説明

光ディスク再生装置および光ディスク再生方法

【課題】光ディスクに記録されているデータ(コンテンツデータ)を再生するまでの時間を短縮することのできる光ディスク再生方法を提供する。
【解決手段】光ディスクの内周側または外周側に記録されているディスク管理領域のデータを読み出して(S10)、再生パラメータの最適化を行い(S12)、最適化したパラメータを設定して(S13)、光ディスクのデータ領域に記録されているコンテンツデータを再生する(S14)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク再生装置および光ディスク再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクの再生に際しては、ディスク面に光を照射して読み取られる信号が最適な状態となるようにさまざまなパラメータの最適化が行われている。たとえば光ディスクを再生する際にイコライザー特性の最適化を行っている技術がある(特許文献1)。この技術によれば、光ディスクの実データを再生する前に、データ内のECCエラー数に対応してイコライザー特性のうちEQB値とRF振幅の最適化を行っている。
【0003】
ところで、光ディスクにおいては、その記録時にランダムにデータを記録することができるものがある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−109227号公報
【特許文献2】特開2008−112484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ランダム記録された光ディスクは、ランダム記録という特徴のために、一つのディスクであっても記録時の信号強度や記録時の環境がデータごとに異なる場合がある。これは、たとえば、第1のアドレスのセクターに記録されたデータと、第1のアドレスから離れた第2のアドレスのセクターに記録されたデータとで、記録された日時が違うために装置の環境温度が違ったり、装置そのものが違ったりするために起こる。
【0006】
このため、このようなランダム記憶された光ディスクに対して再生特定の最適化を従来技術(特許文献1)のように行おうとすると、実データの再生前に、ランダムに記録された各データのECCブロックをとりあえず再生して、それぞれのランダム記録されたデータごとにイコライザー特性の最適化を行う必要がある。
【0007】
ランダム記録されたデータの位置は、光ディスクの面内において、まさしくランダムに存在する。このため、各データのECCを読み取るとなれば、各データのあるECCブロックまで光ピックアップを移動させなければならなくなり、多くのシーク時間が発生してしまう。このためコンテンツデータの再生までに多くの時間がかかってしまうという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、光ディスクのデータ領域に記録されているデータ(コンテンツデータ)を再生するまでにかかる時間を短縮することのできる光ディスク再生装置および光ディスク再生方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明による光ディスク再生装置は、光ディスクに記録されているデータを読み出す再生手段と、前記再生手段により前記光ディスクの内周側または外周側に記録されているディスク管理領域のデータを読み出して、そのときの読み出しエラーに応じて再生特性を決めるパラメータの最適化を行う最適化手段と、を有して、前記最適化手段によって最適化されたパラメータにより、前記光ディスクのデータ領域に記録されているデータを前記再生手段により再生することを特徴とする。
【0010】
また、上記目的を達成するための本発明による光ディスク再生方法は、光ディスクの内周側または外周側に記録されているディスク管理領域のデータを読み出して、そのときの読み出しエラーに応じて再生パラメータの最適化を行う段階と、前記最適化手段によって最適化されたパラメータにより、前記光ディスクのデータ領域に記録されているデータを再生する段階と、を有することを特徴とする。
【0011】
このように構成された本発明は、データの記録時に同じ条件で記録されている管理情報部分を利用して再生特性の最適化を図る。これにより、たとえばランダム記録のように、データ領域のデータが光ディスク内で離れて記録されていようとも、再生特性を最適化するためにデータ領域内でデータが実際に存在している位置に光ピックアップをシークする必要がなくなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光ディスクのデータ領域に記録されたデータを再生するまでにかかる時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】光ディスク上にランダム記録されたデータ構造を説明するための断面図である。
【図2】本実施形態1における光ディスク再生装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図3】適応型等化器の詳細を示すブロック図である。
【図4】タップ係数制御回路内のタップ初期値制御部の一例示すブロック図である。
【図5】タップ係数初期値の最適化処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】メモリに記憶されるタップ係数初期値を含むパラメータリストの一例を示す図である。
【図7】再生動作全体の手順を示すフローチャートである。
【図8】本実施形態2における光ディスク再生装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図9】拘束長=5、PR(1,2,2,2,1)の場合の等化目標設定を説明するためのグラフである。
【図10】ビタビレベルアダプター内の等化目標レベル制御部を示すブロック図である。
【図11】等化目標レベル初期値の最適化処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】メモリに記憶される等化目標レベル初期値を含むパラメータリストの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を添付した図面を参照して説明する。
【0015】
(実施形態1)
本実施形態1における光ディスク再生装置は、特に、コンテンツデータがランダム記録された光ディスクの再生に好適な装置である。ランダム記録可能な光ディスクとしては、たとえばDVD−RAM、BD−RE、BD−Rなどである。
【0016】
ただし、本実施形態の光ディスク再生装置としては、たとえば、コンパクトディスク(以下CDという。CDにはCD−ROM,CD−R,CD−RWなどが含まれる)、デジタル多目的ディスク(以下DVDという。DVDにはDVD−ROM,DVD−R,DVD+R,DVD−RW,DVD−RAMなどが含まれる)、ブルーレイ(登録商標)ディスク(以下BDという。BDにはBD−RE,BD−Rなどが含まれる)に対する再生装置に適用可能である。
【0017】
ここで、光ディスクにおけるランダム記録のデータ構造について説明する。図1は、光ディスク上にランダム記録されたデータ構造を説明するための断面図である。
【0018】
光ディスク上には、その最内周部分にリードイン領域1、最外周部にリードアウト領域2、そして、これらの間にコンテンツデータが記憶されたデータ領域3がある。なお、このほか欠陥領域を補完するためのスペア領域なども存在するが周知のことであるので図示省略した。
【0019】
ランダム記録されたコンテンツデータは、データ領域3内に、所定の記録大きさを有する誤り訂正符号(ECC:Error Correcting Code)ブロックごとに記録されている。ランダム記録では、たとえば図示するように、第1アドレスのデータ5、第2アドレスのデータ6、第3アドレスのデータ7などとして、データ領域3内の離れた位置に記録されている。
【0020】
そして、ランダム記録されたコンテンツデータの位置(アドレス)は、リードイン領域1(またはリードアウト領域2)に書き込まれている管理情報(DDS(The Disc Definition Structure))のなかに記録されている(なお、管理情報が記録されたリードイン領域1またはリードアウト領域2を管理領域という)。このDDSのデータも、ECCブロック単位で記録されている。管理情報が書き込まれる位置は、記録層が1層の場合は、通常リードイン領域のみに書き込まれる。一方、2層構成または4層構成の場合は、1層目および3層目はリードイン領域1、2層目および4層目はリードアウト領域2に書き込まれている。
【0021】
管理情報もコンテンツデータも、それらのデータが記録される際には、エンコードされたデータにECCが付加されて光ディスク書き込まれる。コンテンツデータは指定されたアドレス位置(ランダム記録として指定されたアドレス)から記録される。一方、DDSのデータは、コンテンツデータの記録終了と共に、データ先頭位置を示すアドレスが管理情報の1項目としてリードイン領域(またはリードアウト領域)に記録される。たとえば、BD−Rの場合、DDSは、リードイン領域(またはリードアウト領域)のINFO1/2/3/4に用意されるDMA1/2/3/4(32クラスター)で構成され、一回の記録につき4クラスターを消費する。このためBD−Rでは、最大8回の追記が可能となる。なお、書き換え型光ディスク(DVD−RAM、BD−RE)はDDSも書き換えることができるため、このような制限はない。
【0022】
このようにランダム記録されたコンテンツデータと管理情報は、いずれも同時期に同じ条件で書き込まれる。
【0023】
以下、上述のようにランダム記録された光ディスクの再生方法およびその装置の実施形態について説明する。
【0024】
図2は、本実施形態1における光ディスク再生装置のハードウェア構成(再生手段となる部分の構成)の一例を示すブロック図である。
【0025】
ここでは光ディスク再生装置のPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式を用いて光ディスクを再生するための構成について説明する。
【0026】
このPRML方式とは、光再生時に検出された電気的なアナログ信号に基づいて、情報記録層に記録されている2値データを推測するものであり、光ディスクでは特に高記録密度時に従来の2値スライス型の再生処理と比較して大幅な再生性能の向上が見込まれるため再生信号処理のなかで採用されて、線記録密度の大幅な向上を達成している。PRML方式では、再生特性に応じたPR(Partial Response)の参照クラス特性(拘束長)を適宜選択する。この拘束長は、対象となる記録マークを再生するレーザービームスポットが、この記録マークに隣接する記録マークの影響(光学干渉)をどの程度を受けるか、すなわち、隣接する記録マーク/スペースの状態に再生信号出力がどの程度拘束されるかを考慮して決定される必要がある。
【0027】
たとえば、再生制御系における単位クロックの周期をTとした際、ビームスポット内に、7Tに相当する長さの記録マーク/スペース列が存在する場合を考える。この場合は、ビームスポット中心に位置する記録マーク、スペースの反射光の出力値は、この中心を含んだ7T相当の記録マーク/スペース列の反射光を受けることになるので、拘束長nは少なくとも5以上に設定されることが望ましい。なお、拘束長5のPRMLとは、対象となる記録マークの符号bit「1」を再生する際に、隣接する符号bitを含めた全5bitを拘束する(影響を受ける)ことを想定している。この結果、再生応答波形が、たとえばPR(1,2,2,2,1)の畳み込み演算結果で表現されることを前提に、等化・復号化して行くことになる。
【0028】
以後の説明では、PRML方式として拘束長5のPR(1,2,2,2,1)を例に説明する。また、PRML方式を用いたそのほか光ディスク再生装置における基本的な構成など周知の部分については省略した。
【0029】
光ディスク再生装置は、光ディスク10からRF信号を取り出す光ピックアップ11、RF信号をアナログ信号のまま増幅などの処理を行うアナログ信号処理部12(プリアンプと称されることもある)、アナログ信号をデジタル信号に変換するADC13、再生信号の最適化を行う適応等化部14、ビタビ複合を行うビタビデコーダー15、ビタビレベルを決定するビタビレベルアダプター16、同期信号を検出する同期信号(SYNC)検出部17、デジタル信号をデータに変換するデコーダー18、そして、各部の制御を行うコントローラ19(たとえばマイクロプロセッサユニット)を有する。またビタビデコーダー15とビタビレベルアダプター16をあわせてビタビ複合部40という。
【0030】
基本的な再生動作は、まず、コントローラ19の指令により、光ピックアップ11が光ディスク10のリードイン領域にシークされる。そして、モータ20によって回転している光ディスク10に対して光ピックアップ11から再生用レーザー光を照射する。光ディスク10からの反射光は光ピックアップ11内の受光素子により受光され光電変換によって電気信号に変換されてRF信号が得られる。その後、RF信号はアナログ信号処理部12に入力される。アナログ信号処理部12では、アンプ(AMP)21にて信号振幅が増幅され、自動ゲイン調整器(AGC:Auto Gain Control)22にて所定の信号振幅となるように調整され、イコライザー(EQ)23にて所定の周波数帯域の信号が増幅される。その後、増幅されたRF信号はアナログ−デジタル変換器(ADC)13に入力される。アナログ−デジタル変換器13では、RF信号を量子化して、次段の適応等化部14に入力する。適応等化部14では再生信号の最適化が行われる(詳細後述)。
【0031】
そして、再生信号は、ビタビ複合部40に入力される。ビタビ複合部40ではビタビデコーダー15でビタビ復号される。その後、再生信号から同期信号検出部17により同期信号が検出され、デコーダー18によりデータに復元される。
【0032】
次に、再生信号の最適化処理について説明する。本実施形態1では、再生信号の最適化処理として、PRML方式を用いて光ディスクを再生する際に、光ディスクの管理領域を読み出したときに、適応等化部14に供給するタップ(Tap)係数初期値の最適化を行っている。
【0033】
記録時の記録レーザパワーやライトストラテジー(WST:Write strategy)のばらつき、あるいはこれらの要因となる温度などの環境誤差によって、再生されたRF信号特性にばらつきが生じる。タップ係数初期値は、RF信号特性のばらつきの影響を受け、最適となる初期値も変わってくる。タップ係数初期値は、適応型等化器の安定動作やタップ係数の収束する時間に大きく関わり、同期信号(SYNC)を検出するまでの時間に大きな影響を与える。これは、もし再生時に同期信号の検出が所定時間内に行えない場合はリードエラーとなり、その結果、リトライ処理を行うこととなりパフォーマンスの低下につながるため、重要な再生パラメータの一つである。したがって、このタップ係数初期値の最適化を行うことで、RF信号の特性ばらつきで生じるタップ係数初期値の最適値からのずれを低減させ、適応型等化回路の収束を早め、同期信号を検出するまでの時間を短縮させて、安定した再生動作を実現させることができる。
【0034】
図3は、適応型等化器の詳細を示すブロック図である。
【0035】
適応型等化器14は、適応型等化器31、適応学習回路32からなる。また、適応学習回路32からはタップ係数初期値を記憶したメモリ33(記憶手段)に接続されている。
【0036】
適応型等化器31は、たとえば、トランスバーサルフィルター(Transversal filter)構造を有するFIRイコライザーからなり、各タップの信号は適応学習回路32で更新されるタップ係数制御回路によって重み付けされた後、加算される形となっている。また、メモリ33は、たとえばEEPROMやフラッシュメモリなど不揮発性メモリを使用することが好ましい。
【0037】
具体的には、図3に示すように、フリップフロップ(Flip−flop)で構成された1クロック遅延器101、102で、入力信号を1クロック遅延させて出力する。乗算回路103、104、105では二つの入力値の積を出力する。加算回路106、107、108、114では二つの入力値の和を出力する。図3に示した回路では、三つの乗算器を用いる3タップ型のデジタルフィルター構成の例を示したが、乗算器の数が異なる場合でも基本的な動作は同じである。ここでは図示した3タップ型の場合について説明する。
【0038】
この適応型等化器の働きについて、まず、通常状態(再生中)の動作を説明する。
【0039】
光ディスクの再生(データリード(Data Read))時の時刻kにおける適応型等化器31の入力信号をX(k)、乗算回路103、104、105に入力される乗数をそれぞれc1,c2,c3とすると、適応型等化部の等化出力Y(k)は、以下の(1)式で表現できる。なお、入力信号X(k)とはアナログ−デジタル変換器13からの信号である。また、等化出力Y(k)とはビタビデコーダー15へ出力される信号である。
【0040】
Y(k)=x(k)*c1+x(k−1)*c2+x(k−2)*c3 …(1)
Y(k)に対してビタビデコーダー15にて復号されて出力されるバイナリーデータをA(k)とする。たとえばPR(1,2,2,2,1)とし、A(k)が正しい再生データであるとすると、時刻kでの適応型等化器31の本来の出力Z(k)は、以下の(2)式となる。
【0041】
Z(k)=A(k)+2*A(k−1)+2*A(k−2)+2*A(k−3)
+A(k−4) …(2)
そこで、時刻kでの等化誤差E(k)を以下の(3)式で定義する。
【0042】
E(k)=Y(k)−Z(k) …(3)
適応学習では、以下の(4)乃至(6)式に従い各乗算器の係数を更新する。
【0043】
c1(k+1)=c1(k)−α*x(k)*E(k) …(4)
c2(k+1)=c2(k)−α*x(k−1)*E(k) …(5)
c3(k+1)=c3(k)−α*x(k−2)*E(k) …(6)
(4)乃至(6)式のαは、更新係数であり正の小さな値(たとえば0.01)を設定する。上記の(2)式に示した処理を行うのが波形合成回路113(ビタビレベルアダプター16内の回路)である。遅延回路112では、加算回路108の出力Y(k)に対して、ビタビデコーダー15での処理時間に相当する遅延処理を行い、加算回路114において、上記の(3)式に示した処理を行う。タップ係数制御回路(図示タップ係数制御とした)109では、(4)式に示した演算を行い乗算器103の係数を更新し制御する。更新結果は、メモリ33に格納される。タップ係数制御回路110では、(5)式に示した演算を行い、乗算器104の係数を更新する。更新結果は、メモリ33に格納される。同様に、タップ係数制御回路111では、(6)式に示した演算を行い、乗算器105の係数を更新する。更新結果は、メモリ33に格納される。
【0044】
ビタビレベルアダプター16で最適なビタビレベル(上記の例ではPR(1,2,2,2,1))を決定し、このビタビレベルに対して適応等化される。適応等化された信号出力は、ビタビデコーダー15に入力される。
【0045】
ビタビデコーダー15では、入力信号に対して最尤列推定(ビタビ復号)を行い、バイナリーデータA(k)を出力する。
【0046】
このバイナリーデータA(k)は、ビタビレベルアダプター16以外にも同期信号検出回路17にも送られ、ここで同期信号の検出が行われる。次に、デコーダー18へ送られデータの複合およびアドレスの複合が行われる。
【0047】
上記は通常状態における再生時のRF信号の流れを説明してきたが、これに対して、再生直後の場合についてのタップ係数制御について説明する。図4にタップ係数制御回路109内のタップ初期値制御部の一例示すブロック図である。
【0048】
タップ初期値制御部120は、セレクターであり、コントローラ19からの初期タップ制御信号によって、入力側の初期値の経路「タップ係数初期値:1側」か、「通常の経路:0側(c1(k)−α*x(k)*E(k))のいずれかが選択される。
【0049】
通常(再生中)は、(4)式に示した演算に従いタップ係数が用いられるが、再生開始点では初期タップ制御信号によりあらかじめメモリ33内に記憶させておいたタップ係数初期値の経路:1側を使用するように信号経路が選択され、その後、通常の経路:0側へと切り替えられる。これらの動作は他のタップ係数制御回路110および111においても同様に処理される。
【0050】
ここで、タップ係数初期値は、通常、光ディスク再生装置の製造出荷時における工程調整等であらかじめ決められた値である。このため、全ての記録状態において最適な値とは言えない。ランダム記録された光ディスクでは複数の装置で記録されていたり、記録時の温度が違っていたりして、記録された信号の状態もその箇所毎に最適値が異なることが予想される。このため再生時においてもタップ係数初期値の最適化が必要とされる。なお、装置の出荷時におけるタップ係数初期値もメモリ33に工場出荷段階で記憶されている(これを装置固有のタップ係数初期値という)。
【0051】
そこで本実施形態では、内外周にあるリードイン領域またはリードアウト領域(管理領域)を利用して、このタップ係数初期値の最適化を行うのである。
【0052】
図5はタップ係数初期値の最適化処理の手順を示すフローチャート(サブルーチン)である。このタップ係数初期値の最適化処理の手順は、後述する再生動作手順のなかの1ステプ(S12)のサブルーチンとしてコントローラ19により実行される。したがって、この処理を実行するコントローラ19および適応等化部14が最適化手段となる。
【0053】
この最適化処理は、後述する図7に記載の管理情報の有無判断で有りと判断された後に行われる(タップ係数初期値最適化処理スタート(S100))。そして最初に、初期タップ制御信号によってタップ係数信号経路を初期値の経路:1側にして、タップ係数初期値を設定する(S101)。このとき入ってくるタップ係数初期値は装置固有のタップ係数初期値である。
【0054】
続いて、管理情報の読み取りを実行しつつタップ係数適応制御動作を開始させる(S102)。続いて、コントローラ19からの初期タップ制御信号によってタップ係数信号経路を通常の経路:0側に戻し(S103)、引き続き適応制御動作続行しタップ係数が安定化した(収束した)状態まで続け(S104)、安定化した状態におけるタップ係数をコンテンツデータ再生時に使用するタップ係数初期値としてメモリ33へ記憶する(S105)。そして最適化処理は終了する(メインルーチンへのリターン:S106)。
【0055】
タップ係数が安定化したかどうかの判断は、管理情報を読み出したときに検出したエラー値が最小の値に収束したとき、またはあらかじめ決められたエラー値より小さくなったか否かにより判断する。これはたとえば、前者であればタップ係数が安定していない状態では、読み出した信号のエラー値は始め大きく、徐々に小さくなり、その後再び大きくなるので、もっとも小さくなったエラー値のときのタップ係数を安定した状態のタップ係数とするものである。後者の場合は、データ読み出しに際してこの程度のエラー値であれば許容できるしきい値をあらかじめ決めておいて、エラー値がそのしきい値以下になったときのタップ係数を安定した状態のタップ係数とするものである。エラー値の検出は、コントローラ19が、デコーダー18によって複号された信号により行い、エラー値が最小の値に収束したとき、またはあらかじめ決められたしきい値より小さくなった時点で、そのときのタップ係数の値をタップ係数初期値としてメモリ33へ記憶させるように制御している。なお、タップ係数が安定化するまでの間は、同じ管理情報を読み取ることになる。
【0056】
この動作は回転速度を変更するごとに行い、また、管理領域にランダム記録に対応して複数の記録領域(複数の記録アドレス)が存在する場合、S100からS106の動作を引き続き行う。また内外周に管理領域がある場合は、同様な動作を内外周で行うことで、多層ディスクの場合に、各層において同様な最適化処理を行うことになる。
【0057】
図6は、メモリに記憶されるタップ係数初期値を含むパラメータリストの一例を示す図である。ここでは、3タップ型のデジタルフィルターを例として記載している。
【0058】
このパラメータリストの先頭にはユニットヘッダー(Unit Header)として、最適化を行った光ディスクの識別情報(MID:Manufacturer’s Identification)、ディスク管理領域の記録箇所と対応するデータ領域の記録アドレス、レイヤー(記録層)、In/Out(管理領域がリードイン側かリードアウト側か)、最適化を行ったときの光ディスク回転速度、温度情報を記憶している。なお温度情報は再生装置内の光ディスク近傍に設けられている温度センサー(不図示)の値であり、再生動作中(たとえば最適化を処理を行った時点の温度)の温度を記録する。
【0059】
このユニットヘッダーに続いて、データ領域を再生するときのタップ係数初期値として使用するタップ係数初期値(上述のようにして最適化したタップ係数初期値)が記憶される。ここで、タップ係数初期値は、3タップ型であるので、それぞれの初期値が記録される。このようなパラメータリストが、最適化処理を実行した分だけメモリ33に記憶される。
【0060】
このパラメータリストは、同じ光ディスクであっても、回転速度や温度が違うごとに最適化処理が行われて、別々のパラメータリストとして保存されてゆくことになる。
【0061】
ここでメモリ33に保存したそれぞれの条件における各タップ係数初期値は、ディスク管理情報に記録されているデータ領域内のデータ位置を示すアドレスのコンテンツデータを再生するときのタップ係数初期値として使用する。これにより、データ領域のコンテンツデータを再生する際に、適応型等化回路のタップ係数の安定した制御が行えるようにし、またタップ係数の収束を早め、結果として、同期信号を検出するまでの時間を短縮させ、安定した再生動作を実現することができる。
【0062】
次に、再生動作全体の手順を説明する。図7は再生動作全体の手順を示すフローチャートである。
【0063】
まず、コントローラ19は、光ディスクがセットされると、モータ20を起動して光ディスクを回転させ、光ピックアップ11を光ディスクのリードイン領域に位置決めする(S1)。
【0064】
続いて、コントローラ19は、光ディスクのリードイン領域からMIDを読み込んで光ディスクの種類を判別する(S2)。その後、読み込んだMIDに応じて光ディスクの種類ごとにあらかじめ定められている光学系の焦点位置や最適な回転速度(サーボ系)の設定を行う(S3:光学およびサーボ系設定)。
【0065】
続いて、コントローラ19は、光ピックアップ11をリードイン領域内の管理情報記録部分へ移動させて、その部分の読み込みを行う(S4)。そして読み込んだデータから管理情報(DDS)があるか否かを判断する(S5)。ここで管理情報は、既に説明したように、光ディスクの層構造により異なるが、DMA1/2/3/4(32クラスター)で構成されている。そこで、リードイン領域に管理情報がない場合はリードアウト領域を検索して、いずれかの領域に管理情報があるか否かを判断することになる。なお、何がしかのデータが記録されている光ディスクでは、DMA1/2/3/4のいずれかに管理情報が存在するが、何も記録されていないブランクディスクだといずれにも管理情報が記録されていない。
【0066】
そこで、S5において、まず、DMA1部分に管理情報がなければ(S5:NO)、全管理情報を検索したか否かを判断して(S6)、全管理情報を検索していなければ(S6:NO)、次の管理情報領域へ光ピックアップを移動させて(S7)、S5へ戻る。一方、S6において全ての管理情報を検索し終わったなら(S6:YES)、ブランクディスクであると判断し、処理を終了する。
【0067】
S5において、管理情報ありと判断されたなら(S5:YES)、コントローラ19は、続いて、その管理情報を読み取って(S10)、読み取った管理情報と現在の再生条件(回転速度および温度)がメモリ33に記録したパラメータリストのユニットヘッダーと同じか否かを判断する(S11)。つまり、管理情報内のMID、データ領域内のデータが記録されているアドレス、および装置から得られる現在の回転速度および温度が一致するパラメータリストがあるか否かを判断するのである。ここで、回転速度は再生時に設定できる回転速度であり、あらかじめいくつかの速度が決まっているので、そのいずれかの速度である。また、温度は完全に一致しなくても、パラメータリスト内の温度情報の値に対して、温度による影響で再生特性が変化しない範囲であれば一致するものと判断する(これは、再生する光ディスク、たとえばDVDかブルーレイディスクかなどにより、温度による影響が違うため、それらに合わせてあらかじめ一致すると判断する温度範囲を設定しておくことになる)。読み取った管理情報および現在の再生条件がパラメータリストのユニットヘッダーと同じであれば、その光メディアは以前に同じ再生条件で再生された際に最適化されたパラメータがメモリ33にパラメータリストとして記憶されたものが既に存在しているということである。
【0068】
なお、このS10の段階では再生特性の最適化は行われていない。しかし、不良ディスクでない限り、多少エラーが多くても(読み取りに時間がかかることもあるが)管理情報の読み取りは可能である。ただしエラーが多く発生して読み取り不能となった場合は、その時点で再生不良ディスクとして警告を出力して処理を終了してもよい。
【0069】
S11において、ユニットヘッダーが一致するパラメータリストがあれば(S11:YES)、そのパラメータリストのタップ係数初期値をメモリ33から読み出して、コンテンツデータを再生するためのパラメータに設定し(S13)、コンテンツデータの再生動作(S14)に移り、処理は終了する。
【0070】
一方、S11において、管理情報および現在の再生条件がユニットヘッダーと一致するパラメータリストがなければ(S11:NO)、コントローラ19が、前述したとおり、管理情報を利用してパラメータの最適化(タップ係数初期値の最適化)を実行する(S12)。最適化されたパラメータはメモリ33に保存される(前述のS105)。その後、最適化されたパラメータを読み出してコンテンツデータの再生の際のパラメータに設定して(S13)、再生動作(S14)に移る。なお、コンテンツデータの再生動作は、通常の動作であり、管理情報内のデータ領域のアドレスに光ピックアップ11を移動させて再生することになる(これは通常の動作であるので詳細な説明は省略する)。
【0071】
以上説明した本実施形態によれば、光ディスクのデータ領域にランダムにコンテンツデータを記録する際に、同じ条件で記録されている管理領域(リードイン領域またはリードアウト領域)を利用して再生特性の最適化を図ることとしたので、再生特性の最適化のためにいちいちランダム記録されているデータ位置に光ピックアップを位置決め(シーク)する必要がなくなる。このため、ランダム記録された光ディスクであっても、光ディスクをセットしてから、コンテンツの再生を開始するまでの時間を短縮することができる。
【0072】
また、最適化したパラメータは、その光ディスクのデータアドレスおよび再生条件(回転速度と最適化したときの温度)と共に、装置内に記憶しておくこととしたので、再び、同じ光ディスクの同じデータが、同じ条件で再生されるときには、最適化処理を行わなくても記憶されているパラメータにより、すぐにコンテンツの再生に移ることが可能となり、いっそう再生までの時間が短くなる。なお、このように、最適化したパラメータを記憶しなくても本発明は実施可能である。その場合、光ディスクを交換するたびにパラメータの最適化処理が必要となるが、それでもランダム記録されたデータを再生する際の動作を早くすることができる。
【0073】
(実施形態2)
実施形態1としてPRML方式を用いた光ディスクの再生において、適応等化部で使用するタップ係数初期値を最適化することを説明した。しかしこれに限らず、さまざまな再生パラメータの最適化に適用することができる。たとえば、ビタビ復号部40に供給する最尤復号(Maximum Likelihood Decoding)の等化目標レベル初期値の最適化について行うことができる。
【0074】
図8は、実施形態2における光ディスク再生装置のハードウェア構成(再生手段となる部分の構成)の一例を示すブロック図である。
【0075】
ここで、本実施形態2における光ディスク再生装置のうち、図2に示した実施形態1と異なるのは、最適化した等化目標レベル初期値の値をビタビ復号部40のビタビレベルアダプター16からメモリ33に記憶することができるようになっていることである。その他の構成は実施形態1と同じであるので説明は省略する。また、本実施形態2に係る再生動作全体の手順も図7により説明した実施形態1と同じであるので説明を省略する。
【0076】
本実施形態2では、PRML方式を用いて光ディスクを再生する光ディスク再生装置において、ディスク管理領域の再生時にビタビ復号部40(図2におけるビタビデコーダー15およびビタビレベルアダプター16からなる)に供給する最尤復号の等化目標レベル初期値の最適化を行う場合を説明する。
【0077】
最尤復号とは、誤りがあって確定できないデータ列について、その候補のなかから確率的にもっとも可能性の高いデータ列を判定する技術であり、本実施形態では、適応等化部14を通過したRF信号をビタビレベルアダプター16で等化目標レベルと比較し、もっとも近い目標と判断することを意味する。ここでは、この等化目標レベルの初期値の最適化を行う。
【0078】
図9は、拘束長=5、PR(1,2,2,2,1)の場合の等化目標設定を説明するためのグラフである。
【0079】
このPR(1,2,2,2,1)最尤復号での等化目標レベルは、通常は0〜8の9レベルを整数比で(等間隔に)設定することになるので、等化目標レベルのピークレベル(Peak Level)〜ボトム(Bottom Level)間は1レベル幅×8の振幅となる。等化目標レベルの適応機能を具備した光ディスク再生装置では、実際のRF信号との差が最小になるようリアルタイムで微調整される(ピークレベル〜ボトムレベルの中間をセンターレベル(Center Level)という)。このため、その初期値は等化目標レベルの収束する時間に大きく関わるパラメータとなり、同期信号を検出するまでの時間に大きな影響を与える。もしも、再生時(データリード時)に同期信号検出が所定時間内に行えない場合はリードエラーが発生し、その結果、リトライ処理を行うこととなりパフォーマンスの低下につながるため、重要なパラメータの一つでもある。したがって、このパラメータも再生パラメータの一つである。
【0080】
そのために、ランダム記録されたデータ領域のコンテンツデータを再生するための等化目標レベル初期値を内外周にあるリードイン領域またはリードアウト領域(管理領域)を再生して求め、データ領域のコンテンツデータを再生する際の等化目標レベル初期値として使用する。
【0081】
この等化目標レベル初期値の最適化処理について説明する。図10は、ビタビレベルアダプター内の等化目標レベル制御部の一例を示すブロック図である。
【0082】
等化目標レベル制御部130は、セレクターであり、コントローラ19からの等化目標レベル制御信号によって、入力側の初期値の経路を「等化目標レベル初期値:1側」か、「通常の経路:0側」のいずれかが選択される。
【0083】
等化目標レベル初期値も、通常は、光ディスク再生装置の製造出荷時における工程調整等であらかじめ決められた値である。このため、全ての記録状態において最適な値とは言えない。このため等化目標レベル初期値の最適化が必要とされる。なお、装置の出荷時における等化目標レベル初期値もメモリ33に工場出荷段階で記憶されている(これを装置固有の等化目標レベル初期値という)。
【0084】
再生開始点では、等化目標レベル制御信号によりあらかじめメモリ33内に記憶させておいた等化目標レベル初期値:1側を使用するように信号経路が選択され、その後、通常(再生中)の信号経路へと切り替えられる。これらの動作は他の等化目標レベルについても同様に処理される。この等化目標レベルの最適化処理を行う時の初期値は、前述のように等化目標レベルを0〜8の9レベルを整数比で(等間隔に)設定しておくことを想定し、その後にディスク管理領域の対応する記録箇所をリード時の初期値はこの最適化処理で求めた値を使用する。)
図11は、等化目標レベル初期値の最適化処理の手順を示すフローチャートである。この等化目標レベル初期値の最適化処理は、コントローラ19により、図7に記載の情報エリア有無判断で有りと判断された後に行われる。この処理も、図7に示したメインフローチャートのなかのS12におけるサブルーチンとなる。したがって、この処理を実行するコントローラ19およびビタビ複合部40が最適化手段となる。
【0085】
最適化処理がスタート(S200)したなら、最初に、等化目標レベル制御信号により等化目標レベルの信号経路を初期値の経路:1側に設定する(S201)。このとき入ってくる等化目標レベル初期値は、装置固有の等化目標レベル初期値である。
【0086】
続いて、管理情報の読み取りを実行しつつ等化目標レベルの適応制御動作を開始させ(S202)、続いて、等化目標レベル制御信号により等化目標レベルの信号経路を通常の経路:0側に戻し(S203)、引き続き、適応制御動作続行し等化目標レベルが安定した状態まで続け(S204)、安定した状態の等化目標レベルをデータ領域のコンテンツデータを再生する等化目標レベル初期値としてメモリ33に記憶し(S205)、最適化処理は終了する(S206)。
【0087】
ここで、適応制御動作中の等化目標レベルが安定化したどうかの判断は、管理情報を読み出したときに検出したエラー値が最小の値に収束したとき、またはあらかじめ決められたエラー値より小さくなったか否かにより判断する。これはたとえば、前者であれば等化目標レベルが安定していない状態では、読み出した信号のエラー値は始め大きく、徐々に小さくなり、その後再び大きくなるので、もっとも小さくなったエラー値のときの等化目標レベルを安定した状態における等化目標レベルとするものである。後者の場合は、データ読み出しに際してこの程度のエラー値であれば許容できる範囲となるしきい値をあらかじめ決めておいて、エラー値がそのしきい値以下になったときの等化目標レベルを安定した状態の等化目標レベルとするものである。エラー値の検出は、コントローラ19が、デコーダー18によって複号された信号により行い、エラー値が最小の値に収束したとき、またはあらかじめ決められたしきい値より小さくなった時点で、そのときの等化目標レベルの値を初期値としてメモリ33へ記憶させるように制御している。なお、等化目標レベルが安定化するまでの間は、同じ管理情報を読み取ることになる。
【0088】
この動作は回転速度毎に行い、また、ディスク管理領域にランダム記録に対応した複数の記録エリアが存在する場合、(S200)から(S206)の動作を引き続き行う。内外周にディスク管理領域がある場合は、同様な動作を内外周で行い、多層ディスクの場合、各層において同様な動作を行うものである。
【0089】
図12は、メモリに記憶される等化目標レベル初期値を含むパラメータリストの一例を示す図である。
【0090】
ここでは、上述のように拘束長=5、PR(1,2,2,2,1)の例を記載しているため、9レベルの等化目標レベルに対応した初期値を保存することになる。
パラメータリストの先頭にはユニットヘッダーとしてMID、ディスク管理領域の記録箇所と対応するデータ領域の記録アドレス、レイヤー(記録層)、In/Out(管理領域がリードイン側かリードアウト側か)、最適化を行ったときの光ディスク回転速度、温度情報を記憶している。なお温度情報は再生装置内の光ディスク近傍に設けられている温度センサー(不図示)の値であり、再生動作中(たとえば最適化を処理を行った時点の温度)の温度を記録する。続いて、データ領域の記録箇所を再生する時の等化目標レベルの初期値として使用する等化目標レベル初期値1乃至9が記載されている。このようなパラメータリストが、最適化処理を実行した分だけメモリ33に記憶される。
【0091】
このように等化目標レベル初期値の最適化処理を、前述の実施形態1におけるタップ係数初期値の最適化処理と共に行った場合、ユニットヘッダーを共通にして、それぞれの最適化処理結果を追記する形態を取っても良い。なお、タップ係数初期値の最適化処理および等化目標レベル初期値の最適化処理の両方を行う場合、どちらを先に実行してもよい。両方の最適化を行う場合は、図7のS12内において、両方の最適化を実行した後、メインルーチンへリターンすることになる。
【0092】
ここでメモリ33に記憶したそれぞれの条件における各等化目標レベル初期値は、ディスク管理情報に記録されているデータ領域内のデータ位置を示すアドレスのコンテンツデータを再生するときの等化目標レベル初期値として使用する(図7のS13におけるパラメータ設定のステップで等化目標レベル初期値に設定される)。
【0093】
これにより、ビタビレベルアダプター16の等化目標レベルの安定した制御が行えるようになり、また等化目標レベルの収束を早め、結果として、同期信号を検出するまでの時間を短縮させ、リードエラーの発生を抑えて、回転速度の低下やリトライといった再生時のパフォーマンスを低下させることなく安定した再生を実現可能となる。
【0094】
本実施形態2においても、光ディスクのデータ領域にランダムにコンテンツデータを記録する際に、同じ条件で記録されている管理領域(リードイン領域またはリードアウト領域)を利用して再生特性の最適化を図ることとしたので、再生特性の最適化のためにいちいちランダム記録されているデータ位置に光ピックアップを位置決め(シーク)する必要がなくなる。このため、ランダム記録された光ディスクであっても、光ディスクをセットしてから、コンテンツの再生を開始するまでの時間を短縮することができる。特に、タップ係数初期値の最適化処理および等化目標レベル初期値の最適化処理の両方を行うことで光ディスクをセットしてから、コンテンツの再生を開始するまでの時間を大幅に短縮することができる。なお、等化目標レベル初期値の最適化処理単独で行うことでも光ディスクをセットしてから、コンテンツの再生を開始するまでの時間を短縮することができる。
【0095】
また、本実施形態2においても、最適化したパラメータは、その光ディスクのデータアドレスと再生条件(回転速度と最適化したときの温度)と共に、装置内に記憶しておくこととしたので、再び、同じ光ディスクの同じデータが、同じ条件で再生されるときには、最適化処理を行わなくても、記憶されているパラメータにより、すぐにコンテンツの再生に移ることが可能となり、いっそう再生までの時間が短くなる。なお、このように、最適化したパラメータを記憶しなくても本発明は実施可能である。その場合、光ディスクを交換するたびにパラメータの最適化処理が必要となるが、それでもランダム記録されたデータを再生する際の動作を早くすることができる。
【0096】
以上、本発明の最適な実施形態を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるもではなく、さまざまな再生パラメータの最適化に適用することができる。また、実施形態では、ランダム記録された光ディスクに対応したものとして説明したが、本発明は、シーケンシャルにデータが記録されたディスクでも、そのまま適用可能である。特に、一度、最適化したパラメータを記憶した後に、ユニットヘッダーが一致するパラメータリストが存在する光ディスクを再生する際には、シーケンシャル記録されたディスクでも、再生パラメータの再設定は必要なくなるため、その分再生までの時間を短縮することが可能である。また、実施形態では、光ディスク再生装置として説明したが、本発明は再生専用の装置に限定されるものではなく、光ディスクへの記録も行うことのできる光ディスク記録再生装置における再生機能部分として適用可能である。したがって、本発明を再生機能部分に適用した光ディスク記録再生装置もまた、本発明に属する。
【0097】
そのほか、本願の特許請求の範囲に記載した技術思想の範囲でさまざまな変形形態が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0098】
11 光ピックアップ(P/U)、
12 アナログ信号処理部、
13 アナログ−デジタル変換器(ADC)、
14 適応等化部、
15 ビタビデコーダー、
16 ビタビレベルアダプター、
17 同期信号検出部、
18 デコーダー、
19 コントローラ、
21 アンプ(AMP)、
22 自動ゲイン調整器(AGC)、
23 イコライザー(EQ)、
31 適応型等化器、
32 適応学習回路、
33 メモリ、
40 ビタビ復号部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに記録されているデータを読み出す再生手段と、
前記再生手段により前記光ディスクの内周側または外周側に記録されているディスク管理領域のデータを読み出して、そのときの読み出しエラーに応じて再生特性を決めるパラメータの最適化を行う最適化手段と、
を有して、
前記最適化手段によって最適化されたパラメータにより、前記光ディスクのデータ領域に記録されているデータを前記再生手段により再生することを特徴とする光ディスク再生装置。
【請求項2】
前記最適化手段によって最適化された前記パラメータを記憶する記憶手段を有することを特徴とする請求項1記載の光ディスク再生装置。
【請求項3】
前記最適化されたパラメータは、前記光ディスクの識別情報、前記データ領域に記録されているデータのアドレス、前記パラメータを記憶したときの回転速度、前記パラメータを記憶したときの温度と共に前記記憶手段に記憶し、前記光ディスクの再生指示があった際に、再生指示があった前記光ディスクの識別情報と同じ識別情報で、かつ前記回転速度および温度が同じ前記パラメータが前記記憶手段にある場合は、当該記憶されている前記パラメータを用いて前記データ領域のデータを再生することを特徴とする請求項2記載の光ディスク再生装置。
【請求項4】
前記最適化手段は、前記パラメータとして、前記光ディスクをPRML方式を用いて再生する際の適応等化器のタップ係数初期値を最適化するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の光ディスク再生装置。
【請求項5】
前記最適化手段は、前記パラメータとして、前記光ディスクをPRML方式を用いて再生する際に最尤復号の等化目標レベル初期値を最適化するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の光ディスク再生装置。
【請求項6】
光ディスクの内周側または外周側に記録されているディスク管理領域のデータを読み出して、そのときの読み出しエラーに応じて再生パラメータの最適化を行う段階と、
前記最適化されたパラメータにより、前記光ディスクのデータ領域に記録されているデータを再生する段階と、
を有することを特徴とする光ディスク再生方法。
【請求項7】
前記最適化されたパラメータは、前記光ディスクの識別情報、前記データ領域に記録されているデータのアドレス、前記パラメータを記憶したときの回転速度、前記パラメータを記憶したときの温度と共に記憶手段に記憶する段階を有し、
前記光ディスクの再生指示があった際に、再生指示があった前記光ディスクの識別情報と同じ識別情報で、かつ前記回転速度および温度が同じ前記パラメータが前記記憶手段にある場合は、当該記憶されている前記パラメータを用いて前記データ領域のデータを再生することを特徴とする請求項6記載の光ディスク再生方法。
【請求項8】
前記最適化するパラメータは、前記光ディスクをPRML方式を用いて再生する際の適応等化器のタップ係数初期値を最適化するものであることを特徴とする請求項6または7記載の光ディスク再生方法。
【請求項9】
前記最適化するパラメータは、前記光ディスクをPRML方式を用いて再生する際に最尤復号の等化目標レベル初期値を最適化するものであることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一つに記載の光ディスク再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−133838(P2012−133838A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283512(P2010−283512)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(598045058)株式会社サムスン横浜研究所 (294)
【Fターム(参考)】