説明

光ディスク装置、情報記録方法及び光ディスク

【課題】光ディスクに高速記録を行う際に発生する記録マークの歪みを防止し、記録性能を向上させる。
【解決手段】記録パルス信号は、記録マーク201を形成するマーク期間と記録マークを形成しないスペース期間とを含み、マーク期間は、第1の記録パワーPwを有するトップパルス101と、第1の記録パワーPwより低いバイアスパワーPmを有しトップパルス101に続くバイアスパルス102と、第1の記録パワーPwより低い第2の記録パワーPlを有しバイアスパルス102に続くラストパルス103とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクにレーザ光を照射して情報を記録する光ディスク装置、情報記録方法及び光ディスクに係り、特に高速記録に好適な記録技術に関する。
【背景技術】
【0002】
情報の記録再生が可能な情報記録媒体として光ディスクがある。1回だけの書き込みが可能な光ディスクとしては、CD−R、DVD−R、+R、BD−Rなどがある。多数回の書き込み、書き換えが可能な光ディスクとして、CD−RW、DVD−RAM、DVD−RW、+RW、BD−REなどが挙げられる。特に大容量の記録媒体として、青色レーザを用いるBD(Blu−ray Disc)では、12cm径ディスクで記録層一層あたり25GBのデータを記録することが可能となっている。また、高密度記録のためのデータ変調方式として、BDでは基準クロック長1Tに対し、2Tから9Tまでのレングス長の変調方式が採用されている。
【0003】
光ディスクに情報を記録する場合、情報を2Tから9Tのデータ長を組み合わせたデータ列に変換し、データ列に対応した記録マークを形成することになる。そして、1つの記録マークを1つのレーザパルスで形成するのではなく、複数の短いパルスを含むパルス列により形成する方法が用いられている。この手法は記録ストラテジーとも呼ばれ、光ディスクの記録面の熱蓄積を抑え、記録マークの形状を改善する効果がある。
【0004】
記録ストラテジーには次の2つの方式が知られている。
(1)マルチパルス型の記録パルスは、記録データ長が長くなるのに従い、記録パルス数を増やしていく形で構成される。例えば、3Tを記録する場合は2パルス、4Tを記録する場合は3パルスといった具合である。そして、先頭のパルスはトップパルス、中間のパルスはマルチパルス、最後のパルスはラストパルスと呼ばれる。特にBD−Rのような一度だけ書き込み可能な光ディスクの場合は、先頭のトップパルスは熱エネルギーを十分に投入するため他のパルスよりもパルス長を長くし、後続のマルチパルス及びラストパルスは投入された熱エネルギーを持続する程度に設定される。
【0005】
(2)キャッスル型の記録パルスは、トップパルス、バイアスパルス(中間パルスとも呼ばれる)、及びラストパルスの順にパルスが連続する構成である。先頭のトップパルスは所定の記録パワーを有し、バイアスパルスはトップパルスよりもパワーを低くし、ラストパルスは再びトップパルスと等しいパワーとする。中間のバイアスパルスは、熱エネルギーを持続させるための区間である。キャッスル型では記録パルスの立ち上がり時間と立下り時間を短縮できるので、記録波形の劣化が少なく、BD−R等の高速記録に適している。
このような記録ストラテジーについては、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−85753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光ディスクに高速記録を行う上で、次の課題が挙げられる。例えばBDの8倍速記録の場合、記録周波数は約528MHzでありクロック長1Tは約1.9nsとなる。このような記録周波数のもとで記録パルスをマルチパルス型で構成する場合、比較的余裕のあるデューティー50%の記録波形でもパルス幅が1nsを下回り、安定した記録パルス(波形の立ち上がり、立下り特性)を生成することが困難となる。一方、記録パルスをキャッスル型で構成する場合、記録マークの後端部はラストパルスによる記録パワーが印加される。高速記録の場合、ラストパルスによる記録パワーが過剰となり記録マークの歪みが生じ易くなる。また、後続のスペース部分への熱拡散も大きくなり、その結果、高速記録時の記録品質を劣化させてしまう。
【0008】
本発明の目的は、光ディスクに高速記録を行う際に発生する記録マークの歪みを防止し、記録性能を向上させる光ディスク装置、情報記録方法及び光ディスクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光ディスク装置は、レーザ光源を有し光ディスクにレーザ光を照射する光ピックアップと、記録する情報に基づいて記録パルス信号を生成するパルス生成回路と、記録パルス信号に基づいてレーザ光源の発光パワーを制御するレーザパワー制御回路とを備える。記録パルス信号は、記録マークを形成するマーク期間と記録マークを形成しないスペース期間とを含み、マーク期間は、第1の記録パワーPwを有するトップパルスと、第1の記録パワーPwより低いバイアスパワーPmを有しトップパルスに続くバイアスパルスと、第1の記録パワーPwより低い第2の記録パワーPlを有しバイアスパルスに続くラストパルスとを含む。
【0010】
本発明の情報記録方法は、記録する情報に基づいて記録パルス信号を生成するステップと、記録パルス信号に基づいてレーザ光源を駆動して光ディスクにレーザ光を照射するステップとを備え、記録パルス信号は、記録マークを形成するマーク期間と記録マークを形成しないスペース期間とを含み、マーク期間は、第1の記録パワーPwを有するトップパルスと、第1の記録パワーPwより低いバイアスパワーPmを有しトップパルスに続くバイアスパルスと、第1の記録パワーPwより低い第2の記録パワーPlを有しバイアスパルスに続くラストパルスとを含む。
【0011】
さらに、前記ラストパルスの第2の記録パワーPlは、前記バイアスパルスのバイアスパワーPmよりも低くする。
【0012】
また前記記録パルス信号は、クロック長Tを基準として2Tから9Tの長さのマーク期間とスペース期間を含むとき、長さ4T以下のマーク期間については、トップパルスのみ、あるいはトップパルスとバイアスパルスの組合せとし、長さ5T以上のマーク期間については、トップパルス、バイアスパルス及びラストパルスを組合せる。
【0013】
本発明の光ディスクは、記録する情報に応じた記録マークを形成するために、トップパルスと、トップパルスに続くバイアスパルスと、バイアスパルスに続くラストパルスを含む記録パルス信号を用いるとき、トップパルスに対する第1の記録パワーPwと、第1の記録パワーPwより低いバイアスパルスに対するバイアスパワーPmと、第1の記録パワーPwより低いラストパルスに対する第2の記録パワーPlの各パワー値を、当該光ディスクの管理情報として格納する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高速記録を行う際に発生する記録マークの歪みを防止し、安定した記録性能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る光ディスク装置の一実施例を示すブロック図。
【図2】本発明における記録パルス信号の第1の実施例を示す図。
【図3】高速記録した記録マーク部分の再生波形の例を示す図。
【図4】高速記録した記録スペース部分の再生波形の例を示す図。
【図5】本発明における記録パルス信号の第2の実施例を示す図。
【図6】本発明における記録パルス信号の第3の実施例を示す図。
【図7】光ディスクに格納する記録パルスのパラメータ情報の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明に係る光ディスク装置の一実施例を示すブロック図である。光ディスク装置は、光ディスク3にレーザ光を照射する光ピックアップ6、再生信号を処理する再生信号処理部1、記録信号を処理する記録信号処理部2を備える。光ディスク3はスピンドルモータ4に固定され、回転制御回路5により所望の速度で回転される。光ピックアップ6は、レーザ光源(LD)7、集光用レンズ8、ビームスプリッタ9、光検出器10を有する。再生信号処理部1は、波形等化回路11、二値化回路12、PLL(Phase Lock Loop)13、復調回路14を有する。記録信号処理部2は、記録データ生成回路16、パルス生成回路17、レーザパワー制御回路18、レーザ駆動回路19を有する。マイコン(コントローラ)15は装置全体を制御し、光ディスク3に対して情報の読み出しと書き込みを行う。
【0017】
情報の記録時は、記録データ生成回路16は、記録する情報に対し所定の変調方式に応じた変調を行い記録データ信号を生成する。パルス生成回路17は、光ディスク3に応じた記録パルス波形を生成する。記録パルス波形は、記録マークを形成するマーク期間と記録マークを形成しないスペース期間とを含み、1つの記録マーク形成するために複数のパルスを組み合わせた記録波形を用いる。その際、光ディスク3にはその管理情報として、当該ディスクに適切な記録パルスのコードが記述されており、それを参照して記録パルスを生成することができる。あるいは、装置が独自に調整した記録パルス、もしくは固定の記録パルスを用いてもよい。
【0018】
レーザパワー制御回路18は、パルス生成回路17が生成した記録パルスの各レベルに応じたレーザパワーの設定と制御を行う。その際、レーザパワーもパルス波形と同様に光ディスクに記述されているコードを参照して生成することができる。あるいは、装置が独自に調整した記録パワー、もしくは固定の記録パワーを用いてもよい。
【0019】
パルス生成回路17及びレーザパワー制御回路18は上記のような値を初期値として持ち、PLL13において検出された位相ずれ分をもとに、パルス幅もしくはレーザパワーの補償を行う。レーザ駆動回路19は、上記のレーザパルス幅及びレーザパワーに従いレーザ光源7を駆動する。その結果、レーザ光源7からは記録パルス信号に従ったレーザ光が発光され、光ディスク3に照射される。
【0020】
なお、マイコン15はメモリ20に記録パルス生成のために必要な情報を保持しておくことができる。例えば光ディスク装置の出荷段階において、検証された記録用パラメータをメモリ20に格納しておき、記録時にこのパラメータを読み出して設定してもよい。また、光ディスクごとに記録パラメータの情報等を保持しておくこともできる。あるいは光ディスクの案内溝等に当該ディスクの推奨する記録パラメータ情報を埋め込んでおき、光ディスク装置は、装着された光ディスクからこのパラメータを読み出して記録信号処理部に設定することもできる。
【0021】
情報の再生時は、光ディスク3から読み出された信号は、集光用レンズ8、ビームスプリッタ9を介し、光検出器10において光から電気信号として出力される。この電気信号は波形等化回路11に入力され、ACカップリング、信号振幅のレベル調整、そしてノイズ除去のため、所望の周波数帯域の信号を強調して信号成分を効率的に取得する。その後、二値化回路12は、信号レベルの平均値を基準(スライスレベル)として、二値化処理を行う。ここで得られた二値化信号はPLL13において再生クロックに同期して、タイミング補正が行われる。復調回路14は、二値化信号を復調して情報(再生データ)を復元する。
以下、本発明における記録パルス信号の形態を実施例に分けて説明する。
【実施例1】
【0022】
図2は、本発明における記録パルス信号の第1の実施例を示す図である。ここでは、クロック信号を基準として標準的な記録データ信号に対する記録パルス信号と記録マークの関係を示している。ここではデータ信号として、2T,3T,4Tのマーク長とスペース長の場合を示している。データ信号は図1の記録データ生成回路16により生成され、記録パルス信号はパルス生成回路17により生成される。光ディスクには、データ信号に対応して記録マーク201が形成され、それ以外の部分は記録スペース202となる。
【0023】
データ信号が4Tマークの場合、記録パルスにはキャッスル型を採用し、順にトップパルス101、バイアスパルス102、ラストパルス103、及びクーリングパルス104の部分から構成されている。
【0024】
トップパルス101は記録マーク201の先頭に配置されるパルスであり、レーザパワー制御回路18により所定の記録パワーPwが与えられる。トップパルス101は、記録マーク201の先端位置を決定する役割を担う。
【0025】
バイアスパルス102はトップパルス101に続いて設けられ、記録パワーPwよりも低いバイアスパワーPmが与えられる。バイアスパルス102は、トップパルス101によって熱変化を伴った記録膜の温度を保持する役割を担う。トップパルス101により形成された記録マークに対し、記録パワーPwよりも低いバイアスパワーPmを連続的に注入することで、比較的長いマーク長である4Tの記録マークを形成する。
【0026】
ラストパルス103はバイアスパルス102に続いて設けられ、トップパルス101の記録パワーPwよりも低く、バイアスパルス102のバイアスパワーPmよりも高い記録パワーPlが与えられる。ラストパルス103は、記録マーク201の後端位置を決定する役割を担う。そして、その記録パワーPlをトップパルス101の記録パワーPwよりも低くすることで、記録マーク201の後端形状の精度を向上させている。
【0027】
クーリングパルス104はラストパルス103に続いて設けられ、ほぼ再生パワー相当のボトムパワーPbが設定される。クーリングパルス104は、記録マーク形成時に温度上昇した記録膜の温度を効果的に抑えることで、不必要に記録マークの広がり(熱の拡散)を低減する効果がある。
【0028】
また、記録マーク形成以外の領域、すなわちスペース領域202では補助的なパワーであるスペースパワーPsを与える。スペースパワーPsは、ボトムパワーPbと同程度かもしくはそれ以上で、バイアスパワーPmよりも低い。スペースパワーPsは、記録膜に対して熱変質を伴うほどではないが、次の記録マークを形成するための記録パワーPwを補助する役割を担っている。
【0029】
このような記録パルスを用いることによって、記録マークの位置と形状の精度を向上させることができる。
【0030】
なお、データ信号のマーク長が短い2T及び3Tにおいては、全体のパルス長が短くなるため、キャッスル型の記録パルスではなく、記録パワーPwを有するトップパルス101のみ、あるいは、トップパルス101とこれに続くバイアスパワーPmを有するバイアスパルス102の2段構成とする。
【0031】
逆にデータ信号のマーク長が4Tよりも長い場合には、記録マーク長に応じてバイアスパルス102の長さを調整する。例えば、5Tマークにおいては、4Tにおけるバイアスパルス102の長さに1T(クロック長)を加えた長さとする。このように記録マーク長に応じてバイアスパルス102の長さを1Tずつ増減することで、形成される記録マークはそのマーク長によらず精度を維持することができる。
【0032】
次に、本実施例の記録パルス信号による改善効果を説明する。
光ディスクの記録においては、マルチパルス型やキャッスル型の記録パルスにより記録膜に熱エネルギーを与え、記録膜を変化・変質させることでデータの記録を行う。しかし、光ディスクの記録速度が速くなるに従い記録膜の熱応答速度が追従できず、結果として記録マークに歪が生じ不完全な形状になり易い。こうした現象は、記録速度の高速化のみならず記録密度の高密度化においても同様であり、その原因は記録膜内の蓄熱の現象によるものと考えられる。
こうした蓄熱による記録マークの歪は、熱エネルギーを多く投入する長い記録マークの形成時に顕著に現れる。以下、その一例を説明する。
【0033】
図3は、高速記録した記録マーク部分の再生波形の例を示し、(a)は従来の記録パルスの場合、(b)は本実施例の記録パルスの場合である。記録条件は、BD−RのLTH(Low To High)ディスクに対し6倍速の記録速度でデータパターンを記録し、その中からマーク長の長い8T成分の再生信号を抽出したものである。
【0034】
図3(a)は従来のキャッスル型の記録パルスで記録した場合であり、再生波形の振幅レベル301aが記録マーク201aの後端位置で増大している。これは、記録マーク201aの幅が後端において増大したためで、ラストパルスの記録パワーPwによる熱蓄積のためマーク形状に歪みが発生したものと考えられる。
【0035】
図3(b)は本実施例の記録パルスで記録した場合であり、再生波形の振幅レベル301bが記録マーク201bの後端位置において増大するのを抑えている。これは、ラストパルスの記録パワーPlを低くした結果、熱蓄積を少なくしマーク形状の歪みを改善したものと考えられる。
【0036】
記録速度が高速化すると、記録波形はパワー変化の少なくかつ熱制御の行いやすい形として、マルチパルス型よりもキャッスル型が有利である。しかしキャッスル型は、記録マークの中間ではバイアスパワーPmを連続的に与えるため、記録膜の温度変化の微妙な差異が蓄積していく。その結果、長い記録マークの後部でのマーク形状の歪みが発生しやすくなる。
【0037】
従来のキャッスル型では、ラストパルスの記録パワーはトップパルスの記録パワーと等しく設定していた。これに対し本実施例では、4倍速、6倍速といった高速記録では、ラストパルスの記録パワーPlをトップパルスの記録パワーPwよりも低くすることで、記録マーク形状を適正な形状にすることが可能となる。
【0038】
図4は、高速記録した記録スペース部分の従来の再生波形の例を示す。記録条件は従来のキャッスル型の記録パルスに従い、BD−RのSL(Single Layer)ディスクに対し10倍速の記録速度でデータパターンを記録し、その中から長い記録マークxT(211)とyT(215)に挟まれた2T成分の繰り返し部分(2Tスペース(212)、2Tマーク(213)、2Tスペース(214))の再生信号を抽出したものである。
【0039】
図4では、2Tスペースの再生レベル312,314が変動し(2Tスペース212,214の長さが短縮し)、誤って「1Tスペース」として検出された部分を示す。特に顕著な点として、先行する2Tスペース212のピークレベル312よりも、後行する2Tスペース214のピークレベル314が大きく変化している。この要因は、直前の記録マーク211形成時に温度上昇した後、2Tスペース212,214で十分記録膜の温度が下がり切らなかった点である。つまり、直前の記録マーク211の熱量が過剰であるためと考えられる。
【0040】
このような場合にも、記録マーク211のラストパルスの記録パワーを低くすることで、2Tスペース212,214では、記録膜の温度は十分に下がり、適正な形状のスペースを形成することができる。このように、記録マーク形成に寄与する最終部のラストパルスのパワーを抑制することで、以降のスペース、マークへの熱的影響を低減し、再生誤りを防止することができる。
以上、本実施例の効果をBD−Rディスクを例に説明したが、高速記録を行う他の光ディスクにおいても同様に有効であることは言うまでもない。また本実施例は、記録速度が10倍速を超える12倍速やそれ以上の高速化にも対応可能である。
【実施例2】
【0041】
図5は、本発明における記録パルス信号の第2の実施例を示す図である。記録パルス信号の基本的な構成は実施例1(図2)と同様であるが、異なる点は、キャッスル型記録波形におけるラストパルス103の記録パワーPlを、バイアスパルス102のバイアスパワーPmよりも低く設定したことである。
【0042】
本実施例においても、実施例1と同様に記録マーク形状の安定化、そして後続スペース更にはその先のマークへの熱的な影響を低減することができる。本実施例は実施例1と比較し、より高速に、もしくはより密度を詰めて記録を行う場合に適する方式であり、その記録速度や記録膜の特性に応じて、実施例1と本実施例とを使い分けるのがよい。
【0043】
なお、3Tマークの記録波形は2Tマークと同様にトップパルス101のみとしたが、これについても記録特性に合わせて実施例1の2段構成の波形を選択してもよい。すなわち、記録速度の高速化に伴い、記録マークだけでなく後続するスペースやマークへの影響が懸念される場合には、図2のように、トップパルス101の後半にパワーを下げたバイアスパルス102の区間を設けるのがよい。
【実施例3】
【0044】
図6は、本発明における記録パルス信号の第3の実施例を示す図である。記録パルス信号の基本的な構成は実施例1(図2)と同様であるが、異なる点は、高速記録を狙いとして、クロック長に対する各パルスの長さ(パルス長)をより長く確保したことである。キャッスル型におけるトップパルス101やラストパルス103のパルス長は、実施例1では約1Tであったものを、本実施例では1.2〜1.5T程度に拡大している。ここでは記録波形として4Tマークと5Tマークを示すが、パルス長拡大のため、5Tマークにおいてキャッスル型を採用したが、4Tマークではトップパルス101とバイアスパルス102の2段構成としている。6Tマーク以上では、5Tのキャッスル型を基準に拡張し、バイアスパワーPmのバイアスパルス102の区間をマーク長に応じて1Tずつ加えていく形とする。2T及び3Tマークでは全体のパルス長が短くなり、図5と同様に記録パワーPwのトップパルス101のみとする。
【0045】
本実施例でも、ラストパルス103の記録パワーPlをトップパルス101の記録パワーPwよりも低くして、記録マーク形状の安定化、そして後続スペース更にはその先のマークへの熱的な影響を低減することができる。特に本実施例では、記録パルスの各パルス長を長く設定しているので、高速記録時においても安定した記録パルスを生成することができる。
【実施例4】
【0046】
前記した各実施例における記録パルスのパラメータ(記録ストラテジー)は、各光ディスクごとにそれぞれ推奨する値を案内溝周期等の管理情報として埋め込んでおくのが望ましい。記述する情報は、トップパルス101、バイアスパルス102、ラストパルス103、クーリングパルス104、及びスペース位置におけるパワーと各パルスの長さと位置に関するものである。光ディスク装置は、装着された光ディスクから推奨するパラメータを読み出して記録信号処理部に設定することができる。
【0047】
図7は、光ディスクに格納する記録パルスのパラメータ情報の一例を示す図である。ここでは記録パルスのパワー値の記述について示している。
キャッスル型記録パルスの場合、従来では、記録パワーPwの適正値Pwoを基準値として、これに対するバイアスパワーPm、ボトムパワーPb(クーリングパワーPcともいう)、スペースパワーPsの値を比率εで記述していた。
【0048】
これに対し本実施例においては、キャッスル型記録パルスのトップパルス101の記録パワー(もしくは2Tマークなどのモノパルスの記録パワー)Pwの適正値Pwoを基準として、前記各パワーPm,Pb(Pc),Psの他に、キャッスル型記録パルスのラストパルス103に対する記録パワーPl(比率εL)を追加して記述する。そのため、従来のバイアスパルス部、クーリング部、スペース部の項目の他に、ラストパルス部というように新たな項目を定義する。
【0049】
このように記録パワーを記述することで、トップパルスとラストパルスの記録パワーを異ならせて設定することができる。このために光ディスクに埋め込まれる情報の増加量はわずかであり、問題にならない。
なお、パラメータ情報の記述は一例であり、ラストパルス部の記録パワーPlを基準として、他の部分のパワー値を比率で表し格納してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…再生信号処理部、
2…記録信号処理部、
3…光ディスク、
4…スピンドルモータ、
6…光ピックアップ、
7…レーザ光源(LD)、
10…光検出器、
15…マイコン、
16…記録データ生成回路
17…パルス生成回路、
18…レーザパワー制御回路、
19…レーザ駆動回路、
20…メモリ、
101…トップパルス、
102…バイアスパルス、
103…ラストパルス、
104…クーリングパルス、
Pw,Pl…記録パワー、
Pm…バイアスパワー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクにレーザ光を照射して情報に応じた記録マークを形成する光ディスク装置において、
レーザ光源を有し光ディスクにレーザ光を照射する光ピックアップと、
前記情報に基づいて記録パルス信号を生成するパルス生成回路と、
前記記録パルス信号に基づいて前記レーザ光源の発光パワーを制御するレーザパワー制御回路とを備え、
前記記録パルス信号は、前記記録マークを形成するマーク期間と前記記録マークを形成しないスペース期間とを含み、
前記マーク期間は、
第1の記録パワーPwを有するトップパルスと、
該第1の記録パワーPwより低いバイアスパワーPmを有し前記トップパルスに続くバイアスパルスと、
該第1の記録パワーPwより低い第2の記録パワーPlを有し前記バイアスパルスに続くラストパルスと、を含むことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク装置において、
前記ラストパルスの第2の記録パワーPlは、前記バイアスパルスのバイアスパワーPmよりも低いことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
光ディスクにレーザ光を照射して情報に応じた記録マークを形成する情報記録方法において、
前記情報に基づいて記録パルス信号を生成するステップと、
該記録パルス信号に基づいてレーザ光源を駆動して前記光ディスクにレーザ光を照射するステップとを備え、
前記記録パルス信号は、前記記録マークを形成するマーク期間と前記記録マークを形成しないスペース期間とを含み、
前記マーク期間は、
第1の記録パワーPwを有するトップパルスと、
該第1の記録パワーPwより低いバイアスパワーPmを有し前記トップパルスに続くバイアスパルスと、
該第1の記録パワーPwより低い第2の記録パワーPlを有し前記バイアスパルスに続くラストパルスと、を含むことを特徴とする情報記録方法。
【請求項4】
請求項3に記載の情報記録方法において、
前記ラストパルスの第2の記録パワーPlは、前記バイアスパルスのバイアスパワーPmよりも低いことを特徴とする情報記録方法。
【請求項5】
請求項3に記載の情報記録方法において、
前記記録パルス信号は、クロック長Tを基準として2Tから9Tの長さのマーク期間とスペース期間を含むとき、
長さ4T以下のマーク期間については、前記トップパルスのみ、あるいは前記トップパルスと前記バイアスパルスの組合せとし、
長さ5T以上のマーク期間については、前記トップパルス、前記バイアスパルス及び前記ラストパルスを組合せることを特徴とする情報記録方法。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれか1項に記載の情報記録方法において、
前記マーク期間の後端部に、再生パワー相当のボトムパワーPbを有するクーリングパルスを含むことを特徴とする情報記録方法。
【請求項7】
レーザ光を照射して情報を記録する光ディスクにおいて、
前記情報に応じた記録マークを形成するために、トップパルスと、該トップパルスに続くバイアスパルスと、該バイアスパルスに続くラストパルスを含む記録パルス信号を用いるとき、
前記トップパルスに対する第1の記録パワーPwと、
該第1の記録パワーPwより低い前記バイアスパルスに対するバイアスパワーPmと、
該第1の記録パワーPwより低い前記ラストパルスに対する第2の記録パワーPlの各パワー値を、当該光ディスクの管理情報として格納していることを特徴とする光ディスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−69215(P2012−69215A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213714(P2010−213714)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】