説明

光ディスク装置および光ディスク搬送機構

【課題】 専用の異常挿入検知部を設けなくとも内部の部品を破損しないディスク装置を提供すること。
【解決手段】 クランパ機構は、上下に移動することによりディスク2を挟み込むクランパ10と、このクランパ10に接続されたクランプアーム11と、このクランプアーム11に設けた軸15と嵌合するカム13aを有する制御スライダ13とを備え、この制御スライダ13の移動によりクランプアーム11が回動することによりクランパ10を上下に移動させる構成において、ディスク2を挟み込む方向とは反対の方向にクランパ10に力が加わった際、クランプアーム11または制御スライダ13の少なくとも一方が撓むことにより、クランプアーム11の軸15が制御スライダ13のカム13aから外れる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクが複数枚連続して挿入されることに対応する光ディスク装置、および光ディスク搬送機構に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクが複数枚連続して挿入され、光ディスク装置の内部の部品が破損するなどし、光ディスクが取り出し不可能になることがある。これを解決するため、光センサーなどにより、複数枚の光ディスクが挿入されたことを検知すると搬送ローラを停止するなど、事前に光ディスクの異常な挿入による部品の破壊を防止することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−101746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構造では、複数枚の光ディスクの挿入を検知する光センサーなどの専用の異常挿入検知部が必要であり、生産コストが高くなるとの課題がある。
【0005】
そこで、本発明は、生産コストを低減することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ディスク挿脱口を有した本体ケースと、ディスク挿脱口に挿入したディスクを搬送する搬送ローラと、この搬送ローラによりディスクをディスク収納位置に搬送し、ディスク収納位置において前記ディスクを挟み込むクランパ機構を有するトラバースシャーシとを備え、クランパ機構は、上下に移動することによりディスクを挟み込むクランパと、このクランパに接続されたクランプアームと、このクランプアームに設けた軸と嵌合するカムを有する制御スライダとを備え、この制御スライダの移動によりクランプアームが回動することによりクランパを上下に移動させる構成において、ディスクを挟み込む方向とは反対の方向にクランパに力が加わった際、クランプアームまたは制御スライダの少なくとも一方が撓むことにより、クランプアームの軸が制御スライダのカムから外れる構成としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、従来の問題を解決するために、ディスクを挟み込む方向とは反対の方向にクランパに力が加わった際、クランプアームまたは制御スライダの少なくとも一方が撓むことにより、クランプアームの軸が制御スライダのカムから外れる構成としたものである。したがって、ディスクが複数枚連続して挿入された際も、専用の異常挿入検知部を設けなくともディスク装置の内部の部品が変形や破損することはない。したがって、生産コストを低減することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態にかかるディスク装置を内蔵するカーオーディオ装置の全体斜視図
【図2】同ディスク装置の斜視図
【図3】同ディスク装置に複数枚のディスクが挿入された状態の斜視図
【図4】同ディスク装置に複数枚のディスクが挿入された状態の斜視図
【図5】(a)同ディスク装置に複数枚のディスクが挿入された際、部品破損を防ぐ構成を説明する図(b)同ディスク装置に複数枚のディスクが挿入された際、部品破損を防ぐ構成を説明する図(c)同ディスク装置に複数枚のディスクが挿入された際、部品破損を防ぐ構成を説明する図(d)同ディスク装置に複数枚のディスクが挿入された際、部品破損を防ぐ構成を説明する図(e)同ディスク装置に複数枚のディスクが挿入された際、部品破損を防ぐ構成を説明する図
【図6】同ディスク装置の制御スライダの斜視図
【図7】同ディスク装置の制御スライダの斜視図
【図8】(a)同ディスク装置の制御スライダおよびクランプアームの斜視図(b)同ディスク装置の制御スライダおよびクランプアームの部分拡大図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態のディスク装置1について、図面を用いて説明する。
【0010】
図1には、本発明の実施の形態のディスク装置1を内蔵するカーオーディオ装置100の全体斜視図が示されている。このカーオーディオ装置100では、ディスク装置1のほかにラジオ20、カセットテープ再生装置30等を内蔵しており、前面パネル40には、全機能に共用される表示部40aや電源/ボリュームつまみ40bに加えて、ディスク装置1における開閉自在な蓋部110aを備えたディスク挿脱口110、ラジオ用のチューニングつまみ20a、カセットテープ挿入口30a等が設けられている。また、内部には、ラジオ20、カセットテープ再生装置30、ディスク装置1等を制御する図示しない制御部が設けられている。
【0011】
図2は、ディスク装置1の斜視図を示し、図3はディスク装置1にディスク2を挿入し、ディスク装置1の内部に搬送中の図を示している。また、図4は、トラバースシャーシ3がよく見えるようにしたディスク装置1の斜視図であり、ディスク2が2枚誤って挿入された状態を示している。
【0012】
図2、図3、図4、および図5を用いて、ディスク装置1について説明する。
【0013】
ディスク装置1は、ロアフレーム4の前面に、ディスク2を挿脱するためのディスク挿入口5が設けられている。また、ロアフレーム4の上面にはディスクガイド6が装着されたアッパーフレーム7がねじ止めされ、ロアフレーム4の内部にはダンパー(図示しない)を介してトラバースシャーシ3が装着されている。なお、ロアフレーム4とアッパーフレーム7がねじ止めされたものを本体ケースと呼ぶ。
【0014】
さらに、図5に示すように、搬送ローラ支持体8は、下側からバネによって上側に与圧することにより、トラバースシャーシ3の前面に支持されている。搬送ローラ支持体8は、左右に取り付けられた軸受(図示しない)を介して金属軸が回転自在に嵌合している。また、金属軸の左端部には、ギアが取り付けられている。このギアを介して駆動ギアが金属軸を回転させることにより、ディスク挿入口5から挿入されたディスク2は、ディスク収納位置へ搬送される。
【0015】
また、金属軸の左端部にはトラバースシャーシ3に設けた軸を中心に回動するリンクアームが嵌合している。このリンクアームは、後述する制御スライダ13のカムと嵌合し、制御スライダ13が前後方向に動くと、搬送ローラ支持体8が回動する。なお、ディスク2は、ディスク挿入口5より挿入され、ディスクガイド6と搬送ローラ9と挟持される。
【0016】
また、トラバースシャーシ3は、ディスク挿入口5から挿入されたディスク2を保持し
、ディスク2から情報を読み取るディスク再生部を備えている。このディスク再生部は、説明の簡略化のため詳細な構成に関しては図示しないが、ディスク2を回転させるスピンドルモータとターンテーブル、ディスク2の情報を記録再生する光ピックアップ、および当該光ピックアップをディスク2の内周及び外周方向に駆動する機構を備えている。
【0017】
次に、クランパ10とクランプアーム11について説明する。クランパ10はクランパ押えバネ12に回転自在に装着されている。クランパ押えバネ12は、カシメによってクランプアーム11に装着されおり、クランプアーム11の左右には、ロアフレーム4の回転軸14と嵌合する穴11aを備えた曲げ形状と、左側の曲げ部には制御スライダ13のカム13aと嵌合する軸15を備えている。クランプアーム11は、制御スライダ13の前後方向の移動により、ロアフレーム4の軸14を回動中心としてクランパ10を上下に動作させる。
【0018】
なお、再生時のディスク2は、クランパ10とターンテーブルに挟持される。このとき振動や再生時のディスク2の回転ばたつきを押さえるため、クランパ10は、クランパ押えバネ12によって上側から与圧されている。
【0019】
このような構成におけるディスクの挿入動作について説明する。
【0020】
ディスク挿入口5にディスク2が挿入されると、搬送ローラ9とディスクガイド6の間にディスク2が挟まれたことをセンサが検出する。すると、駆動モータが回転し、ギアを介して搬送ローラ9が回転する。搬送ローラ9の回転とディスクガイド6の与圧による摩擦力によって装置内部にディスク2は引き込まれる。
【0021】
ディスク2がスピンドルモータと嵌合可能なディスク収納位置まで搬送されると、ディスク2の外周端によってクランプアーム11に装着されたレバーが作動する。そして、制御スライダ13に備えられたラックギアが駆動ギアと噛合い、制御スライダ13は、挿脱口方向へ移動する。制御スライダ13が挿脱口方向に移動するとクランプアーム11が回動しクランパ10がディスク2をスピンドルモータのターンテーブルに定置させる。次に、ディスク2の定置が完了する位置まで制御スライダ13が移動すると、スイッチ(図示しない)が押されて駆動モータの回転が停止し、ディスク2の再生動作へと移る。
【0022】
以上が通常のディスク再生動作であるが、次に、図5から図7を用いて、2枚のディスク2が8の字上(少しずれた状態)に重ねられて異常挿入された場合の動作について説明する。
【0023】
図5の(a)から(e)は、クランプアーム11の軸15が制御スライダ13のカム13aから外れ、その後、元の状態に戻る様子を示している。図6、図7、図8は、クランプアーム11の軸15、および制御スライダ13のカム13aの形状がよく分かるように、斜視図により示したものである。
【0024】
まず、先に挿入されたディスク2は、ディスク収納位置まで搬送されると、クランプアーム11に装着されたレバーを回動させる(図5(a)の状態)。このとき、後から挿入されたディスク2は、ディスク収納位置まで搬送されていないが、制御スライダ13の動作が始まりクランパ10が下降する(図5(b)の状態)。すると、後から挿入されたディスク2はターンテーブルの中心に装着されたセンタリング部材に乗りあげるため、クランパ10を押し上げる方向に過大な負荷が発生する。
【0025】
この過大な負荷による部品の破損を防止するため、本実施の形態では、このとき制御スライダ13およびクランプアーム11の少なくとも一方が撓むことにより、制御スライダ
13のカム13aからクランプアーム11の軸15が外れる構成としている(図5(c)の状態)。
【0026】
その際、制御スライダ13は、そのまま通常通りデッキ挿脱口方向に動作して停止する(図5(d)の状態)。しかし、クランプアーム11の軸15は、制御スライダ13のカム13aから外れているため、ディスク2にはクランパ10による与圧がかからない。なお、クランプアーム11の軸15が外れる荷重を、再生時のクランパ10の与圧よりも十分に大きく、部品が弾性変形する範囲内とすることが好ましい。
【0027】
次に、前述のように、クランプアーム11の軸15が、制御スライダ13のカム13aから外れている状態から、ユーザーがディスク排出スイッチを押した際の動作を説明する。
【0028】
ディスク2は、搬送ローラ9によって、装置内部より排出され、制御スライダ13がディスク挿入方向に移動する。そして、クランプアーム11の軸15が、制御スライダ13のカム13aに接触すると、クランプアーム11の先端部がアッパーフレーム7に接触する。このとき、クランプアーム11の軸15が制御スライダ13を介してトラバースシャーシ3をロアフレーム4に押し付ける状態となる。更に、制御スライダ13がディスク挿入方向に移動すると、クランプアーム11と制御スライダ13が弾性変形し、クランプアーム11の軸15が制御スライダ13のカム13aと再び嵌合する(図5(e)の状態)。
【0029】
また、制御スライダ13のカム13aを構成する壁にテーパーを設けることにより、クランプアーム11の軸15が制御スライダ13のカム13aと嵌合しやすくなる。なお、制御スライダ13のテーパーは、本体ケースとの距離が徐々に短くなる構成とすることが好ましい。
【0030】
以上により、ディスク収納位置に複数のディスクが挿入されるなどし、ディスクを挟み込む方向とは反対の方向にクランパ10に力が加わった際、クランプアーム11または制御スライダ13の少なくとも一方が撓むことにより、クランプアーム11の軸15が制御スライダ13のカム13aから外れる構成としたものである。したがって、ディスクが複数枚連続して挿入された際も、専用の異常挿入検知部を設けなくとも光ディスク装置の内部の部品が変形や破損することはない。したがって、生産コストを低減することができるのである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上のように、本発明にかかるディスク装置は、専用の異常挿入検知部を設けなくとも内部の部品を破損しないディスク装置を提供することが可能である。よって、車載用オーディオ機器などに有用である。
【符号の説明】
【0032】
100 カーオーディオ装置
110 ディスク挿脱口
110a 蓋部
20 ラジオ
20a チューニングつまみ
30a カセットテープ挿入口
30 カセットテープ再生装置
40 前面パネル
40a 表示部
40b 電源/ボリュームつまみ
1 ディスク装置
2 ディスク
3 トラバースシャーシ
4 ロアフレーム
5 ディスク挿入口
6 ディスクガイド
7 アッパーフレーム
8 搬送ローラ支持体
9 搬送ローラ
10 クランパ
11 クランプアーム
12 クランパ押えバネ
13 制御スライダ
13a カム
14 回転軸
15 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク挿脱口を有した本体ケースと、
前記ディスク挿脱口に挿入したディスクを搬送する搬送ローラと、この搬送ローラにより前記ディスクをディスク収納位置に搬送し、前記ディスク収納位置において前記ディスクを挟み込むクランパ機構を有するトラバースシャーシとを備え、
前記クランパ機構は、上下に移動することにより前記ディスクを挟み込むクランパと、このクランパに接続されたクランプアームと、このクランプアームに設けた軸と嵌合するカムを有する制御スライダとを備え、
この制御スライダの移動により前記クランプアームが回動することにより前記クランパを上下に移動させる構成において、
前記ディスクを挟み込む方向とは反対の方向に前記クランパに力が加わった際、前記クランプアームまたは前記制御スライダの少なくとも一方が撓むことにより、前記クランプアームの軸が前記制御スライダのカムから外れる構成である光ディスク装置。
【請求項2】
前記制御スライダのカムを構成する壁にテーパーを設けた請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記制御スライダのテーパーは、前記本体ケースとの距離が徐々に短くなる構成である請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記クランプアームの軸が前記制御スライダのカムから外れている時、前記クランパが前記ディスクを挟み込む方向に前記制御スライダが移動することにより、前記制御スライダのカムのテーパー部と前記本体ケースで前記クランプアームの軸を挟み込み、前記クランプアームの軸が前記制御スライダのカムに嵌合する構成である請求項2に記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−108970(P2012−108970A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255506(P2010−255506)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】