識する為、スレッショルド電圧14をX段階(Xは2以上の整数)上げる操作を行う(ステップS32)。ここでセンサ出力電圧11がスレッショルド電圧14よりも小さいか又は等しいかどうかを判断し(ステップS33)、もし大きければ(ステップS33,NO)、ステップS32とステップS33を繰り返す。
【0111】
センサ出力電圧11がスレッショルド電圧14よりも小さいか等しくなったと判断すれば(ステップS33、YES)、通光状態から遮光状態に変移したがスレッショルド電圧14を上げすぎたとLSI6は判断し、次はスレッショルド電圧14を1段階下げる(ステップS34)。ここでセンサ出力電圧11がスレッショルド電圧14より大きいか又は等しいかどうか判断し(ステップS35)、もし小さければステップS34とステップS35を繰り返す。
【0112】
センサ出力電圧11がスレッショルド電圧14よりも大きいか等しくなったと判断すれば(ステップS35、YES)、比較器4の出力状態が遮光状態から通光状態に変移したとLSI6は判断し、その時のスレッショルド電圧14を通光状態のセンサ出力電圧11と考え、その値を検出・保存する(ステップ35)。
【0113】
これ以降のステップS36,37,S38は実施例1の図2のステップS4,S5,S6と同様であるので説明を省略する。
【0114】
変形例3の作用効果は実施例2と同様であり、変形例3では2ステップ以上の定数で二値化出力12の状態が変化するまで可変させ、状態が変化後に逆方向に1ステップずつ二値化出力12の状態が変化するまで可変させ、検出するというステップをとる。このため、実施例1の効果に加え、センサ出力レベルの検出速度がさらに短縮するという効果がある。
【0115】
次に実施例2の変形である変形例4について以下に説明する。実施例2と異なるのはステップS26であり、この点について図6および図10および実施例1の変形例2のステップ4の説明により理解することができる。
【0116】
ステップS25で認識した通光状態でのセンサ出力電圧11を基に、検出物の透過率を加味した実運用時のスレッショルド電圧14の値を算出する(ステップS26)。算出の一例をあげると、検出物の最大透過率が30%の場合、ステップS3で認識した通光状態での光センサ出力電圧11に検出物の透過率をかけた値にその値と通光状態での光センサ出力電圧11との差分に所定値β(0<β<1)をかけた値を加算した値とする。このように、実施例1の変形例2の説明によりこれとと同様に理解することができるので説明は省略する。
【実施例3】
【0117】
次に、本発明の実施例3について、図3と図9を参照して説明する。
【0118】
発光素子2および受光素子3における各素子間の対向距離(光路長)が遠い場合は実施例1の構成ではセンサ出力電圧11が減少してしまう。この問題を解決するために、対向距離が遠い場合には発光ダイオード等の発光素子2に直流順電流よりも振幅が大きいパルス順電流を流し、放射強度を増加させてセンサ出力電圧11を増大させることができる。
【0119】
但し、パルス順電流を流す場合は、発光素子2の発光を点滅させる必要がある。この為、実施例3は、図1に示したの実施例1の構成に加えて発光回路側にトランジスタ等のスイッチング素子7を備える。実施例3のその他の構成要素は後述するLSI61を除くと実施例1のそれと同一であるので、個々の説明を省略する。
【0120】
そして、LSI61においては、発光素子2が点灯している際のセンサ出力11を発光素子2の点滅に同期して検出する機能が必要になる。本機能を実現する為に、実施例1におけるLSI6における構成に加えて同期タイミング生成部6fとON/OFF制御信号生成部6gを備えている。
【0121】
同期タイミング生成部6fとON/OFF制御信号生成部6gは、スイッチング素子7をON/OFF制御信号15にて制御し、発光素子2に直流順電流よりも大きいパルス順電流を流している。
【0122】
スイッチング素子7がOFFしている際は発光素子2が消灯している為、発光素子2が点灯している際のセンサ出力電圧11とスレッショルド電圧14に基づいて比較器4から出力される二値化出力12を主制御部6bにてラッチし、有効データとしている。この点は運用時に検出物を検知する時も、調整時に光センサ出力電圧11を取得する時も当てはまる。
【0123】
同期タイミング生成部6fは、ON/OFF制御信号15を生成するためのON/OFFタイミング信号17とこの信号に同期して主制御部6bへ供給するラッチタイミング信号16を生成し、常に発光素子2が点灯時に主制御部6bが有効データをラッチできるようにするものである。
【0124】
そしてON/OFF制御信号生成部6gは、スイッチング素子7に適したON/OFF制御信号15を生成するため回路であり、具体的には信号レベルの変換などを行う。
【0125】
このようにスイッチング素子7がON(点灯)の際のON/OFF制御信号15に同期して、受光側回路におけるコンパレータ等の比較器4から出力される二値化出力12をLSI61でラッチする。そしてラッチしたデータを光センサ1の状態としての有効データとする。
【0126】
本実施例のように、発光ダイオード等の発光素子2に直流順電流よりも大きいパルス順電流を流し、放射強度を増加させて使用する場合、検出物透過により生じる誤検知が生じ易くなる。しかし前述の実施例1にて説明した動作と同様の手順(図2のステップS1からS6)にてスレッショルド電圧を適切に設定することによりこの問題回避する事が可能である。その場合の本実施例の動作は実施例1にて説明した動作と同様である。
【0127】
さらに本実施例の構成を同様にして変形例1、変形例2、実施例2,変形例3,変形例4に適用した場合の検出物検知前の調整時にスレッショルド電圧を設定する手順等は各実施例、変形例において動作として記載した内容と同様であるので、説明は省略する。
【0128】
本実施例においてはスイッチ素子7とこれを制御するLSI6の構成により、発光ダイオード等の発光素子2に直流順電流よりも大きいパルス順電流を流し、放射強度を増加させてセンサ出力電圧11を増大させている。このため対向距離が遠い場合でも現在のセンサ状態に応じた最適なスレッショルド電圧で運用する事が可能になり、誤検出を防止できるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明は、メカトロ製品その他の光センサを用いて検出物を検知する構造を有する機器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の実施例1および2による検出物検知装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1による検出物検知装置の概略動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明の実施例3による検出物検知装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例の比較器におけるセンサ出力電圧、スレッショルド電圧および二値化出力との関係を示す図である。
【図5】本発明の変形例1による検出物検知装置の概略動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の実施例2による検出物検知装置の概略動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】本発明の変形例3による検出物検知装置の概略動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】本発明の実施例1および2のLSI6の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施例3のLSI6の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の変形例2および変形例4の比較器におけるセンサ出力電圧、スレッショルド電圧および二値化出力との関係を示す図である。
【図11】ポリカーボネートの光線透過率と波長との関係の一例を示すグラフである。
【図12】ポリカーボネート他の透明材料の光線透過率と波長との関係の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0131】
1 光センサ
2 発光素子
3 受光素子
4 比較器
5 DAコンバータ
6 LSI
61 LSI
6a 入力部
6b 主制御部
6c 演算部
6d 記憶部
6e DAコンバータ制御部
6f 同期タイミング生成部
6g ON/OFF制御信号生成部
7 スイッチング素子
8 抵抗
9 抵抗
11 センサ出力電圧
12 二値化出力
13 制御信号
14 スレッショルド電圧
15 ON/OFF制御信号
21 検出物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と受光素子を有する光センサを含み前記発光素子から前記受光素子に至る光が検出物の位置を通過するように前記光センサを配置し、前記光センサの出力状態により前記検出物の有無を検知する検出物検知装置であり、
基準電圧発生部と、
前記光センサ出力値と前記基準電圧発生部から出力する基準電圧とを比較してその結果により前記検出物の有無を検知する比較器と、
前記基準電圧発生部に前記基準電圧を出力させるための制御信号を供給する制御部とを備え、
前記制御部が必要に応じて、前記検出物を検知する前に前記光センサ出力値を取得し、前記光センサ出力値をもとに前記検出物の有無を検知するときの前記基準電圧を決定することを特徴とする検出物検知装置。
【請求項2】
請求項1記載の検出物検知装置であり、
前記光センサ出力を通光状態であるか遮光状態であるかにより前記検出物の有無を検知する装置であり、
前記制御部が必要に応じて、前記検出物を検知する前に前記基準電圧を変化させたときの前記比較器の出力の変化により光センサ出力値を取得し、その光センサ出力値をもとに前記検出物の有無を検知するときの前記基準電圧を決定することを特徴とする検出物検知装置。
【請求項3】
請求項2記載の検出物検知装置であり、
前記光センサ出力を通光状態とし前記基準電圧を減少方向に変化させたときの比較器の出力の変化により通光状態の光センサ出力値として取得し、その光センサ出力値をもとに前記検出物の有無を検知するときの前記基準電圧を決定することを特徴とする検出物検知装置。
【請求項4】
請求項2記載の検出物検知装置であり、
前記光センサ出力を通光状態とし前記基準電圧を増加方向に変化させたときの比較器の出力の変化により通光状態の光センサ出力値として取得し、その光センサ出力値をもとに前記検出物の有無を検知するときの前記基準電圧を決定することを特徴とする検出物検知装置。
【請求項5】
請求項3乃至4記載の検出物検知装置であり、
前記基準電圧を階段状に変化させていき比較器の出力が反転したときまたはその直前の前記基準電圧を通光状態の光センサ出力値として取得し、その光センサ出力値をもとに前記検出物の有無を検知するときの前記基準電圧を決定することを特徴とする検出物検知装置。
【請求項6】
請求項2記載の検出物検知装置であり、
前記基準電圧を複数段階ずつ階段状に変化させていき比較器の出力が反転した後に反対方向に1段階ずつ変化させていき再度比較器の出力が反転したときまたはその直前の前記基準電圧を通光状態の光センサ出力値として取得し、その光センサ出力値をもとに前記検出物の有無を検知するときの前記基準電圧を決定することを特徴とする検出物検知装置。
【請求項7】
請求項2乃至6記載の検出物検知装置であり、
通光状態での光センサ出力値から遮光状態での光センサ出力値を算出しその出力に一定値を加算した値を前記基準電圧とすることを特徴とする検出物検知装置。
【請求項8】
請求項2乃至6記載の検出物検知装置であり、
通光状態での光センサ出力値に前記検出物の透過率をかけた値に一定値αを加算した値を前記基準電圧とすることを特徴とする検出物検知装置。
【請求項9】
請求項2乃至6記載の検出物検知装置であり、
通光状態での光センサ出力値から遮光状態での光センサ出力値を算出しその出力に両者の光センサ出力の差分に所定値β(0<β<1)をかけた値を加算した値を前記基準電圧とすることを特徴とする検出物検知装置。
【請求項10】
請求項2乃至6記載の検出物検知装置であり、
通光状態での光センサ出力値に前記検出物の透過率をかけた値にその値と通光状態での光センサ出力との差分に所定値β(0<β<1)をかけた値を加算した値を前記基準電圧とすることを特徴とする検出物検知装置。
【請求項11】
請求項1乃至9記載の検出物検知装置であり、
前記発光素子をオンオフさせるスイッチをさらに備え、前記制御部が前記スイッチ素子に前記スイッチ素子をオンオフさせる制御信号を送ることにより前記発光素子にパルス状電流を流すことを特徴とする検出物検知装置。
【請求項12】
請求項11記載の検出物検知装置であり、
前記制御部は前記比較器の出力を発光素子のオンオフに同期して前記比較器の出力を発光素子のオンオフに同期して検出することを特徴とする検出物検知装置。
【請求項13】
発光素子と受光素子を有する光センサと、基準電圧発生部と、前記光センサの出力と前記基準電圧発生部から出力する基準電圧とを比較する比較器と、を含み、前記発光素子から前記受光素子に至る光が検出物の位置を通過するように前記光センサを配置し、前記光センサの出力状態により前記検出物の有無を検知する検出物検知装置を構成する制御装置であり、
前記基準電圧発生部に前記基準電圧を出力させるための制御信号を供給し、必要に応じて、前記検出物を検知する前に前記光センサ出力値を取得し、前記光センサ出力値をもとに前記検出物の有無を検知するときの前記基準電圧を決定することを特徴とする制御装置。
【請求項14】
発光素子と受光素子を有する光センサが通光状態と遮光状態のいずれであるかにより前記検出物の有無を検知する検出物検知方法であり、
必要に応じて、前記検出物を検知する前に光センサ出力値を取得する第1ステップと、
前記光センサ出力値をもとに前記検出物の有無を検知するときの前記光センサ出力値の基準電圧を決定する第2ステップと、
前記光センサ出力値と前記基準電圧とを比較してその比較結果により前記検出物の有無を検知する第3ステップとを含むことを特徴とする検出物検知方法。
【請求項15】
請求項14記載の検出物検知方法であり、
前記第1ステップは、必要に応じて、前記検出物を検知する前に前記基準電圧を変化させたときの比較結果の変化により光センサ出力値を取得することを特徴とする検出物検知方法。
【請求項16】
請求項15記載の検出物検知方法であり、
前記第1ステップは、前記光センサ出力を通光状態とし前記基準電圧を減少方向に変化させたときの比較結果の変化により通光状態の光センサ出力値として取得することを特徴とする検出物検知方法。
【請求項17】
請求項15記載の検出物検知方法であり、
前記第1ステップは、前記光センサ出力を通光状態とし前記基準電圧を増加方向に変化させたときの比較結果の変化により通光状態の光センサ出力値として取得することを特徴とする検出物検知方法。
【請求項18】
請求項16又は17記載の検出物検知方法であり、
前記第1ステップは、前記基準電圧を階段状に変化させていき比較結果が反転したとき又はその直前の前記基準電圧を通光状態の光センサ出力値として取得することを特徴とする検出物検知方法。
【請求項19】
請求項14又は15記載の検出物検知方法であり、
前記第1ステップは、前記基準電圧を複数段階ずつ階段状に変化させていき比較結果が反転した後に反対方向に1段階ずつ変化させていき再度比較結果が反転したときまたはその直前の前記基準電圧を通光状態の光センサ出力値として取得することを特徴とする検出物検知方法。
【請求項20】
請求項14乃至19記載の検出物検知方法であり、
前記第2ステップは、通光状態での光センサ出力値から遮光状態での光センサ出力値を算出しその出力に一定値を加算した値を前記基準電圧とすることを特徴とする検出物検知方法。
【請求項21】
請求項14乃至20記載の検出物検知方法であり、
前記第2ステップは、通光状態での光センサ出力値に前記検出物の透過率をかけた値に一定値αを加算した値を前記基準電圧とすることを特徴とする検出物検知方法。
【請求項22】
請求項14乃至19記載の検出物検知方法であり、
前記第2ステップは、通光状態での光センサ出力値から遮光状態での光センサ出力値を算出しその出力に両者の光センサ出力の差分に所定値β(0<β<1)をかけた値を加算した値を前記基準電圧とすることを特徴とする検出物検知方法。
【請求項23】
請求項14乃至19記載の検出物検知方法であり、
前記第2ステップは、通光状態での光センサ出力値に前記検出物の透過率をかけた値にその値と通光状態での光センサ出力との差分に所定値β(0<β<1)をかけた値を加算した値を前記基準電圧とすることを特徴とする検出物検知方法。
【請求項24】
請求項14乃至23記載の検出物検知方法であり、
第1および第3ステップにおいて前記発光素子をオンオフさせることにより発光素子にパルス状電流を流すことを特徴とする検出物検知方法。
【請求項25】
請求項24記載の検出物検知方法であり、
第1および第3ステップにおいて発光素子のオンオフに同期して前記光センサ出力値と前記基準電圧の比較結果を取り込むことを特徴とする検出物検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−36773(P2007−36773A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218316(P2005−218316)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】