説明

光ディスク

【目的】 情報を高密度に記録したり、あるいは高密度に記録された情報の再生を正確に行う。
【構成】 基板の上に直接又は中間層を介して、読み出し又は書き込みのために照射される光ビームの径を絞るためのシャッタ層を備え、該シャッタ層は、半導体微粒子を含有するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、音声、映像等の各種情報の信号を記録する光学式記録媒体である光ディスク、特に情報を高密度に記録したり、あるいは高密度に記録された情報の再生を正確に行うことができる光ディスクに関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、光ディスクは中央部にセンターホールを有し、このセンターホールの外周に螺線状につながった1本のトラックとして情報が記録される。従来、この種の記録ディスクは、図4(a)に示すように、アクリル樹脂(Polymethyl methacrylate;PMMA)等の透明なディスク基板11上に情報に対応する凹凸形状の情報ピット部12が形成され、この情報ピット部12が形成されたディスク基板11上に高い反射率のアルミニウム膜15が蒸着され、このアルミニウム膜15上にプラスチック等の保護層16を形成して構成される。
【0003】前記構成に基づく記録ディスクから情報を再生する場合には透明なディスク基板11側からレーザ光等の光ビーム30を再生の対象となるトラックの情報ピット部12に投射し、図4(b)に示すように情報ピット部12のないピット間の鏡面部で反射された反射光31が「明」として検出され、また情報ピット部12で反射された反射光32が「暗」として検出される。このように「明」、「暗」の反射光により情報ピット部12の各記録ピット12a,12b,12c…に対応する情報が再生されることとなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記従来の光ディスク及びその再生方法は以上のように構成されていたことから、相隣るトラックのトラックピッチを狭くして情報を高密度化して記録した場合には、この高密度化した記録ディスクの複数のトラックに亘って光ビームが投射されることとなるという問題を有していた。即ち、光ビームの波長に基づいてビームスポットの直径が定まることから一般に、スポット径を小径化することには限界があり、この限界を越えた狭いトラックピッチで情報が記録されると、図4(c)に示すように複数のトラックの各情報ピット12a,12b,12cから反射光32の「暗」(又は明31)という情報が同時に複数検出されて情報再生を正確に行なえなくなるという不都合が生じていた。
【0005】また、この一方で、書き込み可能な記録膜を備える光ディスクであって、情報を高密度に記録することができる光ディスクの開発も要望されている。本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、情報を高密度に記録することができる光ディスクまたは、この記録された情報の再生を正確に行なうことができる光ディスクを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため本発明の光ディスクは、基板の上に直接又は中間層を介して、読み出し又は書き込みのために照射される光ビームの径を絞るためのシャッタ層を備え、該シャッタ層は、半導体微粒子を含有するように構成した。
【0007】
【作用】本発明の光ディスクの基板側から光照射が行なわれると、半導体微粒子を含有するシャッタ層でビーム径が絞られる。
【0008】すなわち、シャッタ層においては、ある光強度以上の所だけ光が透過し、それ以外の所では光の透過が抑制され、その結果としてビーム径がさらに絞られる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の光ディスクを図1〜図3に基づいて説明する。図1には、位相差を利用して記録、再生を行う、いわゆる位相ピットを備えた第1実施例としての光ディスク1が示される。
【0010】この光ディスク1は、基板11と、この基板11の上に形成されたシャッタ層17と、このシャッタ層17の上に形成された光反射層19とを備える。前記基板11は、通常、ディスク形状をなし、基板11の光ビームの光源側の面には平坦面11aが形成され、他方の面11bには音声、映像等の情報に対応する複数の情報ピット部12が形成される。
【0011】基板11は、通常、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリオレフィン系樹脂等の各種透明樹脂材料から形成され、前記情報ピット部12は、通常、基板11を射出成形などによって形成する時に同時に成形される。
【0012】このような基板11の情報ピット部12側の上には、読み出し又は書き込みのために照射される光ビームの径を絞るためのシャッタ層17が形成される。このシャッタ層17は、ガラス又は樹脂のマトリックスの中に、CdS、CdSe、CdSSe1-x 、GaAs、アモルファスSi、CdTe、CdSe、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、GaP、GaN、AlAs、AlP、AlSb、およびアモルファスSiCの中から選ばれた少なくとも1種の半導体微粒子を分散させて形成される。
【0013】このようなシャッタ層17に含有される半導体微粒子の含有量は、1〜80mol%より好ましくは、5〜70mol%程度とされる。この値が80mol%を超えると、半導体微粒子どうしの凝縮がおこり、微粒子として存在できないという不都合が生じ、この値が1mol%未満となると、十分なシャッター効果が得られない(シャッター開閉による透過率の差が小さい)という不都合が生じる。
【0014】含有される半導体微粒子の粒径は、0.1〜50nm、より好ましくは0.5〜30nmとされる。このような半導体微粒子を分散させるマトリックス(母体)の材料としては、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、低アルカリガラス、石英ガラス等のガラスや、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、アモルファスポリオレフィン、エポキシ等の樹脂が用いられる。このようなマトリックス材料は、用いる光源の波長で十分な透明度をもつことが必要とされる。
【0015】半導体微粒子をマトリックスに分散させる方法は、マトリックスがガラスであるか樹脂であるかによって異なる。すなわち、マトリックス材料がガラスの場合、■高濃度の半導体構成成分を含むガラスを超急冷法により作製し、その後の熱処理によって半導体微粒子をガラスの中に析出させる方法、■多孔質ガラスのポア中に半導体微粒子を液相や気相より含浸する方法、■半導体微粒子が分散した溶液を、ゾルゲル法により固化する方法、■スパッタなどの方法により半導体微粒子を含むガラス薄膜を気相より成長させる方法などが挙げられる。
【0016】この一方で、マトリックス材料が樹脂の場合、■半導体微粒子が分散させられた溶液と樹脂が溶解された溶液とを混合し、この混合液を基板の上にスピンコート法により成膜する方法、■スパッタや蒸着などの方法により、半導体微粒子を含む樹脂薄膜を気相により成長させる方法などが挙げられる。
【0017】このようにして形成されるシャッタ層17の厚さは、0.005〜0.3μm程度とされる。シャッタ層17の作用を、図3に基づいて説明する。図3は本発明のシャッタ層を設けることによって、光ビームの径がさらに絞られることを説明するための概略説明図である。すなわち図3(a)はシャッタ層を設けない状態でのビームプロファイルであり、図3(b)はシャッタ層を設けた状態でのビームプロファイルである。(a)および(b)に示されるプロファイルから分かるように、シャッタ層を設けることによってビーム径を著しく絞ることができ、従来読み出し出来なかった(図3(a))1つの記録ピットを確実に読み出すことが出来る(図3(b))。
【0018】なお、本発明の光ディスクが対象としている読み出し又は書き込みのための光ビーム波長は、310〜890nmであり、実際、具体的に用いる波長に応じて、シャッタ層17の組成が適宜、選定される。
【0019】このようにして形成されたシャッタ層17の上には光反射層19が形成される。光反射層19は、Au,Ag,Cu,Al等の金属から構成され、このものは真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の各種真空成膜法で成膜される。このような光反射層19の厚さは0.03〜0.3μm程度とされる。
【0020】なお、本発明の基板11とシャッタ層17との間や、シャッタ層17と光反射層19の間には、ZnS、SiO2 あるいはこれらの混合物等の各種中間層を設けてもよい。さらに光反射層19の上には、各種保護膜を設けてもよい。
【0021】図2には、反射率の差を利用して記録、再生を行ういわゆる反射率の差を生ぜしめるピットを備える光ディスク2が第2実施例として示される。この光ディスク2は、基板13と、この基板13の上に形成されたシャッタ層17と、このシャッタ層17の上に形成された記録膜18とを備えている。この第2実施例で用いられる基板13の表面上には第1実施例のように記録ピットが形成されておらず、その代りに後述する記録膜18が設けられ、この記録膜18に記録ピット部が形成される。シャッタ層17は、前記第1実施例ですでに説明したそれと同様である。
【0022】記録膜18は光照射の記録により、光照射された部分と、光照射されなかった部分との間で反射率の差がとれるような材料から形成される。これらの材料の一例を挙げると、非結晶質と結晶質との間の相変化を利用して情報を行う、As−Te−Ge系、Sn−Te−Se系、TeOx(0<X<2)、Sb2 Se3 、Bi2 Te3 等の相変化タイプの記録膜材料がある。さらに、Te系材料の無機系の薄膜やシアニン色素、フタロシアニン色素等の有機色素薄膜を用いたピット形成による記録材料等も記録膜18材料の一例である。その他、光磁気メモリーに用いられるTbFeCo、GdCo、PtCo等の材料も挙げられる。
【0023】なお、本発明の第2実施例の基板13とシャッタ層17との間や、シャッタ層17と記録膜18との間には、ZnS、SiO2 、あるいはこれらの混合物等の各種中間層を設けてもよい。
【0024】さらに、記録膜18の上には、Au、Ag、Al、Cu等の反射膜や、ZnS、SiO2 等の保護膜を設けても良い。なお、本実施例では主として読み出し光のビーム径を絞ることを中心にして説明してきたが、もちろん書き込み光のビーム径を絞り、高密度記録に適用できることは言うまでもない。
【0025】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の光ディスクでは、基板の上に直接又は中間層を介して、読み出し又は書き込みのために照射される光ビームの径を絞るためのシャッタ層を備え、該シャッタ層は、半導体微粒子を含有するように構成しているので、情報を高密度に記録したり、あるいは高密度に記録された情報の再生を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光ディスクの一例の構造を説明するための概略半片断面図である。
【図2】本発明の他の光ディスクの一例の構造を説明するための概略半片断面図である。
【図3】本発明のシャッタ層を設けることによって、光ビームの径がさらに絞られることを説明するための概略説明図であって、(a)はシャッタ層を設けない状態でのビームプロファイルであり、(b)はシャッタ層を設けた状態でのビームプロファイルである。
【図4】(a)は情報が記録された状態を模式的に示すための光ディスクの部分切り欠き断面図であり、(b)は読み出しの原理を説明するための図、(c)は高密度に記録された情報の再生を行う場合に生ずる従来の不都合を説明するための図である。
【符号の説明】
1,2…光ディスク
11,13…基板
17…シャッタ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板の上に直接又は中間層を介して、読み出し又は書き込みのために照射される光ビームの径を絞るためのシャッタ層を備え、該シャッタ層は、半導体微粒子を含有することを特徴とする光ディスク。
【請求項2】 前記シャッタ層は、ガラス又は樹脂のマトリックスの中に、CdS,CdSe、CdSSe1-x 、GaAs、アモルファスSi、CdTe、CdSe、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、GaP、GaN、AlAs、AlP、AlSb、およびアモルファスSiCの中から選ばれた少なくとも1種の半導体微粒子を分散させてなることを特徴とする請求項1記載の光ディスク。
【請求項3】 前記半導体微粒子は、シャッタ層中に5〜70mol%の割合で含有されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光ディスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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