説明

光ディスク装置

【課題】スピンドルモータのサーボ系のゲインを回転速度に応じて所要のゲインに保つための補正処理を軽減することができるディスク装置を提供する。
【解決手段】スピンドルモータ(2)により回転駆動される記録媒体(1)から取得された第1同期信号(23:SYNC信号)を用いてCLVでスピンドルモータの回転速度を制御する第1サーボ制御、又はスピンドルモータの回転によって取得された第2同期信号(31:FG信号)を用いてCAVでスピンドルモータの回転速度を制御する第2サーボ制御を選択的に用いる装置において、第2サーボ制御のサーボループにおけるループゲインを第2同期信号の周波数に応じて制御するオートゲイン制御部(13,14)を設ける。第1同期信号を用いる第1サーボ制御をそのときの線速度を維持するように第2サーボ制御に切り換えるとき第2同期信号の周波数に基づいて第2サーボ制御ループのゲイン補正を行なえばよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクを回転駆動するスピンドルモータの駆動サーボ制御に関し、CD(Compact Disc)プレーヤ、DVD(Digital Video Disc)プレーヤなどの光ディスク装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
DVDプレーヤなどの光ディスク装置は、光ディスクの内周から外周へ螺旋上に形成された情報ピットにレーザー光を収束させ、その反射光をピックアップで検出することによって記録情報を読み出す。ディスクの読み出し(書込み)処理を行う上で、データの読み出し速度を一定に保つ仕組みとして、CLV方式(Constant Linear Velocity:線速度一定)による光ディスクの回転制御を採用することができる。CLV方式では、光ディスクの内周は、1回転当たりのデータ量が少ないため、ディスクの回転数が速くなり、外周は、1回転当たりのデータ量が多いため、ディスクの回転数が下がることになる。このCLV方式によるスピンドルモータの回転制御には記録媒体から読み取った記録情報に含まれるSYNC信号のような同期信号の周波数を一定にするサーボ制御(SYNCサーボ制御)が採用される。この種のSYNCサーボ制御について記載された文献の例として特許文献1がある。
【0003】
しかしながら、シーク駆動あるいはディスクの損傷などによってSYNC信号を読み取ることができない場合にはCLV方式によるスピンドルモータの回転制御を行うことができないので、これに代えてCAV(Constant Angular Velocity:角速度一定)によるFGサーボ制御によるスピンドルモータの回転制御を行わなければならない。
【0004】
CAV方式はスピンドルモータの回転速度に応じて取得されるFG信号のような同期信号を用いてスピンドルモータの回転速度を一定にするサーボ制御(FGサーボ制御)が採用される。CLV制御に代えて一時的にCAV制御を採用する場合には、そのときのピックアップの半径位置において所要の線速度を得るために必要なスピンドルモータの回転速度に応ずるFG信号の周波数を演算し、その周波数を維持するようにスピンドルモータに対するCAV制御を行うことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−31088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者の検討によれば、光ディスクのスピンドルモータに対するCLV制御のためのSYNCサーボ制御に比べて、特定の半径位置における線速度を得るためのCAV制御によるFGサーボ制御では、回転速度の相違に応ずるループゲインの変化による影響を大きく受けて発振する虞のあることが明らかにされた。すなわち、CLVでは図7に例示されるようにディスクの内周と外周で回転数が異なるから、図8のように外周に近づくにしたがって回転数が下がってそのサーボループのループゲインが大きくなる。このとき、半径位置の相違によってループゲインが大きくなっても発振を生ずることのない位相余裕があれば問題ないが、SYNC信号のような同期信号を用いるSYNCサーボに比べて、FG信号のような同期信号を用いるFGサーボの場合はゲイン余裕が小さく、ゲインが大きくなったときサーボループの位相が180度になって発振する虞がある。CAVのためのFGサーボ制御によるサーボループの特性を計測結果に基づいて例示する図9において、Giは光ディスクの内周部におけるゲイン[dB]の特性、Goは光ディスクの外周部におけるゲイン[dB]の特性、Pinvは反転位相[度]の特性を示している。ここでは測定に反転アンプを用いているので反転位相[度]によって位相特性を示している。サーボループの周波数[Hz]は例えば0.1〜100[Hz]の帯域を一例とする。図9のAの部分が光ディスクの外周のあるエリアでゲインが0[dB]交点で、位相が180[度](反転位相0[度])に交わる部分が発生し、サーボループが発振する。ちなみに、CLVサーボ系の位相特性は、図9に比べて反転位相が0[度]となる周波数が高くなり、半径位置が外周部に近付くに従ってサーボゲインが大きくなっても、0dB交点で位相が180[度]になり難い。
【0007】
そこで、SYNCサーボによるCLV制御においてSYNC信号を検出することができないとき、ディスクの回転制御をFGサーボ制御に切り換える場合に、半径位置に応じて変化したサーボループのゲインに対して、ループゲインを一定に保つように、そのときの半径位置を取得し、取得した半径位置に応じて当該FGサーボのループゲインを可変する演算処理を行うことが必要になる。その演算処理には中央処理装置のソフトウェア処理を用いることができる。例えば、25mm位置で系を安定させたハードウェアゲインを基準とし、αを補正係数、Grefを25mm位置のゲイン、rを半径位置とすると、取得した半径位置の半径におけるゲインは、
G=α×Gref×(25/r)^2…式1
の演算処理によって生成される。
【0008】
しかしながら、SYNCサーボ制御からFGサーボ制御に切り換えるときその半径位置に応じてサーボゲインを補正するには、CLVによる読み取り情報に含まれるアドレス情報から半径位置を計算し、計算した半径位置毎にゲインを演算して補正するときに、最内周から最外周の範囲の任意の半径位置の半径に応じてゲインを補正する演算を行なわなければならず、ソフトウェアによる演算処理の負担が大きくなる。演算処理の負担が大き過ぎると制御のリアルタイム性が損なわれる。また、ゲイン補正のためのプログラム容量も大きくなってしまう。さらにまた、多数のアドレス情報に応ずる補正値を予め格納したルックアップテーブルを用意しておけば演算処理野負担は軽減するが、ルックアップテーブルによるメモリ消費量が増えすぎてしまう。演算処理の負担を軽減するために半径位置を予め複数に分割規定し、分割規定したどの半径位置に属すかに応じてゲイン補正を行ってもよいが、補正精度が低下し、発振する虞が増す。
【0009】
更に、切換え時の線速度に対応する回転数に応ずる半径位置での補正しか行っていないため、シーク動作等のようにスピンドルモータの加減速を伴う処理に対しては、ゲインの不整合が起こり、発振する虞がある。
【0010】
本発明の目的は、スピンドルモータのサーボ系のゲインを回転速度に応じて所要のゲインに保つための補正処理を軽減することができるディスク装置を提供することにある。
【0011】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0013】
すなわち、スピンドルモータにより回転駆動される記録媒体から取得された第1同期信号を用いてCLVで前記スピンドルモータの回転速度を制御する第1サーボ制御、又は前記スピンドルモータの回転によって取得された第2同期信号を用いてCAVで前記スピンドルモータの回転速度を制御する第2サーボ制御を選択的に用いる光ディスク装置において、前記第2サーボ制御のサーボループにおけるループゲインを前記第2同期信号の周波数に応じて制御するオートゲイン制御部を設ける。
【0014】
第1同期信号を用いる第1サーボ制御をそのときの線速度を維持するように第2サーボ制御に切り換えるとき、線速度及び回転速度に相関のある第2同期信号の周波数に基づいて第2サーボ制御におけるループゲインの補正を行なえばよいから、スピンドルモータの回転速度によって当該サーボゲインが位相180度交点で1(0dB)にならないようにするためのゲイン補正では、半径位置を演算して演算付加の大きな演算処理を行うことを要しない。更に、第2同期信号の周波数に基づいてループゲインの補正を行なうから、特定の半径位置で加減速を行なってもそれに追従してループゲインを補正することができ、半径位置だけでループゲインを補正する場合にはその補正を加減速に追従させることはできない。
【発明の効果】
【0015】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0016】
すなわち、スピンドルモータのサーボ系のゲインを回転速度に応じて所要のゲインに保つための補正処理を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明に係る光ディスク装置の一実施の形態をスピンドルモータの回転駆動制御系を中心に例示したブロック図である。
【図2】図2はFGサーボループを抜き出して示した説明図である。
【図3】図3は周波数を電圧に変換する変換回路による変換特性を例示する説明図である。
【図4】図4はオートゲイン補正部によるゲイン補正の特性を例示する説明図である。
【図5】図5はスピンドルモータの起動時における動作タイミングを例示するタイミングチャートである。
【図6】図6はスピンドルモータの起動時における動作フローを例示するフローチャートである。
【図7】図7はCLV方式における半径位置と回転数との関係を概略的に示す説明図である。
【図8】図8は半径位置とサーボ系のゲインとの関係を概略的に示す説明図である。
【図9】図9はCAVのためのFGサーボ制御によるサーボループの特性を計測結果に基づいて示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面中の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0019】
〔1〕<FG信号サーボ制御のループゲインをFG信号で制御>
本発明の代表的な実施の形態に係る光ディスク装置は、スピンドルモータ(2)によって回転駆動される記録媒体(1)からピックアップ(3)で読み取った記録情報に含まれる第1同期信号(23:SYNC信号)を用いて前記ピックアップに対する前記記録媒体の線速度が一定になるように前記スピンドルモータの回転速度を制御する第1サーボ制御(SYNCサーボ制御)、又は前記スピンドルモータの回転速度に応ずる第2同期信号(31:FG信号)を検出して前記スピンドルモータを所要の回転速度に制御する第2サーボ制御(FGサーボ制御)を選択的に用いる。このとき、前記第2サーボ制御のサーボループにおけるループゲインを前記第2同期信号に基づいて制御するオートゲイン制御部(13,14)を有する。
【0020】
第1同期信号を用いる第1サーボ制御をそのときの線速度を維持するように第2サーボ制御に切り換えるとき、線速度及び回転速度に相関のある第2同期信号の周波数に基づいて第2サーボ制御におけるループゲインの補正を行なえばよいから、スピンドルモータの回転速度によって当該サーボゲインが位相180度交点で1(0dB)にならないようにするためのゲインの補正では、半径位置を演算して演算付加の大きな演算処理を行うことを要しない。したがって、第2サーボ制御によるスピンドルモータのサーボ系のゲインを半径位置に拘わらず一定に保つための補正処理を軽減することができる。更に、第2同期信号の周波数に基づいてループゲインの補正を行なうから、特定の半径位置で加減速を行なってもそれに追従してループゲインを補正することができ、半径位置だけでループゲインを補正する場合にはその補正を加減速に追従させることはできない。
【0021】
〔2〕<スピンドルモータの回転速度に応じたループゲインの補正>
項1の光ディスク装置において、前記オートゲイン制御部は、前記スピンドルモータの回転速度が遅くなるに従ってループゲインを小さくする方向に補正する。
【0022】
第2同期信号の周波数に基づいて第2サーボ制御が行われるサーボループのループゲインを一定に保つことを容易に実現することができる。
【0023】
〔3〕<FG信号サーボ制御のループゲインの初期補正>
項1又は2の光ディスク装置において、前記第2サーボ制御のサーボループにおけるループゲインを初期設定値に従って補正するゲイン補正部(16)を有する。
【0024】
第2サーボ制御によるサーボループの特性ばらつきを光ディスク装置間で容易に揃えることができる。前記オートゲイン制御部を採用しない場合には第1サーボ制御から第2サーボ制御に切り換えるときに演算した半径位置に応じて設定値を変更して第2サーボ制御によるサーボループのループゲインを半径位置に拘わらず一定に保たなければならない。
【0025】
〔4〕<SYNC信号サーボ制御のループゲインの初期補正>
項3の光ディスク装置において、前記第1サーボ制御のサーボループにおけるループゲインを初期設定値に従って補正するゲイン補正部(16)を有する。
【0026】
第1サーボ制御によるサーボループの特性ばらつきを光ディスク装置間で容易に揃えることができる。
【0027】
〔5〕<ホール素子を用いたFG信号の生成>
項1乃至4のいずれかの光ディスクにおいて、前記第2同期信号は、スピンドルモータの回転速度に応ずる磁界の変化に従って出力を形成するホール素子の出力に基づいて形成される。
【0028】
第2同期信号を容易に生成することができる。
【0029】
〔6〕<モータの逆起電力を用いたFG信号の生成>
項1乃至4のいずれかの光ディスクにおいて、前記第2同期信号は、前記スピンドルモータで生成される逆起電力の変化のサイクルに基づいて形成される。
【0030】
第2同期信号を容易に生成することができる。
【0031】
〔7〕<FG信号サーボ制御のループゲインをFG信号で制御>
本発明の別の実施の形態に係る光ディスク装置は、スピンドルモータ(2)と、前記スピンドルモータで回転される記録媒体(1)の半径方向に移動しながら記録媒体から記録情報を読み取るピックアップ(3)と、前記ピックアップによって読み取られた記録情報に含まれる第1同期信号(23:SYNC信号)を検出する復調部(6)とを有する。光ディスク装置は更に、前記復調部で検出された前記第1同期信号を用いて前記ピックアンプに対する前記記録媒体の線速度が一定になるように前記スピンドルモータの回転を制御するための第1の駆動データ(24)を生成する第1の速度制御部(9)と、前記スピンドルモータの回転速度に応じて形成される第2同期信号(31:FG信号)に基づいて前記スピンドルモータの回転を所要の回転速度に制御するための第2の駆動データ(32)を生成する第2の速度制御部(11)とを有する。更に光ディスク装置は、前記第1の駆動データ又は第2の駆動データに基づいて前記スピンドルモータを駆動するドライバ(19)と、前記第1の駆動データに基づいて前記スピンドルモータを駆動制御する第1サーボループ又は前記第2の駆動データに基づいて前記スピンドルモータを駆動制御する第2サーボループの何れか一方を選択する選択部(15)とを備える。そして、この光ディスク装置は、前記第2の速度制御部の出力から前記ドライバの入力に至る経路に配置されていて前記第2サーボループのループゲインを前記第2同期信号に基づいて補正するオートゲイン制御部(13,14)を有する。
【0032】
第1同期信号を用いる第1サーボ制御をそのときの線速度を維持するように第2サーボ制御に切り換えるとき、線速度及び回転速度に相関のある第2同期信号の周波数に基づいて第2サーボ制御におけるループゲインの補正を行なえばよいから、スピンドルモータの遅い回転速度によって当該サーボゲインが位相180度交点で1(0dB)にならないようにするためのゲインの補正では、半径位置を演算して演算付加の大きな演算処理を行うことを要しない。したがって、第2サーボ制御によるスピンドルモータのサーボ系のゲインを半径位置に拘わらず一定に保つための補正処理を軽減することができる。更に、第2同期信号の周波数に基づいてループゲインの補正を行なうから、特定の半径位置で加減速を行なってもそれに追従してループゲインを補正することができ、半径位置だけでループゲインを補正する場合にはその補正を加減速に追従させることはできない。
【0033】
〔8〕<スピンドルモータの回転速度に応じたループゲインの補正>
前記オートゲイン制御部は、前記スピンドルモータの回転速度が遅くなるに従ってループゲインを小さくする方向に補正する。
【0034】
第2同期信号の周波数に基づいて第2サーボ制御が行われるサーボループのループゲインを一定に保つことを容易に実現することができる。
【0035】
〔9〕<サーボループの切換え態様>
項7又は8の光ディスク装置において、前記選択部は、前記線速度一定による前記スピンドルモータの駆動制御のために前記第1サーボループを選択しているときに前記復調部で前記第1同期信号が検出されなくなった場合に第2サーボループへの切換えを行い、その後、第1同期信号が検出されるようになって第1サーボループへの切換えを行う。
【0036】
第1サーボ制御による記録情報の読み取り動作中にディスクの損傷などによって第1同期信号が検出不能になっても、その間、必要な線速度を維持し且つ発振を抑制して第2サーボ制御によるディスクの回転制御を維持することができる。
【0037】
〔10〕<サーボループの切換え態様>
項7乃至9のいずれかの光ディスク装置において、前記選択部は、シーク動作において2サーボループを選択し、シーク動作の完了後、同期信号が検出されるようになって第1サーボループへの切換えを行う。
【0038】
シーク動作中に第1同期信号が検出不能になっても、その間、必要な線速度を維持し且つ発振を抑制して第2サーボ制御によるディスクの回転制御を維持することができる。
【0039】
〔11〕<ディジタルプログラム処理>
項7乃至10のいずれかの光ディスク装置において、前記復調部、前記第1の速度制御部、前記第2の速度制御部、前記選択部及びオートゲイン制御部は、中央処理ユニット、ディジタル信号処理ユニット、及び前記中央処理ユニットとディジタル信号処理ユニットが実行するプログラムを有するデータプロセッサによって構成される。
【0040】
オートゲイン制御部によるゲイン制御機能をディジタルプログラム処理によって実現することができる。
【0041】
2.実施の形態の詳細
実施の形態について更に詳述する。
【0042】
図1には本発明に係る光ディスク装置の一実施の形態がスピンドルモータの回転駆動制御系を中心に例示される。
【0043】
DVDなどの光ディスク1はスピンドルモータ2によって回転駆動される。スピンドルモータ2はドライバ回路19から出力される駆動信号20によって回転駆動され、その回転速度は例えば駆動信号20の電圧レベルに応じて決定される。
【0044】
光ディスク1には螺旋状の情報トラックに記録情報が記録されている。ピックアップ3は光ディスク1の半径方向に移動しながら情報トラックに追従しながら対物レンズを焦点位置に合わせながらレーザー光を照射し、その反射光を複数の受光素子で受光して光電変換する。特に図示はしないが、情報トラックへのピックアップの追従には公知のトラッキングサーボ制御を用いる。また、ピックアップを焦点位置に合わせるには公知のフォーカスサーボ制御を用いる。
【0045】
複数の受光素子で光電変換された受光信号21は受光信号処理回路4で加算などの処理が行われてRF(Radio Frequency)信号22として抽出される。その他に受光信号処理回路4は、特に図示はしないが、フォーカスサーボ制御などに用いるフォーカスエラー信号、及びトラッキングサーボ制御に用いるトラッキングエラー信号を生成する。
【0046】
RF信号22は復調回路6に供給される。復調回路6はRF信号22に振幅増幅及び波形等化などの処理や符号間干渉の除去などを行い、これによって得られた信号をスライサによって2値化してデータ再生信号及び情報トラックのアドレス情報35を生成する。このアドレス情報35は予め情報トラックのウォブルに記録されている情報である。光ディスク1の記録データはそれぞれ複数の同期フレームから構成された複数のセクタデータを含んでいる。特に図示はしないが、前記データ再生信号からセクタデータが抽出されて記録データの再生が行なわれる。復調部6に代表的に図示された同期信号抽出回路7は前記データ再生信号から各同期フレームの先頭に配置された同期信号(SYNC信号)23を抽出する。抽出されたSYNC信号23は速度制御部9に供給され、速度制御部9は、前記SYNC信号23の周期がレジスタ10に設定された参照値が示す周期に等しくなるように、すなわち、光ディスク1の情報トラックに対するピックアップ3の線速度が一定になるように、スピンドルモータ2の回転速度を制御するための制御データを生成する。制御データ24はスイッチ15を介して補正回路16で補正されると共に位相補償部17で位相補償されて、ドライバ回路19に与えられることにより、光ディスク1の情報トラックに対するピックアップ3の線速度が一定に制御(CLV制御)される。これによるCLV制御がSYNCサーボ制御であり、光電変換信号21を取得して駆動信号20を生成する制御ループがSYNCサーボループである。レジスタ10に対する参照値の設定は制御部18が行う。この参照値はCLV制御による所定の線速度を得るための周期の値とされる。
【0047】
SYNCサーボ制御によるCLV制御にはSYNC信号を抽出できることが必須であり、SYNC信号を抽出できないときは、FGサーボ制御に切り換えて必要な速度を得るようになっている。例えば、スピンドルモータ2の回転速度に応じて生成される信号30をFG検出回路5が受けることによって、スピンドルモータ2の回転速度に応ずる同期信号であるFG信号31を生成する。スピンドルモータ2がその回転速度に応ずる磁界の変化に従って出力を形成するホール素子を備える場合には、FG検出回路5はホール素子の出力信号を信号30として用いることによってFG信号31を生成すればよい。また、前記スピンドルモータ2で生成される逆起電力を信号30として用いることによって当該逆起電力の変化のサイクルに基づいてFG信号31を生成してもよい。前記FG信号31は速度制御部11に供給され、速度制御部11は、FG信号31の周波数がレジスタ12に設定された参照値が示す周波数に等しくなるように、スピンドルモータ2の回転速度を制御するための制御データを生成する。制御データ32は後述するオートゲイン補正部(AGC)14と補正回路16で補正されると共に位相補償部17で位相補償されて、ドライバ回路19に与えられることにより、光ディスク1の情報トラックに対するピックアップ3の線速度が所要の速度になるようにスピンドルモータ2の回転速度を一定に制御(CAV制御)する。スピンドルモータ2の回転速度がレジスタ12によって指定された速度に対して所定の許容範囲に入っているとき速度制御部11はFGLOCK信号38をアサートする。これによるCAV制御がFGサーボ制御であり、信号30を取得して駆動信号20を生成する制御ループがFGサーボループである。図2にはFGサーボループを抜き出して示してある。レジスタ12に対する参照値の設定は制御部18が行う。その参照値はCAV制御による所定の速度を得るための周波数値とされる。その周波数値は、そのときの光ディスク1上におけるピックアップ3の半径位置に応じて相違され、例えば制御部18は半径位置に相関するアドレス情報35に所定の周波数用パラメータを乗算して当該アドレス情報に応ずる周波数値を取得し、これをレジスタ12に設定すればよい。
【0048】
前記スイッチ15はスピンドルモータ2に対する制御をFGサーボ制御又はSYNCサーボ制御に切り換える。スイッチ15の切換えは制御回路20が出力する切換え信号34で行なう。制御回路20はSYNC信号23が抽出されているか否かを検出する同期信号検出回路8による検出結果、すなわちSLOCK信号33を受けてスイッチ制御を行う。すなわち、停止状態のスピンドルモータ2を起動したとき制御回路20はFGサーボ制御のループを選択し、速度制御部11で生成される制御データ32が所定速度の制御データに達したところで制御回路20にFGLOCK信号38がアサートされ、これによって制御回路20はサーボループの選択をSYNCサーボ制御の選択に切り換える。この後、SLOCK信号33によってSYNC信号の抽出が行なわれていないことが通知された場合には、SYNCサーボ制御をFGサーボ制御に切り換える。FGサーボに切り換えるに当たり、制御部18はアドレス情報に前記周波数用パラメータを乗算してレジスタ12にセットすることにより、所要の線速度を得るに必要な回転速度でスピンドルモータ2を駆動制御する。その後、SYNC信号23が検出されるようになると、FGサーボ制御からSYNCサーボ制御への切換えが行われる。また、制御部18はシーク動作においてもFGサーボ制御を選択し、シーク動作の完了後、SYNC信号23が検出されるようになってSYNCサーボ制御への切換えを行う。シーク動作時のFGサーボ制御ではスピンドルモータ2の回転速度はシーク動作によるピックアップ3の移動先の半径位置に応ずる回転速度に設定される。例えば、アドレス情報35にシーク動作によるトラックジャンプ分のアドレス値を加算することによって得られるアドレス値にしたがって移動先の周波数値を取得すればよい。
【0049】
SYNCサーボ制御のサーボループにおけるゲイン及びFGサーボ制御のサーボループにおけるゲインのそれぞれに対する初期的な補正は例えば補正回路16によって行なう。双方のサーボ系の特性は全く異なるから夫々のサーボ系に固有の補正データが設定され、何れの補正データを用いて補正を行なうかを切換え信号34によって選択する。切換え信号34がSYNCサーボ制御を選択するときはSYNCサーボ制御のサーボループに適合された補正データを選択して制御データ24の補正を行う。切換え信号34がFGサーボ制御を選択するときはFGサーボ制御のサーボループに適合された補正データを選択して制御データ32の補正を行う。
【0050】
発振に対する位相余裕の小さなFGサーボ制御のサーボループに対しては、サーボループのゲインの変化に応じて、即ち光ディスク上のピックアップの半径位置の相違に応じて、制御データ32を補正するオートゲイン補正部(AGC)14が設けられる。当該サーボループのゲインはスピンドルモータ2の回転速度が遅くなるに従って大きくされ、ゲインが大きくなると、図9に例示されるように発振に対するゲイン余裕がなくなってくる。この特性によるゲイン余裕を大きくするように、オートゲイン補正部14はスピンドルモータ2の回転速度が遅くなるに従ってループゲインを小さくする方向に補正する。例えば、FG信号31を入力し、その周波数が小さいほど出力信号36のレベルを下げる変換回路13を設け、オートゲイン補正部14は出力信号36のレベルに応じた大きさの補正データによって制御データ32を補正することにより、スピンドルモータ2の回転速度によってFGサーボ制御系のループゲインが変動することを抑制する。これにより、大きな半径位置で低速のFGサーボ制御を行って所要の速度を得るときにFGサーボループが発振する虞を未然に防止することができる。
【0051】
特に、オートゲイン補正部14による制御データの補正では、そのときのアドレス情報35の取得、取得したアドレス情報35に基づくピックアップの半径位置の演算、及び演算した半径位置を用いた前記式1の演算、をそれぞれ行なうことを要しない。変換回路13は図3に例示されるような特性を持って周波数を電圧に変換する。即ちFG信号31の周波数が低いほど出力信号36の電圧が低くされる。例えばFG信号31の周期をタイマカウンタで計測し、そのカウント値の大きさにパラメータを乗算して出力信号36の電圧を決めればよい。オートゲイン補正部14は出力信号36の電圧に従って図4に例示されるような特性でゲインの補正を行なえばよい。例えば図4の特性は出力信号36の電圧値に対して式1の関係を満足する演算パラメータとして把握される。例えばオートゲイン補正部14の補正では出力信号36の電圧値に応ずるパラメータを制御データに乗算すればよい。演算パラメータは出力信号36の電圧値を変数とする2次関数などで表現することができる。
【0052】
SYNCサーボ制御からFG制御に切り換えるとき、切り換えるべき回転速度に応じて相違されるFGサーボループのゲインを上記変換回路13及びオートゲイン制御部14を用いてFG信号31の周波数に従って補正する。補正に当たり、変換回路13はFG信号の周期のカウント値に周波数パラメータを乗算して出力電圧値36を生成すればよい。オートゲイン回路14は出力信号36の電圧値を例えば2次関数程度の演算パラエータ式に代入して演算したパラメータを制御データに乗算すればよい。したがって、そのときのFGサーボループのサーボゲインが位相180度交点で1(0dB)にならないように補正するためにそのときのアドレス情報から半径位置を演算し、演算した半径位置を用いた前記式1の演算というような、演算負荷の大きな演算を行なうことを要しない。したがって、SYNCサーボ制御を一時的に代替するFGサーボ制御によるFGサーボ系のゲインがスピンドルモータ2に遅い回転速度が設定されることによって位相180度交点で1にならないようにするための補正処理を軽減することができる。更に、FG信号31の周波数に基づいてループゲインの補正を行なうから、特定の半径位置で加減速を行なってもそれに追従してループゲインを補正することができ、半径位置だけでループゲインを補正する場合にはその補正を加減速に追従させることはできない。
【0053】
図5にはスピンドルモータ2の起動時における動作タイミングが例示され、図6にはスピンドルモータ2の起動時における動作フローが例示される。
【0054】
図5にしたがえば、制御回路20はスピンドルモータ2の起動時にFGサーボループを選択する。スピンドルモータ2の起動時においてドライバ回路19はキック電圧として最大電圧で駆動電圧20を出力する。これによってスピンドルモータ2の回転が加速され、レジスタ12に設定された回転速度に対して所定の許容範囲(FGロック範囲)に入ったところで、FGLOCK信号38がハイレベルにアサートされる。これによって同期信号検出回路8がSYNC信号23を検出可能になったところでSLOCK信号33がハイレベルにアサートされる。制御回路20はSLOCK信号33がアサートされると、スイッチ15を切り換えて、FGサーボ制御からSYNCサーボ制御に移行する。
【0055】
図6において、スピンドルモータ2を起動するとき、ピックアップ3を光ディスク1の中心から25mmの基準位置に移動すると共に(S1)、レジスタ12に25mm位置における速度データを設定し(S2)、駆動信号20でスピンドルモータ2にキック電圧が与えられる(S3)。このときスイッチ15はFGサーボループを選択している。補正回路16には所定の補正データが初期設定されている。
【0056】
スピンドルモータ2が回転開始されてFGLOCK信号38がアサートされると(S4)、フォーカスサーボ制御及びトラッキングサーボ制御が開始され(S5)、SLOCK信号33がアサートされることによって、FGサーボ制御からSYNCサーボ制御に切換えられ(S6)、速度制御部9のよる速度制御が行われる(S7)。
【0057】
図1の光ディスク装置において、復調部6、速度制御部9,11、変換回路13、オートゲイン補正部14、制御部18、スイッチ15、ゲイン補正部16、及び位相補償部17はデータプロセッサ若しくはマイクロコンピュータのプログラム制御機能によって実現することができる。例えば、データプロセッサに搭載された中央処理ユニット(CPU)、ディジタル信号処理ユニット(DSP)、及び前記中央処理ユニットとディジタル信号処理ユニットが実行するプログラムメモリ、中央処理ユニットによって制御されるタイマカウンタなどを用いてその機能を実現することができる。
【0058】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0059】
例えば、駆動信号20はデューティー制御されたパルス信号であってもよい。FGサーボ制御田SYNCサーボ制御の機能はディジタルプログラム制御回路によって実現するだけでなく、アナログ回路も併用して構成できることは言うまでもない。ゲイン補正部16はスイッチの後段に配置したが、その前段に配置する場合にはSYNCサーボループとFGサーボループにそれぞれ固有の補正部を設ければよい。
【0060】
また、速度制御のほかに位相制御を行って駆動信号20を生成するようにしてもよい。即ち、速度制御ではSYNC信号の目標周期に対するSYNC速度エラー信号を発生することによりディスクの速度制御を収束させるが、この速度エラー信号を積分して位相エラー信号を生成し、速度制御回路からの制御データに位相エラー信号を加算する。CLV制御の場合に位相制御は起動時にオフとされ、速度制御がSYNC信号による定常制御状態になってロックレンジに入ったときオンにされる。したがって、FGサーボループの切り換えとSYNCサーボループの切換えにおいて位相制御回路のオン/オフも制御の対象にすることを要する。
【0061】
また、変換回路13の変換特性は図3に限定されず、また、オートゲイン補正部14の補正特性は図4に限定されない。図3の特性を逆比例とすれば、図4の特性は上に凸の特性波形になる。オートゲイン補正部14の補正特性はサーボループの剛性に大きな影響を与えるスピンドルモータの特性に応じて決定すればよい。
【符号の説明】
【0062】
1 光ディスク
2 スピンドルモータ
3 ピックアップ
4 受光信号処理回路
6 復調回路
7 同期信号抽出回路
9 速度制御部
10 レジスタ
12 レジスタ
14 オートゲイン補正部(AGC)
15 スイッチ
16 ゲイン補正部
17 位相補償部
18 制御部
19 ドライバ回路
20 駆動信号
21 受光信号
22 RF信号
23 SYNC信号
24 制御データ
31 FG信号
32 制御データ
34 切換え信号
33 SLOCK信号
35 アドレス情報
38 FGLOCK信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンドルモータによって回転駆動される記録媒体からピックアップで読み取った記録情報に含まれる第1同期信号を用いて前記ピックアップに対する前記記録媒体の線速度が一定になるように前記スピンドルモータの回転速度を制御する第1サーボ制御、又は前記スピンドルモータの回転速度に応ずる第2同期信号を検出して前記スピンドルモータを所要の回転速度に制御する第2サーボ制御を選択的に用いる光ディスク装置であって、
前記第2サーボ制御のサーボループにおけるループゲインを前記第2同期信号に基づいて制御するオートゲイン制御部を有する、光ディスク装置。
【請求項2】
前記オートゲイン制御部は、前記スピンドルモータの回転速度が遅くなるに従ってループゲインを小さくする方向に補正する、請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記第2サーボ制御のサーボループにおけるループゲインを初期設定値に従って補正するゲイン補正部を有する、請求項2記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記第1サーボ制御のサーボループにおけるループゲインを初期設定値に従って補正するゲイン補正部を有する、請求項3記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記第2同期信号は、スピンドルモータの回転速度に応ずる磁界の変化に従って出力を形成するホール素子の出力に基づいて形成される、請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項6】
前記第2同期信号は、前記スピンドルモータで生成される逆起電力の変化のサイクルに基づいて形成される、請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項7】
スピンドルモータと、
前記スピンドルモータで回転される記録媒体の半径方向に移動しながら記録媒体から記録情報を読み取るピックアップと、
前記ピックアップによって読み取られた記録情報に含まれる第1同期信号を検出する復調部と、
前記復調部で検出された前記第1同期信号を用いて前記ピックアンプに対する前記記録媒体の線速度が一定になるように前記スピンドルモータの回転を制御するための第1の駆動データを生成する第1の速度制御部と、
前記スピンドルモータの回転速度に応じて形成される第2同期信号に基づいて前記スピンドルモータの回転を所要の回転速度に制御するための第2の駆動データを生成する第2の速度制御部と、
前記第1の駆動データ又は第2の駆動データに基づいて前記スピンドルモータを駆動するドライバと、
前記第1の駆動データに基づいて前記スピンドルモータを駆動制御する第1サーボループ又は前記第2の駆動データに基づいて前記スピンドルモータを駆動制御する第2サーボループの何れか一方を選択する選択部と、
前記第2の速度制御部の出力から前記ドライバの入力に至る経路に配置されていて前記第2サーボループのループゲインを前記第2同期信号に基づいて補正するオートゲイン制御部と、を有する光ディスク装置。
【請求項8】
前記オートゲイン制御部は、前記スピンドルモータの回転速度が遅くなるに従ってループゲインを小さくする方向に補正する、請求項7記載の光ディスク装置。
【請求項9】
前記選択部は、前記線速度一定による前記スピンドルモータの駆動制御のために前記第1サーボループを選択しているときに前記復調部で前記第1同期信号が検出されなくなった場合に第2サーボループへの切換えを行い、その後、第1同期信号が検出されるようになって第1サーボループへの切換えを行う、請求項7記載の光ディスク装置。
【請求項10】
前記選択部は、シーク動作において2サーボループを選択し、シーク動作の完了後、同期信号が検出されるようになって第1サーボループへの切換えを行う、請求項7記載の光ディスク装置。
【請求項11】
前記復調部、前記第1の速度制御部、前記第2の速度制御部、前記選択部及びオートゲイン制御部は、中央処理ユニット、ディジタル信号処理ユニット、及び前記中央処理ユニットとディジタル信号処理ユニットが実行するプログラムを有するデータプロセッサによって構成される、請求項7記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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