説明

光ディスクカートリッジ

【課題】使用者がベアディスクをケースに入れて光ディスクカートリッジとするときに、ケースの上下面が確実に区別できる光ディスクカートリッジを提供する。
【解決手段】記録再生装置のトレイに表面側を上にして載せて用いる光ディスクカートリッジ1において、光ディスクを収納するためのケース本体4と、ケース本体に設けられた光ディスクを出し入れするための格納口5と、格納口を形成するケースの裏面側に設けられた貫通孔12と、貫通孔に摺動可能に挿入されたピン状部材11とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクを出し入れ可能にした光ディスクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
CD、DVD、Blu−Rayなどの光ディスクは、民生機器ではベアディスクのままで取り扱われるが、医療分野や金融分野などの高い信頼性と耐久性が求められるデータストレージ用途ではベアディスクをケースに格納した光ディスクカートリッジが用いられる。民生機器用途のように、光ディスクカートリッジを用いない場合、使用者が直接ベアディスクを取り扱うことで指紋や脂などの汚れがディスクの記録面へ付着したり、スクラッチ等の傷の発生が生じやすく、ディスクの記録再生品質が損なわれることになる。また、このようなディスクの品質劣化は、使用回数に比例して大きくなる。そのため、高い信頼性と耐久性を確保しなければならない用途では、ベアディスクをケースに格納した光ディスクカートリッジが用いられている。このような光ディスクカートリッジとしては、例えば、DVD−RAMカートリッジが良く知られている。
【0003】
また、ベアディスクへのデータ記録は、使用用途によって、片面または両面に記録される。多くの場合は、片面のみにデータを記録する仕様となっており、データ記録面とその反対のレーベル面(どのようなデータが保存されているのかを表示している部分)とは、容易に識別が出来るので、ベアディスクではその表裏を取り違えることはない。
【0004】
ところが、DVD−RAMカートリッジのような光ディスクカートリッジは、ベアディスクが格納されているケースの上下面に顕著な特徴がないために、容易に上下面の識別が出来ない。そのため、ともすれば使用者が勘違いを起こし、光ディスクカートリッジの上下面を逆にしたまま光ディスクを装填することがあった。
【0005】
そこで、光ディスクカートリッジの上下面を区別してベアディスクを装填するため、光ディスクカートリッジの蓋を兼ねるホルダーに、上面および下面区別用の判別マークを設けた技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この判別マークは楕円状の凹部に突起部を設けたもので、光ディスクカートリッジの蓋となるホルダーに形成されており、突起部の数で上下面の区別を行う。ベアディスクはホルダーに挟持された状態でディスクカートリッジに装填され、前記突起部とディスクカートリッジの勘合により、ディスクカートリッジへのホルダーの逆挿入を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−260149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、判別マークがホルダーの上下面に設けられているので、使用者が判別マークを誤読してホルダーの上下を誤りやすい。また、ベアディスクは、ホルダーに収納されている構造となっているもの、ホルダーの上下とベアディスクの上下面が同一か否かを判別する構成とはなっていない。更には、ベアディスクが収納されたホルダーが挿入されるケースには顕著な特徴が無いので、ケースの上下の判別は難しい。そのため、使用者がホルダーの上下を間違えた状態でベアディスクを挿入した後、ベアディスクが収納されたホルダーをケースに挿入してしまい、上下が逆の光ディスクカートリッジになるという課題を有していた。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、使用者がベアディスクをケースに入れて光ディスクカートリッジとするときに、ベアディスクの上下面とケースの上下面が同一面となるように、ケースの上下面が確実に区別できる光ディスクカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の光ディスクカートリッジは、データ記録面とレーベル面を有する光ディスクと、光ディスクを収納するための開口部を有するケースと、開口部を形成するケースに設けられた貫通孔と、貫通孔に摺動可能に挿入されたピン状部材とを有することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光ディスクカートリッジによれば、使用者がベアディスクをケースに入れて光ディスクカートリッジを作る際に、ケースにおけるベアディスクのデータ記録面とレーベル面が確実に区別でき、使用者が誤ってベアディスクのデータ記録面とレーベル面を逆にした状態でケースにベアディスクを装填した光ディスクカートリッジとなることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における光ディスクカートリッジ1をベアディスク16のレーベル面側から見た斜視図
【図2】本発明の実施の形態2における光ディスクカートリッジ1をベアディスク16のデータ記録面側から見た斜視図
【図3】(a)ベアディスク16のレーベル面側から見たピン状部材11が形成されている格納口5の略断面図、(b)ベアディスク16のデータ記録面側から見たピン状部材11が形成されている格納口5の略断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の光ディスクカートリッジの実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態1における光ディスクカートリッジ1をベアディスク16のレーベル面側から見た斜視図であり、図2はベアディスク16のデータ記録面側から見た斜視図である。
【0014】
光ディスクカートリッジ1は、第一のケース2と第二のケース3によりベアディスク16を格納する空間を形成しているケース本体4と、ケース本体2からベアディスク3を出し入れする格納口5と、格納口5を開閉自在になるような部材である開閉蓋部6とにより構成されている。
【0015】
また、光ディスクカートリッジ1は、第一のケース2と第二のケース3とが接着剤などにて合わさっており、両ケースが合わさっている面7を中心に上下対称の構造となっている。
【0016】
図1および図2に図示しているケース本体4には、光ディスクカートリッジ1が、光ディスク装置(図示しない)に収納された際に、光ディスク装置の光ピックアップにてベアディスク16上のデータを読み取るために、ケース本体4に開口部8を形成するために、シャッタ9を有している。
【0017】
シャッタ9は、ケース本体4に収納されているベアディスク16のデータ記録面および、レーベル面と平行にスライドする構造となっており、シャッタ9がスライドすることで、シャッタ9の面積分の開口部8が、ケース本体4に形成される構造となっている。図1ではシャッタ9がスライドした状態(開口部8が形成されている状態)を図示しており、図2ではスライドしていない状態(開口部8が形成されていない状態)を図示している。
【0018】
また、光ディスク装置に光ディスクカートリッジ1が収納されると、図1に図示しているように自動的にシャッタ9がスライドし、開口部8が形成されることによりベアディスク16上のデータにアクセス可能な状態となる。
以上のように、光ディスクカートリッジ1は、使用者が収納されているベアディスク16を直接、触ることができない構造となっている。
【0019】
次に、光ディスクカートリッジ1へ、ベアディスク16を出し入れする部分である格納口5と、格納口5を開閉自在とする開閉蓋部6について説明する。
ベアディスク16は、格納口5から、ケース本体4に収納される。そして、一端部にヒンジ部10を有する開閉蓋部6を閉じることで、ベアディスク16を使用者が触ることができない状態とする。
【0020】
したがって、第一のケース2と第二のケース3とが面7を中心に上下対称の構造となっているケース本体4にベアディスク3を収納した後、使用者は、ベアディスク16のデータ記録面とレーベル面を認識することが困難である。
しかしながら、本発明における光ディスクカートリッジ1は、ピン状部材11を構成しているために、ベアディスク16のデータ記録面とレーベル面を認識することが可能となっている。以下、図2および、図3を用いて、詳細を説明する。
【0021】
図2および、図3に図示しているように、格納口5を形成している第二のケース3には、貫通孔12が形成されており、貫通孔12にピン状部材11が摺動可能な状態で挿入されている。また、ピン状部材11は、径大部11aa(11ab)と径小部11bにより構成されており、径大部11aa(11ab)は、その直径が、貫通孔12よりも大きく設定されており、径小部11bの直径は、貫通孔12よりも小さく設定されている。
次に、ピン状部材11の動作について図3を用いて説明する。
【0022】
図3(a)は、図1の状態、つまり、ベアディスク16のデータ記録面が図3(a)中の上側に位置している状態におけるピン状部材11が形成されている格納口5の略断面図である。また、図3(b)は、図2の状態、つまり、ベアディスク16のデータ記録面が図3(b)中の下側に位置している状態におけるピン状部材11が形成されている格納口5の略断面図である。
【0023】
図3(a)に図示しているように、第一のケース2が図中の上側に、第二のケース3が図中の下側になる場合、ピン状部材11は、径大部11aaが、第二のケースに形成されている貫通孔12に係合するまで貫通孔12を摺動する。その結果、格納口5には、ピン状部材11が配置された状態となり、使用者が、ベアディスク16をケース本体4に収納させることを妨げる。
【0024】
一方、図3(b)に図示しているように、第一のケース2が図中の下側に、第二のケース3が図中の上側に配置される場合、ピン状部材11は、径大部11abが、第二のケースに形成されている貫通孔12に係合するまで貫通孔12を摺動する。その結果、格納口5には、ピン状部材11が配置されていない状態となり、使用者が、ベアディスク16をケース本体4に収納させることが可能となる。つまり、第一のケースと第二のケースの位置を図3(b)の状態にしなければ、ベアディスク16をケース本体4に収納できない構造となっている。
【0025】
また、使用者が、ベアディスク16を取り扱う場合(本実施の形態1においては、ベアディスク3をケース本体4に収納する動作)、ベアディスク16が、一方の面がデータ記録面であり、他方の面がレーベル面の場合、使用者は、データ記録面に傷などが付けないために、レーベル面を使用者の手に対向させるようにベアディスク16の内外周部分を掴む。これは、使用者が、データ記録面がベアディスク16にとって重要な部分であることを認識しているため、上述したようなベアディスク16の取扱い行う。
【0026】
つまり、本発明の光ディスクカートリッジ1において、ピン状部材11が形成されているケース本体4にベアディスク3を収納する際には、第一のケース2とベアディスク16のレーベル面が対向し、第二のケース3とベアディスク16のデータ記録面が対向する配置でベアディスク16をケース本体4に収納することとなり、使用者は、意識ずることなく、ベアディスク16のデータ記録面とレーベル面を認識することが可能となる。
【0027】
また、図3(a)および(b)に図示しているように、第一、第二のケースに第一の凹部13、第二の凹部14を形成することで、ピン状部材11はケース本体4に収納されるようになっており、開閉蓋部6が、格納口5を塞ぐことができるようになっている。
つまり、第一の凹部13の径状は、その直径を径大部11aaよりも大きくし、厚さを径大部11aaと同等以上にしている。その結果、ピン状部材11が摺動した際に、径大部11aaが、第一の凹部13に入りこむようになっており、第一のケース2からピン状部材11が突出しないようになっている。
【0028】
また、第一の凹部13と同様に、第二の凹部14も、径大部11abが形成されており、第一のケース3からピン状部材11が突出しないようになっている。
加えて、図3(b)に図示されている状態においても、開閉蓋部6にて格納口5を塞ぐことができるようにするために、開閉蓋部6には、ピン状部材収納部15が形成されている。したがって、ピン状部材11が、格納口5に位置していない状態だったとしても、ピン状部材11が、開閉蓋部6のピン状部材収納部15に収納される構造のため、開閉蓋部6が、格納口5を塞ぐことができるようになっている。
【0029】
また、片面仕様のディスク用の光ディスクカートリッジは、たとえば勘合穴を表裏で位置を変えるなどの表裏識別機構により、表裏逆には光ディスク装置に装填できないようになっているのが一般的である。この様な場合、片面ディスクを表裏逆装填した光ディスクカートリッジを光ディスク装置に装填すると、光ディスク装置はレーベル面を記録再生しようとする為、エラーとなる。しかし使用者は、光ディスクカートリッジにディスクが入った状態なのでエラーとなっている原因を認識しにくく、原因が容易に分からないといったトラブルとなりやすい。本発明の光ディスクカートリッジはこうした問題を未然に防止することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明にかかる光ディスクカートリッジは、ベアディスクをケースに入れる際に、ケースの上下方向を正しく入れることが出来るので、医療分野や金融分野等の高い信頼性と耐久性が求められるデータストレージ用途における光ディスクカートリッジして有用である。
【符号の説明】
【0031】
1 光ディスクカートリッジ
2 第一のケース
3 第二のケース
4 ケース本体
5 格納口
6 開閉蓋部
7 面
8 開口部
9 シャッタ
10 ヒンジ部
11 ピン状部材
11aa、11ab 径大部
11b 径小部
12 貫通孔
13 第一の凹部
14 第二の凹部
15 ピン状部材収納部
16 ベアディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ記録面とレーベル面を有する光ディスクと、
前記光ディスクを収納するための開口部を有するケースと、
前記開口部を形成する前記ケースに設けられた貫通孔と、
前記貫通孔に摺動可能に挿入されたピン状部材と、
を有する光ディスクカートリッジ。
【請求項2】
前記ケースは、前記データ記録面に対向する面を有する第一のケースと、前記レーベル面に対向する面を有する第二のケースとにより形成されており、前記貫通孔が、前記開口部を形成している前記第二のケースに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光ディスクカートリッジ。
【請求項3】
前記ピン状部材は、径大部と径小部により構成されており、前記径大部が、前記貫通孔の孔径より大きく、前記径小部が、前記貫通孔の孔径より小さくなっていることを特徴とする請求項1または2に記載の光ディスクカートリッジ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−164379(P2012−164379A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22379(P2011−22379)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)