説明

光ディスクの記録品質評価方法及び光ディスクストレージ装置

【課題】光ディスクに記録したデータの品質の経時劣化を短時間で推定するとともに、記録済みデータの保存可能な期間を予測すること。
【解決手段】光ディスク101のデータ領域200にユーザデータUを記録する際に、テスト領域210に信号レベルが基準値よりも小さい成分を含むテスト信号Tを記録しておく。所定の時間経過した時点で、テスト領域のテスト信号Tを再生し、その評価結果からユーザデータUの品質劣化を推定する。または、データ領域に200にユーザデータUを記録または再生する毎に、テスト領域210にテスト信号Tを繰り返して記録または再生する。所定のタイミングで、テスト領域のテスト信号Tを再生し、その評価結果からユーザデータUの品質劣化を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクの記録品質評価方法及び光ディスクストレージ装置に係り、特に光ディスクに記録済のデータの品質劣化を短時間で評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクにデータを記録して長期間保存する場合、記録したデータの品質が経時劣化していないかを評価する必要がある。もし、品質の劣化が確認された場合には、別の光ディスクへデータを書き換えるなどの作業が必要になる。品質評価は、光ディスク上の記録されたデータを再生チェックすることで劣化の程度を判定することができる。その場合、記録時に行われるベリファイ処理のように、記録したデータの全てについてチェックすると時間がかかりすぎ非効率であり、短時間に評価する方法が求められる。
【0003】
ベリファイ処理の時間を短縮するために、次の方法が提案されている。特許文献1には、予め設定した間隔でベリファイ処理を行うこと、またベリファイの結果に応じてベリファイ処理を行う間隔を変更することが記載されている。特許文献2には、ベリファイを行う記録層を選択し、選択された記録層のうちで最外周に位置するアドレスを基準としてベリファイを行う範囲を特定することが記載されている。特許文献3には、光ディスクから読み出した情報から作成日が最も古い情報を検索し、その情報を元の記録セクターにて記録再生することでディスクの品質状態を判定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−185477号公報
【特許文献2】特開2009−181621号公報
【特許文献3】特開2000−163881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ディスクに記録したデータを長期間保存する場合、その時点での経時劣化を短時間で評価し、ディスク内の最大劣化量を推定する必要がある。そして、最大劣化量が許容値を超えた場合、他の光ディスクへの書き換えなどの対策を行う必要がある。
【0006】
特許文献1の方法は、ディスク内の領域を間引いて品質を評価するものであり、評価した領域が最大劣化量を示すとは限らない。特許文献2の方法は、一般に欠陥が生じやすいディスク外周付近を選択して評価するものであるが、これ以外の領域で劣化の大きい箇所があった場合にはそれを見逃してしまう。特許文献3の方法は、作成日が古い情報ほど劣化が大きくなるとの前提に立つものであるが、作成日が最も古い情報を検索するために手間がかかること、また情報の作成日がディスク内で同一の場合には適用できないことになる。
【0007】
いずれの方法においても、評価するデータは光ディスクに保存してあとで利用するデータであるから、仮に劣化が認められたとしても、劣化の程度が大きければ元のデータを復元することができなくなる恐れがある。データの復元を可能にするには、記録済みデータの保存可能期間を予測し、劣化量が小さい段階でデータの書き換えなどの対策を行うことが望ましい。
【0008】
本発明の目的は、光ディスクに記録したデータの品質の経時劣化を短時間で推定するとともに、記録済みデータの保存可能な期間を予測することのできる光ディスクの記録品質評価方法及び光ディスクストレージ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、光ディスクに記録したデータの品質劣化を評価する記録品質評価方法であって、光ディスクのデータ領域にユーザデータを記録する際に、該光ディスクのテスト領域に信号レベルが基準値よりも小さい成分を含むテスト信号を記録しておき、所定の時間経過した時点で、上記テスト領域に記録されている上記テスト信号を再生し、該テスト信号の品質の評価結果から上記ユーザデータの品質劣化を推定するものである。
【0010】
また本発明の記録品質評価方法は、光ディスクのデータ領域にユーザデータを記録または再生する毎に、該光ディスクのテスト領域にテスト信号を繰り返して記録または再生し、所定のタイミングで、上記テスト領域に記録されている上記テスト信号を再生し、該テスト信号の品質の評価結果から上記ユーザデータの品質劣化を推定するものである。
【0011】
ここに前記テスト信号は、信号のビット長または記録パワーを変えて段階的に信号レベルを変化させたものであり、該テスト信号の品質劣化がその信号レベルに応じて加速されることに基づいて、前記ユーザデータの品質劣化を推定するようにした。
【0012】
本発明は、光ディスクにデータを記録するとともに記録済みのデータの品質劣化を評価する光ディスクストレージ装置であって、上記光ディスクにデータを記録および再生する記録再生部と、再生したデータの品質を評価する品質評価部とを備え、上記記録再生部は、上記光ディスクにユーザデータを記録する際に、該光ディスクのテスト領域に信号レベルが基準値よりも小さい成分を含むテスト信号を記録し、上記記録再生部は、所定の時間経過した時点で、上記テスト領域に記録されている上記テスト信号を再生し、上記品質評価部は、再生したテスト信号の品質の評価結果から上記ユーザデータの品質劣化を推定する構成とする。
【0013】
また本発明の光ディスクストレージ装置は、上記記録再生部は、上記光ディスクにユーザデータを記録または再生する毎に、該光ディスクのテスト領域にテスト信号を繰り返して記録または再生し、上記記録再生部は、所定のタイミングで、上記テスト領域に記録されている上記テスト信号を再生し、上記品質評価部は、再生したテスト信号の品質の評価結果から上記ユーザデータの品質劣化を推定する構成とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光ディスクに記録したデータの品質の経時劣化を短時間で推定するとともに、記録済みデータの保存可能な期間を予測することができるので、光ディスクに記録されたデータを安定に保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による光ディスクの記録品質評価方法の第1の実施例(実施例1)を説明する図である。
【図2A】図1の記録品質評価方法で用いるテスト信号の例を示す図である。
【図2B】テスト信号による劣化の加速係数を模式的に説明する図である。
【図3】本発明による光ディスクストレージ装置の第1の実施例(実施例1)を示す構成図である。
【図4】本発明による光ディスクの記録品質評価方法の第2の実施例(実施例2)を説明する図である。
【図5】図4の記録品質評価方法の変形例を説明する図である。
【図6】本発明による光ディスクストレージ装置の第2の実施例(実施例2)を示す構成図である。
【図7】図4の記録品質評価方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。実施例1は、光ディスクへデータを記録した後、そのまま長期間保存する場合に好適な方法である。実施例2は、光ディスクへデータを記録した後、データの記録(オーバーライト)または再生が頻繁に行われる場合に好適な方法である。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明による光ディスクの記録品質評価方法の第1の実施例を説明する図である。図1には、本実施例で用いる光ディスク101の記録領域を模式的に示しているが、ユーザデータを記録するデータ領域200と、記録品質評価のために用いる特定の領域(以下、テスト領域210と呼ぶ)とを有する。テスト領域210には、例えばデータ領域200の内周側と外周側に配置される試し書き領域を利用することができる。従来のデータ記録動作ではデータ領域200にユーザデータUを記録するのみであったが、本実施例の記録品質評価方法では、ユーザデータUを記録する際にテスト領域210に信号レベルの低い成分を含むテスト信号Tを記録する。テスト信号Tは、後述するように信号レベルを段階的に変化させたものである。信号レベルの低い成分は経時劣化により再生エラーが発生しやすいので、低レベルの信号を含めることで、品質の劣化を早期に予測することができる。このようにして、光ディスク101には、ユーザデータUとともにテスト信号Tを記録して保存する。
【0018】
データが記録されている光ディスク101は、所定の時間間隔で再生し保存されているデータの品質を評価する。その評価タイミングは、ユーザが適宜実行しても良いが、装置により自動的に実行することもできる。
【0019】
評価工程では、テスト領域210に記録しているテスト信号Tを再生して、エラー発生の有無を確認する。エラーが発生していれば、どの段階の信号レベルで発生したかを調べ、ユーザデータUの現在の劣化の程度を推定する。言い換えれば、ユーザデータUの劣化が小さい段階で、その保存可能な期間を予測することができる。推定した劣化量が許容値を超えていれば、その旨警告を発するようにする。この評価方法では、テスト領域210のテスト信号Tを再生評価するだけなので、データ領域200のユーザデータUを再生評価する方法と比較し、極めて短時間に効率良く実行することができる。
【0020】
図2Aは、図1の記録品質評価方法で用いるテスト信号Tの例を示す図である。テスト信号Tは、信号レベルをA,B,・・・Eと段階的に変化させたもので、テスト領域210内に区分して記録し、それぞれのレベルを再生評価する。なお、各信号レベルA,B,・・・Eを識別するために、それらの符号コードは異なるものを使用する。
【0021】
テスト信号T1は、最短ビット長(記録密度)を変えた例である。ビット長が小さくなるほど再生信号レベルが小さくなり、経時劣化の影響を受けやすくなる。すなわち、ビット長が小さいほど、劣化の進行が加速される。
【0022】
またテスト信号T2は、記録パワーを変えた例である。パワーが小さいとマーク長が小さくなり、再生信号レベルが小さくなることから、経時劣化の影響を受けやすくなる。この場合も、パワーが小さいほど、劣化の進行が加速される。
【0023】
本実施例では、テスト信号による劣化の加速現象を加速係数Kを用いて表現している。
図2Bは、テスト信号による劣化の加速係数Kを模式的に説明する図である。図では、テスト信号Tと基準信号の信号品質が経時期間(あるいは繰り返し記録/再生回数)とともにどのように劣化するかを示す。そして、テスト信号Tの品質が許容下限値に達する期間(Pt)と、基準信号の品質が許容下限値に達する期間(Po)とを求める。テスト信号Tでは許容下限値に達する期間が短縮され、基準信号の期間との比Po/Ptから加速係数Kを算出する。このようにして、テスト信号の各成分についての加速係数を実験的に算出しておく。例えば、テスト信号T1におけるビット長が0.7である成分Eの加速係数Kは4.5/1.5=3であり、基準信号である成分Bよりも劣化が3倍加速されることを意味する。
【0024】
このように、テスト信号Tには信号レベルの低い部分を含んでいるので、ユーザデータUよりも経時劣化が加速され、早い段階でエラーが発生する。そして、テスト信号Tのどの信号レベルA,B,・・・Eで再生エラーが生じたかを調べ、その信号の加速係数Kを参照することで、その時点でユーザデータUが受けている劣化の程度を推定することができる。これより、ユーザデータUの劣化が小さい段階で、その保存可能な期間を予測することができる。
【0025】
図3は、本発明による光ディスクストレージ装置の第1の実施例を示す構成図である。
本実施例の光ディスクストレージ装置は、記録媒体として、パッケージ内に複数枚の光ディスクを積層して収納したマガジン構造の光ディスク媒体100を用いる。光ディスクには、例えば大容量記録が可能なBlu−rayディスク(BD)が適する。もちろん、他の種類のディスク(DVDなど)でもよく、また、ディスクを1枚ごとに単品で扱うこともできる。装置の構成は、ディスクチェンジャー部10、ディスクドライブ部20、パーソナルコンピュータ(PC)部30を備える。
【0026】
ディスクチェンジャー部10には、マガジン構造の光ディスク媒体100が装填される。ディスクローディング部11は光ディスク媒体100から、指示された光ディスク101をローディングする。ディスクが両面記録の場合には、ディスク反転の操作も行う。チェンジャー制御部12はディスクローディング部11を制御し、ローディングするディスクを選択する。
【0027】
ディスクドライブ部20は、ローディングされた光ディスク101に対してデータの記録・再生を行う。また、ディスク101から記録済みのデータを再生し、その品質を評価する。レーザ駆動部22は光ピックアップ(PU)21を駆動し、ディスク記録面に記録用または再生用のレーザ光を照射する。記録信号処理部23は、ディスクに記録する信号を生成し、再生信号処理部24はディスクからの再生信号を処理して、データを取得する。ここに記録信号処理部23は、ディスクに保存するユーザデータUの信号だけでなく、記録品質評価のためのテスト信号Tを生成する。また再生信号処理部24は、ユーザデータUだけでなく、テスト信号Tからテストデータを取得する。ドライブコントローラ25は、ディスクドライブ部20内の各部の動作を制御し、記録動作と再生動作の切り替えやユーザデータUとテスト信号Tの切り替えを行う。
【0028】
PC部30は、ディスクチェンジャー部10とディスクドライブ部20に接続し、これらを制御する。ホストコンピュータ31はディスクドライブ部20との間で、光ディスク101に記録・再生するユーザデータの受け渡しを行う。また、ディスクドライブ部20から送られたテスト信号T(テストデータ)について品質を評価(エラーチェック)する。そして、評価結果からユーザデータUの劣化量を推定して、劣化量が許容範囲かどうかを判定する。許容値を超えている場合は、表示部32にて、保存データが劣化している旨を示す警告を発する。評価タイミング制御部33は、品質評価する光ディスクを選択しまたそのタイミングを決定して、ディスクチェンジャー部10に対して指示する。
【0029】
以上のように本実施例によれば、データ領域にユーザデータを記録する際に、テスト領域に信号レベルの低い成分を含むテスト信号を記録しておくことで、ユーザデータの品質の経時劣化を短時間で推定するとともに、ユーザデータの保存可能な期間を予測することができる。本実施例の方法は、光ディスクへデータを記録した後、そのまま長期間保存する場合に好適である。
【実施例2】
【0030】
本実施例は、繰り返し記録や繰り返し再生など特定の動作による劣化が予想される場合に、特定の領域に、その光ディスクの最悪条件(最大書き換え回数、最大読み出し回数)に相当する領域を擬似的に作り出し、その部分の品質を評価することにより、記録済みのデータの品質を推定するものである。
【0031】
図4は、本発明による光ディスクの記録品質評価方法の第2の実施例を説明する図である。図4には、本実施例で用いる光ディスク101の記録領域を模式的に示しているが、前記実施例1と同様の構成であって、ユーザデータを記録するデータ領域200と、記録品質評価のために用いる特定の領域(テスト領域210)とを有する。従来のデータ記録/再生動作ではデータ領域200にユーザデータUを記録または再生するのみであったが、本実施例の記録品質評価方法では、データ領域200のいずれかの位置でユーザデータUが記録または再生される毎に、テスト領域210の同じ位置にテスト信号Tを繰り返して記録または再生する。具体的には、例えばユーザデータに対して1回の記録または再生コマンドを受ける毎に、テスト信号Tを1回だけ記録または再生する。あるいは、記録または再生コマンドの回数をカウントし、その回数だけテスト信号Tを繰り返し記録または再生する。テスト信号Tの繰り返し記録または再生の動作は、ユーザデータUを記録する場合とユーザデータUを再生する場合の両方に対して行うものとするが、光ディスクの使用環境に応じて記録の場合または再生の場合の一方のみとしても良い。
【0032】
テスト領域210では、テスト信号Tが記録または再生コマンド回数だけ繰り返し記録(オーバーライト)または繰り返し再生される結果、データ領域200に記録したユーザデータUよりも信号品質の経時劣化が加速される。これは、前記図2Bの劣化曲線で模式的に示される。すなわちテスト領域210は、その光ディスクの最悪条件(最大記録回数または最大再生回数)が擬似的に作り出された領域である。繰り返し記録するテスト信号Tのパターンは任意であるが、ユーザデータUをそのまま用いても良い。あるいは、実施例1の図2Aに示したように信号レベルをA,B,・・・Eと段階的に変化させたものを用いても良く、その場合には品質劣化についてより定量的な評価が可能になる。ただし、記録/再生パワーを変える場合は、パワーが大きいほど劣化速度は速くなる。
【0033】
このようにしてユーザデータUとともにテスト信号Tの記録されている光ディスク101は、所定のタイミングで再生し、保存されているデータの品質を評価する。その評価タイミングは、テスト信号Tを繰り返し記録/再生を行った時点で行うのが効率的であるが、所定の繰り返し回数に到達した時点で行っても良く、また所定の経過時間と組合わせて実行しても良い。
【0034】
評価工程では、テスト領域210に記録しているテスト信号Tを再生して、エラー発生の有無を確認する。エラーが発生していれば、その時点での累積繰り返し記録/再生回数を考慮して、ユーザデータUの現在の劣化の程度を推定する。そのため、前記図2Bでの説明と同様に、繰り返し記録回数および繰り返し再生回数に対する劣化速度(加速係数)を予め実験的に求めておき、加速係数を用いてユーザデータUの劣化を推定する。また、現在の経過時間から、ユーザデータUの保存可能な期間を予測する。推定した劣化量が許容値を超えていれば、その旨警告を発するようにする。
【0035】
この評価方法では、テスト領域210のテスト信号Tを再生評価するだけなので、データ領域200のユーザデータUを再生評価する方法と比較し、極めて短時間に効率良く実行することができる。
【0036】
図5は、図4の記録品質評価方法の変形例を説明する図である。光ディスク101のデータ領域200は、ユーザデータUを格納するデータ部201と、ユーザデータUを管理するデータ管理部202を有している。そして、ユーザデータに対する記録/再生コマンドを受けたとき、データ部201にユーザデータを記録または再生するだけでなく、それを管理するデータ管理部202に管理情報の記録または再生を行う。ただし、1回の記録/再生コマンドを受けたとしても、データ部201へのアクセスとデータ管理部202へのアクセスがそれぞれ1回で完了するとは限らず、またいずれのアクセス回数が多くなるかはそのときの状況で異なる。
【0037】
そこで本例では、データ部201へのアクセス回数とデータ管理部202へのアクセス回数をそれぞれ区別してカウントし、それらの合計回数だけテスト信号Tをテスト領域210に繰り返し記録/再生するようにした。テスト信号Tの品質評価法は図4と同様である。この方法によれば、データ領域200におけるアクセス回数をカウントすることで、実際に行われた記録/再生の回数(すなわち物理的な記録/再生回数)を反映した評価結果が得られるので、評価精度がより向上する。
【0038】
図6は、本発明による光ディスクストレージ装置の第2の実施例を示す構成図であり、前記図4の記録品質評価方法に対応する構成を示す。前記実施例1の図3に示した光ディスクストレージ装置を基本構成としており、同一の部分には同じ符号を付しその説明は省略する。
【0039】
本実施例では、ディスクドライブ部20に、外部コマンドカウンタ26と内部カウンタ27とカウンタメモリ28を追加した構成としている。なお、本実施例では前記図3におけるディスクチェンジャー部10を省略しているが、もちろんこれを備えることでマガジン構造の光ディスク媒体100に対応することも可能である。
【0040】
ディスクドライブ部20のドライブコントローラ25は、ディスク101へのデータの記録および再生を制御するが、そのとき外部コマンドカウンタ26は、ホストコンピュータ31から送られる記録または再生のコマンド(外部コマンド)の回数をカウントする。また内部カウンタ27は、ドライブコントローラ25が独自で発する記録または再生の指示(内部コマンド)の回数をカウントする。内部コマンドは、例えばデータの記録再生が失敗したときに行う再記録、再読み出しなどの指示である。いずれのコマンドにおいても、ディスクのデータ領域200にはそれぞれユーザデータUの記録/再生が行われる。カウンタメモリ28は、外部コマンドカウンタ26の記録/再生カウンタ値Xと内部カウンタ27の記録/再生カウンタ値Y、またその合計値(X+Y)を記憶する。さらにカウンタメモリ28は、光ディスク101ごとにテスト信号Tの繰り返し記録/再生の累積回数Zを記憶する。
【0041】
ドライブコントローラ25は、例えば、処理すべき一連のデータの記録/再生動作が終了した時点で、カウンタメモリ28の記憶している記録/再生カウンタ値X,Yを読み出す。そして、ディスクのテスト領域210において、カウンタ値の合計回数(X+Y)だけテスト信号Tを繰り返して記録または再生する。記録信号処理部23はテスト信号Tを生成するが、ユーザデータUをそのまま用いても良いし、前記図2Aに示したような信号レベルを段階的に変化させたものを作成しても良い。
【0042】
またドライブコントローラ25は、所定のタイミングで光ディスクのテスト領域210に記録されているテスト信号Tを再生する。ホストコンピュータ31は、取得したテストデータについて品質を評価(エラーチェック)し、ユーザデータUの劣化量を推定する。劣化量が許容値を超えている場合は、表示部32にて、保存データが劣化している旨を示す警告を発する。
【0043】
図6の光ディスクストレージ装置は、図4の方法(コマンド回数だけ繰り返し記録/再生)に対応する場合を説明したが、図5の方法(データ部201とデータ管理部202へのアクセス回数)に対応する場合についても、カウンタ26,27をデータ部201とデータ管理部202へのアクセスカウンタに変更することで同様に実行できる。
【0044】
図7は、本実施例の記録品質評価方法の手順を示すフローチャートであり、図4で述べたようにコマンド回数だけテスト信号を繰り返し記録/再生する場合を示す。
【0045】
S300では、外部コマンドカウンタ26のカウンタ値Xと内部カウンタ27のカウンタ値Yを0にリセットする。
S301では、ディスク101のデータ領域200にユーザデータUを記録または再生する。
【0046】
S302では、S301における記録/再生動作が外部コマンドによる記録/再生であるかどうかを判定する。YesであればS303に進み、そのコマンド回数aを外部コマンドカウンタ26のカウンタ値Xに加算する。
【0047】
S304では、S301における記録/再生動作がドライブコントローラ25の内部動作による記録/再生であるかどうかを判定する。YesであればS305に進み、そのコマンド回数bを内部カウンタ27のカウンタ値Yに加算する。
【0048】
S306では、外部コマンドカウンタ26のカウンタ値Xと内部カウンタ27のカウンタ値Yを加算し、合計値(X+Y)をカウンタメモリ28に記憶する。S307では、記録または再生するユーザデータは全て終了したかどうか判定する。終了していればS308に進み、終了していなければS301に戻り、残りのデータを記録/再生する。
【0049】
S308では、カウンタメモリ28からコマンド回数の合計値(X+Y)を読み出し、ディスクのテスト領域210にテスト信号Tを(X+Y)回だけ繰り返し記録/再生する。また、カウンタメモリ28に、テスト信号Tの繰り返し記録/再生の累積回数Zを記録する。
【0050】
S309では、テスト領域210からテスト信号Tを再生し、エラー発生を確認することでユーザデータUの劣化を推定する。劣化の推定では、当該ディスク101に対する繰り返し記録/再生の累積回数Zを参照する。
【0051】
S310では、ユーザデータUの品質が許容範囲かどうか判定する。劣化量が許容値を超えていれば、S311に進み、表示部32に「保存データが劣化しています。他のディスクに書き換えて下さい」などの警告メッセージを表示する。以上で一連の記録/再生動作を終了し、次の指示を待つ。
【0052】
図7のフローチャートは、図4の方法(コマンド回数だけ繰り返し記録/再生)に対応する場合を説明したが、図5の方法(データ部201とデータ管理部202へのアクセス回数)に対応する場合についても、コマンド回数をアクセス回数に変更することで同様に実行できる。
【0053】
以上のように本実施例によれば、データ領域にユーザデータを記録するとともに、テスト領域に記録品質評価用のテスト信号を繰り返し記録または再生しておくことで、ユーザデータの品質の経時劣化を短時間で推定するとともに、ユーザデータの保存可能な期間を予測することができる。本実施例の方法は、光ディスクへデータを記録した後、データの繰り返し記録(オーバーライト)または繰り返し再生が頻繁に行われる場合に好適である。
【符号の説明】
【0054】
10…ディスクチェンジャー部、
11…ディスクローディング部、
12…チェンジャー制御部、
20…ディスクドライブ部、
21…光ピックアップ、
22…レーザ駆動部、
23…記録信号処理部、
24…再生信号処理部、
25…ドライブコントローラ、
26…外部コマンドカウンタ、
27…内部カウンタ、
28…カウンタメモリ、
30…パーソナルコンピュータ(PC)部、
31…ホストコンピュータ、
32…表示部、
33…評価タイミング制御部、
100…光ディスク媒体、
101…光ディスク、
200…データ領域、
201…データ部、
202…データ管理部、
210…テスト領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに記録したデータの品質劣化を評価する記録品質評価方法において、
光ディスクのデータ領域にユーザデータを記録する際に、該光ディスクのテスト領域に信号レベルが基準値よりも小さい成分を含むテスト信号を記録しておき、
所定の時間経過した時点で、上記テスト領域に記録されている上記テスト信号を再生し、該テスト信号の品質の評価結果から上記ユーザデータの品質劣化を推定することを特徴とする光ディスクの記録品質評価方法。
【請求項2】
光ディスクに記録したデータの品質劣化を評価する記録品質評価方法において、
光ディスクのデータ領域にユーザデータを記録または再生する毎に、該光ディスクのテスト領域にテスト信号を繰り返して記録または再生し、
所定のタイミングで、上記テスト領域に記録されている上記テスト信号を再生し、該テスト信号の品質の評価結果から上記ユーザデータの品質劣化を推定することを特徴とする光ディスクの記録品質評価方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ディスクの記録品質評価方法において、
前記テスト信号は、信号のビット長または記録パワーを変えて段階的に信号レベルを変化させたものであり、
該テスト信号の品質劣化がその信号レベルに応じて加速されることに基づいて、前記ユーザデータの品質劣化を推定することを特徴とする光ディスクの記録品質評価方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の光ディスクの記録品質評価方法において、
前記ユーザデータについて推定した劣化量が許容値を超えた場合、その旨の警告を発することを特徴とする光ディスクの記録品質評価方法。
【請求項5】
光ディスクにデータを記録するとともに記録済みのデータの品質劣化を評価する光ディスクストレージ装置において、
上記光ディスクにデータを記録および再生する記録再生部と、
再生したデータの品質を評価する品質評価部とを備え、
上記記録再生部は、上記光ディスクにユーザデータを記録する際に、該光ディスクのテスト領域に信号レベルが基準値よりも小さい成分を含むテスト信号を記録し、
上記記録再生部は、所定の時間経過した時点で、上記テスト領域に記録されている上記テスト信号を再生し、
上記品質評価部は、再生したテスト信号の品質の評価結果から上記ユーザデータの品質劣化を推定することを特徴とする光ディスクストレージ装置。
【請求項6】
光ディスクにデータを記録するとともに記録済みのデータの品質劣化を評価する光ディスクストレージ装置において、
上記光ディスクにデータを記録および再生する記録再生部と、
再生したデータの品質を評価する品質評価部とを備え、
上記記録再生部は、上記光ディスクにユーザデータを記録または再生する毎に、該光ディスクのテスト領域にテスト信号を繰り返して記録または再生し、
上記記録再生部は、所定のタイミングで、上記テスト領域に記録されている上記テスト信号を再生し、
上記品質評価部は、再生したテスト信号の品質の評価結果から上記ユーザデータの品質劣化を推定することを特徴とする光ディスクストレージ装置。
【請求項7】
請求項6に記載の光ディスクストレージ装置において、
前記光ディスクにユーザデータを記録または再生する記録または再生コマンドの回数をカウントするカウンタを備え、
前記記録再生部は、該カウンタの回数だけ前記テスト信号を繰り返し記録または再生することを特徴とする光ディスクストレージ装置。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−204330(P2011−204330A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72674(P2010−72674)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】