説明

光デバイス、光モジュール、及び光デバイスの製造方法

【課題】ハイメサ光導波路においてハイメサの機械的強度が弱くなりプロセス中に折れやすくなる。
【解決手段】光デバイスであって、基板と、前記基板側から順に配置された第1の下側クラッド層部と、コア層部と、第1の上側クラッド層部と、を含むメサ、を備える第1の光導波路と、前記基板上に積層されるとともに、前記第1の光導波路を形成する際のエッチングを停止させる第1のエッチストップ層と、を有し、前記第1の光導波路は、前記第1のエッチストップ層上に積層されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス、光モジュール、光デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットを介したブロードバンドサービスが普及する等、ネットワーク上を行き交う通信トラフィック量が急速に増加している。このため、大都市間や大陸間の幹線ネットワークや、近接都市間を結ぶメトロ系ネットワークの大容量化が活発化している。また、従来のテレコムネットワークだけでなく、ストレージ用ネットワークやイーサネット(登録商標)等のデータコムにおいても、システムの大容量化技術が益々重要になっている。これらの高速インターフェイス装置のスループットは、チャンネル当りの速度以外に、モジュールサイズと消費電力で決まる実装密度により制限される。このことからモジュー
ルの小型化が重要な課題となっている。
【0003】
たとえば、10Gbpsの光送受信モジュールでは、従来の比較的大きな300pinモジュールに変わって、XFP(10-Gigabit Small Form Factor Pluggable)やSFP+(Small Form Factor Pluggable Plus)といった、より小型なモジュールの普及が進んでいる。また、波長帯1530nmから1570nmのCバンド全域で動作する波長可変送受信モジュールでは、現在普及している300pin-LFF(Large Form Factor)や300pin-SFF(Small Form Factor)モジュールに変わって、体積が約1/15と小型なXFPモジュールへの小型化要求が強まっている。
【0004】
光モジュールの小型化を実現するためのキー技術は、光素子の集積化技術である。たとえば、メトロ系ネットワークの中/長距離伝送用送受信モジュールでは、半導体電界吸収型変調器をモノリシック集積した分布帰還型(DFB: Distributed Feedback)レーザ光源を送信側に用いることで、小型な光送受信モジュールを実現する方式が既に実用化されている。
【0005】
ここで、光素子の集積化技術は大きく2種類に分類される。一つは、導波路型光素子のコア層同士をいかに接続するかという観点の集積技術であり、もう一つは、導波路型光素子のメサ構造同士をいかに接続するかという観点の集積技術である。
【0006】
具体的には、導波路型光素子のコア層同士をいかに接続するかという観点での集積技術の例として、バットジョイント法や領域選択成長法がある。バットジョイント法とは、同一基板上に複数の光導波路を突き合わせ接合させて集積する技術である。そのプロセスは、まず、第一の導波路型光素子のコア層を半導体基板上に結晶成長し、つぎに、その一部をマスクパターンで覆ってからマスクパターンに覆われていない部分を、エッチング技術を用いて除去し、続いて第一の導波路型光素子のコア層をエッチング除去した部分に第二の導波路型光素子のコア層を、有機金属気相成長法を用いて、結晶成長して接続するということを必要回数繰り返すというものである。本手法によれば、それぞれの導波路型光素子のコア層の、材料組成や多層構造、そして膜厚を個別に最適化できるため、一回の選択成長で複数の導波路型光素子のコア層を一括形成する、後述の領域選択成長法と比較して、高性能な集積光デバイスの製造方法として広く利用されている。
【0007】
一方、領域選択成長法とは、絶縁体マスクを用いた有機金属気相成長法における領域選択成長効果を利用することにより、結晶層のバンドギャップエネルギーや膜厚を基板面内で位置的に制御する技術である。本手法によれば、一回の結晶成長で複数の導波路型光素子のコア層を一括形成できるため、結晶成長回数の少ない低コストな集積型光デバイスの製造方法として、広く利用されている。
【0008】
導波路型光素子のメサ構造同士をいかに接続するかという観点での集積技術の一例としては、ハイメサ光導波路/ローメサ光導波路集積技術がある。ここで、ハイメサ光導波路・ローメサ光導波路とは、メサ型光導波路の構造を、メサの高さや、メサとコア層との位置関係の観点から分類した名称である。
【0009】
具体的には、ハイメサ光導波路とは、半導体多層構造の上側クラッド層とコア層、そして下側クラッド層をエッチング加工して形成したメサ光導波路である。ハイメサ光導波路は、コア層がメサの内部にあるという特徴があり、後述のローメサ光導波路と比較してメサの高さが高い。また、ハイメサ光導波路には、光閉じ込めが大きいことや電気容量が小さいことなどの特徴があり、マッハツェンダ型変調器などで広く利用される構造である。
【0010】
一方、ローメサ光導波路とは、半導体多層構造の上側クラッド層をエッチング加工して形成したメサ光導波路である。ハイメサ光導波路と異なり、ローメサ光導波路ではコア層はエッチングしない。このため、ローメサ光導波路では、コア層はメサの下側外部にあり、前述のハイメサ光導波路と比較してメサの高さが低い。ローメサ光導波路には、光閉じ込めが小さいなどの特徴があり、半導体レーザなどで広く利用される構造である。
【0011】
従来のハイメサ光導波路/ローメサ光導波路集積技術の公知例としては、ハイメサ光導波路構造の半導体マッハツェンダ変調器と、ローメサ光導波路構造の半導体光増幅器とを、同一基板面内にモノリシック集積した集積型光デバイスが、下記特許文献1に開示されている。また、ローメサ光導波路構造の波長変換器とハイメサ光導波路構造の半導体マッハツェンダ変調器をモノリシック集積した集積型光デバイスが非特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008-66703号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Steven C. Nicoles、et al.,“Integration Technologies for an 8 × 8 InP−Based Monolithic Tunable Optical Router with 40 Gb/s Line Rate Per Port”, Conference Proceedings of 22th International Conference on Indium Phosphide and Related Materials, 31 May ー 4 June, WeA3−1,pp.160−163,2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のようなハイメサ光導波路構造においては、ハイメサ光導波路(ハイメサ)の幅が狭く高さが高い形状を有するとともに、細長い形状を有する。具体的には、例えば、当該ハイメサの幅は、約1乃至2μm、ハイメサの高さは、約4乃至5μmであり、ハイメサの長さは、約1000乃至2000μmである。したがって、例えば、ハイメサの高さがエッチングプロセスにおけるエッチング深さの面内分布が不均一となること等に起因して、設計値以上に高くなる場合がある。この場合、当該ハイメサの機械的強度が弱くなりプロセス中に折れやすく、結果として歩留まりが低くなるという問題がある。
【0015】
さらに、ハイメサ構造の光導波路とローメサ構造の光導波路を1つのデバイスに形成する構造においては、ハイメサ構造の高さ約4乃至5μmに対し、ローメサ構造の高さは、約2乃至2.5μmであり、作製時にはそれぞれ半導体のエッチング深さが異なる。作製方法としては、始めにローメサ部の高さにあわせたドライエッチングを実施し、ハイメサ部のドライエッチングを追加することとなる。この際、ハイメサ部の追加エッチング量は、ローメサ部のエッチング量と同程度の約2乃至2.5μmとなる。この場合、ローメサ形成にて一度ドライエッチングを行っていることから、エッチングの面内分布が既に不均一な状態でハイメサ形成のドライエッチングを行なうこととなる。よって、ハイメサの高さがドライエッチングプロセスにおけるエッチング深さの面内分布が強調され、より不均一となること等に起因して、設計値以上に高くなることが懸念される。この場合、当該ハイメサの機械的強度が弱くなりプロセス中に折れやすく、結果として歩留まりが低くなるという問題がある。
【0016】
上記課題に鑑みて、本発明は、ハイメサ光導波路の製造工程における歩留まりを改善することのできる、光デバイス、光デバイスを含む光モジュール、光デバイスの製造方法、及び、光デバイスを含む光モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【0017】
また、ハイメサ構造の光導波路とローメサ構造の光導波路を1つのデバイスに形成する構造において、ハイメサ光導波路部の製造工程における歩留まりを改善することのできる、光デバイス、光デバイスを含む光モジュール、光デバイスの製造方法、及び、光デバイスを含む光モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(1)本発明における光デバイスは、基板と、前記基板側から順に配置された第1の下側クラッド層部と、コア層部と、第1の上側クラッド層部と、を含むメサ、を備える第1の光導波路と、前記基板上に積層されるとともに、前記第1の光導波路を形成する際のエッチングを停止させる第1のエッチストップ層と、を有し、前記第1の光導波路は、前記第1のエッチストップ層上に積層されていることを特徴とする。
【0019】
(2)上記(1)に記載の光デバイスにおいて、前記第1の光導波路は、前記第1のエッチストップ層と接する部分に、前記基板側へ向かって幅が広くなるテーパ部を有することを特徴とする。
【0020】
(3)上記(1)または(2)に記載の光デバイスにおいて、前記光デバイスは、更に、前記基板側から順に、第2の下側クラッド層部と、第2のコア層部と、メサ形状の第2の上側クラッド層部とを有する第2の光導波路を有し、前記第2の光導波路は、前記第1のエッチストップ層に積層されているとともに、前記第1のコア層及び前記第2のコア層は光学的に接続されていることを特徴とする。
【0021】
(4)上記(3)に記載の光デバイスにおいて、前記第2のコア層部を形成する第2のコア層が、前記第2の光導波路が形成される際のエッチングを停止させることを特徴とする。
【0022】
(5)上記(3)に記載の光デバイスにおいて、前記第1の光導波路は、前記第1の下側クラッド層部と前記コア層部と、前記第1の上側クラッド層部が、エッチング加工されたハイメサ構造であり、前記第2の光導波路は、前記第2の上側クラッド層部がエッチング加工されえたローメサ構造であることを特徴とする。
【0023】
(6)上記(3)に記載の光デバイスにおいて、前記第2の光導波路は、更に、前記第2のコア層と前記第2の上側クラッド層との間に、前記第2の光導波路をローメサ構造に形成する際のエッチングを停止させる第2のエッチストップ層を有することを特徴とする。
【0024】
(7)上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の光デバイスにおいて、前記第1のエッチストップ層は、InGaAsPまたはInGaAlAsにより形成され、前記基板は、InPで形成されていることを特徴とする。
【0025】
(8)上記(7)に記載の光デバイスにおいて、前記第1のエッチストップ層を形成するInGaAsPまたはInGaAlAsは、前記基板を形成するInPと格子整合することを特徴とする。
【0026】
(9)上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の光デバイスにおいて、前記第1のエッチストップ層は、前記基板の全面を覆うことを特徴とする。
【0027】
(10)上記(3)乃至(9)のいずれかに記載の光デバイスにおいて、前記光デバイスは、前記第1の光導波路を含む半導体マッハツェンダ型光変調器、及び、前記第2の光導波路を含む半導体光増幅器を集積した集積型光デバイスであることを特徴とする。
【0028】
(11)上記(3)乃至(10)のいずれかに記載の光デバイスにおいて、前記第1の下側クラッド層部と、前記第2の下側クラッド層部は、同一のクラッド層で形成されることを特徴とする。
【0029】
(12)上記(1)乃至(11)のいずれかに記載の光デバイスを含む光モジュールであることを特徴とする。
【0030】
(13)光デバイスの製造方法であって、基板上に第1のエッチストップ層を形成し、前記第1のエッチストップ層上に、順に第1の下側クラッド層、第1のコア層、第1の上側コア層を含む積層構造を形成し、前記積層構造を前記第1のエッチストップ層までエッチングすることにより、第1の下側クラッド層部と、コア層部と、第1の上側クラッド層部と、を含むメサを備える第1の光導波路を形成する、ことを特徴とする。
【0031】
(14)上記(13)に記載の光デバイスの製造方法は、更に、前記第1のエッチストップ層の上方に、第2の光導波路を形成する第2のコア層、第2のエッチストップ層、及び、第2のクラッド層を含む積層構造を形成し、前記積層構造を前記第2のエッチストップ層までエッチングすることにより、第2の光導波路を形成することを特徴とする。
【0032】
(15)光デバイスの製造方法であって、基板上に第1のエッチストップ層を形成し、前記第1のエッチストップ層上に、順に第1の下側クラッド層、第1のコア層、第1の上側コア層を含む第1の積層構造を形成し、前記第1のエッチストップ層の上方に、第2の光導波路を形成する第2のコア層、第2のエッチストップ層、及び、第2のクラッド層を含む第2の積層構造を形成し、前記第1の積層構造と、前記第2の積層構造を前記第2のクラッド層の一部までエッチングする第1のエッチング工程と、前記第2の積層構造をマスクして、前記第1の下側クラッド層の一部までエッチングする第2のエッチング工程と、前記マスクを除去後、前記第1のエッチストップ層、及び前記第2のエッチストップ層までエッチングする第3のエッチング工程を含み、前記第1、2、及び3のエッチング工程により、前記第1の下側クラッド層と、前記第1のコア層と、前記第1の上側クラッド層と、を含むメサを備えるハイメサ構造の第1の光導波路と、前記第2のクラッド層を含むメサを備えるローメサ構造の第2の光導波路を同時に形成することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施形態における光モジュールの全体構成について説明するための図である。
【図2】図2は、図1に示した光デバイスの上面の概要を示す図である。
【図3】図2のIII−III断面の概要を示す図である。
【図4】図2のIV−IV断面の概要を示す図である。
【図5】図2のV−V断面の概要を示す図である。
【図6】第1の実施形態における製造方法の各工程を説明するための図である。
【図7A】第1の実施形態における製造方法の各工程を説明するための図である。
【図7B】第1の実施形態における製造方法の各工程を説明するための図である。
【図8A】第1の実施形態における製造方法の各工程を説明するための図である。
【図8B】第1の実施形態における製造方法の各工程を説明するための図である。
【図9】本発明の第2の実施形態における光デバイスの上面の概要を示す図である。
【図10】図9のX−X断面の概要を示す図である。
【図11】図9のXI−XI断面の概要を示す図である。
【図12】図9のXII−XII断面の概要を示す図である。
【図13】本発明の第3の実施形態における光デバイスの上面の概要を示す図である。
【図14】図13に示した光デバイスのXIV−XIV断面の概要を示す図である。
【図15】図13に示した光デバイスのXV−XV断面の概要を示す図である。
【図16】図13に示した光デバイスのXVI−XVI断面の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0035】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態における光モジュールの全体構成について説明するための図である。図1に示すように、光モジュール100は、パッケージ101内に、波長可変レーザ102、ハーフミラー103、波長ロッカ104、キャリア105、ペルチェ106、サーミスタ107、複数の集光レンズ108、光アイソレータ109を有する。
【0036】
キャリア105には、終端抵抗(図示なし)が付加されるとともに、半導体マッハツェンダ変調器を含む光デバイス110が搭載される。なお、パッケージ101は、金属素材をボックス型に加工したものであって、例えば、熱伝導率が高いCuW合金の底板、FeNi合金からなるフレーム、電気信号をパッケージ101内部に伝達するために配線パターンを形成したセラミックフィードスルー、リード端子、キャップをシーム溶接するためのシームリング、光を取り出す窓を気密封止するためのサファイヤガラス、レンズホルダや光ファイバを溶接固定するためのパイプ部材等により構成される。
【0037】
波長可変レーザ102は、制御部(図示なし)から入力されるレーザ駆動信号に応じた波長の光を射出する。当該出射光は、ハーフミラー103を介して、波長ロッカ104及び光デバイス110に入射する。
【0038】
波長ロッカ104は、波長可変レーザ102から出力された光を測定し、測定された光の波長に応じて、波長可変レーザ102の波長を調整する。なお、光デバイス110として、例えば、波長依存性の小さい半導体マッハツェンダ変調器を用いた場合、Cバンドである1528乃至1568nmの波長領域で、10Gbit/sの高速動作が可能となる。
【0039】
サーミスタ107は、光デバイス110の温度を検知し、当該検知した温度をモニタ温度信号として、制御部へ出力する。制御部は、当該モニタ温度信号に応じて、ペルチェ駆動電流信号をペルチェ106に出力する。これにより、光デバイス110の温度を一定に保つ。
【0040】
光デバイス110には、ハーフミラー103を介して波長可変レーザ102から入力される光信号が入力される。光デバイス110は、当該光信号を、制御部から入力される変調駆動信号に応じて変調等する。変調等された光信号は、順に、集光レンズ108、光アイソレータ109、集光レンズ108を介して、出力側の光ファイバ111へ出力される。
【0041】
なお、図1に示した光モジュール100の構成は、一例であって、本実施の形態における光モジュールは、これに限定されるものではない。例えば、波長可変レーザ102等がパッケージ101外部に設けられ、入力側の光ファイバを介して、波長可変レーザ102からの光が光デバイス110に入力されるように構成してもよいし、波長可変レーザ102が光デバイス110に集積されるように構成してもよい。
【0042】
図2は、本実施の形態における光デバイスの上面の概要を示す図である。図2に示すように光デバイス110は、半導体マッハツェンダ変調器201と半導体光増幅器202を含む。つまり、光デバイス110は、半導体マッハツェンダ変調器201と半導体光増幅器202とをモノリシック集積したデバイスに相当する。
【0043】
ここで、半導体マッハツェンダ変調器201はハイメサ構造であり、光半導体光増幅器202はローメサ構造である。
【0044】
図2に示すように、半導体マッハツェンダ変調器201は、その略中央を横切るように、光導波路部203を有する。当該光導波路部203は、光の入射する方向に、光導波路204、カプラ205、2本の変調導波路206、カプラ205、光導波路204を有する。なお、カプラ205としては、例えば、多モード干渉(MMI: Multi Mode Interferometer)カプラを用いる。
【0045】
また、半導体マッハツェンダ変調器201は、2本の変調導波路206上部の一部に、一対の半導体マッハツェンダ変調器用p電極207を有する。そして、当該半導体マッハツェンダ変調器用p電極207は、引き出し線208を介して、電極パッド209に接続される。そして、当該電極パッド209を通じて各変調導波路206に電圧が印加される。なお、図2は、2つの電極パッド209を配置する構成を示すが、本実施の形態は、これに限られず、異なる数の電極パッド209を配置してもよい。また、電極パッド209の形状は、図2に示したものと異なる形状であってもよい。
【0046】
半導体光増幅器202は、上部に半導体光増幅器用p電極210を有する。また、半導体光増幅器202は、光導波路204を介して、半導体マッハツェンダ変調器201と光学的に接続されるが、詳細には後述する。また、光デバイス110は、両端に、無反射コーティング膜211、212を有する。
【0047】
図3は、図2のIII−III断面の概要を示す図である。図3に示すように、光デバイス110は、図3の下方から順に、n電極301、n型InP基板302(基板)、ハイメサ用エッチストップ層303を有する。具体的には、n型InP基板302上の全面に、例えば、厚さが約5nmのInGaAsPからなるハイメサ用エッチストップ層303が形成される。ここで、当該InGaAsPからなるハイメサ用エッチストップ層303は、n型InP基板302のInPに格子整合する。ここで、格子整合とは、対象となる結晶層同士の格子定数差が±0.3%程度の範囲にあって、結晶成長時にクロスハッチが入らない程度に格子が整合することをいう。
【0048】
半導体マッハツェンダ変調器201は、上記ハイメサ用エッチストップ層303上に、p型InPクラッド層304とn型InPクラッド層305で挟まれた半導体マッハツェンダ変調器用コア層306を有する。なお、図3に示すように、変調導波路206の間の部分は、樹脂308及びパッシベーション膜309等が配置されるが、詳細には後述する。また、半導体光増幅器202は、p型InPクラッド層304とn型InPクラッド層305で挟まれた半導体光増幅器用コア層307を有する。そして、当該半導体マッハツェンダ変調器用コア層306と、半導体光増幅器用コア層307は、上述のバットジョイント法により接続される。
【0049】
半導体マッハツェンダ変調器用コア層306は、例えば、上下を一対のInGaAsP光閉じ込め層で挟まれた、20周期のInGaAsP無歪多重量子井戸層である。また、例えば、その量子井戸層の厚さは、約6nm、バリア層の厚さは、約7nmである。また、半導体光増幅器用コア層307の構造は、例えば、上下を一対のInGaAsP光閉じ込め層で挟まれた、10周期のInGaAsP歪多重量子井戸構造である。更に、例えば、当該量子井戸層の厚さは、約8nm、バリア層の厚さは、約5nmである。
【0050】
なお、本実施の形態の形態においては半導体光増幅器用コア層307の上部に別個に後述するローメサ用エッチストップ層を設けていないが、半導体光増幅器用コア層307の最上部に形成されているInGaAsP光閉じ込め層(図示なし)が、ローメサ用エッチストップ層としての機能、つまり、後述するエッチングを停止させる機能を実現する。
【0051】
図4は、図2のIV−IV断面の概要を示す図である。図4に示すように、半導体マッハツェンダ変調器201の光導波路部203の構造は、ハイメサ光導波路構造である。
【0052】
具体的には、図4に示すように半導体マッハツェンダ変調器201の光導波路部203は、基板302側から順に、n型InPクラッド層305、半導体マッハツェンダ変調器用コア層306、p型InPクラッド層304を含む。また、変調導波路206が形成されない部分(変調導波路206の両側の部分)については、ハイメサ用エッチストップ層303上に、パッシベーション膜309を介して、樹脂308が積層される。なお、パッシベーション膜309は、変調導波路206の側面及びハイメサ用エッチストップ層303上に成膜される。更に、各変調導波路206上部には、半導体マッハツェンダ変調器用p電極207が積層される。
【0053】
ここで、上記n型InPクラッド層305、半導体マッハツェンダ変調器用コア層306、p型InPクラッド層304により形成される光導波路部203がハイメサに相当する。そして、例えば、当該ハイメサの幅は、約1.4μm、高さは、約4μmである。
【0054】
後述するように、当該ハイメサは、上記p型InPクラッド層304、半導体マッハツェンダ変調器用コア層306、n型InPクラッド層305を、例えば、ドライエッチングとウェットエッチングの組み合わせにより、エッチング加工して形成される。これにより、InGaAsPからなるハイメサ用エッチストップ層303の位置でメサ高さ(ハイメサ用エッチストップ層303の上面からハイメサ上部までの高さ)が規定される。このように、光デバイス110のハイメサ構造では、その高さがハイメサ用エッチストップ層303で規定されるため、エッチング深さの面内分布等に起因してハイメサのメサ高さが不必要に高くなってしまうことがなく、ハイメサの機械的強度を強くすることができる。
【0055】
また、当該ハイメサは、図4に示すように、その下部に、基板302側へ向かって幅が広くなる、裾野形状のテーパ部を有する。例えば、当該テーパ部は、順メサ方向ストライプのInPクラッド層23を、塩酸系ウェットエッチング液でエッチングする際に生じるものであり、当該テーパ部は、(211)結晶面を主面とする。
【0056】
図5は、図2のV−V断面の概要を示す図である。つまり、半導体光増幅器部202のV−V断面を示す。図5に示すように、半導体光増幅器部202の構造は、ローメサ構造であり、略中央部にローメサが形成される。
【0057】
具体的には、半導体光増幅器202は、ハイメサ用エッチストップ層303上に、順に、n型InPクラッド層305、半導体光増幅器用コア層307、p型InPクラッド層304、半導体光増幅器用p電極210を有する。なお、ローメサが形成されない部分については、p型InPクラッド層304上に、順に、パッシベーション膜309を介して、樹脂308が積層され、当該樹脂308の上部に上記半導体光増幅器用p電極210が積層される。ここで、ローメサとは、図5中央に位置するメサ形状の当該p型InPクラッド層304で形成される部分であって、半導体光増幅器用コア層307上面から半導体光増幅器用p電極210下面までの部分に相当する。当該ローメサの幅は、例えば、約1.7μm、高さは、約2.5μmである。
【0058】
ここで、例えば、ローメサは、後述するようにp型InPクラッド層304を、ドライエッチングとウェットエッチングの組み合わせでエッチング加工して形成される。具体的には、半導体光増幅器用コア層307の最上部に形成されているInGaAsP光閉じ込め層(図示なし)の上部でエッチングを停止させて形成される。また、ローメサは、その下部に、順メサ方向ストライプのp型InPクラッド層304を、例えば、塩酸系ウェットエッチング液でウェットエッチングした際に生じる、裾野形状のテーパ部を有する。なお、当該テーパ部は、(211)結晶面を主面とする。なお、上記においては、ローメサ用のエッチストップ層として、半導体光増幅器用コア層307の最上部にあるInGaAsP光閉じ込め層を用いたが、ローメサ用エッチストップ層として別個の層を設けてもよい。
【0059】
次に、当該光デバイスの動作の概要について説明する。当該光デバイス110に入射した光は、半導体光増幅器202の上部に形成された半導体光増幅器用p電極210と、n型InP基板302側に形成されたn電極301の間に電流を注入することにより増幅される。増幅された光は、カプラ205で、約1対1の割合で分岐され2本の変調導波路206を導波する。このとき、2本の変調導波路206に形成された一対の半導体マッハツェンダ変調器用p電極207に電圧を印加することによって、半導体マッハツェンダ変調器用コア層306の屈折率や吸収率が変化する。これにより、カプラ205で合波された光が変調される。このように、当該光デバイス110により、入力光の増幅と変調を行うことができる。
【0060】
次に、図6および図7を用いて、本実施の形態における光デバイスの製造方法について説明する。なお、図6は、本実施の形態における製造方法の各工程における図2のIII−III方向の断面の概要を示す図である。図7は、当該製造方法の各工程における図2のIV−IV方向の断面の概要を示す図である。図8は、当該製造方法の各工程における図2のV−V方向の断面の概要を示す図である。
【0061】
まず、周知の有機金属気相成長法を用いて、順に、n型InP基板302上に、ハイメサ用エッチストップ層303、n型InPクラッド層305、半導体マッハツェンダ変調器用コア層306、p型InPクラッド層304を形成する(S101)。ここで、ハイメサ用エッチストップ層303の厚みは、例えば、約5nmとする。また、半導体マッハツェンダ変調器用コア層306の構造は、例えば、上下を一対のInGaAsP光閉じ込め層(図示なし)で挟まれたアンドープ歪多重量子井戸構造(図示なし)である。
【0062】
さらに、n型InPクラッド層305の厚みは、ハイメサをドライエッチングで形成する際に、エッチストップ層303がウェハ面内での分布も考慮して削られない程度の厚さが必要となる。具体的には、本実施の形態においては、n型InPクラッド層305の厚みを例えば0.8μm乃至1.0μmとする。
【0063】
このように本実施の形態では、ハイメサ用エッチストップ層303の形成を、基板302への最初の結晶成長工程の一部分として行う。よって、ハイメサ用エッチストップ層303を形成することに起因する製造コストの増加を効果的に抑制することができる。
【0064】
次に、半導体マッハツェンダ変調器201として残す領域を、例えば、SiOからなる絶縁膜マスク601でカバーした後、ドライエッチングとウェットエッチングにより、半導体光増幅器202を形成する領域にある半導体多層構造(n型InPクラッド層305、半導体マッハツェンダ変調器用コア層306、p型InPクラッド層304)を除去する(S102)。
【0065】
この時に、コア層306の下のn型InPクラッド層305、及びエッチストップ層303は、エッチングせずに残している。これは以下の理由による。仮にこのn型InPクラッド層305、及びエッチストップ層303をエッチングした場合、n型InPクラッド層305が0.8μmの厚さがあるため、半導体マッハツェンダ変調器用コア層306に対し0.8μmの段差が生じる。このため、次に行なうバットジョイント接続の結晶成長において、半導体光増幅器用コア層307の下に高さ調整のための約0.8μm厚程度のInPバッファー層が必要となり、連続成長する半導体光増幅器用コア層307の結晶品質の劣化が懸念される。また、InPバッファー層があることにより光軸をあわせる制御が容易ではなくなり、半導体マッハツェンダ変調器用コア層306と半導体光増幅器用コア層307との光学的な接続が十分に得られない、という問題が生じる。
【0066】
次に、半導体光増幅器202を形成する領域に、例えば、有機金属気相成長法を用いて、半導体光増幅器用コア層307と、p型InPクラッド層304を結晶成長する(S103)。なお、半導体光増幅器用コア層307は、上下をInGaAsP光閉じ込め層(図示なし)で挟まれたInGaAsP歪多重量子井戸構造(図示なし)を有する。これにより、半導体マッハツェンダ変調器用コア層306と半導体光増幅器用コア層307がバットジョイント接続される。
【0067】
次に、絶縁膜マスク601を、例えば、バッファードフッ酸を用いて除去する。そして、例えば、有機金属気相成長法を用いて、半導体マッハツェンダ変調器用コア層306と半導体光増幅器用コア層307がバットジョイント接続された基板の上面全体に、p型InPクラッド層304を積み増すように結晶成長する。その後、更に、p型InGaAsコンタクト層602を結晶成長する(S104)。
【0068】
次に、例えば、SiO膜からなるメサストライプマスク603を形成する。そして、当該メサストライプマスク603をエッチングマスクとして用い、ドライエッチングにより、p型InPクラッド層304の途中まで半導体多層構造をエッチングする(S105)。
【0069】
この時点では、ハイメサ構造となる半導体マッハツェンダ変調器用コア層306はまだエッチングされていないが、後述するドライエッチングにおいて、コア層306を完全にエッチングし、ハイメサ構造を形成する。
【0070】
なお、当該メサストライプマスク603の形成には、例えば、通常の手法(例えば、熱CVD法によるSiO膜形成とフォトリソグラフィによるレジストパターン形成、ドライエッチングによるSiO膜へのパターン転写の工程とレジストパターンの除去工程)を用いる。また、当該ドライエッチングには、例えば、通常の塩素系ガスを用いたICP(Inductively Coupled Plasma)ドライエッチングを用いる。
【0071】
次に、ローメサ構造とする半導体光増幅器202の部分をレジストマスクパターン604でカバーする。その後、ドライエッチングにより、ハイメサ構造とする半導体マッハツェンダ変調器201部分のハイメサを、更に、エッチングする。具体的には、当該ドライエッチングは、p型InPクラッド層304、半導体マッハツェンダ変調器用コア層306、及び、n型InPクラッド層305の一部まで行う。なお、当該ドライエッチングには、例えば、上述のICPドライエッチングを用いる(S106)。
【0072】
なお、当該エッチングの際に、n型InPクラッド層305が、1μm程度であるため、その下に形成されたエッチストップ層303が、面内全体でドライエッチングにてエッチングされることは無い。
【0073】
次に、レジストマスクパターン604を除去した後、ウェットエッチングにより、半導体マッハツェンダ変調器201を形成する部分ではn型InPクラッド層305の残りの部分、及び、半導体光増幅器202を形成する部分ではp型InPクラッド層304の残り部分を除去する。なお、レジストマスクパターン604の除去は、例えば、酸素プラズマ処理により行う。また、当該ウェットエッチングには、例えば、塩酸系ウェットエッチング液を用いる(S107)。
【0074】
ここで、当該ウェットエッチングは、半導体マッハツェンダ変調器201の部分ではハイメサ用エッチストップ層303で停止する。また、半導体光増幅器202の部分では、ローメサ用エッチストップ層として機能する半導体光増幅器用コア層307の最上部にあるInGaAsP光閉じ込め層(図示なし)で停止する。よって、ハイメサの高さの均一化を図ることができる。結果として、ハイメサのメサ折れ不良を効果的に抑制することができる。
【0075】
つまり、本実施の形態においては、ハイメサのエッチングの工程を、材料選択性の無いエッチングステップと、材料選択性のあるエッチングステップの、大きく2つのステップに分けて実施する。よって、ハイメサの高さの均一化を図ることができる。結果として、ハイメサのメサ折れ不良を効果的に抑制することができる。
【0076】
特に、ハイメサ構造の半導体マッハツェンダ変調器201とローメサ構造の半導体光増幅器202の導波路を1つのデバイスに形成する構造において、本願発明の構造は、ハイメサ、ローメサの高さの均一化を図ることができる。
【0077】
次に、例えば、プラズマCVDによってメサの側壁、及び、ハイメサ用エッチストップ層303と半導体光増幅器用コア層307の上面にSiOからなるパッシベーション膜309を形成する。その後、例えば、周知の塗布、ベーキング、エッチバック工程により、樹脂308を形成し、素子全体を平坦化する(S108)。
【0078】
次に、メサストライプマスク603を除去した後、半導体マッハツェンダ変調器用p電極207、半導体光増幅器用p電極210を形成する。その後、裏面を研磨してn型InP基板302を、例えば、約150μm程度の厚さまで薄くすることにより、n電極301を形成してウェハ工程が完了する。最後に、ウェハから光デバイス110を形成する部分をへき開により切り出し、当該部分110の両端面に無反射コーティング膜211と無反射コーティング膜212を形成する(S109)。上記のようにして、光デバイス110を得ることができる。
【0079】
本実施の形態によれば、ハイメサ用エッチストップ層303を設けることによって、半導体マッハツェンダ変調器201における光導波路部203のハイメサのメサ高さを均一にすることができる。よって、ハイメサの高さが必要以上に高くなることがないため、製造プロセス中のメサ折れ不良を従来技術と比較して大幅に減少することができる。結果として、半導体光増幅器201及び半導体マッハツェンダ変調器202を集積した光デバイス110や当該光デバイス110を含む光モジュール100を、高歩留り、かつ、安定的に生産することができる。また、本実施の形態によれば、メサ折れ不良が起こりにくく、素子製造歩留まりの高い光デバイス110を実現することができる。更に、当該光デバイス110を搭載することにより、光モジュール100を低コストで製造できる。
【0080】
また、上記のように本実施形態によれば、ハイメサ構造の半導体マッハツェンダ変調器201とローメサ構造の半導体光増幅器202の導波路を1つのデバイスに形成する構造において、同時にウェットエッチにてメサを形成でき、且つハイメサ、ローメサとも各々にエッチストップ層があるために、両者とも設計通りの高さとすることができ、さらにその高さを安定して制御よく作製することができる。
【0081】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、上記実施の形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えてもよい。例えば、上記においては、メサの周囲を半導体で埋め込まないいわゆるリッジ導波路型構造とした場合について説明したが、メサの周囲を半導体で埋め込んだ、いわゆる埋込みヘテロ構造(BH: Buried Heterostructure)としても良い。
【0082】
また、本実施の形態においては、半導体マッハツェンダ変調器201と半導体光増幅器202とを集積する場合について説明したが、本発明は、半導体マッハツェンダ変調器201と波長可変型半導体レーザの組み合わせや、電界吸収型光変調器とDFB型半導体レーザの組み合わせなど、その他の様々な集積型光デバイス110に適用してもよい。
【0083】
更に、上記に示した各層の材料は一例であって、これらに限定されない。例えば、上記基板302には、本実施の形態で例示したInPの他に、GaAs、GaN、ZnSe等他の材料を用いてもよい。また、ハイメサ用エッチストップ層303の材料としてはInGaAsPの他、InGaAlAsやInGaAs、InAlAsなど、クラッド層304、305を形成する材料との間にエッチング速度の選択性がある限り、他の材料を用いてもよい。また、本実施の形態においては、半導体マッハツェンダ変調器用コア層306や半導体光増幅器用コア層307は、多重量子井戸構造としたが、これらはバルクの半導体層であってもよい。
【0084】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施の形態における光デバイス810は、レーザ811と、半導体光増幅器202と、半導体マッハツェンダ変調器201とを集積する点が、主に、上記第1の実施形態と異なる。また、本実施の形態における光デバイス810の製造方法は、半導体マッハツェンダ変調器201のハイメサを形成する際にドライエッチングのみを用いる点が、主に、上記第1の実施形態と異なる。なお、下記においては、第1の実施形態と同様である点については説明を省略する。
【0085】
図9は、本実施の形態における光デバイスの上面の概要を示す図である。図10は、図9のX−X断面の概要を示す図である。図11は、図9のXI−XI断面の概要を示す図である。図12は、図9のXII−XII断面の概要を示す図である。
【0086】
図9乃至図12に示すように、第1の実施の形態と同様に、光デバイス810においては、図10の下方から順に、n電極層301、n型InP基板302(基板)、ハイメサ用エッチストップ層303を有する。当該n型InP基板302の全面にハイメサ用エッチストップ層303が配置される。
【0087】
本実施の形態においては、当該ハイメサ用エッチストップ層303の上部に、レーザ811、半導体光増幅器202、及び、半導体マッハツェンダ変調器201がバットジョイント集積される。なお、レーザ811としては、例えば、抽出回折格子分布ブラッグ反射型(SG-DBR: Sampled Grating Distributed Bragg Reflector)波長可変レーザを集積した波長1.55μm帯の半導体マッハツェンダ変調器集積波長可変レーザを用いる。
【0088】
具体的には、レーザ811は、例えば、5周期のInGaAlAs圧縮歪多重量子井戸からなる利得領域の前方と後方を、縦モード間隔の異なる2つのSGーDBR領域で挟んだ構造を有する。具体的には、図9に示すように、利得領域コア層902がSG-DBR領域コア層901とSG-DBR領域コア層903との間に形成される。当該利得領域コア層902及びSG-DBR領域コア層901、903は、p型InPクラッド層304とn型InPクラッド層305の間に形成される。また、p型InPクラッド層304には、回折格子904が、SG-DBR領域コア層901、903の上方に、形成される。
【0089】
ここで、SG-DBRとは、回折格子904を有する領域と回折格子904を有さない領域からなる部分を一周期として複数周期繰り返した構造のことをいう。また、当該回折格子904の構造は、p型InPクラッド層304中に形成されたInGaAsPの周期構造である。
【0090】
当該SG-DBR領域コア層901、利得領域コア層902、SG-DBR領域コア層903、及び、半導体光増幅器用コア層307の最上部の層の材料組成は、全て、例えば、InGaAlAs(図示なし)である。また、当該InGaAlAsが、ローメサ用エッチストップ層として機能する。また、半導体マッハツェンダ変調器用コア層306は、例えば、その上下をInGaAlAs光閉じ込め層で挟まれた30周期のInGaAlAs無歪多重量子井戸であり、量子井戸層の厚さは、例えば、約5nm、バリア層の厚さは約10nmである。また、SG-DBR領域コア層901、利得領域コア層902、SG-DBR領域コア層903の上部にはそれぞれ、前方抽出回折格子DBR用p電極801及び803、レーザ利得領域用p電極802、後方抽出回折格子DBR用p電極804が形成され、対応する電極パッド804乃至806に接続される。
【0091】
また、図11及び図12に示すように、レーザ811及び半導体光増幅器202の構造は、ローメサ光導波路構造であり、半導体マッハツェンダ変調器201の構造は、ハイメサ光導波路構造である。ここで、本実施の形態においては、半導体光増幅器202のローメサ及び半導体マッハツェンダ変調器201のハイメサは、垂直異方性の高いメサ形状となる。言い換えれば、当該ローメサ及びハイメサに、裾野形状のテーパ部が形成されない。これにより、メサ幅を高い寸法精度で形成することができる。なお、レーザ811のローメサについても同様である。
【0092】
次に、本実施形態における光デバイス810の製造方法について説明する。本実施形態における製造方法は、主に、ハイメサ及びローメサ形成の際に、ドライエッチングのみを用いる点が第1の実施形態と異なる。なお、下記においては、第1の実施形態と同様である点については説明を省略する。
【0093】
上述のように、第1の実施形態においては、メサのエッチング工程において、まず材料選択性の無い塩素系ガスのドライエッチングでメサのエッチングを途中まで行い、その後材料選択性の有る塩酸系のウェットエッチングでInPを追加エッチングすることで、メサ形成を行う。また、エッチストップ層としては、例えば、InGaAsPを用いる。
【0094】
これに対して、本実施形態においては、材料選択性の有るエッチング手法、例えば、エタン/酸素/水素混合ガスのドライエッチングを用い、また、エッチストップ層としてInGaAlAsを用いる。ここで、例えば、エタンなどの炭化水素系ガスに酸素を添加したガスを用いたドライエッチングでは、InPやInGaAsPのエッチング速度に対してInGaAlAsのエッチング速度が著しく遅くなる選択性が発現する。そこで、本実施形態では、当該ドライエッチングを用いて選択エッチングを行う。
【0095】
そして、半導体マッハツェンダ変調器201のハイメサは、例えば、InGaAlAsからなるハイメサ用エッチストップ層303でエッチングを停止させることにより形成する。また、ローメサは、例えば、半導体光増幅器用コア層307の最上部にあるInGaAlAs層、SG-DBR領域コア層901の最上層にあるInGaAlAs層、InGaAlAs圧縮歪多重量子井戸からなる利得領域コア層902の最上部にあるInGaAlAs層、SG-DBR領域コア層903の最上部にあるInGaAlAs層の上面でエッチングを停止させることにより形成する。
【0096】
本実施の形態によれば、半導体光増幅器202及びレーザ811のローメサ及び半導体マッハツェンダ変調器201のハイメサを、垂直異方性の高いメサ形状とすることができ、上記第1の実施の形態のような裾野形状のテーパ部が生じない。これにより、メサ幅を高い寸法精度で形成することができる。また、ハイメサの高さは、ハイメサ用エッチストップ層303の位置で規定されることから、ハイメサの高さを均一、例えば約4.5μmの高さで均一、にすることができる。このため、ハイメサのメサ折れ不良を効果的に防止することができ、結果として、光デバイス810等を高い歩留まりで形成することができる。
【0097】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、上記実施の形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えてもよい。
【0098】
例えば、上記においては、発振波長が1.55μm帯の光デバイス810を例として主に説明したが、これに限られず、例えば、発振波長が1.3μm帯の素子等のその他の素子に適用してもよい。また、本実施の形態においては、半導体マッハツェンダ変調器と波長可変レーザを集積した光デバイス811について説明したが、ビーム拡大器と半導体レーザを集積した光デバイス等、その他の集積型光デバイスに適用してもよい。また、本実施形態においてはメサストライプの主たる方向が順メサ方向である光デバイス810について説明したが、メサストライプの主たる方向が逆メサ方向である集積型光デバイスにも同様に適用してもよい。
【0099】
また、上記本実施の形態においては、レーザ811と、半導体光増幅器202と、半導体マッハツェンダ変調器201とを集積した光デバイス810において、半導体マッハツェンダ変調器201のハイメサを形成する際にドライエッチングのみを用いる場合について説明したが、レーザ811と、半導体光増幅器202と、半導体マッハツェンダ変調器201とを集積した光デバイス810に、上記第1の実施形態と同様に、ドライエッチング及びウェットエッチングを用いてもよい。また、上記第1の実施形態における光デバイス810において、本実施の形態のようにドライエッチングのみを用いてもよい。
【0100】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施の形態における光デバイス120は、主に、ハイメサ光導波路構造の半導体マッハツェンダ変調器201とローメサ光導波路構造の半導体レーザ122をモノリシック集積した点、及び、ローメサ用エッチストップ層132を独立して形成する点が、上記第1の実施の形態と異なる。なお、下記において第1の実施形態と同様である点については説明を省略する。
【0101】
図13は、本実施の形態における光デバイスの上面の概要を示す図である。図14は、図13に示した光デバイスのXIV−XIV断面の概要を示す図である。図15は、図13に示した光デバイスのXV−XV断面の概要を示す図である。図16は、図13に示した光デバイスのXVI−XVI断面の概要を示す図である。
【0102】
図13に示すように、本実施の形態における光デバイス120は、半導体マッハツェンダ変調器201及び半導体レーザ122を有する。当該半導体マッハツェンダ変調器201と半導体レーザ122は、バットジョイント法により、接続される。半導体レーザ122が形成される部分には、レーザ用電極121が配置され、当該レーザ用電極121は、引き出し線123を介して、電極パッド124に接続される。
【0103】
図14に示すように、n型InP基板302上の全面に、ハイメサ用エッチストップ層303が形成され、当該ハイメサ用エッチストップ層303の上部に、半導体マッハツェンダ変調器201と、半導体レーザ122が形成される。
【0104】
また、図15に示すように、当該光デバイス120における半導体マッハツェンダ変調器201の光導波路部203(ハイメサに相当)は、第1の実施形態と同様に、基板302側から順に、n型InPクラッド層305、半導体マッハツェンダ変調器用コア層306、p型InPクラッド層304を含む。なお、例えば、当該ハイメサの幅は、約1.5μm、高さは、約4.5μmである。
【0105】
また、図16に示すように、半導体レーザ122の構造はローメサ光導波路構造であり、ハイメサ用エッチストップ層303上に基板302側から順に、n型InPクラッド層305、半導体レーザ用量子井戸層131、ローメサ用エッチストップ層132が積層される。そして、ローメサが形成される部分にはp型InPクラッド層304が、更に、積層され、ローメサが形成されない部分には樹脂308が積層される。また、ローメサ上部を覆うようにレーザ用電極121が積層される。
【0106】
ここで、第1の実施の形態においては、半導体光増幅器用コア層307の最上部に形成するInGaAsP光閉じ込め層(図示なし)が、ローメサ用エッチストップ層として機能する構成について説明したが、本実施の形態においては、半導体レーザ用量子井戸層131の上部にローメサ用エッチストップ層132を設ける点が第1の実施の形態と異なる。なお、当該ローメサ用エッチストップ層132としては、例えば、InGaAsPまたはInGaAlAs等を用いる。
【0107】
なお、本実施の形態における光デバイス120の製造方法は、ハイメサのエッチング工程において、上記第1の実施の形態と同様に、ドライエッチングとウェットエッチングを用いた選択エッチングを行う。これにより、第1の実施形態と同様に、ハイメサのメサ高さを均一にすることができるとともに、メサストライプが順メサ方向の場合には、ハイメサの根元に(211)結晶面を主面とする裾野形状のテーパ部を形成することができる。
【0108】
本実施形態によれば、ハイメサ用エッチストップ層303を設けることによって、ハイメサ光導波路204のメサ高さを均一にすることができる。よって、ハイメサの高さが必要以上に高くなることがないため、製造プロセス中のメサ折れ不良を従来技術と比較して大幅に減少することができる。また、上記のようにハイメサの下部に裾野形状のテーパ部を設けることにより、更にハイメサの機械的強度がさらに強くすることもできる。
【0109】
本発明は、上記第1乃至第3の実施の形態に限定されるものではなく、上記実施の形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えてもよい。例えば、半導体マッハツェンダ変調器や、抽出回折格子分布ブラッグ反射型波長可変レーザ、半導体光増幅器等を用いる場合を例として説明したが、上記実施の形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる限り、異なる形式の変調器やレーザ、増幅器を用いてもよいし、組み合わせてもよい。また、上記に示した各層の材料は、一例であって、これに限定されない。更に、上記においては、変調導波路206が2本の場合について説明したが、その他の数の変調導波路206を有してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の第1の光導波路が、例えば、上記第1乃至第3の実施の形態におけるハイメサに相当し、第2の光導波路が、例えば、上記第1乃至第3の実施の形態におけるローメサに相当する。
【符号の説明】
【0110】
100 光モジュール、101 パッケージ、102 波長可変レーザ、103 ハーフミラー、104 波長ロッカ、105 キャリア、106 ペルチェ、107 サーミスタ、108 複数の集光レンズ、109 光アイソレータ、110、120、810 光デバイス、121 レーザ用電極、122 半導体レーザ、123 引き出し線、124 電極パッド、131 半導体レーザ用量子井戸層、132 ローメサ用エッチストップ層、201 半導体マッハツェンダ変調器、202 半導体光増幅器、203 光導波路部、204 光導波路、205 カプラ、206 変調導波路、207 半導体マッハツェンダ変調器用p電極、208 引き出し線、209 電極パッド、210 半導体光増幅器用p電極、301 n電極、302 n型InP基板、303 ハイメサ用エッチストップ層、304 p型InPクラッド層、305 n型InPクラッド層、306 半導体マッハツェンダ変調器用コア層、307 半導体光増幅器用コア層、308 樹脂、309 パッシベーション膜、601 絶縁膜マスク、602 p型InGaAsコンタクト層、603 メサストライプマスク、604 レジストマスクパターン、801、803 前方抽出回折格子DBR用p電極、802 レーザ利得領域用p電極、804 後方抽出回折格子DBR用p電極、804、805、806 電極パッド、811 レーザ、901、903 SG-DBR領域コア層、902 利得領域コア層、904 回折格子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板側から順に配置された第1の下側クラッド層部と、コア層部と、第1の上側クラッド層部と、を含むメサ、を備える第1の光導波路と、
前記基板上に積層されるとともに、前記第1の光導波路を形成する際のエッチングを停止させる第1のエッチストップ層と、
を有し、
前記第1の光導波路は、前記第1のエッチストップ層上に積層されていることを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記第1の光導波路は、前記第1のエッチストップ層と接する部分に、前記基板側へ向かって幅が広くなるテーパ部を有することを特徴とする請求項1記載の光デバイス。
【請求項3】
前記光素子は、更に、
前記基板側から順に、第2の下側クラッド層部と、第2のコア層部と、メサ形状の第2の上側クラッド層部とを有する第2の光導波路を有し、
前記第2の光導波路は、前記第1のエッチストップ層に積層されているとともに、前記第1のコア層及び前記第2のコア層は光学的に接続されていることを特徴とする請求項1または2記載の光デバイス。
【請求項4】
前記第2のコア層部を形成する第2のコア層が、前記第2の光導波路が形成される際のエッチングを停止させることを特徴とする請求項3記載の光デバイス。
【請求項5】
前記第1の光導波路は、前記第1の下側クラッド層部と前記コア層部と、前記第1の上側クラッド層部が、エッチング加工されたハイメサ構造であり、
前記第2の光導波路は、前記第2の上側クラッド層部がエッチング加工されえたローメサ構造であることを特徴とする請求項3記載の光デバイス。
【請求項6】
前記第2の光導波路は、更に、前記第2のコア層と前記第2の上側クラッド層との間に、前記第2の光導波路をローメサ構造に形成する際のエッチングを停止させる第2のエッチストップ層を有することを特徴とする請求項3記載の光デバイス。
【請求項7】
前記第1のエッチストップ層は、InGaAsPまたはInGaAlAsにより形成され、前記基板は、InPで形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の光デバイス。
【請求項8】
前記第1のエッチストップ層を形成するInGaAsPまたはInGaAlAsは、前記基板を形成するInPと格子整合することを特徴とする請求項7記載の光デバイス。
【請求項9】
前記第1のエッチストップ層は、前記基板の全面を覆うことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の光デバイス。
【請求項10】
前記光デバイスは、前記第1の光導波路を含む半導体マッハツェンダ型光変調器、及び、前記第2の光導波路を含む半導体光増幅器を集積した集積型光デバイスであることを特徴とする請求項3乃至9のいずれかに記載の光デバイス。
【請求項11】
前記第1の下側クラッド層部と、前記第2の下側クラッド層部は、同一のクラッド層で形成されることを特徴とする請求項3乃至10のいずれかに記載の光デバイス。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の光デバイスを含む光モジュール。
【請求項13】
基板上に第1のエッチストップ層を形成し、
前記第1のエッチストップ層上に、順に第1の下側クラッド層、第1のコア層、第1の上側コア層を含む積層構造を形成し、
前記積層構造を前記第1のエッチストップ層までエッチングすることにより、第1の下側クラッド層部と、コア層部と、第1の上側クラッド層部と、を含むメサを備える第1の光導波路を形成する、
ことを特徴とする光デバイスの製造方法。
【請求項14】
前記光デバイスの製造方法は、更に、
前記第1のエッチストップ層の上方に、第2の光導波路を形成する第2のコア層、第2のエッチストップ層、及び、第2のクラッド層を含む積層構造を形成し、
前記積層構造を前記第2のエッチストップ層までエッチングすることにより、第2の光導波路を形成する、
ことを特徴とする請求項13に記載の光デバイスの製造方法。
【請求項15】
基板上に第1のエッチストップ層を形成し、
前記第1のエッチストップ層上に、順に第1の下側クラッド層、第1のコア層、第1の上側コア層を含む第1の積層構造を形成し、
前記第1のエッチストップ層の上方に、第2の光導波路を形成する第2のコア層、第2のエッチストップ層、及び、第2のクラッド層を含む第2の積層構造を形成し、
前記第1の積層構造と、前記第2の積層構造を前記第2のクラッド層の一部までエッチングする第1のエッチング工程と、
前記第2の積層構造をマスクして、前記第1の下側クラッド層の一部までエッチングする第2のエッチング工程と、
前記マスクを除去後、前記第1のエッチストップ層、及び前記第2のエッチストップ層までエッチングする第3のエッチング工程を含み、
前記第1、2、及び3のエッチング工程により、前記第1の下側クラッド層と、前記第1のコア層と、前記第1の上側クラッド層と、を含むメサを備えるハイメサ構造の第1の光導波路と、前記第2のクラッド層を含むメサを備えるローメサ構造の第2の光導波路を同時に形成する、
ことを特徴とする光デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−61632(P2013−61632A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−146126(P2012−146126)
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【出願人】(301005371)日本オクラロ株式会社 (311)
【Fターム(参考)】