説明

光デバイス

【課題】周波数特性の劣化を防ぐことができる光デバイスを得る。
【解決手段】n型InP基板1上に、光分波器2、マッハツェンダ光変調器3,4、及び光合波器5が設けられている。光分波器2は入力光を第1及び第2の入力光に分波する。マッハツェンダ光変調器3,4は、第1及び第2の入力光をそれぞれ変調する。光合波器5は、マッハツェンダ光変調器3,4により変調された光を合波する。マッハツェンダ光変調器3の位相変調電極8a,8bとマッハツェンダ光変調器4の位相変調電極14a,14bは、マッハツェンダ光変調器3,4の光導波路6a,6b,12a,12bの延在方向に対して垂直な方向から見て互いに重ならない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ通信の送信器に適用される光デバイスに関し、特にDQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying)用マッハツェンダ光変調器を備えた光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ通信の送信器にマッハツェンダ光変調器が用いられる。マッハツェンダ光変調器は、光を2つに分離して、異なる2つの光導波路を通した後に再び合波する。光導波路上には位相変調電極が設けられている。この位相変調電極は、光導波路に変調電圧を印加して、光導波路中の光の位相を変化させる。位相変調電極に変調電圧を供給するために、位相変調電極の両端にそれぞれ給電線路と終端線路が接続されている。
【0003】
デジタル信号の変調方式の1つとして、変調された4つの位相にそれぞれ2ビットのデータを割り当てるDQPSKがある。DQPSK用の光変調器は2つのマッハツェンダ光変調器を備えるため、合計で4つの光導波路を有する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−229592号公報
【特許文献2】特開2010−286770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のDQPSK用の光変調器では、2つのマッハツェンダ光変調器の位相変調電極は、光導波路の延在方向に対して垂直な方向から見て互いに重なっている。このため、給電線路や終端線路を基板の周辺部に引き出す際に、給電線路や終端線路が最大で3つの光導波路を跨ぐ必要がある。従って、素子内の給電線路や終端線路の引き回しが長くなり、給電線路や終端線路と半導体層との間の絶縁膜に大きな寄生容量が生じる。この結果、周波数特性が劣化するという問題があった。
【0006】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は周波数特性の劣化を防ぐことができる光デバイスを得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光デバイスは、基板と、前記基板上に設けられ、入力光を第1及び第2の入力光に分波する光分波器と、前記基板上に設けられ、前記第1及び第2の入力光をそれぞれ変調する第1及び第2のマッハツェンダ光変調器と、前記基板上に設けられ、前記第1及び第2のマッハツェンダ光変調器により変調された光を合波する光合波器とを備え、前記第1のマッハツェンダ光変調器は、2つの第1の光導波路と、前記第1の光導波路に変調電圧を印加して前記第1の光導波路中の光の位相を変化させる第1の位相変調電極と、前記第1の位相変調電極の両端にそれぞれ接続され前記第1の位相変調電極に前記変調電圧を供給する第1の給電線路及び第1の終端線路とを有し、前記第2のマッハツェンダ光変調器は、2つの第2の光導波路と、前記第2の光導波路に変調電圧を印加して前記第2の光導波路中の光の位相を変化させる第2の位相変調電極と、前記第2の位相変調電極の両端にそれぞれ接続され前記第2の位相変調電極に前記変調電圧を供給する第2の給電線路及び第2の終端線路とを有し、前記第1及び第2の給電線路と前記第1及び第2の終端線路は、それぞれ前記基板の周辺部に引き出され、前記第1の位相変調電極と前記第2の位相変調電極は、前記第1及び第2の光導波路の延在方向に対して垂直な方向から見て互いに重ならない。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、周波数特性の劣化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1に係る光デバイスを示す上面図である。
【図2】図1のI−IIに沿った面図である。
【図3】比較例に係る光デバイスを示す上面図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る光デバイスを示す上面図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係る光デバイスを示す上面図である。
【図6】本発明の実施の形態4に係る光デバイスを示す上面図である。
【図7】本発明の実施の形態5に係る光デバイスを示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係る光デバイスについて図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る光デバイスを示す上面図である。n型InP基板1上に、光分波器2、マッハツェンダ光変調器3,4、及び光合波器5が設けられている。光分波器2は入力光を第1及び第2の入力光に分波する。マッハツェンダ光変調器3,4は、第1及び第2の入力光をそれぞれ変調する。光合波器5は、マッハツェンダ光変調器3,4により変調された光を合波する。
【0012】
マッハツェンダ光変調器3は、光分波器5、2つの光導波路6a,6b、光合波器7を有する。位相変調電極8a,8bがそれぞれ光導波路6a,6bに変調電圧を印加して光導波路6a,6b中の光の位相を変化させる。給電線路9a及び終端線路10aが位相変調電極8aの両端にそれぞれ接続され、位相変調電極8aに変調電圧を供給する。給電線路9b及び終端線路10bが位相変調電極8bの両端にそれぞれ接続され、位相変調電極8bに変調電圧を供給する。
【0013】
マッハツェンダ光変調器4は、光分波器11、2つの光導波路12a,12b、光合波器13を有する。位相変調電極14a,14bがそれぞれ光導波路12a,12bに変調電圧を印加して光導波路12a,12b中の光の位相を変化させる。給電線路15a及び終端線路16aが位相変調電極14aの両端にそれぞれ接続され、位相変調電極14aに変調電圧を供給する。給電線路15b及び終端線路16bが位相変調電極14bの両端にそれぞれ接続され、位相変調電極14bに変調電圧を供給する。給電線路9a,9b,15a,15bと終端線路10a,10b,16a,16bは、それぞれn型InP基板1の周辺部に引き出される。
【0014】
ここで、マッハツェンダ光変調器3とマッハツェンダ光変調器4は、光導波路6a,6b,12a,12bの延在方向にずれて配置されている。このため、位相変調電極8a,8bと位相変調電極14a,14bは、光導波路6a,6b,12a,12bの延在方向に対して垂直な方向から見て互いに重ならない。
【0015】
光分波器2とマッハツェンダ光変調器3との間に光入力導波路17が接続されている。マッハツェンダ光変調器4と光合波器5との間に光出力導波路18が接続されている。位相調整電極19は、光入力導波路17に直流電圧を印加して光入力導波路17中の光の位相を変化させる。位相調整電極20は、光出力導波路18に直流電圧を印加して光出力導波路18中の光の位相を変化させる。同様に、光分波器5と位相変調電極8aの間の光導波路に位相調整電極21が設けられ、位相変調電極14bと光合波器13の間の光導波路に位相調整電極22が設けられている。
【0016】
図2は、図1のI−IIに沿った面図である。n型InP基板1上に、n型InPクラッド層23、アンドープInGaAsP多重量子井戸活性層24、アンドープInPクラッド層25、p型InPクラッド層26、p型InGaAsP−BDR層27、p型InGaAsコンタクト層28が順番に積層されている。これらの半導体層をSiN絶縁膜29が覆っている。SiN絶縁膜29は半導体層に形成されたリッジの頂上部に開口を有する。この開口を介してp型InGaAsコンタクト層28にアノード電極30が接続されている。n型InP基板1の下面にカソード電極31が接続されている。ここでは、アノード電極30は位相変調電極8aである。
【0017】
続いて、本実施の形態の効果を比較例と比較して説明する。図3は、比較例に係る光デバイスを示す上面図である。比較例では、マッハツェンダ光変調器3とマッハツェンダ光変調器4が横に並んでいる。従って、位相変調電極8a,8bと位相変調電極14a,14bは、互いに併走し、光導波路6a,6b,12a,12bの延在方向に対して垂直な方向から見て互いに重なっている。このため、給電線路9a,9b,15a,15bと終端線路10a,10b,16a,16bをn型InP基板1の周辺部に引き出す際に、給電線路9a,9b,15a,15bや終端線路10a,10b,16a,16bが最大で3つの光導波路を跨ぐ必要がある。従って、素子内の給電線路9a,9b,15a,15bや終端線路10a,10b,16a,16bの引き回しが長くなり、給電線路9a,9b,15a,15bや終端線路10a,10b,16a,16bと半導体層間のSiN絶縁膜29に大きな寄生容量が生じる。この結果、周波数特性が劣化する。
【0018】
一方、本実施の形態では、位相変調電極8a,8bと位相変調電極14a,14bは、互いに併走せず、光導波路6a,6b,12a,12bの延在方向に対して垂直な方向から見て互いに重ならない。このため、一方のマッハツェンダ光変調器の給電線路や終端線路を、他方のマッハツェンダ光変調器の上を経由せずにn型InP基板1の周辺部に引き出すことができる。従って、給電線路9a,9b,15a,15bや終端線路10a,10b,16a,16bの引き回しを短くすることができる。この結果、給電線路9a,9b,15a,15bや終端線路10a,10b,16a,16bの寄生容量に起因する周波数特性の劣化を防ぐことができる。
【0019】
また、素子内を併走する光導波路が比較例では最大4本であるが、本実施の形態では、最大3本に減少される。このため、素子の幅を狭くすることができ、素子の低コスト化及び省資源化が可能となる。
【0020】
また、本実施の形態では、光分波器2とマッハツェンダ光変調器3との間の光入力導波路17に位相調整電極19を設け、マッハツェンダ光変調器4と光合波器5との間の光出力導波路18に位相調整電極20を設けている。これにより、位相調整電極19,20のために、別途導波路上のスペースを設ける必要がなくなるので、素子の長さを短くすることができる。
【0021】
なお、本実施の形態では活性層をアンドープInGaAsP多重量子井戸で構成したが、これに限らず、AlGaInAs多重量子井戸、InGaAsPバルク、AlGaInAsバルクなどで構成してもよい。
【0022】
実施の形態2.
図4は、本発明の実施の形態2に係る光デバイスを示す上面図である。給電線路9a,9b,15a,15bと終端線路10a,10b,16a,16bはそれぞれn型InP基板1の同じ側に引き出されている。これにより、実施の形態1と同様の効果を得ることができ、かつ集積化により素子の低コスト化及び省資源化が可能となる。
【0023】
実施の形態3.
図5は、本発明の実施の形態3に係る光デバイスを示す上面図である。発光素子32と光増幅器33がn型InP基板1上に集積されている。発光素子32はレーザダイオードアレイ34と、それらの出力光を合波する光合波器35とを有する。光増幅器33は発光素子32から出射された光を増幅して光分波器2に出力する。これにより、実施の形態1と同様の効果を得ることができ、かつ集積化により素子の低コスト化及び省資源化が可能となる。なお、発光素子32として単体のレーザダイオードを用いてもよい。
【0024】
実施の形態4.
図6は、本発明の実施の形態4に係る光デバイスを示す上面図である。実施の形態3の構成に加えて、RZ(Return to Zero)変調用マッハツェンダ光変調器36がn型InP基板1上に集積されている。RZ変調用マッハツェンダ光変調器36は光合波器5の出力光を変調する。これにより、実施の形態1と同様の効果を得ることができ、かつ集積化により素子の低コスト化及び省資源化が可能となる。
【0025】
実施の形態5.
図7は、本発明の実施の形態5に係る光デバイスを示す上面図である。実施の形態4の構成に加えて、導波路内の光強度をモニタする受光部37,38がn型InP基板1上に集積されている。受光部37は光合波器5の出力光の強度をモニタする。受光部38はRZ変調用マッハツェンダ光変調器36の出力光の強度をモニタする。これにより、実施の形態1と同様の効果を得ることができ、かつ集積化により素子の低コスト化及び省資源化が可能となる。
【符号の説明】
【0026】
1 n型InP基板
2 光分波器
3 マッハツェンダ光変調器(第1のマッハツェンダ光変調器)
4 マッハツェンダ光変調器(第2のマッハツェンダ光変調器)
5 光合波器
6a,6b 光導波路(第1の光導波路)
8a,8b 位相変調電極(第1の位相変調電極)
9a,9b 給電線路(第1の給電線路)
10a,10b 終端線路(第1の終端線路)
12a,12b 光導波路(第2の光導波路)
14a,14b 位相変調電極(第2の位相変調電極)
15a,15b 給電線路(第2の給電線路)
16a,16b 終端線路(第2の終端線路)
17 光入力導波路
18 光出力導波路
19 位相調整電極(第1の位相調整電極)
20 位相調整電極(第2の位相調整電極)
32 発光素子
33 光増幅器
36 RZ変調用マッハツェンダ光変調器(光変調器)
37,38 受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられ、入力光を第1及び第2の入力光に分波する光分波器と、
前記基板上に設けられ、前記第1及び第2の入力光をそれぞれ変調する第1及び第2のマッハツェンダ光変調器と、
前記基板上に設けられ、前記第1及び第2のマッハツェンダ光変調器により変調された光を合波する光合波器とを備え、
前記第1のマッハツェンダ光変調器は、2つの第1の光導波路と、前記第1の光導波路に変調電圧を印加して前記第1の光導波路中の光の位相を変化させる第1の位相変調電極と、前記第1の位相変調電極の両端にそれぞれ接続され前記第1の位相変調電極に前記変調電圧を供給する第1の給電線路及び第1の終端線路とを有し、
前記第2のマッハツェンダ光変調器は、2つの第2の光導波路と、前記第2の光導波路に変調電圧を印加して前記第2の光導波路中の光の位相を変化させる第2の位相変調電極と、前記第2の位相変調電極の両端にそれぞれ接続され前記第2の位相変調電極に前記変調電圧を供給する第2の給電線路及び第2の終端線路とを有し、
前記第1及び第2の給電線路と前記第1及び第2の終端線路は、それぞれ前記基板の周辺部に引き出され、
前記第1の位相変調電極と前記第2の位相変調電極は、前記第1及び第2の光導波路の延在方向に対して垂直な方向から見て互いに重ならないことを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記光分波器と前記第1のマッハツェンダ光変調器との間に接続された光入力導波路と、
前記第2のマッハツェンダ光変調器と前記光合波器との間に接続された光出力導波路と、
前記光入力導波路に直流電圧を印加して前記光入力導波路中の光の位相を変化させる第1の位相調整電極と、
前記光出力導波路に直流電圧を印加して前記光出力導波路中の光の位相を変化させる第2の位相調整電極とを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記第1及び第2の給電線路と前記第1及び第2の終端線路は、それぞれ前記基板の同じ側に引き出されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記基板上に集積された発光素子と、
前記基板上に集積され、前記発光素子から出射された光を増幅して前記光分波器に出力する光増幅器とを更に備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光デバイス。
【請求項5】
前記基板上に集積され、前記光合波器の出力光を変調する光変調器を更に備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の光デバイス。
【請求項6】
前記基板上に集積され、前記光合波器の出力光の強度をモニタする受光部を更に備えることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の光デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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