説明

光ディスク装置、および光ディスク装置の記録方法

【課題】光ディスク装置が記録動作において、ベリファイの結果が不合格となってライトリトライをすることにより、ライト時間が増大する問題を改善する。
【解決手段】一つの記録領域に対してデータを記録するに先立ち、まず当該領域のアシンメトリ値を求める。その結果が光ディスクに応じて定めた所定の閾値よりも大きければ、当該領域をイレーズして記録済データを消去した後、新たなデータの記録を行う。閾値よりも小さければイレーズを行わずにデータの記録を行う。必要な場合にのみイレーズを行うことで、ベリファイの結果が合格となる可能性を高めたうえで、ライト時間を短縮できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ディスク装置、および光ディスク装置の記録方法に係わり、特に記録を行う際に要するライト時間を短縮した光ディスク装置、および光ディスク装置の記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DVD(Digital Versatile Disc)などを記録媒体とする光ディスク装置においては、RAM(Random Access Memory)型、R(Recordable)型をはじめとする記録媒体を用いて、情報を記録できるものが普及している。このようなディジタル記録装置においては、情報データを記録した後に記録した情報を再生し、誤り訂正が可能な品質で記録できたかを判定するベリファイ機能を有することが多い。
【0003】
光ディスクでは記録(以下、ライトと称する場合もある)する際に使用するレーザ光のパワーを最適値に設定する必要がある。これが最適値からずれていると、再生する際に充分な再生出力を得られない場合があって望ましくない。またDVD−RAMのようにデータを何度も記録し直すことができるディスクでは、最初に記録した際のパワーが最適値からずれていると、次に重ね書き(以下、オーバライトと称する場合もある)を行った後に、記録マークが所定の大きさに形成されず、記録箇所を再生した際にジッターが大きくなる問題が発生することもある。
【0004】
特許文献1では、このような書替え可能な光ディスクにおいて、最適記録パワーを決定するための試し書きをする前に、当該領域のイレーズ処理を行うことにより正確で安定した試し書き結果を得る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−38466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光ディスク装置では記録動作を行う際に、所定の記録をするごとに前記したベリファイを行うことが多い(以下、前記所定の記録を行う個々の領域を記録領域、ないしベリファイ領域と呼ぶ場合がある)。この動作は当然ながら、装置に搭載した光ピックアップで情報を再生することによって行われる。ベリファイの結果、再生時の誤り訂正が可能なだけの品質で記録されていないと判定された場合(以下、不合格と称することがある)には、たとえばその記録領域の先頭から再度記録し直す(以下、ライトリトライと称することがある)こととなる。このため光ピックアップは、一つの記録領域の先頭と結尾の間を何度も往復することになり、ライト時間が増大して光ディスク装置全体の動作速度に悪影響を及ぼすことがある。
【0007】
また特許文献1で試し書き領域をイレーズ処理しているように、情報コンテンツデータを記録する記録領域を一度イレーズしてから記録するようにすれば、ベリファイの結果が合格となる場合が増え、ライトリトライの回数を低減できる。しかしイレーズをするために光ピックアップは、一つの記録領域の先頭と結尾の間を一度往復する必要があり、ライト時間が増大する。
そこでライト時間をこのように増大させることなく、確実に記録する方法をさらに開発する必要がある。
【0008】
本発明の目的はこの課題を解決し、記録を行う際に要するライト時間を短縮した光ディスク装置、および光ディスク装置の記録方法を提供することにある。
また本発明の一実施形態における目的は、情報コンテンツデータを記録する領域をイレーズしてから記録する場合においても、記録を行う際に要するライト時間を短縮した光ディスク装置、および光ディスク装置の記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため本発明は、記録媒体として光ディスクを用いる光ディスク装置であって、該光ディスクに対して情報データを記録再生する光ピックアップと、前記光ディスク装置の動作を制御し、前記光ディスクに対して情報データを記録した後に、前記光ピックアップが記録した前記情報データを再生して該情報データの記録品質を確認するベリファイ動作を行うシステム制御回路を有し、該システム制御回路は、前記光ディスクの種類を判別して、再生信号の中心電位のずれを表すアシンメトリの閾値を決定し、前記光ディスクにおける所定の記録領域のアシンメトリ計測値と、前記決定したアシンメトリの閾値とを比較して、前記アシンメトリ計測値が前記閾値よりも小さい場合には前記記録領域に情報データの記録を行い、前記アシンメトリ計測値が前記閾値よりも大きい場合には前記記録領域をイレーズした後に前記記録領域に情報データの記録を行い、前記記録領域への記録動作が終了した後に、前記記録領域に対して前記ベリファイ動作を行い、該ベリファイ動作での確認の結果、前記記録品質が合格である場合には、次の記録領域のアシンメトリ計測値と前記閾値の比較を行い、前記記録品質が不合格である場合には、前記所定の記録領域に再び前記情報データの記録を行うよう前記光ディスク装置を制御することを特徴としている。
【0010】
また本発明は、記録媒体として光ディスクを用い、該光ディスクに対して光ピックアップを用いて情報データを記録再生する光ディスク装置の記録方法であって、前記光ディスクの種類を判別して再生信号の中心電位のずれを表すアシンメトリの閾値を決定する閾値決定ステップと、前記光ディスクにおける所定の記録領域のアシンメトリを計測するアシンメトリ計測ステップと、該アシンメトリ計測ステップにおけるアシンメトリ計測値が、前記閾値決定ステップで決定された前記閾値よりも大きいか否かを判定するアシンメトリ判定ステップと、該アシンメトリ判定ステップでの判定の結果、前記アシンメトリ計測値が前記閾値よりも小さい場合には前記記録領域に情報データの記録を行い、前記アシンメトリ計測値が前記閾値よりも大きい場合には前記記録領域をイレーズした後に前記記録領域に情報データの記録を行う記録ステップと、該記録ステップにおける前記記録領域への記録動作が終了した後に該記録領域を再生して記録品質を確認するベリファイステップを有し、該ベリファイステップでの確認の結果、前記記録品質が合格である場合には、前記アシンメトリ計測ステップは次の記録領域のアシンメトリを計測し、前記記録品質が不合格である場合には、前記記録ステップは前記所定の記録領域に再び前記情報データの記録を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、記録を行う際に要するライト時間を短縮した光ディスク装置、および光ディスク装置の記録方法を実現できる。
また本発明の一実施形態によれば、情報コンテンツデータを記録する領域をイレーズしてから記録する場合においても、記録を行う際に要するライト時間を短縮した光ディスク装置、および光ディスク装置の記録方法を実現できる。
いずれの場合においても、装置のいっそうの性能向上に寄与できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例を示す光ディスク装置のブロック図である。
【図2】従来例における記録品質判定に関わる動作説明図である。
【図3】本発明の一実施例における記録品質判定に関わる動作説明図である。
【図4】本発明の一実施例を示す光ディスク装置の動作フロー図である。
【図5】アシンメトリを説明するための再生信号の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いながら説明する。
図1は本発明の一実施例を示すブロック図であり、主には光ディスク装置の再生機能とベリファイ機能に関わる構成要素を示している。まず図1に基づきその動作を説明する。
【0014】
光ディスク1はディスク止め11で固定され、回転軸12を介してスピンドルモータ13により回転駆動される。スピンドルモータ13にはその回転に同期したFG(Frequency Generator)パルスを発生するFG14を含んでおり、装置のベース15に固定されている。
【0015】
光ピックアップ2は外装26の一部にスクリューを設けてあり、スレッドモータ61の回転軸に直結したスクリュー62の回転に伴い誘導されて、光ディスク1の半径方向における任意の場所に位置することができる。対物レンズ24はアクチュエータ23により、たとえば電磁力を利用して光ディスクの半径方向の位置を微調整され、また光ディスク1に対する距離や傾きを微調整される。
【0016】
レーザ光発生器21で発生されたレーザ光は、ビームスプリッタ22で反射され、対物レンズ24を介して光ディスク1の上に結像される。記録時にはレーザ光の有する変調された記録情報を記録し、再生時には光ディスク1に記録されていた情報を再生する。光ディスク1からの反射光は、対物レンズ24とビームスプリッタ22を通過し、光検出器25で電気信号に変換される。変換された信号はAFE(Analogue Front End)回路4に与えられる。AFE回路4のプッシュプル信号処理回路43では、アナログ処理によりトラッキングエラー信号が抽出される。この抽出方法については、本発明の主目的ではないので詳しい説明を省略する。また信号電位計測回路41においては、後述するように再生信号のなかの少なくも3T信号と14T信号に対して、たとえば高電位側と低電位側のピーク電位が計測される。この計測値はシステム制御回路5に与えられ、AD(Analogue to Digital)変換されたうえで、後述するような方法で波形の非対称性を表すアシンメトリ値が求められる。なお、AFE回路4に信号電位計測回路41を設けず、アシンメトリ値を求めるための処理を全てシステム制御回路5におけるディジタル処理で行っても良い。
【0017】
前記抽出されたトラッキングエラー信号はシステム制御回路5に与えられる。システム制御回路5はさきのアクチュエータ23を、トラッキングエラー信号に基づき、対物レンズ24が記録トラックの中心をトレースするようにトラッキング制御する。また光ディスク1に対して、最適な距離で対向するようにフォーカス制御する。また必要に応じて、光ディスク1に対して、最適な傾きで対向するようにチルト制御する。なお、スレッドモータ61を介して、光ピックアップ2全体の光ディスク1における半径方向の位置を制御する動作、およびスピンドルモータ13を起動して、FG14からのFGパルスに基づき光ディスク1を回転制御する動作もシステム制御回路5で行われている。
【0018】
さきの光検出器25の出力は、AFE回路4の等化回路42にも与えられる。ここで光ディスク1での記録再生に伴う周波数特性が補償され、波形等化をされたうえで再生回路3の復調回路31に与えられる。ここで再生クロックをもとに変調されたデータをストローブしたうえで、記録時に施された変調が解除され、再生データとして復調される。この再生データには記録再生の過程で発生したエラーを含んでいる。次いで、これはエラー検出回路32とエラー訂正回路33に与えられる。エラー検出回路32では再生データの含むコンテンツデータ(映像、音声などの情報データ)とエラー訂正符号データを演算してエラーを検出し、これに基づきエラー訂正回路33では再生データのエラー訂正が行われる。エラー訂正回路33の出力は再生処理回路34に与えられ、記録時に与えられたデータ圧縮などの処理が解除されて、再生情報信号として出力端子35に出力される。
【0019】
また、さきのエラー検出回路32の出力は、システム制御回路5の含むベリファイ判定回路51にも与えられる。前記したとおり情報を光ディスク1に記録した後に、再生時のエラー訂正が可能な程度の記録品質で記録できたかを同じ装置で確認するのが、ベリファイ動作である。ベリファイ動作については、いくつかの方法が考えられる。たとえば記録後にそのデータを再生してエラー発生数を見て確認する場合には、ベリファイ判定回路51にエラー検出回路32の出力を供給し、エラー発生数が所定の閾値以下であるかを確認すると良い。
【0020】
たとえばDVDにおいてはエラー検出と訂正を行うために、コンテンツデータとエラー訂正符号データにつき、横方向182バイト、縦方向208列を1ブロックのECC(Error Correction Code)ブロックとして記録再生の処理を行う。4バイト以上のエラーを有する列が1ブロック内で8列以内であれば、誤り訂正が可能とされている。たとえばこの値をもとに前記した閾値を定めてベリファイの判定すると良い。マージンを見込んで、8よりも小さい数を閾値としても良い。
なおベリファイは、一つの記録動作が終わった後にまとめて行うのではなく、光ディスク1が決まった数だけ回転するごとに行うことが多い。光ディスク1の略所定の回転数ごとに前記した一つの記録領域(ないしベリファイ領域)とし、この領域の記録を完了するごとに光ピックアップ2は前記記録領域の先頭に戻って記録したデータを再生し、再生時にエラー訂正できる品質で記録できたかをベリファイ判定回路51で判定し、不合格であれば後述するような方法で対策を行う。
図1において再生回路3、AFE回路4、システム制御回路5は分離した回路とせずに、これらを一つの半導体チップに納めたDSP(Digital Signal Processor)とすることで高密度実装を行う場合も多い。
【0021】
次に図2に基づき、従来のベリファイに関わる動作について説明する。図2は、従来例における記録品質判定に関わる動作説明図である。ここで(a)はベリファイ判定が不合格であってもライトリトライを行わない場合、(b)はライトリトライを行う場合を示している。
【0022】
図2(a)において、光ピックアップ2から光ディスク1に照射されるレーザスポット201により記録されるトラック202を示している。このトラックは光ディスクのほぼ全面に形成されるが、ここでは一つの記録済み領域202aと、次に記録する領域202bの二つの記録領域のみを示している。各々は前記した記録領域(ないしベリファイ領域)であり、一つの領域を記録する間に光ディスク1はほぼ所定の回転数だけ回転する。DVDの場合は2048バイトを一つのセクタとして、16セクタで前記した一つの記録領域を構成している。一つの記録領域の再生をするごとにエラー訂正を行うことができる。また情報の記録は一つの記録領域ごとにまとめて行う。ベリファイを行う場合には、一つの記録領域に対する記録が完了するごとにこれを行う。また、一層の光ディスクにおいては、図示するように内周から外周方向に向けて記録するのが普通である。
【0023】
次に図中の動作順序の表示に基づき動作を説明する。まず記録済の領域202aへのデータの記録が終了し、ベリファイの結果が合格であったとする。この場合、次の記録データがあれば、次に記録する領域202bへの記録動作を開始する。動作を開始するまでにレーザスポット201が記録領域202bに入っていれば、記録領域202aと202bの境目よりも202aに入った付近まで逆戻りする(図中のシーク1)。改めてレーザスポット201は正方向へ移動し、記録領域202aと202bの境目に来た時点から記録領域202bへの記録動作を開始し、記録領域202bの結尾までこれを継続する(図中のライト)。次いで記録動作を停止して、前記と同様に記録領域202aと202bの境目よりも202aに入った付近まで逆戻りする(図中のシーク2)。再度レーザスポット201は正方向へ移動し、記録領域202aと202bの境目に来た時点からベリファイ動作を開始し、データを再生しながら誤り検出を行い、誤り訂正が可能な品質で記録できたかを判定する。ベリファイの結果が合格であれば記録動作を終了するか、次の記録領域(図示せず)への記録動作を継続する。ベリファイの結果が不合格であれば、この場合は同じ記録領域へのライトリトライは行わないので、この領域へ記録したデータを無効として、たとえば別のスペアエリアに改めて同じデータを記録する。データを記録する記録領域が変更となるため、その物理アドレスが変更となった旨も光ディスク1の管理領域に記録する。
【0024】
図2(b)は図2(a)よりも記録領域を有効に使うよう、ベリファイの結果が不合格であった場合に同じ記録領域へのライトリトライを行う場合を示している。状況にとっては一度目のベリファイの結果が不合格であっても、ライトリトライを行えば合格となることもある。図中でシーク1からベリファイ1までの動作は、図2(a)と同じで良いため説明を省略する。ベリファイ1の結果が合格であれば記録動作を終了するか、次の記録領域(図示せず)への記録動作を継続する。不合格であった場合には、レーザスポット201は再度記録領域202aと202bの境目よりも202aに入った付近まで逆戻りする(図中のシーク3)。次にレーザスポット201は正方向へ移動し、記録領域202aと202bの境目に来た時点から記録領域202bへ同じデータの記録を再度行う(図中のライトリトライ)。これが完了した後、再び記録領域202aと202bの境目よりも202aに入った付近まで逆戻りする(図中のシーク4)。そしてレーザスポット201は正方向へ移動し、記録領域202aと202bの境目に来た時点から再度ベリファイ動作を開始する(図中のベリファイ2)。ベリファイの結果が合格であれば記録動作を終了するか、次の記録領域(図示せず)への記録動作を継続する。ベリファイの結果が不合格であれば、この領域へ記録したデータを無効として、前記したように別のスペアエリアに改めて同じデータを記録しても良く、また再度ライトリトライとベリファイを繰返しても良い。所定の回数をライトリトライしても不合格である場合に、別のスペアエリアに記録するようにしても良い。
【0025】
以上の従来例において、図2(a)では記録領域の有効利用の点で問題があり、図2(b)ではレーザスポット201が記録領域の先頭と結尾の間を少なくも3往復半を移動することになり、ライト時間が増大して光ディスク装置全体の動作速度に悪影響を及ぼす問題がある。
【0026】
次に図3に基づき、本発明の一実施例のベリファイに関わるについて説明する。図3は、本発明の一実施例における記録品質判定に関わる動作説明図である。ここで(a)は後述するイレーズ動作を行わない場合、(b)はイレーズを行う場合を示している。
【0027】
本発明の一実施例においては、ライト時間を短くするよう、必要な場合を除いてイレーズをしないことを基本としている。イレーズによってライト時間が増大することは望ましくないからである。しかしイレーズをすれば、前に記録した際のパワーが最適値からずれていたことによる記録マークが所定の大きさに形成されない問題は、解決されることが多い。このためベリファイで不合格となりライトリトライを行うよりは、イレーズをして一回目のベリファイで合格できるようにした方がライト時間を短くできる。そこで必要に応じて、記録に先立ちレーザスポットを用いて次に記録する記録領域をイレーズして既に記録されていたデータを消去し、その後所定の記録動作を行うことにより、一回目のベリファイで合格できる場合を増加させる。すなわち、イレーズをすることがライト時間を短くするうえで有効か否かを判定したうえで、動作を切替えることに本実施例の一つの特徴がある。
【0028】
このために、一つの記録領域の記録動作がベリファイまで完了し、次の記録領域202bへレーザスポット201が入った直後に、この領域のアシンメトリを図1の信号電位計測回路41とアシンメトリ判定回路52で求める。システム制御回路5は求められたアシンメトリが使用する光ディスクの種類に応じて定められた所定の閾値よりも大きいか否かを判別する。閾値よりも大きい場合には、記録領域202bに以前記録を行った際にレーザパワーが最適値よりも大きい値で記録されたなど、好ましくない状態にあると判断して、まず記録領域202bをイレーズして記録済データを消去した後に、記録動作を開始する。これにより前記したように一回目のベリファイで合格となる場合を増加させることができる。
【0029】
求められたアシンメトリが前記閾値よりも小さい場合には、このまま記録してもベリファイで不合格となることは少ないと判断し、ただちに記録動作を開始し、イレーズによるライト時間の増大を防止する。このようにして、次の記録領域202bの状態についてアシンメトリを求めることで判定し、イレーズが有効な場合のみにイレーズを行うようにすることで、記録領域の有効利用とベリファイを含むライト時間の短縮を行えるようにしている。
【0030】
なお、前記アシンメトリの閾値は光ディスクに応じて異なる。たとえば光ディスクのメーカとその型番ごとに予めベリファイで不合格となるアシンメトリの閾値を求め、システム制御回路5の情報格納部(図示せず)に格納する。光ディスクが装着された時のセットアップ状態において、システム制御回路5が検出したディスクの種類をもとに閾値を切替えると良い。
またアシンメトリとは再生信号の非対称性を表すものであって、たとえばDVDの場合、3T信号と14T信号のAFE回路4で求めた再生波形の上側と下側のピーク値を元に、システム制御回路5で双方の中心電圧のずれを求めることで得られる。基本クロック(たとえばDVDの1倍速では26.16MHz)の周期Tに対し、記録再生する信号においては3Tのものが最も周期が短く、14Tのものが最も周期が長くなるよう規格で定められている。アシンメトリは主には、光ディスク1におけるマークとスペースの時間幅の違いで生じる。前記したように、たとえば記録時のレーザパワーが最適値でない場合には、この幅が異なるようにピットが形成される。前記時間幅の違いが一定であれば、短い周期のパルスほど再生した際に中心電圧に与える影響が大きくなる。そこで、たとえば最も周期の短い3T信号と、最も周期の長い14T信号の中心電圧を比較すれば、目的としたアシンメトリの大きさを求めることができる。
【0031】
図3(a)を用いてイレーズを行わない場合の動作を説明する。
まず記録済の領域202aへのデータの記録が終了し、ベリファイの結果が合格であったとする。引続きレーザスポット201が記録領域202bに入った直後に、前記した方法で当該領域のアシンメトリを求める(図中のアシンメトリ取得)。3T信号、14T信号は頻繁に記録されているので、短時間で求めることができる。前記したようにDVDでは一つの記録領域は16個の記録セクタを有するが、このうち最初の1個を用いれば確実にアシンメトリを知ることができる。すなわち記録領域202bのはじめの部分を再生するのみで済むため、これがライト時間を増大することは殆ど問題にならない。アシンメトリをこれが前記した閾値よりも小さい場合には、図3(a)に示す動作が行われる。この場合、ただちに記録領域202aと202bの境目よりも202aに入った付近まで逆戻りする(図中のシーク1)。改めてレーザスポット201は正方向へ移動し、記録領域202aと202bの境目に来た時点から記録領域202bへの記録動作を開始し、記録領域202bの結尾までこれを継続する(図中のライト)。次いで記録動作を停止して、前記と同様に記録領域202aと202bの境目よりも202aに入った付近まで逆戻りする(図中のシーク2)。再度レーザスポット201は正方向へ移動し、記録領域202aと202bの境目に来た時点からベリファイ動作を開始し、データを再生しながら誤り検出を行い、誤り訂正が可能な品質で記録できたかを判定する。ベリファイの結果が合格であれば記録動作を終了するか、次の記録領域(図示せず)への記録動作を継続する。ベリファイの結果が不合格であれば、同じ記録領域へのライトリトライを行うか、この領域へ記録したデータを無効として、前記したようにスペアエリアへ改めて同じデータを記録する。しかし、予めアシンメトリを求めたうえでこの動作を行っているため、ほぼベリファイで合格できる効果がある。このため、たとえば図2(a)の従来例と比較すると、ライト時間を殆ど増大させることなく、全ての記録領域を有効に使用できる。
【0032】
次に、図3(b)を用いてイレーズを行う場合の動作を説明する。
アシンメトリを求めるまでは図3(a)と同様であるので、説明を省略する。アシンメトリを求めた結果、これが前記した閾値よりも大きい場合には、図3(b)に示す動作が行われる。この場合、ただちに記録領域202aと202bの境目よりも202aに入った付近まで逆戻りする(図中のシーク1)。改めてレーザスポット201は正方向へ移動し、記録領域202aと202bの境目に来た時点から記録領域202bへのイレーズ動作を開始し、記録領域202bの結尾までこれを継続する(図中のイレーズ)。予め記録されていたデータを消去することで、前記した記録マークが所定の大きさに形成されない問題を改善するようにしている。次いでイレーズ動作を停止して、前記と同様に記録領域202aと202bの境目よりも202aに入った付近まで逆戻りする(図中のシーク2)。さらにレーザスポット201は正方向へ移動し、記録領域202aと202bの境目に来た時点から記録領域202bへの記録動作を開始し、記録領域202bの結尾までこれを継続する(図中のライト)。次いで記録動作を停止して、前記と同様に記録領域202aと202bの境目よりも202aに入った付近まで逆戻りする(図中のシーク3)。再度レーザスポット201は正方向へ移動し、記録領域202aと202bの境目に来た時点からベリファイ動作を開始し、データを再生しながら誤り検出を行い、誤り訂正が可能な品質で記録できたかを判定する(図中のベリファイ)。ベリファイの結果が合格であれば記録動作を終了するか、次の記録領域(図示せず)への記録動作を継続する。ベリファイの結果が不合格であれば、同じ記録領域へのライトリトライを行うか、この領域へ記録したデータを無効として、前記したようにスペアエリアに改めて同じデータを記録する。しかし、予めイレーズをしたうえでこの動作を行っているため、ほぼベリファイで合格できる効果がある。このため図2(b)の従来例と比較すると、レーザスポット201が記録領域の先頭と結尾の間をほぼ2往復半ほど移動すれば良く、1往復分ライト時間の短縮をすることができる。このため、ライトリトライによる装置の動作遅れを低減する効果がある。
【0033】
次に図4のフローチャートに基づき、本発明の一実施例を説明する。図4は、本発明の一実施例を示す光ディスク装置の動作フロー図である。先の図3は一つの記録領域への記録動作がベリファイを含めて完了した後、次の記録領域への記録動作を行う場合を示した。これに対して図4は、光ディスク1を光ディスク装置に装着して記録動作にはいり、最初の記録領域への記録を行う場合を示している。
光ディスク1が光ディスク装置に装着されることでフローが始まる。まず前記したようにステップS401でセットアップ状態にはいり、装着された光ディスクがスピンドルモータ13により回転され、システム制御回路5により、前記したようなフォーカス制御、トラッキング制御をはじめとするサーボ制御が開始される。ステップS402でシステム制御回路5は、光ピックアップ2を用いて装着された光ディスク1のID(Identification)を取得し、たとえばそのメーカや型番を読取って、前記したアシンメトリの閾値を決定する。
【0034】
ステップS403で光ピックアップ2は記録動作を開始する。次にステップS404では信号電位計測回路41とアシンメトリ判定回路52は、先に図3(a)と(b)を用いて説明したように、再生信号から記録する領域の(図3の場合は、次に記録する領域202bの)アシンメトリを求める。ステップS405でシステム制御回路5は、求めたアシンメトリの値が先にステップS402で決定した光ディスク1の種類に応じた閾値よりも大きいか否かを判定する。
【0035】
ステップS405での判定の結果、アシンメトリの値が閾値よりも小さい場合は(図中のNO)、ステップS406へ進み光ピックアップ2は記録領域の先頭からデータの記録(ライト)を行う。結尾まで記録を完了すると再び記録領域の先頭に戻り、ステップS408で当該記録領域を先頭から再生してベリファイを行う。結尾に到ってベリファイを完了すると、ステップS408ではベリファイ判定回路51が、たとえばエラー発生数から判断してベリファイの結果が合格であるか否か、すなわち再生時に誤り訂正が可能な品質で記録できたか否かを判定する。
【0036】
ステップS408での判定の結果、ベリファイの結果が合格であると判定された場合には(図中のYES)、ステップS404に戻り光ピックアップ2は次の記録領域への記録動作を同様に行う。もちろん全てのデータの記録を完了していれば、フローを終了して良い(図示せず)。ベリファイの結果が不合格であれば(図中のNO)、ライトリトライを行えば合格となる可能性があるので、ステップS406に戻りデータの記録を再度行う。多くの場合はライトリトライをすれば合格となるが、再度不合格となった場合には、ライトリトライをベリファイ結果が合格となるまで行うか、所定の回数ライトリトライをしても合格とならない場合には、当該領域の記録データを無効として、スペアエリアへ同じデータを記録すると良い(図示せず)。
【0037】
先のステップS405での判定の結果、アシンメトリの値が閾値よりも大きい場合は(図中のYES)、このまま記録するとベリファイで不合格となる可能性があるので、まずステップS409で光ピックアップ2は当該記録領域の先頭からイレーズを行う。結尾までイレーズを完了すると再び記録領域の先頭に戻り、ステップS410で記録領域の先頭からデータの記録(ライト)を行う。結尾まで記録を完了すると再び記録領域の先頭に戻り、ステップS411で当該記録領域を先頭から再生してベリファイを行う。結尾に到ってベリファイを完了すると、ステップS412ではベリファイ判定回路51が、たとえばエラー発生数から判断してベリファイの結果が合格であるか否か、すなわち再生時に誤り訂正が可能な品質で記録できたか否かを判定する。
【0038】
ステップS412での判定の結果、ベリファイの結果が合格であると判定された場合には(図中のYES)、ステップS404に戻り光ピックアップ2は次の記録領域への記録動作を同様に行う。もちろん全てのデータの記録を完了していれば、フローを終了して良い(図示せず)。ベリファイの結果が不合格であれば(図中のNO)、ライトリトライを行えば合格となる可能性があるので、ステップS406に戻りデータの記録を再度行う。多くの場合はライトリトライをすれば合格となるが、再度不合格となった場合には、ライトリトライをベリファイ結果が合格となるまで行うか、所定の回数ライトリトライをしても合格とならない場合には、当該領域の記録データを無効として、スペアエリアへ同じデータを記録すると良い(図示せず)。
以上、図4で示したフローにより図3で示した本発明の一実施例を光ディスク装置1に適用することができる。
【0039】
次にアシンメトリ値の求め方について、図5を用いてさらに説明する。図5はアシンメトリを説明するための再生信号の波形図である。横軸は時間を、縦軸は信号レベルであり、ここでは基準DC=0Vと記した基準直流電圧に対して再生信号が、正方向の電位を有した場合を示している。この再生信号のなかには、3Tから14Tの周期を有する信号が混在している。
前記したとおり3T信号は最も周期の短い信号であって、光ディスクで記録再生した時の周波数特性の影響で、最も振幅が小さいのが普通である。図中でI3と記した振幅の信号が3T信号である。上側のピーク電位をI3H、下側のピーク電位をI3Lとする。一方、14T信号は最も周期の長い信号であって、光ディスクで記録再生した時の周波数特性の影響で、最も振幅が大きいのが普通である。図中でI14と記した振幅の信号が14T信号である。上側のピーク電位をI14H、下側のピーク電位をI14Lとする。
【0040】
図1の信号電位計測回路41では、I3H、I3L、I14H、I14Lの四つの電位を計測してシステム制御回路5に供給する。システム制御回路5では、この電位計測値をAD変換してアシンメトリ判定回路52において、まず次の計算式で再生信号のアシンメトリを計算し、これを前記したような光ディスクごとに決められた閾値と比較し、イレーズを行うか否かを判定する。
【0041】
アシンメトリ={(I14H+I14L)−(I3H+I3L)}/(2*I14)
・・・式(1)
すなわちアシンメトリとは、14T信号の中心電位と3T信号の中心電位の差を、14T信号の振幅で除算したものである。3T信号と14T信号とで中心電位が一致していれば、アシンメトリはゼロとなり最も望ましい状態である。しかし前記したように、前回記録した時のレーザ光のパワーが最適値よりも大きい場合には、より大きい値を示す。規格ではアシンメトリを、−0.05〜+0.15の範囲とするよう定められている。
【0042】
本発明において、たとえば装着した光ディスクのアシンメトリの前記閾値が0.05であれば、アシンメトリ判定回路52は式(1)で計算した再生信号のアシンメトリが0.05以上であれば(或いは、より大きければ)、図4のステップS409でイレーズを行ってからステップS410でデータを記録する。またアシンメトリが0.05未満(或いはこれを含み、より小さければ)、イレーズを行うことなくステップS406でデータを記録する。このように必要な場合のみイレーズを行うことで、ライト時間を低減するようにしている。
【0043】
イレーズをするか否かを判定する際に、再生信号のアシンメトリのほか、モジュレーションを用いる方法もある。これは14T信号に関するものであって、図5のI14とI14Hを用いた次の式で求められる。
【0044】
モジュレーション=I14/I14H ・・・式(2)
規格ではモジュレーションを0.40以上にするよう定められている。しかし、前回記録した時のレーザ光のパワーが最適値よりも大きい場合には、より大きい値を示すので、一概に大きいことが望ましいのではない。たとえば、これが0.6以上であればイレーズを行ってからデータを記録するようにすれば、前記アシンメトリを用いて判定した場合と同様の効果を持たせることができる。
【0045】
なお、ここまでに示した事項は一実施例であり、多くの変形例が考えられる。たとえばベリファイ動作においてエラー発生数をもとに判定する例をしめしたが、これに限定されるものではない。復調回路31でデータを復調するに先立ち、再生クロックで再生信号をストローブする際に、ストローブするタイミングを変化させることで再生信号のジッター(時間軸変動)を知ることができるが、このジッター値をもとに判定することも可能である。このように本発明の趣旨を変えない範囲であっても、変更を施した実施例が考えられるが、いずれも本発明の範疇にある。
【符号の説明】
【0046】
1・・・・・光ディスク
13・・・・スピンドルモータ
14・・・・FG
2・・・・・光ピックアップ
21・・・・レーザ光発生器
22・・・・ビームスプリッタ
23・・・・アクチュエータ
24・・・・対物レンズ
25・・・・光検出器
3・・・・・再生回路
31・・・・復調回路
32・・・・エラー検出回路
33・・・・エラー訂正回路
34・・・・再生処理回路
35・・・・出力端子
4・・・・・AFE回路(演算回路)
41・・・・信号電位計測回路
42・・・・等化回路
43・・・・プッシュプル信号処理回路
5・・・・・システム制御回路
51・・・・ベリファイ判定回路
52・・・・アシンメトリ判定回路
61・・・・スレッドモータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体として光ディスクを用いる光ディスク装置であって、
該光ディスクに対して情報データを記録再生する光ピックアップと、
前記光ディスク装置の動作を制御し、前記光ディスクに対して情報データを記録した後に、前記光ピックアップが記録した前記情報データを再生して該情報データの記録品質を確認するベリファイ動作を行うシステム制御回路を有し、
該システム制御回路は、
前記光ディスクの種類を判別して、再生信号の中心電位のずれを表すアシンメトリの閾値を決定し、
前記光ディスクにおける所定の記録領域のアシンメトリ計測値と、前記決定したアシンメトリの閾値とを比較して、前記アシンメトリ計測値が前記閾値よりも小さい場合には前記記録領域に情報データの記録を行い、前記アシンメトリ計測値が前記閾値よりも大きい場合には前記記録領域をイレーズした後に前記記録領域に情報データの記録を行い、
前記記録領域への記録動作が終了した後に、前記記録領域に対して前記ベリファイ動作を行い、該ベリファイ動作での確認の結果、前記記録品質が合格である場合には、次の記録領域のアシンメトリ計測値と前記閾値の比較を行い、前記記録品質が不合格である場合には、前記所定の記録領域に再び前記情報データの記録を行うよう前記光ディスク装置を制御することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク装置において、前記記録品質が不合格であって、前記所定の記録領域に再び前記データの記録を行った後に前記ベリファイ動作を行った場合においても前記記録品質が不合格である場合には、前記所定の記録領域へ記録した前記情報データを無効とし、別の記録領域のアシンメトリ計測値と前記閾値の比較を行うことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光ディスク装置において、前記記録品質が不合格であって、前記所定の記録領域に再び前記データの記録を行った後に前記ベリファイを行う動作を所定の回数行っても前記記録品質が不合格である場合には、前記所定の記録領域へ記録した前記情報データを無効とし、別の記録領域のアシンメトリ計測値と前記閾値の比較を行うことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
記録媒体として光ディスクを用い、該光ディスクに対して光ピックアップを用いて情報データを記録再生する光ディスク装置の記録方法であって、
前記光ディスクの種類を判別して再生信号の中心電位のずれを表すアシンメトリの閾値を決定する閾値決定ステップと、
前記光ディスクにおける所定の記録領域のアシンメトリを計測するアシンメトリ計測ステップと、
該アシンメトリ計測ステップにおけるアシンメトリ計測値が、前記閾値決定ステップで決定された前記閾値よりも大きいか否かを判定するアシンメトリ判定ステップと、
該アシンメトリ判定ステップでの判定の結果、前記アシンメトリ計測値が前記閾値よりも小さい場合には前記記録領域に情報データの記録を行い、前記アシンメトリ計測値が前記閾値よりも大きい場合には前記記録領域をイレーズした後に前記記録領域に情報データの記録を行う記録ステップと、
該記録ステップにおける前記記録領域への記録動作が終了した後に該記録領域を再生して記録品質を確認するベリファイステップを有し、
該ベリファイステップでの確認の結果、前記記録品質が合格である場合には、前記アシンメトリ計測ステップは次の記録領域のアシンメトリを計測し、前記記録品質が不合格である場合には、前記記録ステップは前記所定の記録領域に再び前記情報データの記録を行うことを特徴とする光ディスク装置の記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−192050(P2010−192050A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36513(P2009−36513)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】