説明

光ディスク装置及びその制御方法

【課題】光ディスクに記録されたデータのコンテンツや記録フォーマットの他、記録方法や再生モード等の多様なパラメータに基づいて有利な回転制御方式を選択することができる光ディスク装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る光ディスク装置は、光ディスクを回転させるモータと、前記モータを、線速度が一定となるCLV方式と角速度が一定となるCAV方式のいずれかの方式で回転制御するモータ制御部と、前記光ディスクを再生する再生部と、前記光ディスクの記録フォーマット及び記録方式の少なくともいずれか一方を読み取り、複数のトラックを跨いで移動するシーク動作の頻度の高低に基づいて、前記CLV方式と前記CAV方式のいずれかを選択する方式選択部と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置及びその制御方法に係り、特に、光ディスクの回転制御の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
CDやDVDといった光ディスクの回転制御方式は、CLV(Constant Linear Velocity)方式とCAV(Constant Angular Velocity)方式に大別される。
【0003】
CLV方式はトラックの線速度が一定となるように回転速度を制御する方式であり、光ディスクの内周のトラックでは回転速度は高く、外周のトラックでは回転速度は低くなる。CLV方式では、再生信号からPLL(Phase Lock Loop)回路によって基準クロックを生成し、基準クロックの周波数が一定となるように回転速度を制御することによってトラックの線速度を一定にしている。線速度が一定であるため、データ転送レートが一定となる利点がある。このため、音楽や映像を連続再生するような場合には有利な方式である。
【0004】
一方、線速度一定制御を行うための基準クロックはPLL回路で生成しているため、基準クロックを得るためにはフェーズ・ロック・ループの引き込み動作が必要と成る。このため、複数のトラックを飛び越して移動する動作、即ちシーク動作を行うたびに引き込み動作が必要となり、高速なシーク動作を行う場合、CLV方式は不利である。
【0005】
また、回転速度が光ディスクの内周と外周とで変動するため、光ディスクを回転させるスピンドルモータの寿命劣化は大きくなる。
【0006】
これに対して、CAV方式は、トラックの位置に関わらず一定の回転速度を維持する方式である。光ディスクを回転させるモータのロータリエンコーダ等から回転速度のモニタ信号を取得し、モニタ信号が示す回転速度と指定された回転速度が一致するように制御する。
【0007】
CAV方式では、基準クロックを使用しないため、これを得るためのフェーズ・ロック・ループの引き込み動作は不要であり、高速なシーク動作が可能である。このため、多くのシーク動作を必要とする記録方式や記録フォーマットを用いて記録、再生を行う場合には有利な方式である。また、回転速度が一定であるため、スピンドルモータの寿命劣化は小さい。
【0008】
一方、CAV方式では、回転速度が一定であるため、再生データの転送レートは内周側で遅く外周側で早くなり一定とならない。このため、音楽や映像を連続再生するような場合には不利な方式である。
【0009】
このようにCLV方式とCAV方式には夫々利点と欠点とがある。
【0010】
特許文献1には、光ディスクの種類や記録されたファイルの拡張子等に基づいて、CLV方式とCAV方式とを切換える技術が開示されている。
【特許文献1】特開平11−306661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1が開示する技術は、再生専用の光ディスク、例えば、CD−AUDIO、CD−EXTRA、フォトCD、DVD−AUDIO、DVD−VIDEOに対してはCLV方式で再生する一方、コンピュータ読み取り用のCD−ROMやDVD−ROMに対しては記録フォーマットの種類をファイルの拡張子(WAV、BMP、JPG等)によって判断し、ファイルの種類や数等によってCLV方式とCAV方式とを切換える、というものである。
【0012】
特許文献1が対象とする光ディスクは、再生専用の光ディスクであり、光ディスクの物理規格上はいずれもCD−ROM、或いはDVD−ROMに属するものである。
【0013】
これに対して、近時は追記型の光ディスク(CD−R、DVD−R等)や、書き換え型の光ディスク(CD−RW、CD−RAM、DVD−RW、DVD−RAM等)が再生専用の光ディスクと同等、或いはそれ以上に普及してきており、光ディスクの種類は多様化してきている。
【0014】
また、光ディスクの種類だけでなく、記録するファイルのフォーマットも益々多様化してきている。
【0015】
さらに、CD−R等の追記型の光ディスクでは、マルチセッションやシングルセッションと呼ばれる複数の記録方式が存在し、記録方式も多様化している。
【0016】
この他、再生方法も多様化してきている。音楽や映像を視聴するために再生する通常の再生モードに加えて、ハードディスク等に保存するために再生するリッピングモードがあり、リッピングモードでは通常の再生モードよりも高速に再生する。
【0017】
このように、今日の光ディスクは、ディスクの種類、記録フォーマットの種類、記録方法、再生モード等がいずれも多様化してきている。このため、特許文献1が開示するように、単純に記録コンテンツや記録フォーマットの種類だけに基づいてCAV方式とCLV方式を選択する技術ではもはや不十分となってきている。
【0018】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、光ディスクに記録されたデータのコンテンツや記録フォーマットの他、記録方法や再生モード等の多様なパラメータに基づいて有利な回転制御方式を選択することができる光ディスク装置、及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、本発明に係る光ディスク装置は、請求項1に記載したように、光ディスクを回転させるモータと、前記モータを、線速度が一定となるCLV方式と角速度が一定となるCAV方式のいずれかの方式で回転制御するモータ制御部と、前記光ディスクを再生する再生部と、前記光ディスクの記録フォーマット及び記録方式の少なくともいずれか一方を読み取り、複数のトラックを跨いで移動するシーク動作の頻度の高低に基づいて、前記CLV方式と前記CAV方式のいずれかを選択する方式選択部と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る光ディスク装置の制御方法は、請求項7に記載したように、(a)モータによって光ディスクを回転させ、(b)前記モータを、線速度が一定となるCLV方式と角速度が一定となるCAV方式のいずれかの方式で回転制御し、(c)前記光ディスクを再生し、(d)複数のトラックを跨いで移動するシーク動作の頻度及び前記モータの回転速度の高低の少なくとも何れか一方に基づいて、前記CLV方式と前記CAV方式のいずれかを選択する、ステップを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る光ディスク装置、及びその制御方法によれば、光ディスクに記録されたデータのコンテンツや記録フォーマットの他、記録方法や再生モード等の多様なパラメータに基づいて有利な回転制御方式を選択することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施形態に係る光ディスク装置1及びその制御方法について、添付図面を参照して説明する。
【0023】
(1)光ディスク装置の構成と全般動作
図1は、本実施形態に係る光ディスク装置1の構成例を示す図である。
【0024】
図1に示した光ディスク装置1は、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM等の記録型光ディスク100に対して、記録と再生の双方が可能な構成を示しているが、本発明は再生専用の光ディスク装置に対しても適用可能である。
【0025】
光ディスク100には、螺旋状に溝が刻まれており、溝の凹部をグルーブ、凸部をランドと呼び、グループ又はランドの一周をトラックと呼ぶ。ユーザデータはこのトラック(グルーブのみ又はグルーブ及びランド)に沿って、強度変調されたレーザ光を照射してデータの符号長に対応するマークとスペースを形成することで記録される。
【0026】
データ再生は、記録時より弱いリードパワー(read power)のレーザ光をトラックに沿って照射して、トラック上にあるマーク及びスペースからの反射光の強度の変化を検出することにより行われる。記録されたデータの消去は、前記リードパワーより強いイレースパワー(erase power)のレーザ光をトラックに沿って照射し、記録層を結晶化することにより行われる。
【0027】
なお、再生専用の光ディスク100、例えばCD−ROMやDVD−ROMの場合、記録情報に対応するピットが予めトラック上に形成されており、ピットの有無によって変化する反射光の強弱によって再生信号を生成している。
【0028】
光ディスク100はスピンドルモータ(モータ)2によって回転駆動される。スピンドルモータ2に設けられたロータリエンコーダ2aからは回転速度(或いは角速度)モニタ信号が出力される。ロータリエンコーダ2aの内部には、例えばホール素子が等間隔に配置されており、スピンドルモータ2が回転すると、各ホール素子からパルス(FGパルス:Frequency Generator pulseと呼ばれることもある)が出力され、スピンドルモータ2の1回転で所定数の複数パルスがロータリエンコーダ2aから出力される。このFGパルスをカウントするにことによってスピンドルモータ2の回転速度を検出することができる。スピンドルモータ2の回転速度の具体的な検出方法や回転速度モニタ信号の形態は特に限定するものではなく、スピンドルモータ2の回転速度を検出することができる他の手法、例えば光学的な回転速度検出方法や、機構的な回転速度検出方法であってもよい。
【0029】
モータ制御部62では、ロータリエンコーダ2aから出力される回転速度情報(回転速度モニタ信号)が、制御部70から指示される基準回転速度に一致するように、一定回転速度(角速度)制御(CAV:Constant Angular Velocity)を行っている。
【0030】
一方、モータ制御部62では、一定線速度制御(CLV:Constant Linear Velocity)も行っている。CLV方式は、トラックの線速度が一定となるように回転速度を制御する方法であり、光ディスク100の内側では回転速度が高く、外側では回転速度が低くなるように制御している。CLV方式では、再生信号からPLL制御回路61によって再生用基準クロックを生成し、この基準クロックの周波数が一定となるように回転速度制御を行っている。音楽CDや、映画等のストリームデータを記録しているDVDではCLV方式を用いてこれらのコンテンツデータを再生している。
【0031】
光ディスク100に対する情報の記録、再生は、光ピックアップ3によって行われる。光ピックアップ3は、送りモータ4とギア4b及びスクリューシャフト4aを介して連結されており、この送りモータ4は送りモータ制御回路5により制御される。送りモータ4が送りモータ制御回路5からの送りモータ駆動電流により回転することにより、光ピックアップ3が光ディスク100の半径方向に移動する。
【0032】
光ピックアップ3には、図示しないワイヤ或いは板バネによって支持された対物レンズ30が設けられている。対物レンズ30は駆動コイル31の駆動によりフォーカシング方向(対物レンズの光軸方向)への移動が可能である。また、駆動コイル32の駆動によりトラッキング方向(レンズの光軸と直交する方向)への移動が可能である。
【0033】
レーザ駆動回路(記録部)6は、変調部72にてEFM(Eight to Fourteen Modulation)方式や8/16変調方式等で変調された記録データ基づいて、書き込み用の駆動電流をレーザダイオード(レーザ発光素子)33に供給する。変調部72には、ホスト装置200からI/F部71を介して記録用のデータが供給される。
【0034】
一方、レーザ駆動回路6は情報読取り時には、書き込み用の駆動電流よりも小さな読み取り用の駆動電流をレーザダイオード33に提供する。
【0035】
フォトダイオード等により構成されるパワー検出部34(フロントモニタ(FM)と呼ぶ場合もある)はレーザ発光素子33が発生するレーザ光の一部をハーフミラー35により一定比率だけ分岐し、光量、即ち発光パワーに比例した信号を受光信号として検出する。検出した受光信号はレーザ駆動回路6にフィードバックされる。レーザ駆動回路6はパワー検出部34からの受光信号に基づいて、所定のレーザパワーで発光するように、レーザ発光素子33を制御する。
【0036】
レーザ発光素子33はレーザ駆動回路6から供給される駆動電流に応じてレーザ光を発生する。レーザ発光素子33から発せられるレーザ光は、コリメータレンズ36、ハーフプリズム37、対物レンズ30を介して光ディスク100上に照射される。
【0037】
一方、光ディスク100からの反射光は、対物レンズ30、ハーフプリズム37、集光レンズ38、およびシリンドリカルレンズ39を介して、光検出器40に導かれる。
【0038】
光検出器40は、例えば4分割の光検出セルから成り、これら光検出セルの検知信号は再生部60のRFアンプ64に出力される。RFアンプ64は光検知セルからの信号を処理し、ジャストフォーカスからの誤差を示すフォーカスエラー信号FE、レーザ光のビームスポット中心とトラック中心との誤差を示すトラッキングエラー信号TE、及び光検知セル信号の全加算信号である再生信号を生成する。
【0039】
フォーカスエラー信号FEはフォーカス制御部8に供給される。フォーカス制御部8は、フォーカスサーボループが閉じている状態では、フォーカスエラー信号FEに基づいてフォーカス駆動信号を生成する。フォーカス駆動信号はフォーカシング方向の駆動コイル31に供給され対物レンズ30を光軸方向に駆動する。この結果、レーザ光の焦点が光ディスク100の記録面上に常時ジャストフォーカスとなるフォーカスサーボ制御が行われる。
【0040】
一方、トラッキングエラー信号TEはトラック制御回路9に供給される。トラック制御回路9はトラッキングエラー信号TEに応じてトラック駆動信号を生成する。トラック制御回路9から出力されるトラック駆動信号は、トラッキング方向の駆動コイル32に供給される。これによりレーザ光が光ディスク100上に形成されたトラック上を常にトレースするトラッキングサーボ制御が行われる。
【0041】
上記フォーカスサーボ制御およびトラッキングサーボ制御が行われることで、レーザ光の焦点は、光ディスク記録面のトラック上を精度良く追従することができる。この結果、光検出器40の各光検出セルの出力信号の全加算信号RFには、記録情報に対応して光ディスク100のトラック上に形成されたマークやスペースからの反射光の変化が正確に反映され、品質の良い再生信号を得ることができる。
【0042】
この再生信号(全加算信号RF)は、プリアンプ/等化器65に入力され、ここで適宜の振幅に増幅されアナログ的な波形整形が行われる。プリアンプ/等化器65の出力は、2値化処理部66に入力され、適宜の閾値でスライスされてデジタルデータに変換される。また、このデジタルデータの一部は、PLL制御回路61に入力され、デジタルデータの基本波成分から再生クロックが生成される。
【0043】
デジタル化された再生信号は、データ復号部63に入力される。データ復号部63では、再生信号に含まれる同期信号を検出し、同期信号に所定の遅延時間で連なっているデータ系列を抽出し、復号データを得る。
【0044】
データ復号部63から出力される復号データはエラー訂正部73に入力され、ここでエラー訂正処理が行われた後I/F部71を介してホスト装置200に出力される。
【0045】
また、本実施形態に係る光ディスク装置1では、方式選択部67を設けた構成としている。方式選択部67では、前述した回転制御の2つの方式、即ち、CAV方式とCLV方式のうち、いずれか一方の方式を選択している。この選択は、制御部70から出力される記録フォーマットの情報、記録方式の情報、再生モードの情報等に基づいて選択される。
【0046】
(2)回転制御方式の選択動作
以下、本実施形態に係る光ディスク装置1の特徴である方式選択部67の動作、即ち回転制御方式の選択動作について説明する。
【0047】
図2は、本実施形態に係る光ディスク装置1において、CAV方式とCLV方式とを選択するときに判断基準の一例をまとめた表である。
【0048】
図2の表中、最左列には、光ディスク装置1で再生する光ディスク100の種類として、CDとDVDの2種類の区分を示している。
【0049】
また、図2の表中、右側の2列には、選択すべき回転制御方式(CLV方式とCAV方式の何れか)を「○」で示している(選択しない方式は「×」としている)。
【0050】
中央の3列には、選択の判断の元となるパラメータを示している。まず、左から2番目の「記録フォーマット」の列には、回転制御方式の選択基準となる記録フォーマットの種類をCDとDVDとに区分して記載している。
【0051】
一行目の「CD−DA(Compact Disc Digital Audio」は、CDに音楽等の音声を記録するときの記録フォーマットであり、サンプリング周波数が44.1kHz、量子化ビット数が16ビットと規定されている規格である。CD−DAでは、主に音楽等の音声データを、記録時と同じ速度で連続的に再生することを前提とする記録ファーマットである。この記録フォーマットで記録された光ディスク100(CD)は、内周から外周に向けて連続的にトラックをトレースして再生されるため、複数のトラックを跨いで移動させるシーク動作の頻度は少ない。また、再生データの転送レートは光ディスク100の内周側と外周側とで一定である方が音楽等の再生には好ましい。以上のような観点から、記録フォーマットがCD−DAの場合には、CLV方式を選択するものとしている。
【0052】
2行目の「圧縮Audio」は、記録フォーマットが、MP−3(MPEG-1 Audio layer-3)、WMA(Windows(登録商標) Media Audio)、ACC(Advanced Audio Coding)等の音声データ圧縮形式のものである。また、「DivX」は、ビデオデータ圧縮形式の記録フォーマットである。一般に、音声やビデオを圧縮した記録フォーマットのデータを再生する場合には、複数のトッラク間を跨ぐシーク動作の頻度が高くなる。前述したように、CLV方式では、PLL制御回路61で生成される再生クロックを利用しており、再生クロックを生成するためにはフェーズ・ロック・ループが整定している必要がある。このためシーク動作が発生すると、その都度フェーズ・ロック・ループの引き込み動作が必要となる。従って、シーク動作の頻度の高い記録フォーマットをCLV方式で再生すると引き込み動作の回数が増加し、これに伴って全体の再生速度が低下する。
【0053】
そこで、本実施形態では、「圧縮Audio」や「DivX」等の記録フォーマットで記録された光ディスク100(CD)を再生するときの回転制御方式としては、CAV方式を選択するものとしている。
【0054】
5行目の「DVD-VIDEO」や「DVD-AUDIO」は、DVDに対してビデオや音声を記録するときの記録フォーマットのである。これらの記録フォーマットは、主に、映画や音楽等を通常の再生速度で連続的に再生することを前提としたものであり、シーク動作の頻度は比較的少ない一方、ユーザの視聴を考えると再生データの転送速度が光ディスク100の内周側と外周側とで一定である方が好ましい。
【0055】
そこで、本実施形態では、「DVD-VIDEO」や「DVD-AUDIO」の記録フォーマットで記録された光ディスク100(DVD)に対しては、CLV方式を選択するものとしている。
【0056】
これに対して、6行目に記載したように、「圧縮Audio」や「DivX」の記録フォーマットで記録されたDVDに対しては、前述と同じ理由により、CAV方式を選択するものとしている。また、「DVD-VR(DVD Video Recording Format)は、「DVD-VIDEO」を発展させたものであり、録画した映像を自由に分割、結合、カット、順番入れ替えができる等、自由度の高い記録フォーマットである。このため、「DVD-VR」の記録フォーマットで記録されたDVDは、「DVD-VIDEO」の記録フォーマットで記録されたDVDよりもシーク動作の頻度が一般に高い。そこで、「DVD-VR」の記録フォーマットで記録されたDVDに対してもCAV方式を選択するものとしている。
【0057】
なお、記録フォーマットの情報は、光ディスク100のリードインエリアに記録されているTOC(Table Of Contents)情報を読み取ることによって得ることができる。
【0058】
図の左から3番目の列は、回転制御方式の選択基準を再生モードの観点から定めたものである。上から3行目に記載している「リッピングモード」とは、記録データをHDD(Hard Disk Drive)等に保存することを目的として再生するモードである。ユーザが音楽等を聴くために再生するモード(通常の再生モード)と異なり、データの転送速度に制約がなく、HDD等に短時間での記録データを保存するためには、光ディスク100を高速で回転させた方が有利である。そこで、本実施形態では、再生モードとして「リッピングモード」が選択されたときには、CAV方式を選択するものとしている。
【0059】
また、上から7行目に記載している、ATAPI(AT Attachment Packet Interface)データ通信は、DVD等の光ディスクの記録、再生データと外部のホスト装置200との通信に多く用いられている通信規格である。パーソナルコンピュータ等の情報処理装置やカーナビゲータをホスト装置とするときのデータ通信に多く用いられている。通信速度を高速にするためには光ディスク100の回転速度は速い方が好ましく、この観点から、本実施形態では、ATAPIデータ通信を伴う再生モードでは、CAV方式を選択するものとしている。
【0060】
図2の左から4番目の列は、回転制御方式の選択基準を記録方式の観点から定めたものである。上から4行目に記載している「マルチセッション方式」は、CD−Rの記録方式の1つである。ここで、「セッション」とは、記録開始の目印である「リードイン」と、記録終了の目印である「リードアウト」と、その間に挟まれたデータ本体とで構成されるデータの記録単位のことである。1つのCDに1つのセッションの記録だけを行う記録方式が「シングルセッション方式」である。これに対して、「マルチセッション方式」は複数のセッションの記録が可能な記録方式である。「マルチセッション方式」で記録されたCDでは、セッション間の移動の際にシーク動作が発生する。このため、「シングルセッション方式」で記録されたCDに比べるとシーク動作の頻度が高くなり、CLV方式よりもCAV方式の方が有利となる。そこで、本実施形態では、「マルチセッション方式」で記録されたCDに対しては、CAV方式を選択するものとしている。
【0061】
最下段の行に記載しているDVDの「マルチボーダ方式」は、CDにおける「マルチセッション方式」と基本的に同じ記録方式である。従って、本実施形態では、「マルチボーダ方式」で記録されたDVDに対しても、CAV方式を選択するものとしている。
【0062】
(3)第1の実施形態に係る回転制御方式の選択
図3は、上述した回転制御方式の選択基準に基づく選択処理の一例を示すフローチャートである。
【0063】
まず、ステップST1で、光ディスク100の起動処理を行った後、フォーカスサーボやトラッキングサーボを動作させる(ステップST2)。この状態で、光ディスク100のリードイン領域にあるTOC情報を再生し、記録フォーマットや記録方式の情報を取得する(ステップST3)。
【0064】
光ディスク100の種類がCDであり記録フォーマットが「CD-DA」の場合、或いは、光ディスク100の種類がDVDであり記録フォーマットが「DVD-VIDEO」又は「DVD-AUDIO」の場合には、図2に示した判断基準によってCLV方式が有利であるが、これ以外の記録フォーマットでは逆にCAV方式の方が有利である。そこで、この場合は(ステップST4のNO)、ステップST8へ進み、CAV方式を選択する。
【0065】
一方、記録フォーマットが、「CD-DA」、「DVD-VIDEO」、及び「DVD-AUDIO」の何れかの場合にはCLV方式の方が有利であるが、この場合にはさらにステップST5にて、記録方式の判断を行う。
【0066】
記録方式が「マルチセッション方式」又は「マルチボーダ方式」の場合には、前述したようにCAV方式の方が有利であると判断し、ステップST8に進んでCAV方式を選択する。
【0067】
記録方式が「マルチセッション方式」及び「マルチボーダ方式」の何れでもない場合には、さらにステップST6へ進み再生モードの判断を行う。
【0068】
再生モードが「リッピングモード」の場合、或いは「ATAPI通信を伴う再生モード」の場合には、ステップST8へ進み、CAV方式を選択する。
【0069】
再生モードが「リッピングモード」及び「ATAPI通信を伴う再生モード」の何れでもない場合には、ステップST7にて、CLV方式を選択する。
【0070】
ステップST8までの処理が回転制御方式の選択処理であり、ステップST9では、選択した回転制御方式に基づく記録データの再生処理に移行する。
【0071】
第1の実施形態に係る回転制御方式の選択処理方法は、挿入された光ディスク100のTOC情報をモニタし、或いはその光ディスク100の再生モード情報をモニタし、図2に示した選択判断基準に基づいて回転制御方式を選択する方法である。
【0072】
(4)その他の実施形態に係る回転制御方式の選択
図4は、第2の実施形態に係る回転制御方式の選択処理例を示すフローチャートである。図2に示した回転制御方式の選択基準の1つは、シーク動作の頻度に基づくものである。即ち、シーク動作の頻度が高くなると考えられる記録フォーマットや再生モードに対しては、CAV方式を選択し、逆にシーク動作の頻度が低くなると考えられる記録フォーマットや再生モードに対しては、CLV方式を選択するものとしている。
【0073】
第2の実施形態に係る回転制御方式の選択方法は、記録フォーマットや再生モードをモニタするのではなく、直接シーク動作の頻度を計測し、計測結果に基づいてその後の回転制御方式を決定するというものである。
【0074】
ステップST11で光ディスク100挿入後の起動処理を行った後、CLV方式またはCAV方式のいずれかの回転制御方式で一定期間記録データの再生処理を行う(ステップST12)。
【0075】
ステップ13では、この一定期間の再生処理中に発生するシーク動作の回数を計測する。そして、シーク動作の回数が所定値以上の場合には、その光ディスク100に対してはCLV方式よりもCAV方式のほうが有利であると判断し、CAV方式を選択する(ステップST15)。他方、シーク動作の回数が所定値未満の場合には、その光ディスク100に対してはCLV方式を選択する(ステップST16)。
【0076】
その後の再生処理では、選択した何れかの回転制御方式を用いて、その光ディスク100の再生処理を行う。
【0077】
第2の実施形態では、方式の選択に一定の期間を必要とするものの、シーク動作回数を実際の計測に基づいて決定しているため、より適正な方式選択が可能である。
【0078】
図5は、第3の実施形態に係る回転制御方式の選択処理例を示すフローチャートである。上述した第1、及び第2の実施形態では、挿入した光ディスク100毎に回転制御方式を選択する方式である。これに対して、第3の実施形態に係る回転制御方式の選択処理では、ユーザが使用している光ディスク装置1の単位で回転制御方式を選択する。例えば、ユーザが使用する光ディスク装置1において、直近に再生した過去10枚のDVDのうち、5枚以上が「DVD-VR」の記録ファーマットで記録されたDVDであった場合には、以降の再生では、「DVD-VR」の再生に有利なCAV方式を選択する、という方法である。なお、CAV方式を選択した後に再生するDVDが、「DVD-VR」よりも「DVD-VIDEO」の再生回数の方が多くなったような場合には、CAV方式から「DVD-VIDEO」の再生に有利なCLV方式に戻せば良い。
【0079】
まず、ステップST21からステップST23の処理によって、光ディスク100のリードイン領域にあるTOC情報を再生し、記録フォーマットや記録方式の情報を取得する。
【0080】
光ディスク100の種類が「CD-DA」、「DVD-VIDEO」、及び「DVD-AUDIO」以外の場合には(即ち、CAV方式の方が有利な光ディスク100の場合には)、そのディスクの再生回数(再生枚数の累積値)を記録する(ステップST24)。
【0081】
同様に、光ディスク100の記録方式が「マルチセッション方式」又は「マルチボーダ方式」の場合には、(即ち、CAV方式の方が有利な光ディスク100の場合には)、そのディスクの再生回数を記録する(ステップST25)。
【0082】
さらに同様に、ユーザがその光ディスク100を「リッピングモード」又は「ATAPIデータ通信を伴う再生モード」で再生している場合には(即ち、CAV方式の方が有利な再生モードを使用している場合には)、そのディスクの再生回数を記録する(ステップST26)。
【0083】
ステップST27では、直近の過去に光ディスク装置1で再生した総ての光ディスク100の再生回数(再生枚数の累積値)が所定値に達しているか否かを判断し、所定値に達していない場合にはステップST21からステップST26を繰り返す。
【0084】
ステップST28では、再生した光ディスク100のうち、CAV方式の方が有利な光ディスク100の再生頻度を求め、その頻度が所定値(例えば50%)以上か否かを判断する。そして、その頻度が所定値以上の場合には、CAV方式を選択する(ステップST29)。他方、その頻度が所定値未満の場合には、CLV方式を選択する(ステップST30)。
【0085】
その後、選択された回転制御方式を用いて、その光ディスク装置1の回転制御を行う。
【0086】
以上説明してきたように、本実施形態に係る光ディスク装置1及びその制御方法によれば、光ディスクに記録されたデータのコンテンツや記録フォーマットの他、記録方法や再生モード等の多様なパラメータに基づいて有利な回転制御方式を選択することができる。
【0087】
なお、本発明は上記の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施形態に係る光ディスク装置の構成例を示すブロック図。
【図2】本実施形態に係る回転制御方式の選択基準の一例を示す表。
【図3】第1の実施形態に係る回転制御方式の選択処理例を示すフローチャート。
【図4】第2の実施形態に係る回転制御方式の選択処理例を示すフローチャート。
【図5】第3の実施形態に係る回転制御方式の選択処理例を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0089】
1 光ディスク装置
2 スピンドルモータ(モータ)
3 光ピックアップ
60 再生部
70 制御部
62 モータ制御部
67 方式選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクを回転させるモータと、
前記モータを、線速度が一定となるCLV方式と角速度が一定となるCAV方式のいずれかの方式で回転制御するモータ制御部と、
前記光ディスクを再生する再生部と、
前記光ディスクの記録フォーマット及び記録方式の少なくともいずれか一方を読み取り、複数のトラックを跨いで移動するシーク動作の頻度の高低に基づいて、前記CLV方式と前記CAV方式のいずれかを選択する方式選択部と、
を備えたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記方式選択部は、
再生しようとする前記光ディスクが、CD−DA、DVD−VIDEO、及びDVD−AUDIOのいずれかの規格の記録フォーマットによって記録された光ディスクである場合には、前記シーク動作の頻度が低いと判断して前記CLV方式を選択し、前記各規格以外の規格のデータフォーマットによって記録された光ディスクである場合には、前記シーク動作の頻度が高いと判断して前記CAV方式を選択する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記方式選択部は、
再生しようとする前記光ディスクの記録方式が、マルチセッション方式又はマルチボーダ方式で記録されている場合には、前記シーク動作の頻度が高いと判断して前記CAV方式を選択する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記方式選択部は、
前記光ディスクの再生モードをさらに判断し、
前記光ディスクをリッピングモードによって再生する場合には、前記モータの回転速度が通常の再生モードに比べて高いと判断して前記CAV方式を選択する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
光ディスクを回転させるモータと、
前記モータを、線速度が一定となるCLV方式と角速度が一定となるCAV方式のいずれかの方式で回転制御するモータ制御部と、
前記光ディスクを再生する再生部と、
前記再生部にて再生する光ディスクの再生頻度を計測し、複数のトラックを跨いで移動するシーク動作が多用される光ディスクの再生頻度が高い場合にはCAV方式を選択し、複数のトラックを跨いで移動するシーク動作が多用される光ディスクの再生頻度が低い場合にはCLV方式を選択する方式選択部と、
を備えたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項6】
光ディスクを回転させるモータと、
前記モータを、線速度が一定となるCLV方式と角速度が一定となるCAV方式のいずれかの方式で回転制御するモータ制御部と、
前記光ディスクを再生する再生部と、
前記再生部にて再生する光ディスクに対して複数のトラックを跨いで移動するシーク動作の頻度を計測し、計測した前記シーク動作の頻度が高い光ディスクに対してはCAV方式を選択し、計測した前記シーク動作の頻度が低い光ディスクに対してはCLV方式を選択する方式選択部と、
を備えたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項7】
(a)モータによって光ディスクを回転させ、
(b)前記モータを、線速度が一定となるCLV方式と角速度が一定となるCAV方式のいずれかの方式で回転制御し、
(c)前記光ディスクを再生し、
(d)複数のトラックを跨いで移動するシーク動作の頻度及び前記モータの回転速度の高低の少なくとも何れか一方に基づいて、前記CLV方式と前記CAV方式のいずれかを選択する、
ステップを備えたことを特徴とする光ディスク装置の制御方法。
【請求項8】
ステップ(d)では、
再生しようとする前記光ディスクが、CD−DA、DVD−VIDEO、及びDVD−AUDIOのいずれかの規格のデータフォーマットによって記録された光ディスクである場合には、前記シーク動作の頻度が少ないと判断して前記CLV方式を選択し、前記各規格以外の規格のデータフォーマットによって記録された光ディスクである場合には、前記シーク動作の頻度が多いと判断して前記CAV方式を選択する、
ことを特徴とする請求項7に記載の光ディスク装置の制御方法。
【請求項9】
ステップ(d)では、
再生しようとする前記光ディスクの記録方式が、マルチセッション方式又はマルチボーダ方式で記録されている場合には、前記シーク動作の頻度が多いと判断して前記CAV方式を選択する、
ことを特徴とする請求項7に記載の光ディスク装置の制御方法。
【請求項10】
ステップ(d)では、
前記光ディスクをリッピングモードによって再生する場合には、前記モータの回転速度が通常の再生モードに比べて高いと判断して前記CAV方式を選択する、
ことを特徴とする請求項7に記載の光ディスク装置の制御方法。
【請求項11】
(a)モータによって光ディスクを回転させ、
(b)前記モータを、線速度が一定となるCLV方式と角速度が一定となるCAV方式のいずれかの方式で回転制御し、
(c)前記光ディスクを再生し、
(d)再生する光ディスクの再生頻度を計測し、複数のトラックを跨いで移動するシーク動作が多用される光ディスクの再生頻度が高い場合にはCAV方式を選択し、複数のトラックを跨いで移動するシーク動作が多用される光ディスクの再生頻度が低い場合にはCLV方式を選択する、
ステップを備えたことを特徴とする光ディスク装置の制御方法。
【請求項12】
(a)モータによって光ディスクを回転させ、
(b)前記モータを、線速度が一定となるCLV方式と角速度が一定となるCAV方式のいずれかの方式で回転制御し、
(c)前記光ディスクを再生し、
(d)再生する光ディスクに対して複数のトラックを跨いで移動するシーク動作の頻度を計測し、計測した前記シーク動作の頻度が高い光ディスクに対してはCAV方式を選択し、計測した前記シーク動作の頻度が低い光ディスクに対してはCLV方式を選択する、
ステップを備えたことを特徴とする光ディスク装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−300016(P2008−300016A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148084(P2007−148084)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(504113008)東芝アルパイン・オートモティブテクノロジー株式会社 (110)
【Fターム(参考)】