説明

光ディスク用紫外線硬化型組成物及び光ディスク

【課題】 高温高湿環境下における耐久性に優れ、蛍光灯などに対する耐光性に優れた光透過層を与える紫外線硬化型組成物、および耐久性、耐光性に優れた光ディスクを提供する。
【解決手段】 光ディスクの光透過層に適用する紫外線硬化型組成物であって、変性エポキシ(メタ)アクリレート、ラジカル重合性不飽和結合を二個有する(メタ)アクリレートとしてヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコール系の(メタ)アクリレートを含有し、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコール系の(メタ)アクリレートの含有量が10〜40質量%であり、重合開始剤の含有量が1〜4質量%であり、粘度が1000〜2500mPa・sの光ディスク用紫外線硬化型組成物により、高温高湿環境下における耐久性に優れ、蛍光灯などに対する耐光性に優れた光透過層を形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクの光透過層として有用な紫外線硬化型組成物及び少なくとも光反射層と光透過層とが形成され、前記光透過層を通して370nm〜430nmの範囲内に発振波長を有するブルーレーザーにより記録又は再生を行う光ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報技術や情報網の発展により大容量の情報記録の伝達が頻繁に行われるようになっている。これに伴い、大容量となる映像、音楽、コンピューターデータ等を記録及び再生出来る高密度大容量の光ディスクが要求されている。高密度記録媒体として普及しているDVD(Digital Versatile Disc)では、高密度化を達成するため、CD(Compact Disc)に比べ短波長の650nmのレーザーを用い、光学系も高開口数化している。しかし、HDTV(high definition television)に対応した高画質の映像等を記録または再生する為には更なる高密度化が必要であるため、DVDの次世代に位置する更なる高密度記録の方法及びその光ディスクの検討が行われており、DVDよりも更に短波長のブルーレーザーの光学系を用いる新しい光ディスク構造による高密度記録方式が提案されている。
【0003】
この新しい光ディスクはポリカーボネート等のプラスチックで形成される透明又は不透明の基板上に記録層を形成し、次いで記録層上に約100μmの光透過層を積層してなり、該光透過層を通して記録光又は再生光が、あるいはその両方が入射する構造の光ディスクである。この光ディスクの光透過層には、生産性の観点から、紫外線硬化型組成物を使用することがもっぱら研究されている。
【0004】
このような、ブルーレーザーにより記録又は再生を行う光ディスクとして、円形基板上に情報記録層及び光反射層を形成し、更に紫外線硬化型樹脂を塗布し、硬化させて光透過層を積層した光ディスクが提案されている。該技術では、光透過層形成材料としてカチオン重合性紫外線硬化型組成物が使用されている(特許文献1参照)。しかしながら、カチオン重合性紫外線硬化型組成物は、紫外線照射により光反射層を腐食させやすいルイス酸を発生するため、光ディスクを長期間保存する場合の安定性が得られ難い欠点がある。光反射膜に用いる材料としては、400nm前後で高い反射率が求められることから、銀又は銀を主成分とする合金が使用されている。銀又は銀を主成分とする合金は化学物質による腐食等の化学変化を起こしやすいため、光反射層を形成する材料として銀又は銀を主成分とする合金を用いた場合、これに接する光透過層用の材料としてカチオン重合性紫外線硬化型組成物を用いることは好ましくない。
【0005】
カチオン重合性紫外線硬化型組成物に換えて、ラジカル重合系のエポキシアクリレートを使用した光ディスク用樹脂組成物が開示されている(特許文献2参照)。当該組成物は、透湿性の低いアクリレートとして、エポキシアクリレート、特にビスフェノールA型のエポキシアクリレートなどの高比重液状オリゴマーを使用することにより、金属薄膜の腐食の少ない樹脂膜を提供するものである。実施例には、ビスフェノールA型のエポキシアクリレートと、モノマーとしてトリプロピレングリコールジアクリレートとフェノキシエチルアクリレートを用いた組み合わせが示されている。しかし、ここで開示されている組成物は、高温高湿環境下に長時間放置された後の金属反射膜の腐食の抑制効果や、光曝露による光ディスクの反射率の低下の抑制効果が充分でなく、実用上の耐久性に問題があった。
【0006】
また、DVD等の2枚の光ディスク基板を貼り合わせる際に用いる紫外線硬化型接着用組成物として、ビスフェノール型エポキシアクリレートとカプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートを使用する組成物が開示されている。(特許文献3参照)しかし、開示されている組成物は、70〜110μmの光透過層を形成するには粘度が適さず、更に高温高湿環境下に長時間放置された後の金属反射膜の腐食の抑制効果や、光曝露による光ディスクの反射率の低下の抑制効果が充分でなかった。
【0007】
【特許文献1】特開平11−191240号公報
【特許文献2】特開平11−302309号公報
【特許文献3】特開2006−104446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、高温高湿環境下における耐久性に優れ、蛍光灯などに対する耐光性に優れた光透過層を与える紫外線硬化型組成物、および耐久性、耐光性に優れた光ディスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、エポキシ(メタ)アクリレート、ラジカル重合性不飽和結合を二個有する特定の(メタ)アクリレートと、光ラジカル重合開始剤とを含有し、光ラジカル重合開始剤の含有量が1〜4質量%である組成物の硬化被膜を光透過層として適用することにより、高温高湿環境下での光透過層及び金属反射膜の変質、蛍光灯など光曝露による光透過層及び金属反射膜の変質を抑制でき、その結果として、反射率の低下やエラーの上昇の少ない光ディスクを提供することができることを見出し本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、基板上に、少なくとも光反射層と、光透過層とが積層され、前記光透過層側からレーザー光を入射して情報の再生を行う光ディスクの光透過層に使用する紫外線硬化型組成物であって、エポキシ(メタ)アクリレート、ラジカル重合性不飽和結合を二個有する(メタ)アクリレート、光ラジカル重合開始剤とを含有する光ディスク用紫外線硬化型組成物であって、前記ラジカル重合性不飽和結合を二個有する(メタ)アクリレートとして、式(1)
【0011】
【化1】

【0012】
[式(1)中、Rは水素又はメチル基であり、Rは直接結合、アルキレンオキサイド基又は式(2)
【0013】
【化2】

【0014】
(Xは分岐鎖を有していてもよい炭素数2〜12のアルキレン基を表し、mは1〜5の整数を表す。)
のいずれかを表し、R及びRは分岐鎖を有していてもよい炭素数2〜12のアルキレン基であり、Rは直接結合、アルキレンオキサイド基又は式(3)
【0015】
【化3】

【0016】
(Xは分岐鎖を有していてもよい炭素数2〜12のアルキレン基を表し、nは1〜5の整数を表す。)
のいずれかを表す。]
で表される(メタ)アクリレートを含有し、
前記式(1)で表される(メタ)アクリレートの含有量が、光ディスク用紫外線硬化型組成物に含まれる紫外線硬化性化合物中の10〜40質量%であり、
光ディスク用紫外線硬化型組成物中の光ラジカル重合開始剤の含有量が1〜4質量%である光ディスク用紫外線硬化型組成物を提供することにある。
【0017】
また、本発明は、基板上に、少なくとも光反射層と、紫外線硬化型組成物の硬化物からなる光透過層とが積層され、前記光透過層側からブルーレーザーを入射して情報の再生を行う光ディスクであって、前記紫外線硬化型組成物が、上記の光ディスク用紫外線硬化型組成物であることを特徴とする光ディスクを提供することにある。
【発明の効果】
【0018】
本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物は、高温高湿環境下や、蛍光灯などの光曝露環境下においても硬化膜の変色や、金属反射膜の変質が生じにくい、優れた耐久性・耐光性を有する光透過層を形成することができる。このような硬化被膜を光透過層として有する光ディスクは、高温高湿環境下においても、光反射率の低下が生じにくく、信号特性の劣化が少ない。また、蛍光灯などの光に曝されても、光反射率の低下が生じにくく、信号特性の劣化が少ないため、短波長ブルーレーザーによる情報の記録・再生が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物は、エポキシ(メタ)アクリレート、一分子中にラジカル重合性不飽和結合を二個有する(メタ)アクリレート(以下、二官能(メタ)アクリレートと略記する。同様に、一分子中にラジカル重合性不飽和結合を一個有するものや三個有するものを、単官能、三官能と称する。)、光ラジカル重合開始剤とを含有する光ディスク用紫外線硬化型組成物であって、前記二官能(メタ)アクリレートとして、特定構造の(メタ)アクリレートを含有し、光ディスク用紫外線硬化型組成物中の光ラジカル重合開始剤の含有量が1〜4質量%の組成物である。なお、本明細書中で(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートをいう。
【0020】
[エポキシ(メタ)アクリレート]
本発明に使用するエポキシ(メタ)アクリレートとしては、分子内にエポキシ基を1個以上有する化合物とアクリル酸を反応させて得られるものであれば、特に制限がなく、ポリエステル、ポリエーテル、ゴムなどにより変性されていてもよい。残留する全塩素量は2000ppm以下であることが好ましい。
【0021】
なかでも、ビスフェノール骨格を有するエポキシ(メタ)アクリレートは耐久性能に優れるため好ましく、式(i)、(iii)、(viii)で表されるエポキシ(メタ)アクリレートを特に好ましく使用できる。
【0022】
【化4】

【0023】
[式(i)中、Dはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、Aは式(ii)
【0024】
【化5】

【0025】
(式(ii)中、Eは−SO−、−CH−、−CH(CH)−又は−C(CH−を表し、iは0〜8の整数を表す。)
で表される基である。]
このようなビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレートとしては、油化シェルエポキシ社製エピコート802、1001、1004等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びエピコート4001P、4002P、4003P等のビスフェノールF型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応によって得られるエポキシアクリレート等が挙げら、UNIDIC V−5810(大日本インキ化学工業(株))などが挙げられる。
【0026】
【化6】

【0027】
[式(iii)中、Dはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、Aは、エステル基、エーテル基、芳香族炭化水素基、環式脂肪族基で置換されていてもよく、また、分岐鎖を有していてもよい重量平均分子量250〜10000の長鎖アルキルジオール基であり、Bは式(iv)
【0028】
【化7】

【0029】
(式(iv)中、Eは−SO−、−CH−、−CH(CH)−又は−C(CH−を表し、iは0〜8の整数を表す。)
で表される基である。]
上記式(iii)中のAは、式(v)〜(vii)で表される基であることが好ましい。
【0030】
【化8】

【0031】
(式(v)中、Jは、水素原子が炭素数1〜6のアルキル基により置換されていても良い2価の芳香族炭化水素基又は分岐鎖を有していても良い炭素数2〜10の2価の脂肪族炭化水素基を表し、Lは、分岐鎖を有していても良い炭素数2〜20の2価の脂肪族炭化水素基又は−(RO)−R−(Rは分岐鎖を有していても良い炭素数2〜8のアルキレン基を表し、pは1〜10の整数である。)で表される基であり、kは1〜20の整数を表す。)
【0032】
【化9】

【0033】
(式(vi)中、Jは、水素原子が炭素数1〜6のアルキル基により置換されていても良い2価の芳香族炭化水素基又は分岐鎖を有していても良い炭素数2〜10の2価の脂肪族炭化水素基を表し、Lは、数平均分子量が250〜10000の長鎖アルキルジオール残基又はポリエーテルジオール残基を表す。)
【0034】
【化10】

【0035】
(式(vii)中、Jは、水素原子が炭素数1〜6のアルキル基により置換されていても良い2価の芳香族炭化水素基又は分岐鎖を有していても良い炭素数2〜10の2価の脂肪族炭化水素基を表し、L、Lは各々独立して、分岐鎖を有していても良い炭素数2〜10の2価の脂肪族炭化水素基を表し、k、kは各々独立して1〜20の整数を表す。)
【0036】
このようなエポキシ(メタ)アクリレートとしては、DICLITE UE−8080(大日本インキ化学工業(株))等が挙げられる。
【0037】
【化11】

【0038】
[式(viii)中、Dはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、Aは式(ix)
【0039】
【化12】

【0040】
(式(ix)中、Eは−SO−、−CH−、−CH(CH)−又は−C(CH−を表し、iは0〜8の整数を表す。)
で表される基であり、Bは、式(x)
【0041】
【化13】

【0042】
(式(x)中、Jは、水素原子が炭素数1〜6のアルキル基により置換されていても良い2価の芳香族炭化水素基又は分岐鎖を有していても良い炭素数2〜10の2価の脂肪族炭化水素基で表される基である。)
で表される基であり、Cは、式(xi)
【0043】
【化14】

【0044】
(L、Lは、各々独立して、分岐鎖を有していても良い炭素数2〜10の2価の脂肪族炭化水素基を表し、kは各々独立して1〜20の整数である。)
又は、式(xii)
【0045】
【化15】

【0046】
(L、Lは、各々独立して、分岐鎖を有していても良い炭素数2〜10の2価の脂肪族炭化水素基を表し、kは各々独立して1〜20の整数である。)で表される基である。)
【0047】
このようなエポキシ(メタ)アクリレートとしては、CNUVE151(SARTOMER)、EBECRYL3708(ダイセル・サイテック(株))等が挙げられる。本発明の光ディスクよう紫外線硬化型組成物においては、当該式(viii)で表わされるエポキシ(メタ)アクリレートを含有する。
【0048】
本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物中のエポキシ(メタ)アクリレートの含有量は、紫外線硬化型組成物に含まれる紫外線硬化性化合物中の10〜70質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることが特に好ましい。エポキシ(メタ)アクリレート含有量を当該範囲とすることで、高温高湿環境下において優れた耐久性に加え、硬化時や高温高湿環境下での反りの低減等の特性制御を好適に行うことができる。
【0049】
本発明で使用するエポキシ(メタ)アクリレートのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)としては、500〜20000であることが好ましく、800〜15000であることがより好ましい。エポキシ(メタ)アクリレートの構造、分子量を上記の範囲とすることにより、本発明の紫外線硬化型組成物を使用した光ディスクの耐久性及び耐光性がより優れたものとなる。なお、GPCによる重量平均分子量は、例えば、東ソー(株)社製 HLC−8020を用い、カラムはGMHxl−GMHxl−G200Hxl−G1000Hxlwを使用し、溶媒はTHFを用い、1.0ml/minの流量でカラム温度が40℃、検出器温度が30℃、分子量は標準ポリスチレン換算で測定を行うことで特定される。
【0050】
[二官能(メタ)アクリレート]
本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物は、二官能(メタ)アクリレートとして、下記式(1)で表される(メタ)アクリレートを含有する。
【0051】
【化16】

【0052】
[式(1)中、Rは水素又はメチル基であり、Rは直接結合、アルキレンオキサイド基又は式(2)
【0053】
【化17】

【0054】
(Xは分岐鎖を有していてもよい炭素数2〜12のアルキレン基を表し、mは1〜5の整数を表す。)
のいずれかを表し、R及びRは分岐鎖を有していてもよい炭素数2〜12のアルキレン基であり、Rは直接結合、アルキレンオキサイド基又は式(3)
【0055】
【化18】

【0056】
(Xは分岐鎖を有していてもよい炭素数2〜12のアルキレン基を表し、nは1〜5の整数を表す。)
のいずれかを表す。]
【0057】
なかでも、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート及びカプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートの少なくとも一種であることが好ましい。
【0058】
市販品として、ニューフロンティアHPN(第一工業製薬(株))、カヤラッドHX−220、620(日本化薬(株))などが挙げられる。
【0059】
前記二官能(メタ)アクリレートの含有量は10〜40質量%であることが好ましい。
【0060】
[光ラジカル重合開始剤]
本発明の光ラジカル重合開始剤としては、紫外線の照射によって、(メタ)アクリル基などの不飽和結合の重合開始に寄与するラジカルを発生する化合物であれば、特に制限がなく使用できるが、ブルーレーザーの発振波長に吸収を持たない化合物がより好ましい。
例えば、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ベンゾインエチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン及び2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニルプロパノンオリゴマー、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン等の分子開裂型や、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド等の水素引き抜き型の光重合開始剤等がある。
【0061】
なかでも、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニルプロパノンオリゴマー、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン等が、ブルーレーザーの発振波長に吸収を持たないので、好ましい。
【0062】
本発明における紫外線硬化型組成物中の光ラジカル重合開始剤の含有量としては、1〜4質量%が好ましい。1質量%未満であると、硬化性が不十分になり、4質量%を越えると、光透過層が黄変することにより400nm前後での透過率が低下したり、金属反射膜の変質を生じやすく、結果的に信号特性の低下につながる。
【0063】
[その他の紫外線硬化性化合物]
前記のエポキシ(メタ)アクリレート、二官能(メタ)アクリレートと併用して、一分子中に一の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート(以下、単官能(メタ)アクリレートと略記する)を併用することが好ましい。また、一分子中に三以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート(以下、多官能の(メタ)アクリレートと略記する。)、更には、前記の二官能(メタ)アクリレート以外の二官能(メタ)アクリレートを使用することで、所望の粘度、硬化後の弾性率を有する組成物を得ることができる。
【0064】
他の紫外線硬化性化合物としては、各種(メタ)アクリレートを使用でき、例えば単官能(メタ)アクリレートとしては、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデカニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチルビシクロヘプタンアダマンチル(メタ)アクリレート、などを使用できる。
【0065】
中でも、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレートを用いた場合、膜厚変化量が少なく、反り変化量も少なくなるため、好ましい。
【0066】
前記の二官能(メタ)アクリレート以外の二官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、脂環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、脂環式の二官能(メタ)アクリレートとして、ノルボルナンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジエタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジエタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジエタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジメタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジエタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、等を使用できる。なかでもトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0067】
また、硬化後の弾性率を高く調整したい場合に、三官能以上の(メタ)アクリレートを使用することができる。例えば、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−アクリロイルオキシプロピル)ヒドロキシプロピルイソシアヌレート、ビス(2−アクリロイルオキシブチル)ヒドロキシブチルイソシアヌレート、ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−メタクリロイルオキシプロピル)ヒドロキシプロピルイソシアヌレート、ビス(2−メタクリロイルオキシブチル)ヒドロキシブチルイソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシブチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロイルオキシブチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、等を使用できる。
【0068】
また、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、ビニルエーテルモノマー等の紫外線硬化性化合物も必要に応じて使用できる。
【0069】
本発明における紫外線硬化型組成物に含まれる紫外線硬化性化合物全量中の単官能(メタ)アクリレートの含有量としては、3〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることが好ましい。また、三官能以上の(メタ)アクリレートの含有量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることが好ましい。
【0070】
本発明の紫外線硬化型組成物は、上記紫外線硬化性化合物を調整し、粘度を800〜3000mPa・s、好ましくは1000〜2500mPa・sとすることで、厚膜の光透過層を好適に形成できる。
【0071】
本発明の紫外線硬化型組成物は、紫外線を照射した後の硬化膜の弾性率が、100〜2000MPa(30℃)となるように調整することが好ましい。中でも200〜1500MPaとなる組成であることがより好ましい。弾性率がこの範囲となる組成であると、硬化時の歪みが緩和され易く、高温高湿環境下に長時間曝されても反りの変化量が少ない光ディスクを得ることができる。また、硬化膜の弾性率が1000〜3500MPa(30℃)となるように調整することも好ましく、弾性率がこの範囲となる組成であると、光ディスクを形成した際の記録信号のエラーレートの劣化が少なく、信頼性に優れた光ディスクを形成しやすくなる。
【0072】
[添加剤類]
本発明に使用する紫外線硬化型組成物には、必要に応じて、添加剤として、界面活性剤、レベリング剤、熱重合禁止剤、ヒンダードフェノール、ホスファイト等の酸化防止剤、ヒンダードアミン等の光安定剤を使用することもできる。また、増感剤として、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミン及び4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が使用でき、更に、前記の光重合性化合物と付加反応を起こさないアミン類を併用することもできる。
【0073】
[光ディスク]
本発明の光ディスクは、基板上に、少なくとも光反射層と光透過層とが形成され、光透過層を通してレーザー光により記録又は再生を行う光ディスクであって、光透過層が、上記の紫外線硬化型組成物の硬化物からなるものである。本発明の光ディスクは、光透過層として、上記した紫外線硬化型組成物を使用することにより、高温高湿下でも、銀又は銀合金を反射膜として使用した場合に、優れた耐久性を得ることができるため、良好に情報の記録・再生を行うことができる。
【0074】
本発明の光ディスクにおける光透過層は、レーザー光の発振波長が370〜430nmであるブルーレーザーを効率良く透過することが好ましく、100μmの厚さにおいて405nmの光の透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
【0075】
本発明の光ディスクにおける光透過層の厚みは70〜110μmであることが好ましい。光透過層の厚みは、通常、約100μmに設定されるが、厚みは光透過率や信号の読み取り及び記録に大きく影響を及ぼすため、十分な管理が必要である。光透過層は、当該厚さの硬化層単層で形成されていても、複数層が積層されていてもよい。
【0076】
光反射層としては、レーザー光を反射し、記録・再生が可能な光ディスクを形成できるものであればよく、例えば、金、銅、アルミニウムなどの金属又はその合金、シリコンなどの無機化合物を使用できる。なかでも、400nm近傍の光の反射率が高いことから銀又は銀を主成分とする合金を使用することが好ましい。光反射層の厚さは、10〜60nm程度の厚さとすることが好ましい。
【0077】
基板としては、ディスク形状の円形樹脂基板を使用でき、当該樹脂としてはポリカーボネートを好ましく使用できる。光ディスクが再生専用の場合には、基板上に情報記録を担うピットが光反射層と積層される表面に形成される。
【0078】
また、書込可能な光ディスクの場合には、光反射層と光透過層との間に情報記録層が設けられる。情報記録層としては、情報の記録・再生が可能であればよく、相変化型記録層、光磁気記録層、あるいは有機色素型記録層のいずれであってもよい。
【0079】
情報記録層が相変化型記録層である場合には、当該情報記録層は通常、誘電体層と相変化膜から構成される。誘電体層は、相変化層に発生する熱を緩衝する機能、ディスクの反射率を調整する機能を求められ、ZnSとSiOの混合組成が用いられる。相変化膜は、膜の相変化により非晶状態と結晶状態で反射率差を生じるものであり、Ge−Sb−Te系、Sb−Te系、Ag−In−Sb−Te系合金を用いることができる。
【0080】
本願発明の光ディスクは、情報記録部位が二つ以上形成されていても良い。例えば、再生専用光ディスクの場合には、ピットを有する基板上に、第一の光反射層、第一の光透過層が積層され、当該第一の光透過層上又は他の層を積層し、当該層上に第二の光反射層、第二の光透過層を形成してもよい。この場合には第一の光透過層やこれに積層する他の層上にピットが形成される。また、記録・再生可能な光ディスクの場合は、基板上に、情報記録層、光反射層及び光透過層が積層された構成を有するものであるが、当該光透過層上に更に、第二の光反射層、第二の情報記録層、第二の光透過層を形成して二層の情報記録層を有する構成、あるいは、同様に層を積層して三層以上の情報記録層を有する構成としてもよい。複数層を積層する場合には、各層の層厚さの和が上記の厚さになるように適宜調整すればよい。
【0081】
また、本発明の光ディスクにおいては、光透過層が最表面の層であってもよいが、更にその表層に表面コート層を設けてもよい。
【0082】
本発明の光ディスクには、再生専用のディスクと、記録・再生可能なディスクがある。再生専用のディスクは、1枚の円形樹脂基板を射出成形する際に、情報記録層であるピットを設け、次いで該情報記録層上に光反射層を形成し、更に、該光反射層上に紫外線硬化型組成物をスピンコート法等により塗布した後、紫外線照射により硬化させて光透過層を形成することにより製造することができる。また、記録・再生可能なディスクは、1枚の円形樹脂基板上に光反射層を形成し、次いで相変化膜、又は光磁気記録膜等の情報記録層を設け、更に、該光反射層上に紫外線硬化型組成物をスピンコート法等により塗布した後、紫外線照射により硬化させて光透過層を形成することにより製造することができる。
【0083】
光反射層上に塗布した紫外線硬化型組成物を紫外線照射することにより硬化させる場合、例えばメタルハライドランプ、高圧水銀灯などを用いた連続光照射方式で行うこともできるし、USP5904795記載の閃光照射方式で行うこともできる。効率よく硬化出来る点で閃光照射方式がより好ましい。
【0084】
紫外線を照射する場合、積算光量は0.05〜1J/cmとなるようにコントロールするのが好ましい。積算光量は0.05〜0.8J/cmであることがより好ましく、0.05〜0.6J/cmであることが特に好ましい。本発明の光ディスクに使用する紫外線硬化型組成物は、積算光量が少量であっても、十分に硬化し、光ディスク端面や表面のタックが発生せず、更に光ディスクの反りや歪みが発生しない。
【0085】
また、本発明の光ディスクを温度80℃、湿度85%の環境下で240時間暴露した際の前後において、光透過層側から測定する405nmの光の正反射率の変化は小さければ小さい程良いが、1%以内であることが好ましい。また、信号の誤り率を示すSERについては、曝露前に対する曝露後のSER比率が小さいことが好ましい。暴露前後の正反射率変化が上記範囲内にあり、SER比率が1に近いと、長期に高温高湿環境下にさらされた場合にも光ディスクの記録再生を良好に行うことができる。
【0086】
[実施態様]
以下、本発明の光ディスクの具体例として、単層型光ディスク及び二層型光ディスクの具体的構成の一例を以下に示す。
【0087】
本発明の光ディスクのうち、単層型光ディスクの好ましい実施態様としては、例えば、図1に示したように、基板1上に、光反射層2と、光透過層3とが積層され、光透過層側からブルーレーザーを入射して情報の記録又は再生を行う構成が例示できる。図中の凹凸は、記録トラック(グルーブ)を模式的に表したものである。光透過層3は、本発明の紫外線硬化型組成物の硬化物からなる層であり、その厚さは100±10μmの範囲である。基板1の厚さは1.1mm程度、光反射膜は銀等の薄膜である。
【0088】
図2は図1に示した構成の最表層にハードコート層4を設けた構成である。ハードコート層は、高硬度で、耐摩耗性に優れる層であることが好ましい。ハードコート層の厚さは、1〜10μmであることが好ましく、3〜5μmであることがより好ましい。
【0089】
多層型光ディスクの好ましい実施態様としては、例えば、図3に示したように、基板1上に、光反射層5と、光透過層6とが積層され、さらにその上に、光反射層2と、光透過層3とが積層され、光透過層3側からブルーレーザーを入射して情報の記録又は再生を行う二層型光ディスクの構成が例示できる。光透過層3及び光透過層6は、紫外線硬化型組成物の硬化物からなる層であり、少なくともいずれかの層が本発明の紫外線硬化型組成物からなる層である。層の厚さとしては、光透過層3の厚さと光透過層6の厚さの和が100±10μmの範囲である。基板1の厚さは1.1mm程度、光反射膜は銀等の薄膜である。
【0090】
当該構成の二層型光ディスクにおいては、記録トラック(グルーブ)が、光透過層6の表面にも形成されるため、光透過層6は、接着性に優れる紫外線硬化型組成物の硬化膜からなる層の上に、記録トラックを好適に形成できる紫外線硬化型組成物の硬化膜からなる層を積層した複層で形成されていてもよい。また当該構成においても最表層にハードコート層が設けられていてもよい。
【0091】
図1に示す光ディスクの製造方法を以下に説明する。
まず、ポリカーボネート樹脂を射出成形することによって、記録トラック(グルーブ)と呼ばれるレーザー光をトラッキングするための案内溝を有する基板1を作製する。次に基板1の記録トラック側の表面に、銀合金などをスパッタまたは蒸着することにより光反射層2を成膜する。この上に本発明の紫外線硬化型組成物を塗布し、ディスクの片面または両面から紫外線を照射して、紫外線硬化型組成物を硬化させ、光透過層3を形成し、図1の光ディスクを作製する。図2の光ディスクの場合には、この上に更にスピンコート等によりハードコート層4を形成する。
【0092】
図3に示す光ディスクの製造方法を以下に説明する。
まず、ポリカーボネート樹脂を射出成形にすることによって、記録トラック(グルーブ)と呼ばれるレーザー光をトラッキングするための案内溝を有する基板1を作製する。次に、基板1の記録トラック側の表面に、銀合金などをスパッタまたは蒸着することにより光反射層6を成膜する。
【0093】
この上に、本発明の紫外線硬化型組成物又は任意の紫外線硬化型組成物の光透過層5を形成するが、その際に型を用いて表面に記録トラック(グルーブ)を転写する。記録トラック(グルーブ)を転写する工程は次の通りである。基板1に形成された光反射層6上に紫外線硬化型組成物を塗布し、その上に記録トラック(グルーブ)を形成するための型と貼り合わせ、この貼り合わせたディスクの片面または両面から紫外線を照射して、紫外線硬化型組成物を硬化させる。その後、型を剥離して、光透過層5の記録トラック(グルーブ)を有する側の表面に、銀合金などをスパッタまたは蒸着することにより光反射層2を成膜し、この上に、紫外線硬化型組成物を塗付した後、紫外線照射により硬化させ、光透過層3を形成することで、図3の光ディスクを作製できる。また、光反射層に相変化型記録層を用いる場合でも上記と同様の方法により光ディスクを作成することができる。
【実施例】
【0094】
次に、合成例及び実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下実施例中の「部」は「質量部」を表す。
【0095】
下記表1〜2に示した組成(表中の組成の数値は質量部を表す)により配合した各組成物を60℃で3時間加熱、溶解して、実施例1〜4及び比較例1〜3の各実施例及び比較例の紫外線硬化型組成物を調製した。得られた組成物について、下記の評価を行い、得られた結果を表1〜2に示す。
【0096】
<粘度の測定方法>
紫外線硬化型組成物について、25℃における粘度をB型粘度計((株)東京計器製、BM型)を用いて測定した。
【0097】
<弾性率の測定方法>
紫外線硬化型組成物を、ガラス板上に硬化塗膜が100±10μmになるように塗布した後、メタルハライドランプ(コールドミラー付き、ランプ出力120W/cm)を用いて窒素雰囲気中で500mJ/cmで硬化させた。この硬化塗膜の弾性率をティー・エイ・インストルメント(株)社の自動動的粘弾性測定装置で測定し、30℃における動的弾性率E’を弾性率とした。
【0098】
<光ディスクの耐久試験>
直径120mm、厚さ1.2mmの光ディスク基板を準備し、銀を主成分とするビスマスとの合金を20〜40nmの膜厚でスパッタした後、該金属反射膜上に、表1〜2の各紫外線硬化型組成物をスピンコーターで膜厚が硬化後に100±10μmになるように塗布し、コールドミラー付きメタルハライドランプ120W/cmを用いて照射量500mJ/cm(アイグラフィックス社製光量計UVPF−36)の紫外線を2回照射、硬化して試験用ディスクサンプルを得た。各サンプルについて環境試験器「PR−2PK」(エスペック(株))を使用して、80℃85%RH240時間の高温高湿環境下での曝露(耐久試験)を行った。試験前後のサンプルについて、光透過層の側から、分光光度計「UV−3100」(島津製作所(株)製)で405nmにおける正反射率を測定し、下記基準に基づき評価を行った。
【0099】
○:試験前後の反射率の変化が1.0%以内
×:試験前後の反射率の変化が1.0%を越える
【0100】
<光ディスクの耐光性(蛍光灯曝露試験)及び反射率の評価、光透過層の色差の評価>
上記と同様にして得られた光ディスクサンプルについて蛍光灯下における曝露試験を実施した。20Wの蛍光灯(三菱電気製、ネオルミスーパーFL20SSW/18(18ワット))2本を蛍光灯の中心間距離が8cmになるように同一平面上に並列させ、中央の蛍光灯から20cmの位置に光ディスクの光透過層が蛍光灯に対向するように配置して、蛍光灯の曝露試験を行った。
【0101】
240時間の曝露を行い、その前後の各サンプルの反射率を光透過層の側から分光光度計で測定した。また分光測色計(コニカミノルタ(株)製、CM−2600d)を用い曝露前後の各サンプルの色差を光透過層の側から測定し、下記基準に基づき評価を行った。なお、色差ΔEabはC光源2°視野における光ディスクの光透過層側(銀合金半透明反射膜側)のL表色系における座標L、a、bの耐光性試験前後の差であるΔL、Δa、ΔbよりΔEab={(ΔL+(Δa+(Δb1/2と計算されるものである。ΔEab値が小さければ小さいほどディスクの変色も小さく、ディスクの耐変色性が優れることを示す。
【0102】
(反射率)
○:試験前後の反射率の変化が1.0%以内
×:試験前後の反射率の変化が1.0%を越える
【0103】
(色差)
○:色差の変化が2.0以内
×:色差の変化が2.0を越える
【0104】
<光ディスクの耐久試験 BD信号測定>
直径120mm、厚さ1.1mmの信号ピットを設けたブルーレイディスク基板を準備し、銀を主成分とするビスマスとの合金を20〜40nmの膜厚でスパッタした後、該金属反射膜上に、表1〜2の各紫外線硬化型組成物をスピンコーターで膜厚が硬化後に100±10μmになるように塗布し、フラッシュランプを用いて12ショットの紫外線を照射した。形成した光透過層の上にハードコート ダイキュアクリアHC−1(大日本インキ(株))を3〜5μmになるように塗布し、コールドミラー付きメタルハライドランプ120W/cmを用いて照射量500mJ/cmで硬化し、試験用ディスクサンプルを得た。各サンプルについて環境試験器「PR−2PK」(エスペック(株))を使用して、80℃85%RH240時間の高温高湿環境下での曝露(耐久試験)を行った。試験前後のサンプルについて、INSPECTOR(パルステック(株))で半径25−30、35−40、50−55mmの範囲でR−SER(1000LDCブロック)、反射率R8H及びジッターTrailing Jitterを測定し、その平均値に基づき、下記基準で評価を行った。
【0105】
(R−SER)
○:試験後のR−SERが2×10-4以下
×:試験後のR−SERが2×10-4を越える
【0106】
(反射率R8H)
○:試験前後のR8Hの変化量が5.0%以内
×:試験前後のR8Hの変化量が5.0%を越える
【0107】
(ジッターTrailing Jitter)
○:試験前後のJitterの変化量が2以内
×:試験前後のJitterの変化量が2を越える
【0108】
<光ディスクの耐光性(蛍光灯曝露試験)の評価 BD信号測定>
上記と同様にして得られた光ディスクサンプルについて蛍光灯下における曝露試験を実施した。20Wの蛍光灯(三菱電気製、ネオルミスーパーFL20SSW/18(18ワット))2本を蛍光灯の中心間距離が8cmになるように同一平面上に並列させ、中央の蛍光灯から20cmの位置に光ディスクの光透過層が蛍光灯に対向するように配置して、蛍光灯の曝露試験を行った。
【0109】
(R−SER)
○:試験後のR−SERが2×10-4以下
×:試験後のR−SERが2×10-4を越える
【0110】
(反射率R8H)
○:試験前後のR8Hの変化量が5.0%以内
×:試験前後のR8Hの変化量が5.0%を越える
【0111】
(ジッターTrailing Jitter)
○:試験前後のJitterの変化量が2以内
×:試験前後のJitterの変化量が2を越える
【0112】
【表1】

【0113】
【表2】

【0114】
EA1:エポキシアクリレート「CNUVE151」(サートマー)
EA3:ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート
HPNDA:ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート
HPNDA−CL:式(4)で表されるカプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート「HX−220」(日本化薬(株))
【0115】
【化19】

【0116】
TPGDA:トリプロピレングリコールジアクリレート
DPGDA:ジプロピレングリコールジアクリレート
PEA:フェノキシエチルアクリレート
PM−2:エチレンオキシド変性リン酸ジメタクリレート(日本化薬(株))
Irg.184:イルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)
GA:没食子酸
【0117】
表1〜2に示すように、本発明の組成物を使用した実施例1〜4の光ディスクは、高温高湿環境下での耐久試験において反射率の変化が小さく、且つ、蛍光灯曝露試験での反射率の変化及び色差が小さく、耐久性及び耐光性が良好であった。一方、比較例1は、高温高湿環境下での耐久試験は良好であったが、蛍光灯曝露試験において反射率の変化及び色差が大きく、耐光性が不十分であった。比較例は、耐久性・耐光性ともに不十分であり、比較例においては、耐久試験において金属反射膜が腐食し、変色した。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の単層型光ディスクの一例を示す図である。
【図2】本発明の単層型光ディスクの一例を示す図である。
【図3】本発明の二層型光ディスクの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0119】
1 基板
2 光反射層
3 紫外線硬化型組成物の光透過層
4 ハードコート層
5 光反射層
6 紫外線硬化型組成物の光透過層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、少なくとも光反射層と、光透過層とが積層され、前記光透過層側からブルーレーザーを入射して情報の再生を行う光ディスクの光透過層に使用する紫外線硬化型組成物であって、
エポキシ(メタ)アクリレート、ラジカル重合性不飽和結合を二個有する(メタ)アクリレート及び光ラジカル重合開始剤を含有する光ディスク用紫外線硬化型組成物であって、前記ラジカル重合性不飽和結合を二個有する(メタ)アクリレートとして式(1)

[式(1)中、Rは水素又はメチル基であり、Rは直接結合又は式(2)

(Xは分岐鎖を有していてもよい炭素数2〜12のアルキレン基を表し、mは1〜5の整数を表す。)
のいずれかを表し、R及びRは分岐鎖を有していてもよい炭素数2〜12のアルキレン基であり、Rは直接結合又は式(3)

(Xは分岐鎖を有していてもよい炭素数2〜12のアルキレン基を表し、nは1〜5の整数を表す。)
のいずれかを表す。]
で表される(メタ)アクリレートを含有し、
前記式(1)で表される(メタ)アクリレートの含有量が、光ディスク用紫外線硬化型組成物に含まれる紫外線硬化性化合物中の10〜40質量%であり、
前記エポキシ(メタ)アクリレートとして、式(viii)

[式(viii)中、Dはそれぞれ独立して水素原子を表し、Aは式(ix)

(式(ix)中、Eは−SO−、−CH−、−CH(CH)−又は−C(CH−を表し、iは0〜8の整数を表す。)
で表される基であり、Bは、式(x)

(式(x)中、Jは、水素原子が炭素数1〜6のアルキル基により置換されていても良い2価の芳香族炭化水素基又は分岐鎖を有していても良い炭素数2〜10の2価の脂肪族炭化水素基で表される基である。)
で表される基であり、Cは、式(xi)

(L、Lは、各々独立して、分岐鎖を有していても良い炭素数2〜10の2価の脂肪族炭化水素基を表し、kは各々独立して1〜20の整数である。)
又は、式(xii)

(L、Lは、各々独立して、分岐鎖を有していても良い炭素数2〜10の2価の脂肪族炭化水素基を表し、kは各々独立して1〜20の整数である。)で表される基である。)]
で表されるエポキシ(メタ)アクリレートを含有し、
光ディスク用紫外線硬化型組成物中の光ラジカル重合開始剤の含有量が1〜4質量%であり、
粘度が1000〜2500mPa・sであることを特徴とする光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項2】
エポキシ(メタ)アクリレートの含有量が、光ディスク用紫外線硬化型組成物に含まれる紫外線硬化性化合物中の20〜60質量%である請求項1に記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項3】
前記光透過層の厚さが70〜110μmの範囲にある請求項1又は2に記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項4】
前記光透過層の弾性率が1000〜3500MPaである請求項1〜3のいずれかに記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項5】
前記式(1)で表される(メタ)アクリレートが、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート及びカプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートの少なくとも一種である請求項1〜4のいずれか記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項6】
ラジカル重合性不飽和結合を一個有する(メタ)アクリレートを3〜40質量%含有する請求項1〜5のいずれかに記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項7】
前記ラジカル重合性不飽和結合を一個有する(メタ)アクリレートが、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート又はエトキシエトキシエチルアクリレートである請求項1〜6のいずれかに記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項8】
基板上に、少なくとも光反射層と、紫外線硬化型組成物の硬化物からなる光透過層とが積層され、前記光透過層側からブルーレーザーを入射して情報の再生を行う光ディスクであって、
前記紫外線硬化型組成物が、請求項1〜7のいずれかに記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物であることを特徴とする光ディスク。
【請求項9】
前記光透過層の厚さが70〜110μmの範囲にある請求項8に記載の光ディスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−15688(P2010−15688A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−243342(P2009−243342)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【分割の表示】特願2009−509090(P2009−509090)の分割
【原出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】