光ピックアップ及び光ディスク装置
【課題】多層ディスクの各情報記録面に対する球面収差補正により生じる対物レンズからの出射光強度の変化を補正する光ピックアップを提供する。
【解決手段】球面収差補正手段(コリメートレンズ105、レンズ移動手段119)は、光ディスク113の情報記録面114の位置に応じた球面収差を補正する。光強度補正手段としての透過率可変素子110は、球面収差補正手段の球面収差補正に伴う対物レンズ112からの出射光強度の変化を補正する。ピックアップ制御回路121は、情報記録面114の位置、あるいはコリメートレンズ105の移動量に応じて、透過率可変素子110の透過率を制御する。
【解決手段】球面収差補正手段(コリメートレンズ105、レンズ移動手段119)は、光ディスク113の情報記録面114の位置に応じた球面収差を補正する。光強度補正手段としての透過率可変素子110は、球面収差補正手段の球面収差補正に伴う対物レンズ112からの出射光強度の変化を補正する。ピックアップ制御回路121は、情報記録面114の位置、あるいはコリメートレンズ105の移動量に応じて、透過率可変素子110の透過率を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに情報信号を記録または再生する光ピックアップ及び光ディスク装置に係り、特に、BD多層ディスクに対する記録または再生に好適な光ピックアップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
DVDに続く大容量光ディスクとして、青紫色レーザを使い単層で約25GB、2層で約50GBの容量を持つBD(Blu-ray Disc)とその記録再生装置が商品化され普及している。このBD2層ディスクでは2つの情報記録面に約25μmのカバー層厚さの差があり、かつ対物レンズの開口数が約0.85とDVDに比べて高い。そのため記録再生装置には、それぞれの情報記録面に対して球面収差を抑制し、光ビームの焦点を合わせるための球面収差補正手段が設けられている。
【0003】
球面収差補正手段としては、対物レンズの手前に2枚のレンズ(凸と凸、または凸と凹)を配置しレンズ間の距離を調整するビームエキスパンダー方式や、コリメートレンズを光軸に沿って移動する方式などが知られる。後者のコリメートレンズを移動する方式は例えば特許文献1に開示され、球面収差を補正するための新たなレンズを必要としないので光軸の調整を容易に行うことができると述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−103087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ピックアップでは、半導体レーザの特性ばらつきを補正し、対物レンズからの出射光強度を一定にするAPC制御(Auto Power Control)が用いられている。このAPC制御は、半導体レーザから出射した光ビームの一部を前方モニタにより受光し、その検出信号をレーザ駆動回路にフィードバックして半導体レーザの出射光強度を一定に制御する機能である。これにより、情報記録面での再生、記録パワーを所望の値に設定することができる。
【0006】
特許文献1に記載される球面収差補正方式は、コリメートレンズを光軸方向に動かすことで対物レンズに入射させる光ビームの状態を平行光から発散光あるいは収束光に変化させるものである。このため、球面収差補正により対物レンズから情報記録面へ出射する光強度が変化してしまう問題がある。これは、ビームエキスパンダー方式においても同様である。つまり、上記APC制御によって半導体レーザからの出射光強度がある一定値に制御されているにもかかわらず、対物レンズの出射光強度ひいては情報記録面での光スポット強度が変化し、記録再生性能に影響を与えることになる。
【0007】
現在のBD2層ディスクでは、2層の情報記録面でのカバー層厚さの差は約25μmであり、球面収差補正に必要なコリメートレンズの移動量は比較的小さい。このため、対物レンズに入射する光ビームの状態(発散光あるいは収束光)の変化はわずかであり、対物レンズからの出射光強度の変化は小さいため問題とはならない。
【0008】
ところが、2層以上の情報記録面を持つBD多層ディスクでは、ディスク表面から最も浅い情報記録面と最も深い情報記録面のカバー層厚さの差は拡大し、例えばBD8層ディスクでは約96μmにも達する。そのため、球面収差補正に必要なコリメートレンズの移動量が大きくなり、対物レンズに入射する光ビームの状態(発散光あるいは収束光)の変化も大きくなる。その結果、対物レンズからの出射光強度ひいては各情報記録面での光スポット強度が大きく変化し、記録再生性能を劣化させる恐れがある。
【0009】
本発明の目的は、多層ディスクの各情報記録面に対する球面収差補正により生じる対物レンズからの出射光強度の変化を補正する光ピックアップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、レーザ光源と、レーザ光源から出射した光ビームを集光し光ディスクの情報記録面に照射する対物レンズと、光ディスクの情報記録面から反射された光ビームを検出する光検出器を備えた光ピックアップにおいて、光ディスクの情報記録面の位置に応じた球面収差を補正するためにレーザ光源と対物レンズの間の光路に設けた球面収差補正手段と、球面収差補正手段の球面収差補正に伴う対物レンズからの出射光強度の変化を補正するためにレーザ光源と対物レンズの間の光路に設けた光強度補正手段と、光強度補正手段の補正量を制御するピックアップ制御回路を有する。
【0011】
ここに光強度補正手段として、光ビームに対する透過率を可変とする透過率可変素子、あるいは光ビームに対する反射率を可変とする反射率可変素子を用いる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、多層ディスクに対する球面収差補正により生じる対物レンズの出射光強度の変化を補正し、安定した記録再生性能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による光ピックアップの第1の実施例を示す構成図(実施例1)。
【図2】BD8層ディスクの構成を示す図。
【図3A】コリメートレンズを移動させて光ビームの形状を計算するモデルを示す図。
【図3B】球面収差補正に必要なコリメートレンズの移動量を示す図。
【図4】球面収差補正の効果を示す図。
【図5】コリメートレンズの移動による対物レンズの出射光強度の変化を示す図(BD8層ディスクの場合)。
【図6】透過率可変素子による出射光強度比の補正を説明する図(BD8層ディスクの場合)。
【図7】BD4層ディスクの構成を示す図。
【図8】コリメートレンズの移動による対物レンズの出射光強度の変化を示す図(BD4層ディスクの場合)。
【図9】透過率可変素子による出射光強度比の補正を説明する図(BD4層ディスクの場合)。
【図10】本発明による光ピックアップの第2の実施例を示す構成図(実施例2)。
【図11】本発明による光ピックアップの第3の実施例を示す構成図(実施例3)。
【図12】本発明による光ピックアップの第4の実施例を示す構成図(実施例4)。
【図13】本発明による光ピックアップの第5の実施例を示す構成図(実施例5)。
【図14】各実施例の光ピックアップを搭載した光ディスク装置の一実施例を示す構成図(実施例6)。
【図15】光ディスク装置におけるフォーカス引込み動作までのフローチャートを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。各実施形態では光ディスク媒体としてBD多層ディスクを対象とする。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明による光ピックアップの第1の実施例を示す構成図である。
図1において、レーザ光源101からBD用の波長405nm帯の直線偏光の発散ビーム光が出射され、偏光ビームスプリッタ102、反射ミラー103、補助レンズ104を経て、コリメートレンズ105により略平行な光ビームに変換される。さらにコリメートレンズ105は、レンズ移動手段119により矢印106で示す光軸方向に移動することで、BD多層ディスク113に対する球面収差補正を行う。レンズ移動手段119は、例えばステッピングモータ、圧電素子を用いて構成され、レンズ位置検出手段107はコリメートレンズ105の移動位置を検出する。コリメートレンズ105から出射した光ビームは、1/4波長板108により円偏光に変換され、立上げミラー109により垂直に光路を曲げられた後に透過率可変素子110に入射する。透過率可変素子110は、光ビームの透過率を可変に設定可能な光学素子である。透過率可変素子110を透過した光ビームは、対物レンズ112で集光され、BD多層ディスク113の情報記録面114の目的層に照射される。開口部111は、対物レンズ112に入射する光ビームを所定の断面サイズに制限するため設けられた円形状の孔である。ピックアップ制御回路121は、情報記録面114の目的層に応じてレンズ移動手段119や透過率可変素子110を制御する。
【0016】
透過率可変素子110の具体例として、電気信号により光の透過率が可逆的に変化する液晶を用いることができる。その構成を図1の下部に示す。透過率可変素子110は、液晶パネル122と、その両表面に貼られた透明電極123、124を備えており、これら透明電極123、124に可変電源125から電圧が印加される。液晶パネル122の透過率は透明電極123、124への印加電圧で変化し、例えば、印加電圧がゼロのときは透過率が最大となり印加電圧が大きくなるに従い透過率が低下する。ピックアップ制御回路121は、可変電源125の印加電圧を設定することで透過率可変素子110の透過率を制御する。なお、透過率可変素子110の他の例として、電気信号により光の透過率を可逆的に制御可能なエレクトロミック調光ガラスを用いることもできる。
【0017】
BD多層ディスク113の情報記録面114で反射した光ビームは、対物レンズ112、透過率可変素子110、立上げミラー109を経て、1/4波長板108により直線偏光に変換される。さらにコリメートレンズ105、補助レンズ104、反射ミラー103を経て、偏光ビームスプリッタ102の反射面で反射され、多分割回折素子115に入射する。多分割回折素子115では1本の光ビームが複数の光ビームに分割され、光検出器116に到達する。
【0018】
光検出器116では光信号を電気信号に変換し、これよりサーボ信号が生成される。例えばフォーカス誤差信号にナイフエッジ法、トラッキング誤差信号にプッシュプル方式を用いて、BD多層ディスク113の情報記録面114に照射する光ビーム(集光スポット)の位置を制御する。なお、ナイフエッジ法やプッシュプル方式は公知技術であるためここでは説明を省略する。前方モニタ117は、レーザ光源101から出射して偏光ビームスプリッタ102、反射ミラー103を通過した光ビームを受光し、その検出信号はレーザ駆動回路118にフィードバックされ、レーザ光源101の出射光強度が所定値になるよう制御される。
【0019】
本実施例では、BD多層ディスク113の情報記録面114に集光スポットを絞り込むため、対物レンズ112の開口数をDVDより高い0.85としている。その際、各情報記録面間のカバー層厚さの差あるいは各情報記録面でのカバー層厚さ誤差によって発生する球面収差は、対物レンズ112の開口数の4乗に比例して増加するので、より大きな収差となる。そこで、補助レンズ104とコリメートレンズ105の2枚のレンズでコリメートレンズ系を構成し、コリメートレンズ105を矢印106で示す光軸方向に移動させることで、球面収差を補正する構成としている。
【0020】
上記球面収差補正を行うと、後述するように対物レンズ112からの出射光強度が変化する。そこで本実施例では、透過率可変素子110を設けその透過率を制御することで対物レンズ112の出射光強度が一定となるよう補正する。すなわち、コリメートレンズ105の移動位置と対物レンズ112の出射光強度の変化の関係を予め求める。そしてピックアップ制御回路121は内蔵するメモリに、コリメートレンズ105の移動位置と透過率可変素子110に設定する透過率の関係を、あるいは各情報記録面114のカバー層厚さと透過率可変素子110に設定する透過率の関係を記憶している。そしてピックアップ制御回路121はメモリを参照して、情報記録面114の目的層に応じて透過率可変素子110の透過率を設定する。
【0021】
以下、本実施例における球面収差補正と、対物レンズ出射光強度の補正について説明する。
【0022】
図2は、BD多層ディスク113の一例としてBD8層ディスクの構成を示す図である。情報記録面114は、光入射側の表面201から見て、順にL7層、L6層、L5層、L4層、L3層、L2層、L1層、L0層の8層を有する。表面201から各記録層までの距離(カバー層厚さ)を、それぞれt7、t6、t5、t4、t3、t2、t1、t0とする。これらの値は、例えばt0=146μm、t1=134μm、t2=118μm、t3=106μm、t4=90μm、t5=78μm、t6=62μm、t7=50μmであり、両端層のL7層とL0層とではカバー層厚さの差は96μm存在する。
【0023】
図3Aと図3Bは、図2で示したBD8層ディスクの球面収差補正に必要なコリメートレンズの移動量を示す図である。図3Aは、コリメートレンズ105を移動させて光ビームの形状を計算するモデルを示し、図3Bは、情報記録面の位置(またはカバー層厚さ)に対して球面収差補正に必要なコリメートレンズ105の移動量を曲線301で示す。ここで移動量0とはコリメートレンズ105の基準位置であり、コリメートレンズ105の出射面から平行光が出射する状態を指す。また対物レンズ112の基準カバー層厚さを、現在のBD2層ディスクにおける中間層での値87.5μmにしている(この基準値は、他の値に変更して対物レンズを設計することも可能である)。曲線301で示されるように、各情報記録面L0層〜L7層でのカバー層厚さと、球面収差補正を行うために必要なコリメートレンズ105の移動量はほぼ線形な関係にあることが分かる。また曲線301の勾配から、コリメートレンズ105が光軸方向に1mm移動することにより、カバー層厚さの差約35μmにより発生する球面収差を補正できることが分かる。
【0024】
図4は、本実施例での球面収差補正の効果を示す図である。
直線401は、コリメートレンズ105が基準位置にあり球面収差補正を行わない場合である。カバー層厚さが基準値87.5μmからずれるに従い、情報記録面上の集光スポットに発生する球面収差が増加し、最もカバー層が薄いL7層において約0.37λrms、最もカバー層が厚いL0層において約0.58λrmsという大きな値となっている。
【0025】
これに対し直線402は、コリメートレンズ105を前記図3Bに示したように光軸方向に移動させて球面収差を補正した場合である。この場合発生する球面収差の値は、最もカバー層が薄いL7層において約0.015λrms、最もカバー層が厚いL0層で約0.03λrmsであり、球面収差が大幅に低減されていることが分かる。
【0026】
図5は、コリメートレンズの移動による対物レンズの出射光強度の変化を示す図である。コリメートレンズ105を、前記図3Bに示される各情報記録面(L0層〜L7層)の球面収差に必要な移動量だけ移動させた場合に、対物レンズ112から出射される光強度を各情報記録面で求めたものである。条件は透過率可変素子110を設けない場合であるが、透過率可変素子110を設けてその透過率を一定値に固定した場合でも同様である。計算方法は、図3Aの計算モデルにより開口部111内を通過する光線数の変化を求めることによる。コリメートレンズ105を移動することで、コリメートレンズ105から対物レンズ112へ向う光ビームの状態が平行光から発散光または収束光に変化するため、開口部111内(すなわち対物レンズ112内)に入射する光線数が変化する。縦軸は対物レンズ112の出射光強度比P0であり、L0層における出射光強度を基準に正規化している。曲線501に示すように、情報記録面114のカバー層厚さ(すなわちコリメートレンズ105の移動量)によって対物レンズ112の出射光強度比が変化し、その値は最もカバー層が薄いL7層で約1.08となっている。つまり、対物レンズ112の出射光強度比P0がL0層〜L7層の間で約8%変化することになる。この出射光強度比P0の変化は、透過率可変素子110により次のように補正する。
【0027】
図6は、透過率可変素子による対物レンズの出射光強度比の変化の補正を説明する図である。
【0028】
情報記録面のカバー層厚さ(すなわちコリメートレンズの移動量)に対し、透過率可変素子110の透過率比Qを曲線601のように設定する。また曲線501は前記図5に示したものの再掲であり、透過率可変素子を設けないときの対物レンズの出射光強度比P0の変化を示す。ここに曲線601に示す透過率可変素子110の透過率比Qは、曲線501に示される透過率可変素子を設けないときの対物レンズの出射光強度比P0の変化を打ち消すように設定する。具体的には出射光強度比P0の逆数をとり、Q=1/P0と設定すれば良い。透過率比QはL0層における透過率を基準に正規化(Q=1)しており、例えばL7層での透過率比Qを約0.925に低下させれば良い。なお、実際の透過率の値は、情報記録面114で記録または再生に必要な光強度となるようレーザ光源101からの出射光強度と組み合わせて設定する。
【0029】
曲線602は、透過率可変素子110を通過した後の総合的な対物レンズの出射光強度比P1を示し、曲線501と曲線601を掛け合わせたものとなる。すなわち、総合的な対物レンズの出射光強度比はP1=P0×Q=1となり、情報記録面114のカバー層厚さ(L0層〜L7層)にかかわらず、言い換えればコリメートレンズの移動量にかかわらず一定となる。
【0030】
ピックアップ制御回路121のメモリには曲線601の情報、すなわち情報記録面のカバー層厚さに対する透過率可変素子110の透過率の設定値が記憶されており、メモリを参照することで情報記録面の目的層に応じて透過率可変素子110の透過率を設定することができる。あるいはピックアップ制御回路121のメモリには、コリメートレンズの移動量に対する透過率可変素子110の透過率の設定値を記憶しても良い。その場合には、球面収差補正の結果コリメートレンズがどれだけ移動したかをレンズ位置検出手段107で検出することで、移動量に応じて透過率可変素子110の透過率を設定することができる。さらには、メモリには曲線501の情報を記憶しても良く、簡単な演算で曲線601の情報に変換できる。
【0031】
以上、BD多層ディスク113としてBD8層ディスクを例にして説明してきたが、本実施例はこれに限らずディスクの層数は任意である。以下、BD4層ディスクの場合を説明する。
【0032】
図7は、BD多層ディスク113の一例としてBD4層ディスクの構成を示す図である。情報記録面114は、光入射側の表面201から見て、順にL3層、L2層、L1層、L0層の4層を有する。表面201から各記録層までの距離を、それぞれt3、t2、t1、t0とする。これらの値は、例えばt0=100μm、t1=84.5μm、t2=65μm、t3=54μmであり、両端層のL3層とL0層とではカバー層厚さの差は46μm存在する。
【0033】
BD4層ディスクの場合も前記図3Bから、L0層〜L3層の各情報記録面の位置(カバー層厚さ)に対する球面収差補正に必要なコリメートレンズ105の移動量が求められ、コリメートレンズ105を移動させて球面収差補正を行う。
【0034】
図8は、BD4層ディスクにおいてコリメートレンズの移動による対物レンズの出射光強度の変化を示す図である。曲線801には、透過率可変素子110を設けていないときの対物レンズ112から出射される光強度を、L0層における出射光強度を基準に正規化して示す。情報記録面114のカバー層厚さ(すなわちコリメートレンズ105の移動量)によって対物レンズ112の出射光強度比P0が変化し、その値は最もカバー層が薄いL3層で約1.02となっている。前記図5に示したBD8層ディスクの場合と比較し、出射光強度比P0の変化幅は約2%と小さくなっているが、これは情報記録面114の両端層(L0層とL3層)でのカバー層厚さの差が縮小し、これに伴いコリメートレンズ105の移動量も小さくなったことによる。
【0035】
図9は、BD4層ディスクにおける透過率可変素子による出射光強度比の補正を説明する図である。その補正方法は前記図6の説明と同様である。
【0036】
情報記録面のカバー層厚さ(すなわちコリメートレンズの移動量)に対し、透過率可変素子110の透過率比Qを曲線901のように設定する。すなわち透過率可変素子110の透過率比Qは、曲線801に示される透過率可変素子を設けないときの対物レンズの出射光強度比P0の変化を打ち消すように、出射光強度比P0の逆数をとりQ=1/P0と設定する。例えばL3層での透過率比Qは、L0層における透過率を基準とし約0.98に低下させれば良い。
【0037】
曲線902は、透過率可変素子110を通過した後の総合的な対物レンズの出射光強度比P1を示し、曲線801と曲線901を掛け合わせたものとなる。すなわち、総合的な対物レンズの出射光強度比はP1=P0×Q=1となり、情報記録面114のカバー層厚さ(L0層〜L3層)にかかわらず、言い換えればコリメートレンズの移動量にかかわらず一定となる。
【0038】
ピックアップ制御回路121のメモリには曲線901の情報、すなわち情報記録面のカバー層厚さ、またはコリメートレンズの移動量に対する透過率可変素子110の透過率の設定値が記憶されており、メモリを参照することで情報記録面の目的層に応じて透過率可変素子110の透過率を設定することができる。ただし、曲線901の情報と前記BD8層ディスクの場合の曲線601の情報はカバー層厚さの基準値が異なるだけであるから、1組の共通の情報を変換して用いることができる。
【0039】
このように本実施例によれば、多層ディスクに対する球面収差補正に伴い生じる対物レンズの出射光強度の変化を補正し、情報記録面の目的層に所望の強度の光ビームを照射することができる。
【実施例2】
【0040】
図10は、本発明による光ピックアップの第2の実施例を示す構成図である。実施例1(図1)と異なる点は、透過率可変素子110と1/4波長板108を一体化して1つの素子1001とした点である。その他については実施例1と同じであるため説明を省略する。本実施例は実施例1と比べて、部品点数を減らすことができるというメリットがある。
【実施例3】
【0041】
図11は、本発明による光ピックアップの第3の実施例を示す構成図である。実施例1(図1)と異なる点は、透過率可変素子110と立上げミラー109を一体化して1つの素子1101とした点である。その他については実施例1と同じであるため説明を省略する。本実施例も実施例1と比べて、部品点数を減らすことができるというメリットがある。
【実施例4】
【0042】
図12は、本発明による光ピックアップの第4の実施例を示す構成図である。実施例1(図1)と異なる点は、1/4波長板108と透過率可変素子110と立上げミラー109を一体化して1つの素子1201とした点である。その他については実施例1と同じであるため説明を省略する。本実施例は実施例1、2、3と比べて部品点数を減らすことができるというメリットがある。
【実施例5】
【0043】
図13は、本発明による光ピックアップの第5の実施例を示す構成図である。実施例1(図1)と異なる点は、透過率可変素子110の代わりに反射率が可変な反射率可変素子1301を用いて、図1の立上げミラー109と兼用した点である。この反射率可変素子1301はピックアップ制御回路121と接続されている。
【0044】
反射率可変素子1301の一例として、電気信号により光の反射率が可逆的に変化する調光ミラーを用いることができる。その構成を図13の下部に示す。透明導電膜をコーティングしたガラス基板1302上に調光ミラー層1303が蒸着されている。可変電源1304により調光ミラー層1303に、例えばマイナスの電圧を印加するとその反射率が減少し、プラスの電圧を印加するとその反射率が増加する。可変電源1304からの印加電圧は、ピックアップ制御回路121で制御する。
【0045】
光強度の補正方法は実施例1と同様であり、情報記録面114の各記録層に対して球面収差補正を行う際には、情報記録面114のカバー層厚さあるいはコリメートレンズ105の移動量に対して対物レンズ112の出射光強度が一定となるように反射率可変素子1301の反射率を制御する。ピックアップ制御回路121のメモリには、情報記録面のカバー層厚さ、またはコリメートレンズの移動量に対する反射率可変素子1301の反射率の設定値が記憶されている。
【0046】
上記実施例1から実施例5では、BD対応の光ピックアップについて説明してきたが、これに限定されず、BD/DVD/CD対応の3波長互換光ピックアップ(BD用対物レンズとDVD/CD用対物レンズの2つの対物レンズを用いた光ピックアップ、あるいは1個のBD/DVD/CD用互換対物レンズを用いた光ピックアップ)にも適用できる。
【0047】
また上記実施例1から実施例5では、対物レンズ112の出射光強度を補正する透過率可変素子110や反射率可変素子1301は、球面収差補正手段(コリメートレンズ105)と対物レンズ112の間の光路に設けたが、レーザ光源101と球面収差補正手段の間の光路に設けても良い。
【0048】
また、上記実施例1から実施例5では、球面収差補正手段としてコリメートレンズ105を光軸方向に移動する方式を用いる場合を述べたが、球面収差補正手段としてビームエキスパンダー方式を用いる場合においても対物レンズ112の出射光強度が変化する現象は同様に発生するから、上記各実施例の構成は同様に適用できる。
【実施例6】
【0049】
図14は、上記した光ピックアップを搭載した光ディスク装置の一実施例を示す構成図である。破線1401で囲まれた部分が光ピックアップであり、ここでは実施例1(図1)の光ピックアップを搭載した場合を示す。すなわち光ピックアップ1401には、球面収差補正に伴う対物レンズ112の出射光強度を補正する透過率可変素子110を備えている。
【0050】
光ピックアップ1401内のピックアップ制御回路121には、信号処理回路1402、フォーカス制御回路1405、トラッキング制御回路1406、チルト制御回路1404が接続されている。フォーカス制御回路1405、トラッキング制御回路1406、チルト制御回路1404は、対物レンズ112を保持し駆動するアクチュエータ(図示せず)に接続されている。光ピックアップ1401内の光検出器116は、フォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号、情報再生信号、チルト検出信号を出力し、信号処理回路1402に伝送される。信号処理回路1402ではこれらの信号を処理し、最適な制御信号をフォーカス制御回路1405、トラッキング制御回路1406、チルト制御回路1404に伝送してアクチュエータを駆動させる。すなわち、BDなどの多層ディスク113の情報記録面114の目的層に対して光ビームを集光させる制御を行う。また、ユーザはユーザ入力手段(図示せず)から信号処理回路1402に指令を送ることで光ディスク装置の動作を制御し、その処理状態は表示手段1403に表示される。
【0051】
図15は、光ディスク装置におけるフォーカス引込み動作までのフローチャートを示す図である。
【0052】
光ディスクが装置に挿入されると、信号処理回路1402は光検出器116の検出信号により記録層の層数や媒体の種類を判別し(S1501)、当該光ディスクが多層媒体か否かを判定する(S1502)。判定の結果多層媒体でない場合(すなわち単層媒体の場合)には、ピックアップ制御回路121に対し、単層媒体に対する処理を指示する。ピックアップ制御回路121は透過率可変素子110に対し、単層媒体に対する透過率(L0層のカバー層厚さに対して予め定めた透過率)を設定する(S1503)。さらに、L0層に対する球面収差補正のため、レンズ移動手段119を介してコリメートレンズ105を所定量だけ移動させる(S1504)。そして、フォーカス制御回路1405を介してL0層に対するフォーカス引き込みを行う(S1505)。
【0053】
S1502の判定の結果多層媒体である場合には、信号処理回路1402はピックアップ制御回路121に対し、多層媒体に対する処理を指示しかつ目的層は何層目かを確認して伝える。ここではn層目とする(S1506)。ピックアップ制御回路121は内蔵メモリを参照し、n層目に対して設定すべき透過率を読み出す。このとき、n層目のカバー層厚さから設定すべき透過率を読み出しても良い(S1507)。ピックアップ制御回路121は透過率可変素子110に対し、メモリから読み出した目的層(n層目)に対する透過率を設定する(S1508)。さらに、目的層(n層目)に対する球面収差補正のため、レンズ移動手段119を介してコリメートレンズ105を所定量だけ移動させる(S1509)。そして、フォーカス制御回路1405を介して目的層に対するフォーカス引き込みを行う(S1510)。目的層(n層目)での記録再生動作が完了し、他の記録層に移動するときは、S1506に戻り新たな記録層に対して上記の工程を繰り返せば良い。
【0054】
以上各実施例で述べた光ピックアップによれば、BDなどの多層ディスクの各情報記録面に対して球面収差補正を行った場合でも、透過率可変素子あるいは反射率可変素子を設けることで、対物レンズからの出射光強度の変化をなくすことができる。そのため、上記光ピックアップを搭載した光ディスク装置によれば、各情報記録面に対して安定した記録再生動作が実現できる。さらに各実施例では、透過率可変素子あるいは反射率可変素子に設定する透過率あるいは反射率の値を予めメモリに記憶しているので、目的の情報記録面またはそのカバー層厚さを与えるだけで、あるいは球面収差補正時のコリメートレンズの移動量に連動させて、即座に最適な透過率あるいは反射率の値を読み出して設定できる。よって、多層ディスクの記録再生において層間ジャンプが頻繁に伴う場合でも、迅速に対応することができる。
【符号の説明】
【0055】
101…レーザ光源、
105…コリメートレンズ、
107…レンズ位置検出手段、
110…透過率可変素子、
112…対物レンズ、
113…BD多層ディスク、
114…情報記録面、
116…光検出器、
119…レンズ移動手段、
121…ピックアップ制御回路、
1301…反射率可変素子、
1401…光ピックアップ、
1402…信号処理回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに情報信号を記録または再生する光ピックアップ及び光ディスク装置に係り、特に、BD多層ディスクに対する記録または再生に好適な光ピックアップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
DVDに続く大容量光ディスクとして、青紫色レーザを使い単層で約25GB、2層で約50GBの容量を持つBD(Blu-ray Disc)とその記録再生装置が商品化され普及している。このBD2層ディスクでは2つの情報記録面に約25μmのカバー層厚さの差があり、かつ対物レンズの開口数が約0.85とDVDに比べて高い。そのため記録再生装置には、それぞれの情報記録面に対して球面収差を抑制し、光ビームの焦点を合わせるための球面収差補正手段が設けられている。
【0003】
球面収差補正手段としては、対物レンズの手前に2枚のレンズ(凸と凸、または凸と凹)を配置しレンズ間の距離を調整するビームエキスパンダー方式や、コリメートレンズを光軸に沿って移動する方式などが知られる。後者のコリメートレンズを移動する方式は例えば特許文献1に開示され、球面収差を補正するための新たなレンズを必要としないので光軸の調整を容易に行うことができると述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−103087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ピックアップでは、半導体レーザの特性ばらつきを補正し、対物レンズからの出射光強度を一定にするAPC制御(Auto Power Control)が用いられている。このAPC制御は、半導体レーザから出射した光ビームの一部を前方モニタにより受光し、その検出信号をレーザ駆動回路にフィードバックして半導体レーザの出射光強度を一定に制御する機能である。これにより、情報記録面での再生、記録パワーを所望の値に設定することができる。
【0006】
特許文献1に記載される球面収差補正方式は、コリメートレンズを光軸方向に動かすことで対物レンズに入射させる光ビームの状態を平行光から発散光あるいは収束光に変化させるものである。このため、球面収差補正により対物レンズから情報記録面へ出射する光強度が変化してしまう問題がある。これは、ビームエキスパンダー方式においても同様である。つまり、上記APC制御によって半導体レーザからの出射光強度がある一定値に制御されているにもかかわらず、対物レンズの出射光強度ひいては情報記録面での光スポット強度が変化し、記録再生性能に影響を与えることになる。
【0007】
現在のBD2層ディスクでは、2層の情報記録面でのカバー層厚さの差は約25μmであり、球面収差補正に必要なコリメートレンズの移動量は比較的小さい。このため、対物レンズに入射する光ビームの状態(発散光あるいは収束光)の変化はわずかであり、対物レンズからの出射光強度の変化は小さいため問題とはならない。
【0008】
ところが、2層以上の情報記録面を持つBD多層ディスクでは、ディスク表面から最も浅い情報記録面と最も深い情報記録面のカバー層厚さの差は拡大し、例えばBD8層ディスクでは約96μmにも達する。そのため、球面収差補正に必要なコリメートレンズの移動量が大きくなり、対物レンズに入射する光ビームの状態(発散光あるいは収束光)の変化も大きくなる。その結果、対物レンズからの出射光強度ひいては各情報記録面での光スポット強度が大きく変化し、記録再生性能を劣化させる恐れがある。
【0009】
本発明の目的は、多層ディスクの各情報記録面に対する球面収差補正により生じる対物レンズからの出射光強度の変化を補正する光ピックアップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、レーザ光源と、レーザ光源から出射した光ビームを集光し光ディスクの情報記録面に照射する対物レンズと、光ディスクの情報記録面から反射された光ビームを検出する光検出器を備えた光ピックアップにおいて、光ディスクの情報記録面の位置に応じた球面収差を補正するためにレーザ光源と対物レンズの間の光路に設けた球面収差補正手段と、球面収差補正手段の球面収差補正に伴う対物レンズからの出射光強度の変化を補正するためにレーザ光源と対物レンズの間の光路に設けた光強度補正手段と、光強度補正手段の補正量を制御するピックアップ制御回路を有する。
【0011】
ここに光強度補正手段として、光ビームに対する透過率を可変とする透過率可変素子、あるいは光ビームに対する反射率を可変とする反射率可変素子を用いる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、多層ディスクに対する球面収差補正により生じる対物レンズの出射光強度の変化を補正し、安定した記録再生性能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による光ピックアップの第1の実施例を示す構成図(実施例1)。
【図2】BD8層ディスクの構成を示す図。
【図3A】コリメートレンズを移動させて光ビームの形状を計算するモデルを示す図。
【図3B】球面収差補正に必要なコリメートレンズの移動量を示す図。
【図4】球面収差補正の効果を示す図。
【図5】コリメートレンズの移動による対物レンズの出射光強度の変化を示す図(BD8層ディスクの場合)。
【図6】透過率可変素子による出射光強度比の補正を説明する図(BD8層ディスクの場合)。
【図7】BD4層ディスクの構成を示す図。
【図8】コリメートレンズの移動による対物レンズの出射光強度の変化を示す図(BD4層ディスクの場合)。
【図9】透過率可変素子による出射光強度比の補正を説明する図(BD4層ディスクの場合)。
【図10】本発明による光ピックアップの第2の実施例を示す構成図(実施例2)。
【図11】本発明による光ピックアップの第3の実施例を示す構成図(実施例3)。
【図12】本発明による光ピックアップの第4の実施例を示す構成図(実施例4)。
【図13】本発明による光ピックアップの第5の実施例を示す構成図(実施例5)。
【図14】各実施例の光ピックアップを搭載した光ディスク装置の一実施例を示す構成図(実施例6)。
【図15】光ディスク装置におけるフォーカス引込み動作までのフローチャートを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。各実施形態では光ディスク媒体としてBD多層ディスクを対象とする。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明による光ピックアップの第1の実施例を示す構成図である。
図1において、レーザ光源101からBD用の波長405nm帯の直線偏光の発散ビーム光が出射され、偏光ビームスプリッタ102、反射ミラー103、補助レンズ104を経て、コリメートレンズ105により略平行な光ビームに変換される。さらにコリメートレンズ105は、レンズ移動手段119により矢印106で示す光軸方向に移動することで、BD多層ディスク113に対する球面収差補正を行う。レンズ移動手段119は、例えばステッピングモータ、圧電素子を用いて構成され、レンズ位置検出手段107はコリメートレンズ105の移動位置を検出する。コリメートレンズ105から出射した光ビームは、1/4波長板108により円偏光に変換され、立上げミラー109により垂直に光路を曲げられた後に透過率可変素子110に入射する。透過率可変素子110は、光ビームの透過率を可変に設定可能な光学素子である。透過率可変素子110を透過した光ビームは、対物レンズ112で集光され、BD多層ディスク113の情報記録面114の目的層に照射される。開口部111は、対物レンズ112に入射する光ビームを所定の断面サイズに制限するため設けられた円形状の孔である。ピックアップ制御回路121は、情報記録面114の目的層に応じてレンズ移動手段119や透過率可変素子110を制御する。
【0016】
透過率可変素子110の具体例として、電気信号により光の透過率が可逆的に変化する液晶を用いることができる。その構成を図1の下部に示す。透過率可変素子110は、液晶パネル122と、その両表面に貼られた透明電極123、124を備えており、これら透明電極123、124に可変電源125から電圧が印加される。液晶パネル122の透過率は透明電極123、124への印加電圧で変化し、例えば、印加電圧がゼロのときは透過率が最大となり印加電圧が大きくなるに従い透過率が低下する。ピックアップ制御回路121は、可変電源125の印加電圧を設定することで透過率可変素子110の透過率を制御する。なお、透過率可変素子110の他の例として、電気信号により光の透過率を可逆的に制御可能なエレクトロミック調光ガラスを用いることもできる。
【0017】
BD多層ディスク113の情報記録面114で反射した光ビームは、対物レンズ112、透過率可変素子110、立上げミラー109を経て、1/4波長板108により直線偏光に変換される。さらにコリメートレンズ105、補助レンズ104、反射ミラー103を経て、偏光ビームスプリッタ102の反射面で反射され、多分割回折素子115に入射する。多分割回折素子115では1本の光ビームが複数の光ビームに分割され、光検出器116に到達する。
【0018】
光検出器116では光信号を電気信号に変換し、これよりサーボ信号が生成される。例えばフォーカス誤差信号にナイフエッジ法、トラッキング誤差信号にプッシュプル方式を用いて、BD多層ディスク113の情報記録面114に照射する光ビーム(集光スポット)の位置を制御する。なお、ナイフエッジ法やプッシュプル方式は公知技術であるためここでは説明を省略する。前方モニタ117は、レーザ光源101から出射して偏光ビームスプリッタ102、反射ミラー103を通過した光ビームを受光し、その検出信号はレーザ駆動回路118にフィードバックされ、レーザ光源101の出射光強度が所定値になるよう制御される。
【0019】
本実施例では、BD多層ディスク113の情報記録面114に集光スポットを絞り込むため、対物レンズ112の開口数をDVDより高い0.85としている。その際、各情報記録面間のカバー層厚さの差あるいは各情報記録面でのカバー層厚さ誤差によって発生する球面収差は、対物レンズ112の開口数の4乗に比例して増加するので、より大きな収差となる。そこで、補助レンズ104とコリメートレンズ105の2枚のレンズでコリメートレンズ系を構成し、コリメートレンズ105を矢印106で示す光軸方向に移動させることで、球面収差を補正する構成としている。
【0020】
上記球面収差補正を行うと、後述するように対物レンズ112からの出射光強度が変化する。そこで本実施例では、透過率可変素子110を設けその透過率を制御することで対物レンズ112の出射光強度が一定となるよう補正する。すなわち、コリメートレンズ105の移動位置と対物レンズ112の出射光強度の変化の関係を予め求める。そしてピックアップ制御回路121は内蔵するメモリに、コリメートレンズ105の移動位置と透過率可変素子110に設定する透過率の関係を、あるいは各情報記録面114のカバー層厚さと透過率可変素子110に設定する透過率の関係を記憶している。そしてピックアップ制御回路121はメモリを参照して、情報記録面114の目的層に応じて透過率可変素子110の透過率を設定する。
【0021】
以下、本実施例における球面収差補正と、対物レンズ出射光強度の補正について説明する。
【0022】
図2は、BD多層ディスク113の一例としてBD8層ディスクの構成を示す図である。情報記録面114は、光入射側の表面201から見て、順にL7層、L6層、L5層、L4層、L3層、L2層、L1層、L0層の8層を有する。表面201から各記録層までの距離(カバー層厚さ)を、それぞれt7、t6、t5、t4、t3、t2、t1、t0とする。これらの値は、例えばt0=146μm、t1=134μm、t2=118μm、t3=106μm、t4=90μm、t5=78μm、t6=62μm、t7=50μmであり、両端層のL7層とL0層とではカバー層厚さの差は96μm存在する。
【0023】
図3Aと図3Bは、図2で示したBD8層ディスクの球面収差補正に必要なコリメートレンズの移動量を示す図である。図3Aは、コリメートレンズ105を移動させて光ビームの形状を計算するモデルを示し、図3Bは、情報記録面の位置(またはカバー層厚さ)に対して球面収差補正に必要なコリメートレンズ105の移動量を曲線301で示す。ここで移動量0とはコリメートレンズ105の基準位置であり、コリメートレンズ105の出射面から平行光が出射する状態を指す。また対物レンズ112の基準カバー層厚さを、現在のBD2層ディスクにおける中間層での値87.5μmにしている(この基準値は、他の値に変更して対物レンズを設計することも可能である)。曲線301で示されるように、各情報記録面L0層〜L7層でのカバー層厚さと、球面収差補正を行うために必要なコリメートレンズ105の移動量はほぼ線形な関係にあることが分かる。また曲線301の勾配から、コリメートレンズ105が光軸方向に1mm移動することにより、カバー層厚さの差約35μmにより発生する球面収差を補正できることが分かる。
【0024】
図4は、本実施例での球面収差補正の効果を示す図である。
直線401は、コリメートレンズ105が基準位置にあり球面収差補正を行わない場合である。カバー層厚さが基準値87.5μmからずれるに従い、情報記録面上の集光スポットに発生する球面収差が増加し、最もカバー層が薄いL7層において約0.37λrms、最もカバー層が厚いL0層において約0.58λrmsという大きな値となっている。
【0025】
これに対し直線402は、コリメートレンズ105を前記図3Bに示したように光軸方向に移動させて球面収差を補正した場合である。この場合発生する球面収差の値は、最もカバー層が薄いL7層において約0.015λrms、最もカバー層が厚いL0層で約0.03λrmsであり、球面収差が大幅に低減されていることが分かる。
【0026】
図5は、コリメートレンズの移動による対物レンズの出射光強度の変化を示す図である。コリメートレンズ105を、前記図3Bに示される各情報記録面(L0層〜L7層)の球面収差に必要な移動量だけ移動させた場合に、対物レンズ112から出射される光強度を各情報記録面で求めたものである。条件は透過率可変素子110を設けない場合であるが、透過率可変素子110を設けてその透過率を一定値に固定した場合でも同様である。計算方法は、図3Aの計算モデルにより開口部111内を通過する光線数の変化を求めることによる。コリメートレンズ105を移動することで、コリメートレンズ105から対物レンズ112へ向う光ビームの状態が平行光から発散光または収束光に変化するため、開口部111内(すなわち対物レンズ112内)に入射する光線数が変化する。縦軸は対物レンズ112の出射光強度比P0であり、L0層における出射光強度を基準に正規化している。曲線501に示すように、情報記録面114のカバー層厚さ(すなわちコリメートレンズ105の移動量)によって対物レンズ112の出射光強度比が変化し、その値は最もカバー層が薄いL7層で約1.08となっている。つまり、対物レンズ112の出射光強度比P0がL0層〜L7層の間で約8%変化することになる。この出射光強度比P0の変化は、透過率可変素子110により次のように補正する。
【0027】
図6は、透過率可変素子による対物レンズの出射光強度比の変化の補正を説明する図である。
【0028】
情報記録面のカバー層厚さ(すなわちコリメートレンズの移動量)に対し、透過率可変素子110の透過率比Qを曲線601のように設定する。また曲線501は前記図5に示したものの再掲であり、透過率可変素子を設けないときの対物レンズの出射光強度比P0の変化を示す。ここに曲線601に示す透過率可変素子110の透過率比Qは、曲線501に示される透過率可変素子を設けないときの対物レンズの出射光強度比P0の変化を打ち消すように設定する。具体的には出射光強度比P0の逆数をとり、Q=1/P0と設定すれば良い。透過率比QはL0層における透過率を基準に正規化(Q=1)しており、例えばL7層での透過率比Qを約0.925に低下させれば良い。なお、実際の透過率の値は、情報記録面114で記録または再生に必要な光強度となるようレーザ光源101からの出射光強度と組み合わせて設定する。
【0029】
曲線602は、透過率可変素子110を通過した後の総合的な対物レンズの出射光強度比P1を示し、曲線501と曲線601を掛け合わせたものとなる。すなわち、総合的な対物レンズの出射光強度比はP1=P0×Q=1となり、情報記録面114のカバー層厚さ(L0層〜L7層)にかかわらず、言い換えればコリメートレンズの移動量にかかわらず一定となる。
【0030】
ピックアップ制御回路121のメモリには曲線601の情報、すなわち情報記録面のカバー層厚さに対する透過率可変素子110の透過率の設定値が記憶されており、メモリを参照することで情報記録面の目的層に応じて透過率可変素子110の透過率を設定することができる。あるいはピックアップ制御回路121のメモリには、コリメートレンズの移動量に対する透過率可変素子110の透過率の設定値を記憶しても良い。その場合には、球面収差補正の結果コリメートレンズがどれだけ移動したかをレンズ位置検出手段107で検出することで、移動量に応じて透過率可変素子110の透過率を設定することができる。さらには、メモリには曲線501の情報を記憶しても良く、簡単な演算で曲線601の情報に変換できる。
【0031】
以上、BD多層ディスク113としてBD8層ディスクを例にして説明してきたが、本実施例はこれに限らずディスクの層数は任意である。以下、BD4層ディスクの場合を説明する。
【0032】
図7は、BD多層ディスク113の一例としてBD4層ディスクの構成を示す図である。情報記録面114は、光入射側の表面201から見て、順にL3層、L2層、L1層、L0層の4層を有する。表面201から各記録層までの距離を、それぞれt3、t2、t1、t0とする。これらの値は、例えばt0=100μm、t1=84.5μm、t2=65μm、t3=54μmであり、両端層のL3層とL0層とではカバー層厚さの差は46μm存在する。
【0033】
BD4層ディスクの場合も前記図3Bから、L0層〜L3層の各情報記録面の位置(カバー層厚さ)に対する球面収差補正に必要なコリメートレンズ105の移動量が求められ、コリメートレンズ105を移動させて球面収差補正を行う。
【0034】
図8は、BD4層ディスクにおいてコリメートレンズの移動による対物レンズの出射光強度の変化を示す図である。曲線801には、透過率可変素子110を設けていないときの対物レンズ112から出射される光強度を、L0層における出射光強度を基準に正規化して示す。情報記録面114のカバー層厚さ(すなわちコリメートレンズ105の移動量)によって対物レンズ112の出射光強度比P0が変化し、その値は最もカバー層が薄いL3層で約1.02となっている。前記図5に示したBD8層ディスクの場合と比較し、出射光強度比P0の変化幅は約2%と小さくなっているが、これは情報記録面114の両端層(L0層とL3層)でのカバー層厚さの差が縮小し、これに伴いコリメートレンズ105の移動量も小さくなったことによる。
【0035】
図9は、BD4層ディスクにおける透過率可変素子による出射光強度比の補正を説明する図である。その補正方法は前記図6の説明と同様である。
【0036】
情報記録面のカバー層厚さ(すなわちコリメートレンズの移動量)に対し、透過率可変素子110の透過率比Qを曲線901のように設定する。すなわち透過率可変素子110の透過率比Qは、曲線801に示される透過率可変素子を設けないときの対物レンズの出射光強度比P0の変化を打ち消すように、出射光強度比P0の逆数をとりQ=1/P0と設定する。例えばL3層での透過率比Qは、L0層における透過率を基準とし約0.98に低下させれば良い。
【0037】
曲線902は、透過率可変素子110を通過した後の総合的な対物レンズの出射光強度比P1を示し、曲線801と曲線901を掛け合わせたものとなる。すなわち、総合的な対物レンズの出射光強度比はP1=P0×Q=1となり、情報記録面114のカバー層厚さ(L0層〜L3層)にかかわらず、言い換えればコリメートレンズの移動量にかかわらず一定となる。
【0038】
ピックアップ制御回路121のメモリには曲線901の情報、すなわち情報記録面のカバー層厚さ、またはコリメートレンズの移動量に対する透過率可変素子110の透過率の設定値が記憶されており、メモリを参照することで情報記録面の目的層に応じて透過率可変素子110の透過率を設定することができる。ただし、曲線901の情報と前記BD8層ディスクの場合の曲線601の情報はカバー層厚さの基準値が異なるだけであるから、1組の共通の情報を変換して用いることができる。
【0039】
このように本実施例によれば、多層ディスクに対する球面収差補正に伴い生じる対物レンズの出射光強度の変化を補正し、情報記録面の目的層に所望の強度の光ビームを照射することができる。
【実施例2】
【0040】
図10は、本発明による光ピックアップの第2の実施例を示す構成図である。実施例1(図1)と異なる点は、透過率可変素子110と1/4波長板108を一体化して1つの素子1001とした点である。その他については実施例1と同じであるため説明を省略する。本実施例は実施例1と比べて、部品点数を減らすことができるというメリットがある。
【実施例3】
【0041】
図11は、本発明による光ピックアップの第3の実施例を示す構成図である。実施例1(図1)と異なる点は、透過率可変素子110と立上げミラー109を一体化して1つの素子1101とした点である。その他については実施例1と同じであるため説明を省略する。本実施例も実施例1と比べて、部品点数を減らすことができるというメリットがある。
【実施例4】
【0042】
図12は、本発明による光ピックアップの第4の実施例を示す構成図である。実施例1(図1)と異なる点は、1/4波長板108と透過率可変素子110と立上げミラー109を一体化して1つの素子1201とした点である。その他については実施例1と同じであるため説明を省略する。本実施例は実施例1、2、3と比べて部品点数を減らすことができるというメリットがある。
【実施例5】
【0043】
図13は、本発明による光ピックアップの第5の実施例を示す構成図である。実施例1(図1)と異なる点は、透過率可変素子110の代わりに反射率が可変な反射率可変素子1301を用いて、図1の立上げミラー109と兼用した点である。この反射率可変素子1301はピックアップ制御回路121と接続されている。
【0044】
反射率可変素子1301の一例として、電気信号により光の反射率が可逆的に変化する調光ミラーを用いることができる。その構成を図13の下部に示す。透明導電膜をコーティングしたガラス基板1302上に調光ミラー層1303が蒸着されている。可変電源1304により調光ミラー層1303に、例えばマイナスの電圧を印加するとその反射率が減少し、プラスの電圧を印加するとその反射率が増加する。可変電源1304からの印加電圧は、ピックアップ制御回路121で制御する。
【0045】
光強度の補正方法は実施例1と同様であり、情報記録面114の各記録層に対して球面収差補正を行う際には、情報記録面114のカバー層厚さあるいはコリメートレンズ105の移動量に対して対物レンズ112の出射光強度が一定となるように反射率可変素子1301の反射率を制御する。ピックアップ制御回路121のメモリには、情報記録面のカバー層厚さ、またはコリメートレンズの移動量に対する反射率可変素子1301の反射率の設定値が記憶されている。
【0046】
上記実施例1から実施例5では、BD対応の光ピックアップについて説明してきたが、これに限定されず、BD/DVD/CD対応の3波長互換光ピックアップ(BD用対物レンズとDVD/CD用対物レンズの2つの対物レンズを用いた光ピックアップ、あるいは1個のBD/DVD/CD用互換対物レンズを用いた光ピックアップ)にも適用できる。
【0047】
また上記実施例1から実施例5では、対物レンズ112の出射光強度を補正する透過率可変素子110や反射率可変素子1301は、球面収差補正手段(コリメートレンズ105)と対物レンズ112の間の光路に設けたが、レーザ光源101と球面収差補正手段の間の光路に設けても良い。
【0048】
また、上記実施例1から実施例5では、球面収差補正手段としてコリメートレンズ105を光軸方向に移動する方式を用いる場合を述べたが、球面収差補正手段としてビームエキスパンダー方式を用いる場合においても対物レンズ112の出射光強度が変化する現象は同様に発生するから、上記各実施例の構成は同様に適用できる。
【実施例6】
【0049】
図14は、上記した光ピックアップを搭載した光ディスク装置の一実施例を示す構成図である。破線1401で囲まれた部分が光ピックアップであり、ここでは実施例1(図1)の光ピックアップを搭載した場合を示す。すなわち光ピックアップ1401には、球面収差補正に伴う対物レンズ112の出射光強度を補正する透過率可変素子110を備えている。
【0050】
光ピックアップ1401内のピックアップ制御回路121には、信号処理回路1402、フォーカス制御回路1405、トラッキング制御回路1406、チルト制御回路1404が接続されている。フォーカス制御回路1405、トラッキング制御回路1406、チルト制御回路1404は、対物レンズ112を保持し駆動するアクチュエータ(図示せず)に接続されている。光ピックアップ1401内の光検出器116は、フォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号、情報再生信号、チルト検出信号を出力し、信号処理回路1402に伝送される。信号処理回路1402ではこれらの信号を処理し、最適な制御信号をフォーカス制御回路1405、トラッキング制御回路1406、チルト制御回路1404に伝送してアクチュエータを駆動させる。すなわち、BDなどの多層ディスク113の情報記録面114の目的層に対して光ビームを集光させる制御を行う。また、ユーザはユーザ入力手段(図示せず)から信号処理回路1402に指令を送ることで光ディスク装置の動作を制御し、その処理状態は表示手段1403に表示される。
【0051】
図15は、光ディスク装置におけるフォーカス引込み動作までのフローチャートを示す図である。
【0052】
光ディスクが装置に挿入されると、信号処理回路1402は光検出器116の検出信号により記録層の層数や媒体の種類を判別し(S1501)、当該光ディスクが多層媒体か否かを判定する(S1502)。判定の結果多層媒体でない場合(すなわち単層媒体の場合)には、ピックアップ制御回路121に対し、単層媒体に対する処理を指示する。ピックアップ制御回路121は透過率可変素子110に対し、単層媒体に対する透過率(L0層のカバー層厚さに対して予め定めた透過率)を設定する(S1503)。さらに、L0層に対する球面収差補正のため、レンズ移動手段119を介してコリメートレンズ105を所定量だけ移動させる(S1504)。そして、フォーカス制御回路1405を介してL0層に対するフォーカス引き込みを行う(S1505)。
【0053】
S1502の判定の結果多層媒体である場合には、信号処理回路1402はピックアップ制御回路121に対し、多層媒体に対する処理を指示しかつ目的層は何層目かを確認して伝える。ここではn層目とする(S1506)。ピックアップ制御回路121は内蔵メモリを参照し、n層目に対して設定すべき透過率を読み出す。このとき、n層目のカバー層厚さから設定すべき透過率を読み出しても良い(S1507)。ピックアップ制御回路121は透過率可変素子110に対し、メモリから読み出した目的層(n層目)に対する透過率を設定する(S1508)。さらに、目的層(n層目)に対する球面収差補正のため、レンズ移動手段119を介してコリメートレンズ105を所定量だけ移動させる(S1509)。そして、フォーカス制御回路1405を介して目的層に対するフォーカス引き込みを行う(S1510)。目的層(n層目)での記録再生動作が完了し、他の記録層に移動するときは、S1506に戻り新たな記録層に対して上記の工程を繰り返せば良い。
【0054】
以上各実施例で述べた光ピックアップによれば、BDなどの多層ディスクの各情報記録面に対して球面収差補正を行った場合でも、透過率可変素子あるいは反射率可変素子を設けることで、対物レンズからの出射光強度の変化をなくすことができる。そのため、上記光ピックアップを搭載した光ディスク装置によれば、各情報記録面に対して安定した記録再生動作が実現できる。さらに各実施例では、透過率可変素子あるいは反射率可変素子に設定する透過率あるいは反射率の値を予めメモリに記憶しているので、目的の情報記録面またはそのカバー層厚さを与えるだけで、あるいは球面収差補正時のコリメートレンズの移動量に連動させて、即座に最適な透過率あるいは反射率の値を読み出して設定できる。よって、多層ディスクの記録再生において層間ジャンプが頻繁に伴う場合でも、迅速に対応することができる。
【符号の説明】
【0055】
101…レーザ光源、
105…コリメートレンズ、
107…レンズ位置検出手段、
110…透過率可変素子、
112…対物レンズ、
113…BD多層ディスク、
114…情報記録面、
116…光検出器、
119…レンズ移動手段、
121…ピックアップ制御回路、
1301…反射率可変素子、
1401…光ピックアップ、
1402…信号処理回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源と、該レーザ光源から出射した光ビームを集光し光ディスクの情報記録面に照射する対物レンズと、該光ディスクの情報記録面から反射された光ビームを検出する光検出器を備えた光ピックアップにおいて、
前記光ディスクの情報記録面の位置に応じた球面収差を補正するために前記レーザ光源と前記対物レンズの間の光路に設けた球面収差補正手段と、
該球面収差補正手段の球面収差補正に伴う前記対物レンズからの出射光強度の変化を補正するために前記レーザ光源と前記対物レンズの間の光路に設けた光強度補正手段と、
該光強度補正手段の補正量を制御するピックアップ制御回路を有することを特徴とする光ピックアップ。
【請求項2】
請求項1記載の光ピックアップにおいて、
前記光強度補正手段として、前記光ビームに対する透過率を可変とする透過率可変素子を用いたことを特徴とする光ピックアップ。
【請求項3】
請求項1記載の光ピックアップにおいて、
前記光強度補正手段として、前記光ビームに対する反射率を可変とする反射率可変素子を用いたことを特徴とする光ピックアップ。
【請求項4】
請求項2または3に記載の光ピックアップおいて、
前記ピックアップ制御回路は、前記光ディスクの情報記録面の位置に応じて、前記透過率可変素子の透過率または前記反射率可変素子の反射率を設定することを特徴とする光ピックアップ。
【請求項5】
請求項2または3に記載の光ピックアップおいて、
前記球面収差補正手段は、前記レーザ光源から出射した光ビームを略平行光に変換するコリメートレンズと、該コリメートレンズを光軸方向に移動させるレンズ移動手段と、該コリメートレンズの移動位置を検出するレンズ位置検出手段を有し、
前記ピックアップ制御回路は、前記レンズ位置検出手段の検出した前記コリメートレンズの移動位置に応じて、前記透過率可変素子の透過率または前記反射率可変素子の反射率を設定することを特徴とする光ピックアップ。
【請求項6】
請求項4または5に記載の光ピックアップおいて、
前記ピックアップ制御回路は、前記光強度補正手段を設けない条件下で前記対物レンズからの出射光強度の変化を予め求めておき、該出射光強度の変化を打ち消すように前記透過率可変素子の透過率または前記反射率可変素子の反射率を設定することを特徴とする光ピックアップ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の光ピックアップを搭載して光ディスクに情報を記録または再生する光ディスク装置において、
前記光ピックアップの光検出器からの検出信号を処理して、前記光ディスクの目的の情報記録面に対して光ビームを集光させる制御を行う信号処理回路を備え、
該信号処理回路は前記光ディスクが単層媒体か多層媒体かを判定し、前記ピックアップ制御回路を介し前記光強度補正手段に対し、単層媒体であるときは補正量を固定し、多層媒体であるときは目的の情報記録面に応じた補正量を設定するように制御することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項1】
レーザ光源と、該レーザ光源から出射した光ビームを集光し光ディスクの情報記録面に照射する対物レンズと、該光ディスクの情報記録面から反射された光ビームを検出する光検出器を備えた光ピックアップにおいて、
前記光ディスクの情報記録面の位置に応じた球面収差を補正するために前記レーザ光源と前記対物レンズの間の光路に設けた球面収差補正手段と、
該球面収差補正手段の球面収差補正に伴う前記対物レンズからの出射光強度の変化を補正するために前記レーザ光源と前記対物レンズの間の光路に設けた光強度補正手段と、
該光強度補正手段の補正量を制御するピックアップ制御回路を有することを特徴とする光ピックアップ。
【請求項2】
請求項1記載の光ピックアップにおいて、
前記光強度補正手段として、前記光ビームに対する透過率を可変とする透過率可変素子を用いたことを特徴とする光ピックアップ。
【請求項3】
請求項1記載の光ピックアップにおいて、
前記光強度補正手段として、前記光ビームに対する反射率を可変とする反射率可変素子を用いたことを特徴とする光ピックアップ。
【請求項4】
請求項2または3に記載の光ピックアップおいて、
前記ピックアップ制御回路は、前記光ディスクの情報記録面の位置に応じて、前記透過率可変素子の透過率または前記反射率可変素子の反射率を設定することを特徴とする光ピックアップ。
【請求項5】
請求項2または3に記載の光ピックアップおいて、
前記球面収差補正手段は、前記レーザ光源から出射した光ビームを略平行光に変換するコリメートレンズと、該コリメートレンズを光軸方向に移動させるレンズ移動手段と、該コリメートレンズの移動位置を検出するレンズ位置検出手段を有し、
前記ピックアップ制御回路は、前記レンズ位置検出手段の検出した前記コリメートレンズの移動位置に応じて、前記透過率可変素子の透過率または前記反射率可変素子の反射率を設定することを特徴とする光ピックアップ。
【請求項6】
請求項4または5に記載の光ピックアップおいて、
前記ピックアップ制御回路は、前記光強度補正手段を設けない条件下で前記対物レンズからの出射光強度の変化を予め求めておき、該出射光強度の変化を打ち消すように前記透過率可変素子の透過率または前記反射率可変素子の反射率を設定することを特徴とする光ピックアップ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の光ピックアップを搭載して光ディスクに情報を記録または再生する光ディスク装置において、
前記光ピックアップの光検出器からの検出信号を処理して、前記光ディスクの目的の情報記録面に対して光ビームを集光させる制御を行う信号処理回路を備え、
該信号処理回路は前記光ディスクが単層媒体か多層媒体かを判定し、前記ピックアップ制御回路を介し前記光強度補正手段に対し、単層媒体であるときは補正量を固定し、多層媒体であるときは目的の情報記録面に応じた補正量を設定するように制御することを特徴とする光ディスク装置。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−248250(P2012−248250A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118883(P2011−118883)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】
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