説明

光センサ

【課題】電磁シールド用の導電膜を備えるとともに、光検出領域に対向する領域で電磁シールド用の導電膜を除去した光センサにおいて、光検出領域に対向する領域でも電磁ノイズが侵入できないようにする。
【解決手段】シリコン基板12の表層部には、フォトダイオード13やIC回路15が形成されている。シリコン基板12の上面には、絶縁層16を介して遮光メタル18が形成されており、IC回路15は遮光メタル18で覆われている。フォトダイオード13に対向する領域では、遮光メタル18に受光窓19が開口され、受光窓19は導電性光学フィルタ32で覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光センサに関し、具体的には、電磁波ノイズを遮断する機能を備えた光センサに関する。
【背景技術】
【0002】
光センサには、フォトダイオード(PD)や出力増幅用のIC回路などをシリコン基板に作り込んだものがある。このような光センサでは、可視光から近赤外光までの波長域の光を検出することのできるフォトダイオードを用いており、そのうちの特定波長域の光だけをフォトダイオードで検出できるようにするためにはフォトダイオードの上部に光学フィルタを設けている。
【0003】
図1はこのような光センサの従来構造を模式的に表した断面図である。また、図2(a)〜(c)、図3(a)、(b)及び図4(a)、(b)は、この光センサの製造工程を説明する断面図である。以下、この光センサ11の製造工程を順次説明することにより、同時に光センサ11の構造を説明する。
【0004】
まず、半導体製造技術を用いて、P型シリコン基板12の表面層に、フォトダイオード13、接地用のコンタクト領域14(P型拡散層)、IC回路15などを作製する。ついで、図2(a)に示すように、シリコン基板12の上面をSiOからなる絶縁層16で覆う。図2(b)に示すように、コンタクト領域14の上面に対向する位置で絶縁層16に通孔を開口し、当該通孔内に金属やポリシリコンなどの導電性材料を充填して導電ポスト17を形成し、導電ポスト17を熱処理してコンタクト領域14にオーミック接触させる。図2(c)に示すように、絶縁層16の上面に、AlSiなどの遮光材料によって遮光メタル18を形成し、遮光メタル18によってIC回路15の上方を遮蔽するとともに、導電ポスト17を介して遮光メタル18をコンタクト領域14に導通させる。
【0005】
さらに、図3(a)に示すように、フォトリソグラフィ技術により、フォトダイオード13の上方において遮光メタル18に受光窓19を開口する。図3(b)に示すように、遮光メタル18の上面にSiOからなる絶縁層20を形成する。図4(a)に示すように、絶縁層20の上面全体に光学フィルタ21を形成し、ついで、図4(b)に示すように、フォトダイオード13の上方に対向する位置に光学フィルタ21を残して、他の領域の光学フィルタ21をエッチング等で除去し、目的とする光センサ11を作製する。
【0006】
このような光センサ11では、コンタクト領域14をアースラインに接続することで電気的に接地された電磁シールド用の遮光メタル18によりIC回路15の上方を覆っているので、図1に示すように、外部からの電磁ノイズαを遮光メタル18によって遮蔽することができ、電磁ノイズαによるIC回路15の誤動作を防止することができる。なお、このようにIC回路の上方を遮光メタルによって覆う構成は、特許文献1に開示されている。
【0007】
遮光メタル18には、フォトダイオード13に対向して受光窓19が開口されているので、外部からの入射光は受光窓19を通過してフォトダイオード13に入射し、フォトダイオード13によって検出される。また、フォトダイオード13自体は、可視光から近赤外光までの波長域の光に感度をもつが、光学フィルタ21は、入射光Laのうち特定波長域の光Lb(たとえば、赤外光)だけを透過させ、他の波長域の光Lcを反射させるので、フォトダイオード13によって特性波長域Lbの光だけを検知することができる。なお、光学フィルタを用いて光検出領域に入射する光の波長を制限する構成は、特許文献2に開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平11−40790号公報
【特許文献2】特開平7−170366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図1に示したような構造の光センサ11では、フォトダイオード13に対向する位置では遮光メタル18に受光窓19が開口しているので、電磁ノイズβが受光窓19を通過して遮光メタル18の内側に侵入するおそれがある。そのため、工場内など電磁ノイズの多い場所では、受光窓19を通過した電磁ノイズβが原因となってフォトダイオード13やコンタクト領域14に誤動作が発生する問題があった。よって、工場内部など電磁ノイズの多い場所での使用には不向きであるなど、用途が制限されていた。
【0010】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであって、電磁シールド用の導電膜を備えるとともに、光検出領域に対向する領域で電磁シールド用の導電膜を除去した光センサにおいて、光検出領域に対向する領域でも電磁ノイズが侵入できないようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のような課題を解決するために、本発明にかかる光センサは、光検出領域を除く素子形成領域を遮光性を有する導電膜によって覆い、前記光検出領域を光透過性を有する導電膜によって覆ったことを特徴としている。
【0012】
本発明の光センサによれば、光検出領域を除くIC回路などの素子形成領域を遮光性を有する導電膜によって覆っているので、IC回路などには光や電磁ノイズが到達せず、外部からの光や電磁ノイズによるIC回路などの誤動作を防ぐことができる。
【0013】
また、フォトダイオードやフォトトランジスタなどの光検出領域を光透過性を有する導電膜によって覆っているので、外部から入射する光は光透過性を有する導電膜を透過して光検出領域で検出されるが、電磁ノイズは光透過性を有する導電膜で遮蔽され、より確実に電磁ノイズを遮蔽することができ、光検出領域やIC回路などの誤動作を防ぐことができる。
よって、本発明の光センサによれば、工場内部のように電磁ノイズの多い場所でも使用することが可能になる。
【0014】
本発明にかかる光センサのある実施態様は、前記光透過性を有する導電膜が、光学フィルタ特性を有している。かかる実施態様によれば、特定の波長(域)の光だけを光検出領域で選択的に検出することができる。
【0015】
本発明にかかる光センサの別な実施態様は、前記光透過性を有する導電膜は、前記遮光性を有する導電膜に電気的に接触している。かかる実施態様によれば、光透過性を有する導電膜と遮光性を有する導電膜のうち、いずれか一方を接地すれば他方も接地されるので、光センサの構造を簡略にすることができる。
【0016】
なお、本発明における前記課題を解決するための手段は、以上説明した構成要素を適宜組み合せた特徴を有するものであり、本発明はかかる構成要素の組合せによる多くのバリエーションを可能とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
図5は本発明の実施形態1による光センサ31(光センサチップ)の構造を模式的に示す断面図である。この光センサ31では、P型シリコン基板12の表面層に、フォトダイオード13(光検出領域)、接地用のコンタクト領域14(P拡散層)、MOSトランジスタ等で構成されたIC回路15などを作製している。また、シリコン基板12の上面をSiOからなる絶縁層16で覆い、コンタクト領域14の上面に対向する位置で絶縁層16に通孔を開口し、当該通孔内に金属やポリシリコンなどの導電性材料を充填して導電ポスト17を形成し、導電ポスト17をコンタクト領域14にオーミック接触させている。絶縁層16の上面にはAlSiなどの遮光材料からなる遮光メタル18を形成し、遮光メタル18によってIC回路15の上方を覆っている。遮光メタル18には、フォトダイオード13の上方において受光窓19を開口してある。さらに、フォトダイオード13の上方に対向する位置において光学フィルタ21で受光窓19を覆い、遮光メタル18の上面にSiOからなる絶縁層20を形成している。
【0019】
この実施形態では、光検出領域としてフォトダイオード13を作製しているが、フォトトランジスタであってもよい。フォトダイオード13は、可視光から近赤外光までの広い波長域にわたって感度を有しているので、導電性光学フィルタ32を設けることにより、特定波長の光、すなわち導電性光学フィルタ32の透過波長(域)の光だけを光センサ31で検出できるようにしている。特定波長とは、例えばこの光センサ31と対にして使用されるLEDの発光波長であって、赤外線LEDであれば、例えば波長λ=870nmである。
【0020】
コンタクト領域14は、光センサ31を回路基板などに実装したときアースラインに接続されるようになっており、したがって遮光メタル18も導電ポスト17やコンタクト領域14を介して接地される。また、遮光メタル18は、不透明であって光を透過させない。よって、IC回路15を覆っている遮光メタル18は電磁シールド膜や遮光膜として働き、図5に示すように、外部からの電磁ノイズαや入射光を遮光メタル18によって遮蔽することができ、電磁ノイズαや入射光によるIC回路15の誤動作を防止することができる。
【0021】
また、導電性光学フィルタ32は、特定波長(例えば、赤外線波長)の光を透過させるバンドパスフィルタとしての機能と導電膜としての機能とを兼ね備えている。導電性光学フィルタ32は、遮光メタル18と接触して電気的に導通するように形成されており、遮光メタル18と同電位(つまり、接地電位)に保たれている。
【0022】
フォトダイオード13はこのような導電性光学フィルタ32によって覆われているので、光センサ31は、特定波長すなわち導電性光学フィルタ32の透過波長域の光のみを検出することができる。すなわち、入射光Laのうち特定波長域の光Lb(たとえば、赤外光)だけが導電性光学フィルタ32を透過し、他の波長域の光Lcは導電性光学フィルタ32で反射するので、フォトダイオード13によって特性波長域Lbの光だけが検知される。
【0023】
しかも、外部から受光窓19へ飛来した電磁ノイズβは、導電性光学フィルタ32によって遮蔽される。よって、遮光メタル18と導電性光学フィルタ32により全面で電磁ノイズα、βを遮蔽することができ、より確実にフォトダイオード13やIC回路15などの誤動作を防ぐことができる。よって、光センサ31によれば、工場内部のように電磁ノイズの多い場所でも使用することが可能になる。
【0024】
つぎに、この光センサ31の製造工程を図6(a)、(b)及び図7(a)、(b)により説明する。図6(a)に示すように、フォトダイオード13、コンタクト領域14、IC回路15などを作製されたシリコン基板12の上面に絶縁層16、導電ポスト17、遮光メタル18を形成し、遮光メタル18に受光窓19を開口するまでの工程は、従来例において説明したとおりであるので、ここまでの工程の説明は省略する。
【0025】
図6(a)のようにフォトダイオード13に対応させて受光窓19を開口したら、図6(b)に示すように、遮光メタル18の上面全体に導電性光学フィルタ32を形成する。ついで、図7(a)に示すように、フォトダイオード13の上方に対向する位置に導電性光学フィルタ32を残して、他の領域の導電性光学フィルタ32をエッチング等で除去する。さらに、図7(b)に示すように、遮光メタル18及び導電性光学フィルタ32の上面にSiOからなる絶縁層20を形成し、目的とする光センサ31を作製する。
【0026】
導電性光学フィルタ32は、光学フィルタの両面または片面に透明導電膜(金属薄膜)を形成した構造となっている。このような導電性光学フィルタ32の構成の一例を図8に示す。この導電性光学フィルタ32では、SiO膜34(絶縁体)とTiO膜35(絶縁体)を2層以上積層することによって多層膜フィルタを構成してあり、その両面に透明導電膜としてTi膜33(金属)を形成している。導電性光学フィルタ32の外面がTi膜33によって構成されているので、導電性光学フィルタ32を遮光メタル18の上に形成したとき、Ti膜33と遮光メタル18が接触して導電性光学フィルタ32が接地される。
【0027】
多層膜フィルタは、屈折率の異なる複数の材料を積層して構成される。この多層膜材料としては、上記のSiOやTiO以外にも、MgO、CrO、Al、CeO、HfO、Nb、SnO、Ta、Y、ZrOなどの金属酸化物、SiN、TiNなどの窒化物を用いることができる。また、上下の透明導電膜の材料には、上記のTiのほか、Al、Ag、Cu、Mo、Crなどの金属を採用することもできる。
【0028】
これらの多層膜材料や透明導電膜材料は、光センサ31の生産プロセス中において形成されるので、生産プロセスに使用される温度などに対して耐性が必要である。たとえば、遮光メタル形成時のプロセス温度では、一般的に400℃程度の熱が加わるので、有機系薄膜は不適合である。これらの成膜方法としては、蒸着、スパッタリング、MBE、イオンプレーティングなどで行うことができる。また、これらを受光窓19の上方にのみ残すようにパターニングする工程では、必要領域の上にレジストでパターンを生成した後、ドライエッチング、イオンミリングなどでレジストから露出した部分を除去し、所定形状の導電性光学フィルタ32を作製する。
【0029】
多層膜フィルタは、所望する光学特性によってその使用材料数を決められる。図8に示す例では、SiO/TiOの2種の層の繰り返しで多層フィルタを構成しているが、屈折率が異なる薄膜層による多層構造であれば2種以上の層であってもよく、たとえばa層/b層/c層というように3種の層の繰り返しであってもよい。また、多層フィルタの層数も、導電性光学フィルタ32の透過波長域の広狭などの特性に応じて適宜決定することができる。
【0030】
(第2の実施形態)
図9は本発明の実施形態2による光センサ36を模式的に示す断面図である。この実施形態においては、遮光メタル18の受光窓19を透明導電膜37で覆ってあり、受光窓19に対向させて絶縁層20の上に光学フィルタ38を形成している。透明導電膜37は、広い光透過波長域を有する、好ましくは透明な導電膜であって、例えばITO(酸化インジウムスズ)、ZnO系透明導電膜、In-ZnO透明導電膜、Ga添加ZnO膜などを用いることができる。また、光学フィルタ38は、2層以上の薄膜からなる多層膜などを用いることができ、例えば赤外領域などに透過波長域を有するバンドパスフィルタである。
【0031】
この実施形態の光センサ36では、光検出領域における電磁シールドの機能と光フィルタの機能とをそれぞれ透明導電膜37と光学フィルタ38とに分離しているので、透明導電膜37と光学フィルタ38の制約が小さくなり、両者の材料選択の自由度が高くなる。
【0032】
また、光学フィルタ38を絶縁層20の外面に設けているので、光センサ36に光学フィルタ38を後付けすることが可能となる。そのため、アセンブリメーカーなどにおいては、光センサ36を機器に組み込む前の段階において、用途に適した光学フィルタ38を光センサ36の上面に貼り付けて使用することが可能となり、光センサ36の汎用性が向上する。
【0033】
なお、図示しないが、実施形態2の光センサ36から光学フィルタ38を除いた実施形態も可能である。すなわち、光学フィルタ38を有さず、受光窓19を透明導電膜37で覆っただけのものであってもよい。
【0034】
(第3の実施形態)
図示しないが、実施形態1の導電性光学フィルタ32や実施形態2の光学フィルタ38の光学特性としては、3波長域の光を透過させるものであってもよい。たとえば、赤色光(λ=650nm近傍)、緑色光(λ=550nm近傍)、青色光(λ=450nm近傍)、とすれば、CCDなどのカラー撮像素子にも応用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、従来例の光センサの構造を示す概略断面図である。
【図2】図2(a)、(b)及び(c)は、従来例の光センサの製造工程を示す断面図である。
【図3】図3(a)、(b)は、図2(c)に続く製造工程を示す断面図である。
【図4】図4(a)、(b)は、図3(b)に続く製造工程を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態1による光センサの構造を示す概略断面図である。
【図6】図6(a)及び(b)は、実施形態1の光センサの製造工程を示す断面図である。
【図7】図7(a)、(b)は、図6(b)に続く製造工程を示す断面図である。
【図8】図8は、導電性光学フィルタの一例を示す概略断面図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態2による光センサの構造を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0036】
11 光センサ
12 半導体基板
13 フォトダイオード
14 コンタクト領域
15 IC回路部
16 絶縁層
17 導電ポスト
18 遮光メタル
19 受光窓
20 絶縁層
31 光センサ
32 導電性光学フィルタ
33 Ti膜
34 SiO
35 TiO
36 光センサ
37 透明導電膜
38 光学フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光検出領域を除く素子形成領域を遮光性を有する導電膜によって覆い、前記光検出領域を光透過性を有する導電膜によって覆ったことを特徴とする光センサ。
【請求項2】
前記光透過性を有する導電膜は、光学フィルタ特性を有することを特徴とする、請求項1に記載の光センサ。
【請求項3】
前記光透過性を有する導電膜は、前記遮光性を有する導電膜に電気的に接触していることを特徴とする、請求項1に記載の光センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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