説明

光ディスク印刷装置

【課題】ラベル層を有する光ディスクに対して短時間で所望の情報を書き込むことが可能な光ディスク印刷装置を提供する。
【解決手段】光ディスク50のラベル層に当接して直径方向に搬送する2つの搬送ローラ21,23と、搬送方向と直交する方向に所定の間隔で配列された複数の発熱素子を有し、ラベル層に当該発熱素子により熱を印加して所望の情報を書き込むサーマルヘッド10hと、光ディスクを挟んでサーマルヘッドと対向する位置に配置され、光ディスクをサーマルヘッドに押圧するとともに、搬送ローラおよびサーマルヘッドの当接面によって形成される基準面に対して光ディスクを押圧して光ディスクの反りを矯正するプラテンローラ25と、発熱素子の発熱状態を制御するとともに、搬送ローラを駆動して光ディスクの所定の位置に情報を書き込む制御を行う制御手段30とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、熱によって発色するラベル層を有する光ディスクに対して、レーザ光によって所望の情報を書き込む技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−317104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に開示される技術では、レーザ光によってラベル層に情報を書き込むが、レーザ光のスポットの面積は微小であることから、特に、ディスクの全面に対して情報の書き込みを行うような場合には、非常に長い時間(例えば、30分)が必要となるという問題点がある。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ラベル層を有する光ディスクに対して短時間で所望の情報を書き込むことが可能な光ディスク印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、光ディスクのラベル層に当接して回転することにより前記光ディスクを直径方向に搬送する平行して架設された2つの搬送ローラと、前記2つの搬送ローラの間に設けられ、前記搬送ローラによる搬送方向と直交する方向に所定の間隔で配列された複数の発熱素子を有し、前記光ディスクの前記ラベル層に前記発熱素子により熱を印加して所望の情報を書き込むサーマルヘッドと、前記光ディスクを挟んで前記サーマルヘッドと対向する位置に配置され、前記光ディスクを前記サーマルヘッドに押圧するとともに、前記2つの搬送ローラおよび前記サーマルヘッドの当接面に対して前記光ディスクを押圧することにより前記光ディスクの反りを矯正するプラテンローラと、前記サーマルヘッドの前記発熱素子の発熱状態を制御するとともに、前記2つの搬送ローラを制御して前記光ディスクに所望の情報を書き込む制御を行う制御手段と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、ラベル層を有する光ディスクに対して短時間で所望の情報を書き込むことが可能となる。
【0006】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記サーマルヘッドの前記発熱素子は前記ラベル層の直径と略等しい長さの範囲に配列されており、前記制御手段は、前記2つの搬送ローラを駆動し、前記光ディスクを直径方向に一方から他方に搬送する1回の搬送動作によって前記ラベル層に所望の情報を書き込む制御を行うことを特徴とする。
この構成によれば、1回の搬送動作によって印刷を行うことができるので、ラベル層を有する光ディスクに対して更に短時間で所望の情報を書き込むことが可能となる。
【0007】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記サーマルヘッドの前記発熱素子は前記ラベル層の直径よりも短い長さの範囲に配列されており、前記制御手段は、前記2つの搬送ローラを駆動し、前記光ディスクを直径方向に一方から他方に搬送する搬送動作を所定回数往復して実行することにより、前記ラベル層に所望の情報を書き込む制御を行うことを特徴とする。
この構成によれば、小さいサイズのサーマルヘッドを使用することができるので、装置の製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ラベル層を有する光ディスクに対して短時間で所望の情報を書き込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0010】
(A)実施の形態の構成の説明
図1は、本発明の実施形態に係る光ディスク印刷装置の外観を示す斜視図である。この図に示すように、光ディスク印刷装置10は、筐体11およびフロントパネル12を有し、フロントパネル12には光ディスク50が挿入される挿入口13および印刷中であることを示すLED(Light Emitting Diode)14を有している。ここで、筐体11は、略直方体形状を有し、金属またはプラスティックによって構成される。なお、筐体11の内部には、後述するような機構部と、制御部とが格納されている。フロントパネル12は、例えば、金属またはプラスティックによって構成され、筐体の前面部に取り付けられている。挿入口13は、フロントパネル12の略中央部に設けられており、当該挿入口13を介して光ディスク50が挿入され、また、印刷が終了した光ディスク50が排出される。LED14は、印刷中であることを示すインジケータである。
【0011】
図2は、光ディスク印刷装置10の印刷対象となる光ディスク50の断面構造の一例を示す図である。本実施形態では、光ディスク50として、感熱発色層51を有する光ディスクを使用する。このような感熱発色層51を有する光ディスク50は、図2に示すように、感熱発色層51、ポリカーボネイト層52、データ記録層53、および、ポリカーボネイト層54を有している。ここで、感熱発色層51は、熱によって発色する素材によって構成され、当該層に対して情報が印刷される。ポリカーボネイト層52,54は、データ記録層53を保護する役割を有する。データ記録層53は、例えば、有機色素によって構成され、レーザ光が照射されるとその熱によって分解され、情報を記録するためのピットが形成される。
【0012】
図3は、光ディスク印刷装置10を図1に示すX方向から眺めた場合の断面の概略構成を示す図である。光ディスク印刷装置10の筐体11の内部には、搬送ローラ21、従動ローラ22、サーマルヘッド10h、搬送ローラ23、従動ローラ24、プラテンローラ25、弾性部材25a、および、回路基板30が設けられている。ここで、搬送ローラ21は、挿入口13の近傍に設けられ、挿入口13から挿入された光ディスク50の感熱発色層51に当接し、後述する駆動モータ10fからの駆動力によって回転されることにより、光ディスク50をディスクの直径方向に搬送する。従動ローラ22は、搬送ローラ21と対向する位置に設けられ、図示せぬ弾性部材によって図3の上方向に向かって付勢され、光ディスク50を搬送ローラ21に対して圧着させることにより、搬送ローラ21の回転力を光ディスク50に伝達させる。サーマルヘッド10hは、図の奥行き方向に光ディスク50の直径と略同じ長さを有するとともに、光ディスク50の感熱発色層51と当接する面に複数の発熱素子が所定の間隔を隔てて配列されており、各発熱素子が発生する熱量を制御することにより、感熱発色層51に所定の情報を書き込む。プラテンローラ25は、サーマルヘッド10hと対向する位置に設けられるとともに、弾性部材25aによって図3の上方向に向かって付勢され、光ディスク50をサーマルヘッド10hに押圧するとともに、光ディスク50の反りを矯正する。搬送ローラ23は、サーマルヘッド10hよりもさらに奥側(図3の右側)に、搬送ローラ21と平行するように配置され、光ディスク50の感熱発色層51に当接し、後述する駆動モータ10fからの駆動力によって回転されることにより、光ディスク50をディスクの直径方向に搬送する。従動ローラ24は、搬送ローラ23と対向する位置に設けられ、図示せぬ弾性部材によって図3の上方向に向かって付勢され、光ディスク50を搬送ローラ23に対して圧着させることにより、搬送ローラ23の回転力を光ディスク50に伝達させる。回路基板30には、後述する制御部が形成されている。
【0013】
図4は、光ディスク印刷装置10を図1に示すZ方向から眺めた場合の内部構成の概略を示す図である。この図では、シャーシ20、搬送ローラ21、プーリー21b、サーマルヘッド10h、搬送ローラ23、プーリー23b、駆動ベルト26、ギア27〜29、駆動モータ10f、および、回路基板30が示されている。ここで、シャーシ20は、金属の板材の両端を略直角に折り曲げて形成されるコの字形状を有する部材によって構成され、底面部が筐体11の内部の底面に固定され、折り曲げられた両端の間にサーマルヘッド10hが固定されるとともに、搬送ローラ21,23がサーマルヘッド10hを挟んで回転自在に取り付けられる。搬送ローラ21は、光ディスク50の直径と略同じ長さを有する円柱形状の部材によって構成される。搬送ローラ21の中心軸21a,21cはシャーシ20に設けられた図示せぬ軸受孔に挿通され、回転自在に固定される。また、中心軸21aにはプーリー21bが設けられている。サーマルヘッド10hは、シャーシ20の折り曲げられた両端の間に架設されて固定されている。搬送ローラ23は、搬送ローラ21と同様に、光ディスク50の直径と略同じ長さを有する円柱形状の部材によって構成される。搬送ローラ23の中心軸23a,23cはシャーシ20に設けられた図示せぬ軸受孔に挿通され、回転自在に固定される。また、中心軸23aにはプーリー23bが設けられ、中心軸23cにはギア27が設けられている。ギア27〜29は、駆動モータ10fの回転力を減速して搬送ローラ23に伝達する。プーリー21bとプーリー23bの間には、駆動ベルト26が掛け渡されており、駆動モータ10fからギア27〜29を介して搬送ローラ23に伝達された回転力が、駆動ベルト26を介して搬送ローラ21に伝達される。この結果、搬送ローラ21および搬送ローラ23は、同じ角速度で回転され、光ディスク50が図の左から右方向または右から左方向に搬送される。なお、図4には示されていないが、搬送ローラ21と対向する位置に、図3の上下方向に移動可能な状態で従動ローラ22がシャーシ20に取り付けられるとともに、図示せぬ弾性部材によって図3の上方向に向かって付勢される。同様に、搬送ローラ23と対向する位置に、図3の上下方向に移動可能な状態で従動ローラ24がシャーシ20に取り付けられるとともに、図示せぬ弾性部材によって図3の上方向に向かって付勢される。また、サーマルヘッド10hと対向する位置に、図3の上下方向に移動可能な状態でプラテンローラ25がシャーシ20に取り付けられるとともに、弾性部材25aによって図3の上方向に向かって付勢される。なお、図3および図4は概略構成を示すとともに、単なる一例であって、これ以外の構成を有していてもよい。例えば、サーマルヘッド10hおよびプラテンローラ25は、搬送ローラ21と搬送ローラ23の略中央ではなく、どちらかにズレを有して配置されるようにしてもよい。また、搬送ローラ21と搬送ローラ23の間隔は、図示するものよりも、狭くてもよいし、広くてもよい。
【0014】
図5は、搬送ローラ21,23、サーマルヘッド10h、プラテンローラ25、および、光ディスク50の関係を示す図である。図5(A)に示すように、搬送ローラ21、サーマルヘッド10h、および、搬送ローラ23の光ディスク50と当接する面(以下、「当接面」と称する)は、高さ方向(図5(A)の上下方向)の位置が略同じになるように形成されているので、これらの当接面によって基準平面が形成される。ここで、図5(B)に示すように図の下側に向かって凸形状に湾曲した(反りを有する)光ディスク50が光ディスク印刷装置10に挿入された場合を考える。この場合、プラテンローラ25には弾性部材25aの弾性力によって、図5(B)の矢印で示す向きの力が印加される。このため、光ディスク50は、前述した基準平面に対して押し付けられる。この結果、湾曲した光ディスク50は、図5(C)に示すように、湾曲が矯正されて平らな状態となる。このように、光ディスク50を基準平面に押圧して平らな状態とすることにより、サーマルヘッド10hと光ディスク50の感熱発色層51との確実な接触を確保することにより、光ディスク50が反りを有しているような場合であっても、ムラのない印刷を実現することができる。
【0015】
図6は、光ディスク印刷装置10内におけるサーマルヘッド10hと、光ディスク50との関係の概略を示す図である。この図に示すように、サーマルヘッド10hは、光ディスク50の直径と略同じか、または、少し長い長さを有している。また、サーマルヘッド10hの光ディスク50の感熱発色層51に当接する面には、黒丸で模式的に示すように、複数の発熱素子が所定の間隔を隔てて配置されている。また、サーマルヘッド10hの両端に配置された発熱素子の間の長さLは、光ディスク50の感熱発色層51の直径と略同じ長さとされている。これにより、感熱発色層51の全面を1回の走査(搬送)によって印刷することができる。
【0016】
図7は、光ディスク印刷装置10の制御部の構成例を示すブロック図である。この図に示すように、制御部はCPU(Central Processing Unit)10a、ROM(Read Only Memory)10b、RAM(Random Access Memory)10c、センサ10d、モータ制御部10e、駆動モータ10f、ヘッド制御部10g、サーマルヘッド10h、LED駆動部10i、LED14、および、I/F(Interface)10jを有している。ここで、CPU10aは、ROM10bに格納されているプログラムに応じて装置の各部を制御する。ROM10bは、CPU10aが実行するプログラムおよびデータ等を格納している。RAM10cは、CPU10aがプログラムを実行する際のワークエリアとして機能する。センサ10dは、例えば、光センサによって構成され、挿入口13から光ディスク50が挿入された場合に、光ディスク50が挿入されたことを検出するとともに、搬送動作が実行された場合に光ディスク50の位置を検出する。モータ制御部10eは、駆動モータ10fに対して駆動パルスを供給し、駆動モータ10fを任意の方向に回転させる。駆動モータ10fは、例えば、パルスモータによって構成され、モータ制御部10eから供給されるパルス信号に応じて回転し、搬送ローラ21,23を駆動する。ヘッド制御部10gは、サーマルヘッド10hの発熱素子に対して印刷しようとする情報に応じた駆動信号を供給し、光ディスク50の感熱発色層51に情報を印刷させる。LED駆動部10iは、印刷が実行されている際には、LED14に駆動信号を供給して点灯させる。I/F10jは、光ディスク印刷装置10がホスト100に接続された場合には、ホスト100から供給される印刷データを受信し、光ディスク印刷装置10の内部形式に対応するデータに変換する。ホスト100は、例えば、パーソナルコンピュータによって構成され、光ディスク印刷装置10によって光ディスク50に印刷しようとする画像を編集するとともに、印刷データに変換して光ディスク印刷装置10に供給する。
【0017】
(B)実施の形態の動作の説明
つぎに、本発明の実施形態の動作について説明する。まず、ホスト100において、光ディスク50に印刷しようとする画像を編集するとともに、印刷データへの変換が終了すると、ディスク50を挿入するように促すメッセージが図示せぬ表示装置に表示される。このメッセージを参照し、ユーザが、光ディスク50の感熱発色層51を上に向けた状態で、光ディスク50を光ディスク印刷装置10の挿入口13に挿入すると、挿入口13の近傍に設けられた光センサによって、光ディスク50が挿入されたことが検出される。光ディスク50の挿入が検出されると、CPU10aは、モータ制御部10eに制御コマンドを供給し、光ディスク50が装置内部に搬送される方向に駆動モータ10fを回転させる。駆動モータ10fの回転力は、ギア29,28,27を介して搬送ローラ23に伝達される。また、搬送ローラ21の回転力は、プーリー23b、駆動ベルト26、および、プーリー21bを介して搬送ローラ23に伝達される。この結果、図3に示す搬送ローラ21,23は、反時計方向にそれぞれ回転する。光ディスク50は、従動ローラ22,24によって搬送ローラ21,23に対して当接するように押圧されているので、搬送ローラ21,23が反時計方向に回転されると、光ディスク50は、図3の左から右へ向かって搬送される。そして、図8に示すように、感熱発色層51の左側の端部がサーマルヘッド10hの直下まで到達すると、図示せぬ光センサによって到達したことが検出される。
【0018】
感熱発色層51の左側の端部がサーマルヘッド10hの直下まで到達したことが検出されると、CPU10aは、I/F10jを介してホスト100から印刷データを受信する。ここで、印刷データは、図9に示すように、光ディスク50の感熱発色層51に印刷しようとする画像を、サーマルヘッド10hの発熱素子の密度と、搬送ローラ21,23による搬送速度に応じて決定される解像度の画素群に分割し、各画素の値を多値(例えば、0〜255)によって表現したものである。なお、図9の例では、感熱発色層51に対応する領域に文字列「ABC」、「CDEFGH」、および、「IJKLMN」が配置されて画像が構成されている。図中に一部を引き出して示すように、印刷データは、横方向に配列された1行分の画素群の画素値の集合として構成され、このような1行分の画素値が画像の上から下に順番に取得されて印刷データが構成される。なお、感熱発色層51の外側の領域(画像の矩形領域から感熱発色層51の円形領域を除いた白色の領域)と、感熱発色層51の中央部の領域(感熱発色層51の中央に示される白色の領域)については、画素値が全て“0”に設定される。
【0019】
CPU10aは、ホスト100から印刷データを取得すると、ヘッド制御部10gを印刷データに応じて制御し、それぞれの画素値に応じてサーマルヘッド10hの発熱素子を発熱させる。より詳細には、例えば、各画素値に応じた時間だけ発熱素子を発熱させる。これにより、各発熱素子は、画素値に応じた熱を放出する。図9に示す印刷データの場合では、1行分の印刷データがサーマルヘッド10hに供給され、それぞれの発熱素子が、各画素値に応じて発熱する。一例として、図中に引き出して示す1行分のデータの場合には、黒で示した画素に対応する発熱素子が発熱し、それ以外の発熱素子は発熱しない状態に制御される。この結果、サーマルヘッド10hの発熱素子が当接している感熱発色層51は、発熱素子の発熱に応じて変色する。ここで、発熱素子の発熱時間を変えることにより、変色の程度を変えるとこができるので、例えば、発熱素子に対して駆動電圧を印加する時間を制御することにより、階調を表現することができる。なお、印刷実行中は、印刷が行われていることを示すために、CPU10aは、LED駆動部10iを制御してLED14を点灯状態にする。
【0020】
1行分の印刷データの印刷が完了すると、CPU10aは、モータ制御部10eに対して制御コマンドを供給して駆動モータ10fを回転駆動し、光ディスク50を1行分だけ図8に示す矢印の方向に搬送する。そして、1行分の搬送が完了すると、CPU10aは、次の1行分の印刷データをホスト100から受信し、サーマルヘッド10hに供給して感熱発色層51に印刷する。そして、印刷が完了すると、駆動モータ10fを回転駆動し、光ディスク50を1行分だけ図8に示す矢印の方向に搬送する。このような動作を繰り返すことにより、図9に示す画像データに対応する画像を光ディスク50の感熱発色層51に印刷する。
【0021】
このとき、光ディスク50が湾曲している場合であっても、図5に示すように、搬送ローラ21、サーマルヘッド10h、および、搬送ローラ23によって形成される基準平面に対して、プラテンローラ25が光ディスク50を押圧するので、光ディスク50の反りが矯正される。この結果、光ディスク50の感熱発色層51と、サーマルヘッド10hとの接触が常に一定に保たれるので、感熱発色層51とサーマルヘッド10hとの間に隙間が生じ、発熱素子の熱が感熱発色層51に十分に伝達されないことに起因する印刷ムラが生じることを防止できる。
【0022】
そして、全ての印刷データの印刷が終了すると、CPU10aは、モータ制御部10eに制御コマンドを供給し、駆動モータ10fを駆動して、光ディスク50を排出させるとともに、LED駆動部10iを制御して、LED14を消灯状態にする。この結果、ホスト100から送信された印刷データを光ディスク50の感熱発色層51に印刷することができる。
【0023】
以上に説明したように、本発明の実施形態によれば、感熱発色層51を有する光ディスク50に対して、サーマルヘッド10hによって画像を印刷するようにした。サーマルヘッド10hは、複数の発熱素子によって構成されるとともに、これらの発熱素子は同時に発熱させることが可能であるので、レーザ光によって印刷する場合に比較して高速に印刷することが可能になる。また、本実施形態では、感熱発色層51の直径と略同じ長さを有するサーマルヘッド10hを用いて印刷を行うようにしたので、1回の搬送動作によって印刷を実行できることから、印刷に要する時間を短縮できる。
【0024】
また、レーザ光で印刷する場合は、レーザダイオードを発光させるか否かによって情報の書き込みを行うことから、基本的には画素は2階調によって表現される。一方、発熱素子の場合には、発熱量を制御することによって、2階調以上の階調表現が可能となるため、表現力を向上させることが可能となる。また、階調数が増えることにより、解像度が低くても、表現力を落とさないようにすることができる。さらに、レーザ光の場合には、感熱発色層51の非常に狭い領域に対して熱を直接印加して変色させるが、サーマルヘッド10hの場合には伝導熱によって変色させるので、変色部分の境界がレーザ光ほどは明確とはならないことから、粒状感の少ない画像を得ることができる。
【0025】
また、搬送ローラ21、サーマルヘッド10h、および、搬送ローラ23によって形成される基準平面に対して、プラテンローラ25によって光ディスク50を押圧することにより、サーマルヘッド10hと光ディスク50の感熱発色層51との確実な接触を確保することができるので、光ディスク50が反りを有している場合であっても、印刷ムラを生じることなく、画像を印刷することができる。
【0026】
(C)変形実施の態様
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能であることは勿論である。
例えば、以上の実施形態では、光ディスク印刷装置10の外観としては、CDまたはDVDドライブ装置と同様の外観構成を有するようにしたが、例えば、通常のプリンタと同様の外観構成を有するようにしてもよい。
【0027】
また、以上の実施形態では、光ディスク50を光ディスク印刷装置10に直接挿入するようにしたが、例えば、ディスクトレイに光ディスク50を載置し、当該ディスクトレイごと光ディスク印刷装置10に挿入して印刷を行うようにしてもよい。なお、その場合、プラテンローラ25によってディスクトレイを付勢し、光ディスク50をサーマルヘッド10hに押圧することにより、光ディスク50の反りを矯正することができる。
【0028】
また、以上の実施形態では、光ディスク50は、搬送ローラ21,23によって搬送される構成としたが、例えば、光ディスク50が左右方向(搬送方向に直交する方向)に対してぶれが生じることを防止するためのガイド部材を光ディスク50が搬送される経路の左右に設け、当該ガイドに沿って搬送されるようにしてもよい。また、左右方向のみならず、上下方向のガイド部材を設けて、光ディスク50の上下方向のぶれが発生することを防止するようにしてもよい。また、搬送ローラ21のみならず、プラテンローラ25からも駆動力を与えて、光ディスク50を搬送するようにしてもよい。すなわち、駆動モータ10fの回転力をプラテンローラ25にも印加するようにしてもよい。さらに、以上の実施形態では、光ディスク50を一旦取り込んでから、排出する際に印刷を行うようにしたが、取り込む際に印刷を行うようにしてもよい。
【0029】
また、以上の実施形態では、各画素は多値(256階調)による階調表現を可能としたが、例えば、画素拡散技術(ディザ法または誤差拡散法等)を利用して、少ない階調値(例えば、2値)によって階調表現するようにすることも可能である。そのような実施の形態によれば、画素拡散処理が必要になることから、画像処理に時間を要するものの、少ない階調値による印刷が実行されることから、サーマルヘッド10hの駆動を簡易化することができる。
【0030】
また、以上の実施形態では、図6に示すように、サーマルヘッド10hは、光ディスク50の直径と略同じ長さを有する場合を例に挙げて説明を行ったが、例えば、図10に示すように、光ディスク50の直径よりも短い長さを有するサーマルヘッド10haを用いて、搬送動作を往復して繰り返すことにより、印刷を行うようにしてもよい。図10の例では、サーマルヘッド10haは、光ディスク50の感熱発色層51の略半分の長さとされており、搬送動作を1往復繰り返すことにより、感熱発色層51全面の印刷を行うことができる。なお、直径の半分以下の長さのサーマルヘッド10hを使用し、1往復以上の搬送によって全面の印刷を可能としてもよい。また、サーマルヘッド10hを往復動作させる場合に、サーマルヘッド10hのつなぎ目において、画像が不連続になることを防止するために、画像の一部を重複して印刷するとともに、当該重複部分をインタレース処理によって、1列置きに交互に印刷したり、重複部分の発熱量を半分に設定し、2回の印刷によって所望の濃度の画素を印刷したりしてもよい。そのような方法によれば、複数回の搬送動作によって印刷する場合であっても、画像の重なった部分が不連続状態になることを防止できる。
【0031】
また、感熱発色層51を有する光ディスク50の具体例としては、例えば、ライトスクライブ(Light Scribe(登録商標))ディスクや、レーベルフラッシュ(Label Flash(登録商標))ディスクを使用することができる。あるいは、以上のような既存のディスクではなく、例えば、感熱紙に塗布されている、熱せられると化学反応を起こして発色する発色剤を、ラベル面に塗布して生成された光ディスクを用いることも可能である。
【0032】
また、以上の実施形態では、サーマルヘッド10hの発熱素子が1列だけの構成としたが、2列以上の構成として、それぞれの列の発熱素子が互い違いに配置される構成としてもよい。そのような構成によれば、印刷される画像の解像度を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の光ディスク印刷装置の外観図である。
【図2】図1に示す光ディスクの断面図である。
【図3】図1に示す光ディスク印刷装置の断面図である。
【図4】図1に示す光ディスク印刷装置の内部構成を示す図である。
【図5】搬送ローラとサーマルヘッドとプラテンローラの関係を示す図である。
【図6】サーマルヘッドと光ディスクの関係を示す図である。
【図7】図1に示す光ディスク印刷装置の制御部の構成例を示す図である。
【図8】搬送ローラとサーマルヘッドとプラテンローラの関係を示す図である。
【図9】印刷データについて説明する図である。
【図10】本発明の他の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
10…光ディスク印刷装置、10a…CPU、10b…ROM、10c…RAM、10d…センサ、10e…モータ制御部、10f…駆動モータ、10g…ヘッド制御部、10h…サーマルヘッド、10i…LED駆動部、10j…I/F、11…筐体、12…フロントパネル、13…挿入口、14…LED、21,23…搬送ローラ、22,24…従動ローラ、25…プラテンローラ、26…駆動ベルト、27〜29…ギア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクのラベル層に当接して回転することにより前記光ディスクを直径方向に搬送する平行して架設された2つの搬送ローラと、
前記2つの搬送ローラの間に設けられ、前記搬送ローラによる搬送方向と直交する方向に所定の間隔で配列された複数の発熱素子を有し、前記光ディスクの前記ラベル層に前記発熱素子により熱を印加して所望の情報を書き込むサーマルヘッドと、
前記光ディスクを挟んで前記サーマルヘッドと対向する位置に配置され、前記光ディスクを前記サーマルヘッドに押圧するとともに、前記2つの搬送ローラおよび前記サーマルヘッドの当接面に対して前記光ディスクを押圧することにより前記光ディスクの反りを矯正するプラテンローラと、
前記サーマルヘッドの前記発熱素子の発熱状態を制御するとともに、前記2つの搬送ローラを制御して前記光ディスクに所望の情報を書き込む制御を行う制御手段と、
を有することを特徴とする光ディスク印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク印刷装置において、
前記サーマルヘッドの前記発熱素子は前記ラベル層の直径と略等しい長さの範囲に配列されており、
前記制御手段は、前記2つの搬送ローラを駆動し、前記光ディスクを直径方向に一方から他方に搬送する1回の搬送動作によって前記ラベル層に所望の情報を書き込む制御を行う、
ことを特徴とする光ディスク印刷装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光ディスク印刷装置において、
前記サーマルヘッドの前記発熱素子は前記ラベル層の直径よりも短い長さの範囲に配列されており、
前記制御手段は、前記2つの搬送ローラを駆動し、前記光ディスクを直径方向に一方から他方に搬送する搬送動作を所定回数往復して実行することにより、前記ラベル層に所望の情報を書き込む制御を行う、
ことを特徴とする光ディスク印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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