説明

光ディスクの信号評価装置および信号評価方法

【課題】光ディスクの再生信号評価装置において、光ディスクに記録されている評価対象となる信号を効率的に抽出して再生信号の評価に必要な時間を短縮する。
【解決手段】評価対象パルス特定回路56は、光ディスクDKから再生され2値化されたた再生信号のパルス幅を測定して評価対象となるパルス幅のパルス信号を特定するごとに特定信号を出力する。評価用ディジタルデータ記憶回路57は、光ディスクDKから再生された再生信号を所定のサンプリングレートでサンプリングしたディジタル信号を順次記憶するとともに、同記憶したディジタル信号を特定信号に応じて評価用ディジタルデータとして特定信号の種類ごとに複数組記憶する。振幅計算回路61〜64は、評価用ディジタルデータを用いて各評価要素を計算し、コントローラ70は、同計算された各評価要素を用いて再生信号の評価を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD,DVDなどの光ディスクに記録された複数種類のパルス幅をもつ一連のパルスからなる信号のうちで、評価対象となるパルス幅の再生信号を評価する光ディスクの信号評価装置および信号評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数種類のパルス幅をもつ一連のパルスからなるディジタル信号を記録したCD,DVDなどの光ディスク、または光ディスクに記録された同ディジタル信号をアナログ再生するための光ピックアップなどの再生装置を検査するために、光ディスクに記録されているディジタル信号のうちで、評価対象となるパルス幅の再生信号を評価することはよく知られている。
【0003】
この種の再生信号の評価項目には、ジッタ、変調振幅、アシンメトリなどがある。ジッタは、再生信号を2値化した際のパルス幅のばらつきで評価される。変調振幅は、例えば、パルス幅が最長である信号の振幅と、パルス幅が最短である信号の振幅との比で評価される。アシンメトリは、例えば、パルス幅が最長である信号の中心レベルと、パルス幅が最短である信号の中心レベルとのずれで評価される。このような再生信号の評価においては、光ディスクに順次記録されているディジタル信号の中から評価対象となるパルス幅の再生信号を正確に抽出して評価する必要がある。
【0004】
例えば、下記特許文献1に示される光ディスクの信号評価装置においては、検査対象である光ディスクに記録されているディジタル信号のうち、評価対象であるパルス幅の信号、具体的には、最長のパルス幅の信号を抽出するとともに、同抽出した信号のジッタを評価して光ディスクの検査を行っている。この場合、光ディスクの1回転ごとに1つの評価対象であるパルス幅の信号の抽出および評価が行われる。これは、ある評価対象であるパルス幅の信号の抽出および評価を実行している間に、他の評価対象であるパルス幅の信号が発生して同他の評価対象であるパルス幅の信号の評価ができなないことを防止するため、評価対象であるパルス幅の信号の抽出および評価に光ディスクの1回転分の時間を確保したものである。
【特許文献1】特開平11−328865号公報
【0005】
しかしながら、上記した光ディスクの信号評価装置においては、光ディスクの1つのトラック上に評価対象となるパルス幅の信号が複数存在する場合、同評価対象となる信号の数だけ光ディスクを回転させて同信号の抽出および評価をしなければならず、同信号の抽出および評価に評価対象となる信号の数に応じた光ディスクの回転時間が必要となる。このため、1枚の光ディスクの検査に多くの時間を要するという問題がある。
【発明の開示】
【0006】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、光ディスクに記録されている評価対象となる信号を効率的に抽出して再生信号の評価に必要な時間を短縮することが可能な光ディスクの信号評価装置および信号評価方法を提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、光ディスクに記録された複数種類のパルス幅をもつ一連のパルスからなる信号のうちで、評価対象となるパルス幅の再生信号を評価する光ディスクの信号評価装置において、光ディスクにレーザ光を照射して光ディスクからの反射光に基づいて光ディスクに記録された信号を表す電気信号を生成する光ピックアップと、前記生成された電気信号に含まれる複数種類のパルス幅の一連のパルス信号のうちで、評価対象となるパルス幅の複数のパルス信号を抽出して記憶する評価対象信号抽出手段と、評価対象信号抽出手段によって抽出して記憶された複数のパルス信号を評価する評価手段とを備えたことにある。
【0008】
この場合、評価対象信号抽出手段を、光ピックアップによって生成された電気信号に含まれる各パルス幅に基づいて、評価対象となるパルス幅のパルス信号を特定して、同評価対象となるパルス幅のパルス信号を特定する特定信号を出力する評価対象パルス特定手段と、光ピックアップによって生成された電気信号を所定のサンプリングレートでサンプリングしてディジタル信号にA/D変換するA/D変換器と、評価対象パルス特定手段から出力された特定信号を用いて、A/D変換器によりA/D変換されて評価対象となるパルス幅に対応した複数のディジタル信号からなる複数組の評価用ディジタルデータを記憶する評価用ディジタルデータ記憶手段とで構成し、評価手段は、評価用ディジタルデータ記憶手段に記憶されている複数組の評価用ディジタルデータを用いて、評価対象となるパルス幅の再生信号を評価するようにするとよい。
【0009】
また、評価対象パルス特定手段は、例えば、光ピックアップによって生成された電気信号を2値化することによりパルス列信号に変換する2値化回路を含み、2値化回路によって変換されたパルス列信号に含まれる各パルスの幅を測定することにより評価対象となるパルス幅のパルス信号を特定して、同評価対象となるパルス幅のパルス信号を特定する特定信号を出力するとよい。さらに、評価手段は、例えば、前記電気信号のボトム値、ピーク値、およびボトム値とピーク値との差のうちの少なくとも一つを評価要素として、評価用ディジタルデータを評価するとよい。
【0010】
このように構成した本発明の特徴によれば、光ディスクに記録されている複数種類のパルス幅の一連のパルス信号のうちで、評価対象となるパルス幅の複数のパルス信号を抽出して記憶する。そして、評価対象信号抽出手段によって記憶された複数のパルス信号(具体的には、評価用ディジタルデータ記憶手段に記憶された複数組の評価用ディジタルデータ)を用いて評価対象となるパルス幅の再生信号を評価している。すなわち、再生信号の評価に必要な複数のパルス信号(具体的には、複数組の評価用ディジタルデータ)を記憶した後、複数のパルス信号を用いて再生信号の評価を行っている。このため、光ディスクに記録されているディジタル信号の中から、評価対象となるパルス幅の複数のパルス信号を抽出する際、再生信号の評価に必要な時間を確保する必要がなく効率的に評価用パルス信号を抽出することができる。この結果、再生信号の評価に必要な時間を短縮することができる。
【0011】
また、本発明の他の特徴は、前記評価対象となるパルス幅は複数あり、評価対象パルス特定手段は、複数種類の評価対象となるパルス幅のパルス信号をそれぞれ特定して複数種類の特定信号を出力し、評価用ディジタルデータ記憶手段は、複数種類の特定信号に応答して、複数種類の評価対象となるパルス幅ごとに複数組の評価用ディジタルデータをそれぞれ記憶し、かつ評価手段は、複数種類の評価対象となるパルス幅ごとに複数組の評価用ディジタルデータをそれぞれ評価するようにしたことにある。これによれば、再生信号の評価において、複数種類のパルス幅の再生信号を用いる場合であっても、各種類のパルス幅ごとに複数組の評価用ディジタルデータを記憶して再生信号の評価を行うことができる。
【0012】
また、本発明は装置の発明として実施できるばかりでなく、方法の発明としても実施できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る再生信号評価装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、CD,DVDなどの光ディスクDKを検査する光ディスク検査装置の全体概略図である。この光ディスク検査装置は、光ディスクDKを回転駆動する回転駆動装置10と、光ディスクDKにレーザ光を照射するとともに同照射による光ディスクDKからの反射光を受光する光ピックアップ20とを備えている。
【0014】
回転駆動装置10は、スピンドルモータ11およびフィードモータ12を備えている。スピンドルモータ11は、その回転により回転軸11bを回転させてターンテーブル13を回転させる。ターンテーブル13には、その上面に光ディスクDKが着脱可能に組み付けられるようになっている。また、スピンドルモータ11内には、エンコーダ11aが組み込まれており、エンコーダ11aは、スピンドルモータ11の回転を検出して同回転を表す回転検出信号をコントローラ70に出力する。この回転検出信号は、ターンテーブル13(光ディスクDK)の回転位置が一つの基準回転位置に来るごとに発生されるインデックス信号INDEXと、所定の微小な回転角度ずつハイレベルとローレベルを繰返すパルス列信号とからなるとともに互いにπ/2だけ位相のずれたA相信号φAおよびB相信号φBとからなる。これらの回転検出信号のうち、インデックス信号INDEXは、コントローラ70にてスピンドルモータ11、すなわち光ディスクDKの回転数(例えば1回転)の検出に用いられ、パルス列信号φA,φBはスピンドルモータ制御回路14にてスピンドルモータ11すなわち光ディスクDKの回転速度の検出に用いられる。
【0015】
スピンドルモータ11の回転は、スピンドルモータ制御回路14によって制御される。スピンドルモータ制御回路14は、後述するウォブル信号取り出し回路49からウォブル信号が出力されるときは同ウォブル信号を用いて、光ディスクDK上の光スポットが常に線速度一定で同光ディスクDKに対して移動するように、スピンドルモータ11の回転速度を制御する。また、光ディスクDK上に光スポットが形成されていないため、ウォブル信号取り出し回路49からウォブル信号が出力されないときは、エンコーダ11aが出力するパルス列信号φA,φBを用いて、光ディスクDKが回転速度一定で回転するようにスピンドルモータ11の回転速度を制御する。フィードモータ12は、その回転によりスクリューロッド15およびナット(図示せず)からなるねじ送り機構を介してスピンドルモータ11、同スピンドルモータ11を固定支持する支持部材16およびターンテーブル13を光ディスクDKの径方向に変位させる。
【0016】
フィードモータ12内にも、エンコーダ12aが組み込まれている。このエンコーダ12aは、フィードモータ11の回転を検出して同回転を表す回転検出信号をフィードモータ制御回路17およびコントローラ70に出力する。フィードモータ制御回路17は、コントローラ70による指示により、エンコーダ12aから出力される回転検出信号に加えて、後述するトラッキングサーボ信号の直流成分を用いてフィードモータ12の回転を制御して、スピンドルモータ11、ターンテーブル13および支持部材16の光ディスクDKの径方向への変位を制御する。
【0017】
光ピックアップ20は、レーザ光源21、コリメートレンズ22、偏光ビームスプリッタ23、1/4波長板24、対物レンズ25、凸レンズ26、シリンドリカルレンズ27およびフォトディテクタ28を備えている。この光ピックアップ20においては、レーザ光源21からのレーザ光を、コリメートレンズ22、偏光ビームスプリッタ23、1/4波長板24及び対物レンズ25を介して、光ディスクDKに集光させ、光ディスクDK上に光スポットを形成する。また、この光ディスクDKに形成された光スポットからの反射光は、対物レンズ25、1/4波長板24、偏光ビームスプリッタ23、凸レンズ26及びシリンドリカルレンズ27を介して、フォトディテクタ28に導かれて受光される。フォトディテクタ28は、分割線で区切られた4つの同一正方形状の受光素子からなる4分割受光素子によって構成されており、各受光素子は受光量に比例した電気信号A,B,C,Dをそれぞれ検出信号として出力する。なお、検出信号A,B,C,Dは、左上から時計回りに配置された各受光素子の受光量を表している。
【0018】
また、この光ピックアップ20は、フォーカスアクチュエータ31およびトラッキングアクチュエータ32も備えている。フォーカスアクチュエータ31は、対物レンズ25をレーザ光の光軸方向(光ディスクDKの盤面と垂直方向)に駆動して光スポットを光軸方向に微動させる。トラッキングアクチュエータ32は、対物レンズ25を光ディスクDKの径方向に駆動して光スポットを光ディスクDKの径方向に微動させる。また、この光ピックアップ20のレーザ光源21には、レーザ光源21の作動を制御するため、レーザ駆動回路41が接続されている。
【0019】
フォトディテクタ28には、HF信号増幅回路42が接続されている。HF信号増幅回路42は、フォトディテクタ28から出力された検出信号A〜Dをそれぞれ増幅して、フォーカスエラー信号生成回路43、トラッキングエラー信号生成回路46および再生信号生成回路51にそれぞれ出力する。
【0020】
フォーカスエラー信号生成回路43は、HF信号増幅回路42を介してフォトディテクタ28から出力される検出信号A〜Dを用いた演算(具体的には、非点収差法による(A+C)−(B+D)の演算)により、フォーカスエラー信号を生成して、フォーカスサーボ回路44に出力する。フォーカスサーボ回路44は、フォーカスエラー信号に基づいてフォーカスサーボ信号を生成し、同フォーカスサーボ信号を用いてドライブ回路45を介してフォーカスアクチュエータ31を駆動制御することにより、対物レンズ25を光軸方向に変位させてフォーカスサーボ制御する。これにより、レーザ光の焦点、すなわち光スポットが光ディスクDKの記録層に追従するように制御される。
【0021】
トラッキングエラー信号生成回路46は、HF信号増幅回路42を介してフォトディテクタ28から出力される検出信号A〜Dを用いた演算(具体的には、プッシュプル法による(A+C)−(B+D)の演算)により、トラッキングエラー信号を生成して、トラッキングサーボ回路47に出力する。トラッキングサーボ回路47は、トラッキングエラー信号に基づいてトラッキングサーボ信号を生成し、同トラッキングサーボ信号を用いてドライブ回路48を介してトラッキングアクチュエータ32を駆動制御することにより、対物レンズ25を光ディスクDKの径方向に変位させてトラッキングサーボ制御する。これにより、光スポットが光ディスクDKのトラック中心を追従するように制御される。
【0022】
また、トラッキングエラー信号生成回路46にて生成されたトラッキングエラー信号は、バンドパスフィルタからなるウォブル信号取り出し回路49にも出力される。ウォブル信号取り出し回路49は、トラッキングエラー信号からウォブル信号を取り出してスピンドルモータ制御回路14に出力する。また、トラッキングサーボ回路47にて生成されたトラッキングサーボ信号は、フィードモータ制御回路17にも出力される。フィードモータ制御回路17においては、トラッキングサーボ信号から直流成分が抽出されて、同抽出された直流成分がフィードモータ12の制御に用いられる。
【0023】
再生信号生成回路51は、HF信号増幅回路42から出力される検出信号A〜Dに基づいて再生信号(フォトディテクタ28からの検出信号A〜Dの合算信号A+B+C+DからなるSUM信号)を生成してA/D変換器52に出力する。この再生信号生成回路51から出力される再生信号が本発明の再生信号に対応するもので、この再生信号は光ディスクDKに記録されている複数種類のパルス幅をもつ一連のパルスからなる信号を表すものである。A/D変換器52は、クロック信号発生回路53からのクロック信号の入力毎に再生信号生成回路51から出力される再生信号をサンプリングホールドして、同サンプリングホールドした再生信号をA/D変換し、再生信号の瞬時値を表すディジタル信号を前記クロック信号の周期ごとに評価用ディジタルデータ記憶回路57に出力する。クロック信号発生回路53は、コントローラ70に制御されて所定の周期のクロック信号をA/D変換器52に出力する。本実施形態においては、0.5Tごとに再生信号をサンプリングするように設定されている。なお、このクロック信号は、光ディスクDKに記録されている信号の基準クロックとは無関係である。
【0024】
また、再生信号生成回路51から出力される再生信号は、イコライズ回路で構成された波形等価回路54によってその振幅が周波数に応じて補正された後、2値化回路55にて2値化すなわちパルス列信号に変換されて評価対象パルス特定回路56に出力される。評価対象パルス特定回路56は、2値化回路55から出力されるパルス列信号におけるハイレベル信号およびローレベル信号の各パルス幅を順次測定して評価対象となるパルス幅を検出するごとに同検出したパルス幅のパルス信号を特定したことを表す特定信号を評価用ディジタルデータ記憶回路57に出力する。ここで、評価対象となるパルス幅は、光ディスクDKから再生される再生信号の評価に用いる前記ディジタル信号のパルス幅であり、本実施形態においては、光ディスクDKに記録されているディジタル信号のうちで、ハイレベル信号およびローレベル信号のそれぞれについて最短および最長のパルス幅である。例えば、CDであれば3Tおよび11T、DVDであれば3Tおよび14T、BD(Blu-ray Disc)であれば2Tおよび8Tである。
【0025】
評価用ディジタルデータ記憶回路57は、RAMにより構成され、コントローラ70によってデータの記憶および読み出しが制御される記憶装置である。具体的には、コントローラ70によるデータの記憶の指示に応じてA/D変換器52から出力されるディジタル信号を順次記憶する。この場合、評価用ディジタルデータ記憶回路57の記憶領域には、A/D変換器52から出力されるディジタル信号値を20個だけ記憶する領域M(1)〜M(20)が複数組分確保されており、A/D変換器52から順次に出力されるディジタル信号値を1組分の領域M(1)から順番に記憶するとともに、領域M(20)に達した場合には再度領域M(1)に戻って以前に記憶したディジタル信号値を更新しながら記憶処理を続ける。すなわち、評価用ディジタルデータ記憶回路57は、ディジタル信号を1組分の記憶領域M(1)〜(20)にファーストインファーストアウト方式にて記憶する。
【0026】
また、評価用ディジタルデータ記憶回路57は、評価対象パルス特定回路56から出力される特定信号に応じて、同特定信号によって特定されたパルス幅をもつパルス信号に対応するディジタル信号を記憶する。具体的には、評価用ディジタルデータ記憶回路57は、領域M(1)〜M(20)に対するディジタル信号値の記憶時において前記特定信号を検出すると、領域M(1)〜M(20)に記憶された各ディジタル信号値を評価用ディジタルデータとして記憶する。この場合、評価用ディジタルデータには、同特定信号によって特定されたパルス幅の種類を表すフラグが付加されて記憶される。なお、この場合、評価用ディジタルデータ記憶回路57は、記憶領域に新たな領域M(1)〜M(20)を確保してA/D変換器52から出力されるディジタル信号を順次記憶する。なお、本実施形態では、再生信号のサンプリングレートは0.5Tごとに設定され、記憶領域において記憶するデータ数は20個に設定されているが、サンプリングレートおよび記憶するデータ数は適宜変更できる。
【0027】
また、評価用ディジタルデータ記憶回路57は、コントローラ70による読み出しの指示に応じて、評価対象のパルス幅ごとに記憶した評価用ディジタルデータを振幅計算回路61〜64にそれぞれ出力する。振幅計算回路61〜64は、評価用ディジタルデータを用いて再生信号の評価に用いる評価要素を計算する回路であり、各評価対象のパルス幅に対応する再生信号の波形におけるボトム値およびピーク値を評価要素としてそれぞれ計算する。これらのうち振幅計算回路61は、最短のパルス幅におけるローレベル信号のボトム値を計算し、振幅計算回路62は、同最短のパルス幅におけるハイレベル信号のピーク値を計算する。また、振幅計算回路63は、最長のパルス幅におけるローレベル信号のボトム値を計算し、振幅計算回路64は、同最長のパルス幅におけるハイレベル信号のピーク値を計算する。これらの振幅計算回路61〜64によって計算された評価要素はコントローラ70にそれぞれ出力される。なお、振幅計算回路61〜64には、各評価要素の計算に用いる評価用ディジタルデータを記憶するためのRAMにより構成されたメモリ61a〜64aをそれぞれ備えている。
【0028】
コントローラ70は、CPU、ROM、RAM、ハードディスクなどからなるマイクロコンピュータによって構成されており、キーボード、マウスなどからなる入力装置71からの指示に従って図示しないプログラムを実行することにより光ディスクDKの検査を行うとともに、同検査の実行過程および実行結果を、CRT(または液晶ディスプレイ)、プリンタなどからなる出力装置72に適宜表示させる。また、このコントローラ70には、スピンドルモータ制御回路14、フィードモータ制御回路17、レーザ駆動回路41、クロック信号発生回路53および評価用ディジタルデータ記憶回路57が、それぞれの作動制御のために接続されている。
【0029】
上記のように構成した実施形態の作動について説明する。作業者は、図示しない電源スイッチの投入により、コントローラ70を含む光ディスク検査装置の各種回路の作動を開始させる。そして、検査対象となる光ディスクDKをターンテーブル13上に固定する。この場合、検査対象となる光ディスクDKの記録領域における内周部、中間部および外周部の各一部には、複数種類のパルス幅をもつ一連のディジタル信号からなる光ディスクDKの検査用の信号が予め記録されている。次に作業者は、入力装置71を操作して光ディスクDKの検査をコントローラ70に指示する。この光ディスクDKの検査は、光ディスクDKの内周部、中間部および外周部の各一部に記録されている検査用の信号をそれぞれ再生して、同再生した再生信号を評価することにより光ディスクDKの良否判定を行うものである。この指示に応答してコントローラ70は、図示しないプログラムを実行することにより光ディスクDKの検査を開始する。
【0030】
まず、コントローラ70は、スピンドルモータ制御回路14を作動させて光ディスクDKをコントローラ70に設定されている回転速度で回転させるとともに、フィードモータ制御回路17を作動させて光ディスクDKを所定の径方向位置に移動させる。この所定の径方向位置は、光ディスクDKの記録領域における内周部の前記検査用信号が記録されたトラック上に光スポットを形成する光ディスクDKの位置である。次に、コントローラ70は、レーザ駆動回路41の作動を開始させてレーザ光源21からレーザ光を光ディスクDKに向けて出射させるとともに、クロック信号発生回路53および評価用ディジタルデータ記憶回路57の作動を開始させる。この場合、評価用ディジタルデータ記憶回路57には、A/D変換器52から出力されるディジタル信号および評価用ディジタルデータの記憶が指示される。
【0031】
レーザ光源21から出射されたレーザ光は、光ディスクDKにて反射されてフォトディテクタ28で受光される。フォトディテクタ28は、受光量に応じた検出信号A〜DをHF信号増幅回路42を介してフォーカスエラー信号生成回路43、トラッキングエラー信号生成回路46および再生信号生成回路51にそれぞれ出力する。
【0032】
これらのうちフォーカスエラー信号生成回路43に出力された検出信号A〜Dは、フォーカスエラー信号生成回路43、フォーカスサーボ回路44およびドライブ回路45による対物レンズ25のフォーカスサーボ制御に用いられる。また、トラッキングエラー信号生成回路46に出力された検出信号A〜Dは、トラッキングエラー信号生成回路46、トラッキングサーボ回路47およびドライブ回路48による対物レンズ25のトラッキングサーボ制御に用いられる。なお、トラッキングエラー信号生成回路46から出力されたトラッキングエラー信号はウォブル信号取り出し回路49を介してスピンドルモータ制御回路14に供給され、スピンドルモータ制御回路14は、前記したように同ウォブル信号を用いて光ディスクDKを設定された線速度で回転制御する。また。トラッキングサーボ回路47から出力されたトラッキングサーボ信号は、フィードモータ制御回路17に供給され、光ディスクDKの径方向位置の制御に用いられる。
【0033】
再生信号生成回路51に出力された検出信号A〜Dは、再生信号生成回路51にて再生信号に変換された後、A/D変換器52に出力される。A/D変換器52は、クロック信号発生回路53から出力されたクロック信号に応じて所定のサンプリングレート(0.5T)によって再生信号をサンプリングしてディジタル信号に変換し、同変換したディジタル信号を評価用ディジタル信号記憶回路57に順次出力する。図3のX,X,X・・・は、これらのディジタル信号のディジタル信号値を示している。また、再生信号生成回路51にて生成された再生信号は、波形等価回路54および2値化回路55を介して評価対象パルス特定回路56にも出力される。
【0034】
評価対象パルス特定回路56は、図2(A)〜(C)に示すように、再生信号生成回路51から出力された再生信号(図2(A))が2値化回路55によって2値化されたパルス列信号(図2(B))を入力するとともに同パルス列信号の各パルス幅を測定して、評価対象となるパルス幅を検出するごとに特定信号(図2(C))を評価用ディジタルデータ記憶回路57に出力する。具体的には、2値化回路55から出力されるパルス列信号において、評価対象であるパルス幅をもつパルス信号の終端エッジを検出するごとに特定信号を出力する。この評価対象となるパルス幅は、前記したように、2値化回路55から出力されるパルス列信号のローレベル信号およびハイレベル信号における各最短のパルス幅および各最長のパルス幅であり、これら4種類のパルス信号の終端エッジを検出するごとにそれぞれ特定信号が出力される。
【0035】
この場合、各特定信号は、前記4種類のパルス信号の検出に対応する4つの信号線を介して評価用ディジタルデータ記憶回路57に出力される。すなわち、これら4つの信号線を介して出力される特定信号は、通常ローレベル信号が出力されており、前記4種類のパルス信号の終端エッジを検出するごとに対応する信号線を介してハイレベル信号が出力される。なお、図2(A)〜(C)は、光ディスクDKとしてDVDを用いた例を示しており、図2(C)において、「3T−」は最短のパルス幅のローレベル信号、「3T+」は最短のパルス幅のハイレベル信号、14T「−」は最長のパルス幅のローレベル信号、「14T+」は最長のパルス幅のハイレベル信号をそれぞれ検出した場合における特定信号の出力状態を表している。なお、本実施形態においては、前記4種類のパルス信号の検出に対応する4つの信号線を介して特定信号を出力するように構成したが、前記4種類のパルス信号の検出に対応する4種類の特定信号を1つの信号線を介して出力するように構成してもよい。
【0036】
評価用ディジタルデータ記憶回路57は、コントローラ70の指示に応じてA/D変換器52から順次に出力されるディジタル信号を領域M(1)〜M(20)にファーストインファーストアウト方式にて記憶する。この場合、図3に示すように、評価用ディジタルデータ記憶回路57は、評価対象パルス特定回路56から出力される特定信号を検出した場合には、直近に記憶したディジタル信号の次の領域M(1)〜M(20)に特定信号によって特定されたパルス信号の種類を表すフラグを記憶して評価用ディジタルデータを記憶する。本実施形態においては、最短のパルス幅のローレベル信号に対しては「00」、最短のパルス幅のハイレベル信号に対しては「01」、最長のパルス幅のローレベル信号に対しては「10」、最長のパルス幅のハイレベル信号に対しては「11」がそれぞれフラグとして記憶される。なお、図3において、X〜X20はA/D変換器52から出力されるディジタル信号の各ディジタル信号値である。
【0037】
この光ディスクDKに記録された検査用信号の再生は、光ディスクDKの内周部、中間部および外周部においてそれぞれ1つのトラックについて行われる。したがって、コントローラ70は、エンコーダ11aから出力されるインデックス信号INDEXを監視して光ディスクDKが1回転して1つのトラック分の検査用信号を再生した場合には、レーザ駆動回路41の作動を停止させてレーザ光の出射を停止させる。これにより、評価用ディジタルデータ記憶回路57は、1つのトラック上に記憶されている評価対象となるパルス幅に対応した評価用ディジタルデータが評価対象となるパルス幅ごとに複数組ずつ記憶される。そして、コントローラ70は、評価用ディジタルデータ記憶回路57に対して評価用ディジタルデータの読み出しを指示する。
【0038】
この指示に応答して評価用ディジタルデータ記憶回路57は、評価用ディジタルデータ内に記憶しているフラグの値に応じて同評価用ディジタルデータを振幅計算回路61〜64にそれぞれ出力する。具体的には、図3に示すように、振幅計算回路61には最短のパルス幅のローレベル信号に対応する評価用ディジタルデータを出力し、振幅計算回路62には最短のパルス幅のハイレベル信号に対応する評価用ディジタルデータを出力し、振幅計算回路63には最長のパルス幅のローレベル信号に対応する評価用ディジタルデータを出力し、振幅計算回路64には最長のパルス幅のハイレベル信号に対応する評価用ディジタルデータを出力する。
【0039】
振幅計算回路61〜64は、それぞれ内蔵するメモリ61a〜64aに評価用ディジタルデータ記憶回路57から出力された複数組の評価用ディジタルデータをそれぞれ記憶する。そして、振幅計算回路61〜64は、各メモリ61a〜64aに記憶した各評価用ディジタルデータによって表される再生信号の波形のボトム値またはピーク値をそれぞれ評価要素として計算する。この場合、振幅計算回路61〜64は、評価用ディジタルデータを構成するディジタル信号値の中から評価要素の計算に用いるディジタル信号値を抽出して、同抽出したディジタル信号値を用いて各評価要素を計算する。
【0040】
具体的には、最短のパルス幅、例えば3Tのパルス幅のローレベル信号およびハイレベル信号に対応する再生信号の波形のボトム値またはピーク値を計算する振幅計算回路61,62は、フラグ(「00」または「01」)が記憶されている領域M(1)〜(20)から1〜6つ前の領域M(1)〜(20)にそれぞれ記憶されている6個のディジタル信号値を用いて各評価要素を計算する。これは、サンプリングレートが0.5Tであるため、評価用ディジタルデータにおいて最後に記憶されたディジタル信号値から7つ目以前に記憶されたディジタル信号値は評価対象である最短のパルス幅(3T)のパルス信号より前に存在する他のパルス信号に対応するディジタル信号値であるため、この他のパルス信号に対応するディジタル信号値を除外して各評価要素を計算するためである。
【0041】
また、最長のパルス幅、例えば14Tのローレベル信号およびハイレベル信号に対応する再生信号の波形のボトム値またはピーク値を計算する振幅計算回路63,64は、フラグ(「10」または「11」)が記憶されている領域M(1)〜(20)以外の領域M(1)〜(20)にそれぞれ記憶されているディジタル信号値を用いて各評価要素を計算する。この場合、最長のパルス幅が14Tであるため、対応する再生信号の波形のボトム値またはピーク値を計算するには最低でも半分(7T)のパルス幅分のディジタル信号値、すなわち14個のディジタル信号値が必要である。したがって、振幅計算回路63,64は、フラグ(「10」または「11」)が記憶されている領域M(1)〜(20)以外の領域M(1)〜(20)にそれぞれ記憶されている19個のディジタル信号値を用いて評価要素をそれぞれ計算する。なお、評価対象となるパルス幅の半分以上のパルス幅に対応する数のディジタル信号値を用いればよいため、本実施形態においては14個以上のディジタル信号値を用いれば最長のパルス幅(14T)に対応する再生信号の各評価要素を計算することができる。また、前記した最短のパルス幅(3T)に対応する再生信号の各評価要素についても同様に、3〜6個のディジタル信号値を用いるようにすれば各評価要素を計算することができる。
【0042】
そして、振幅計算回路61〜64は、それぞれ計算した各評価要素をコントローラ70に出力する。コントローラ70は、振幅計算回路61〜64から出力された各評価要素を用いて変調振幅またはアシンメトリなどの各評価項目を計算して再生信号の評価を行う。また、コントローラ70は、前記した評価用ディジタルデータ記憶回路57に対する評価用ディジタルデータの読み出しの指示に続いて、フィードモータ制御回路17を作動させて光ディスクDKを次の径方向位置、すなわち、光ディスクDKの記憶領域における中間部の検査用信号が記録された位置に移動させる。
【0043】
そして、コントローラ70は、レーザ駆動回路41およびクロック信号発生回路53にそれぞれ作動の開始を指示するとともに、評価用ディジタルデータ記憶回路57にA/D変換器52から出力されるディジタル信号および評価用ディジタルデータの記憶を指示する。これらの指示により、評価用ディジタルデータ記憶回路57は、前記と同様にしてA/D変換器52から出力されるディジタル信号および評価用ディジタルデータの記憶を開始する。すなわち、前記した振幅計算回路61〜64による各評価要素の計算およびコントローラ70による再生信号の評価処理と、評価用ディジタルデータ記憶回路57によるディジタル信号および評価用ディジタルデータの記憶処理とは並行して実行される。
【0044】
そして、評価用ディジタルデータ記憶回路57に光ディスクDKの中間部における1つのトラック分の評価用ディジタルデータの記憶が行われた後、前記と同様にして振幅計算回路61〜64による各評価要素の計算およびコントローラ70による再生信号の評価処理が実行される。この場合、コントローラ70は、フィードモータ制御回路17を作動させて光ディスクDKを次の径方向位置、すなわち、光ディスクDKの記憶領域における外周部の検査用信号が記録された位置に移動させて、評価用ディジタルデータ記憶回路57によるディジタル信号および評価用ディジタルデータの記憶処理が続けて実行させる。すなわち、光ディスクDKの中間部から抽出された評価用ディジタルデータにおける各評価要素の計算および再生信号の評価処理は、光ディスクDKの外周部における評価用ディジタルデータの抽出と並行して実行される。そして、光ディスクDKの外周部から抽出された評価用ディジタルデータを用いて、各評価要素の計算および再生信号の評価処理が実行される。
【0045】
これらの光ディスクDKの内周部、中間部および外周部における各再生信号の評価結果に基づいて、コントローラ70は光ディスクDKの良否判定を行い、その結果を出力装置72に表示する。また、他の光ディスクDKの検査を実行する場合には、ターンテーブル上に他の光ディスクDKを載置固定して、同様に検査を行う。
【0046】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、光ディスクDKに記録されている複数種類のパルス幅をもつ一連のディジタル信号からなる検査用信号の中から、評価対象となる最短および最長の各パルス幅にそれぞれ対応する複数のディジタル信号からなる評価用ディジタルデータを各パルス幅および信号レベルごとに評価用ディジタルデータ記憶回路57に記憶している。この場合、評価用ディジタルデータ記憶回路57には、光ディスクDKの1つのトラック分の評価用ディジタルデータが複数組ずつ記憶される。そして、評価用ディジタルデータ記憶回路57に記憶された複数組の評価用ディジタルデータを用いて評価対象となるパルス幅の再生信号を評価している。すなわち、再生信号の評価に必要な複数組の評価用ディジタルデータを記憶した後、同評価用ディジタルデータを用いて再生信号の評価を行っている。このため、光ディスクDKに記録されている検査用信号の中から、評価対象となる各パルス幅の評価用ディジタルデータを抽出する際、再生信号の評価に必要な時間を確保する必要がなく効率的に評価用ディジタルデータを抽出することができる。この結果、再生信号の評価に必要な時間を短縮することができる。
【0047】
また、本実施形態においては、光ディスクDKの記憶領域における内周部または中間部から抽出した各評価用ディジタルデータについて各評価要素の計算および再生信号の評価処理を実行している際に、光ディスクDKの記憶領域における中間部または外周部から評価用ディジタルデータの抽出処理を並行して実行している。これにより、より効率的に評価用ディジタルデータを抽出することができ、再生信号の評価に必要な時間を短縮することができる。
【0048】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0049】
上記実施形態においては、評価用ディジタルデータ記憶回路57は、直近に記憶したディジタル信号の次の領域M(1)〜M(20)に特定信号によって特定されたパルス信号の種類を表すフラグを記憶して評価用ディジタルデータを記憶するように構成したが、振幅計算回路61〜64において、評価用ディジタルデータを構成するディジタル信号値の中から評価要素の計算に用いるディジタル信号値を抽出できれば、これに限定されるものではない。例えば、評価用ディジタルデータ記憶回路57が特定信号を検出した際に、直近にディジタル信号値を記憶した領域M(1)〜(20)と、パルス信号の種類を表すフラグとを評価用ディジタルデータとして記憶するようにしてもよい。そして、振幅計算回路61〜64は、同記憶した特定信号を検出した際に直近にディジタル信号値を記憶した領域M(1)〜(20)に基づいて評価要素の計算に用いるディジタル信号値を上記実施形態と同様にして抽出する。これによっても、上記と同様の効果が期待できる。
【0050】
また、これに代えて、評価用ディジタルデータ記憶回路57は、特定信号を検出した際に直近にディジタル信号値を記憶した領域M(1)〜(20)から、特定信号によって特定されるパルス幅に応じた数の領域M(1)〜(20)に記憶された各ディジタルデータ値を評価要素の計算に用いるディジタル信号値として抽出した後、同抽出したディジタル信号値およびパルス信号の種類を表すフラグ評価用ディジタルデータとして記憶するようにしてもよい。これによれば、振幅計算回路61〜64にて、評価用ディジタルデータの中から評価要素の計算に用いるディジタル信号値を抽出する処理は不要となる。
【0051】
また、上記実施形態においては、評価用ディジタルデータ記憶回路57は、各振幅計算回路61〜64に複数組の評価用ディジタルデータを出力し、各振幅計算回路61〜64は、各メモリ61a〜64aに同複数組の評価用ディジタルデータを記憶するように構成したが、これに限定されるものではない。例えば、評価用ディジタルデータ記憶回路57は、記憶している評価用ディジタルデータを1組ずつ各振幅計算回路61〜64に出力し、各振幅計算回路61〜64は、同1組ずつ出力された評価用ディジタルデータを用いて各評価要素を計算するように構成してもよい。これによれば、各振幅計算回路61〜64は、複数組の評価用ディジタルデータを記憶するための各メモリ61a〜64aが不要となり構成が簡単となる。
【0052】
また、上記実施形態においては、特定信号によって特定されるパルス信号の種類に応じて振幅計算回路61〜64を備えるように構成したが、これに限定されるものではない。例えば、振幅計算回路61〜64を1つの振幅計算回路とし、評価用ディジタルデータに付加されているパルス信号の種類を表すフラグの種類に応じて各評価要素を計算するように構成してもよい。これによれば、各評価要素を1つの振幅計算回路によって計算でき、光ディスク検査装置の構成を簡単にすることができる。
【0053】
また、上記実施形態においては、光ディスクDKの記憶領域における内周部、中間部および外周部の各1つのトラックから評価用ディジタルデータを抽出して、同評価用ディジタルデータを用いて評価要素の計算および再生信号の評価を行うようにしたが、複数組の評価用ディジタルデータを抽出して、同抽出した複数の評価用ディジタルデータを用いて再生信号の評価ができれば、これに限定されるものではない。すなわち、本実施形態における評価用ディジタルデータを抽出するトラックの数および光ディスクDKの回転数は、複数組の評価用ディジタルデータを抽出するための例示であり、これらトラックの数および光ディスクDKの回転数は、再生信号の評価の精度、同評価のために許される時間などに基づいて適宜決定される。また、例えば、トラックの数および光ディスクDKの回転に代えて、所定の数の評価用ディジタルデータを抽出した場合に、同評価用ディジタルデータを用いて評価要素の計算および再生信号の評価を行うように構成してもよい。これによっても、上記と同様の効果が期待できる。
【0054】
また、上記実施形態においては、評価対象となるパルス幅は、光ディスクDKに記録された検査用信号における最短のパルス幅および最長のパルス幅の2種類のパルス幅とし、同2種類のパルス幅を信号レベルごとに検出して再生信号の評価を行うように構成したが、再生信号の評価に必要なパルス幅のパルス信号を検出すれば、これに限定されるものではない。すなわち、1つのパルス幅または3つ以上の種類のパルス幅を評価対象として、同各パルス幅をもつパルス信号を抽出して再生信号を評価するように構成してもよい。
【0055】
さらに、上記実施形態においては、光ディスクDKを検査するための光ディスク装置に本発明を適用するようにしたが、本発明はディスクDKに記憶された信号を再生して再生信号を評価する装置であれば、これに限定されるものではない。例えば、光ディスクDKに記録されたディジタル信号をアナログ再生するための光ピックアップ20などの再生装置を検査するための光ピックアップ検査装置などにも広く適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ディスク検査装置の全体を概略的に示すブロック図である。
【図2】(A)は光ディスクから再生した再生信号の波形図であり、(B)は再生信号を2値化したパルス列信号の波形図であり、(C)は特定信号の波形図である。
【図3】評価用ディジタルデータ記憶回路および振幅計算回路における評価用ディジタルデータの記憶状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0057】
DK…光ディスク、10…回転駆動装置、11…スピンドルモータ、12…フィードモータ、20…光ピックアップ、21…レーザ光源、25…対物レンズ、28…フォトディテクタ、51…再生信号生成回路、52…A/D変換器、53…クロック信号発生回路、56…評価対象パルス特定回路、57…評価用ディジタルデータ記憶回路、61〜64…振幅計算回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに記録された複数種類のパルス幅をもつ一連のパルスからなる信号のうちで、評価対象となるパルス幅の再生信号を評価する光ディスクの信号評価装置において、
光ディスクにレーザ光を照射して光ディスクからの反射光に基づいて光ディスクに記録された信号を表す電気信号を生成する光ピックアップと、
前記生成された電気信号に含まれる複数種類のパルス幅の一連のパルス信号のうちで、前記評価対象となるパルス幅の複数のパルス信号を抽出して記憶する評価対象信号抽出手段と、
前記評価対象信号抽出手段によって抽出して記憶された複数のパルス信号を評価する評価手段とを備えたことを特徴とする光ディスクの信号評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスクの信号評価装置において、
前記評価対象信号抽出手段を、
前記光ピックアップによって生成された電気信号に含まれる各パルス幅に基づいて、前記評価対象となるパルス幅のパルス信号を特定して、同評価対象となるパルス幅のパルス信号を特定する特定信号を出力する評価対象パルス特定手段と、
前記光ピックアップによって生成された電気信号を所定のサンプリングレートでサンプリングしてディジタル信号にA/D変換するA/D変換器と、
前記評価対象パルス特定手段から出力された特定信号を用いて、前記A/D変換器によりA/D変換されて前記評価対象となるパルス幅に対応した複数のディジタル信号からなる複数組の評価用ディジタルデータを記憶する評価用ディジタルデータ記憶手段とで構成し、
前記評価手段は、前記評価用ディジタルデータ記憶手段に記憶されている複数組の評価用ディジタルデータを用いて、前記評価対象となるパルス幅の再生信号を評価する光ディスクの信号評価装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光ディスクの信号評価装置において、
前記評価対象パルス特定手段は、
前記光ピックアップによって生成された電気信号を2値化することによりパルス列信号に変換する2値化回路を含み、
前記2値化回路によって変換されたパルス列信号に含まれる各パルスの幅を測定することにより前記評価対象となるパルス幅のパルス信号を特定して、同評価対象となるパルス幅のパルス信号を特定する特定信号を出力する光ディスクの信号評価装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の光ディスクの信号評価装置において、
前記評価対象となるパルス幅は複数あり、
前記評価対象パルス特定手段は、複数種類の評価対象となるパルス幅のパルス信号をそれぞれ特定して複数種類の特定信号を出力し、
前記評価用ディジタルデータ記憶手段は、前記複数種類の特定信号に応答して、前記複数種類の評価対象となるパルス幅ごとに前記複数組の評価用ディジタルデータをそれぞれ記憶し、かつ
前記評価手段は、前記複数種類の評価対象となるパルス幅ごとに前記複数組の評価用ディジタルデータをそれぞれ評価する光ディスクの信号評価装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載の光ディスクの信号評価装置において、
前記評価手段は、前記光ピックアップによって生成された電気信号のボトム値、ピーク値、およびボトム値とピーク値との差のうちの少なくとも一つを評価要素として、前記評価用ディジタルデータを評価する光ディスクの信号評価装置。
【請求項6】
光ディスクに記録された複数種類のパルス幅をもつ一連のパルスからなる信号のうちで、評価対象となるパルス幅の再生信号を評価する光ディスクの信号評価方法において、
光ピックアップを用いて、光ディスクにレーザ光を照射して光ディスクからの反射光に基づいて光ディスクに記録された信号を表す電気信号を生成する電気信号生成ステップと、
前記生成された電気信号に含まれる複数種類のパルス幅の一連のパルス信号のうちで、前記評価対象となるパルス幅の複数のパルス信号を抽出して記憶手段に記憶する評価対象信号抽出ステップと、
前記評価対象信号抽出ステップにて抽出して記憶された複数のパルス信号を評価する評価ステップとを含むことを特徴とする光ディスクの信号評価方法。
【請求項7】
請求項6に記載した光ディスクの信号評価方法において、
前記評価対象信号抽出ステップは、
前記電気信号生成ステップにて生成された電気信号に含まれる各パルス幅に基づいて、前記評価対象となるパルス幅のパルス信号を特定して、同評価対象となるパルス幅のパルス信号を特定する特定信号を出力する評価対象パルス特定ステップと、
A/D変換器を用いて、前記電気信号生成ステップにて生成された電気信号を所定のサンプリングレートでサンプリングしてディジタル信号にA/D変換するA/D変換ステップと、
前記評価対象パルス特定ステップにて出力された特定信号を用いて、前記A/D変換ステップにてA/D変換されて前記評価対象となるパルス幅に対応した複数のディジタル信号からなる複数組の評価用ディジタルデータを前記記憶手段に記憶する評価用ディジタルデータ記憶ステップを含み、
前記評価ステップは、前記評価用ディジタルデータ記憶ステップにて前記記憶手段に記憶されている複数組の評価用ディジタルデータを用いて、前記評価対象となるパルス幅の再生信号を評価する光ディスクの信号評価方法。
【請求項8】
請求項7に記載の光ディスクの信号評価方法において、
前記評価対象パルス特定ステップは、
前記電気信号生成ステップにて生成された電気信号を2値化することによりパルス列信号に変換する2値化変換ステップを含み、
前記2値化変換ステップにて変換されたパルス列信号に含まれる各パルスの幅を測定することにより前記評価対象となるパルス幅のパルス信号を特定して、同評価対象となるパルス幅のパルス信号を特定する特定信号を出力する光ディスクの信号評価方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の光ディスクの信号評価方法において、
前記評価対象となるパルス幅は複数あり、
前記評価対象パルス特定ステップは、複数種類の評価対象となるパルス幅のパルス信号をそれぞれ特定して複数種類の特定信号を出力し、
前記評価用ディジタルデータ記憶ステップは、前記複数種類の特定信号に応答して、前記複数種類の評価対象となるパルス幅ごとに前記複数組の評価用ディジタルデータをそれぞれ記憶し、かつ
前記評価ステップは、前記複数種類の評価対象となるパルス幅ごとに前記複数組の評価用ディジタルデータをそれぞれ評価する光ディスクの信号評価方法。
【請求項10】
請求項6ないし請求項9のうちのいずれか1つに記載の光ディスクの信号評価方法において、
前記評価ステップは、前記電気信号生成ステップにて生成された電気信号のボトム値、ピーク値、およびボトム値とピーク値との差のうちの少なくとも一つを評価要素として、前記評価用ディジタルデータを評価する光ディスクの信号評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−12137(P2007−12137A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−190133(P2005−190133)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000112004)パルステック工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】