説明

光ディスク装置

【課題】トレイの挿入・排出動作中の縦揺れや横揺れを簡単な構造で抑えることができ、部品点数及び組立工数の増加によるコストアップがなく、装置の薄型化を図ることもできる、光ディスク装置を提供する。
【解決手段】ローダーシャーシ1の左右両側壁1aの内側面に凸型レール1dを横一列に配列して形成し、この凸型レール1dにトレイ9の左右両側面に形成した凹溝9aを摺動自在に嵌合することによって、トレイ9をローダーシャーシ1の内側に挿入・排出可能に取付け、ローダーシャーシ1の少なくとも左右いずれか片側の側壁1aの内面に、トレイ9を反対側の側壁に向かって付勢する付勢手段としての樹脂バネを一体に形成した構成の光ディスク装置とする。凹溝9aと凸型レール1dの嵌合ガタが生じ難いのでトレイ9の縦揺れが抑えられ、樹脂バネの付勢によってトレイ9の横揺れが抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD、MD、DVDなどの光ディスクに記録・再生を行う光ディスク装置に関し、特に、光ディスクを搬送するトレイの挿入・排出動作中の縦揺れや横揺れを抑えることができるように改良した光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、クランパーを上部に備えたローダーシャーシに、光ピックアップをターンテーブルに対して接近・離反可能に搭載したトラバースシャーシを上下揺動可能に取付けると共に、トラバースシャーシを上下に揺動させるカムスライダーを取付け、光ディスクを搬送するトレイをトラバースシャーシとクランパーとの間に配置してローダーシャーシの内側に挿入・排出可能に取付けた光ディスク装置が知られている。
【0003】
このような光ディスク装置の大半は、図7に示すように、ローダーシャーシ1の左右両側壁1a,1aの内側に上向きに突き出すレール10d,10dを設け、このレール10d,10dにトレイ9の左右両側縁の下面に形成した凹溝90a,90aを摺動自在に嵌合すると共に、ローダーシャーシ1の左右両側壁1a,1aから内側に突き出すガイド10h,10hで、トレイ9の凹溝90a,90aがレール10d,10dから外れないように浮上を防止して、トレイ9をローダーシャーシ1の内側に挿入・排出可能に取付けている。
【0004】
また、シャーシの左右両側壁から内側へ突き出すレールを取付け、トレイの左右両端に形成したレール溝をレールに嵌合させてトレイを摺動自在に取付け、レールとレール溝を嵌合案内するガイドローラをコイルバネによってトレイに弾圧させるように構成したディスクプレーヤも知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−15151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図7に示す取付構造によってトレイ9をローダーシャーシ1の内側に挿入・排出可能に取付けた従来の光ディスク装置は、ローダーシャーシ1の左右両側壁1a,1aの内側にレール10dとガイド10hを合成樹脂で一体成形するときの寸法精度が低く、トレイ9の凹溝90aをレール10dに嵌合させて取付けた状態では、凹溝90aとレール10dとの間隙寸法や、トレイ9の両側縁の上面とガイド10hとの間隙寸法が大きくなって、所謂、嵌合ガタが生じるため、トレイ9の挿入・排出動作中にトレイ9が縦揺れしたり横揺れしたりするという問題があった。
【0007】
また、従来の光ディスク装置のように、トレイ9の左右両側縁の下面に凹溝90a,90aを突き出して形成すると、この凹溝90a,90aを形成する分だけトレイ9の上下寸法が大きくなるため、ローダーシャーシ1の高さが増して、光ディスク装置の大型化を招くという問題もあった。
【0008】
上記のような問題は、前記特許文献1のディスクプレーヤでは生じにくいと考えられるが、特許文献1のディスクプレーヤのように、ガイドローラをコイルバネによってトレイに弾圧させる構造にすると、構造が複雑になり、小型化が難しく、ガイドローラやコイルバネなどの部品代が嵩むことに加えて、部品点数及び組立工数の増加により、大幅なコストアップを招くという新たな問題が生じることになる。
【0009】
本発明は上記事情の下になされたもので、その解決しようとする課題は、トレイの挿入・排出動作中の縦揺れや横揺れを簡単な構造で抑えることができ、部品点数及び組立工数の増加によるコストアップがなく、装置の小型化(薄型化)を図ることもできる、光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る光ディスク装置は、クランパーを上部に備えたローダーシャーシに、光ピックアップをターンテーブルに対して接近・離反可能に搭載したトラバースシャーシを上下揺動可能に取付けると共に、トラバースシャーシを上下に揺動させるカムスライダーを取付け、光ディスクを搬送するトレイをトラバースシャーシとクランパーとの間に配置してローダーシャーシの内側に挿入・排出可能に取付けた光ディスク装置において、
上記ローダーシャーシの左右両側壁の内側面に凸型レールを横一列に配列して形成すると共に、この凸型レールに上記トレイの左右両側面に形成した凹溝を摺動自在に嵌合することによって、上記トレイを上記ローダーシャーシの内側に挿入・排出可能に取付け、上記ローダーシャーシの少なくとも左右いずれか片側の側壁の内面に、上記トレイを反対側の側壁に向かって付勢する付勢手段を一体に形成したことを特徴とするものである。
【0011】
本発明の光ディスク装置においては、上記付勢手段を、ローダーシャーシの前端寄りの上記側壁の内面に形成することが好ましい。そして、上記付勢手段はローダーシャーシの上記側壁と一体に形成された樹脂バネであることが好ましく、この樹脂バネの先端部を上記トレイの凹溝に摺動自在に挿入することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光ディスク装置のように、ローダーシャーシの左右両側壁の内側面に凸型レールを横一列に配列して形成し、この凸型レールにトレイの左右両側面に形成した凹溝を摺動自在に嵌合することによって、トレイをローダーシャーシの内側に挿入・排出可能に取付けてあると、凸型レールと凹溝の成形時の寸法精度が向上し、凸型レールと凹溝との上下方向の間隙寸法が減少して、上下方向の嵌合ガタが生じ難くなるため、トレイの挿入・排出動作中の縦揺れを抑えることができる。そして、本発明の光ディスク装置のように、ローダーシャーシの少なくとも左右いずれか片側の側壁の内面に、トレイを反対側の側壁に向かって付勢する付勢手段を一体に形成してあると、この付勢手段によってトレイの挿入・排出動作中の横揺れを抑えることができる。特に、付勢手段を、ローダーシャーシの前端寄りの側壁の内面に形成した場合は、トレイの横揺れ抑制効果が顕著になる。このように、本発明の光ディスク装置は、トレイの挿入・排出動作中の縦揺れ及び横揺れを抑えることができるので、トレイ動作の安定化と品質の向上を図ることができる。
【0013】
また、本発明の光ディスク装置のように、トレイの左右両側面に凹溝を形成してあると、従来のようにトレイの左右両側縁の下面に凹溝を突き出して形成する場合に比べて、トレイの上下寸法が小さくなるため、その分だけローダーシャーシの高さを減少させて光ディスク装置を薄型化でき、材料樹脂代を節約してコストダウンを図ることができる。そして、付勢手段をローダーシャーシの少なくとも左右いずれか片側の側壁の内面に一体に形成してあると、前記特許文献1のような部品点数及び組立工数の増加によるコストアップをなくすことができ、構造の複雑化や装置の大型化を防止することができる。
【0014】
また、付勢手段がローダーシャーシの上記側壁と一体に形成された樹脂バネであると、成形が容易であることに加えて、トレイを安定した圧力で付勢して横揺れを確実に抑えることができ、更に、この樹脂バネの先端部をトレイの凹溝に摺動自在に挿入したものは、落下などの衝撃を受けた場合でも、樹脂バネがトレイから外れる心配はない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ディスク装置の斜視図である。
【図2】同光ディスク装置のローダーシャーシとトレイのみを示した横断面図である。
【図3】トレイを半分ほど挿入した状態の同光ディスク装置の部分平面図である。
【図4】トレイを排出した状態(トレイオープン状態)の同光ディスク装置の部分平面図である。
【図5】図3のA−A線部分断面図である。
【図6】トレイのストッパーを形成した部分の斜視図である。
【図7】従来の光ディスク装置のローダーシャーシとトレイのみを示した横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示す光ディスク装置は、合成樹脂製のローダーシャーシ1の内側に合成樹脂製のトラバースシャーシ2を配置し、トラバースシャーシ2が上下揺動可能となるように、トラバースシャーシ2の左右後端部をゴムダンパーを介してネジでローダーシャーシ1に取付けたものであって、このトラバースシャーシ2を上下に揺動させるカムスライダー3がローダーシャーシ1の前枠部の内側に左右スライド可能に取付けられている。そして、ローダーシャーシ1の左右の側壁部1a,1aの上端間にはブリッジ部1bが一体に形成されており、このブリッジ部1bの中央の円環状ホルダー部1cには合成樹脂製のクランパー4が収容保持されている。
【0017】
トラバースシャーシ2の前端部にはスピンドルモータ5が搭載されており、このスピンドルモータ5の軸に合成樹脂製のターンテーブル6が固着されている。また、このトラバースシャーシ2には、光ピックアップ7が2本のガイド軸8,8(主軸と副軸)に案内されてターンテーブル6に対し接近・離反可能に、つまり前後方向に往復移動可能に搭載されている。
【0018】
そして、ローダーシャーシ1の内側には、光ディスクを搬送するトレイ9がターンテーブル6とクランパー4との間に配置されて、前後方向にスライド可能に取付けられており、更に、カムスライダー3、光ピックアップ7、トレイ9を作動させる駆動モータ(不図示)と駆動力伝達歯車機構(不図示)が、ローダーシャーシ1とトラバースシャーシ2に設けられている。
【0019】
図2に示すように、トレイ9の左右両側面には凹溝9a,9aがトレイの全長に亘って形成されており、これに対応して、ローダーシャーシ1の左右両側壁1a,1aの内側面には、内向きに突き出す複数の短い凸型レール1d,1dが横一列に配列されて形成されている。そして、図2〜図4に示すように、トレイ9の左右両側面の凹溝9a,9aをローダーシャーシ1の左右両側壁1a,1aの凸型レール1d,1dに摺動自在に嵌合させることによって、トレイ9がローダーシャーシ1の両側壁1a,1aの内側に挿入・排出可能に、つまり前後方向にスライド可能に取付けられている。
【0020】
上記のような嵌合構造でトレイ9をローダーシャーシ1の内側に取付けると、凹溝9aと凸型レール1dの成形時の寸法精度が向上して凹溝9aと凸型レール1dとの上下方向の間隙寸法が減少し、上下方向の所謂、嵌合ガタが生じ難くなるため、後述するようにトレイ9を挿入・排出動作させるときのトレイ9の縦揺れを抑えることができる。また、凹溝1d,1dをトレイ9の左右両側面に形成すると、従来のようにトレイの左右両側縁の下面に凹溝を突き出して形成する場合に比べて、トレイ9の上下寸法が小さくなるため、その分だけローダーシャーシ1の高さを減少させて光ディスク装置を薄型化でき、材料樹脂代を節約してコストダウンを図ることができる。
【0021】
図3〜図5に示すように、ローダーシャーシ1の少なくとも左右いずれか片側の側壁1a(この実施形態では左側の側壁1a)の内面には、トレイ9を反対側の側壁1a(この実施形態では右側の側壁1a)に向かって付勢する付勢手段として、略U字状の樹脂バネ1eが一体に形成されている。この略U字状の樹脂バネ1eは、その立上り片の上端から内側に折れ曲がる先端部1fを備えたもので、この先端部1fがトレイ9の凹溝9aに摺動自在に挿入されている。
【0022】
このような樹脂バネ1eがローダーシャーシ1の片側の側壁1aの内面に形成されていると、該樹脂バネ1eによってトレイ9が安定した圧力で反対側の側壁1aに向かって付勢されるため、トレイ9を挿入・排出動作させるときのトレイ9の横揺れを抑えることが可能となり、かつ、樹脂バネ1eの先端部1fがトレイ9の凹溝9aに摺動自在に挿入されているので、落下などの衝撃を受けた場合でも、樹脂バネ1eがトレイ9から外れる心配はなくなる。しかも、この樹脂バネ1eはローダーシャーシ1の側壁1aの内面に一体に形成されたものであるから、部品点数及び組立工数の増加によるコストアップを招くこともない。
【0023】
上記の樹脂バネ1eは、ローダーシャーシ1の反対側(右側)の側壁1aの内面に一体に形成してもよいし、左右両側壁1a,1aの内面に一体に形成してもよいが、いずれの場合もローダーシャーシ1の前端寄りの側壁内面に形成することが好ましく、そのように形成すると、樹脂バネ1eによるトレイ9の横揺れ抑制効果が顕著になる利点がある。
【0024】
尚、ローダーシャーシ1の左右両側壁1a,1aの前端寄りの内面には、図3,図4に示すようなストッパー1gが一体に形成されており、トレイ9を排出させるときに、図6に示すようにトレイ9の両側面の凹溝9aの上縁部に形成された爪片9bが、図4に示すようにストッパー1gに引っ掛かって、トレイ9が抜け落ちないようになっている。
【0025】
以上のような構成の光ディスク措置は、図1に示すようにトレイ9が排出されたときには、トラバースシャーシ2が下降し、クランパー4とターンテーブル6が離反して非チャック状態にある。この状態から、光ディスク(不図示)をトレイ9に載せ、前記駆動モータ(不図示)で前記駆動力伝達歯車機構(不図示)を介してトレイ9をローダーシャーシ1の内部へ挿入して、光ディスクをクランパー4とターンテーブル6の間に搬送すると、カムスライダー3がスライドしてトラバースシャーシ2が上昇し、光ディスクの中央開口の周縁部がクランパー4とターンテーブル6でチャックされて、スピンドルモータ5で光ディスクが回転される。すると、光ピックアップ7がガイド軸8,8に沿ってターンテーブル6の方へ移動しながら、レーザービームを光ディスクに照射し、記録・再生が行われる。そして、記録・再生が終わると、カムスライダー3によりトラバースシャーシ2が下降して、クランパー4とターンテーブル6が分離し、光ディスク(不図示)がトレイ9に載置されてローダーシャーシ1の前端から排出される。
【0026】
この光ディスク装置は、上記のようにトレイ9が挿入・排出動作を繰り返しても、既述したように、トレイ9の左右両側面の凹溝9aとローダーシャーシ1の左右両側壁1a,1aの凸型レール1d,1dとの上下方向の嵌合ガタが殆どなく、かつ、樹脂バネ1eによってトレイ9が反対側の側壁1aに向かって安定した圧力で付勢されているため、挿入・排出動作中のトレイ9の縦揺れ及び横揺れが抑えられ、トレイ動作の安定化と品質の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 ローダーシャーシ
1a ローダーシャーシの左右両側壁
1d 凸型レール
1e 樹脂バネ(付勢手段)
1f 樹脂バネの先端部
2 トラバースシャーシ
3 カムスライダー
4 クランパー
6 ターンテーブル
7 光ピックアップ
9 トレイ
9a 凹溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランパーを上部に備えたローダーシャーシに、光ピックアップをターンテーブルに対して接近・離反可能に搭載したトラバースシャーシを上下揺動可能に取付けると共に、トラバースシャーシを上下に揺動させるカムスライダーを取付け、光ディスクを搬送するトレイをトラバースシャーシとクランパーとの間に配置してローダーシャーシの内側に挿入・排出可能に取付けた光ディスク装置において、
上記ローダーシャーシの左右両側壁の内側面に凸型レールを横一列に配列して形成すると共に、この凸型レールに上記トレイの左右両側面に形成した凹溝を摺動自在に嵌合することによって、上記トレイを上記ローダーシャーシの内側に挿入・排出可能に取付け、上記ローダーシャーシの少なくとも左右いずれか片側の側壁の内面に、上記トレイを反対側の側壁に向かって付勢する付勢手段を一体に形成したことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
上記付勢手段が、上記ローダーシャーシの前端寄りの上記側壁の内面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
上記付勢手段が上記ローダーシャーシの上記側壁と一体に形成された樹脂バネであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
上記樹脂バネの先端部が上記トレイの凹溝に摺動自在に挿入されていることを特徴とする請求項3に記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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