説明

光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物及びそれを用いた光ディスク

【課題】 ポリカーボネート、アルミニウム、銀合金、金、シリコン等多くの表面に高い接着力を有し、高温高湿環境下に長時間放置した前後における接着力の低下が少なく、耐久性に優れる光ディスクに使用される紫外線硬化型組成物を提供する。
【解決手段】 ラジカル重合性化合物及び重合開始剤を含有する光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物であって、前記ラジカル重合性化合物が式(1)


(式中、R1は分岐鎖を有していても良い炭素数2〜16のアルキレン基、R2は水素原子又はメチル基、Xは、構造中に酸素原子、硫黄原子又は芳香環を有していても良い炭素数2〜40の有機基を表し、nは1〜10の整数である。)で表される化合物を含有することを特徴とする光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物、並びに基板上に情報読み取り用のレーザー光を反射するための反射膜を備え、更にその反射膜上に活性エネルギー線硬化型組成物の硬化膜からなる保護層を備えた光ディスク及び少なくとも1枚の光ディスク用基板に情報読み取り用のレーザー光を反射するための反射膜を備えた2枚の基板を活性エネルギー線硬化型組成物の硬化膜により貼り合わせた貼り合わせ型の光ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクには種々のタイプがある。例えば、基板上に形成された情報記録層上に該記録層を保護するための活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化膜が形成された光ディスクや、少なくとも1枚の光ディスク用基板に情報記録層が形成された2枚の基板を活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化膜により貼り合わせた貼り合わせ型の光ディスクがある。
情報記録層とは、ポリカーボネート等の合成樹脂からなる光ディスク用基板上に形成した、ピットと称する凹凸、相変化材料又は色素等からなる層と、その上に形成された情報読み取り用のレーザー光を反射するための半透明反射膜又は完全反射膜とからなる積層体である。半透明反射膜及び完全反射膜は情報記録層の最上部に形成される層であり、一般的には金属又は金属合金の薄膜からなる層である。
【0003】
貼り合わせ型の光ディスクの代表例としては、DVD(ディジタルバーサタイルディスク又はディジタルビデオディスク)がある。中でも再生専用型のDVDにおいては、種々のタイプが存在する。例えば、「DVD−10」と称する光ディスクは、基板の片面に記録情報に対応するピットと称する凹凸を設け、その上に情報読み取り用のレーザー光を反射するための層として、例えばアルミニウムの層を形成した光ディスク用ポリカーボネート基板を2枚用意して、それらをアルミニウムの層を接着面として貼り合わせたものである。「DVD−5」は、「DVD−10」を製造するための前記基板と、情報記録層を設けていない通常の透明なポリカーボネート基板とを貼り合わせたものである。また、「DVD−9」は、基板の片面に設けたピット上にアルミニウムの反射膜を形成した基板と、基板の片面に設けたピット上に金又は金を主成分とする合金、銀又は銀を主成分とする合金或いはケイ素化合物等からなる半透明反射膜を形成した基板とを、反射膜同士を接着面として貼り合わせたものである。更に、「DVD−18」は、片面に2層の情報記録層を有する基板を2枚貼り合わせた構造のものである。現在では記録容量が大きく片面から2層の情報を読み取れる「DVD−9」が主流になっている。
【0004】
このDVD−9等の半透明反射膜としては、金またはケイ素化合物が主として使用されている。しかし、金は材料の値段が非常に高くコスト面で不利であり、またケイ素化合物は成膜が非常に困難であるという欠点がある。そこで、金と比較して低コストであり成膜も容易であることから銀または銀を主成分とする合金への置き換えが盛んに検討されている。
【0005】
さらに、DVDは再生専用型と記録型に大別でき、記録型のDVDにおいては、追記型のDVD−R、DVD+Rと呼ばれる方式と書き換え型のDVD−RW、DVD+RW、DVD−RAMと呼ばれる方式がある。これらのDVDの内、追記型のDVD−R、DVD+Rと呼ばれるDVDは、他のDVDとは異なり、記録層に有機色素を用いるという特徴を持つ。追記型光ディスクは、透明基板上に、レーザー光の照射によって不可逆的に光学特性が変化したり凹凸形状が形成されたりすることによって記録層が形成される。この記録層としては、例えばレーザー光の照射による加熱で分解し、その光学定数が変化すると共に、体積変化によって基板の変形を生じさせるシアニン系、フタロシアニン系、アゾ系の有機色素等が用いられる。
【0006】
こうした多くの方式が開発されているが、次々に開発される種々の記録方式を用いた光ディスクには、情報記録層に記録された信号が安定して読み取れること、信号の読み取りエラーの発生が極力抑えられていることが共通して求められている。しかし、銀または銀を主成分とする合金からなる反射膜は本質的に耐光性が劣り、かつ高温高湿条件下では腐食しやすく耐久性も劣る等の問題があった。詳しくは、従来の接着剤を使用した銀または銀を主成分とする合金を反射膜として使用した光ディスクを高温高湿環境下に長時間曝露した場合、その接着剤の影響により銀または銀を主成分とする合金の表面が変質して、信号の読み取りエラーの増加や外観不良などが生じ、当該光ディスクの耐久性を著しく低下させるという問題である。
【0007】
このように光ディスクの特性は、情報記録層上に設けられる樹脂層を形成するための活性エネルギー線硬化型組成物の特性により大きく影響される。特に、化学的に周囲の状況により影響を受け易い銀又は銀を主成分とする合金の反射膜を用いた光ディスクにおいては、該反射膜に接する樹脂層を形成するための光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物に使用する原料は慎重に選択されなければならない。
【0008】
銀又は銀合金からなる全反射膜または半透明反射膜を有する光ディスクを貼り合せる為の紫外線硬化型樹脂組成物として、エピビス型エポキシ樹脂のε−カプロラクトン変性(メタ)アクリレート付加物と2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンを含有する光ディスク貼り合わせ用紫外線硬化型樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。当該技術には、銀又は銀合金からなる半透明反射膜を備えた光ディスクを製造する際に当該紫外線硬化型樹脂組成物を使用すると、該光ディスクの耐久性を金の半透明反射膜を有する従来の光ディスクと同等にすることができ、更に、耐光性を向上させることができるだけでなく高い接着力が得られると記載されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された組成物を使用した光ディスクであっても上記の諸特性を十分に満足する光ディスクを得ることは困難であり、特に高温高湿環境下に長時間放置した後の接着力の低下が認められた。
【0010】
【特許文献1】特開2003−248972号公報(特許請求の範囲、第14段落、実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、高温高湿環境下に長時間放置した場合であっても、信号の読み取りエラーの増加、及び接着力の低下を抑えた、耐久性及び接着性の優れた光ディスクを製造することが可能な光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物を提供することにある。特に、本発明の他の目的は、銀又は銀を主成分とする合金からなる反射膜を備えた光ディスクを製造する上で、上記諸課題を克服した光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するため、種々のエポキシ樹脂から誘導される(メタ)アクリレート化合物(エポキシアクリレート)を検討した。その結果、特定の構造を有するエポキシアクリレートを使用した光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物が上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
即ち、本発明は、ラジカル重合性化合物及び重合開始剤を含有する光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物であって、前記ラジカル重合性化合物が式(1)
【0014】
【化1】

(式中、R1は分岐鎖を有していても良い炭素数2〜16のアルキレン基、R2は水素原子又はメチル基、Xは、構造中に酸素原子、硫黄原子又は芳香環を有していても良い炭素数2〜40の有機基を表し、nは1〜10の整数である。)で表される化合物であることを特徴とする光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、基板1上に情報読み取り用のレーザー光を反射するための反射膜1を備え、更に前記反射膜1上に活性エネルギー線硬化型組成物の硬化皮膜からなる樹脂層を備えた光ディスクであって、前記活性エネルギー線硬化型組成物が上記の光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物であることを特徴とする光ディスクを提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物を使用した光ディスクは、耐光性、耐久性に優れ、かつ接着剤層の接着力が高いため機械的強度に優れている。本発明の光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物は、特に、銀又は銀を主成分とする合金からなる反射膜を備えた光ディスクを製造するための組成物として優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物は、前記式(1)で表されるエポキシアクリレートを含有する。なお、本明細書中で反射膜とは、情報読み取り用のレーザー光を反射するための半透明反射膜又は該レーザー光を実質的に透過しない完全反射膜のことであり、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸のことであり、アクリル酸又はメタクリル酸の誘導体についても同様である。
【0018】
前記式(1)中、R1は分岐鎖を有していても良い炭素数2〜16のアルキレン基、R2は水素原子又はメチル基、Xは、構造中に酸素原子、硫黄原子又は芳香環を有していても良い炭素数2〜40の有機基を表し、nは1〜10の整数である。中でも、下記式(2)で表される化合物であることがより好ましい。
【0019】
【化2】

(式中、Yは-SO2-、-CH2-、-CH(CH3)-又は-C(CH3)2-を表し、Zは式(3)
【0020】
【化3】

(式中、R2は水素原子又はメチル基を表し、nは1〜10の整数である。)で表される基であり、mは0又は1以上の整数を表す。)
【0021】
エポキシアクリレート樹脂の重量平均分子量(Mw)は900〜8000であることが好ましく、1200〜3000であることがより好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率(Mw/Mn)は、1.3〜2.8であることが好ましく、1.4〜2.0であることがより好ましい。重量平均分子量(Mw)及び(Mw/Mn)が上記範囲であるとエポキシアクリレート樹脂の粘度が低く、紫外線硬化型組成物としてのエポキシアクリレート樹脂(オリゴマー)の濃度を高くできるため、不飽和二重結合濃度を下げる事が出来、その結果、硬化塗膜の硬化収縮による歪みが減少するため、好ましい。
【0022】
本発明の光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物中には、式(1)で表されるエポキシアクリレートを活性エネルギー線硬化型組成物全体に対して10〜70質量%含有することが好ましく、20〜60質量%含有することが特に好ましい。また、活性エネルギー線硬化型組成物中には公知の光重合開始剤、及び熱重合開始剤等を用いる事が出来る。
【0023】
本発明に使用できる公知の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン及び2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等の分子開裂型や、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド等の水素引き抜き型の光重合開始剤等がある。
【0024】
本発明で使用するラジカル重合性化合物としては、例えば、単官能(メタ)アクリレートとして、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチルー2−エチルー1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキルエーテル(メタ)ポリアクリレート類、;ノルボルナンジメタノールジアクリレート、ノルボルナンジエタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジエタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジエタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジメタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジエタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート等の脂環構造を有するモノマー類、;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−アクリロイルオキシプロピル)ヒドロキシプロピルイソシアヌレート、ビス(2−アクリロイルオキシブチル)ヒドロキシブチルイソシアヌレート、ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−メタクリロイルオキシプロピル)ヒドロキシプロピルイソシアヌレート、ビス(2−メタクリロイルオキシブチル)ヒドロキシブチルイソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシブチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロイルオキシブチル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート構造を有するモノマー類、;ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、ビニルエーテルモノマー等を挙げることができ、前記ラジカル重合性不飽和モノマーの1種もしくは2種以上を用いることができる。
【0026】
また、オリゴマーとしては、例えば、ポリエーテル骨格のウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル骨格のウレタン(メタ)アクリレート、ポリカーボネート骨格のウレタン(メタ)アクリレートなどのポリウレタン(メタ)アクリレート或いは、ポリエステル骨格のポリオールに(メタ)アクリル酸をエステル化したポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル骨格のポリオールに(メタ)アクリル酸をエステル化したポリエーテル(メタ)アクリレート等の活性エネルギー線硬化性オリゴマーの1種もしくは2種以上を用いる事が出来る。
【0027】
中でも、本発明の光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物としては、ポリエーテル骨格のウレタン(メタ)アクリレートを用いるのが好ましく、特に、(i)ポリアルキレングリコールと(ii)ジイソシアネート化合物と(iii)式(4)で表される化合物を反応させて得られるウレタンアクリレートを用いることが好ましい。ポリエーテル骨格のウレタン(メタ)アクリレートを用いることにより、高温高湿環境下に長時間放置した場合における耐久性が向上し、信号の読み取りエラーの増加を極力抑えることができる。ポリエーテル骨格のウレタン(メタ)アクリレートは、光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物全体に対して、10〜30質量%使用するのが好ましい。
【0028】
【化4】

(式中、R2は水素原子又はメチル基を表し、R3は分岐鎖を有していても良い炭素数2〜8のアルキレン基を表す。)
【0029】
ポリエーテル骨格のウレタン(メタ)アクリレートを製造するための(i)ポリアルキレングリコールとしては、数平均分子量が50〜4000のHO-(R-O)n-H(式中、Rは分岐鎖を有していてもよい炭素数2〜24のアルキレン基を表し、nは1以上の整数を表す。)で表される化合物を用いることが好ましい。中でも、Rが分岐鎖を有していてもよい炭素数2〜8のアルキレン基であり、nが2以上の化合物であることが好ましい。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、2−エチルへキシレングリコール等が好ましく、ポリテトラメチレングリコールが特に好ましい。また、数平均分子量は50〜2000であることがより好ましく、200〜900であることが特に好ましい。なお、HO-(R-O)n-Hで表される化合物の数平均分子量は、末端基定量法により求めた数平均分子量である。
末端基定量法によって算出される数平均分子量はJIS K 1577に記載された方法により水酸基価を測定し、以下の計算式で求めた値である。
数平均分子量=1分子中に存在する水酸基の個数×56.11×1000×1/水酸基価
=2×56110×1/水酸基価
【0030】
(ii)ジイソシアネート化合物としては公知の化合物を使用することができる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等が使用できる。中でも、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートを用いることが好ましく、2,4−トリレンジイソシアネートを用いることが最も好ましい。
【0031】
(iii)式(4)で表される化合物としては公知の化合物を使用することができる。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリε−カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が使用できる。中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを用いることが最も好ましい。
【0032】
本発明の光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物には、更に、下記式(5)で表される化合物を含有することが好ましい。式(5)で表される化合物を使用することにより、本発明の光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物を使用した光ディスクの耐光性がより向上する。特に、蛍光灯に曝露された場合の耐光性の向上が顕著である。
【0033】
【化5】

(式中、R4、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ独立的に、(i)水素原子、(ii)ハロゲン原子、(iii)水酸基、(iv)炭素数1〜8のアルコキシル基、(v)カルボキシル基、(vi)式(6)
【0034】
【化6】

(式中、R9は、ハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜20のアルキル基又はハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜20のアルケニル基を表す。)で表される基、或いは(vii)置換基としてカルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシル基又はアルコキシル基を有していても良い炭素数1〜24のアルキル基若しくはアルケニル基を表すが、R4、R5、R6、R7及びR8の中の少なくともひとつは水酸基である。)
【0035】
前記式(5)で表される化合物としては種々の構造の化合物があるが、中でも下記式(7)、式(8)、式(9)及び式(10)で表される化合物が好ましい。
【0036】
【化7】

(式中、R10は、水素原子、ハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜20のアルキル基又はハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜20のアルケニル基を表す。)
式(8)、
【0037】
【化8】

(式中、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立的に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルコキシル基、置換基として-COOH、-COOR15、-OCOR16又は-OR17を有していても良い炭素数1〜24のアルキル基、或いは置換基として-COOH、-COOR15、-OCOR16又は-OR17を有していても良い炭素数1〜24のアルケニル基を表す(式中、R15、R16、及びR17はそれぞれ独立的に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数1〜8のアルケニル基を表す。)。)
式(9)
【0038】
【化9】

(式中、R18、R19、R20及びR21はそれぞれ独立的に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルコキシル基、置換基として-COOH、-COOR15、-OCOR16又は-OR17を有していても良い炭素数1〜24のアルキル基、或いは置換基として-COOH、-COOR15、-OCOR16又は-OR17を有していても良い炭素数1〜24のアルケニル基を表す(式中、R15、R16、及びR17はそれぞれ独立的に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数1〜8のアルケニル基を表す。)。)
又は式(10)
【0039】
【化10】

(式中、R22、R23、R24及びR25はそれぞれ独立的に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルコキシル基、置換基として-COOH、-COOR15、-OCOR16又は-OR17を有していても良い炭素数1〜24のアルキル基、或いは置換基として-COOH、-COOR15、-OCOR16又は-OR17を有していても良い炭素数1〜24のアルケニル基を表す(式中、R15、R16、及びR17はそれぞれ独立的に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数1〜8のアルケニル基を表す。)。)
【0040】
上記式(7)におけるアルキル基及びアルケニル基は分岐状又は直鎖状であって良く、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であることが好ましい。中でも、R20は水素原子、又は無置換の炭素数1〜20の分岐鎖を有していてもよいアルキル基であることが好ましく、水素原子、又は無置換の炭素数1〜8の分岐鎖を有していてもよいアルキル基であることがより好ましい。更に、水素原子、又は無置換の炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましい
【0041】
上記式(7)で表される没食子酸エステルとしては、具体的には、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸イソプロピル、没食子酸イソペンチル、没食子酸オクチル、没食子酸ドデシル、没食子酸テトラデシル、没食子酸ヘキサデシル、没食子酸オクタデシル等がある。式(7)で表される化合物としては、没食子酸を使用することが好ましい。没食子酸は、市販品として、例えば、大日本製薬(株)製が容易に入手可能である。
【0042】
式(8)中、R11、R12、R13及びR14は、具体的には、(i)水素原子、(ii)フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子等のハロゲン原子、(iii)メトキシ、エトキシ、ブトキシ、オクチロキシ等のアルコキシル基、(iv)メチル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ラウリル又はオクタデシル等のアルキル基、(v)エテニル、プロペニル又は2−ブテニル等のアルケニル基、(vi)4−カルボキシブチル、2−メトキシカルボニルエチル、メトキシメチル、エトキシメチル等が挙げられる。
【0043】
式(8)で表される化合物中で好ましいのは、カテコール、3−sec−ブチルカテコール、3−tert−ブチルカテコール、4−sec−ブチルカテコール、4−tert−ブチルカテコール、3,5−ジ−tert−ブチルカテコール、3−sec−ブチル−4−tert−ブチルカテコール、3−tert−ブチル−5−sec−ブチルカテコール、4−オクチルカテコール及び4−ステアリルカテコールであり、より好ましいのは、カテコール及び4−tert−ブチルカテコールである。特に4−tert−ブチルカテコールを使用することが好ましい。4−tert−ブチルカテコールの市販品としては、例えば、大日本インキ化学工業(株)製DIC TBC−5Pがある。
【0044】
式(9)中のR18、R19、R20及びR21、及び、式(10)中のR22、R23、R24及びR25は、具体的には、水素原子、メチル基、プロピル基、ヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、iso-ヘキシル基、tert-オクチル基等が挙げられる。
【0045】
式(9)で表される化合物の中で好ましいのは、ハイドロキノン、2−ヒドロキシハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン又は2,5−ビス(1,1−ジメチルブチル)ハイドロキノンである。また、式(8)で表される化合物中で好ましいのは、レソルシノール(benzene-1,3-diol)、オルシノール(5-methylbenzene-1,3-diol)である。式(9)で表される化合物の中でもハイドロキノン(benzene-1,4-diol)、2−ヒドロキシハイドロキノン(benzene-1,2,4-triol)を使用することがより好ましい。また、式(5)で表される化合物として、本発明で使用することが好ましいその他の化合物としてはピロガロール(1,2,3-trihydroxybenzene)がある。
【0046】
上記式(7)〜式(10)で表される化合物の中で、式(7)で表される没食子酸又は没食子酸エステル及び式(9)で表されるハイドロキノン系化合物は、高温高湿環境下における耐久性を特に向上させることができ、式(5)で表される化合物の中でも特に好ましい化合物である。また、式(5)で表される化合物の中では没食子酸が最も好ましい化合物である。
【0047】
式(5)で表される化合物の活性エネルギー線硬化型組成物中への添加量としては、活性エネルギー線硬化型組成物全体に対して、0.05〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。0.3〜7質量%であることが更に好ましく、1〜5質量部であることが特に好ましい。
【0048】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、必要に応じて、添加剤として、界面活性剤、レベリング剤、熱重合禁止剤、ヒンダードフェノール、ホスファイト等の酸化防止剤、ヒンダードアミン等の光安定剤を使用することもできる。また、増感剤として、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミン及び4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が使用でき、更に、前記の光重合性化合物と付加反応を起こさないアミン類を併用することもできる。
【0049】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、上記の原料にて製造することができるが、活性エネルギー線を照射した後の硬化膜の弾性率が、30〜3500MPa(25℃)となるように調整することが好ましい。中でも30〜1600MPaとなる組成であることがより好ましい。弾性率がこの範囲となる組成であると、硬化時の歪みが緩和され易く、高温高湿環境下に長時間曝されても接着力の低下が少なく光ディスクの機械的強度を高めることが容易である。
【0050】
本発明の光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物を使用した光ディスクは、例えば、第1の基板上に情報読み取り用のレーザー光を反射するための第1の反射膜を備え、更に該第1の反射膜上に上記活性エネルギー線硬化型組成物の硬化膜からなる樹脂層を備えた構造を有する光ディスクである。本発明の光ディスクは、このような構造の光ディスク、或いはこのような構造を部分的に有する光ディスクである。そのような光ディスクとしては、例えば、銀又は銀を主成分とする合金の薄膜を光反射層とし、該光反射層上に保護層として活性エネルギー線硬化型組成物の硬化膜からなる樹脂層を備えたCD−ROM又はCD−R等がある。また、例えば、銀又は銀を主成分とする合金の薄膜からなる光反射層を有する基板を、該光反射層を接着面として活性エネルギー線硬化型組成物により他の基板と貼り合わせたDVD−5がある。
【0051】
また、本発明の光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物を使用した光ディスクは、前記第1の反射膜上に設けた上記活性エネルギー線硬化型組成物の硬化膜からなる樹脂層上に、更に、情報読み取り用のレーザー光を反射するための第2の反射膜を備えた第2の基板が、前記樹脂層と前記第2の反射膜とが接するように、前記樹脂層上に設けられた構造の光ディスクであっても良い。このような構造の光ディスクとしては、情報読み取り用のレーザー光を反射するための反射膜を備えた2枚の光ディスク用基板の少なくとも一方の基板が、その表面に、例えば銀又は銀を主成分とする合金からなる反射膜を有し、2枚の基板の反射膜同士を接着面として前記2枚の光ディスク用基板を貼り合わせたDVD−9、DVD−18、DVD−10等の貼り合わせ型の光ディスクがある。
【0052】
光ディスク用基板としては、光ディスク用基板として通常用いられるものが使用でき、特にポリカーボネート基板を好適に用いることができる。また、情報読み取り用のレーザー光を反射するための反射膜としては、種々の材料を使用することができる。例えば、アルミニウム、金、金合金、銀、銀合金、ケイ素化合物、等が使用可能である。中でも、本発明の光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物を使用した光ディスクとしては銀又は銀を主成分とする合金を使用することが好ましい。光ディスクに用いられる「銀を主成分とする合金」としては、例えば、米国特許第6007889号公報に記載されている銀と金の比率(AgAu)が以下の比率である銀合金があげられる。
0.9<x<0.999
0.001≦≦0.10
【0053】
光ディスクのタイプは、好ましくは再生専用型DVDである「DVD−5」、「DVD−10」、「DVD−9」及び「DVD−18」、書き込み可能型のDVD−R、DVD+R、書き換え可能型のDVD−RW、DVD+RW、DVD−RAM等のDVDであり、特に好ましくは「DVD−9」及び「DVD−18」である。
【0054】
また、本発明の光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物を使用した光ディスクはこれらには限定されず、例えば、厚さ約1.1mmの光ディスク用基板の、例えば銀又は銀を主成分とする合金の薄膜上に、該組成物の硬化膜による、厚さ約0.1mm程度の保護層又はカバー層又は光透過層を形成したもの、すなわち、情報読み書き用のレーザー光として青紫色レーザー光に適したタイプのものであっても良いし、DVDと同様の厚さ0.6mmの基板を2枚貼り合わせた構造を有するSACD(スーパーオーディオCD)であっても良い。
【0055】
以下に、「DVD−5」、「DVD−10」、「DVD−9」及び「DVD−18」を製造する場合の例を記載する。本発明の光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物を使用した光ディスクの例としてはこれらに限定されるものではない。また、下記製造例で使用する活性エネルギー線硬化型組成物は、本発明で使用する上記式(1)で表される化合物を含有した活性エネルギー線硬化型組成物を意味する。
【0056】
(DVD−9の製造)
記録情報を担うピットと称する凹凸の上に40〜60nmの金属薄膜(第2の反射膜)が積層された光ディスク用基板(A:第2の基板)1枚と、記録情報を担うピットと称する凹凸の上に10〜30nmの銀又は銀を主成分とする合金の半透明反射膜(半透明反射膜:第1の反射膜)が積層された光ディスク用基板(B:第1の基板)1枚を用意する。
【0057】
なお、前記第2の反射膜としては、例えばアルミニウムを主成分とするものや銀又は銀を主成分とする合金を使用することができる。また、前記光ディスク用基板としては、光ディスク用基板として公知のものが使用できる。例えば、アモルファスポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等が挙げられるが、特にポリカーボネート基板を使用することが好ましい。
【0058】
次いで、活性エネルギー線硬化型組成物を前記基板(A:第2の基板)の金属薄膜(第2の反射膜)上に塗布し、更に、半透明反射膜(第1の反射膜)が積層された前記基板(B:第1の基板)を、半透明反射膜(第1の反射膜)の膜面が接着面となるように、金属薄膜(第2の反射膜)面に塗布された活性エネルギー線硬化型組成物を介して基板(A:第2の基板)と貼り合わせ、この貼り合わせた2枚の基板の片面又は両面から紫外線を照射して、両者を接着させ「DVD−9」とする。
【0059】
(DVD−18の製造)
更に、前記のDVD−9を製造した後に、基板(A:第2の基板)上に形成された金属薄膜(第2の反射膜)を基板(B:第1の基板)側に残したまま、基板(A:第2の基板)のみを剥離することにより、基板(B:第1の基板)/半透明反射膜(第1の反射膜)/活性エネルギー線硬化型組成物の硬化膜/金属薄膜(第2の反射膜)が順次積層されたディスク中間体を作製する。そのようなディスク中間体を2枚用意する。次いで、この2枚のディスク中間体の金属薄膜(第1の反射膜)を接着面として、それらが対向するように接着することにより「DVD−18」が得られる。
【0060】
(DVD−10の製造)
記録情報を担うピットと称する凹凸の上に、銀又は銀を主成分とする合金による40〜60nmの反射膜が積層された光ディスク用第2の基板枚(C1:第1の基板)及び(C2:第2の基板)を用意する。片方の基板(C1:第1の基板)の反射膜(第1の反射膜)上に活性エネルギー線硬化型組成物を塗布し、もう片方の基板(C2:第2の基板)を反射膜(第2の反射膜)の膜面が接着面となるように、基板(C1:第1の基板)の反射膜(第1の反射膜)面に塗布された前記組成物を介して基板(C1:第1の基板)と貼り合わせ、この貼り合わせた2枚の基板の片面又は両面から紫外線を照射して、両者を接着させ「DVD−10」とする。
【0061】
(DVD−5の製造)
記録情報を担うピットと称する凹凸の上に、銀又は銀を主成分とする合金による40〜60nmの第1の反射膜が積層された光ディスク用基板(D:第1の基板)を用意する。別に、ピットを有さない光ディスク用基板(E)を用意する。基板(D:第1の基板)の前記第1の反射膜上に活性エネルギー線硬化型組成物を塗布し、該組成物を介して基板(D:第1の基板)と基板(E)を貼り合わせ、この貼り合わせた2枚の基板の片面又は両面から紫外線を照射して、両者を接着させ「DVD−5」とする。
【0062】
紫外線照射にあたっては、例えばメタルハライドランプ、高圧水銀灯などを用いた連続光照射方式で行うこともできるし、米国特許第5904795号公報記載の閃光照射方式で行うこともできる。効率よく硬化出来る点で閃光照射方式がより好ましい。
【実施例】
【0063】
次に、合成例及び実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下実施例中の「部」は「質量部」を表す。
<合成例>
還流冷却管、及び空気導入管、温度計を備えた攪拌機付き反応器に、アロニックスM−5300(アクリル酸へε−カプロラクトン2モル付加した化合物 酸価187KOHmg/g東亜合成(株)製)を300部、メトキノン0.2部、エピクロン850(大日本インキ化学工業(株)製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量188g/当量)を188部、トリフェニルホスフィン1部加えて、95〜100℃で5時間反応して化合物(A)を得た。酸価0.8KOHmg/g、GPC測定分子量は、数平均分子量(Mn)889,重量平均分子量(Mw)1352,分散度(Mw/Mn)は1.52であった。
【0064】
<紫外線硬化型樹脂組成物の製造>
下記表1に示した組成により配合した各組成物を60℃で3時間加熱、溶解して、実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例6の各実施例及び比較例の紫外線硬化型樹脂組成物を調製した。表1に組成を示す。
【0065】
【表1】

【0066】
表1中の化合物は以下の通り。
EB3708:Ebecry 3708 ダイセルUCB(株)製 2−ヒドロキシエチルアクリレートがカプロラクトンに付加した構造を分子末端に有し、且つビスフェノールAのジグリシジルエーテルのグリシジル基が開環した構造を主骨格として有するエポキシアクリレート
V-5810:大日本インキ化学工業(株) ビスフェノールA型エポキシ樹脂のグリシジル基に直接アクリル酸が付加した構造のエポキシアクリレート
FAU-742TP:大日本インキ化学工業(株) (i)ポリアルキレングリコールと(ii)ジイソシアネート化合物と(iii)ヒドロキシエチルアクリレートを反応させたポリエーテルウレタンアクリレート
BPE4-A: 第一工業製薬(株)製 エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート
DPGDA:ジプロピレングリコールジアクリレート
EO-TMPTA:エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
PHE:第一工業製薬(株)製 フェノキシエチルアクリレート
THF-A: 大阪有機化学工業(株)製 テトラヒドロフルフリルアクリレート
PM-2:日本化薬(株)製 エチレンオキシド変性リン酸ジメタクリレート
Irg. 651:イルガキュア651 チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製
TPO:ルシリンTPO BASF(株)製
DMAEB:N-ジメチルアミノ安息香酸エチル
MQ:メトキノン
没食子酸:大日本製薬(株)製
【0067】
以上、実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例6までの紫外線硬化型組成物を用いて、下記試験方法により銀合金の半透明反射膜を備えた「DVD−9」型貼り合わせ光ディスクの高温高湿環境下における耐久性を評価した。評価結果を表2に示した。また、下記試験方法により接着力及び弾性率を評価した。評価結果を表3に示した。さらに、下記試験方法により銀合金の半透明反射膜を備えた「DVD−9」型貼り合わせ光ディスクの耐光性試験(蛍光灯曝露試験)を行った。評価結果を表4に示した。
【0068】
<「DVD−9」型貼り合わせ光ディスク作製方法>
記録情報のピットが形成され、その上にアルミニウムの薄膜が50nmの厚さで積層されたポリカーボネート製の光ディスク用基板に上記各実施例及び比較例の紫外線硬化型組成物をディスペンサで塗布し、半透明反射膜として銀を主成分とする合金が15nmの厚さで積層されたポリカーボネート製の光ディスク用基板を重ね合わせた。次いでスピンコーターで硬化塗膜の膜厚が約50〜60μmになるよう回転させた。次いで、ウシオ電機株式会社製「クセノンフラッシュ照射装置 SBC−17型」を用い、設定電圧1450Vで、銀合金半透明反射膜付きの基板側から空気中で10ショット紫外線を照射して、各組成物のDVD−9サンプルを作製した。
【0069】
<高温高湿環境下での耐久性試験>
また、前記の耐光性試験とは別に、各サンプルについて高温高湿条件下での曝露試験を行った。試験は、エスペック株式会社製「PR−2PK」を使用して、80℃85%RH96時間の高温高湿環境下での曝露試験を行った。試験前後のサンプルについて、銀合金半透明反射膜のついた情報記録層(L0と称す)のPIエラーを測定し評価した。
【0070】
<PIエラー及び反射率の測定>
PIエラー及び反射率は、Audio Development 社製 「SA−300」により測定した。またPIエラー比(試験後のエラー数/試験前のエラー数)、及び反射率の変化(%)[(試験後の反射率)-(試験前の反射率)]を計算により求め、評価した。
【0071】
PIエラーの判定の欄は、
PIエラー比が2未満である場合を◎
PIエラー比が2以上であり、5未満である場合を○
PIエラー比が5以上であり、6未満である場合を△
PIエラー比が6以上である場合を×とした。
反射率の判定の欄は
反射率の変化が3%未満である場合を○
反射率の変化が3%以上であり、5%未満である場合を△
反射率の変化が5%以上である場合を×とした。

【0072】
化合物(A)を含む紫外線硬化型樹脂で貼り合わせたDVD-9は樹脂中の配合量が増加しても従来のエポキシアクリレート(Ebecryl 3708、V-5810)と比較してPIエラーの上昇が小さく高温高湿環境での耐久性が良好であった。また、ウレタンアクリレートと併用することでPIエラーの上昇が抑えられることが判明した。
【0073】
(高温高湿試験前後の接着力の測定)
金属反射膜として銀を主成分とする合金又はアルミニウム、金、シリコン薄膜の全反射膜を有するポリカーボネート基板の該金属反射膜の面上に、表1の各紫外線硬化型組成物をスピンコーターで硬化塗膜の膜厚が約50〜60μmになるよう塗布し、告いでアイグラフィックス社製メタルハライドUVランプ120w、0.5J/cmにて該塗膜を硬化させて、接着力測定用サンプルを作製した。各サンプルについて、エスペック株式会社製「PR−2PK」を使用して、80℃85%RH24時間の高温高湿環境下で耐久試験を行った。その後、サンドペーパー#1500,#280で塗膜を全体が薄く曇る程度に軽く研磨し、水、エタノールで研磨粉を拭き取り、小西ボンド製構造用接着剤WF−731を用い10mm角の治具を研磨した面に取り付けた。テスター産業製プッシュプルゲージ(500Nフルスケール)にて基板に取り付けた治具を引っ張り、その引っ張り強度を測定し、接着力とした。
【0074】
(弾性率の測定方法)
紫外線硬化型組成物を、ガラス板上に硬化塗膜が50〜60μmになるように塗布した後、メタルハライドランプ(コールドミラー付き、ランプ出力120W/cm)を用いて窒素雰囲気中で500mJ/cmで硬化させた。この硬化塗膜の弾性率をティー・エイ・インストルメント(株)社の自動動的粘弾性測定装置で測定し、25℃における動的弾性率E’を弾性率とした。
【0075】
<耐光性試験(蛍光灯曝露試験)>
上記各サンプルについて蛍光灯下における曝露試験を実施し、耐光性を評価した。20Wの蛍光灯(三菱電気製、ネオルミスーパーFL20SSW/18(18ワット))2本を蛍光灯の中心間距離が8cmになるように同一平面上に並列させ、中央の蛍光灯から7cmの位置に光ディスクの読み取り面側(銀合金半透明反射膜側)が蛍光灯に対向するように配置して、蛍光灯の曝露試験を行った。96時間の曝露を行い、その前後の各サンプルの反射率を測定し耐光性を評価した。
【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
【表4】

【0079】
化合物(A)を含む紫外線硬化型樹脂を使用した硬化膜は樹脂中の配合量を増加した場合、金及びシリコンに対する接着力が強く、特に高温高湿環境下に放置した後、初期よりも向上することが判明した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合性化合物と重合開始剤を含有する光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物であって、前記ラジカル重合性化合物が式(1)
【化1】

(式中、R1は分岐鎖を有していても良い炭素数2〜16のアルキレン基、R2は水素原子又はメチル基、Xは、構造中に酸素原子、硫黄原子又は芳香環を有していても良い炭素数2〜40の有機基を表し、nは1〜10の整数である。)で表される化合物を含有することを特徴とする光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物が式(2)
【化2】

(式中、Yは-SO2-、-CH2-、-CH(CH3)-又は-C(CH3)2-を表し、Zは式(3)
【化3】

(式中、R2は水素原子又はメチル基を表し、nは1〜10の整数である。)
で表される基であり、mは0又は1以上の整数を表す。)で表される化合物である請求項1記載の光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項3】
更に、前記ラジカル重合性化合物が、
(i)ポリアルキレングリコール、
(ii)ジイソシアネート化合物、及び
(iii)式(4)
【化4】

(式中、R2は水素原子又はメチル基を表し、R3は分岐鎖を有していても良い炭素数2〜8のアルキレン基を表す。)で表される化合物を反応させて得られるウレタンアクリレートを含有する請求項1又は2のいずれかに記載の光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項4】
基板1上に情報読み取り用のレーザー光を反射するための反射膜1を備え、更に前記反射膜1上に活性エネルギー線硬化型組成物の硬化皮膜からなる樹脂層を備えた光ディスクであって、
前記活性エネルギー線硬化型組成物が請求項1、2又は3のいずれかに記載の光ディスク用活性エネルギー線硬化型組成物であることを特徴とする光ディスク。
【請求項5】
更に、情報読み取り用のレーザー光を反射するための反射膜2を備えた基板2が、前記樹脂層と前記反射膜2とが接するように、前記樹脂層上に設けられた請求項4記載の光ディスク。
【請求項6】
前記反射膜1が、銀又は銀を主成分とする合金からなる反射膜である請求項4又は5のいずれかに記載の光ディスク。

【公開番号】特開2006−249228(P2006−249228A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−67179(P2005−67179)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】