説明

光パターン照射方法、ハーフトーン位相シフトマスク及びハーフトーン位相シフトマスクブランク

【解決手段】透明基板と、遷移金属、ケイ素、窒素及び酸素を含有する材料からなるハーフトーン位相シフト膜パターンとを有し、ハーフトーン位相シフト膜パターンの組成が、遷移金属とケイ素との原子比(Met/Si)が0.18以上0.25以下、窒素含有率が25原子%以上50原子%以下、かつ酸素含有率が5原子%以上20原子%以下であり、累積10kJ/cm2以上のArFエキシマレーザー光が照射されたハーフトーン位相シフトマスクを用い、ArFエキシマレーザー光を光源として、光パターンを照射する。
【効果】従来と比べて、光パターンの大幅なパターン寸法変動劣化なしに、光リソグラフィーにおける光パターン照射を長時間実施することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路等の製造などに適用されるフォトマスクを用いた光パターン照射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の用途に用いられる半導体集積回路は、集積度の向上や電力消費量の低減のため、より微細な回路設計が行われるようになってきている。また、これに伴い、回路を形成するためのフォトマスクを用いたリソグラフィー技術においても、より微細な像を得るため、露光光源に、より短波長のものが使われるようになり、現在の最先端の実用加工工程では、露光光源は、KrFエキシマレーザー光(248nm)からArFエキシマレーザー光(193nm)に移行している。
【0003】
ところが、より高いエネルギーのArFエキシマレーザー光を使うことにより、KrFエキシマレーザー光では見られなかったマスクダメージが生じることが判明した。その1つが、フォトマスクを連続使用すると、フォトマスク上に異物状の成長欠陥が発生する問題である。この成長欠陥は、ヘイズと呼ばれ、原因は、当初は、マスクパターン表面における硫酸アンモニウム結晶の成長と考えられていたが、現在では、有機物が関与するものも考えられるようになってきている。
【0004】
ヘイズの問題の対策として、例えば、特開2008−276002号公報(特許文献1)には、フォトマスクに対してArFエキシマレーザー光を長時間照射したとき発生する成長欠陥に対し、所定の段階でフォトマスクを洗浄することにより、フォトマスクの継続使用ができることが開示されている。また、特開2010−156880号公報(特許文献2)には、フォトマスクブランクの表面を酸化処理することで、ヘイズの発生が抑制されることが開示されている。
【0005】
ところが、パターン転写におけるArFエキシマレーザー光の露光照射量の増加に伴い、ヘイズとは異なるダメージがフォトマスクに生じ、累積の照射エネルギー量に応じてマスクのパターン線幅が変化することが報告されている(Thomas Faure et al., “Characterization of binary mask and attenuated phase shift mask blanks for 32nm mask fabrication”, Proc. Of SPIE, vol. 7122, pp712209-1〜712209-12(非特許文献1))。これは、ArFエキシマレーザー光を長時間照射すると、累積照射エネルギー量が大きくなり、パターン材質の酸化物と考えられる物質による層が膜パターンの外側に成長し、パターン幅が変化してしまう問題である。また、このダメージを受けたマスクは、前述のヘイズの除去に用いるSC−1(アンモニア水/過酸化水素水)洗浄や、硫酸/過酸化水素水による洗浄では回復しないことが示されており、原因を全く別にすると考えられる。
【0006】
更に、前記報告によれば、回路のパターン露光において、焦点深度を伸ばすために有用なマスク技術であるハーフトーン位相シフトマスクでは、特に、前記ArFエキシマレーザー光の照射によるMoSi系材料膜等の遷移金属ケイ素系材料膜の変質を伴うパターン寸法変動による劣化(以下、パターン寸法変動劣化と呼ぶ)が大きいことが指摘されている。そこで、高価なフォトマスクを長時間使用するためには、ArFエキシマレーザー光の照射によるパターン寸法変動劣化への対処が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−276002号公報
【特許文献2】特開2010−156880号公報
【特許文献3】特開平7−140635号公報
【特許文献4】特開平10−171096号公報
【特許文献5】特開2004−133029号公報
【特許文献6】特開平7−181664号公報
【特許文献7】特開平4−125642号公報
【特許文献8】特開2007−33469号公報
【特許文献9】特開2007−233179号公報
【特許文献10】特開2007−241065号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Thomas Faure et al., “Characterization of binary mask and attenuated phase shift mask blanks for 32nm mask fabrication”, Proc. Of SPIE, vol. 7122, pp712209-1〜712209-12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ArFエキシマレーザー光の照射によるパターン寸法変動劣化は、前記Thomas Faureらの報告(非特許文献1)で明らかにされているとおり、ドライエアー雰囲気で光を照射した場合には生じにくいものであり、寸法変動劣化を防止するための新たな対処として、ドライエアー中で露光を行う方法が考えられる。しかし、ドライエアー雰囲気による制御は、付加装置を必要とする他、静電気対策等が新たに必要となるため、コストアップにつながる。そこで、湿度の完全除去を行わない、常用の雰囲気(例えば、湿度50%程度)による長時間の露光を可能とするべく、フォトマスクの膜材料の改良を試みた。
【0010】
ArFエキシマレーザー光を光源とするリソグラフィーに用いるフォトマスクでは、ハーフトーン位相シフトマスクにおいては、遷移金属を含有するケイ素系材料が用いられ、通常、モリブデンを含有するケイ素系材料が用いられている。このケイ素系材料の主たる構成元素は、遷移金属とケイ素であり、更に、軽元素として窒素及び/又は酸素を含有するもの(例えば、特開平7−140635号公報(特許文献3))、更に、炭素や水素等の元素が少量加えられたもの(例えば、特開平10−171096号公報(特許文献4))がある。遷移金属としては、Mo、Zr、Ta、W、Ti等が用いられ、特に、Moが一般的に用いられる(例えば、特開平7−140635号公報(特許文献3))が、更に、第2の遷移金属が加えられる場合もある(特開2004−133029号公報(特許文献5))。また、遮光膜においても、遷移金属を含有するケイ素系材料が用いられ、通常、モリブデンを含有するケイ素系材料が用いられるようになってきている。
【0011】
従来のハーフトーン位相シフト膜では、前述した材料を用いて、露光光の位相を変化させつつ必要な減衰量を得ると共に、膜に高い屈折率をもたせるために、多量の窒素を含有させ、また、最適な光学物性や化学特性を得るために、酸素を必要量加える設計が好ましいとされた(例えば、特開平7−181664号公報(特許文献6))。特に、ArFエキシマレーザー光用の膜材料には、KrFエキシマレーザー光用のものよりも多量の窒素を含有させ、更に、必要に応じて比較的少量の酸素を添加することにより、要求される物理特性を得ている。ところが、このような遷移金属ケイ素系材料を用いたフォトマスクに高エネルギー光を多量に照射した場合、高エネルギー光の照射によるパターン寸法変動劣化が大きく、フォトマスクの使用寿命が、要求されるものより短いことが判明した。
【0012】
また、フォトマスクブランクをフォトマスクに加工した際、設計どおりに遮光性膜材料が除去されていない欠陥(黒欠陥)が発生する問題がある。フォトマスクは長時間のリソグラフィー工程を経て製造されるものであるため、このような黒欠陥ができてしまった場合にも、修正を行って使用可能なフォトマスクにできることが望ましい。
【0013】
ケイ素系材料膜を局所的にエッチングして黒欠陥を除去する有用な技術としてフッ素による電子線欠陥修正法(特開平4−125642号公報(特許文献7))がある。しかし、遷移金属の含有量が少ない遷移金属ケイ素系材料からなるハーフトーン位相シフト膜、遮光膜等の光学膜の多くは、このような方法による黒欠陥の修正が困難である。これは、フッ素含有ガス雰囲気で高エネルギー線をビーム照射してフッ素ラジカルを発生させて黒欠陥を除去するマスクパターンの欠陥修正を行おうとすると、基板である酸化ケイ素との間で十分なエッチング選択比が得られない場合が多く、黒欠陥を剥離しようとすると、基板も同時にエッチングされてしまい、設定した位相差からずれが生じてしまうためである。
【0014】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、ArFエキシマレーザー光等の従来に比べて高エネルギーの短波長光を用いてパターン露光を行う際、累積照射エネルギー量が多い場合にあっても、照射光によるフォトマスクの膜質変化を伴うパターン寸法変動劣化が抑制されると共に、黒欠陥の修正時には、フッ素による電子線欠陥修正法でのエッチングに対し基板との間に十分な選択比が確保されたハーフトーン位相シフト膜パターンを有するハーフトーン位相シフトマスクを用いた光パターン照射方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、ハーフトーン位相シフト膜等として用いる遷移金属を含有するケイ素系材料(遷移金属ケイ素系材料)として、フォトマスクを用いた露光において通常適用される、湿度を有する管理された雰囲気下においてArFエキシマレーザー光を照射しても、遷移金属ケイ素系材料膜の変質を伴うパターン寸法変動劣化が少なく、また、前述した黒欠陥の修正のためのエッチングが可能である材料の開発を目指した。
【0016】
そこで、本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、窒素及び酸素を含有する遷移金属ケイ素系材料について、遷移金属、ケイ素、窒素及び酸素の含有率を種々変化させて遷移金属ケイ素系材料膜を作製し、ArFエキシマレーザー光を累積して照射した際の、フォトマスクのパターン寸法変動劣化を比較したところ、窒素及び酸素の含有比の違いがパターン寸法変動劣化に主に影響を与えるが、ハーフトーン位相シフト膜が要求される機能を満たす範囲内で、窒素及び酸素の含有率を所定の範囲とした場合には、ケイ素に対する遷移金属比を所定の比率以下とすることによって、パターン寸法変動劣化が抑制でき、また、このような組成の材料であれば、基板との間のエッチング選択比も確保できることから、フッ素含有ガス雰囲気で高エネルギー線をビーム照射してフッ素ラジカルを発生させて黒欠陥を除去するマスクパターンの欠陥修正を適用できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0017】
従って、本発明は、以下の光パターン照射方法を提供する。
請求項1:
ハーフトーン位相シフトマスクをフォトマスクとして用い、ArFエキシマレーザー光を光源として、光パターンを露光対象であるレジスト膜に照射する光パターン照射方法において、
前記フォトマスクとして、累積10kJ/cm2以上のArFエキシマレーザー光が照射されたハーフトーン位相シフトマスクを適用する光パターン照射方法であって、
前記ハーフトーン位相シフトマスクが、
透明基板と、
遷移金属、ケイ素、窒素及び酸素を含有する材料からなるハーフトーン位相シフト膜パターンとを有し、
前記ハーフトーン位相シフト膜パターンの組成が、前記透明基板から離間する側の表面から厚さ10nmの最表面部を除き、遷移金属とケイ素との原子比(Met/Si)が0.18以上0.25以下、窒素含有率が25原子%以上50原子%以下、かつ酸素含有率が5原子%以上20原子%以下であることを特徴とする光パターン照射方法。
請求項2:
前記ハーフトーン位相シフトマスクとして、フッ素系ガス雰囲気中での高エネルギー線ビーム照射による欠陥修正処理がなされているハーフトーン位相シフトマスクを適用することを特徴とする請求項1記載の光パターン照射方法。
請求項3:
前記遷移金属がモリブデンであることを特徴とする請求項1又は2記載の光パターン照射方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、遷移金属ケイ素系材料で形成されたハーフトーン位相シフト膜において、ArFエキシマレーザー光の累積照射によるMoSi系材料膜等の金属ケイ素系材料膜の変質を伴うパターン寸法変動劣化が許容範囲内に抑制され、ArFエキシマレーザー光の照射が累積した場合であっても、従来と比べて、光パターンの大幅なパターン寸法変動劣化なしに、また、露光装置のパターン露光条件を変更することなく、光リソグラフィーにおける光パターン照射を長時間実施することができる。更に、このような累積照射によるパターン寸法変動劣化が抑制されたハーフトーン位相シフト膜において、エッチング選択比が十分に確保されており、黒欠陥が発生した場合にも、フッ素含有ガス雰囲気下で電子線ビーム等の高エネルギー線を用いて行うフッ素ラジカルによるエッチングにより、欠陥修正が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実験例のMo/Si及び線幅変動量を示す図である。
【図2】実験例のMo/Si及び線幅変動量と、それらの回帰直線を示す図である。
【図3】実験例のMo/Si及び加工速度を示す図である。
【図4】実験例のMo/Si及び加工速度と、それらの回帰直線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明の光パターン照射方法に用いるハーフトーン位相シフトマスクを作製するためのハーフトーン位相シフトマスクブランクは、石英基板等の透明基板上に形成された遷移金属、ケイ素、窒素及び酸素を含有する材料からなる遷移金属ケイ素系材料膜を有する。
【0021】
この遷移金属ケイ素系材料膜は、ハーフトーン位相シフト膜であり、露光光であるArFエキシマレーザー光に対し、所定の位相差(一般的には約180°)と、所定の透過率(一般的には1〜40%)を与える膜である。
【0022】
まず、ArFエキシマレーザー光の累積照射エネルギー量が大きくなった場合に生じる寸法変動に対し、モリブデン等の遷移金属、ケイ素、窒素及び酸素を含有する材料が、水分がある状態でArFエキシマレーザー光を照射し続けることによって、どの程度寸法変動を起こすか、その組成依存性について検討し、遷移金属、ケイ素、窒素及び酸素を含有する種々の材料を作製し、ArFエキシマレーザーを照射した際に生じる寸法変動を測定して、材料組成と寸法変動との関係を評価した。
【0023】
ハーフトーン位相シフト膜として使用する材料に絞り込んだ場合には、透過率、屈折率等の光学的物性を満たすために、窒素含有率及び酸素含有率は、ある程度限られた範囲となる。そこで、窒素含有率が25原子%以上50原子%以下、かつ酸素含有率が5原子%以上20原子%以下の範囲で、更に、遷移金属含有率とケイ素含有率に着目し、ハーフトーン位相シフト膜に用いられる材料の中で、遷移金属のケイ素に対する原子比(Met/Si)と寸法変動との関係を評価したところ、(Met/Si)と寸法変動との間には相関があり、(Met/Si)が低いものが、寸法変動が小さい傾向があることが判明した。即ち、寸法変動の点では、ハーフトーン位相シフト膜を作製する際、(Met/Si)を低くすることによって、ArFエキシマレーザー光を照射した際に生じる寸法変動を小さくできることがわかった。
【0024】
ところが、遷移金属のケイ素に対する原子比(Met/Si)を低くした遷移金属ケイ素系材料の多くは、黒欠陥の最も好ましい修正方法である、フッ素含有ガス雰囲気で高エネルギー線をビーム照射してフッ素ラジカルを発生させて、ビーム照射した箇所の局所的なエッチングを行う方法を適用しようとすると、基板である酸化ケイ素との間のエッチング選択比が十分ではなく、このような修正方法が適用できないという新たな問題が判明した。
【0025】
そこで、前述のようなフッ素によるエッチング方法を適用した際に、ハーフトーン位相シフト膜と酸化ケイ素基板との間のエッチング選択比を高くするためには、ArFエキシマレーザー光用のハーフトーン位相シフト膜材料として必要な光学特性を満足する材料に限った場合、軽元素の含有率の変更によって、エッチング選択比を増大させることが難しいため、遷移金属とケイ素の比により、エッチング選択比を増大させることを考えた。
【0026】
そして、遷移金属含有率とケイ素含有率に着目し、ハーフトーン位相シフト膜に用いられる材料の中で、遷移金属のケイ素に対する原子比(Met/Si)とエッチング選択比との関係を、更に評価したところ、(Met/Si)とエッチング選択比との間には相関があり、(Met/Si)が高いものが、エッチング選択比が高い傾向があることが判明した。即ち、エッチング選択比の点では、ハーフトーン位相シフト膜を作製する際、(Met/Si)を高くすることによって、エッチング選択比を高くできることがわかった。
【0027】
本発明においては、これらの知見から、窒素含有率が25原子%以上50原子%以下、かつ酸素含有率が5原子%以上20原子%以下の範囲で、遷移金属のケイ素に対する原子比(Met/Si)が0.18以上、好ましくは0.19以上、0.25以下、好ましくは0.21以下である遷移金属ケイ素系材料を適用する。
【0028】
本発明の光パターン照射方法に用いるハーフトーン位相シフトマスク、及びそれを作製するためのハーフトーン位相シフトマスクブランクについて、以下に、より詳細に説明する。
【0029】
本発明のハーフトーン位相シフトマスクブランクは、透明基板と、遷移金属、ケイ素、窒素及び酸素を含有する材料(遷移金属ケイ素系材料)からなるハーフトーン位相シフト膜とを有する。このハーフトーン位相シフト膜の組成は、透明基板から離間する側の表面から厚さ10nmの最表面部を除き、遷移金属とケイ素との原子比(Met/Si)が0.18以上0.25以下、窒素含有率が25原子%以上50原子%以下、かつ酸素含有率が5原子%以上20原子%以下である。そして、本発明のハーフトーン位相シフトマスクは、透明基板と、前記ハーフトーン位相シフト膜がパターニングされたマスクパターンを有する。
【0030】
この遷移金属ケイ素系材料は、ArFエキシマレーザー光の照射によるパターン寸法変動が、累積10kJ/cm2照射した場合にも、線幅変動量は5nm以下、特に4nm以下に抑制され、また、石英基板との間で4以上、特に4.5以上のエッチング選択比となり、フッ素による電子線欠陥修正法を用いることができる。
【0031】
このハーフトーン位相シフト膜の透明基板から離間する側の表面から厚さ10nmの最表面部を除外する理由は、大気による酸化を受けて遷移金属ケイ素系材料膜の最表面部の酸化度が高くなる場合や、遷移金属ケイ素系材料膜の最表面部を、洗浄時の化学耐性や大気中での酸化に対して耐性をもたせるため、強制的に酸化処理する場合があることから、最表面部以外の部分が所定の組成範囲に入っていても、最表面部だけは範囲から外れてしまうことがあるためである。この程度の厚さであれば、パターン寸法変動劣化や欠陥修正に必要なエッチング選択性に大きな影響を与えない。
【0032】
最表面部以外が所定の組成範囲の遷移金属ケイ素系材料のハーフトーン位相シフト膜は、ArFエキシマレーザー光を長時間照射した場合、換言すれば、累積の照射量が多くなった場合であっても、パターン寸法変動劣化が抑制される。
【0033】
フォトマスクを用いた光パターン照射において今後採用されるプロセスでは、液浸露光等における経済性の観点から、フォトマスクは、累積の照射エネルギー量が10kJ/cm2程度までは、マスクパターンの寸法変動が許容値以下であることが求められており、22nmパターンルールによれば、その許容値は、概ね±5nm程度であり、好ましくは±4nmとされる。一方、フォトマスクを作製した際に発生する可能性がある黒欠陥をフッ素ラジカルによるエッチング方法により修正する場合、透明基板である酸化ケイ素基板(石英基板)にダメージを与えることなく修正を行うためには、ハーフトーン位相シフト膜と酸化ケイ素基板とのエッチング選択比が4以上である必要があり、4.5以上であることが好ましい。最表面部以外が所定の組成範囲の遷移金属ケイ素系材料であれば、これらの要求に対応することができる。
【0034】
ハーフトーン位相シフト膜は、位相差を約180°として設計する場合、ハーフトーン位相シフト膜全体の膜厚は50〜150nm、特に60〜90nm程度の範囲に適当な膜厚が見出される。また、光吸収能の高い層と光吸収能の低い層とを組み合わせて、各層の組成が均一な層で構成された多層で構成する場合、各層の厚さは、光吸収能の高い層を1〜30nm、特に5〜20nm、光吸収能の低い層を30〜120nm、特に40〜70nmとすることが好ましい。このような多層構成とする場合、薬品耐性を向上させるためには、光吸収能の高い層を透明基板に近い側に配置することが好ましい。この場合、検査波長に対する検出感度を向上させるために、2層の光吸収能の高い層で光吸収能の低い層を挟んだ3層構成であってもよく、透明基板側より順に、光吸収能の高い層と光吸収能の低い層とを交互に(なお、いずれの層が1層目であってもよい)4層以上積層した互層膜としてもよい。
【0035】
遷移金属ケイ素系材料膜を構成する遷移金属、ケイ素、窒素及び酸素を含有する材料として具体的には、遷移金属ケイ素酸窒化物、遷移金属ケイ素酸窒化炭化物などを挙げることができる。
【0036】
遷移金属としては、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ハフニウム、タンタル及びタングステンから選ばれる1種以上が好適であるが、特に、ドライエッチング加工性の点からモリブデンが好ましい。遷移金属の含有率は、遷移金属の含有率が高い場合、他の元素の含有率が相対的に低くなり、その結果、屈折率や透過率等の要求される光学特性を満たし、かつ所定の組成範囲に各元素の構成比を調整して設定することが難しくなる。そのため、遷移金属ケイ素系材料膜の最表面部以外において、遷移金属含有率は5原子%以上、特に6原子%以上で、12原子%以下、特に10原子%以下であることが好ましい。また、遷移金属ケイ素系材料膜の最表面部以外において、ケイ素含有率は30原子%以上、特に35原子%以上で、50原子%以下、特に45原子%以下であることが好ましい。
【0037】
遷移金属ケイ素系材料膜の最表面部以外において、酸素含有率は20原子%以下である。酸素が多すぎる場合には、フッ素系ガスを用いた高エネルギー線による欠陥修正法の適用に必要な、基板に対するエッチング選択比が低くなる。また、酸素含有率は5原子%以上である。酸素が少なすぎる場合には、必要な光学特性を得るためには、窒素又は遷移金属の含有量を増加する必要があるため、その結果、ArFエキシマレーザー光を長時間照射した場合のパターン寸法変動劣化が大きくなる。
【0038】
また、遷移金属ケイ素系材料膜の最表面部以外において、窒素含有率は25原子%以上、特に30原子%以上である。これは、所定の酸素含有率の範囲内で、必要な屈折率や透過率を得るためである。また、窒素含有率は50原子%以下である。窒素が多すぎる場合には、ArFエキシマレーザー光を長時間照射した場合のパターン変動劣化が大きくなる。
【0039】
本発明の遷移金属ケイ素系材料膜には、更に、少量の炭素、水素、希ガス等が含まれていてもよいが、これらの元素の含有率は5原子%以下であることが好ましく、特に、炭素は不純物量を超えて含有していないことがより好ましい。
【0040】
本発明の遷移金属ケイ素系材料膜は、公知の方法により成膜することができるが、均質性に優れた膜が容易に得られる方法として、スパッタリングによる方法を用いることが好ましく、DCスパッタリング、RFスパッタリングのいずれの方法をも用いることができる。
【0041】
ターゲットとスパッタガスは、層構成や組成に応じて選択される。ターゲットとしては、遷移金属とケイ素の含有比を調整したターゲットを単独で使用してもよい。また、遷移金属ターゲット、ケイ素ターゲット、及び遷移金属とケイ素とからなるターゲットから適宜選択して、複数のターゲットのスパッタリング面積をターゲット間で変えること、又はターゲットに対する印加電力を複数のターゲット間で調整することにより、遷移金属とケイ素の比を調整してもよい。特に、光吸収能の高い層と光吸収能の低い層とを組み合わせた多層構成とする場合、光吸収能の高い層と光吸収能の低い層の遷移金属の含有率を、前述した方法で変えることができる。光吸収能の低い層の遷移金属の含有率を低くすることにより、必要とする光学特性に合わせた遷移金属以外の元素の含有率の設定が容易になる。
【0042】
また、窒素及び酸素の含有率は、スパッタリングガスに反応性ガスとして、窒素を含むガス及び酸素を含むガスを用い、適宜導入量を調整して反応性スパッタリングすることで、調整することができる。また、その他の軽元素、例えば、炭素や水素などを加える場合も同様である。反応性ガスとしては、窒素ガス、酸素ガス、窒素酸化物ガス、炭素酸化物ガス、炭化水素ガス、水素ガス等を用いることができる。更に、希ガスとして、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス等を用いることもできる。
【0043】
ハーフトーン位相シフト膜の最表面部には、前述のように膜を安定化させるために表面酸化層を設けることができる。表面酸化層を形成する方法として、具体的には、大気酸化(自然酸化)による酸化の他、強制的に酸化処理する方法としては、遷移金属ケイ素系材料膜をオゾンガスやオゾン水により処理する方法や、酸素存在雰囲気中で、オーブン加熱、ランプアニール、レーザー加熱により、300℃程度に加熱する方法などを挙げることができる。この最表面部の表面酸化層の厚さは10nm以下であり、通常、1nm以上で酸化層としての効果が得られる。この程度の厚さの表面酸化層であれば、ArFエキシマレーザー光の照射によるパターン寸法変動劣化に、実質的に影響しない。表面酸化層は、スパッタリング工程で酸素量を増やして形成することもできるが、欠陥のより少ない層とするためには、ハーフトーン位相シフト膜を所定の組成で成膜した後に、前述した大気酸化による酸化や、強制酸化処理により、表面酸化層を形成することが好ましい。
【0044】
本発明の露光方法に用いるハーフトーン位相シフトマスクを作製するためのハーフトーン位相シフトマスクブランクには、通常のハーフトーン位相シフトマスクブランクと同様、ハーフトーン位相シフト膜上に、完全に遮光する領域を設けるために、更に、遮光膜を設けることができる。この遮光膜の材料としては、種々の材料が適用可能であるが、エッチング加工用の補助膜としても利用可能な、クロム系材料による膜を用いることが好ましい。それらの膜構成及び材料については多数の報告があるが(例えば、特開2007−33469号公報(特許文献8)や特開2007−233179号公報(特許文献9)等)、好ましい遮光膜の膜構成としては、例えば、Cr系等の遮光膜を設け、更に、遮光膜からの反射を低減させるCr系等の反射防止膜を設けたものなどが挙げられる。遮光膜及び反射防止膜は、いずれも単層で構成しても、多層で構成してもよい。Cr系遮光膜やCr系反射防止膜の材料としては、クロム単体、クロム酸化物(CrO)、クロム窒化物(CrN)、クロム炭化物(CrC)、クロム酸化窒化物(CrON)、クロム酸化炭化物(CrOC)、クロム窒化炭化物(CrNC)、クロム酸化窒化炭化物(CrONC)などが挙げられる。
【0045】
このようなCr系遮光膜及びCr系反射防止膜は、クロム単体ターゲット、又はクロムに酸素、窒素及び炭素から選ばれるいずれか1種又は2種以上を添加したターゲットを用い、Ar、He、Ne、Kr等の希ガスに、成膜する膜の組成に応じて、酸素含有ガス、窒素含有ガス及び炭素含有ガスから選ばれるガスを適宜添加したスパッタガスを用いた反応性スパッタリングにより成膜することができる。
【0046】
また、遮光膜を設ける場合の別態様として、ハーフトーン位相シフト膜上に、加工補助膜として、特開2007−241065号公報(特許文献10)で開示されているようなクロム系材料を用いた加工補助膜(エッチングストッパー膜)を加え、その上に遷移金属ケイ素系化合物による遮光膜を設けることもできる。
【0047】
ハーフトーン位相シフトマスクブランクは、常法によりハーフトーン位相シフトマスクとすることができる。例えば、ハーフトーン位相シフト膜上にクロム系材料膜による遮光膜や反射防止膜が形成されているハーフトーン位相シフトマスクブランクでは、例えば、下記の工程が用いられる。
【0048】
まず、ハーフトーン位相シフトマスクブランク上に電子線レジスト膜を成膜し、電子線によるパターン照射を行った後、所定の現像操作によってレジストパターンを得る。次に、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングによりクロム系材料膜にレジストパターンを転写する。更に、得られたクロム系材料パターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングによりハーフトーン位相シフト膜にパターンを転写する。そして、遮光膜として残すべきクロム系材料膜がある場合には、その部分を保護するレジストパターンを形成した後、不要なクロム系材料膜を、再び、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより剥離し、レジスト材料を常法に従って除去することにより、ハーフトーン位相シフトマスクを得ることができる。
【0049】
ハーフトーン位相シフトマスクに黒欠陥が発生した際にも、本発明のハーフトーン位相シフトマスクブランクから製造されたハーフトーン位相シフトマスクは、フッ素含有ガス存在下の高エネルギー線ビーム照射によるフッ素ラジカルを用いたエッチングによる欠陥修正法が適用可能である。この場合のエッチング方法として、フッ素による電子線欠陥修正技術は、特に有効に用いることができる。
【0050】
ここで好適に用いられるフッ素による電子線欠陥修正技術は、特開平4−125642号公報(特許文献7)で開示されており、フッ素系ガスでエッチング可能な被修正膜に対して、局部的にフッ素系ドライエッチングを行う技術である。この方法では、修正を必要とするフォトマスクに、XeF2ガスのようなフッ素含有ガスを供給することによって被修正膜表面にXeF2ガス等のフッ素含有ガス分子を吸着させる。次に、エッチングすべき修正箇所に電子線ビームを照射すると、吸着していたフッ素含有ガス分子からフッ素が分離する。更に、生成したフッ素が修正箇所で反応し、遷移金属フッ化物及びケイ素フッ化物が生成し、生成物が揮発することによってエッチングされる。
【0051】
ここで用いられるフッ素含有ガスとしては、公知のフッ素系ドライエッチング用ガスがいずれも使用可能であるが、例えば、CF4、CHF3、C26等のフッ化炭素やフッ化炭化水素ガス、XeF2等が好ましく用いられ、これらのガスを単独で又は混合して用いてもよく、更に、酸素ガスを混合して用いてもよい。エッチングガスの吸着は、例えば、真空チャンバー内に修正するフォトマスクを入れ、被修正膜に一定量のガスを一定時間吹き付ける等の方法で行うことができる。また、フッ素含有ガスの吸着量を多くするために、フォトマスクを冷却してもよい。エッチング条件は、一般的には、チャンバー内圧力は0.13Pa以下、アシストガス配管圧力は50Pa以上3000Pa以下、ビーム加速電圧は0.5keV以上20keV以下である。この修正方法を実施するための装置として、現在最も好ましく用いられるものとして、カールツァイス社製の電子ビーム欠陥修正装置(MeRiT)がある。
【0052】
本発明の光パターン照射では、ハーフトーン位相シフトマスクブランクより製造されたハーフトーン位相シフトマスクを用い、遷移金属ケイ素系材料膜パターンにArFエキシマレーザー光を照射して、ハーフトーン位相シフトマスクが有するマスクパターンを露光対象であるレジスト膜に照射する。ArFエキシマレーザー光の照射はドライ条件による露光でも液浸露光でもよいが、実生産において比較的短時間に累積照射エネルギー量が上がってしまう、液浸露光により300mm以上のウェハーを被加工材料として、光パターンを照射する際に、特に有用である。
【0053】
ArFエキシマレーザー光が、遷移金属ケイ素系材料膜のマスクパターンに照射されることにより、露光に用いるマスクパターンの線幅が変化してしまうことは重大な問題である。パターン幅の許容限界は、マスクパターン、特に、適用されるパターンルールによって異なる。また、多少の変動であれば、条件を補正し、露光装置の照射条件を再設定して使用できる場合もある。本発明のハーフトーン位相シフトマスクを用いた場合、累積の照射エネルギー量が10kJ/cm2未満では、照射光によるパターン寸法変動劣化が問題となることはない。また、累積の照射エネルギー量が10kJ/cm2以上となった場合にも、照射光によるパターン寸法変動劣化は僅かであり、転写条件を再設定することなく光パターン照射を継続することができる。
【実施例】
【0054】
以下、実験例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実験例に制限されるものではない。
【0055】
[実験例1〜9]
MoSi2ターゲットとSiターゲットの2つのターゲットを設けた直流スパッタ装置を用い、スパッタガスとして、ArガスとO2ガスとN2ガスを用いて、石英基板上に、ハーフトーン位相シフト膜として、モリブデンと、ケイ素と、窒素又は窒素及び酸素とからなる単層の遷移金属ケイ素系材料膜(モリブデンケイ素系材料膜、膜厚約70nm)を、基板を30rpmで回転させながら成膜した。得られた11種の遷移金属ケイ素系材料膜の表面から10nmより内側の組成をESCAで分析した。
【0056】
次に、前記で得た遷移金属ケイ素系材料膜上に、Crをターゲットとして用い、ガス流量比Ar:N2:O2=1:2:1で、厚さ20nmのCrON層、Arガスのみで、厚さ7nmのCr層、及びガス流量比Ar:N2:O2=1:2:1で、厚さ20nmのCrON層を順に形成し、全体で厚さ47nmのCr系材料による遮光膜を成膜し、フォトマスクブランク(ハーフトーン位相シフトマスクブランク)を得た。
【0057】
次に、遮光膜の上に、電子線用ポジ型レジスト膜を成膜し、電子線パターン照射により、線幅0.1〜2μmのIso−Line、Iso−Space、Line&Spaceのモデルパターンを形成した。
【0058】
次に、レジストパターンをエッチングマスクとして、塩素系ドライエッチングによって遮光膜をエッチングし、更に、フッ素系ドライエッチングにより遷移金属ケイ素系材料膜をエッチングした。その後、遮光膜を塩素系ドライエッチングにより除去し、遷移金属ケイ素系材料膜のパターンを有するフォトマスク(ハーフトーン位相シフトマスク)を得た。
【0059】
前記で得たフォトマスクに、23℃、湿度40%の環境で、パルス幅200Hzで1パルス当たりのエネルギーが50〜200mJのArFエキシマレーザー光を、累積照射エネルギーが30kJ/cm2になるまで照射した(露光装置:ArFES−3500PM(リソテックジャパン社製)、光源:LPX Pro220(COHERENT社製))。
【0060】
次に、遷移金属ケイ素系材料膜パターンにおけるArFエキシマレーザー光の照射によるパターン寸法変動を、走査型電子顕微鏡(LWM9045(Vistec社製))を用いて観察し、線幅変動量として測定した。線幅はパターンの種類、サイズにかかわらず、いずれも時間に比例した変化量で増加した。
【0061】
各パターン及び線幅における線幅の変化量(増加量)の平均値から、実験例3の変化量(19nm)を1としたときの相対値と、前記平均値から算出した累積10kJ/cm2照射後に相当する線幅変動量を、成膜時に分析した各元素の含有率と共に表1に、Mo/Siに対する線幅変動量を図1に示す。また、窒素含有率が25原子%以上50原子%以下及び酸素含有率が5原子%以上20原子%以下でないもの(実験例8)を除いたものを図2に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
図2に示した8点に基づく最小二乗法による回帰分析により、下記の相関式が得られ、相関係数R2は0.96であった。この回帰直線を図2に併記する。
(線幅変動量(相対値))=3.70×(Met/Si)−0.15
【0064】
この相関式より、ArFエキシマレーザー光を累積で10kJ/cm2照射した際、許容される範囲の線幅変動の大きさ5nm以下を与える(Met/Si)は0.25以下、より好ましい線幅変動の大きさ4nm以下を与える(Met/Si)は0.21以下であり、窒素含有率が25原子%以上50原子%以下、酸素含有率が5原子%以上20原子%以下であり、遷移金属とケイ素の含有原子比(Met/Si)が0.25以下である遷移金属ケイ素系材料であれば、ArFエキシマレーザー光の照射によるパターン寸法変動が十分抑制され、累積10kJ/cm2照射した場合にも、線幅変動量は5nm以下に抑制されることがわかる。
【0065】
[実験例10〜21]
MoSi2ターゲットとSiターゲットの2つのターゲットを設けた直流スパッタ装置を用い、スパッタガスとして、ArガスとO2ガスとN2ガスを用いて、石英基板上に、ハーフトーン位相シフト膜として、モリブデンと、ケイ素と、窒素又は窒素及び酸素とからなる単層の遷移金属ケイ素系材料膜(モリブデンケイ素系材料膜、膜厚約70nm)を、基板を30rpmで回転させながら成膜した。得られた14種の遷移金属ケイ素系材料膜の表面から10nmより内側の組成をESCAで分析した。
【0066】
成膜された遷移金属ケイ素系材料膜に対し、電子ビーム欠陥修正装置MeRiT(カールツァイス社製)を用い、0.13Pa以下の真空度に調整されたチャンバーに、フッ化キセノンガスをエッチングのためのアシストガスとして修正部近傍に吐出し、エッチングを行って、フッ素による電子線欠陥修正技術によりエッチング速度を求め、石英基板のエッチング速度と比較することによって、エッチング選択比を求めた。
【0067】
得られたエッチング選択比を、成膜時に分析した各元素の含有率と共に表2に、Mo/Siに対するエッチング選択比(加工速度(相対値))を図3に示す。また、窒素含有率が25原子%以上50原子%以下及び酸素含有率が5原子%以上20原子%以下でないもの(実験例13及び16〜18)を除いたものを図4に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
図4に示した8点に基づく最小二乗法による回帰分析により、下記の相関式が得られ、相関係数R2は0.92であった。この回帰直線を図4に併記する。
(エッチング選択比)=45.12×(Met/Si)−3.76
【0070】
この相関式より、フッ素含有ガス雰囲気で高エネルギー線をビーム照射してフッ素ラジカルを発生させて黒欠陥を除去するマスクパターンの欠陥修正を適用できる、石英基板との間でエッチング選択比4以上を与える(Met/Si)は0.18以上、より好ましいエッチング選択比4.5以上を与える(Met/Si)は0.19以上であり、窒素含有率が25原子%以上50原子%以下、酸素含有率が5原子%以上20原子%以下であり、遷移金属とケイ素の含有原子比(Met/Si)が0.18以上である遷移金属ケイ素系材料であれば、石英基板との間で4以上のエッチング選択比となり、フッ素による電子線欠陥修正法を用いることができる材料となることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハーフトーン位相シフトマスクをフォトマスクとして用い、ArFエキシマレーザー光を光源として、光パターンを露光対象であるレジスト膜に照射する光パターン照射方法において、
前記フォトマスクとして、累積10kJ/cm2以上のArFエキシマレーザー光が照射されたハーフトーン位相シフトマスクを適用する光パターン照射方法であって、
前記ハーフトーン位相シフトマスクが、
透明基板と、
遷移金属、ケイ素、窒素及び酸素を含有する材料からなるハーフトーン位相シフト膜パターンとを有し、
前記ハーフトーン位相シフト膜パターンの組成が、前記透明基板から離間する側の表面から厚さ10nmの最表面部を除き、遷移金属とケイ素との原子比(Met/Si)が0.18以上0.25以下、窒素含有率が25原子%以上50原子%以下、かつ酸素含有率が5原子%以上20原子%以下であることを特徴とする光パターン照射方法。
【請求項2】
前記ハーフトーン位相シフトマスクとして、フッ素系ガス雰囲気中での高エネルギー線ビーム照射による欠陥修正処理がなされているハーフトーン位相シフトマスクを適用することを特徴とする請求項1記載の光パターン照射方法。
【請求項3】
前記遷移金属がモリブデンであることを特徴とする請求項1又は2記載の光パターン照射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−109136(P2013−109136A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253743(P2011−253743)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】