説明

光ビーム偏向走査装置

【目的】光ビームを被走査体の所望の走査位置に正確且つ安定して導くことのできる光ビーム偏向走査装置を提供することを目的とする。
【構成】駆動回路52によって生成されたAOM駆動信号の周波数を周波数検出回路76で検出し、その周波数を所定の周波数とすべく制御データを周波数調整回路45で調整し、データラッチ回路44に供給する。前記データラッチ回路44は、前記のようにして調整された制御データを駆動回路52に供給し、前記駆動回路52は、所定の周波数からなるAOM駆動信号を生成して音響光学変調素子AOMに供給する。音響光学変調素子AOMは、光ビームLを前記AOM駆動信号に基づいて回折することにより、1次回折光L1 を得、この1次回折光L1をフイルムF上の所定の走査位置に導く。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、音響光学変調素子を所定の周波数からなる駆動信号により駆動し、得られた回折光により被走査体を走査する光ビーム偏向走査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、レーザプリンタ等の画像記録装置では、画像情報に応じて変調された光ビームを高速偏向するミラーによって偏向し被走査体上に導くことで、画像の記録を行っている。この場合、画像情報に応じて夫々変調された複数本の光ビームを被走査体上に同時に導くことで、記録速度を向上させるようにしたマルチビーム走査装置が知られている(特公平5−27086号公報参照)。
【0003】前記装置では、光ビームを変調する手段として、図6に示す音響光学変調素子AOMを用いている。前記音響光学変調素子AOMは、所定の周波数からなる駆動信号を圧電材料で形成されるトランスジューサ2に供給し、超音波媒質である結晶体4に前記各周波数に応じた超音波を発生させ、この超音波による前記結晶体4の媒質密度変動を回折格子として利用したものである。この場合、前記結晶体4は、入射した光ビームLを駆動信号の複数の周波数f1 、f2 、…に応じた異なる回折角度θ1 、θ2 、…の1次回折光L1 、L2 、…に変換して出力する。そして、これらの複数の1次回折光L1 、L2 、…を高速偏向するミラーによって偏向して被走査体上に同時に導くことにより、所望の画像の記録が行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、音響光学変調素子AOMによって生成された複数の1次回折光L1、L2 、…は、高速偏向するミラーの振動中心に対して同時に導くことは不可能であり、従って、偏向後の1次回折光L1 、L2 、…が前記ミラーと被走査体との間に配設される走査レンズの光軸から外れるため、前記被走査体上での1次回折光L1 、L2 、…の軌跡が湾曲することになる。また、前記ミラーは、組付誤差等に起因してウォブリングを生じることがあり、これによって前記軌跡が被走査体上で揺動する場合もある。
【0005】そこで、このような走査軌跡の変動を補正するため、前記従来技術(特公平5−27086号公報)では、音響光学変調素子AOMを駆動するための駆動信号を電圧制御発振器を用いて生成するとともに、前記電圧制御発振器の制御電圧を走査位置に応じて予め設定した補正データにより補正するようにしている。なお、一定走査内でのような高速な周波数の変化は、電圧制御発振器の制御電圧そのものを制御すれば可能であるが、周波数の安定化を図るためにPLL回路を使用した場合には、周波数変化の応答に時間がかかり、高速に周波数を変化させることができない。
【0006】しかしながら、前記電圧制御発振器の場合、環境温度の変動や構成素子の経時的な特性変化等に起因して、制御電圧に対する発振周波数が変動するため、前記のように走査線の軌跡の補正を行おうとしても被走査体の所望の位置に光ビームを正確に導くことができなくなる不具合がある。
【0007】本発明は、前記の不具合を解消するものであって、光ビームを被走査体の所望の走査位置に正確且つ安定して導くことのできる光ビーム偏向走査装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記の課題を解決するために、本発明は、1本の光ビームを射出する光源と、所定の周波数からなる駆動信号により駆動され、前記光ビームを前記周波数に対応した回折角度からなる光ビームとして射出する音響光学変調素子と、前記音響光学変調素子から射出された前記光ビームを偏向して被走査体に導く偏向手段と、前記駆動信号を生成し、前記音響光学変調素子を駆動する駆動手段と、前記駆動信号の周波数を検出する周波数検出手段と、前記周波数検出手段により検出された周波数を所定の周波数に調整する周波数調整手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】また、本発明は、1本の光ビームを射出する光源と、複数種の周波数からなる駆動信号により駆動され、前記光ビームを前記各周波数に対応した回折角度からなる複数本の光ビームに分岐して射出する音響光学変調素子と、前記音響光学変調素子から射出された前記複数本の光ビームを偏向して被走査体に導く偏向手段と、前記駆動信号を生成し、前記音響光学変調素子を駆動する駆動手段と、前記駆動信号の周波数を検出する周波数検出手段と、前記周波数検出手段により検出された周波数を所定の周波数に調整する周波数調整手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
【作用】本発明では、音響光学変調素子に対して所定の周波数からなる駆動信号を供給することで、所定の回折角度からなる回折光を得、前記回折光を被走査体に導くようにした光ビーム偏向走査装置において、前記駆動信号の周波数を周波数検出手段により検出し、検出された周波数を所定の周波数とすべく周波数調整手段により調整している。また、前記駆動信号が複数の周波数からなる場合には、前記各周波数を所定の周波数となるように調整している。この結果、前記被走査体の所定の位置に対して正確且つ安定して回折光を導くことができる。
【0011】
【実施例】図1は、本発明が適用される第1実施例である光ビーム偏向走査装置10の画像記録部12と、画像を記録する光ビームの制御を行う制御回路14との構成を示す。
【0012】画像記録部12は、記録用光学系として、画像を記録するための光ビームLを出力する記録用光源部16と、前記光ビームLから所定の回折角度θ1 を有した1次回折光L1 を生成するとともに、記録する画像情報に応じて前記1次回折光L1 を強度変調する音響光学変調素子AOMと、前記1次回折光L1 を集光する集光レンズ17と、前記1次回折光L1 を記録媒体であるフイルムFの主走査方向に対して偏向するレゾナントスキャナ18と、前記レゾナントスキャナ18により偏向された1次回折光L1 をフイルムFに対して集光する走査レンズ20とを有している。なお、前記フイルムFは、ドラム22とニップローラ24a、24bとの間に挟持された状態で、1次回折光L1 による主走査方向と直交する副走査方向に搬送される。
【0013】また、画像記録部12は、同期信号を生成するための同期信号生成光学系として、記録用光源部16の近傍に配置され、同期用の光ビームMを出力する同期用光源部26と、フイルムFの主走査方向と平行に配設された多数のスリット28を有し、前記レゾナントスキャナ18および前記走査レンズ20を介して前記光ビームMが供給される同期用基準板30と、前記同期用基準板30のスリット28を通過した光ビームMを受光し、その端部に配設したフォトセンサ32に導く集光ロッド34とを有している。
【0014】一方、制御回路14は、前記フォトセンサ32から供給される信号を波形成形し、必要に応じて逓倍することで同期信号を生成する同期信号生成部36を有しており、前記同期信号は、2値画像データ生成部38に供給されるとともに、ビーム位置検出回路40に供給される。前記2値画像データ生成部38は、外部から供給される多値画像データを網点画像を形成するための2値画像データに変換して出力する。前記ビーム位置検出回路40は、同期信号に基づき、1次回折光L1 のフイルムF上における主走査方向の走査位置(以下、主走査位置という)に対応したアドレス信号を生成し、補正データ記憶部42に供給する。
【0015】ここで、前記画像記録部12において、音響光学変調素子AOMからレゾナントスキャナ18に供給される1次回折光L1 は、前記レゾナントスキャナ18の組付誤差等に起因して生じるミラーのウォブリング等により、フイルムF上の副走査方向に対して揺動する場合がある。そこで、前記補正データ記憶部42には、前記1次回折光L1 の正規の副走査方向の位置(以下、副走査位置という)からのずれを主走査位置に応じて補正するための補正データΔ1(x) が格納されている。
【0016】また、制御回路14は、データラッチ回路44を有しており、前記データラッチ回路44には、1次回折光L1 をフイルムF上の所望の副走査位置に導くことのできる所定の制御データP1 がラッチされる。この制御データP1 は、後述する周波数調整回路45によって調整される。前記制御データP1 は、加算器48を介して音響光学変調素子AOMの駆動回路52に供給される。なお、前記加算器48には、補正データ記憶部42からの補正データΔ1(x) が加算される。
【0017】駆動回路52は、加算器48から供給される補正された制御データを夫々アナログ信号に変換するD/Aコンバータ54と、前記アナログ信号の電圧値に応じた設定周波数f1 からなるAOM駆動信号を生成する電圧制御発振器58と、前記AOM駆動信号を2値画像データ生成部38からの2値画像データに従ってON/OFF変調する変調器62と、ON/OFF変調されたAOM駆動信号のパワーを周波数f1 に応じて調整するパワー変調部66とを有し、前記パワー変調部66によって調整されたAOM駆動信号は、分配器69およびパワー変調部71を介して音響光学変調素子AOMに供給される。
【0018】なお、パワー変調部66は、回折角度θ1 に依存する1次回折光L1 の強度を調整するものであり、また、パワー変調部71は、レゾナントスキャナ18による1次回折光L1 の偏向速度の変動(主走査方向の両端部で遅く、中央部で速い)に起因して生じるフイルムF上の光エネルギの変動を調整ものである。前記パワー変調部71は、ビーム位置検出回路40からの主走査位置xを示すアドレス信号に基づき、パワー変調制御部73でその主走査位置に応じた制御信号を生成し、前記制御信号を変調器75に供給することで、駆動回路52からのAOM駆動信号の強度の調整を行う。
【0019】一方、分配器69は、駆動回路52からのAOM駆動信号を音響光学変調素子AOMに対して供給するとともに、周波数検出回路76に供給する。周波数検出回路76は、図2に示すように、高周波からなる前記AOM駆動信号を分周するプリスケーラ78と、基準信号発振器80と、前記基準信号発振器80からの基準信号に基づき、前記プリスケーラ78で分周されたAOM駆動信号の周波数をカウントする周波数カウンタ82とから構成される。この周波数検出回路76により検出された周波数検出信号は、周波数調整回路45に供給される。前記周波数調整回路45は、前記周波数検出信号で示される検出周波数fM を所定の設定周波数f1 と比較し、これらを一致させるべく制御データP1 を調整し、データラッチ回路44に供給するものであり、CPUや前記設定周波数f1 を保持するレジスタ等から構成することができる。
【0020】本実施例の光ビーム偏向走査装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その動作について説明する。
【0021】先ず、フイルムFに対する画像の記録に先立ち、駆動回路52により生成されるAOM駆動信号の周波数を調整する場合につき説明する。
【0022】周波数調整回路45は、データラッチ回路44に対して、所定の設定周波数f1 からなるAOM駆動信号を生成するための制御データP1 を供給する。この制御データP1 は、加算器48を介して駆動回路52に供給される。なお、周波数の調整時において、前記加算器48には、補正データ記憶部42より補正データΔ1(x) を供給しないものとする。
【0023】駆動回路52は、D/Aコンバータ54において前記制御データP1 をアナログ信号に変換した後、電圧制御発振器58において前記制御データP1 をAOM駆動信号に変換する。このAOM駆動信号は、変調器62、パワー変調部66、および分配器69を介して周波数検出回路76に供給される。なお、周波数の調整時において、前記変調器62は2値画像データに基づいて変調動作を行わないものとする。
【0024】周波数検出回路76は、駆動回路52から供給された高い周波数からなるAOM駆動信号をプリスケーラ78によって分周した後、周波数カウンタ82に供給する。周波数カウンタ82は、分周された前記AOM駆動信号の周波数を基準信号発振器80からの基準信号に基づいてカウントすることで周波数検出信号を生成し、周波数調整回路45に供給する。
【0025】ここで、電圧制御発振器58は、図4に示すように、温度変化や経時的変化等の影響により、制御電圧と変調周波数との関係が実線で示す特性から点線で示す特性に変動し、駆動回路52から出力されるAOM駆動信号の周波数が所望の周波数f1 とならない場合がある。そこで、周波数調整回路45は、図3に示すフローチャートに従い、前記周波数検出信号から得られる検出周波数fM を所定の設定周波数f1 とすべく制御データP1 の調整を行う。
【0026】周波数調整回路45は、周波数検出回路76により検出された検出周波数fMと所定の設定周波数f1 とを比較し(ステップS1)、f1 =fM の場合には、制御データP1 を修正することなくデータラッチ回路44に供給する。一方、f1 >fM の場合には(ステップS2)、制御データP1 に所定の微少修正データδを加算してデータラッチ回路44に供給する(ステップS3)。また、f1 <fM の場合には(ステップS2)、制御データP1 から所定の微少修正データδを減算してデータラッチ回路44に供給する(ステップS4)。そして、このようにして調整された制御データP1 から、駆動回路52においてAOM駆動信号を生成し、その周波数を周波数検出回路76で検出する作業を繰り返すことにより、所定の設定周波数f1 を有したAOM駆動信号を得ることができる。
【0027】次に、以上のようにしてデータラッチ回路44に供給される制御データP1 を調整した後、光ビーム偏向走査装置10による画像記録を行う。
【0028】そこで、先ず、同期信号を生成する場合について説明する。同期用光源部26から出力された光ビームMは、レゾナントスキャナ18によって反射偏向された後、走査レンズ20を介して同期用基準板30に導かれ、前記基準板30上を主走査方向に走査する。この場合、前記基準板30上には、主走査方向に沿って所定間隔でスリット28が形成されており、前記スリット28を透過した光ビームMは、集光ロッド34を介してフォトセンサ32に導かれ、電気信号に変換される。この電気信号は、制御回路14を構成する同期信号生成部36において増幅、波形成形、逓倍等の処理が施され、同期信号が生成される。前記のようにして生成された同期信号は、ビーム位置検出回路40および2値画像データ生成部38に夫々供給される。
【0029】次に、フイルムF上に画像を記録するための1次回折光L1 の制御動作について説明する。
【0030】制御回路14を構成するデータラッチ回路44には、前述した周波数調整回路45により、図6に示す音響光学変調素子AOMによる1次回折光L1 を所望の回折角度θ1 とし、フイルムF上の所定の副走査位置に対して前記1次回折光L1 を導くように設定した制御データP1 がラッチされる。一方、ビーム位置検出回路40は、同期信号生成部36からの同期信号に基づき、光ビームMの主走査位置xに対応したアドレス信号を生成する。このアドレス信号は、補正データ記憶部42に記憶された主走査位置xに対応する1次回折光L1 の補正データΔ1(x) を読み出し、加算器48において、データラッチ回路44から供給される前記制御データP1 に加算する。なお、前記補正データΔ1(x) は、レゾナントスキャナ18のウォブリング等に起因する1次回折光L1 のフイルムF上での湾曲や変動を補正するものである。
【0031】次に、加算器48からの補正された制御データP1 +Δ1(x) は、音響光学変調素子AOMの駆動回路52を構成するD/Aコンバータ54に供給され、アナログ信号に変換される。D/Aコンバータ54から出力されたアナログ信号は、電圧制御発振器58において、制御データP1 +Δ1(x) に対応した周波数を有したAOM駆動信号に変換される。次いで、前記AOM駆動信号は、変調器62において2値画像データ生成部38からの2値画像データに応じた信号に変調される。なお、前記2値画像データ生成部38は、同期信号生成部36からの同期信号に基づき、多値画像データを網点処理することにより2値画像データを生成し、変調器62に供給している。従って、前記AOM駆動信号は、前記変調器62によって画像情報に応じた信号に変調されることになる。
【0032】画像情報に応じて変調された前記AOM駆動信号は、パワー変調部66において、周波数による強度依存性が補正される。すなわち、音響光学変調素子AOMによる1次回折光L1 の強度が回折角度θ1 に依存して変動するため、この変動が前記パワー変調部66において補正される。強度依存性が補正されたAOM駆動信号は、分配器69を介してパワー変調部71に供給され、前記パワー変調部71において、さらに、レゾナントスキャナ18による1次回折光L1 の走査速度変動分が補正される。この補正は、ビーム位置検出回路40からのアドレス信号に基づき主走査位置xに応じて行われる。このようにして調整されたAOM駆動信号は、音響光学変調素子AOMに供給される。
【0033】前記AOM駆動信号の供給された音響光学変調素子AOMは、図6に示す1次回折光L1 を生成する。前記1次回折光L1 は、集光レンズ17を介してレゾナントスキャナ18に供給され、反射偏向された後、走査レンズ20を介してフイルムF上に導かれる。この場合、前記フイルムF上には、周波数調整回路45により副走査方向の走査位置が調整され、且つ、補正データ記憶部42からの補正データΔ1(x) によって軌跡の湾曲が補正された画像情報に基づく走査線が形成される。
【0034】次に、図5に示す第2実施例について説明する。なお、第1実施例と同一構成要素には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0035】第2実施例の光ビーム偏向走査装置90は、第1実施例の光ビーム偏向走査装置10と同一構成からなる画像記録部12と、音響光学変調素子AOMにおいて画像記録を行う3本の1次回折光L1 、L2 およびL3 を生成するための制御回路92とから構成される。
【0036】この場合、制御回路92は、3本の1次回折光L1 、L2 およびL3 によりフイルムF上に記録される各走査線の副走査位置を設定するための制御データP1、P2 およびP3 をラッチするデータラッチ回路44a〜44cと、前記各走査線の湾曲等を補正するための補正データΔ1(x) 、Δ2(x) およびΔ3(x) を前記制御データP1 、P2 およびP3 に対して加算する加算器48a〜48cと、前記補正された各制御データに基づき、音響光学変調素子AOMを駆動するための周波数の異なる3つのAOM駆動信号を生成する駆動回路53と、前記3つのAOM駆動信号を合成する合成回路70とを備える。なお、この駆動回路53は、前記各制御データから前記各AOM駆動信号を生成するためのD/Aコンバータ54a〜54c、電圧制御発振器58a〜58c、変調器62a〜62cおよびパワー変調部66a〜66cを有している。
【0037】このように構成される光ビーム偏向走査装置90において、フイルムFに対する画像記録を行う以前に、前記各制御データP1 、P2 およびP3 に基づいて生成されるAOM駆動信号の周波数を夫々周波数検出回路76において検出し、その検出周波数fM1、fM2、およびfM3を所定の設定周波数f1 、f2 およびf3とすべく、第1実施例と同様にして制御データP1 、P2 およびP3 の調整を行う。なお、この調整作業は、制御データP1 、P2 およびP3 を個別に駆動回路53に供給することにより、第1実施例の場合と同様に行うことができる。
【0038】以上のようにしてデータラッチ回路44a〜44cに供給される制御データP1 、P2 およびP3 を調整した後、光ビーム偏向走査装置90による画像記録を行う。
【0039】この場合、同期信号は、第1実施例の場合と同様に生成され、ビーム位置検出回路40および2値画像データ生成部38に供給される。一方、データラッチ回路44a〜44cにラッチされた調整後の制御データP1 、P2 およびP3 は、加算器48a〜48cにおいて、補正データ記憶部42からの補正データΔ1(x) 、Δ2(x) およびΔ3(x) が加算され、駆動回路53の各D/Aコンバータ54a〜54cに供給される。なお、前記各補正データΔ1(x) 、Δ2(x) およびΔ3(x) は、レゾナントスキャナ18のウォブリングや走査レンズ20に対する1次回折光L1 、L2 およびL3 の入射位置の相違等に起因するフイルムF上での湾曲や変動を補正するために、各1次回折光L1 、L2 およびL3 毎に設定されている。
【0040】次に、前記各加算器48a〜48cからの補正された制御データP1 +Δ1(x) 、P2 +Δ2(x) およびP3 +Δ3(x) は、駆動回路53において、夫々所定の周波数からなり、且つ、2値画像データ生成部38から供給される各走査線毎の2値画像データに応じて変調されたAOM駆動信号に変換され、合成回路70に供給される。合成回路70は、前記各AOM駆動信号を合成する。この合成されたAOM駆動信号は、パワー変調部71において、レゾナントスキャナ18による走査速度の変動分が補正された後、音響光学変調素子AOMに供給される。
【0041】音響光学変調素子AOMは、図6に示すように、前記AOM駆動信号の各周波数成分に応じて、光ビームLを夫々所定の回折角度θ1 、θ2 およびθ3 からなる3本の1次回折光L1 、L2 およびL3 に分割する。分割されたこれらの1次回折光L1 、L2 およびL3 は、集光レンズ17、レゾナントスキャナ18、および走査レンズ20を介してフイルムF上に導かれ、画像情報に応じた3本の走査線が同時に形成される。
【0042】この場合、前記3本の1次回折光L1 、L2 およびL3 を形成するAOM駆動信号は、その周波数成分が周波数調整回路45において夫々所定の周波数に調整されている。従って、1次回折光L1 、L2 およびL3 によりフイルムF上に形成される走査線は、夫々の走査位置が所定の副走査位置に正確に調整されるとともに、各走査線の間隔も正確に調整されることになる。この結果、前記フイルムF上には、3本の走査線が正確に形成され、これによって、高解像度からなる高精度な画像が記録され、または、高精度な画像が高速度に記録されることになる。
【0043】なお、上述した各実施例では、レゾナントスキャナ18による1次回折光L1、L2 およびL3 の走査速度むらを、パワー変調部71によって調整するようにしているが、偏向手段として、レゾナントスキャナ18の代わりにポリゴンミラー型スキャナやホログラムスキャナ等のように、反射ミラーやホログラムを一定速度で回転させることで光ビームLの偏向を行うものを使用した場合には、走査速度の変動が生じることがないため、前記パワー変調部71は不要となる。
【0044】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、音響光学変調素子に供給される駆動信号の周波数を検出し、所望の周波数となるように調整することにより、音響光学変調素子の駆動信号を生成する駆動手段を構成する素子の温度変化や経時的な特性変化に依存しない周波数からなる駆動信号を生成することができる。従って、光ビームを被走査体の所望の走査位置に正確且つ安定して導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例である光ビーム偏向走査装置の構成図である。
【図2】図1に示す周波数検出回路の構成ブロック図である。
【図3】図1に示す周波数調整回路における処理フローチャートである。
【図4】図1に示す駆動回路における制御電圧と変調周波数との関係説明図である。
【図5】本発明の第2実施例である光ビーム偏向走査装置の構成図である。
【図6】音響光学変調素子による光ビームの回折の説明図である。
【符号の説明】
10、90…光ビーム偏向走査装置 12…画像記録部
14、92…制御回路 16…記録用光源部
18…レゾナントスキャナ 20…走査レンズ
26…同期用光源部 36…同期信号生成部
38…2値画像データ生成部 40…ビーム位置検出回路
42…補正データ記憶部
44、44a〜44c…データラッチ回路
45…周波数調整回路 52、53…駆動回路
69…分配器 70…合成回路
76…周波数検出回路 78…プリスケーラ
80…基準信号発振器 82…周波数カウンタ
AOM…音響光学変調素子 F…フイルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】1本の光ビームを射出する光源と、所定の周波数からなる駆動信号により駆動され、前記光ビームを前記周波数に対応した回折角度からなる光ビームとして射出する音響光学変調素子と、前記音響光学変調素子から射出された前記光ビームを偏向して被走査体に導く偏向手段と、前記駆動信号を生成し、前記音響光学変調素子を駆動する駆動手段と、前記駆動信号の周波数を検出する周波数検出手段と、前記周波数検出手段により検出された周波数を所定の周波数に調整する周波数調整手段と、を備えることを特徴とする光ビーム偏向走査装置。
【請求項2】1本の光ビームを射出する光源と、複数種の周波数からなる駆動信号により駆動され、前記光ビームを前記各周波数に対応した回折角度からなる複数本の光ビームに分岐して射出する音響光学変調素子と、前記音響光学変調素子から射出された前記複数本の光ビームを偏向して被走査体に導く偏向手段と、前記駆動信号を生成し、前記音響光学変調素子を駆動する駆動手段と、前記駆動信号の周波数を検出する周波数検出手段と、前記周波数検出手段により検出された周波数を所定の周波数に調整する周波数調整手段と、を備えることを特徴とする光ビーム偏向走査装置。
【請求項3】請求項1または2記載の装置において、駆動手段は、所定の周波数からなる駆動信号を生成する電圧制御発振器を備え、周波数調整手段は、周波数検出手段により検出された駆動信号の周波数を前記所定の周波数とすべく、前記電圧制御発振器の制御電圧を調整することを特徴とする光ビーム偏向走査装置。
【請求項4】請求項1または2記載の装置において、周波数検出手段は、駆動信号を分周するプリスケーラと、前記プリスケーラにより分周された前記駆動信号の周波数を検出する周波数カウンタとを備えることを特徴とする光ビーム偏向走査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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