光ディスク駆動装置及びその放電方法
【課題】静電気放電対策の実効性を向上させ、摺動ノイズが少ない光ディスク駆動装置を提供する。
【解決手段】ローディングメカがシャーシに対して進退する際にガイドレール7bに接する導電体40を備え、ガイドレールの導電体に接する面は第1の領域と第2の領域とを備え、第1の領域は第2の領域より導電体側に近接する端面を有し、ローディングメカが光ディスクの脱着を可能とする第1の状態では、導電体は第1の領域に接触し、ローディングメカがシャーシ内に収容される第2の状態から第1の状態の間で移動する際、導電体は第2の領域に接触する。
【解決手段】ローディングメカがシャーシに対して進退する際にガイドレール7bに接する導電体40を備え、ガイドレールの導電体に接する面は第1の領域と第2の領域とを備え、第1の領域は第2の領域より導電体側に近接する端面を有し、ローディングメカが光ディスクの脱着を可能とする第1の状態では、導電体は第1の領域に接触し、ローディングメカがシャーシ内に収容される第2の状態から第1の状態の間で移動する際、導電体は第2の領域に接触する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気放電:Electrostatic discharge(ESD)に対する対策が施された光ディスク駆動装置及びその放電方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ディスク駆動装置は、パソコン等の情報処理装置の外部記憶装置として利用されている。光ディスク駆動装置は、シャーシと、シャーシ内外を進退するローディングメカと、を主に備え、シャーシから露出したローディングメカに、コンシューマが光ディスクを装着した後ローディングメカをシャーシ内に移動させることによって、光ディスクの記録情報の再生又は光ディスクへの情報記録を可能とする。
【0003】
光ディスク駆動装置において、ローディングメカは、ガイド機構によって支持されながら移動する。ガイド機構のうちローディングメカを案内するガイドドレールは、シャーシのレール保持部材に保持されながらシャーシの内外を進退し、さらに、ローディングメカがガイドレールに対して相対移動する。したがって、ローディングメカはシャーシの内外を移動することができる。
【0004】
光ディスク駆動装置では、コンシューマがローディングメカに光ディスクを装着する際、コンシューマから静電気がローディングメカを通して電子部品に向けて放電されることがある。この放電によって、電子部品の誤作動やその損傷に繋がるおそれがあり、特に、ローディングメカにスピンドルモータや光ピックアップが固定されている、スリムタイプの光ディスク駆動装置では、ローディングメカの金属部分を介して容易に放電が発生するために、電子部品の誤作動や損傷のおそれがより高い。そこで、従来の光ディスク駆動装置ではESD対策が必要になっている。
【0005】
ESD対策が施された光ディスク駆動装置の従来例として、例えば、特開2003−187514号公報に記載されたものが存在する。このものは、ディスクの情報記録面に光を照射し、信号の記録、再生のいずれか一方または両方を行う光ディスク装置において、少なくとも上記ディスクを装置への脱着のために第1、第2の位置間で移動するローディングメカと、該ローディングメカの移動を案内するレール部材と、該レール部材を保持するレール保持部材と、を備え、少なくとも、上記ローディングメカ、上記レール部材、上記レール保持部材のいずれかが、その一部または全部を導電性樹脂で構成され、該3者間で電気的に導通可能とされることを特徴とする。
【0006】
ESD対策をより一層効果的にした光ディスク駆動装置として、放電用の導電体をローディングメカとガイドレールとの間に介装させ、導電体もローディングメカと一緒にガイドレールを摺動するようにして、コンシューマからローディングメカ側に放電された静電気を、導電体を介して、ガイドレールからシャーシを経て、ひいてはパソコンのアースに放電させるものも存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−34591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ローディングメカからガイドレールへの放電を効果的に進めるためには、導電体がガイドレールに接触する際の接触圧は高い方がよい。一方、ローディングメカの移動と一緒に導電体もガイドレールを繰り返し摺動するために、接触圧が高いと導電体の摩耗や塑性変形等の経年変化によって、導電体とガイドレールとの間の接触の程度が低下して、結果的に放電不良が発生するおそれがある。また、接触圧が高いと導電体がガイドレールに摺動する際に摺動ノイズが発生するおそれもある。したがって、従来の光ディスク駆動装置では、導電体の係る経年変化を避けるあまり、導電体のガイドレールに対する接触圧が十分とはいえず、ESD対策の実効性が伴わないものであった。
【0009】
そこで、本発明は、ESD対策の実効性を向上させた光ディスク駆動装置及びその放電方法を提供することを目的とする。本発明の他の目的は、静電気の放電用の導電体とガイドレールとの接触が導電体の経年変化によって不良とならないようにする光ディスク駆動装置及びその放電方法を提供することにある。本発明の更に他の目的は、導電体の経年変化を無くすか、これを極小化できる、ガイドレールの構造を備えた光ディスク駆動装置及びその放電方法を提供することにある。本発明の更に他の目的は、放電性を高めながらローディングメカの摺動ノイズが少ない光ディスク駆動装置及びその放電法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明に係る光ディスク駆動装置は、シャーシと、当該シャーシに対して進退するローディングメカと、前記ローディングメカに搭載された、光ピックアップと光ディスクの回転駆動装置と、前記シャーシに対する前記ローディングメカの進退をガイドするガイドレールと、前記ガイドレールを前記シャーシに対して保持するガイドレール保持部材と、前記ローディングメカに固定され、かつ、当該ローディングメカが前記シャーシに対して進退する際に前記ガイドレールに接する導電体と、を備え、前記ガイドレールの前記導電体に接する面は第1の領域と第2の領域とを備え、前記第1の領域は前記第2の領域より前記導電体側に近接する端面を有し、前記ローディングメカが前記光ディスクの脱着を可能とする第1の状態では、前記導電体は前記第1の領域に接触し、前記ローディングメカが前記シャーシ内に収容される第2の状態から前記第1の状態の間で移動する際、前記導電体は前記第2の領域に接触している、ことを特徴とするものである。
【0011】
さらに、前記目的を達成するために、本発明に係る光ディスクの駆動装置の放電方法は、シャーシと、当該シャーシに対して進退するローディングメカと、前記ローディングメカに搭載された、光ピックアップと光ディスクの回転駆動装置と、前記シャーシに対する前記ローディングメカの進退をガイドするガイドレールと、前記ガイドレールを前記シャーシに対して保持するガイドレール保持部材と、前記ローディングメカに固定され、かつ、当該ローディングメカが前記シャーシに対して進退する際に前記ガイドレールに接する導電体と、を備える光ディスクの放電方法において、前記ローディングメカが前記光ディスクの脱着を可能とする第1の状態では、前記導電体は前記ガイドレールに第1の接触圧で接触し、前記ローディングメカが前記シャーシ内に収容される第2の状態から前記第1の状態の間で移動する際、前記導電体は前記ガイドレールに前記第1の接触圧より低い第2の接触圧で接触している、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ローディングメカに光ディスクの脱着をされるような、放電性が要求される第1の状態では、導電体はガイドレールの第1の領域に放電性に必要な接触圧を持って接触する、一方、それ以外の状態では、導電体はガイドレールに適度な接触圧で接触するため、ローディングメカのシャーシに対する進退が繰り返しあっても、導電体の摩耗などの経年変化を抑制することできる。したがって、本発明によれば、ESD対策の実行性が向上した光ディスク装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る光ディスク装置の一形態の分解斜視図である。
【図2】トレーの開口部に底面側からベースユニットが固定される様子を示す、図1と同様な斜視図である。
【図3】光ディスク駆動装置の一部拡大斜視図である。
【図4】放電用の導電体の斜視図である。
【図5A】図5Aはガイドレールの斜視図である。
【図5B】図5Aのガイドレールを矢印5Bの方向から見たガイドレールの図である。
【図5C】図5Bを矢印5Cの方向から見たガイドレールの図である。
【図6】ガイドレール(図5C)の幅方向の断面をI−I方向から描いたガイドレールの断面図である。
【図7A】ガイドレールの下端に導電体の弾性変形部が接触している状態でのガイドレールの径方向断面図(図6に対応)である。
【図7B】導電体のガイドレールに対する接触構造の他の形態を示す、ガイドレールの径方向の断面図である。
【図8】ガイドレールと導電体との組み付け状態を示す斜視図である。
【図9】ガイドレートと導電体との接触構造の模式図であり、図8の矢印IX方向から導電体を見た構造図である。
【図10A】従来技術における、ガイドレールの形態の概要を示す、ガイドレールの側面図を示す模式図である。
【図10B】導電体がガイドレールと接触する際、導電体のテンションを下げるための、ガイドレールの形態の改良の第1形態に相当する、ガイドレールの側面図を示す模式図である。
【図10C】導電体がガイドレールと接触する際、導電体のテンションを下げるための、ガイドレールの形態の改良の第2形態に相当する、ガイドレールの側面図を示す模式図である。
【図10D】導電体がガイドレールと接触する際、導電体のテンションを下げるための、ガイドレールの形態の改良の第3形態に相当する、ガイドレールの側面図を示す模式図である。
【図10E】導電体がガイドレールと接触する際、導電体のテンションを下げるための、ガイドレールの形態の改良の第4形態に相当する、ガイドレールの側面図を示す模式図である。
【図11A】導電体がガイドレールの凹部の下面に接触する変形例に係る、ガイドレールの斜視図である。
【図11B】導電体がガイドレールの凹部の側面に接触する変形例に係る、ガイドレールの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明の実施形態について説明する。図1に、本発明に係る光ディスク駆動装置の一形態の分解斜視図を示す。本発明に係る光ディスク装置は、シャーシ100と、シャーシに光ディスクをローディングするためのローディングメカ102と、を備えている。ローディングメカ102は光ディスクのローディングのためにシャーシ100内外を進退する。図1は、ローディングメカ102が、光ディスクの装着又は取り外しのために、シャーシ100の外に露出している状態を示している。ローディングメカ102がこの状態にあることを、ローディングメカ102がローディング位置にあると、以下称する。
【0015】
シャーシ100は金属製のトップケース5とボトムケース4とを備え、トップケース5とボトムケース4とによって構成される断面矩形の空間内にローディングメカ100を収容する。ボトムケース4には、メイン回路基板2、フレキシブル基板3、そして、後述のガイドレール7a,7bを保持するレール保持部材8a,8bと、が設けられている。
【0016】
メイン回路基板2は、光ディスクの再生又は記録に必要な信号処理のための信号処理回路、光ピックアップ10やスピンドルモータ9等の駆動のための駆動回路、光ピックアップ10やスピンドルモータ9等の駆動を制御する等のための制御回路等を備えている。フレキシブル基板3は、メイン回路基板2と光ピックアップ10やスピンドルモータ9とを接続する。
【0017】
ローディングメカ102は、樹脂製のトレー6に金属製のベースユニット1が固定された構造から構成されている。ベースユニット1は、ベースユニットハウジング14にスピンドルモータ9と光ピックアップ10と光ピックアップを光ディスクの径方向に移動させる光ピックアップ駆動機構とを備えたものとして構成されている。図2はトレー6の底面側からトレーの開口部32にゴムブッシュ22を介してベースユニット1が固定される様子を示している。なお、符号30は、ベースユニットのボトムカバーである。
【0018】
ローディングメカ102とシャーシ100との間には、ローディングメカ102に沿ってガイドレール7a,7bが存在する。ガイドレール7a,7bは互いに平行で一対存在し、それぞれのガイドレールにローディングメカ100のトレー6の左右何れかの側端部が摺動可能に係合している。
【0019】
ガイドレール保持部材8a,8bはトップケース5とボトムケース4とからなるシャーシ内の両側縁に互いに平行に一対存在し、ガイドレール保持部材8a(8b)に対して同じ側のガイドレール7a(7b)が摺動可能に係合している。図示しない駆動機構によってローディングメカ102がシャーシ100の内から外に移動する際、先ず、ガイドレール7a,7bがガイドレール保持部材8a,8bに対してこれと摺動しながら相対移動してシャーシ外に移動し、そして、ローディングメカ102が、ガイドレール7a,7bによって案内されつつこれと摺動しながら、ガイドレールに対して相対移動し、その結果として、ローディングメカ102は、スピンドルモータ9に光ディスクを装着するか、スピンドルモータ9から光ディスクを外すことができる、ローディング位置に至る。
【0020】
次に、ローディングメカ102から静電気をガイドレール7a,7bに放電するための導電体について説明する。図1及び2では、説明の都合上導電体の図示を省略したが、図3には、導電体を説明するための、光ディスク駆動装置の一部拡大斜視図を示した。
【0021】
図3では、導電体40は一対あるガイドレール7a,7bのうちの一方に対して存在する。光ディスク駆動装置を正面から見て右側面に位置するガイドレール7bの近傍、すなわち、ガイドレール7bに導電体40が当接できるように、ローディングメカ1の上面に導電体40を固定した。もっとも、導電体40を左側面に位置するガイドレール7aの側に設けてもよく、或いは、左右の側のガイドレール7a,7bの側のそれぞれに導電体40を設けてもよい。
【0022】
導電体40は、図4に示すように、薄肉状の導電性プレートから構成されている。導電体40は主として金属製であるが、導電性樹脂など素材の如何は制限されない。以後、導電体40を「プレート」と呼ぶ。プレート40は、プレート本体42と、プレート本体42のシャーシ側先端付近から上方に湾曲しながらシャーシ側に向かって延長する付属体44を備えている。符号46は付属体42のうちの湾曲に形成された弾性変形部である。プレート本体42と付属体44とは一体に成形されている。
【0023】
プレート本体42には、ローディングメカ102にプレート本体を固定するための複数のボルト孔50a〜50dがプレート本体42の長さ方向に沿って存在する。シャーシ側の孔50c,50dはボルトによってトレー6の上面に固定され、シャーシ側とは反対側にある孔部50a,50bベースユニットハウジング14の上面に固定されている。したがって、プレート40はローディングメカ102と一体になって移動する。
【0024】
図5Aはガイドレール7b(7a)の斜視図であり、図5Bはガイドレールを矢印5Bの方向から見た図であり、図5Cは図5Bのガイドレールを矢印5Cの方向から見た図である。さらに、図6はガイドレール(図5C)の幅方向の断面をI−I方向から見た断面図である。
【0025】
図6から分かるように、ガイドレール7b(7a)はその幅方向の断面が鍵状のレ―ルであって、導電材料(金属又は導電性樹脂等)から形成されてなり、内部の凹状空間部50にローディングメカ102のトレー6の側面が係合している。
【0026】
図8はガイドレール7b(7a)とプレート40との組み付け状態を示す斜視図であり、プレート40はガイドプレート7a(7b)に近接しながらローディングメカ102に固定され、プレート本体40の横の付属体42の逆U様状に形成された弾性変形部46の上端領域がガイドレール7b(7a)の接触端面と当接している。プレート40の付属体44の弾性変形部46は板バネ構造を形成しており、弾性変形部46がガイドレール7b(7a)に接触する際に所定の接触圧を持ってガイドレールの接触面に接触している。したがって、ローディングメカ102が移動するとプレート40はガイドレール摺動しながら移動する。
【0027】
図9はガイドレート7b(7a)とプレート40との接触構造の模式図であり、図8の矢印IX方向からプレート40を見た構造図である。700はガイドレール7b(7a)のプレート40側と接触する下端面である。プレート40の付属体44の弾性変形部46の上端領域がガイドレール7b(7a)の下端面700に弾性的に接触する。
【0028】
図5B,5Cに示すように、ガイドレール7b(7a)の上面502のローディングメカの中心側端部はローディングメカ102に向かって直角に下降したフランジ500を形成され、その下端700はプレート40の弾性変形部46の端部領域と接触している。図7Aには、ガイドレールの下端700にプレート40の付属体44の弾性変形部46が接触している状態でのガイドレールの径方向断面図(図6に対応)が示されている。
【0029】
図7Bはプレート40のガイドレール7b(7a)に対する接触構造の他の形態を示す、ガイドレールの径方向の断面図であり、ガイドレール内の凹部50にプレートの付属体44が延長され、弾性変形部46がガイドレール内の凹部50内の上面702に接触している。ガイドレールの下端700は切断加工のままであることが通常であり、図7Aに示す、プレート40とガイドレール7b(7a)との接触構造では、下端700に露出する微小な凹凸がプレート40の弾性変形部46と当接するため、摺動ノイズの発生やプレートの摩耗のおそれがより多くある。
【0030】
一方、図7Bの形態では、ガイドレールの凹部50の上面702は下端700とは違い切断面ではないため、摺動ノイズの発生やプレートの摩耗のおそれはより少ない。一方、プレートの付属体44をガイドレールの凹部50内に延長しなければならないため、プレート40をガイドレール7b(7a)とローディングメカ102との間に介装させる上での制約が生じるおそれがある。したがって、好適には、図7Bの形態で、ガイドレールの下端700の破断面を滑らかになるように表面処理することが好ましい。
【0031】
既述のとおり、ローディングメカ102の移動にしたがってプレート40はガイドレール7a,7bに接触しながらこれと摺動する。図10Aにおいて、符号1000と符号1002とによって画成される範囲は、プレート40がガイドレール7a,7bに対して成す相対移動範囲であり、符号1000はローディングメカ102がシャーシ100内に収まった状態での位置であり、符号1002はローディングメカ102がシャーシ100から露出して既述のローディング位置に至った際の位置である。
【0032】
図10Aは、ガイドレール7a,7bとプレート40との関係についての従来構造の模式図である。Hはガイドレールの上端からプレート40の弾性変形部46と接触する下端700までの距離(ガイドレールの高さ)である。Hが大きいほど、プレートの弾性変形部46の弾性変形量が大きくなって、プレートがガイドレールに接触する際の接触圧が増加する。
【0033】
ローディングメカ102がシャーシ100内からシャーシ100外(ローディング位置)に移動する際、プレート40は、符号1000位置から符号1002の位置まで、ガイドレール7a,7bに対してL1で示す距離分相対移動する。一方、ローディングメカ102がシャーシ100外(ローディング位置)からシャーシ102内に移動する際には、これとは逆方向に、プレート40がガイドレール7a,7bに対して相対移動する。
【0034】
プレート40の弾性変形部46がガイドレール7a,7bに接触圧がより強く接触しようとすると、既述のとおり、摺動ノイズの発生やプレートの摩耗による放電不良のおそれがある。一方、接触圧を弱くすると、これらの課題は少なくなるものの、プレートとガイドレールとの接触が十分でなくなることによって、ベースユニット1の帯電がプレート40からガイドレール7a,7bを経てレール保持部材8a,8bに至り、ひいては、ボトムケース4を介して放電されるという放電ルートが維持できないおそれがある。
【0035】
そこで、発明者はこれらの課題を解決するために、ガイドレール7a,7bの形状を改良して、摺動ノイズの低減・プレート40の摩耗の低減と、放電性の向上という、従前は相反するとされていた要求の両立を図った。すなわち、光ディスク駆動装置において、放電が必要なのは、ローディングメカ102がシャーシ100から露出して、コンシューマが光ディスクをローディングメカ102に装着できるか、又は、光ディスクをローディングメカ102から取り外す際である。この時、コンシューマに帯電した静電気がローディングメカ102に放電されるおそれがある。
【0036】
一方、光ディスクをローディングメカ102に装着した後ローディングメカ102がシャーシ100内外を移動する間では、静電気がローディングメカ102に放電されるおそれは比較的少ない。そこで、プレート40の移動範囲の手前側端部の位置(1002)の近傍領域(図10AのL2)において、プレート40はガイドレール7a,7bに十分な接触圧を持って接触し、この領域から先の領域(L1−L2)、すなわち、ローディングメカ102が光ディスクのローディング位置から離れてシャーシ100側に移動する遷移領域では、プレート40の接触圧を低くして摺動ノイズやプレートの摩耗を少なくするようにした。
【0037】
プレート40の弾性変形部46のガイドレール7a,7bに対する接触圧を調整するために、発明者は、ガイドレールの形状を工夫した。すなわち、図10Bのように、第1の形態では、既述の遷移領域において、ガイドレール7a,7bのプレート40との接触面を、ガイドレールの長さ方向で、ガイドレールの上下方向に変形する環状の凹部1004の形状にして、プレート40の弾性変形部46の弾性変形量を低減し、弾性変形部46に加わるテンションを下げるようにした。
【0038】
第1の形態では、遷移領域における、ガイドレール7a,7bの最も凹状の部分では、ガイドレールの高さ(H−1)を、ガイドレール端部の高さ(H)の50%〜80%にした。係る高さ(H−1)は、ガイドレールに対するプレートの接触圧を既述の範囲に設定するために適宜決定できるもので、特定の値に制限されるものではない。換言すれば、摺動ノイズの低減・プレートの摩耗の低減と、放電性の向上という既述の効果が満たされる範囲のガイドレールの高さの変更は本発明の範囲である。
【0039】
次に第2の形態は、図10Cに示すように、ガイドレール7a,7bの下端面を略矩形の凹部1006に形成したことを特徴としている。なお、この形態での凹部の開始端の近傍及び終了端の近傍は、ガイドレールの高方向に向かって縮径するテーパ状にし(1010)、プレート40のガイドレール7a,7bに対する移動が円滑に連続するようにしている。凹部1006におけるガイドエールの高さ(H−2)はガイドレールの本来の高さ(H)の50%〜80%である。
【0040】
第1の形態及び第2の形態は、ガイドレール7a、7bのプレート40との接触面を凹状に加工したものであるが、第3の形態は、図10Dのように、ガイドレール7a,7bの遷移領域を凹状に成形するのではなく、ガイドレールの元々の高さ(H)を、プレートとの接触圧が強くならないように比較的少さく設定し、ローディングメカ102がローディング位置にある近傍領域(L2)ではガイドレールの実質の高さ(H−3)を増すために、当該領域に小レール1008を付加させたことを特徴とする。
【0041】
ガイドレールの実質の高さ(H−3)はガイドレールの本来の高さ(H)の10%〜50%増しとするが、適宜変更可能である。なお、ガイドレールの長さ方向におけるプレートの移動範囲(L1)の幅に対する前記近傍領域(L2)の割合は、例えば、前者の10%から30%であるが、適宜変更してよい。L1の一例は60mm程度であり、L2の一例は10mm程度である。
【0042】
第4の形態は、図10Eに示すように、ガイドレール7a,7bの凹状部1006の途中に、ガイドレールの下端面を実質的にプレート40側にオフセットするための、限られた長さの付加体1012を設けたことを特徴とする。(H−4)から(H−2)を差し引いた分、ガイドレールの下端面が実質的にプレート側40にオフセットされる。この付加体1012にプレート40の弾性変形部46が到達すると、弾性変形部46のテンションが一時的に増加して放電性が向上する。この形態では、ローディンメカ102が移動の途中で仮に帯電するようなことがあっても静電気を確実に放電できるという効果が達成される。付加体1012の高さ、長さは適宜設定可能である。
【0043】
既述の実施形態では、スリムタイプの光ディスク駆動装置について説明したが、光ピックアップ、スピンドルモータをシャーシ側に設けたタイプの光ディスク駆動装置に本発明を適用することは可能である。また、導電体をプレート状のものとして説明したが、導電体が弾性変形してガイドレールに接触できるものであれば、コイル状など、導電体の形状には特に制限はない。
【0044】
既述の図7Bでは、プレート40の弾性変形部46を、ガイドレールの凹部50の上面に接触させたが、図11Aのように、ガイドレールの下端面1020に、プレートの弾性部46を接触させてもよい。このような接触構造を形成するために、プレート40の付属体44はガイドレールの下端面1020に向かって延長されそして湾曲される。符号1020Aは、プレートの弾性変形部46の接触圧を増すための段差部である。
【0045】
さらにまた、図11Bのように、プレート40の弾性変形部46をガイドレールの凹部50の側面1022に接触させるようにしてもよい。このような接触構造を形成するために、プレート40の付属体44はガイドレールの側面1022に向かって延長されそして湾曲される。符号1022Aは、プレートの弾性変形部46の接触圧を増すための段差部である。
【符号の説明】
【0046】
4 ボトムケース
5 トップケース
6 トレー
7a,7b ガイドレール
8a,8b ガイドレール保持部材
9 スピンドルモータ
10 光ピックアップ
40 プレート(導電体)
100 シャーシ
102 ローディングメカ
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気放電:Electrostatic discharge(ESD)に対する対策が施された光ディスク駆動装置及びその放電方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ディスク駆動装置は、パソコン等の情報処理装置の外部記憶装置として利用されている。光ディスク駆動装置は、シャーシと、シャーシ内外を進退するローディングメカと、を主に備え、シャーシから露出したローディングメカに、コンシューマが光ディスクを装着した後ローディングメカをシャーシ内に移動させることによって、光ディスクの記録情報の再生又は光ディスクへの情報記録を可能とする。
【0003】
光ディスク駆動装置において、ローディングメカは、ガイド機構によって支持されながら移動する。ガイド機構のうちローディングメカを案内するガイドドレールは、シャーシのレール保持部材に保持されながらシャーシの内外を進退し、さらに、ローディングメカがガイドレールに対して相対移動する。したがって、ローディングメカはシャーシの内外を移動することができる。
【0004】
光ディスク駆動装置では、コンシューマがローディングメカに光ディスクを装着する際、コンシューマから静電気がローディングメカを通して電子部品に向けて放電されることがある。この放電によって、電子部品の誤作動やその損傷に繋がるおそれがあり、特に、ローディングメカにスピンドルモータや光ピックアップが固定されている、スリムタイプの光ディスク駆動装置では、ローディングメカの金属部分を介して容易に放電が発生するために、電子部品の誤作動や損傷のおそれがより高い。そこで、従来の光ディスク駆動装置ではESD対策が必要になっている。
【0005】
ESD対策が施された光ディスク駆動装置の従来例として、例えば、特開2003−187514号公報に記載されたものが存在する。このものは、ディスクの情報記録面に光を照射し、信号の記録、再生のいずれか一方または両方を行う光ディスク装置において、少なくとも上記ディスクを装置への脱着のために第1、第2の位置間で移動するローディングメカと、該ローディングメカの移動を案内するレール部材と、該レール部材を保持するレール保持部材と、を備え、少なくとも、上記ローディングメカ、上記レール部材、上記レール保持部材のいずれかが、その一部または全部を導電性樹脂で構成され、該3者間で電気的に導通可能とされることを特徴とする。
【0006】
ESD対策をより一層効果的にした光ディスク駆動装置として、放電用の導電体をローディングメカとガイドレールとの間に介装させ、導電体もローディングメカと一緒にガイドレールを摺動するようにして、コンシューマからローディングメカ側に放電された静電気を、導電体を介して、ガイドレールからシャーシを経て、ひいてはパソコンのアースに放電させるものも存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−34591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ローディングメカからガイドレールへの放電を効果的に進めるためには、導電体がガイドレールに接触する際の接触圧は高い方がよい。一方、ローディングメカの移動と一緒に導電体もガイドレールを繰り返し摺動するために、接触圧が高いと導電体の摩耗や塑性変形等の経年変化によって、導電体とガイドレールとの間の接触の程度が低下して、結果的に放電不良が発生するおそれがある。また、接触圧が高いと導電体がガイドレールに摺動する際に摺動ノイズが発生するおそれもある。したがって、従来の光ディスク駆動装置では、導電体の係る経年変化を避けるあまり、導電体のガイドレールに対する接触圧が十分とはいえず、ESD対策の実効性が伴わないものであった。
【0009】
そこで、本発明は、ESD対策の実効性を向上させた光ディスク駆動装置及びその放電方法を提供することを目的とする。本発明の他の目的は、静電気の放電用の導電体とガイドレールとの接触が導電体の経年変化によって不良とならないようにする光ディスク駆動装置及びその放電方法を提供することにある。本発明の更に他の目的は、導電体の経年変化を無くすか、これを極小化できる、ガイドレールの構造を備えた光ディスク駆動装置及びその放電方法を提供することにある。本発明の更に他の目的は、放電性を高めながらローディングメカの摺動ノイズが少ない光ディスク駆動装置及びその放電法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明に係る光ディスク駆動装置は、シャーシと、当該シャーシに対して進退するローディングメカと、前記ローディングメカに搭載された、光ピックアップと光ディスクの回転駆動装置と、前記シャーシに対する前記ローディングメカの進退をガイドするガイドレールと、前記ガイドレールを前記シャーシに対して保持するガイドレール保持部材と、前記ローディングメカに固定され、かつ、当該ローディングメカが前記シャーシに対して進退する際に前記ガイドレールに接する導電体と、を備え、前記ガイドレールの前記導電体に接する面は第1の領域と第2の領域とを備え、前記第1の領域は前記第2の領域より前記導電体側に近接する端面を有し、前記ローディングメカが前記光ディスクの脱着を可能とする第1の状態では、前記導電体は前記第1の領域に接触し、前記ローディングメカが前記シャーシ内に収容される第2の状態から前記第1の状態の間で移動する際、前記導電体は前記第2の領域に接触している、ことを特徴とするものである。
【0011】
さらに、前記目的を達成するために、本発明に係る光ディスクの駆動装置の放電方法は、シャーシと、当該シャーシに対して進退するローディングメカと、前記ローディングメカに搭載された、光ピックアップと光ディスクの回転駆動装置と、前記シャーシに対する前記ローディングメカの進退をガイドするガイドレールと、前記ガイドレールを前記シャーシに対して保持するガイドレール保持部材と、前記ローディングメカに固定され、かつ、当該ローディングメカが前記シャーシに対して進退する際に前記ガイドレールに接する導電体と、を備える光ディスクの放電方法において、前記ローディングメカが前記光ディスクの脱着を可能とする第1の状態では、前記導電体は前記ガイドレールに第1の接触圧で接触し、前記ローディングメカが前記シャーシ内に収容される第2の状態から前記第1の状態の間で移動する際、前記導電体は前記ガイドレールに前記第1の接触圧より低い第2の接触圧で接触している、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ローディングメカに光ディスクの脱着をされるような、放電性が要求される第1の状態では、導電体はガイドレールの第1の領域に放電性に必要な接触圧を持って接触する、一方、それ以外の状態では、導電体はガイドレールに適度な接触圧で接触するため、ローディングメカのシャーシに対する進退が繰り返しあっても、導電体の摩耗などの経年変化を抑制することできる。したがって、本発明によれば、ESD対策の実行性が向上した光ディスク装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る光ディスク装置の一形態の分解斜視図である。
【図2】トレーの開口部に底面側からベースユニットが固定される様子を示す、図1と同様な斜視図である。
【図3】光ディスク駆動装置の一部拡大斜視図である。
【図4】放電用の導電体の斜視図である。
【図5A】図5Aはガイドレールの斜視図である。
【図5B】図5Aのガイドレールを矢印5Bの方向から見たガイドレールの図である。
【図5C】図5Bを矢印5Cの方向から見たガイドレールの図である。
【図6】ガイドレール(図5C)の幅方向の断面をI−I方向から描いたガイドレールの断面図である。
【図7A】ガイドレールの下端に導電体の弾性変形部が接触している状態でのガイドレールの径方向断面図(図6に対応)である。
【図7B】導電体のガイドレールに対する接触構造の他の形態を示す、ガイドレールの径方向の断面図である。
【図8】ガイドレールと導電体との組み付け状態を示す斜視図である。
【図9】ガイドレートと導電体との接触構造の模式図であり、図8の矢印IX方向から導電体を見た構造図である。
【図10A】従来技術における、ガイドレールの形態の概要を示す、ガイドレールの側面図を示す模式図である。
【図10B】導電体がガイドレールと接触する際、導電体のテンションを下げるための、ガイドレールの形態の改良の第1形態に相当する、ガイドレールの側面図を示す模式図である。
【図10C】導電体がガイドレールと接触する際、導電体のテンションを下げるための、ガイドレールの形態の改良の第2形態に相当する、ガイドレールの側面図を示す模式図である。
【図10D】導電体がガイドレールと接触する際、導電体のテンションを下げるための、ガイドレールの形態の改良の第3形態に相当する、ガイドレールの側面図を示す模式図である。
【図10E】導電体がガイドレールと接触する際、導電体のテンションを下げるための、ガイドレールの形態の改良の第4形態に相当する、ガイドレールの側面図を示す模式図である。
【図11A】導電体がガイドレールの凹部の下面に接触する変形例に係る、ガイドレールの斜視図である。
【図11B】導電体がガイドレールの凹部の側面に接触する変形例に係る、ガイドレールの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明の実施形態について説明する。図1に、本発明に係る光ディスク駆動装置の一形態の分解斜視図を示す。本発明に係る光ディスク装置は、シャーシ100と、シャーシに光ディスクをローディングするためのローディングメカ102と、を備えている。ローディングメカ102は光ディスクのローディングのためにシャーシ100内外を進退する。図1は、ローディングメカ102が、光ディスクの装着又は取り外しのために、シャーシ100の外に露出している状態を示している。ローディングメカ102がこの状態にあることを、ローディングメカ102がローディング位置にあると、以下称する。
【0015】
シャーシ100は金属製のトップケース5とボトムケース4とを備え、トップケース5とボトムケース4とによって構成される断面矩形の空間内にローディングメカ100を収容する。ボトムケース4には、メイン回路基板2、フレキシブル基板3、そして、後述のガイドレール7a,7bを保持するレール保持部材8a,8bと、が設けられている。
【0016】
メイン回路基板2は、光ディスクの再生又は記録に必要な信号処理のための信号処理回路、光ピックアップ10やスピンドルモータ9等の駆動のための駆動回路、光ピックアップ10やスピンドルモータ9等の駆動を制御する等のための制御回路等を備えている。フレキシブル基板3は、メイン回路基板2と光ピックアップ10やスピンドルモータ9とを接続する。
【0017】
ローディングメカ102は、樹脂製のトレー6に金属製のベースユニット1が固定された構造から構成されている。ベースユニット1は、ベースユニットハウジング14にスピンドルモータ9と光ピックアップ10と光ピックアップを光ディスクの径方向に移動させる光ピックアップ駆動機構とを備えたものとして構成されている。図2はトレー6の底面側からトレーの開口部32にゴムブッシュ22を介してベースユニット1が固定される様子を示している。なお、符号30は、ベースユニットのボトムカバーである。
【0018】
ローディングメカ102とシャーシ100との間には、ローディングメカ102に沿ってガイドレール7a,7bが存在する。ガイドレール7a,7bは互いに平行で一対存在し、それぞれのガイドレールにローディングメカ100のトレー6の左右何れかの側端部が摺動可能に係合している。
【0019】
ガイドレール保持部材8a,8bはトップケース5とボトムケース4とからなるシャーシ内の両側縁に互いに平行に一対存在し、ガイドレール保持部材8a(8b)に対して同じ側のガイドレール7a(7b)が摺動可能に係合している。図示しない駆動機構によってローディングメカ102がシャーシ100の内から外に移動する際、先ず、ガイドレール7a,7bがガイドレール保持部材8a,8bに対してこれと摺動しながら相対移動してシャーシ外に移動し、そして、ローディングメカ102が、ガイドレール7a,7bによって案内されつつこれと摺動しながら、ガイドレールに対して相対移動し、その結果として、ローディングメカ102は、スピンドルモータ9に光ディスクを装着するか、スピンドルモータ9から光ディスクを外すことができる、ローディング位置に至る。
【0020】
次に、ローディングメカ102から静電気をガイドレール7a,7bに放電するための導電体について説明する。図1及び2では、説明の都合上導電体の図示を省略したが、図3には、導電体を説明するための、光ディスク駆動装置の一部拡大斜視図を示した。
【0021】
図3では、導電体40は一対あるガイドレール7a,7bのうちの一方に対して存在する。光ディスク駆動装置を正面から見て右側面に位置するガイドレール7bの近傍、すなわち、ガイドレール7bに導電体40が当接できるように、ローディングメカ1の上面に導電体40を固定した。もっとも、導電体40を左側面に位置するガイドレール7aの側に設けてもよく、或いは、左右の側のガイドレール7a,7bの側のそれぞれに導電体40を設けてもよい。
【0022】
導電体40は、図4に示すように、薄肉状の導電性プレートから構成されている。導電体40は主として金属製であるが、導電性樹脂など素材の如何は制限されない。以後、導電体40を「プレート」と呼ぶ。プレート40は、プレート本体42と、プレート本体42のシャーシ側先端付近から上方に湾曲しながらシャーシ側に向かって延長する付属体44を備えている。符号46は付属体42のうちの湾曲に形成された弾性変形部である。プレート本体42と付属体44とは一体に成形されている。
【0023】
プレート本体42には、ローディングメカ102にプレート本体を固定するための複数のボルト孔50a〜50dがプレート本体42の長さ方向に沿って存在する。シャーシ側の孔50c,50dはボルトによってトレー6の上面に固定され、シャーシ側とは反対側にある孔部50a,50bベースユニットハウジング14の上面に固定されている。したがって、プレート40はローディングメカ102と一体になって移動する。
【0024】
図5Aはガイドレール7b(7a)の斜視図であり、図5Bはガイドレールを矢印5Bの方向から見た図であり、図5Cは図5Bのガイドレールを矢印5Cの方向から見た図である。さらに、図6はガイドレール(図5C)の幅方向の断面をI−I方向から見た断面図である。
【0025】
図6から分かるように、ガイドレール7b(7a)はその幅方向の断面が鍵状のレ―ルであって、導電材料(金属又は導電性樹脂等)から形成されてなり、内部の凹状空間部50にローディングメカ102のトレー6の側面が係合している。
【0026】
図8はガイドレール7b(7a)とプレート40との組み付け状態を示す斜視図であり、プレート40はガイドプレート7a(7b)に近接しながらローディングメカ102に固定され、プレート本体40の横の付属体42の逆U様状に形成された弾性変形部46の上端領域がガイドレール7b(7a)の接触端面と当接している。プレート40の付属体44の弾性変形部46は板バネ構造を形成しており、弾性変形部46がガイドレール7b(7a)に接触する際に所定の接触圧を持ってガイドレールの接触面に接触している。したがって、ローディングメカ102が移動するとプレート40はガイドレール摺動しながら移動する。
【0027】
図9はガイドレート7b(7a)とプレート40との接触構造の模式図であり、図8の矢印IX方向からプレート40を見た構造図である。700はガイドレール7b(7a)のプレート40側と接触する下端面である。プレート40の付属体44の弾性変形部46の上端領域がガイドレール7b(7a)の下端面700に弾性的に接触する。
【0028】
図5B,5Cに示すように、ガイドレール7b(7a)の上面502のローディングメカの中心側端部はローディングメカ102に向かって直角に下降したフランジ500を形成され、その下端700はプレート40の弾性変形部46の端部領域と接触している。図7Aには、ガイドレールの下端700にプレート40の付属体44の弾性変形部46が接触している状態でのガイドレールの径方向断面図(図6に対応)が示されている。
【0029】
図7Bはプレート40のガイドレール7b(7a)に対する接触構造の他の形態を示す、ガイドレールの径方向の断面図であり、ガイドレール内の凹部50にプレートの付属体44が延長され、弾性変形部46がガイドレール内の凹部50内の上面702に接触している。ガイドレールの下端700は切断加工のままであることが通常であり、図7Aに示す、プレート40とガイドレール7b(7a)との接触構造では、下端700に露出する微小な凹凸がプレート40の弾性変形部46と当接するため、摺動ノイズの発生やプレートの摩耗のおそれがより多くある。
【0030】
一方、図7Bの形態では、ガイドレールの凹部50の上面702は下端700とは違い切断面ではないため、摺動ノイズの発生やプレートの摩耗のおそれはより少ない。一方、プレートの付属体44をガイドレールの凹部50内に延長しなければならないため、プレート40をガイドレール7b(7a)とローディングメカ102との間に介装させる上での制約が生じるおそれがある。したがって、好適には、図7Bの形態で、ガイドレールの下端700の破断面を滑らかになるように表面処理することが好ましい。
【0031】
既述のとおり、ローディングメカ102の移動にしたがってプレート40はガイドレール7a,7bに接触しながらこれと摺動する。図10Aにおいて、符号1000と符号1002とによって画成される範囲は、プレート40がガイドレール7a,7bに対して成す相対移動範囲であり、符号1000はローディングメカ102がシャーシ100内に収まった状態での位置であり、符号1002はローディングメカ102がシャーシ100から露出して既述のローディング位置に至った際の位置である。
【0032】
図10Aは、ガイドレール7a,7bとプレート40との関係についての従来構造の模式図である。Hはガイドレールの上端からプレート40の弾性変形部46と接触する下端700までの距離(ガイドレールの高さ)である。Hが大きいほど、プレートの弾性変形部46の弾性変形量が大きくなって、プレートがガイドレールに接触する際の接触圧が増加する。
【0033】
ローディングメカ102がシャーシ100内からシャーシ100外(ローディング位置)に移動する際、プレート40は、符号1000位置から符号1002の位置まで、ガイドレール7a,7bに対してL1で示す距離分相対移動する。一方、ローディングメカ102がシャーシ100外(ローディング位置)からシャーシ102内に移動する際には、これとは逆方向に、プレート40がガイドレール7a,7bに対して相対移動する。
【0034】
プレート40の弾性変形部46がガイドレール7a,7bに接触圧がより強く接触しようとすると、既述のとおり、摺動ノイズの発生やプレートの摩耗による放電不良のおそれがある。一方、接触圧を弱くすると、これらの課題は少なくなるものの、プレートとガイドレールとの接触が十分でなくなることによって、ベースユニット1の帯電がプレート40からガイドレール7a,7bを経てレール保持部材8a,8bに至り、ひいては、ボトムケース4を介して放電されるという放電ルートが維持できないおそれがある。
【0035】
そこで、発明者はこれらの課題を解決するために、ガイドレール7a,7bの形状を改良して、摺動ノイズの低減・プレート40の摩耗の低減と、放電性の向上という、従前は相反するとされていた要求の両立を図った。すなわち、光ディスク駆動装置において、放電が必要なのは、ローディングメカ102がシャーシ100から露出して、コンシューマが光ディスクをローディングメカ102に装着できるか、又は、光ディスクをローディングメカ102から取り外す際である。この時、コンシューマに帯電した静電気がローディングメカ102に放電されるおそれがある。
【0036】
一方、光ディスクをローディングメカ102に装着した後ローディングメカ102がシャーシ100内外を移動する間では、静電気がローディングメカ102に放電されるおそれは比較的少ない。そこで、プレート40の移動範囲の手前側端部の位置(1002)の近傍領域(図10AのL2)において、プレート40はガイドレール7a,7bに十分な接触圧を持って接触し、この領域から先の領域(L1−L2)、すなわち、ローディングメカ102が光ディスクのローディング位置から離れてシャーシ100側に移動する遷移領域では、プレート40の接触圧を低くして摺動ノイズやプレートの摩耗を少なくするようにした。
【0037】
プレート40の弾性変形部46のガイドレール7a,7bに対する接触圧を調整するために、発明者は、ガイドレールの形状を工夫した。すなわち、図10Bのように、第1の形態では、既述の遷移領域において、ガイドレール7a,7bのプレート40との接触面を、ガイドレールの長さ方向で、ガイドレールの上下方向に変形する環状の凹部1004の形状にして、プレート40の弾性変形部46の弾性変形量を低減し、弾性変形部46に加わるテンションを下げるようにした。
【0038】
第1の形態では、遷移領域における、ガイドレール7a,7bの最も凹状の部分では、ガイドレールの高さ(H−1)を、ガイドレール端部の高さ(H)の50%〜80%にした。係る高さ(H−1)は、ガイドレールに対するプレートの接触圧を既述の範囲に設定するために適宜決定できるもので、特定の値に制限されるものではない。換言すれば、摺動ノイズの低減・プレートの摩耗の低減と、放電性の向上という既述の効果が満たされる範囲のガイドレールの高さの変更は本発明の範囲である。
【0039】
次に第2の形態は、図10Cに示すように、ガイドレール7a,7bの下端面を略矩形の凹部1006に形成したことを特徴としている。なお、この形態での凹部の開始端の近傍及び終了端の近傍は、ガイドレールの高方向に向かって縮径するテーパ状にし(1010)、プレート40のガイドレール7a,7bに対する移動が円滑に連続するようにしている。凹部1006におけるガイドエールの高さ(H−2)はガイドレールの本来の高さ(H)の50%〜80%である。
【0040】
第1の形態及び第2の形態は、ガイドレール7a、7bのプレート40との接触面を凹状に加工したものであるが、第3の形態は、図10Dのように、ガイドレール7a,7bの遷移領域を凹状に成形するのではなく、ガイドレールの元々の高さ(H)を、プレートとの接触圧が強くならないように比較的少さく設定し、ローディングメカ102がローディング位置にある近傍領域(L2)ではガイドレールの実質の高さ(H−3)を増すために、当該領域に小レール1008を付加させたことを特徴とする。
【0041】
ガイドレールの実質の高さ(H−3)はガイドレールの本来の高さ(H)の10%〜50%増しとするが、適宜変更可能である。なお、ガイドレールの長さ方向におけるプレートの移動範囲(L1)の幅に対する前記近傍領域(L2)の割合は、例えば、前者の10%から30%であるが、適宜変更してよい。L1の一例は60mm程度であり、L2の一例は10mm程度である。
【0042】
第4の形態は、図10Eに示すように、ガイドレール7a,7bの凹状部1006の途中に、ガイドレールの下端面を実質的にプレート40側にオフセットするための、限られた長さの付加体1012を設けたことを特徴とする。(H−4)から(H−2)を差し引いた分、ガイドレールの下端面が実質的にプレート側40にオフセットされる。この付加体1012にプレート40の弾性変形部46が到達すると、弾性変形部46のテンションが一時的に増加して放電性が向上する。この形態では、ローディンメカ102が移動の途中で仮に帯電するようなことがあっても静電気を確実に放電できるという効果が達成される。付加体1012の高さ、長さは適宜設定可能である。
【0043】
既述の実施形態では、スリムタイプの光ディスク駆動装置について説明したが、光ピックアップ、スピンドルモータをシャーシ側に設けたタイプの光ディスク駆動装置に本発明を適用することは可能である。また、導電体をプレート状のものとして説明したが、導電体が弾性変形してガイドレールに接触できるものであれば、コイル状など、導電体の形状には特に制限はない。
【0044】
既述の図7Bでは、プレート40の弾性変形部46を、ガイドレールの凹部50の上面に接触させたが、図11Aのように、ガイドレールの下端面1020に、プレートの弾性部46を接触させてもよい。このような接触構造を形成するために、プレート40の付属体44はガイドレールの下端面1020に向かって延長されそして湾曲される。符号1020Aは、プレートの弾性変形部46の接触圧を増すための段差部である。
【0045】
さらにまた、図11Bのように、プレート40の弾性変形部46をガイドレールの凹部50の側面1022に接触させるようにしてもよい。このような接触構造を形成するために、プレート40の付属体44はガイドレールの側面1022に向かって延長されそして湾曲される。符号1022Aは、プレートの弾性変形部46の接触圧を増すための段差部である。
【符号の説明】
【0046】
4 ボトムケース
5 トップケース
6 トレー
7a,7b ガイドレール
8a,8b ガイドレール保持部材
9 スピンドルモータ
10 光ピックアップ
40 プレート(導電体)
100 シャーシ
102 ローディングメカ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャーシと、
当該シャーシに対して進退するローディングメカと、
前記ローディングメカに搭載された、光ピックアップと光ディスクの回転駆動装置と、
前記シャーシに対する前記ローディングメカの進退をガイドするガイドレールと、
前記ガイドレールを前記シャーシに対して保持するガイドレール保持部材と、
前記ローディングメカに固定され、かつ、当該ローディングメカが前記シャーシに対して進退する際に前記ガイドレールに接する導電体と、
を備え、
前記ガイドレールの前記導電体に接する面は、第1の領域と第2の領域とを備え、
前記第1の領域は、前記第2の領域より前記導電体側に近接する端面を有し、
前記ローディングメカが前記光ディスクの脱着を可能とする第1の状態では、前記導電体は前記第1の領域に接触し、
前記ローディングメカが前記シャーシ内に収容される第2の状態から前記第1の状態の間で移動する際、前記導電体は前記第2の領域に接触している、
光ディスク駆動装置。
【請求項2】
前記導電体は弾性変形して前記ガイドレールに接触している、請求項1記載の光ディスク駆動装置。
【請求項3】
前記ガイドレールの前記導電体に接触する面に凹状部を形成され、前記第2の領域を前記凹状部とする、請求項1記載の光ディスク駆動装置。
【請求項4】
前記第2の領域の途中に当該第2の領域より前記導電体側に近接する端面を持った第3の領域が形成されている、請求項1記載の光ディスク駆動装置。
【請求項5】
シャーシと、
当該シャーシに対して進退するローディングメカと、
前記ローディングメカに搭載された、光ピックアップと光ディスクの回転駆動装置と、
前記シャーシに対する前記ローディングメカの進退をガイドするガイドレールと、
前記ガイドレールを前記シャーシに対して保持するガイドレール保持部材と、
前記ローディングメカに固定され、かつ、当該ローディングメカが前記シャーシに対して進退する際に前記ガイドレールに接する導電体と、を備える光ディスクの放電方法において、
前記ローディングメカが前記光ディスクの脱着を可能とする第1の状態では、前記導電体は前記ガイドレールに第1の接触圧で接触し、
前記ローディングメカが前記シャーシ内に収容される第2の状態から前記第1の状態の間で移動する際、前記導電体は前記ガイドレールに前記第1の接触圧より低い第2の接触圧で接触している、光ディスク駆動装置の放電方法。
【請求項1】
シャーシと、
当該シャーシに対して進退するローディングメカと、
前記ローディングメカに搭載された、光ピックアップと光ディスクの回転駆動装置と、
前記シャーシに対する前記ローディングメカの進退をガイドするガイドレールと、
前記ガイドレールを前記シャーシに対して保持するガイドレール保持部材と、
前記ローディングメカに固定され、かつ、当該ローディングメカが前記シャーシに対して進退する際に前記ガイドレールに接する導電体と、
を備え、
前記ガイドレールの前記導電体に接する面は、第1の領域と第2の領域とを備え、
前記第1の領域は、前記第2の領域より前記導電体側に近接する端面を有し、
前記ローディングメカが前記光ディスクの脱着を可能とする第1の状態では、前記導電体は前記第1の領域に接触し、
前記ローディングメカが前記シャーシ内に収容される第2の状態から前記第1の状態の間で移動する際、前記導電体は前記第2の領域に接触している、
光ディスク駆動装置。
【請求項2】
前記導電体は弾性変形して前記ガイドレールに接触している、請求項1記載の光ディスク駆動装置。
【請求項3】
前記ガイドレールの前記導電体に接触する面に凹状部を形成され、前記第2の領域を前記凹状部とする、請求項1記載の光ディスク駆動装置。
【請求項4】
前記第2の領域の途中に当該第2の領域より前記導電体側に近接する端面を持った第3の領域が形成されている、請求項1記載の光ディスク駆動装置。
【請求項5】
シャーシと、
当該シャーシに対して進退するローディングメカと、
前記ローディングメカに搭載された、光ピックアップと光ディスクの回転駆動装置と、
前記シャーシに対する前記ローディングメカの進退をガイドするガイドレールと、
前記ガイドレールを前記シャーシに対して保持するガイドレール保持部材と、
前記ローディングメカに固定され、かつ、当該ローディングメカが前記シャーシに対して進退する際に前記ガイドレールに接する導電体と、を備える光ディスクの放電方法において、
前記ローディングメカが前記光ディスクの脱着を可能とする第1の状態では、前記導電体は前記ガイドレールに第1の接触圧で接触し、
前記ローディングメカが前記シャーシ内に収容される第2の状態から前記第1の状態の間で移動する際、前記導電体は前記ガイドレールに前記第1の接触圧より低い第2の接触圧で接触している、光ディスク駆動装置の放電方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図11A】
【図11B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図11A】
【図11B】
【公開番号】特開2012−252752(P2012−252752A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125844(P2011−125844)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】
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