光デバイス及び検出装置
【課題】 伝播表面プラズモンと局在表面プラズモンとを併用しながら、金属ナノ粒子の配列周期に依存せずに伝播表面プラズモンPSPの「波数」を決めることで、ホットサイトとして機能する金属ナノ粒子の密度を高めることができる光デバイス及びそれを用いた検出装置を提供すること。
【解決手段】 光デバイス100A,100Bは、基材100の導体表面102より突起して、第1方向Xに沿って周期Pxで配列される突起群110と、導体表面及び突起群を覆う誘電体層120と、誘電体層上にてサイズdがナノオーダーの金属ナノ粒子130Aが第1方向に沿って配列されて成る金属ナノ構造130と、を有し、照射光の波長をλとしたとき、λ>Px>dを満足し、かつ、第1方向にて隣り合う2つの金属ナノ粒子の配列ピッチの最大値をpxしたとき、Px>pxを満足する。
【解決手段】 光デバイス100A,100Bは、基材100の導体表面102より突起して、第1方向Xに沿って周期Pxで配列される突起群110と、導体表面及び突起群を覆う誘電体層120と、誘電体層上にてサイズdがナノオーダーの金属ナノ粒子130Aが第1方向に沿って配列されて成る金属ナノ構造130と、を有し、照射光の波長をλとしたとき、λ>Px>dを満足し、かつ、第1方向にて隣り合う2つの金属ナノ粒子の配列ピッチの最大値をpxしたとき、Px>pxを満足する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス及び検出装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療診断や飲食物の検査等に用いられるセンサーの需要が増大しており、高感度かつ小型のセンサーの開発が求められている。このような要求に応えるために、電気化学的な手法をはじめ様々なタイプのセンサーが検討されている。これらの中で、集積化が可能であること、低コスト、測定環境を選ばないこと等の理由から、表面プラズモン共鳴(SPR: Surface Plasmon Resonance)を用いたセンサーに対する関心が高まっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、局在表面プラズモン共鳴(LSPR: Localized Surface Plasmon Resonance)を利用して、センサー感度を向上する手法が開示されている。
【0004】
非特許文献1には、伝播表面プラズモン(PSP: Propagating Surface Plasmon)と局在表面プラズモン(LSP: Localized Surface Plasmon)とを併用して、センサー感度を向上する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−356587号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「Experimental study of the interaction between localized and propagating surface plasmons」OPTICS LETTERS/Vol.34,No.3/February 1,2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、図1に示すように、透明基板10の表面に金属微粒子20を固定し、その透明基板10に対して入射光を照射し、金属微粒子20の吸光度を測定する。図2に示すように、金属微粒子20に標的物が付着している場合には、A1に示す吸光度スペクトルからA2に示す吸光度スペクトルに変化する。特許文献1の手法では、この吸光度の変化により、金属微粒子近傍の媒質の変化を検出し、標的物の吸着や堆積を検出する。
【0008】
しかしながら、この手法では、金属微粒子の大きさや形状を均一に作製することや、金属微粒子を規則正しく配列することが困難である。金属微粒子のサイズや配列を制御できないと、プラズモン共鳴で生じる吸収や共鳴波長にもばらつきが生じる。そのため、図2に示すように、吸光度スペクトルの幅がブロードになり、ピーク強度が低下してしまう。そして、ピーク強度が低下すると、金属微粒子近傍の媒質の変化を検出する信号変化が小さくなり、センサー感度を向上させるにも限界が生じてしまう。そのため、吸光度スペクトルから物質を特定するような用途では、センサーの感度が不十分となってしまう。
【0009】
しかも、従来の表面増強ラマン散乱(SERS: Surface Enhanced Raman Scattering)センサーでは、共鳴ピークをひとつだけ利用するため、共鳴ピークの波長を励起波長あるいはラマン散乱波長のどちらかに合わせなければならない。この場合、どちらか一方の散乱過程における電場増強効果だけを利用することになり、高い電場増強効果は期待できない。
【0010】
一方、非特許文献1には、図3に示すように、ガラス基板30上に100nm厚のAuフィルム40が接合され、Auフィルム40上に20nm厚のSiO2層50が形成され、そのSiO2層50上に直径100〜170nmの多数のAu円盤60が周期P=780nmで二次元配置されたセンサーが開示されている。
【0011】
このセンサーにAuフィルム40とSiO2層50との界面では伝播表面プラズモンPSPが励起され、Au円盤60では局在表面プラズモンLSPが励起される。ここで、伝播表面プラズモンPSPは、「波数」を持ったエバネッセント場に結合する。「波数」はAu円盤60の周期Pで決められ、2π/Pとなる。よって、Au円盤60の周期Pは伝播表面プラズモンPSPの励起と相関があり、ひいては試料のラマン散乱波長に合わせて設定される共鳴ピーク波長と相関があり、自由に変更することはできない。
【0012】
その一方で、Au円盤60は局在電場が強まるホットサイトとしての機能があり、センサーの感度を高めるには、ホットサイトの密度は高いことが求められる。しかし、伝播表面プラズモンPSPの「波数」を決めるAu円盤60の周期Pは780nmと比較的大きく、ホットサイトの密度は著しく低くなる。しかし、周期Pを大きく確保しながら、Au円盤60の外形を大きくすると、共鳴波長は長波長側(赤色側)にシフトして励起波長からずれるため大きな局在電場は期待できない。
【0013】
本発明の幾つかの態様では、伝播表面プラズモンと局在表面プラズモンとを併用しながら、金属ナノ粒子の配列周期に依存せずに伝播表面プラズモンPSPの「波数」を決めることで、ホットサイトとして機能する金属ナノ粒子の密度を高めることができる光デバイス及びそれを用いた検出装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)本発明の一態様は、
基材の導体表面より突起して、第1方向に沿って周期Pxで配列される突起群と、
前記導体表面及び前記突起群を覆う誘電体層と、
前記誘電体層上にてサイズdがナノオーダーの金属ナノ粒子が前記第1方向に沿って配列されて成る金属ナノ構造と、
を有し、
照射光の波長をλとしたとき、λ>Px>dを満足し、かつ、前記第1方向にて隣り合う2つの前記金属ナノ粒子の配列ピッチの最大値をpxしたとき、Px>pxを満足する光デバイスに関する。
【0015】
本発明の一態様によれば、導体表面及び突起群と誘電体層との界面では伝播表面プラズモンPSPが励起され、金属ナノ粒子では局在表面プラズモンLSPが励起される。突起機群が第1方向に沿って周期Pxで配列されるので、伝播表面プラズモンPSPの「波数」は突起群の周期Pxに基づいて設定され、金属ナノ粒子の配列周期に依存しない。金属ナノ粒子は周期的に配列されることも要求されない。
【0016】
そして、Px>dであり、かつ、Px>pxを満足することで、ホットサイトとして機能する金属ナノ粒子の密度を高めることができる。なお、入射光の波長λよりも小さなサイズd(λ>d)の金属ナノ粒子に対して入射光を照射することで、局在表面プラズモン共鳴(LSPR:Localized Surface Plasmon Resonance)を利用することができる。
【0017】
(2)本発明の一態様では、Px/10>pxを満足して、一周期P内にて前記第1方向に沿って十個以上の前記金属ナノ粒子を配置することができる。こうして、ホットサイトとして機能する金属ナノ粒子の密度をより高めることができる。
【0018】
(3)本発明の一態様では、前記突起群は、前記第1方向と直交する第2方向に沿って周期Pyで配列され、λ>Py>dを満足し、かつ、前記第2方向にて隣り合う2つの前記金属ナノ粒子の配列ピッチの最大値をpyしたとき、Py>pyを満足することができる。こうすると、二次元面内でホットサイトとして機能する金属ナノ粒子の密度を高めることができる。
【0019】
(4)本発明の一態様では、Py/10>pyを満足して、一周期Py内にて前記第2方向に沿って十個以上の前記金属ナノ粒子を配置することができる。こうして、二次元面内でホットサイトとして機能する金属ナノ粒子の密度をより高めることができる。
【0020】
(5)本発明の一態様では、前記金属ナノ粒子は、前記第1方向にて一定周期pxにて配列されてもよい。こうすると、2つの共鳴ピークを発生させることができる。
【0021】
(6)本発明の一態様では、前記金属ナノ粒子は、前記第2方向にて一定周期pyにて配列することができる。こうすると、二次元面内で大きな電場増強効果が得られる。
【0022】
(7)本発明の一態様では、前記誘電体膜の厚さは100nm以下とすることができる。電場増強度は誘電体層の厚さに大きく依存するが、誘電体膜の厚さは100nm以下とすることで、電場増強度を一定値以上に確保することができる。
【0023】
(8)本発明の他の態様は、上述した光デバイスと、光源と、光検出部と、を有し、前記光デバイスの前記金属ナノ構造に試料が導入され、前記光デバイスは、前記光源からの光が照射されることで前記試料を反映した光を出射し、前記光検出部は、前記光デバイスからの前記流体試料を反映した光を検出する検出装置に関する。この検出装置は、表面増強ラマン散乱を適用して高感度な検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来技術である局在表面プラズモンを用いたセンサーを示す図である。
【図2】図1に示すセンサーの吸光度スペクトルを示す特性図である。
【図3】従来技術である伝播表面プラズモンと局在表面プラズモンとを併用したセンサーを示す図である。
【図4】図4(A)は、ラマン散乱分光法の原理的な説明図であり、図4(B)は、ラマン散乱分光により取得されるラマンスペクトルの例である。
【図5】励起波長及びラマン散乱波長の近傍だけに強い2つの共鳴ピークを発生させるラマン散乱分光法を示す特性図である。
【図6】図6(A)〜図6(C)は、励起波長とラマン散乱波長の近傍に2つの共鳴ピークを発生させる本実施形態に係る表面プラズモン共鳴センサーチップの構造を模式的に示す図である。
【図7】図6(A)に示すセンサーチップにて2つの共鳴ピーク波長の設定を示す特性図である。
【図8】図6(A)に示すセンサーチップの反射光強度を示す特性図である。
【図9】金属ナノ構造が周期性を持たないときの分光反射強度を示す特性図である。
【図10】金属ナノ構造が周期性を持たないセンサーチップを示す図である。
【図11】図10のセンサーチップを用いて取得したラマン散乱光スペクトルの一例を示す図である。
【図12】電磁場強度と誘電体層との関係を示す特性図である。
【図13】図13(A)〜図13(D)は、図6(A)に示すセンサーチップの製造方法を示す図である。
【図14】図14(A)(B)は、金属ナノ粒子の周期的配列を示す図である。
【図15】検出装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0026】
1.検出原理
図4(A)に、ラマン散乱分光法の原理的な説明図を示す。図4(A)に示すように、単一波長の光Linを標的分子X(標的物)に照射すると、散乱光の中には、入射光Linの波長λinと異なる波長λ2のラマン散乱光Ramが発生する。このラマン散乱光Ramと入射光Linとのエネルギー差は、標的分子Xの振動準位や回転準位や電子準位のエネルギーに対応している。標的分子Xは、その構造に応じた特有の振動エネルギーをもつため、単一波長の光Linを用いることで、標的分子Xを特定できる。
【0027】
例えば、入射光Linの振動エネルギーをV1とし、標的分子Xの振動エネルギーをV2とし、ラマン散乱光Ramの振動エネルギーをV3とすると、V3=V1−V2となる。すなわち、V3がV2に応じた振動エネルギーとなるため、ラマン散乱光Ramの波長λ2を測定することで、標的分子Xを特定できる。
【0028】
なお、入射光Linの大部分は、標的分子Xに衝突した後においても衝突前と同じ大きさのエネルギーを有している。この弾性的な散乱光をレイリー散乱光Rayという。例えば、レイリー散乱光Rayの振動エネルギーをV4とすると、V4=V1である。すなわち、レイリー散乱光Rayの波長λ1は、λ1=λinである。
【0029】
図4(B)に、ラマン散乱分光により取得されるラマンスペクトル(ラマンシフトとラマン散乱強度との関係)の例を示す。図4(B)に示すグラフの横軸は、ラマンシフトを示す。ラマンシフトとは、ラマン散乱光Ramの波数(振動数)と入射光Linの波数との差であり、標的分子Xの分子結合状態に特有の値をとる。
【0030】
図4(B)に示すように、B1に示すラマン散乱光Ramの散乱強度(スペクトルピーク)と、B2に示すレイリー散乱光Rayの散乱強度を比較すると、ラマン散乱光Ramの方が微弱であることがわかる。このように、ラマン散乱分光法は、標的分子Xの識別能力には優れている一方、標的分子Xをセンシングする感度自体は低い測定手法である。そのため、本実施形態では、表面増強ラマン散乱による分光法を用いて、センサーの高感度化を図っている。
【0031】
この表面増強ラマン散乱を応用した高感度な表面プラズモン共鳴センサーを実現するためには、局所電場の増強度(以下、増強度と適宜省略する)ができるだけ大きいことが望ましい。増強度αは、下式(1)で表される(M.Inoue, K.Ohtaka, J.Phys.Soc.Jpn., 52, 3853 (1983))。ここで、αrayは、励起波長(レイリー散乱波長と等しい)における増強度であり、αramは、ラマン散乱波長における増強度である。
【0032】
α=αray×αram (1)
上式(1)より、表面増強ラマン散乱過程における増強度を高めるには、励起過程における増強度とラマン散乱過程における増強度の両方を同時に高める必要がある。そのために本実施形態では、図5に示すように、励起波長及びラマン散乱波長の近傍だけに強い2つの共鳴ピークを発生させる。これにより、両散乱過程の相乗効果によって、局所電場の増強効果を飛躍的に高めることができる。
【0033】
なお、本実施形態は上記原理に基づくことが好ましいが、必ずしも2つの共鳴ピークを発生させるものに限定されない(後述の図9参照)。
【0034】
2.光デバイス
図6(A)〜図6(C)に、励起波長とラマン散乱波長の近傍に2つの共鳴ピークを発生させることができる本実施形態に係る表面プラズモン共鳴センサーチップ(光デバイス)100Aの構造を模式的に示した。なお、以下では、各構成要素を図面上で認識し得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法や比率を実際のものとは適宜に異ならせている。
【0035】
図6(A)はチップ構造全体の断面図であり、このセンサーチップ100Aは、表面プラズモン共鳴と表面増強ラマン散乱を利用して標的物(標的物質、標的分子)を検出するためのものであり、基材101(基板)と、突起群110と、誘電体層120と、多数の金属ナノ粒子130Aから成る金属ナノ構造130とを含む。
【0036】
なお以下では、センサーチップ100Aが、金属で形成される金属格子である場合を例に説明するが、本実施形態ではこの場合に限定されない。センサーチップ100Aは導体により形成される格子であればよい。
【0037】
具体的には、基材101は、Ag(銀)やAu(金)等の金属表面(広義には導体表面)102を含み、例えば、四角形や円形の平板状に形成される。基材101は、例えばガラス基板上に金属薄膜を形成したものでも良い。突起群110は、基材101の導体表面102上の少なくとも第1方向Xにて、周期Pxにて一次元に配置され、例えば導体表面102と同じ金属(導体)により形成される。このセンサーチップ100Aは、後述するように一次元または二次元の周期性を有する金属格子とすることができる(図6(B)(C)参照)。
【0038】
より具体的には、突起群110の各突起は、突起の配列方向Xの断面形状が基材101の導体表面102から凸形状に形成される。凸形状は、矩形や台形、円弧等である。例えば、図6(B)に示すように、突起群110は、基材101に対する平面視において、第1方向Xに直交する第2方向Yに平行な縞状に形成される一次元格子構造とすることができる。この場合には、突起群110の突起間の溝と直交する方向に偏光方位を有する直線偏光ビームをSP波の励起光として用いることにより、電場増強度をさらに高めることが可能である。これに代えて、図6(C)に示すように、突起群110は、基材101に対する平面視において、第1方向Xにて周期Pxに配列されると共に、第2方向Yにて周期Pyにて配列される二次元格子構造とすることもできる。この場合には、円偏光ビームをSP波の励起光として用いることにより、電場増強度をさらに高めることが可能である。周期Px及び周期Pyは、100〜1000nm、好ましくは400〜600nmの範囲に設定され、突起群110の凸部高さは10〜100nmの範囲に設定されることが望ましい。
【0039】
導体表面102及び突起群110から成る金属格子上に、入射光を吸収しない例えばSiO2から成る誘電体層120が段差被膜して形成される。さらに、サイズdが1〜数百nm、好ましくは10〜100nm、さらに好ましくは20〜60nmの多数の金属ナノ粒子130Aから成る金属ナノ構造130が、誘電体層120を介して周期性を有する金属格子102,110の表面へ重畳されている。図6(A)では金属ナノ構造130は第1方向Xにて一定周期pxにて配置されてもよいし、周期性がない場合には最大ピッチpx以下で配置しても良い。つまり、金属ナノ構造130には必ずしも周期性は求められず、縦及び/又は横に周期性(px,py)があっても周期性がなくても良い。また、この金属ナノ構造130には、その形状や大きさに分布(ばらつき)があっても分布がなくても良い。一定周期px(py)または最大ピッチpx(py)は、500nm以下とすることができる。好ましくはPx/10>px、Py/10>pyとすることができる。こうすると、一周期Px(Py)内に10個以上の金属ナノ粒子130Aを配置でき、ホットサイトの密度が高まる。
【0040】
ここで、入射光の波長λよりも小さなサイズdの金属ナノ粒子130Aに対して入射光を照射する場合、入射光の電場は、金属ナノ粒子130Aの表面に存在する自由電子に作用し、共鳴を引き起こす。これにより、自由電子による電気双極子が金属ナノ粒子130A内に励起され、入射光の電場よりも強い増強電場が形成される。これは、局在表面プラズモン共鳴(LSPR:Localized Surface Plasmon Resonance)とも呼ばれる。この現象は、入射光の波長よりも小さなサイズd=1〜数100nmの金属ナノ粒子130Aの電気伝導体に特有の現象である。
【0041】
図7は、図6(A)に示すセンサーチップ構造の分散曲線である。図7は、角周波数ω(波長λ)の光をセンサーチップ構造へ照射したときに励起される伝播表面プラズモンPSPの波数(エバネッセント波の波数)を示している。ここで、図6(B)(C)に示す周期Px=Py=Pと仮定したとき、波数は2π/Pである。
【0042】
入射光の偏光方向を格子の溝方向と直交させておくと、金属格子内の自由電子の振動にともなって電磁波の振動が励起される。この電磁波の振動は自由電子の振動に影響するため、両者の振動が結合した系である表面プラズモンポラリトンが形成される。この表面プラズモンポラリトンは、エバネッラント波の波数2π/Pと伝播表面プラズモンPSPの波数とが一致した時に励起される。
【0043】
図7には二つの分散曲線C1,C2が示されており、一つは金属ナノ構造130に励起される局在表面プラズモンSPの分散曲線C1、もう一つは誘電体層120と金属格子102,110の界面に励起される伝播表面プラズモンPSPの分散曲線C2である。本実施形態では、金属格子102,110と金属ナノ構造130とを併用しているので、二つの分散曲線C1,C2が合成された他の2つの分散曲線C3,C4と、波数2π/Pを通る直線とが交わる2点が得られる。
【0044】
これらの関係から、金属格子102,110の周期をPとすると、波数2π/Pで励起される表面プラズモンSPが二つ存在することが分かる。すなわち、一つの表面プラズモンSPは角周波数ω1(波長λ1)の光と共鳴し、他の一つの表面プラズモンSPは角周波数ω2(波長λ2)の光と共鳴する。
【0045】
これらの共鳴角周波数(共鳴波長)は、金属ナノ構造130の素材、大きさ、金属格子102,110の素材、周期P、凹凸比、凹凸深さ等の条件を選ぶことにより、所望の二つの角周波数(波長)へ合わせることができる。
【0046】
図8は、図6(A)に示すセンサーチップ構造の分光反射特性である。図8から、反射光強度が大きく低下する波長が二つ存在することがわかる。これら二つの波長λ1、λ2は、先に図5に示した波長λ1、λ2に対応している。すなわち、共鳴波長λ1、λ2において、入射光のエネルギーがSP波を励起するために使われ、そのために反射光の強度が小さくなる。図6(A)に示すセンサーチップ100Aを使う際には、共鳴波長λ1を励起波長に合わせ、共鳴波長λ2を散乱波長に合わせる。こうすると、表面プラズモン共鳴SPRによる大きな電場増強効果が得られることは、上式(1)の通りである。
【0047】
なお、本実施形態では、金属ナノ構造130は必ずしも周期性を有する必要がない。金属ナノ構造130が周期性をもたない場合には、図9に示すように分光反射特性における共鳴波長のピークがブロードになるが、同ピークが励起波長と散乱波長を含むため、大きな電場増強効果が現れるからである。
【0048】
3.周期性のない金属ナノ構造を有する光デバイス
図10に、他の実施形態に係るセンサーチップ(光デバイス)100Bの具体例を示す。このセンサーチップ100Bにおいては、Agアイランドで形成される金属ナノ粒子130AがSiO2層(誘電体層)120を介してAuの凹凸パターン(金属格子)102,110の表面に形成されている。Agアイランド130AにおけるAg粒子の大きさには20〜80nmの範囲でばらつきがあり、しかも周期性がない。SiO2層(誘電体層)120の厚さは40nmである。Au凹凸パターン(金属格子)102,110は一方向にだけ周期性を有し、その周期Pは585nm、深さは50nm、凹凸比は7:3程度(ただし、SiO2成膜後)である。
【0049】
図11に、図10のセンサーチップ100Bを用いて取得したラマン散乱光スペクトルの一例を示す。励起光源はHe−Neレーザー(波長633nm)であり、出射された直線偏光ビームをセンサーチップ100B上の被検出試料へ照射した。試料はアデニン分子であり、同分子に固有の信号ピーク(例えば、波数730cm−1)が検出できている。この検出における電場増強度は約107と推定される。なお、ビームの偏光方位はAu凹凸パターン(金属格子)102,110の溝と直交するように定めている。
【0050】
センサーチップ100Bの電場増強度はSiO2層120の厚さに大きく依存する。図12に、波数730cm−1の信号ピークの強度とSiO2層120の厚さの関係を示す。これより、SiO2層120の厚さが40nmの付近で、電場増強度が最大となることがわかる。誘電体膜120厚さは、100nm以下、好ましくは20〜60nmとすることで、局所磁場の強さを一定値以上に確保することができる。なお、図12の結果は、平らなAu膜から得たものである。Au凹凸パターン102,110を用いる場合には、SiO2層120の厚さを違えるとパターンの凹凸比も変わってしまうため、SiO2層120の効果だけを知ることが難しいからである。
【0051】
4.光デバイスの製造方法
図13(A)〜図13(D)に、図6(A)に示すセンサーチップ100Aの製造方法を示す。まず、図13(A)に示すように、SiO2基板101上iAu層102を形成し、Au層102上にレーザー干渉露光によりレジストパターン104を形成する。次に、図13(B)に示すように、レジストパターン104をマスクにしてSiO2基板101上のAu層102をドライエッチングする。次に、図13(C)に示すように、Au層102の上にSiO2層120をスパッタでつける。最後に、図13(D)に示すように、SiO2層120の上にAgアイランド130を加熱真空蒸着により形成して、金属ナノ構造130を形成する。この場合、図10に示すようにAgアイランド130Aは、形状が一様ではなく、大きさにも分布があり、周期性を持った形態とはならない。
【0052】
また、図6(A)に示すように金属ナノ粒子130Aを一次元での周期pxで配列し、あるいは図14(A)(B)に示すように二次元で周期px,py(図示省略)にてドット状または長楕円状の形状の金属ナノ粒子130Aを誘電体層120上に形成することも可能である。この場合には、レーザー干渉露光とドライエチングを繰り返して、金属ナノ構造130を形成すればよい。また、金属ナノ構造130の素材と導体表面102の素材は異なる金属であったが、同じ金属の組み合わせを用いることも可能である。
【0053】
5.検出装置
図15には、上述したセンサーチップ(光デバイス)100Aまたは100Bを備えた検出装置200の一例を示す模式図である。標的物質(図示せず)のA方向から検出装置200に搬入されたB方向に搬出される。励起光源210から出射されたレーザーはコリメータレンズで平行光にされ、偏光制御素子230を通過し、ダイクロイックミラー240によってセンサーチップ260の方向に導かれる。レーザーは対物レンズ250で集光され、センサーチップ260に入射する。このとき、センサーチップ260の表面(例えば、金属ナノ構造130が形成された面)には標的物質(図示せず)が配置されている。なお、ファン(図示せず)の駆動を制御することにより、標的物質は搬入口から搬送部内部に導入され、排出口から搬送部外部に排出されるようになっている。
【0054】
センサーチップ260表面へレーザー光が入射すると、金属ナノ構造130の近傍には表面プラズモン共鳴SPRを介して極めて強い増強電場が生じる。増強電場に1〜数個の標的物質が浸入すると、そこからラマン散乱光が発生する。ラマン散乱光は、対物レンズ250を通過し、ダイクロイックミラー240によって光検出器280の方向に導かれ、集光レンズ270で集光され、光検出器280に入射する。そして、光検出器280によりスペクトル分解され、図11に示されたようなスペクトル情報が得られる。この構成によれば、上述したセンサーチップ100Aまたは100Bを備えているため、センサー感度が向上され、ラマン散乱スペクトルから標的物質を特定することが可能となる。
【0055】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0056】
100A,100B,260 光デバイス(センサーチップ)、101 基材、102 導体表面、110 突起群、120 誘電体層(SiO2層)、130 金属ナノ構造、130A 金属ナノ粒子、200 検出装置、210 光源、280 光検出器
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス及び検出装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療診断や飲食物の検査等に用いられるセンサーの需要が増大しており、高感度かつ小型のセンサーの開発が求められている。このような要求に応えるために、電気化学的な手法をはじめ様々なタイプのセンサーが検討されている。これらの中で、集積化が可能であること、低コスト、測定環境を選ばないこと等の理由から、表面プラズモン共鳴(SPR: Surface Plasmon Resonance)を用いたセンサーに対する関心が高まっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、局在表面プラズモン共鳴(LSPR: Localized Surface Plasmon Resonance)を利用して、センサー感度を向上する手法が開示されている。
【0004】
非特許文献1には、伝播表面プラズモン(PSP: Propagating Surface Plasmon)と局在表面プラズモン(LSP: Localized Surface Plasmon)とを併用して、センサー感度を向上する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−356587号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「Experimental study of the interaction between localized and propagating surface plasmons」OPTICS LETTERS/Vol.34,No.3/February 1,2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、図1に示すように、透明基板10の表面に金属微粒子20を固定し、その透明基板10に対して入射光を照射し、金属微粒子20の吸光度を測定する。図2に示すように、金属微粒子20に標的物が付着している場合には、A1に示す吸光度スペクトルからA2に示す吸光度スペクトルに変化する。特許文献1の手法では、この吸光度の変化により、金属微粒子近傍の媒質の変化を検出し、標的物の吸着や堆積を検出する。
【0008】
しかしながら、この手法では、金属微粒子の大きさや形状を均一に作製することや、金属微粒子を規則正しく配列することが困難である。金属微粒子のサイズや配列を制御できないと、プラズモン共鳴で生じる吸収や共鳴波長にもばらつきが生じる。そのため、図2に示すように、吸光度スペクトルの幅がブロードになり、ピーク強度が低下してしまう。そして、ピーク強度が低下すると、金属微粒子近傍の媒質の変化を検出する信号変化が小さくなり、センサー感度を向上させるにも限界が生じてしまう。そのため、吸光度スペクトルから物質を特定するような用途では、センサーの感度が不十分となってしまう。
【0009】
しかも、従来の表面増強ラマン散乱(SERS: Surface Enhanced Raman Scattering)センサーでは、共鳴ピークをひとつだけ利用するため、共鳴ピークの波長を励起波長あるいはラマン散乱波長のどちらかに合わせなければならない。この場合、どちらか一方の散乱過程における電場増強効果だけを利用することになり、高い電場増強効果は期待できない。
【0010】
一方、非特許文献1には、図3に示すように、ガラス基板30上に100nm厚のAuフィルム40が接合され、Auフィルム40上に20nm厚のSiO2層50が形成され、そのSiO2層50上に直径100〜170nmの多数のAu円盤60が周期P=780nmで二次元配置されたセンサーが開示されている。
【0011】
このセンサーにAuフィルム40とSiO2層50との界面では伝播表面プラズモンPSPが励起され、Au円盤60では局在表面プラズモンLSPが励起される。ここで、伝播表面プラズモンPSPは、「波数」を持ったエバネッセント場に結合する。「波数」はAu円盤60の周期Pで決められ、2π/Pとなる。よって、Au円盤60の周期Pは伝播表面プラズモンPSPの励起と相関があり、ひいては試料のラマン散乱波長に合わせて設定される共鳴ピーク波長と相関があり、自由に変更することはできない。
【0012】
その一方で、Au円盤60は局在電場が強まるホットサイトとしての機能があり、センサーの感度を高めるには、ホットサイトの密度は高いことが求められる。しかし、伝播表面プラズモンPSPの「波数」を決めるAu円盤60の周期Pは780nmと比較的大きく、ホットサイトの密度は著しく低くなる。しかし、周期Pを大きく確保しながら、Au円盤60の外形を大きくすると、共鳴波長は長波長側(赤色側)にシフトして励起波長からずれるため大きな局在電場は期待できない。
【0013】
本発明の幾つかの態様では、伝播表面プラズモンと局在表面プラズモンとを併用しながら、金属ナノ粒子の配列周期に依存せずに伝播表面プラズモンPSPの「波数」を決めることで、ホットサイトとして機能する金属ナノ粒子の密度を高めることができる光デバイス及びそれを用いた検出装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)本発明の一態様は、
基材の導体表面より突起して、第1方向に沿って周期Pxで配列される突起群と、
前記導体表面及び前記突起群を覆う誘電体層と、
前記誘電体層上にてサイズdがナノオーダーの金属ナノ粒子が前記第1方向に沿って配列されて成る金属ナノ構造と、
を有し、
照射光の波長をλとしたとき、λ>Px>dを満足し、かつ、前記第1方向にて隣り合う2つの前記金属ナノ粒子の配列ピッチの最大値をpxしたとき、Px>pxを満足する光デバイスに関する。
【0015】
本発明の一態様によれば、導体表面及び突起群と誘電体層との界面では伝播表面プラズモンPSPが励起され、金属ナノ粒子では局在表面プラズモンLSPが励起される。突起機群が第1方向に沿って周期Pxで配列されるので、伝播表面プラズモンPSPの「波数」は突起群の周期Pxに基づいて設定され、金属ナノ粒子の配列周期に依存しない。金属ナノ粒子は周期的に配列されることも要求されない。
【0016】
そして、Px>dであり、かつ、Px>pxを満足することで、ホットサイトとして機能する金属ナノ粒子の密度を高めることができる。なお、入射光の波長λよりも小さなサイズd(λ>d)の金属ナノ粒子に対して入射光を照射することで、局在表面プラズモン共鳴(LSPR:Localized Surface Plasmon Resonance)を利用することができる。
【0017】
(2)本発明の一態様では、Px/10>pxを満足して、一周期P内にて前記第1方向に沿って十個以上の前記金属ナノ粒子を配置することができる。こうして、ホットサイトとして機能する金属ナノ粒子の密度をより高めることができる。
【0018】
(3)本発明の一態様では、前記突起群は、前記第1方向と直交する第2方向に沿って周期Pyで配列され、λ>Py>dを満足し、かつ、前記第2方向にて隣り合う2つの前記金属ナノ粒子の配列ピッチの最大値をpyしたとき、Py>pyを満足することができる。こうすると、二次元面内でホットサイトとして機能する金属ナノ粒子の密度を高めることができる。
【0019】
(4)本発明の一態様では、Py/10>pyを満足して、一周期Py内にて前記第2方向に沿って十個以上の前記金属ナノ粒子を配置することができる。こうして、二次元面内でホットサイトとして機能する金属ナノ粒子の密度をより高めることができる。
【0020】
(5)本発明の一態様では、前記金属ナノ粒子は、前記第1方向にて一定周期pxにて配列されてもよい。こうすると、2つの共鳴ピークを発生させることができる。
【0021】
(6)本発明の一態様では、前記金属ナノ粒子は、前記第2方向にて一定周期pyにて配列することができる。こうすると、二次元面内で大きな電場増強効果が得られる。
【0022】
(7)本発明の一態様では、前記誘電体膜の厚さは100nm以下とすることができる。電場増強度は誘電体層の厚さに大きく依存するが、誘電体膜の厚さは100nm以下とすることで、電場増強度を一定値以上に確保することができる。
【0023】
(8)本発明の他の態様は、上述した光デバイスと、光源と、光検出部と、を有し、前記光デバイスの前記金属ナノ構造に試料が導入され、前記光デバイスは、前記光源からの光が照射されることで前記試料を反映した光を出射し、前記光検出部は、前記光デバイスからの前記流体試料を反映した光を検出する検出装置に関する。この検出装置は、表面増強ラマン散乱を適用して高感度な検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来技術である局在表面プラズモンを用いたセンサーを示す図である。
【図2】図1に示すセンサーの吸光度スペクトルを示す特性図である。
【図3】従来技術である伝播表面プラズモンと局在表面プラズモンとを併用したセンサーを示す図である。
【図4】図4(A)は、ラマン散乱分光法の原理的な説明図であり、図4(B)は、ラマン散乱分光により取得されるラマンスペクトルの例である。
【図5】励起波長及びラマン散乱波長の近傍だけに強い2つの共鳴ピークを発生させるラマン散乱分光法を示す特性図である。
【図6】図6(A)〜図6(C)は、励起波長とラマン散乱波長の近傍に2つの共鳴ピークを発生させる本実施形態に係る表面プラズモン共鳴センサーチップの構造を模式的に示す図である。
【図7】図6(A)に示すセンサーチップにて2つの共鳴ピーク波長の設定を示す特性図である。
【図8】図6(A)に示すセンサーチップの反射光強度を示す特性図である。
【図9】金属ナノ構造が周期性を持たないときの分光反射強度を示す特性図である。
【図10】金属ナノ構造が周期性を持たないセンサーチップを示す図である。
【図11】図10のセンサーチップを用いて取得したラマン散乱光スペクトルの一例を示す図である。
【図12】電磁場強度と誘電体層との関係を示す特性図である。
【図13】図13(A)〜図13(D)は、図6(A)に示すセンサーチップの製造方法を示す図である。
【図14】図14(A)(B)は、金属ナノ粒子の周期的配列を示す図である。
【図15】検出装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0026】
1.検出原理
図4(A)に、ラマン散乱分光法の原理的な説明図を示す。図4(A)に示すように、単一波長の光Linを標的分子X(標的物)に照射すると、散乱光の中には、入射光Linの波長λinと異なる波長λ2のラマン散乱光Ramが発生する。このラマン散乱光Ramと入射光Linとのエネルギー差は、標的分子Xの振動準位や回転準位や電子準位のエネルギーに対応している。標的分子Xは、その構造に応じた特有の振動エネルギーをもつため、単一波長の光Linを用いることで、標的分子Xを特定できる。
【0027】
例えば、入射光Linの振動エネルギーをV1とし、標的分子Xの振動エネルギーをV2とし、ラマン散乱光Ramの振動エネルギーをV3とすると、V3=V1−V2となる。すなわち、V3がV2に応じた振動エネルギーとなるため、ラマン散乱光Ramの波長λ2を測定することで、標的分子Xを特定できる。
【0028】
なお、入射光Linの大部分は、標的分子Xに衝突した後においても衝突前と同じ大きさのエネルギーを有している。この弾性的な散乱光をレイリー散乱光Rayという。例えば、レイリー散乱光Rayの振動エネルギーをV4とすると、V4=V1である。すなわち、レイリー散乱光Rayの波長λ1は、λ1=λinである。
【0029】
図4(B)に、ラマン散乱分光により取得されるラマンスペクトル(ラマンシフトとラマン散乱強度との関係)の例を示す。図4(B)に示すグラフの横軸は、ラマンシフトを示す。ラマンシフトとは、ラマン散乱光Ramの波数(振動数)と入射光Linの波数との差であり、標的分子Xの分子結合状態に特有の値をとる。
【0030】
図4(B)に示すように、B1に示すラマン散乱光Ramの散乱強度(スペクトルピーク)と、B2に示すレイリー散乱光Rayの散乱強度を比較すると、ラマン散乱光Ramの方が微弱であることがわかる。このように、ラマン散乱分光法は、標的分子Xの識別能力には優れている一方、標的分子Xをセンシングする感度自体は低い測定手法である。そのため、本実施形態では、表面増強ラマン散乱による分光法を用いて、センサーの高感度化を図っている。
【0031】
この表面増強ラマン散乱を応用した高感度な表面プラズモン共鳴センサーを実現するためには、局所電場の増強度(以下、増強度と適宜省略する)ができるだけ大きいことが望ましい。増強度αは、下式(1)で表される(M.Inoue, K.Ohtaka, J.Phys.Soc.Jpn., 52, 3853 (1983))。ここで、αrayは、励起波長(レイリー散乱波長と等しい)における増強度であり、αramは、ラマン散乱波長における増強度である。
【0032】
α=αray×αram (1)
上式(1)より、表面増強ラマン散乱過程における増強度を高めるには、励起過程における増強度とラマン散乱過程における増強度の両方を同時に高める必要がある。そのために本実施形態では、図5に示すように、励起波長及びラマン散乱波長の近傍だけに強い2つの共鳴ピークを発生させる。これにより、両散乱過程の相乗効果によって、局所電場の増強効果を飛躍的に高めることができる。
【0033】
なお、本実施形態は上記原理に基づくことが好ましいが、必ずしも2つの共鳴ピークを発生させるものに限定されない(後述の図9参照)。
【0034】
2.光デバイス
図6(A)〜図6(C)に、励起波長とラマン散乱波長の近傍に2つの共鳴ピークを発生させることができる本実施形態に係る表面プラズモン共鳴センサーチップ(光デバイス)100Aの構造を模式的に示した。なお、以下では、各構成要素を図面上で認識し得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法や比率を実際のものとは適宜に異ならせている。
【0035】
図6(A)はチップ構造全体の断面図であり、このセンサーチップ100Aは、表面プラズモン共鳴と表面増強ラマン散乱を利用して標的物(標的物質、標的分子)を検出するためのものであり、基材101(基板)と、突起群110と、誘電体層120と、多数の金属ナノ粒子130Aから成る金属ナノ構造130とを含む。
【0036】
なお以下では、センサーチップ100Aが、金属で形成される金属格子である場合を例に説明するが、本実施形態ではこの場合に限定されない。センサーチップ100Aは導体により形成される格子であればよい。
【0037】
具体的には、基材101は、Ag(銀)やAu(金)等の金属表面(広義には導体表面)102を含み、例えば、四角形や円形の平板状に形成される。基材101は、例えばガラス基板上に金属薄膜を形成したものでも良い。突起群110は、基材101の導体表面102上の少なくとも第1方向Xにて、周期Pxにて一次元に配置され、例えば導体表面102と同じ金属(導体)により形成される。このセンサーチップ100Aは、後述するように一次元または二次元の周期性を有する金属格子とすることができる(図6(B)(C)参照)。
【0038】
より具体的には、突起群110の各突起は、突起の配列方向Xの断面形状が基材101の導体表面102から凸形状に形成される。凸形状は、矩形や台形、円弧等である。例えば、図6(B)に示すように、突起群110は、基材101に対する平面視において、第1方向Xに直交する第2方向Yに平行な縞状に形成される一次元格子構造とすることができる。この場合には、突起群110の突起間の溝と直交する方向に偏光方位を有する直線偏光ビームをSP波の励起光として用いることにより、電場増強度をさらに高めることが可能である。これに代えて、図6(C)に示すように、突起群110は、基材101に対する平面視において、第1方向Xにて周期Pxに配列されると共に、第2方向Yにて周期Pyにて配列される二次元格子構造とすることもできる。この場合には、円偏光ビームをSP波の励起光として用いることにより、電場増強度をさらに高めることが可能である。周期Px及び周期Pyは、100〜1000nm、好ましくは400〜600nmの範囲に設定され、突起群110の凸部高さは10〜100nmの範囲に設定されることが望ましい。
【0039】
導体表面102及び突起群110から成る金属格子上に、入射光を吸収しない例えばSiO2から成る誘電体層120が段差被膜して形成される。さらに、サイズdが1〜数百nm、好ましくは10〜100nm、さらに好ましくは20〜60nmの多数の金属ナノ粒子130Aから成る金属ナノ構造130が、誘電体層120を介して周期性を有する金属格子102,110の表面へ重畳されている。図6(A)では金属ナノ構造130は第1方向Xにて一定周期pxにて配置されてもよいし、周期性がない場合には最大ピッチpx以下で配置しても良い。つまり、金属ナノ構造130には必ずしも周期性は求められず、縦及び/又は横に周期性(px,py)があっても周期性がなくても良い。また、この金属ナノ構造130には、その形状や大きさに分布(ばらつき)があっても分布がなくても良い。一定周期px(py)または最大ピッチpx(py)は、500nm以下とすることができる。好ましくはPx/10>px、Py/10>pyとすることができる。こうすると、一周期Px(Py)内に10個以上の金属ナノ粒子130Aを配置でき、ホットサイトの密度が高まる。
【0040】
ここで、入射光の波長λよりも小さなサイズdの金属ナノ粒子130Aに対して入射光を照射する場合、入射光の電場は、金属ナノ粒子130Aの表面に存在する自由電子に作用し、共鳴を引き起こす。これにより、自由電子による電気双極子が金属ナノ粒子130A内に励起され、入射光の電場よりも強い増強電場が形成される。これは、局在表面プラズモン共鳴(LSPR:Localized Surface Plasmon Resonance)とも呼ばれる。この現象は、入射光の波長よりも小さなサイズd=1〜数100nmの金属ナノ粒子130Aの電気伝導体に特有の現象である。
【0041】
図7は、図6(A)に示すセンサーチップ構造の分散曲線である。図7は、角周波数ω(波長λ)の光をセンサーチップ構造へ照射したときに励起される伝播表面プラズモンPSPの波数(エバネッセント波の波数)を示している。ここで、図6(B)(C)に示す周期Px=Py=Pと仮定したとき、波数は2π/Pである。
【0042】
入射光の偏光方向を格子の溝方向と直交させておくと、金属格子内の自由電子の振動にともなって電磁波の振動が励起される。この電磁波の振動は自由電子の振動に影響するため、両者の振動が結合した系である表面プラズモンポラリトンが形成される。この表面プラズモンポラリトンは、エバネッラント波の波数2π/Pと伝播表面プラズモンPSPの波数とが一致した時に励起される。
【0043】
図7には二つの分散曲線C1,C2が示されており、一つは金属ナノ構造130に励起される局在表面プラズモンSPの分散曲線C1、もう一つは誘電体層120と金属格子102,110の界面に励起される伝播表面プラズモンPSPの分散曲線C2である。本実施形態では、金属格子102,110と金属ナノ構造130とを併用しているので、二つの分散曲線C1,C2が合成された他の2つの分散曲線C3,C4と、波数2π/Pを通る直線とが交わる2点が得られる。
【0044】
これらの関係から、金属格子102,110の周期をPとすると、波数2π/Pで励起される表面プラズモンSPが二つ存在することが分かる。すなわち、一つの表面プラズモンSPは角周波数ω1(波長λ1)の光と共鳴し、他の一つの表面プラズモンSPは角周波数ω2(波長λ2)の光と共鳴する。
【0045】
これらの共鳴角周波数(共鳴波長)は、金属ナノ構造130の素材、大きさ、金属格子102,110の素材、周期P、凹凸比、凹凸深さ等の条件を選ぶことにより、所望の二つの角周波数(波長)へ合わせることができる。
【0046】
図8は、図6(A)に示すセンサーチップ構造の分光反射特性である。図8から、反射光強度が大きく低下する波長が二つ存在することがわかる。これら二つの波長λ1、λ2は、先に図5に示した波長λ1、λ2に対応している。すなわち、共鳴波長λ1、λ2において、入射光のエネルギーがSP波を励起するために使われ、そのために反射光の強度が小さくなる。図6(A)に示すセンサーチップ100Aを使う際には、共鳴波長λ1を励起波長に合わせ、共鳴波長λ2を散乱波長に合わせる。こうすると、表面プラズモン共鳴SPRによる大きな電場増強効果が得られることは、上式(1)の通りである。
【0047】
なお、本実施形態では、金属ナノ構造130は必ずしも周期性を有する必要がない。金属ナノ構造130が周期性をもたない場合には、図9に示すように分光反射特性における共鳴波長のピークがブロードになるが、同ピークが励起波長と散乱波長を含むため、大きな電場増強効果が現れるからである。
【0048】
3.周期性のない金属ナノ構造を有する光デバイス
図10に、他の実施形態に係るセンサーチップ(光デバイス)100Bの具体例を示す。このセンサーチップ100Bにおいては、Agアイランドで形成される金属ナノ粒子130AがSiO2層(誘電体層)120を介してAuの凹凸パターン(金属格子)102,110の表面に形成されている。Agアイランド130AにおけるAg粒子の大きさには20〜80nmの範囲でばらつきがあり、しかも周期性がない。SiO2層(誘電体層)120の厚さは40nmである。Au凹凸パターン(金属格子)102,110は一方向にだけ周期性を有し、その周期Pは585nm、深さは50nm、凹凸比は7:3程度(ただし、SiO2成膜後)である。
【0049】
図11に、図10のセンサーチップ100Bを用いて取得したラマン散乱光スペクトルの一例を示す。励起光源はHe−Neレーザー(波長633nm)であり、出射された直線偏光ビームをセンサーチップ100B上の被検出試料へ照射した。試料はアデニン分子であり、同分子に固有の信号ピーク(例えば、波数730cm−1)が検出できている。この検出における電場増強度は約107と推定される。なお、ビームの偏光方位はAu凹凸パターン(金属格子)102,110の溝と直交するように定めている。
【0050】
センサーチップ100Bの電場増強度はSiO2層120の厚さに大きく依存する。図12に、波数730cm−1の信号ピークの強度とSiO2層120の厚さの関係を示す。これより、SiO2層120の厚さが40nmの付近で、電場増強度が最大となることがわかる。誘電体膜120厚さは、100nm以下、好ましくは20〜60nmとすることで、局所磁場の強さを一定値以上に確保することができる。なお、図12の結果は、平らなAu膜から得たものである。Au凹凸パターン102,110を用いる場合には、SiO2層120の厚さを違えるとパターンの凹凸比も変わってしまうため、SiO2層120の効果だけを知ることが難しいからである。
【0051】
4.光デバイスの製造方法
図13(A)〜図13(D)に、図6(A)に示すセンサーチップ100Aの製造方法を示す。まず、図13(A)に示すように、SiO2基板101上iAu層102を形成し、Au層102上にレーザー干渉露光によりレジストパターン104を形成する。次に、図13(B)に示すように、レジストパターン104をマスクにしてSiO2基板101上のAu層102をドライエッチングする。次に、図13(C)に示すように、Au層102の上にSiO2層120をスパッタでつける。最後に、図13(D)に示すように、SiO2層120の上にAgアイランド130を加熱真空蒸着により形成して、金属ナノ構造130を形成する。この場合、図10に示すようにAgアイランド130Aは、形状が一様ではなく、大きさにも分布があり、周期性を持った形態とはならない。
【0052】
また、図6(A)に示すように金属ナノ粒子130Aを一次元での周期pxで配列し、あるいは図14(A)(B)に示すように二次元で周期px,py(図示省略)にてドット状または長楕円状の形状の金属ナノ粒子130Aを誘電体層120上に形成することも可能である。この場合には、レーザー干渉露光とドライエチングを繰り返して、金属ナノ構造130を形成すればよい。また、金属ナノ構造130の素材と導体表面102の素材は異なる金属であったが、同じ金属の組み合わせを用いることも可能である。
【0053】
5.検出装置
図15には、上述したセンサーチップ(光デバイス)100Aまたは100Bを備えた検出装置200の一例を示す模式図である。標的物質(図示せず)のA方向から検出装置200に搬入されたB方向に搬出される。励起光源210から出射されたレーザーはコリメータレンズで平行光にされ、偏光制御素子230を通過し、ダイクロイックミラー240によってセンサーチップ260の方向に導かれる。レーザーは対物レンズ250で集光され、センサーチップ260に入射する。このとき、センサーチップ260の表面(例えば、金属ナノ構造130が形成された面)には標的物質(図示せず)が配置されている。なお、ファン(図示せず)の駆動を制御することにより、標的物質は搬入口から搬送部内部に導入され、排出口から搬送部外部に排出されるようになっている。
【0054】
センサーチップ260表面へレーザー光が入射すると、金属ナノ構造130の近傍には表面プラズモン共鳴SPRを介して極めて強い増強電場が生じる。増強電場に1〜数個の標的物質が浸入すると、そこからラマン散乱光が発生する。ラマン散乱光は、対物レンズ250を通過し、ダイクロイックミラー240によって光検出器280の方向に導かれ、集光レンズ270で集光され、光検出器280に入射する。そして、光検出器280によりスペクトル分解され、図11に示されたようなスペクトル情報が得られる。この構成によれば、上述したセンサーチップ100Aまたは100Bを備えているため、センサー感度が向上され、ラマン散乱スペクトルから標的物質を特定することが可能となる。
【0055】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0056】
100A,100B,260 光デバイス(センサーチップ)、101 基材、102 導体表面、110 突起群、120 誘電体層(SiO2層)、130 金属ナノ構造、130A 金属ナノ粒子、200 検出装置、210 光源、280 光検出器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の導体表面より突起して、第1方向に沿って周期Pxで配列される突起群と、
前記導体表面及び前記突起群を覆う誘電体層と、
前記誘電体層上にてサイズdがナノオーダーの金属ナノ粒子が前記第1方向に沿って配列されて成る金属ナノ構造と、
を有し、
照射光の波長をλとしたとき、λ>Px>dを満足し、かつ、前記第1方向にて隣り合う2つの前記金属ナノ粒子の配列ピッチの最大値をpxしたとき、Px>pxを満足することを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
請求項1において、
Px/10>pxを満足して、一周期Px内にて前記第1方向に沿って十個以上の前記金属ナノ粒子が配置されていることを特徴とする光デバイス。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記突起群は、前記第1方向と直交する第2方向に沿って周期Pyで配列され、
λ>Py>dを満足し、かつ、前記第2方向にて隣り合う2つの前記金属ナノ粒子の配列ピッチの最大値をpyしたとき、Py>pyを満足することを特徴とする光デバイス。
【請求項4】
請求項3において、
Py/10>pyを満足して、一周期Py内にて前記第2方向に沿って十個以上の前記金属ナノ粒子が配置されていることを特徴とする光デバイス。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記金属ナノ粒子は、前記第1方向にて一定周期pxにて配列されていることを特徴とする光デバイス。
【請求項6】
請求項3または4において、
前記金属ナノ粒子は、前記第2方向にて一定周期pyにて配列されていることを特徴とする光デバイス。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記誘電体膜の厚さは100nm以下であることを特徴とする光デバイス。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか記載の光デバイスと、
光源と、
光検出部と、
を有し、
前記光デバイスの前記金属ナノ構造に試料が導入され、
前記光デバイスは、前記光源からの光が照射されることで前記試料を反映した光を出射し、
前記光検出部は、前記光デバイスからの前記流体試料を反映した光を検出することを特徴とする検出装置。
【請求項1】
基材の導体表面より突起して、第1方向に沿って周期Pxで配列される突起群と、
前記導体表面及び前記突起群を覆う誘電体層と、
前記誘電体層上にてサイズdがナノオーダーの金属ナノ粒子が前記第1方向に沿って配列されて成る金属ナノ構造と、
を有し、
照射光の波長をλとしたとき、λ>Px>dを満足し、かつ、前記第1方向にて隣り合う2つの前記金属ナノ粒子の配列ピッチの最大値をpxしたとき、Px>pxを満足することを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
請求項1において、
Px/10>pxを満足して、一周期Px内にて前記第1方向に沿って十個以上の前記金属ナノ粒子が配置されていることを特徴とする光デバイス。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記突起群は、前記第1方向と直交する第2方向に沿って周期Pyで配列され、
λ>Py>dを満足し、かつ、前記第2方向にて隣り合う2つの前記金属ナノ粒子の配列ピッチの最大値をpyしたとき、Py>pyを満足することを特徴とする光デバイス。
【請求項4】
請求項3において、
Py/10>pyを満足して、一周期Py内にて前記第2方向に沿って十個以上の前記金属ナノ粒子が配置されていることを特徴とする光デバイス。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記金属ナノ粒子は、前記第1方向にて一定周期pxにて配列されていることを特徴とする光デバイス。
【請求項6】
請求項3または4において、
前記金属ナノ粒子は、前記第2方向にて一定周期pyにて配列されていることを特徴とする光デバイス。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記誘電体膜の厚さは100nm以下であることを特徴とする光デバイス。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか記載の光デバイスと、
光源と、
光検出部と、
を有し、
前記光デバイスの前記金属ナノ構造に試料が導入され、
前記光デバイスは、前記光源からの光が照射されることで前記試料を反映した光を出射し、
前記光検出部は、前記光デバイスからの前記流体試料を反映した光を検出することを特徴とする検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図10】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図10】
【図14】
【公開番号】特開2013−7614(P2013−7614A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139526(P2011−139526)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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