光ピックアップ対物レンズ、光ピックアップ装置及び光ディスク装置
【課題】十分な作動距離を確保することができ、且つ、周囲温度の変化によって発生する収差を低減することができるピックアップ対物レンズ、光ピックアップ装置及び光ディスク装置を提供する。
【解決手段】ピックアップレンズ14の少なくとも一方の面に、複数の輪帯領域を設け、複数の輪帯領域間には段差を形成した。また、複数の段差は、周囲温度が変化した場合にピックアップレンズ14において発生する収差を低減するような位相差をレーザ光に発生させる段差量を有するように形成した。さらに、ピックアップレンズ14の開口数をNA、焦点距離をf(mm)、作動距離をWD(mm)とした場合に、NA≧0.85、1.1≦f≦1.8、WD≧0.3となるようにピックアップレンズ14を構成した。
【解決手段】ピックアップレンズ14の少なくとも一方の面に、複数の輪帯領域を設け、複数の輪帯領域間には段差を形成した。また、複数の段差は、周囲温度が変化した場合にピックアップレンズ14において発生する収差を低減するような位相差をレーザ光に発生させる段差量を有するように形成した。さらに、ピックアップレンズ14の開口数をNA、焦点距離をf(mm)、作動距離をWD(mm)とした場合に、NA≧0.85、1.1≦f≦1.8、WD≧0.3となるようにピックアップレンズ14を構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブルーレイ等に用いられる光ピックアップ対物レンズ、光ピックアップ装置及び光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置に使用される対物レンズ(光ピックアップ対物レンズ)の硝材として、従来、ガラス又はプラスティックが使用されている。また、対物レンズは、成形により製作される。
また、周囲温度が変化することにより、レーザ光の波長が変化する。また、レーザ光の波長変化によって、ガラス及びプラスティックの屈折率は変化する。従って、周囲温度が変化すると、硝材の屈折率が変化する。そして、対物レンズの屈折率が変化することにより、対物レンズにおいて発生する波面収差が増加する。ここで、硝材の屈折率の一例を図69に示し、硝材の屈折率の変化率を図70に示す。図71に示す表に、20℃、35℃、50℃におけるプラスティック製の単一非球面レンズのrms波面収差を示す。なお、図71において、焦点距離は1.4mmである。図71に示すように、設計温度35℃から±15℃変化すると、rms波面収差が増大し、マレシャル限界(70mλrms)を超えてしまう。
【0003】
一方、ガラス製対物レンズの屈折率の変化による波面収差の増加は、プラスティック製対物レンズの屈折率の変化による波面収差の増加より小さい。しかし、ガラスは、プラスティックより硬く、融点・軟化点が高いため、金型の製作コスト、成形コストが高いという問題点がある。即ち、ガラス製対物レンズの金型として超硬材料を使用するため、ガラス製対物レンズの金型の製作コストが高価となる。また、ガラス製対物レンズの成形においては、金型温度をガラスの融点・軟化点まで上昇させる必要があり、金型温度の上げ下げに時間がかかる。
そのため、プラスティック製であって、周囲温度の変化によって増加する波面収差がマレシャル限界に収まる光ピックアップレンズの開発が望まれている。
【0004】
従来、対物レンズの収差補正方法として2つの方法がよく使用されている。1つ目は、コリメータレンズにより収差を補正する方法である。2つ目は、対物レンズ自身で収差を補正する方法である。
【0005】
コリメータレンズにより収差補正を行う場合、コリメータレンズの片側の面に回折構造を設ける。そして、当該回折構造による回折を利用して収差を補正する。
【0006】
また、対物レンズ自身により収差補正を行う場合、対物レンズの片側の面に複数の回折構造を設ける。そして、当該回折構造による回折を利用して収差を補正する。
【0007】
また、特許文献1には、対物レンズ自身に複数の回折構造を設けることにより、周囲温度が変化して波面収差がマレシャル限界を超えない対物レンズを形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−252135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、コリメータレンズにより収差補正を行う場合、1つの対物レンズに対して専用のコリメータレンズを設計しなくてはならない。そのため、対物レンズを変更する場合には、コリメータレンズも変更しなければならないという無駄が生じる。
【0010】
また、対物レンズ自身に複数の回折構造を設けることにより収差補正を行う場合、対物レンズに設ける段差の数が多くなる。そして、段差の数が多くなると、段差間の傾斜部分の面積が増える。そのため、不要光が多くなり、対物レンズの光利用効率が低下してしまう。
【0011】
また、上記特許文献1に記載の対物レンズでは、焦点距離が短い。そのため、十分な作動距離(WD≧0.30mm)を確保することができない。
【0012】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、十分な作動距離を確保することができ、且つ、周囲温度の変化によって発生する収差を低減することができる光ピックアップ対物レンズ、光ピックアップ装置及び光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明にかかる光ピックアップ対物レンズは、レーザ光源から出射された光束をBD(ブルーレイディスク)に集光するプラスティック製の光ピックアップ対物レンズである。また、前記光ピックアップ対物レンズは、少なくとも一方の面に、複数の輪帯領域を有し、前記複数の輪帯領域間には段差が形成されている。また、複数の前記段差は、周囲温度が変化した場合に前記光ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような位相差を入射光束に発生させる段差量を有している。そして、前記光ピックアップレンズは、前記光ピックアップ対物レンズの開口数をNA、焦点距離をf(mm)、作動距離をWD(mm)、5次球面収差をSA5(λrms)とした場合に、前記光ピックアップ対物レンズによって前記レーザ光源から出射された光束を多層光ディスクに集光する場合に、前記多層光ディスクの記録層間の基板厚差に基づいて発生する3次球面収差を補正した際に、(1)式乃至(4)式を満たすものである。
NA≧0.85 ・・・・・・(1)
1.1≦f≦1.8 ・・・・・・(2)
WD≧0.3 ・・・・・・(3)
|SA5|≦0.020 ・・(4)
【0014】
本発明においては、光ピックアップ対物レンズの少なくとも一方の面に複数の輪帯領域が設けられ、当該複数の輪帯領域間には段差が形成されている。また、複数の段差は、周囲温度が変化した場合に光ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような位相差を入射光束に発生させる段差量を有する。これにより、周囲温度が変化した場合、隣り合う輪帯領域を透過した光束に周囲温度の変化によって発生する収差を低減するような位相差が発生する。そして、当該位相差により、周囲温度の変化によって生じる収差が低減される。
また、焦点距離が1.1mm未満の場合、作動距離(WD)を十分に確保することが難しい。また、焦点距離が1.8mmより大きい場合、周囲温度の変化によって生じる収差が大きくなるため、光ピックアップ対物レンズに形成する段差だけで補正することが難しくなる。よって、焦点距離の範囲を1.1mm以上1.8mm以下とすることにより、十分に作動距離(WD)を確保することができるとともに、周囲温度の変化によって生じる収差を十分に低減することができる。
さらに、(4)式を満たすことにより、多層光ディスクの各記録層に対しても良好に集光することができる。
さらに、以下の(10)式を満たすことがより好ましい。
|SA5|≦0.010 ・・(10)
ここで、SA5は、以下の(11)式で定義される5次球面収差である。
【数1】
(11)式において、A15は、ツェルニケ多項式の係数であり、光線高さをh(mm)とすると、A15=20h6−30h4+12h2−1である。
【0015】
また、マージナル光線が入射する部分における接線角をθM(°)、マージナル光線が入射する部分におけるレンズのレンズ最小肉厚をtM(mm)、前記光ピックアップ対物レンズの屈折率をNとした場合に、(5)式乃至(7)式を満たすことが好ましい。
73≦θM≦75 ・・・・・・(5)
1.5≦N≦1.55 ・・・・・・(6)
tM≧0.35 ・・・・・・(7)
マージナル光線が入射する部分における接線角θMが73°より小さい場合に、光ピックアップ対物レンズに段差を設けると、光ピックアップ対物レンズへの光軸外からの斜入射に対する光ピックアップ対物レンズの特性(以下、軸外特性を称する。)が悪化する。さらに、焦点距離が長くなると軸外特性の悪化が大きくなる。換言すれば、マージナル光線が入射する部分における接線角θMが73°より小さい場合に、十分な作動距離を確保しつつ、且つ、光ピックアップ対物レンズに周囲温度の変化に起因する波面収差の劣化を補正する段差を設けると、軸外特性が劣化してしまう。また、接線角θMが75°より大きいと、光ピックアップ対物レンズの製造が困難となる。したがって、73≦θM≦75を満たすことにより、十分な作動距離を確保しつつ、光ピックアップ対物レンズに段差を設けることによる軸外特性の劣化を防ぐとともに、光ピックアップ対物レンズの製造を容易にすることができる。なお、マージナル光線とは、光ピックアップ対物レンズの有効径内の最も外側を透過する光線である。
また、レンズ最小肉厚tMが、0.35mmより小さいと、光ピックアップ対物レンズのコバ厚が薄くなりすぎてしまう。そのため、光ピックアップ対物レンズの製造が難しくなる。したがって、レンズ最小肉厚tMを0.35mm以上とすることにより、光ピックアップ対物レンズを容易に製造することができる。
また、(5)式乃至(7)式を満たすことにより、(4)式を満たすピックアップ対物レンズを容易に製造することができる。
【0016】
また、光ピックアップ対物レンズの少なくとも一方の面に、上述した複数の輪帯領域を設けると、多層光ディスクの各記録層に集光する際における軸上特性が劣化してしまう。しかし、(5)式乃至(7)式を満たすことにより、光ピックアップ対物レンズによってレーザ光源から出射された光束を多層光ディスクに集光する場合に、多層光ディスクの記録層間の基板厚差に基づいて発生する3次球面収差を補正しても、軸上特性を示す指標の1つであるSA5が劣化せずにすむ。これにより、多層光ディスクの各記録層に集光する際における軸上特性の劣化を抑制することができる。
【0017】
また、5次のコマ収差をCOMA5とした場合に、画角0.3°におけるCOMA5の絶対値が0.025λrms以下であることが好ましい。さらに、画角0.3°におけるCOMA5の絶対値が0.010λrms以下であることがより好ましい。ここで、COMA5は、以下の(12)式により表される。
【数2】
(12)式において、A13、A14はツェルニケ多項式の係数である。具体的には、A13=(10h5−12h3+3h)cosα、A14=(10h5−12h3+3h)sinαである。また、hは光線高さ(mm)である。
COMA5の絶対値が0.025λrmsより大きい場合に、十分な作動距離を確保しつつ、且つ、光ピックアップ対物レンズに周囲温度の変化に起因する波面収差の劣化を補正する段差を設けると、軸外特性が劣化してしまう。したがって、COMA5の絶対値が0.025λrms以下とすることにより、十分な作動距離を確保しつつ、光ピックアップ対物レンズに段差を設けることによる軸外特性の劣化を防ぐことができる。
【0018】
さらに、前記光ピックアップ対物レンズに形成された前記輪帯領域の数がn(nは、n≧3を満たす正の整数)である場合に、前記光ピックアップ対物レンズの光軸から数えて、1番目からi番目(i=2、3、・・・、n−1)までの前記輪帯領域の範囲において前記光ピックアップ対物レンズのレンズ厚が徐々に薄くなり、i+1番目(i+1=3、4、・・・、n)からn番目までの前記輪帯領域の範囲において前記光ピックアップ対物レンズのレンズ厚が徐々に厚くなるように、前記段差が形成されることが好ましい。
換言すれば、光ピックアップ対物レンズの光軸から所定の半径位置まではレンズ厚が薄くなり、所定の半径位置から外縁まではレンズ厚が厚くなるように、段差を形成することが好ましい。
【0019】
また、さらに、全ての光線高さにおける正弦条件違反量の絶対値が0.01以下であることが好ましい。ここで、正弦条件違反量(SC)を、以下の(13)式により表す。
SC=(h/sinθ−f)/f ・・・・・・(13)
(13)式において、hは光線高さ(mm)、θは光軸の垂線と光ピックアップ対物レンズの入射面の接線とのなす角(接線角)、fは焦点距離(mm)である。
正弦条件違反量(SC)の絶対値が0.01より大きい場合に、光ピックアップ対物レンズに段差を設けると、光ピックアップ対物レンズの軸外における特性が悪化する。さらに、焦点距離が長くなると軸外特性の悪化が大きくなる。換言すれば、全ての光線高さにおける正弦条件違反量の絶対値が0.01より大きい場合に、十分な作動距離を確保しつつ、且つ、光ピックアップ対物レンズに周囲温度の変化に起因する波面収差の劣化を補正する段差を設けると、軸外特性が劣化してしまう。したがって、全ての光線高さにおける正弦条件違反量の絶対値を0.01以下とすることにより、十分な作動距離を確保しつつ、光ピックアップ対物レンズに段差を設けることによる軸外特性の劣化を防ぐことができる。
【0020】
また、前記光ピックアップ対物レンズの設計波長は500nm以下であることが好ましい。
さらに、前記段差は、入射光の位相が輪帯領域相互に波長の略整数倍で異なる段差量であって、周囲温度が変化した場合に前記光ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような位相差を光束に発生させる段差量を有することが好ましい。
これにより、周囲温度が変化した場合に、周囲温度の変化によって発生する収差を低減するような位相差が光束に発生する。
【0021】
また、前記段差の隣接段差量をd(mm)、波長をλ(mm)、前記光ピックアップ対物レンズの屈折率をNとした場合に、(8)式を満たすことが好ましい。
4≦(N−1)×d/λ≦28 ・・・・・・(8)
換言すれば、隣接段差量が、波長の4倍以上28倍以下であることが好ましい。隣接段差量が波長の4倍未満である場合、収差を十分補正するためには、光ピックアップ対物レンズに形成する輪帯領域の数を増やす必要がある。そのため、光利用効率が低下してしまう。一方、隣接段差量が波長の28倍より大きい場合、段差量が大きくなるため、光ピックアップ対物レンズの製造が困難となる。従って、(8)式を満たすように段差を形成することにより、光利用効率の低下を防止するとともに、光ピックアップ対物レンズの製造を容易にすることができる。
【0022】
また、前記段差の軸上段差量をd0、波長をλ、前記光ピックアップ対物レンズの屈折率をNとした場合に、(9)式を満たすことが好ましい。
4≦(N−1)×d0/λ≦14 ・・・・・・(9)
換言すれば、軸上段差量が、波長の4倍以上14倍以下であることが好ましい。軸上段差量が波長の4倍未満である場合、収差を十分補正するためには、光ピックアップ対物レンズに形成する輪帯領域の数を増やす必要がある。そのため、光利用効率が低下してしまう。一方、軸上段差量が波長の14倍より大きい場合、段差量が大きくなるため、光ピックアップ対物レンズの製造が困難となる。従って、(9)式を満たすように段差を形成することにより、光利用効率の低下を防止するとともに、光ピックアップ対物レンズの製造を容易にすることができる。
【0023】
また、前記段差の隣接段差量をd(mm)とした場合、前記隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が60λ以上、180λ以下であることが好ましい。
隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が60λ未満の場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を十分に低減することが難しくなる。一方、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が180λより大きい場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を過剰に補正してしまうため、かえって、波面収差が劣化してしまう。また、段差量が大きくなってしまい、光ピックアップ対物レンズの製造が困難となる。
さらに、前記隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が70λ以上、180λ以下であることが好ましい。
これにより、光ピックアップ対物レンズ自体の温度が変化した場合に発生する波面収差も低減することができる。
【0024】
また、前記段差の軸上段差量をd0(mm)とした場合、前記軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が30λ以上、120λ以下であることが好ましい。
軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が30λ未満の場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を十分に低減することが難しくなる。一方、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が120λより大きい場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を過剰に補正してしまうため、かえって、波面収差が劣化してしまう。また、段差量が大きくなってしまい、光ピックアップ対物レンズの製造が困難となる。
さらに、前記軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が40λ以上、120λ以下であることが好ましい。
これにより、光ピックアップ対物レンズ自体の温度が変化した場合に発生する波面収差も低減することができる。
【0025】
また、本発明の他の光ピックアップ対物レンズは、レーザ光源から出射された光束をBD(ブルーレイディスク)に集光するプラスティック製の光ピックアップ対物レンズである。また、前記光ピックアップ対物レンズは、少なくとも一方の面に、複数の輪帯領域を有し、前記複数の輪帯領域間には段差が形成されている。また、複数の前記段差は、周囲温度が変化した場合に前記光ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような位相差を入射光束に発生させる段差量を有している。そして、前記光ピックアップレンズは、前記光ピックアップ対物レンズの開口数をNA、焦点距離をf(mm)とした場合に、(1)式乃至(3)式を満たすものである。
NA≧0.85 ・・・・・・(1)
1.1≦f≦1.8 ・・・・・・(2)
WD≧0.3 ・・・・・・(3)
【0026】
本発明においては、光ピックアップ対物レンズの少なくとも一方の面に複数の輪帯領域が設けられ、当該複数の輪帯領域間には段差が形成されている。また、複数の段差は、周囲温度が変化した場合に光ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような位相差を入射光束に発生させる段差量を有する。これにより、周囲温度が変化した場合、隣り合う輪帯領域を透過した光束に周囲温度の変化によって発生する収差を低減するような位相差が発生する。そして、当該位相差により、周囲温度の変化によって生じる収差が低減される。
また、焦点距離が1.1mm未満の場合、作動距離(WD)を十分に確保することが難しい。また、焦点距離が1.8mmより大きい場合、周囲温度の変化によって生じる収差が大きくなるため、光ピックアップ対物レンズに形成する段差だけで補正することが難しくなる。よって、焦点距離の範囲を1.1mm以上1.8mm以下とすることにより、十分に作動距離(WD)を確保することができるとともに、周囲温度の変化によって生じる収差を十分に低減することができる。
【0027】
また、前記光ピックアップ対物レンズの設計波長は500nm以下であることが好ましい。
さらに、前記段差は、入射光の位相が輪帯領域相互に波長の略整数倍で異なる段差量であって、周囲温度が変化した場合に前記光ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような位相差を光束に発生させる段差量を有することが好ましい。
これにより、周囲温度が変化した場合に、周囲温度の変化によって発生する収差を低減するような位相差が光束に発生する。
【0028】
また、前記段差の隣接段差量をd(mm)、波長をλ(mm)、前記光ピックアップ対物レンズの屈折率をNとした場合に、(8)式を満たすことが好ましい。
4≦(N−1)×d/λ≦28 ・・・・・・(8)
換言すれば、隣接段差量が、波長の4倍以上28倍以下であることが好ましい。隣接段差量が波長の4倍未満である場合、収差を十分補正するためには、光ピックアップ対物レンズに形成する輪帯領域の数を増やす必要がある。そのため、光利用効率が低下してしまう。一方、隣接段差量が波長の28倍より大きい場合、段差量が大きくなるため、光ピックアップ対物レンズの製造が困難となる。従って、(8)式を満たすように段差を形成することにより、光利用効率の低下を防止するとともに、光ピックアップ対物レンズの製造を容易にすることができる。
【0029】
また、前記段差の軸上段差量をd0、波長をλ、前記光ピックアップ対物レンズの屈折率をNとした場合に、(9)式を満たすことが好ましい。
4≦(N−1)×d0/λ≦14 ・・・・・・(9)
換言すれば、軸上段差量が、波長の4倍以上14倍以下であることが好ましい。軸上段差量が波長の4倍未満である場合、収差を十分補正するためには、光ピックアップ対物レンズに形成する輪帯領域の数を増やす必要がある。そのため、光利用効率が低下してしまう。一方、軸上段差量が波長の14倍より大きい場合、段差量が大きくなるため、光ピックアップ対物レンズの製造が困難となる。従って、(9)式を満たすように段差を形成することにより、光利用効率の低下を防止するとともに、光ピックアップ対物レンズの製造を容易にすることができる。
【0030】
また、前記光ピックアップ対物レンズに形成された前記輪帯領域の数がn(nは正の整数)である場合に、nが偶数であるとき、前記光ピックアップ対物レンズの光軸から数えて、1番目からn/2番目までの前記輪帯領域の範囲において前記光ピックアップ対物レンズのレンズ厚が徐々に薄くなり、((n/2)+1)番目からn番目までの前記輪帯領域の範囲において前記光ピックアップ対物レンズのレンズ厚が徐々に厚くなるように、前記段差が形成され、前記nが奇数であるとき、前記光ピックアップ対物レンズの光軸から数えて、1番目から((n+1)/2)番目までの前記輪帯領域の範囲において前記光ピックアップ対物レンズのレンズ厚が徐々に薄くなり、((n+1)/2)番目からn番目までの前記輪帯領域の範囲において前記光ピックアップ対物レンズのレンズ厚が徐々に厚くなるように、前記段差が形成されることが好ましい。
【0031】
換言すれば、光ピックアップ対物レンズの光軸から所定の半径位置まではレンズ厚が薄くなり、所定の半径位置から外縁まではレンズ厚が厚くなるように、段差を形成する。具体的には、光ピックアップ対物レンズの光軸から所定の半径位置まではレンズ厚が薄くなり、所定の半径位置から外縁まではレンズ厚が厚くなるように、段差を形成する。光ピックアップ対物レンズに段差を設けることによって、光ピックアップ対物レンズの軸外特性が悪化する。さらに、焦点距離が長くなると軸外特性の悪化が大きくなる。しかし、光ピックアップ対物レンズのレンズ厚が所定の半径位置において最も薄くなるように段差を形成することにより、光ピックアップ対物レンズの軸外におけるrms波面収差を0.035λ以下に抑えることができる。
【0032】
また、光ピックアップ対物レンズのレンズ厚が所定の半径位置において最も薄くなるように段差を形成することにより、(5)式乃至(7)式の条件を満たさずとも、作動距離を十分に確保し、且つ、周囲温度の変化に伴う収差を補正する段差を光ピックアップ対物レンズに設けることによる軸外特性の劣化を防ぐことができる。
また、光ピックアップ対物レンズのレンズ厚が所定の半径位置において最も薄くなるように段差を形成することにより、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差及び軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差を小さくすることができる。これにより、光ピックアップ対物レンズの製造がより容易となる。
【0033】
また、前記段差の隣接段差量をd(mm)とした場合、前記隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が60λ以上、90λ以下であることが好ましい。
隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が60λ未満の場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を十分に低減することが難しくなる。一方、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が90λより大きい場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を過剰に補正してしまうため、かえって、波面収差が劣化してしまう。また、段差量が大きくなってしまい、光ピックアップ対物レンズの製造が困難となる。
さらに、前記隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が70λ以上、90λ以下であることが好ましい。
これにより、光ピックアップ対物レンズ自体の温度が変化した場合に発生する波面収差も低減することができる。
【0034】
また、前記段差の軸上段差量をd0(mm)とした場合、前記軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が30λ以上60λ以下であることが好ましい。
軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が30λ未満の場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を十分低減することが難しくなる。一方、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が60λより大きい場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を過剰に補正してしまうため、かえって、波面収差が劣化してしまう。また、段差量が大きくなってしまい、光ピックアップ対物レンズの製造が困難となる。
さらに、前記軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が40λ以上60λ以下であることが好ましい。
これにより、光ピックアップ対物レンズ自体の温度が変化した場合に発生する波面収差も低減することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明により、十分な作動距離を確保することができ、且つ、周囲温度の変化によって発生する収差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態にかかる光ピックアップ光学系の一例を示したものである。
【図2】設計波長及び設計温度時において本実施形態にかかるピックアップレンズを透過するレーザ光の波面(位相)を示す図(図2(a))であり、周囲温度が設計温度より低くなり、レーザ光の波長が設計波長より短くなった場合において本実施形態にかかるピックアップレンズを透過するレーザ光の波面(位相)を示す図(図2(b))、周囲温度が設計温度より高くなり、レーザ光の波長が設計波長より長くなった場合において本実施形態にかかるピックアップレンズを透過するレーザ光の波面(位相)を示す図(図2(c))である。
【図3】周囲温度が20℃である場合に輪帯領域が形成されていないピックアップレンズにおいて発生する波面収差を示す図(図3(a))、周囲温度が20℃である場合に本実施形態にかかるピックアップレンズにおいて発生する波面収差を示す図(図3(b))である。
【図4】周囲温度が50℃である場合に輪帯領域が形成されていないピックアップレンズにおいて発生する波面収差を示す図(図4(a))、周囲温度が50℃である場合に本実施形態にかかるピックアップレンズにおいて発生する波面収差を示す図(図4(b))である。
【図5】本実施形態にかかるピックアップレンズを模式的に表す側面図である。
【図6】本実施形態にかかるピックアップレンズを模式的に表す側面図である。
【図7】本発明にかかるピックアップレンズのレンズ面形状の一例を示す側面図である。
【図8】実施例1にかかるピックアップレンズの輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量及び隣接段差量を示す表である。
【図9】実施例1にかかるピックアップレンズの輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量の累積値及び隣接段差量の累積値を示す表である。
【図10】実施例1にかかる光ピックアップ光学系のデータを示す表である。
【図11】実施例1にかかるピックアップレンズの光ディスク側の面(面番号3)の面形状を規定する係数を示す表である。
【図12】実施例1にかかるピックアップレンズの光源側の面(面番号2)の面形状を規定する係数を示す表である。
【図13】ピックアップレンズのレンズ面形状の一例を示す側面図である。
【図14】実施例2にかかるピックアップレンズの輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量及び隣接段差量を示す表である。
【図15】実施例2にかかるピックアップレンズの輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量の累積値及び隣接段差量の累積値を示す表である。
【図16】実施例2にかかる光ピックアップ光学系のデータを示す表である。
【図17】実施例2にかかるピックアップレンズの光ディスク側の面(面番号3)の面形状を規定する係数を示す表である。
【図18】実施例2にかかるピックアップレンズの光源側の面(面番号2)の面形状を規定する係数を示す表である。
【図19】実施例3にかかるピックアップレンズの輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量及び隣接段差量を示す表である。
【図20】実施例3にかかるピックアップレンズの輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量の累積値及び隣接段差量の累積値を示す表である。
【図21】実施例3にかかる光ピックアップ光学系のデータを示す表である。
【図22】実施例3にかかるピックアップレンズの光ディスク側の面(面番号3)の面形状を規定する係数を示す表である。
【図23】実施例3にかかるピックアップレンズの光源側の面(面番号2)の面形状を規定する係数を示す表である。
【図24】実施例4にかかるピックアップレンズの輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量及び隣接段差量を示す表である。
【図25】実施例4にかかるピックアップレンズの輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量の累積値及び隣接段差量の累積値を示す表である。
【図26】実施例4にかかる光ピックアップ光学系のデータを示す表である。
【図27】実施例4にかかるピックアップレンズの光ディスク側の面(面番号3)の面形状を規定する係数を示す表である。
【図28】実施例4にかかるピックアップレンズの光源側の面(面番号2)の面形状を規定する係数を示す表である。
【図29】実施例5にかかるピックアップレンズの輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量及び隣接段差量を示す表である。
【図30】実施例5にかかるピックアップレンズの輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量の累積値及び隣接段差量の累積値を示す表である。
【図31】実施例5にかかる光ピックアップ光学系のデータを示す表である。
【図32】実施例5にかかるピックアップレンズの光ディスク側の面(面番号3)の面形状を規定する係数を示す表である。
【図33】実施例5にかかるピックアップレンズの光源側の面(面番号2)の面形状を規定する係数を示す表である。
【図34】実施例6にかかるピックアップレンズの輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量及び隣接段差量を示す表である。
【図35】実施例6にかかるピックアップレンズの輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量の累積値及び隣接段差量の累積値を示す表である。
【図36】実施例6にかかる光ピックアップ光学系のデータを示す表である。
【図37】実施例6にかかるピックアップレンズの光ディスク側の面(面番号3)の面形状を規定する係数を示す表である。
【図38】実施例6にかかるピックアップレンズの光源側の面(面番号2)及びの面形状を規定する係数を示す表である。
【図39】比較例1にかかる光ピックアップ光学系のデータを示す表である。
【図40】比較例1にかかるピックアップレンズの光源側の面(面番号2)及び光ディスク側の面(面番号3)の面形状を規定する係数を示す表である。
【図41】比較例1にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が20℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図41(a))、比較例1にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が35℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図41(b))、比較例1にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が50℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図41(c))である。
【図42】実施例1にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が20℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図42(a))、実施例1にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が35℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図42(b))、実施例1にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が50℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図42(c))である。
【図43】実施例2にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が20℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図43(a))、実施例2にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が35℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図43(b))、実施例2にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が50℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図43(c))である。
【図44】実施例3にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が20℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図44(a))、実施例3にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が35℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図44(b))、実施例3にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が50℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図44(c))である。
【図45】実施例4にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が20℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図45(a))、実施例4にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が35℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図45(b))、実施例4にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が50℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図45(c))である。
【図46】実施例5にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が20℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図46(a))、実施例5にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が35℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図46(b))、実施例5にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が50℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図46(c))である。
【図47】実施例6にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が20℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図47(a))、実施例6にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が35℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図47(b))、実施例6にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が50℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図47(c))である。
【図48】実施例1乃至6にかかるピックアップレンズにおける接線角θM、最小肉厚tM、画角0°の範囲の収差項目、画角0.3°の範囲の収差項目を示す表である。
【図49】実施例1にかかるピックアップレンズの画角0°の範囲の波面収差を示すグラフ(図49(a))、実施例1にかかるピックアップレンズの画角0.3°の範囲の波面収差を示すグラフ(図49(b))である。
【図50】実施例2にかかるピックアップレンズの画角0°の範囲の波面収差を示すグラフ(図50(a))、実施例2にかかるピックアップレンズの画角0.3°の範囲の波面収差を示すグラフ(図50(b))である。
【図51】実施例3にかかるピックアップレンズの画角0°の範囲の波面収差を示すグラフ(図51(a))、実施例3にかかるピックアップレンズの画角0.3°の範囲の波面収差を示すグラフ(図51(b))である。
【図52】実施例4にかかるピックアップレンズの画角0°の範囲の波面収差を示すグラフ(図52(a))、実施例4にかかるピックアップレンズの画角0.3°の範囲の波面収差を示すグラフ(図52(b))である。
【図53】実施例5にかかるピックアップレンズの画角0°の範囲の波面収差を示すグラフ(図53(a))、実施例5にかかるピックアップレンズの画角0.3°の範囲の波面収差を示すグラフ(図53(b))である。
【図54】実施例6にかかるピックアップレンズの画角0°の範囲の波面収差を示すグラフ(図54(a))、実施例6にかかるピックアップレンズの画角0.3°の範囲の波面収差を示すグラフ(図54(b))である。
【図55】実施例1乃至6にかかるピックアップレンズの正弦条件違反量を示す表である。
【図56】実施例1にかかるピックアップレンズの正弦条件違反量を示すグラフである。
【図57】実施例2にかかるピックアップレンズの正弦条件違反量を示すグラフである。
【図58】実施例3にかかるピックアップレンズの正弦条件違反量を示すグラフである。
【図59】実施例4にかかるピックアップレンズの正弦条件違反量を示すグラフである。
【図60】実施例5にかかるピックアップレンズの正弦条件違反量を示すグラフである。
【図61】実施例6にかかるピックアップレンズの正弦条件違反量を示すグラフである。
【図62】実施例1にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.075mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図62(a))、実施例1にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図62(b))、実施例1にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図62(c))である。
【図63】実施例2にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.075mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図63(a))、実施例2にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図63(b))、実施例2にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図63(c))である。
【図64】実施例3にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.075mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図64(a))、実施例3にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図64(b))、実施例3にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図64(c))である。
【図65】実施例4にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.075mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図65(a))、実施例4にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図65(b))、実施例4にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図65(c))である。
【図66】実施例5にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.075mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図66(a))、実施例5にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図66(b))、実施例5にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図66(c))である。
【図67】実施例6にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.075mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図67(a))、実施例6にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図67(b))、実施例6にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図67(c))である。
【図68】比較例1にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.075mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図68(a))、比較例1にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図68(b))、比較例1にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図68(c))である。
【図69】硝材の屈折率を示す表である。
【図70】硝材の屈折率の変化率をに示す表である。
【図71】20℃、35℃、50℃におけるプラスティック製の単一非球面レンズのrms波面収差を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。図1は、本発明の実施の形態にかかる光ピックアップ光学系1の一例を示したものである。本実施形態にかかる光ピックアップ光学系1は、本発明にかかる光ピックアップ装置又は光ディスク装置に用いられる。光ピックアップ光学系1は、光源11(レーザ光源)、ビームスプリッタ12、コリメータレンズ13、ピックアップレンズ14(光ピックアップ対物レンズ)、検出系16等を備えている。なお、本実施形態では、光ディスク15としてBD(ブルーレイディスク)を用いた。
【0038】
光源11は、BD用に用いられる青色レーザーダイオード等を備えている。
【0039】
光源11から出射されたレーザ光(光束)の光路上にビームスプリッタ12が設けられている。
【0040】
ビームスプリッタ12より出射したレーザ光の光路上にコリメータレンズ13が設けられている。コリメータレンズ13は、ビームスプリッタ12から出射されたレーザ光の発散度合いを調整して、当該レーザ光を出射する。
【0041】
コリメータレンズ13を透過したレーザ光の光路上にピックアップレンズ14が設けられている。
【0042】
ピックアップレンズ14は、入射された光を光ディスク(BD)15の情報記録面に集光させる機能を有する。BDには、記録層を1層のみ有する単層BDと、記録層を複数層有する多層BDとが知られている。単層BDの透明基板厚は0.100mmである。また、記録層を2層有する2層BDの各記録層の透明基板厚は、0.075mmと、0.100mmである。ピックアップレンズ14が2層BDの記録層にレーザ光を集光する場合、各記録層間の基板厚差0.025mmによって、約0.25λrmsの大きな球面収差が発生してしまう。そこで、通常、コリメータレンズ13を光軸に沿って移動させることにより、ピックアップレンズ14に入射する光束の発散度合いを調整することにより、当該球面収差を補正する。ここで、コリメータレンズ13を光軸に沿って移動させることによって補正するという事は、ピックアップレンズ14に入射するレーザ光の発散度合いを調整するという事である。これは、ピックアップレンズ14に入射するレーザ光の仮想的な発光点位置(物点の位置)を調整し、仮想的な発光点位置からコリメータレンズ13を介さずにピックアップレンズ14にレーザ光を入射させる事と等価である。換言すれば、ピックアップレンズ14の物体距離を調整することにより、当該球面収差を補正する。
そこで、本発明の実施の形態にかかるピックアップレンズ14は、2層BDの各記録層の透明基板厚の中間の透明基板厚である0.0875mmに良好に集光するように設計されている。これにより、各記録層間の基板厚差によって生じる球面収差を低減することができる。
なお、本実施の形態では、光ディスク15の透明基板はポリカーボネイトとした。
【0043】
ピックアップレンズ14は、さらに、光ディスク15の情報記録面で反射されたレーザ光を検出系16に導く機能も有する。
また、ピックアップレンズ14の少なくとも一方の面には、ピックアップレンズ14の光軸を同心とする複数の輪帯領域が形成されている。また、隣り合う輪帯領域間には段差が形成されている。換言すれば、ピックアップレンズ14の少なくとも一方の面は、複数の段差により、ピックアップレンズ14の光軸を同心とする複数の輪帯領域に分割されている。また、ピックアップレンズ14は、プラスティック素材から形成されている。
【0044】
後述するように、ピックアップレンズ14に形成された複数の段差の段差量は、設計波長及び設計温度時(レーザ光の波長が設計波長であり、周囲温度が設計温度であるとき)に入射したレーザ光の位相が隣接する輪帯領域相互に波長の略整数倍で異なるように設定されている。
また、ピックアップレンズ14に形成された複数の段差は、周囲温度が変化することによって発生する収差を低減するようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有する。
ここで、波長の略整数倍とは、波長の(整数)×0.999倍〜波長の(整数)×1.001倍であることが好ましい。たとえば、本実施の形態において、波長の略10倍とは、10×0.999=9.99、10×1.001=10.01より、波長の9.99倍〜10.01倍を意味する。なお、波長の略整数倍とは、波長の(整数)×0.995倍〜波長の(整数)×1.005倍であってもよい。この場合においても、ピックアップレンズ14に形成された段差により、周囲温度が変化した場合に発生する波面収差を十分に低減することができる。
【0045】
フォーカスサーボ時、及びトラッキングサーボ時には、ピックアップレンズ14が図示されないアクチュエータにより動作する。
【0046】
次に、光源11から出射されたレーザ光が光ディスク15の情報記録面で反射され検出系16に検出されるまでの挙動について説明する。光源11から出射されたレーザ光はビームスプリッタ12を透過してコリメータレンズ13に入射する。
【0047】
コリメータレンズ13は、ビームスプリッタ12から出射されたレーザ光の発散度合いを調整して、当該レーザ光を出射する。
【0048】
コリメータレンズ13を透過したレーザ光はピックアップレンズ14に入射される。ここで、本実施の形態においては、周囲温度が変化した場合、このピックアップレンズ14に設けられた複数の段差は、周囲温度の変化によって発生する収差を低減するようにレーザ光の位相を補正する。そして、ピックアップレンズ14は、補正後のレーザ光を光ディスク15の情報記録面に集光させる。光ディスク15の情報記録面で反射されたレーザ光は、ピックアップレンズ14を介して検出系16に入射し、検出される。検出系16は、当該レーザ光を検出し、光電変換することによって、フォーカスサーボ信号、トラックサーボ信号、再生信号などを生成する。
【0049】
次に、本発明の実施の形態にかかる光ピックアップ光学系1において用いられるピックアップレンズ14について詳細に説明する。図2は、本実施の形態にかかる光ピックアップ光学系1におけるピックアップレンズ14を示す図である。図2(a)は、設計波長及び設計温度時におけるレーザ光の波面(位相)を示し、図2(b)は、周囲温度が設計温度より低くなりレーザ光の波長が設計波長より短くなった場合におけるレーザ光の波面(位相)を示し、図2(c)は、周囲温度が設計温度より高くなりレーザ光の波長が設計波長より長くなった場合におけるレーザ光の波面(位相)を示している。本実施形態では、ピックアップレンズ14の光源11側の面に、上述した複数の段差を設ける。そして、複数の段差の段差量は、透過したレーザ光の位相が隣接する輪帯領域相互に波長の略整数倍で異なるように設定されている。また、ピックアップレンズ14の段差は、周囲温度が変化した場合に周囲温度の変化によって生じる収差を低減するようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有する。
【0050】
すなわち、設計波長及び設計温度時にレーザ光がピックアップレンズ14に入射する場合、各輪帯領域を透過したレーザ光の位相は相互に波長の整数倍だけ異なる。従って、図2(a)に示されるように、設計波長及び設計温度時には、異なる輪帯領域を透過したレーザ光には位相差が発生しない。そのため、ピックアップレンズ14に入射したレーザ光は、同一位相のまま、出射する。従って、設計波長及び設計温度時において、ピックアップレンズ14により集光されるレーザ光の収差は段差が形成されていない場合と同じとなる。
【0051】
他方、図2(b)、(c)に示されるように、周囲温度が変化し、波長が変化したレーザ光がピックアップレンズ14に入射する場合、各輪帯領域を透過したレーザ光の位相の違いは波長の整数倍とならない。従って、図2(b)、(c)に示されるように、波長が変化した場合には、異なる輪帯領域を透過したレーザ光に位相差が発生する。そして、本発明においては、当該位相差は、周囲温度の変化によって発生する収差を低減するような大きさとなっている。そのため、周囲温度が変化した場合、従来ではピックアップレンズにより集光される収差が増大してしまうが、本発明においては、ピックアップレンズ14の各輪帯領域を透過したレーザ光の位相差により、周囲温度の変化に伴う収差の増大が抑制される。そして、ピックアップレンズ14より出射したレーザ光は、光ディスク15の情報記録面に良好に集光する。
【0052】
図3(a)に、周囲温度が20℃である場合に輪帯領域が形成されていないピックアップレンズにおいて発生する波面収差を示し、図4(a)に、周囲温度が50℃である場合に輪帯領域が形成されていないピックアップレンズにおいて発生する波面収差を示す。また、図3(b)に、周囲温度が20℃である場合にピックアップレンズ14において発生する波面収差を示し、図4(b)に、周囲温度が50℃である場合にピックアップレンズ14において発生する波面収差を示す。なお、図3、図4において、縦軸は波面収差の大きさを表し、横軸はピックアップレンズの径方向における位置を表す。また、輪帯領域が形成されていないピックアップレンズ及びピックアップレンズ14の設計温度は35℃である。
【0053】
図3(a)、図4(a)に示すように、周囲温度が20℃、50℃である場合、輪帯領域が形成されていないピックアップレンズでは、波面収差は非常に大きくなる。
一方、図3(b)、図4(b)に示すように、周囲温度が20℃、50℃であっても、輪帯領域が形成されているピックアップレンズ14では、波面収差を小さく抑えることが出来る。具体的には、ピックアップレンズ14に形成された段差によって各輪帯領域を透過したレーザ光に位相差が発生する。そして、当該位相差が周囲温度の変化によりピックアップレンズ14において発生する収差を低減する。従って、ピックアップレンズ14より出射したレーザ光は、光ディスク15の情報記録面に良好に集光する。
【0054】
また、ピックアップレンズ14は、ピックアップレンズ14の開口数をNA、焦点距離をf(mm)、作動距離をWD(mm)とした場合に、(1)式乃至(3)式を満たすように形成される。
NA≧0.85 ・・・・・・(1)
1.1≦f≦1.8 ・・・・・・(2)
WD≧0.3 ・・・・・・(3)
【0055】
また、ピックアップレンズ14は、5次球面収差をSA5とした場合に、ピックアップレンズ14によってレーザ光を多層光ディスク15に集光する場合に、多層光ディスク15の記録層間の基板厚差に基づいて発生する3次球面収差を補正した際に、(4)式を満たすことが好ましい。
|SA5|≦0.020 ・・(4)
さらに、以下の(10)式を満たすことがより好ましい。
|SA5|≦0.010 ・・(10)
【0056】
(4)式を満たすことにより、多層光ディスク15の各記録層に集光する際における軸上特性の劣化を抑制することができる。通常、ピックアップレンズの少なくとも一方の面に、上述した複数の輪帯領域を設けると、多層光ディスク15の各記録層に集光する際における軸上特性が劣化してしまう。しかし、(4)式を満たすことにより、ピックアップレンズ14によってレーザ光源から出射された光束を多層光ディスク15に集光する場合に、多層光ディスク15の記録層間の基板厚差に基づいて発生する3次球面収差を補正しても、SA5が劣化せずにすむ。これにより、多層光ディスク15の各記録層に集光する際における軸上特性の劣化を抑制することができる。
ここで、SA5は、以下の(11)式で定義される5次球面収差である。
【数3】
(11)式において、A15は、ツェルニケ多項式の係数であり、光線高さをh(mm)とすると、A15=20h6−30h4+12h2−1である。
【0057】
さらに、マージナル光線が入射する部分における接線角をθM(°)、マージナル光線が入射する部分におけるレンズのレンズ最小肉厚をtM(mm)、ピックアップレンズ14の屈折率をNとした場合に、(5)式乃至(7)式を満たすことが好ましい。
73≦θM≦75 ・・・・・・(5)
1.5≦N≦1.55 ・・・・・・(6)
tM≧0.35 ・・・・・・(7)
マージナル光線とは、ピックアップレンズ14の有効径内の最も外側を透過する光線である。図5を参照しながら、接線角θ(°)について説明する。接線角θとは、図5に示すように、ピックアップレンズ14の入射面の接線と入射光線とがなす角である。そして、光軸の垂線と、マージナル光線が入射する部分の入射面の接線とがなす角を接線角θMとする。
マージナル光線が入射する部分における接線角θMが73°より小さい場合に、ピックアップレンズ14に段差を設けると、ピックアップレンズ14への光軸外からの斜入射に対するピックアップレンズ14の特性(以下、軸外特性を称する。)が悪化する。さらに、焦点距離が長くなると軸外特性の悪化が大きくなる。換言すれば、マージナル光線が入射する部分における接線角θMが73°より小さい場合に、十分な作動距離を確保しつつ、且つ、ピックアップレンズ14に周囲温度の変化に起因する波面収差の劣化を補正する段差を設けると、軸外特性が劣化してしまう。また、接線角θMが75°より大きいと、ピックアップレンズ14の製造が困難となる。したがって、73≦θM≦75を満たすことにより、十分な作動距離を確保しつつ、ピックアップレンズ14に段差を設けることによる軸外特性の劣化を防ぐとともに、ピックアップレンズ14の製造を容易にすることができる。
また、(5)式乃至(7)式を満たすことにより、(4)式を満たすピックアップ対物レンズを容易に製造することができる。
【0058】
図5を参照しながら、レンズ最小肉厚をtMについて説明する。レンズ最小肉厚をtMとは、図5に示すように、マージナル光線がピックアップレンズ14の入射面と交わる交点と、マージナル光線がピックアップレンズの出射面と交わる交点との、光軸に平行な距離である。レンズ最小肉厚tMが、0.35mmより小さいと、ピックアップレンズ14のコバ厚が薄くなりすぎてしまう。そのため、ピックアップレンズ14の製造が難しくなる。したがって、レンズ最小肉厚tMを0.35mm以上とすることにより、ピックアップレンズ14を容易に製造することができる。
【0059】
また、5次のコマ収差をCOMA5とした場合に、画角0.3°におけるCOMA5の絶対値が0.025λrms以下であることが好ましい。さらに、画角0.3°におけるCOMA5の絶対値が0.010λrms以下であることがより好ましい。ここで、COMA5は、以下の(12)式により表される。
【数4】
(12)式において、A13、A14はツェルニケ多項式の係数である。具体的には、A13=(10h5−12h3+3h)cosα、A14=(10h5−12h3+3h)sinαである。また、hは光線高さ(mm)である。
COMA5の絶対値が0.025λrmsより大きい場合に、十分な作動距離を確保しつつ、且つ、ピックアップレンズ14に周囲温度の変化に起因する波面収差の劣化を補正する段差を設けると、軸外特性が劣化してしまう。したがって、COMA5の絶対値が0.025λrms以下とすることにより、十分な作動距離を確保しつつ、ピックアップレンズ14に段差を設けることによる軸外特性の劣化を防ぐことができる。
【0060】
また、ピックアップレンズ14に形成された輪帯領域の数がn(nは、n≧3を満たす正の整数)である場合に、ピックアップレンズ14の光軸から数えて、1番目からi番目(i=2、3、・・・、n−1)までの輪帯領域の範囲においてピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、i+1番目(i+1=3、4、・・・、n)からn番目までの輪帯領域の範囲においてピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差が形成されることが好ましい。
換言すれば、ピックアップレンズ14のレンズ厚が光軸から所定の半径位置まで薄くなり、所定の半径位置から外縁まで厚くなるように、段差を形成することが好ましい。
【0061】
また、さらに、全ての光線高さにおける正弦条件違反量の絶対値が0.01以下であることが好ましい。ここで、正弦条件違反量(SC)を、以下の(13)式により表す。
SC=(h/sinθ−f)/f ・・・・・・(13)
(13)式において、hは光線高さ(mm)、θは光軸の垂線とピックアップレンズ14の入射面の接線とのなす角(接線角)、fは焦点距離(mm)である。
正弦条件違反量(SC)の絶対値が0.01より大きい場合に、ピックアップレンズ14に段差を設けると、ピックアップレンズ14の軸外特性が悪化する。さらに、焦点距離が長くなると軸外特性の悪化が大きくなる。換言すれば、全ての光線高さにおける正弦条件違反量の絶対値が0.01より大きい場合に、十分な作動距離を確保しつつ、且つ、ピックアップレンズ14に周囲温度の変化に起因する波面収差の劣化を補正する段差を設けると、軸外特性が劣化してしまう。したがって、全ての光線高さにおける正弦条件違反量の絶対値を0.01以下とすることにより、十分な作動距離を確保しつつ、ピックアップレンズ14に段差を設けることによる軸外特性の劣化を防ぐことができる。
【0062】
また、ピックアップレンズ14の段差の隣接段差量をd(mm)、波長をλ(mm)、ピックアップレンズ14の屈折率をNとした場合に、(8)式を満たすことが好ましい。
4≦(N−1)×d/λ≦28 ・・・・・・(8)
換言すれば、隣接段差量が、波長の4倍以上28倍以下であることが好ましい。図6に、ピックアップレンズ14を模式的に表す側面図を示す。ここで、隣接段差量とは、図6に示すように、各輪帯領域間の段差の段差量である。隣接段差量が波長の4倍未満である場合、収差を十分補正するためには、ピックアップレンズ14に形成する輪帯領域の数を増やす必要がある。そのため、光利用効率が低下してしまう。一方、隣接段差量が波長の28倍より大きい場合、段差量が大きくなるため、ピックアップレンズ14の製造が困難となる。
【0063】
また、ピックアップレンズ14の段差の軸上段差量をd0(mm)、波長をλ(mm)、ピックアップレンズ14の屈折率をNとした場合に、(9)式を満たすことが好ましい。
4≦(N−1)×d0/λ≦14 ・・・・・・(9)
換言すれば、軸上段差量が、波長の4倍以上14倍以下であることが好ましい。ここで、軸上段差量とは、図6に示すように、各輪帯領域の面形状を仮想的に光軸OA側へと延長した場合に、当該面形状が光軸と仮想的に交差する交点と、光軸を含む輪帯領域の面形状が光軸OAに交差する交点との距離である。換言すれば、ピックアップレンズ14の段差の光軸上における段差量である。軸上段差量が波長の4倍未満である場合、収差を十分補正するためには、ピックアップレンズ14に形成する輪帯領域の数を増やす必要がある。そのため、光利用効率が低下してしまう。一方、軸上段差量が波長の14倍より大きい場合、段差量が大きくなるため、ピックアップレンズ14の製造が困難となる。
【0064】
また、段差の隣接段差量をd(mm)とした場合、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が60λ以上、180λ以下であることが好ましい。
隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が60λ未満の場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を十分に低減することが難しくなる。一方、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が180λより大きい場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を過剰に補正してしまうため、かえって、波面収差が劣化してしまう。また、段差量が大きくなってしまい、ピックアップレンズ14の製造が困難となる。
さらに、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が70λ以上、180λ以下であることが好ましい。
これにより、ピックアップレンズ14自体の温度が変化した場合に発生する波面収差も低減することができる。
【0065】
また、段差の軸上段差量をd0(mm)とした場合、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が30λ以上、120λ以下であることが好ましい。
軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が30λ未満の場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を十分に低減することが難しくなる。一方、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が120λより大きい場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を過剰に補正してしまうため、かえって、波面収差が劣化してしまう。また、段差量が大きくなってしまい、ピックアップレンズ14の製造が困難となる。
さらに、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が40λ以上、120λ以下であることが好ましい。
これにより、ピックアップレンズ14自体の温度が変化した場合に発生する波面収差も低減することができる。
【0066】
また、ピックアップレンズ14に形成された輪帯領域の数がn(nは正の整数)である場合に、nが偶数であるとき、ピックアップレンズ14の光軸から数えて、1番目からn/2番目までの輪帯領域の範囲においてピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、((n/2)+1)番目からn番目までの輪帯領域の範囲においてピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差を形成することが好ましい。また、nが奇数であるとき、ピックアップレンズ14の光軸から数えて、1番目から((n+1)/2)番目までの輪帯領域の範囲においてピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、((n+1)/2)番目からn番目までの輪帯領域の範囲においてピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差を形成することが好ましい。
【0067】
換言すれば、ピックアップレンズ14の光軸から所定の半径位置まではレンズ厚が薄くなり、所定の半径位置から外縁まではレンズ厚が厚くなるように、段差を形成することが好ましい。具体的には、ピックアップレンズ14の光軸から所定の半径位置まではレンズ厚が薄くなり、所定の半径位置から外縁まではレンズ厚が厚くなるように、段差を形成する。ピックアップレンズ14に段差を設けることによって、ピックアップレンズ14の軸外特性が悪化する。さらに、焦点距離が長くなると軸外特性の悪化が大きくなる。しかし、ピックアップレンズ14のレンズ厚が所定の半径位置において最も薄くなるように段差を形成することにより、ピックアップレンズ14の軸外におけるrms波面収差を0.035λ以下に抑えることができる。
【0068】
また、ピックアップレンズ14のレンズ厚が所定の半径位置において最も薄くなるように段差を形成することにより、(5)式乃至(7)式の条件を満たさずとも、作動距離を十分に確保し、且つ、周囲温度の変化に伴う収差を補正する段差をピックアップレンズ14に設けることによる軸外特性の劣化を防ぐことができる。
また、ピックアップレンズ14のレンズ厚が所定の半径位置において最も薄くなるように段差を形成することにより、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差及び軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差を小さくすることができる。これにより、ピックアップレンズ14の製造がより容易となる。
【0069】
また、段差の隣接段差量をd(mm)とした場合、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が60λ以上、90λ以下であることが好ましい。
隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が60λ未満の場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を十分に低減することが難しくなる。一方、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が90λより大きい場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を過剰に補正してしまうため、かえって、波面収差が劣化してしまう。また、段差量が大きくなってしまい、ピックアップレンズ14の製造が困難となる。
さらに、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が70λ以上、90λ以下であることが好ましい。
これにより、ピックアップレンズ14自体の温度が変化した場合に発生する波面収差も低減することができる。
【0070】
また、段差の軸上段差量をd0(mm)とした場合、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が30λ以上60λ以下であることが好ましい。
軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が30λ未満の場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を十分低減することが難しくなる。一方、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が60λより大きい場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を過剰に補正してしまうため、かえって、波面収差が劣化してしまう。また、段差量が大きくなってしまい、ピックアップレンズ14の製造が困難となる。
さらに、前記軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が40λ以上60λ以下であることが好ましい。
これにより、ピックアップレンズ14自体の温度が変化した場合に発生する波面収差も低減することができる。
【0071】
このように構成された本実施の形態にかかるピックアップレンズ14及び光ピックアップ光学系1によれば、ピックアップレンズ14の少なくとも一方の面に複数の輪帯領域が設けられ、当該複数の輪帯領域間には段差が形成されている。また、複数の段差は、周囲温度が変化した場合にピックアップレンズ14において発生する収差を低減するような位相差をレーザ光に発生させる段差量を有する。これにより、周囲温度が変化した場合、隣り合う輪帯領域を透過したレーザ光に周囲温度の変化によって発生する収差を低減するような位相差が発生する。そして、当該位相差により、周囲温度の変化によって生じる収差が低減される。
また、焦点距離が1.1mm未満の場合、作動距離(WD)を十分に確保することが難しい。また、焦点距離が1.8mmより大きい場合、周囲温度の変化によって生じる収差が大きくなるため、ピックアップレンズ14に形成する段差だけで補正することが難しくなる。よって、焦点距離の範囲を1.1mm以上1.8mm以下とすることにより、十分に作動距離(WD)を確保することができるとともに、周囲温度の変化によって生じる収差を十分に低減することができる。
さらに、(4)式を満たすことにより、多層光ディスクの各記録層に対しても良好に集光することができる。
ここで、SA5は、以下の(11)式で定義される5次球面収差である。
【数5】
(11)式において、A15は、ツェルニケ多項式の係数であり、光線高さをh(mm)とすると、A15=20h6−30h4+12h2−1である。
【0072】
また、ピックアップレンズの少なくとも一方の面に、上述した複数の輪帯領域を設けると、多層光ディスク15の各記録層に集光する際における軸上特性が劣化してしまう。しかし、(5)式乃至(7)式を満たすことにより、ピックアップレンズ14によってレーザ光源から出射された光束を多層光ディスク15に集光する場合に、多層光ディスク15の記録層間の基板厚差に基づいて発生する3次球面収差を補正しても、軸上特性を示す指標の1つであるSA5が劣化せずにすむ。これにより、多層光ディスク15の各記録層に集光する際における軸上特性の劣化を抑制することができる。
【0073】
また、マージナル光線が入射する部分における接線角をθM(°)、マージナル光線が入射する部分におけるレンズのレンズ最小肉厚をtM(mm)、ピックアップレンズ14の屈折率をNとした場合に、(5)式乃至(7)式を満たすことが好ましい。
73≦θM≦75 ・・・・・・(5)
1.5≦N≦1.55 ・・・・・・(6)
tM≧0.35 ・・・・・・(7)
73≦θM≦75を満たすことにより、十分な作動距離を確保しつつ、ピックアップレンズ14に段差を設けることによる軸外特性の劣化を防ぐとともに、ピックアップレンズ14の製造を容易にすることができる。
また、レンズ最小肉厚tMを0.35mm以上とすることにより、ピックアップレンズ14を容易に製造することができる。
また、(5)式乃至(7)式を満たすことにより、(4)式を満たすピックアップ対物レンズを容易に製造することができる。
【0074】
また、さらに、全ての光線高さにおける正弦条件違反量の絶対値が0.01以下であることが好ましい。
全ての光線高さにおける正弦条件違反量の絶対値を0.01以下とすることにより、十分な作動距離を確保しつつ、ピックアップレンズ14に段差を設けることによる軸外特性の劣化を防ぐことができる。
【0075】
また、5次のコマ収差をCOMA5とした場合に、画角0.3°におけるCOMA5の絶対値が0.025λrms以下であることが好ましい。さらに、画角0.3°におけるCOMA5の絶対値が0.010λrms以下であることがより好ましい。ここで、COMA5は、以下の(12)式により表される。
【数6】
(12)式において、A13、A14はツェルニケ多項式の係数である。具体的には、A13=(10h5−12h3+3h)cosα、A14=(10h5−12h3+3h)sinαである。また、hは光線高さ(mm)である。
COMA5の絶対値が0.025λrms以下とすることにより、十分な作動距離を確保しつつ、ピックアップレンズ14に段差を設けることによる軸外特性の劣化を防ぐことができる。
【0076】
さらに、ピックアップレンズ14に形成された輪帯領域の数がn(nは、n≧3を満たす正の整数)である場合に、ピックアップレンズ14の光軸から数えて、1番目からi番目(i=2、3、・・・、n−1)までの輪帯領域の範囲においてピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、i+1番目(i+1=3、4、・・・、n)からn番目までの輪帯領域の範囲においてピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差が形成されることが好ましい。
換言すれば、光ピックアップ対物レンズの光軸から所定の半径位置まではレンズ厚が薄くなり、所定の半径位置から外縁まではレンズ厚が厚くなるように、段差を形成することが好ましい。
【0077】
また、ピックアップレンズ14の設計波長は500nm以下である。
さらに、段差は、透過光の位相が輪帯領域相互に波長の略整数倍で異なる段差量であって、周囲温度が変化した場合にピックアップレンズ14において発生する収差を低減するような位相差をレーザ光に発生させる段差量を有する。
これにより、周囲温度が変化した場合に、周囲温度の変化によって発生する収差を低減するような位相差がレーザ光に発生する。
【0078】
また、ピックアップレンズ14の段差の隣接段差量をd(mm)、波長をλ(mm)、ピックアップレンズ14の屈折率をNとした場合に、(8)式を満たす。
4≦(N−1)×d/λ≦28 ・・・・・・(8)
また、ピックアップレンズ14の段差の軸上段差量をd0(mm)、波長(mm)をλ、ピックアップレンズ14の屈折率をNとした場合に、(9)式を満たすことが好ましい。
4≦(N−1)×d0/λ≦14 ・・・・・・(9)
隣接段差量が波長の4倍未満、或いは、軸上段差量が波長の4倍未満である場合、収差を十分補正するためには、ピックアップレンズ14に形成する輪帯領域の数を増やす必要がある。そのため、光利用効率が低下してしまう。一方、隣接段差量が波長の28倍より大きい場合、或いは、軸上段差量が波長の14倍より大きい場合、段差量が大きくなるため、ピックアップレンズ14の製造が困難となる。従って、(8)式或いは(9)を満たすように段差を形成することにより、光利用効率の低下を防止するとともに、ピックアップレンズ14の製造を容易にすることができる。
【0079】
また、段差の隣接段差量をd(mm)とした場合、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が60λ以上、180λ以下であることが好ましい。
また、段差の軸上段差量をd0(mm)とした場合、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が30λ以上、120λ以下であることが好ましい。
隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が60λ未満の場合、或いは、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が30λ未満の場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を十分に低減することが難しくなる。一方、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が180λより大きい場合、或いは、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が120λより大きい場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を過剰に補正してしまうため、かえって、波面収差が劣化してしまう。また、段差量が大きくなってしまい、ピックアップレンズ14の製造が困難となる。
【0080】
さらに、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が70λ以上、180λ以下であることが好ましい。
また、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が40λ以上、120λ以下であることが好ましい。
これにより、ピックアップレンズ14自体の温度が変化した場合に発生する波面収差も低減することができる。
【0081】
さらに、また、ピックアップレンズ14に形成された輪帯領域の数がn(nは正の整数)である場合に、nが偶数であるとき、ピックアップレンズ14の光軸から数えて、1番目からn/2番目までの輪帯領域の範囲においてピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、((n/2)+1)番目からn番目までの輪帯領域の範囲においてピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差が形成されることが好ましい。また、nが奇数であるとき、ピックアップレンズ14の光軸から数えて、1番目から((n+1)/2)番目までの輪帯領域の範囲においてピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、((n+1)/2)番目からn番目までの輪帯領域の範囲においてピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差が形成されることが好ましい。
【0082】
換言すれば、ピックアップレンズ14の光軸から所定の半径位置まではレンズ厚が薄くなり、所定の半径位置から外縁まではレンズ厚が厚くなるように、段差を形成する。これにより、ピックアップレンズ14の軸外におけるrms波面収差を0.035λ以下に抑えることができる。
また、ピックアップレンズ14のレンズ厚が所定の半径位置において最も薄くなるように段差を形成することにより、(5)式乃至(7)式の条件を満たさずとも、作動距離を十分に確保し、且つ、周囲温度の変化に伴う収差を補正する段差をピックアップレンズ14に設けることによる軸外特性の劣化を防ぐことができる。
また、ピックアップレンズ14のレンズ厚が所定の半径位置において最も薄くなるように段差を形成することにより、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差及び軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差を小さくすることができる。これにより、ピックアップレンズ14の製造がより容易となる。
【0083】
また、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が60λ以上、90λ以下であることが好ましい。
また、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が30λ以上60λ以下であることが好ましい。
隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が60λ未満の場合、或いは、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が30λ未満の場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を十分に低減することが難しくなる。一方、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が90λより大きい場合、或いは、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が60λより大きい場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を過剰に補正してしまうため、かえって、波面収差が劣化してしまう。また、段差量が大きくなってしまい、ピックアップレンズ14の製造が困難となる。
【0084】
さらに、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が70λ以上、90λ以下であることが好ましい。
また、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が40λ以上60λ以下であることが好ましい。
これにより、ピックアップレンズ14自体の温度が変化した場合に発生する波面収差も低減することができる。
【0085】
[実施例1]
次に、本発明にかかる実施例1について説明する。実施例1にかかるピックアップレンズ14を模式的に示す側面図を図7に示す。実施例1にかかるピックアップレンズ14は、光源11(図示せず)側の面に複数の段差を有する。
図8に示す表に、本実施例1にかかるピックアップレンズ14の輪帯領域の番号、輪帯領域の位置(光軸OAに垂直な方向における輪帯領域が形成される位置)、軸上段差量及び隣接段差量を示す。図8に示す表において、輪帯領域の番号は、ピックアップレンズ14の光軸から外縁に向かって付されている。従って、光軸を含む輪帯領域が1番目の輪帯領域である。
また、図9に、輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量の累積値及び隣接段差量の累積値を示す。
なお、各輪帯領域の曲率、円錐係数、非球面係数がそれぞれ異なっているため、各輪帯領域の面形状は微妙に異なっている。そのため、軸上段差量と隣接段差量とは、一致するとは限らない。軸上段差量が正の値となる場合は、輪帯領域の面形状が光軸と仮想的に交差する交点がピックアップレンズ14の光ディスク15側にあることを意味する。また、軸上段差量が負の値となる場合は、当該交点がピックアップレンズ14の光源11側にあることを意味する。
【0086】
図8に示すように、実施例1にかかるピックアップレンズ14に形成される輪帯領域は9輪帯である。従って、中心の輪帯領域は、5番目の輪帯領域である。そして、1番目の輪帯領域から5番目の輪帯領域まで軸上段差量が約0.007786mmずつ(約10λずつ)増加し、5番目の輪帯領域から9番目の輪帯領域まで軸上段差量が約0.007786mmずつ(約10λずつ)減少している。また、1番目の輪帯領域から5番目の輪帯領域まで隣接段差量が増加し、5番目の輪帯領域から9番目の輪帯領域まで隣接段差量が減少している。換言すれば、1番目の輪帯領域から中心の輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、中心の輪帯領域から9番目の輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差が形成されている。
ここで、約0.007786mm=約10λである。なお、λは、波長である。従って、実施例1にかかるピックアップレンズ14に形成される段差の軸上段差量は、設計波長の約10倍となっている。
【0087】
図9に示すように、軸上段差量の累積値の最大値は40.0λであり、軸上段差量の累積値の最小値は0.0λとなっている。従って、軸上段差量の累積値の最大値と最小値との差が40.0λとなっている。
また、図9に示すように、隣接段差量の累積値の最大値は43.4λであり、隣接段差量の累積値の最小値は−27.4λとなっている。従って、隣接段差量の累積値の最大値と最小値との差が70.8λとなっている。
【0088】
また、図10に示す表に、実施例1にかかる光ピックアップ光学系1のデータを示す。図10において、対物レンズR1面とは、ピックアップレンズ14の光源11側の面である。また、対物レンズR2面とは、ピックアップレンズ14の光ディスク15側の面である。図10に示すように、実施例1にかかるピックアップレンズ14としてプラスティック製レンズを使用した。また、作動距離(WD)は、ピックアップレンズ14の光ディスク15側の面(対物レンズR2面)と光ディスク15の光源11側の面(物体側の面)との距離であり、約0.47mmである。このときの焦点距離は1.4mmである。
【0089】
また、図11に示す表に、実施例1にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面(面番号3)の面形状を規定する係数を示す。図11に示す係数は、後述する(14)式で用いられる。従って、実施例1にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面形状は、図11に示す係数と(14)式により規定される。図11に示すように、実施例1にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面形状は単一の非球面形状となっている。
【0090】
また、図12に示す表に、実施例1にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面(面番号2)の面形状を規定する係数を示す。図12に示す係数は後述する(15)式で用いられる。従って、実施例1にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面の面形状は、図12に示す係数と(15)式により規定される。図12に示すように、実施例1にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面は、輪帯領域毎に異なる非球面形状を有している。
【0091】
図13を用いて、(14)式、(15)式を説明する。図13は、ピックアップレンズの一例である対物レンズを示す側面図である。
まず、対物レンズの光出射面R2の面形状について説明する。図13において、光線の高さをh(mm)、対物レンズの光出射面R2の頂点をe、頂点eと接する接面上における光線高さhの点をc、この点cから光軸OAに平行な方向での光出射面R2上の点をdとすると、任意の光線高さhに対する点c,d間の距離ZB(mm)が
【数7】
で表されるように、光出射面R2の面形状が形成される。
そして、(14)式と図11に示す面番号3の係数の値とにより、実施例1にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面全体の面形状が規定される。
【0092】
なお、(14)式に、上記係数C,K,A4,A6,A8,A10,A12,A14,A16の値を代入して任意の光線高さh(mm)(≠0)に対する距離ZB(mm)を求め、その値が負の値となった場合は、点dが、光出射面R2の光軸OAが通る面頂点eよりも出射面側(図13での左側)に位置することを示している。距離ZB(mm)が正の値である場合には、点dが頂点eよりも右側に位置することを示している。
【0093】
次に、対物レンズの光入射面R1の面形状について説明する。図13において、対物レンズの光入射面R1の頂点をf、頂点fと接する接面上における光線高さhの点をa、この点aから光軸OAに平行な方向での光入射面R1上の点をbとすると、任意の光線高さh(mm)に対する点a,b間の距離ZA(mm)が
【数8】
で表されるように、光入射面R1の面形状が形成される。
【0094】
なお、実施例1にかかるピックアップレンズ14の第1輪帯領域、第2輪帯領域、・・・、第9輪帯領域の面形状を規定する場合、(15)式の光線高さhには、それぞれ、図9の表に示す第1輪帯領域、第2輪帯領域、・・・、第9輪帯領域の輪帯領域位置の値を代入する。また、実施例1にかかるピックアップレンズ14の第1輪帯領域、第2輪帯領域、・・・、第9輪帯領域の面形状を規定する場合、(15)式の係数Bは、それぞれ、図8の表に示す第1輪帯領域、第2輪帯領域、・・・、第9輪帯領域の軸上段差量の値を代入する。そして、(15)式と図12に示す係数の値とにより、実施例1にかかるピックアップレンズ14の第1輪帯領域〜第9輪帯領域の面形状が規定される。
【0095】
[実施例2]
次に、本発明にかかる実施例2について説明する。実施例2にかかるピックアップレンズ14は、光源11(図示せず)側の面に複数の段差を有する。
図14に示す表に、本実施例2にかかるピックアップレンズ14の輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量及び隣接段差量を示す。
また、図15に、輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量の累積値及び隣接段差量の累積値を示す。
【0096】
図14に示すように、実施例2にかかるピックアップレンズ14に形成される輪帯領域は12輪帯である。従って、中心の輪帯領域は、6番目と7番目の輪帯領域である。そして、1番目の輪帯領域から2番目の輪帯領域まで軸上段差量が約0.007786mm(約10λ)増加し、2番目の輪帯領域から12番目の輪帯領域まで軸上段差量が約0.007786mm(約10λずつ)減少している。また、1番目の輪帯領域から2番目の輪帯領域まで隣接段差量が増加し、2番目の輪帯領域から12番目の輪帯領域まで隣接段差量が減少している。換言すれば、1番目から2番目までの輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、2番目から12番目の輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差が形成されている。
ここで、約0.007786mm=約10λである。なお、λは、波長である。従って、実施例2にかかるピックアップレンズ14に形成される段差の軸上段差量は、設計波長の約10倍となっている。
【0097】
図15に示すように、軸上段差量の累積値の最大値は10.0λであり、軸上段差量の累積値の最小値は−90.0λとなっている。従って、軸上段差量の累積値の最大値と最小値との差が100.0λとなっている。
また、図15に示すように、隣接段差量の累積値の最大値は10.6λであり、隣接段差量の累積値の最小値は−161.3λとなっている。従って、隣接段差量の累積値の最大値と最小値との差が171.9λとなっている。
【0098】
また、図16に示す表に、実施例2にかかる光ピックアップ光学系1のデータを示す。図16に示すように、実施例2にかかるピックアップレンズ14としてプラスティック製レンズを使用した。また、作動距離(WD)は、ピックアップレンズ14の光ディスク15側の面(対物レンズR2面)と光ディスク15の光源11側の面(物体側の面)との距離であり、約0.46mmである。このときの焦点距離は1.4mmである。
【0099】
また、図17に示す表に、実施例2にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面(面番号3)の面形状を規定する係数を示す。図17に示す係数は、(14)式で用いられる。従って、実施例2にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面形状は、図17に示す係数と(14)式により規定される。図17に示すように、実施例2にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面形状は単一の非球面形状となっている。
【0100】
また、図18に示す表に、実施例2にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面(面番号2)の面形状を規定する係数を示す。図18に示す係数は(15)式で用いられる。従って、実施例2にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面の面形状は、図18に示す係数と(15)式により規定される。図18に示すように、実施例2にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面は、輪帯領域毎に異なる非球面形状を有している。
【0101】
[実施例3]
次に、本発明にかかる実施例3について説明する。実施例3にかかるピックアップレンズ14は、光源11(図示せず)側の面に複数の段差を有する。
図19に示す表に、本実施例3にかかるピックアップレンズ14の輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量及び隣接段差量を示す。
また、図20に、輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量の累積値及び隣接段差量の累積値を示す。
【0102】
図19に示すように、実施例3にかかるピックアップレンズ14に形成される輪帯領域は11輪帯である。従って、中心の輪帯領域は、5番目の輪帯領域である。そして、1番目の輪帯領域から9番目の輪帯領域まで軸上段差量が約0.009343mmずつ(約12λずつ)増加し、9番目の輪帯領域から11番目の輪帯領域まで軸上段差量が約0.009343mmずつ(約12λずつ)減少している。また、1番目の輪帯領域から9番目の輪帯領域まで隣接段差量が増加し、9番目の輪帯領域から11番目の輪帯領域まで隣接段差量が減少している。換言すれば、1番目から9番目までの輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、9番目から11番目の輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差が形成されている。
ここで、約0.009343mm=約12λである。なお、λは、波長である。従って、実施例3にかかるピックアップレンズ14に形成される段差の軸上段差量は、設計波長の約12倍となっている。
【0103】
図20に示すように、軸上段差量の累積値の最大値は96.0λであり、軸上段差量の累積値の最小値は0.0λとなっている。従って、軸上段差量の累積値の最大値と最小値との差が96.0λとなっている。
また、図20に示すように、隣接段差量の累積値の最大値は110.1λであり、隣接段差量の累積値の最小値は0.0λとなっている。従って、隣接段差量の累積値の最大値と最小値との差が110.1λとなっている。
【0104】
また、図21に示す表に、実施例3にかかる光ピックアップ光学系1のデータを示す。図21に示すように、実施例3にかかるピックアップレンズ14としてプラスティック製レンズを使用した。また、作動距離(WD)は、ピックアップレンズ14の光ディスク15側の面(対物レンズR2面)と光ディスク15の光源11側の面(物体側の面)との距離であり、約0.48mmである。このときの焦点距離は1.4mmである。
【0105】
また、図22に示す表に、実施例3にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面(面番号3)の面形状を規定する係数を示す。図22に示す係数は、(14)式で用いられる。従って、実施例3にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面形状は、図22に示す係数と(14)式により規定される。図22に示すように、実施例3にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面形状は単一の非球面形状となっている。
【0106】
また、図23に示す表に、実施例3にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面(面番号2)の面形状を規定する係数を示す。図23に示す係数は(15)式で用いられる。従って、実施例3にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面の面形状は、図23に示す係数と(15)式により規定される。図23に示すように、実施例3にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面は、輪帯領域毎に異なる非球面形状を有している。
【0107】
[実施例4]
次に、本発明にかかる実施例4について説明する。実施例4にかかるピックアップレンズ14は、光源11(図示せず)側の面に複数の段差を有する。
図24に示す表に、本実施例4にかかるピックアップレンズ14の輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量及び隣接段差量を示す。
また、図25に、輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量の累積値及び隣接段差量の累積値を示す。
【0108】
図24に示すように、実施例4にかかるピックアップレンズ14に形成される輪帯領域は11輪帯である。従って、中心の輪帯領域は、6番目の輪帯領域である。そして、1番目の輪帯領域から6番目の輪帯領域まで軸上段差量が約0.007786mmずつ(約10λずつ)増加し、6番目の輪帯領域から11番目の輪帯領域まで軸上段差量が約0.007786mmずつ(約10λずつ)減少している。また、1番目の輪帯領域から6番目の輪帯領域まで隣接段差量が増加し、6番目の輪帯領域から11番目の輪帯領域まで隣接段差量が減少している。換言すれば、1番目の輪帯領域から中心の輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、中心の輪帯領域から11番目の輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差が形成されている。
ここで、約0.007786mm=約10λである。なお、λは、波長である。従って、実施例4にかかるピックアップレンズ14に形成される段差の軸上段差量は、設計波長の約10倍となっている。
【0109】
図25に示すように、軸上段差量の累積値の最大値は50.0λであり、軸上段差量の累積値の最小値は0.0λとなっている。従って、軸上段差量の累積値の最大値と最小値との差が50.0λとなっている。
また、図25に示すように、隣接段差量の累積値の最大値は55.4λであり、隣接段差量の累積値の最小値は−30.7λとなっている。従って、隣接段差量の累積値の最大値と最小値との差が86.2λとなっている。
【0110】
また、図26に示す表に、実施例4にかかる光ピックアップ光学系1のデータを示す。図26に示すように、実施例4にかかるピックアップレンズ14としてプラスティック製レンズを使用した。また、作動距離(WD)は、ピックアップレンズ14の光ディスク15側の面(対物レンズR2面)と光ディスク15の光源11側の面(物体側の面)との距離であり、約0.46mmである。このときの焦点距離は1.4mmである。
【0111】
また、図27に示す表に、実施例4にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面(面番号3)の面形状を規定する係数を示す。図27に示す係数は、(14)式で用いられる。従って、実施例4にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面形状は、図27に示す係数と(14)式により規定される。図27に示すように、実施例4にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面形状は単一の非球面形状となっている。
【0112】
また、図28に示す表に、実施例4にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面(面番号2)の面形状を規定する係数を示す。図28に示す係数は(15)式で用いられる。従って、実施例4にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面の面形状は、図28に示す係数と(15)式により規定される。図28に示すように、実施例4にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面は、輪帯領域毎に異なる非球面形状を有している。
【0113】
[実施例5]
次に、本発明にかかる実施例5について説明する。実施例5にかかるピックアップレンズ14は、光源11(図示せず)側の面に複数の段差を有する。
図29に示す表に、本実施例5にかかるピックアップレンズ14の輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量及び隣接段差量を示す。
また、図30に、輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量の累積値及び隣接段差量の累積値を示す。
【0114】
図29に示すように、実施例5にかかるピックアップレンズ14に形成される輪帯領域は10輪帯である。従って、中心の輪帯領域は、5番目と6番目の輪帯領域である。そして、1番目の輪帯領域から2番目の輪帯領域まで軸上段差量が約0.009343mm(約12λ)増加し、2番目の輪帯領域から10番目の輪帯領域まで軸上段差量が約0.009343mmずつ(約12λずつ)減少している。また、1番目の輪帯領域から2番目の輪帯領域まで隣接段差量が増加し、2番目の輪帯領域から10番目の輪帯領域まで隣接段差量が減少している。換言すれば、1番目から2番目までの輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、2番目から10番目の輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差が形成されている。
ここで、約0.009343mm=約12λである。なお、λは、波長である。従って、実施例5にかかるピックアップレンズ14に形成される段差の軸上段差量は、設計波長の約12倍となっている。
【0115】
図30に示すように、軸上段差量の累積値の最大値は12.0λであり、軸上段差量の累積値の最小値は−84.0λとなっている。従って、軸上段差量の累積値の最大値と最小値との差が96.0λとなっている。
また、図30に示すように、隣接段差量の累積値の最大値は13.0λであり、隣接段差量の累積値の最小値は−137.8λとなっている。従って、隣接段差量の累積値の最大値と最小値との差が150.8λとなっている。
【0116】
また、図31に示す表に、実施例5にかかる光ピックアップ光学系1のデータを示す。図31に示すように、実施例5にかかるピックアップレンズ14としてプラスティック製レンズを使用した。また、作動距離(WD)は、ピックアップレンズ14の光ディスク15側の面(対物レンズR2面)と光ディスク15の光源11側の面(物体側の面)との距離であり、約0.46mmである。このときの焦点距離は1.4mmである。
【0117】
また、実施例5にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面(面番号3)の面形状は、実施例4にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面と同じであり、図32に示す係数と(14)式により規定される。図32に示すように、実施例5にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面形状は単一の非球面形状となっている。
【0118】
また、図33に示す表に、実施例5にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面(面番号2)の面形状を規定する係数を示す。図33に示す係数は(15)式で用いられる。従って、実施例5にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面の面形状は、図33に示す係数と(15)式により規定される。図33に示すように、実施例5にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面は、輪帯領域毎に異なる非球面形状を有している。
【0119】
[実施例6]
次に、本発明にかかる実施例6について説明する。実施例6にかかるピックアップレンズ14は、光源11(図示せず)側の面に複数の段差を有する。
図34に示す表に、本実施例6にかかるピックアップレンズ14の輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量及び隣接段差量を示す。
また、図35に、輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量の累積値及び隣接段差量の累積値を示す。
【0120】
図34に示すように、実施例6にかかるピックアップレンズ14に形成される輪帯領域は10輪帯である。従って、中心の輪帯領域は、5番目と6番目の輪帯領域である。そして、1番目の輪帯領域から8番目の輪帯領域まで軸上段差量が約0.010900mmずつ(約14λずつ)増加し、8番目の輪帯領域から10番目の輪帯領域まで軸上段差量が約0.010900mmずつ(約14λずつ)減少している。また、1番目の輪帯領域から8番目の輪帯領域まで隣接段差量が増加し、8番目の輪帯領域から10番目の輪帯領域まで隣接段差量が減少している。換言すれば、1番目から8番目までの輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、8番目から10番目の輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差が形成されている。
ここで、約0.010900mm=約14λである。なお、λは、波長である。従って、実施例6にかかるピックアップレンズ14に形成される段差の軸上段差量は、設計波長の約14倍となっている。
【0121】
図35に示すように、軸上段差量の累積値の最大値は98.0λであり、軸上段差量の累積値の最小値は0.0λとなっている。従って、軸上段差量の累積値の最大値と最小値との差が98.0λとなっている。
また、図35に示すように、隣接段差量の累積値の最大値は112.0λであり、隣接段差量の累積値の最小値は0.0λとなっている。従って、隣接段差量の累積値の最大値と最小値との差が112.0λとなっている。
【0122】
また、図36に示す表に、実施例6にかかる光ピックアップ光学系1のデータを示す。図36に示すように、実施例6にかかるピックアップレンズ14としてプラスティック製レンズを使用した。また、作動距離(WD)は、ピックアップレンズ14の光ディスク15側の面(対物レンズR2面)と光ディスク15の光源11側の面(物体側の面)との距離であり、約0.46mmである。このときの焦点距離は1.4mmである。
【0123】
また、実施例6にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面(面番号3)の面形状は、実施例4にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面と同じであり、図37に示す係数と(14)式により規定される。図37に示すように、実施例6にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面形状は単一の非球面形状となっている。
【0124】
また、図38に示す表に、実施例6にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面(面番号2)の面形状を規定する係数を示す。図38に示す係数は(15)式で用いられる。従って、実施例6にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面の面形状は、図38に示す係数と(15)式により規定される。図38に示すように、実施例6にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面は、輪帯領域毎に異なる非球面形状を有している。
【0125】
[比較例1]
次に、比較例1について説明する。比較例1にかかるピックアップレンズは、光源側、光ディスク側の何れの面にも、段差を有さない。
図39に示す表に、比較例1にかかる光ピックアップ光学系のデータを示す。図39に示すように、比較例1にかかるピックアップレンズとしてプラスティック製レンズを使用した。また、作動距離(WD)は、ピックアップレンズの光ディスク側の面(対物レンズR2面)と光ディスクの光源側の面(物体側の面)との距離であり、約0.46mmである。このときの焦点距離は1.4mmである。
【0126】
また、図40に示す表に、比較例1にかかるピックアップレンズの光源11側の面(面番号2)及び光ディスク側の面(面番号3)の面形状を規定する係数を示す。図40に示す係数は(14)式で用いられる。従って、比較例1にかかるピックアップレンズの光源側の面の面形状及び光ディスク側の面の面形状は、図40に示す係数と(14)式により規定される。図40に示すように、比較例1にかかるピックアップレンズの光源側及び光ディスク側の面は、単一の非球面形状を有している。
【0127】
次に、実施例1乃至6にかかるピックアップレンズ14及び比較例1にかかるピックアップレンズを用いた場合における、周囲温度の変化により発生する収差について説明する。なお、実施例1乃至6にかかるピックアップレンズ14及び比較例1にかかるピックアップレンズの設計温度は35℃である。本実施形態では、周囲温度が設計温度35℃から±15℃変化した場合を例にあげて説明する。
図41(a)〜(c)に、比較例1にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が20℃、35℃、50℃のときに発生する波面収差を示す。図41に示すように、比較例1にかかるピックアップレンズを用いた場合、周囲温度が設計温度35℃から±15℃変化すると、収差がマレシャル限界(70mλrms)を超えてしまう。
【0128】
具体的には、周囲温度が設計温度35℃から−15℃変化し、20℃になった場合、Total波面収差(rms)は91.0mλとなり、周囲温度が設計温度35℃から+15℃変化し、50℃になった場合、Total波面収差(rms)は90.7mλとなり、35mλを超えてしまう。なお、比較例1にかかるピックアップレンズを用いた場合、周囲温度が35℃である際のTotal波面収差(rms)は1.5mλである。また、温度変化に伴いデフォーカス量が変化しており、周囲温度20℃におけるデフォーカス量は、−4.361μmであり、周囲温度50℃におけるデフォーカス量は、+4.391μmである。また、設計温度35℃における光源11の設計波長は408nmである。また、周囲温度が変化することにより光源11の波長が変化しており、周囲温度20℃における光源11の波長は407.1nmであり、周囲温度50℃における光源11の波長は408.9nmである。
ここで、デフォーカス量とは、周囲温度35℃のときの焦点位置からのずれ量のことである。例えば、比較例1にかかるピックアップレンズを用いた場合、周囲温度20℃、波長407.1nmにおけるデフォーカス量は、−4.361μmである。図39に示す表より、周囲温度35℃のとき、ピックアップレンズ14の光ディスク側の面(面番号3)と、光ディスク15の光源11側の面(物体側の面:面番号4)との面間距離(作動距離(WD))は、0.457428mmである。したがって、周囲温度20℃のときの、面番号3と面番号4との面間距離は、0.457428−0.004361=0.453067mmである。すなわち、各条件におけるデフォーカス量から、当該条件における面番号3と面番号4との面間距離を算出することができる。
【0129】
図42(a)〜(c)に、実施例1にかかるピックアップレンズ14を用いた場合に、周囲温度が20℃、35℃、50℃のときに発生する波面収差を示す。また、図43(a)〜(c)に、実施例2にかかるピックアップレンズ14を用いた場合に、周囲温度が20℃、35℃、50℃のときに発生する波面収差を示す。また、図44(a)〜(c)に、実施例3にかかるピックアップレンズ14を用いた場合に、周囲温度が20℃、35℃、50℃のときに発生する波面収差を示す。図45(a)〜(c)に、実施例4にかかるピックアップレンズ14を用いた場合に、周囲温度が20℃、35℃、50℃のときに発生する波面収差を示す。また、図46(a)〜(c)に、実施例5にかかるピックアップレンズ14を用いた場合に、周囲温度が20℃、35℃、50℃のときに発生する波面収差を示す。また、図47(a)〜(c)に、実施例6にかかるピックアップレンズ14を用いた場合に、周囲温度が20℃、35℃、50℃のときに発生する波面収差を示す。
【0130】
具体的には、実施例1にかかるピックアップレンズ14を用いた場合、周囲温度が設計温度35℃から−15℃変化した際(20℃になった際)のTotal波面収差(rms)は16.6mλとなり、周囲温度が設計温度35℃から+15℃変化した際(50℃になった際)のTotal波面収差(rms)は15.7mλとなり、35mλ以下となっている。なお、実施例1にかかるピックアップレンズ14を用いた場合、周囲温度が35℃である際のTotal波面収差(rms)は0.6mλである。また、温度変化に伴いデフォーカス量が変化しており、周囲温度20℃におけるデフォーカス量は、−4.462μmであり、周囲温度50℃におけるデフォーカス量は、+4.494μmである。ここで、ピックアップレンズ14及び光ディスク15の屈折率を図69に示し、屈折率の変化率を図70に示す。
【0131】
また、実施例2にかかるピックアップレンズ14を用いた場合、周囲温度が設計温度35℃から−15℃変化した際(20℃になった際)のTotal波面収差(rms)は17.7mλとなり、周囲温度が設計温度35℃から+15℃変化した際(50℃になった際)のTotal波面収差(rms)は19.3mλとなり、35mλ以下となっている。なお、実施例2にかかるピックアップレンズ14を用いた場合、周囲温度が35℃である際のTotal波面収差(rms)は1.3mλである。また、温度変化に伴いデフォーカス量が変化しており、周囲温度20℃におけるデフォーカス量は、−3.991μmであり、周囲温度50℃におけるデフォーカス量は、+4.032μmである。
【0132】
また、実施例3にかかるピックアップレンズ14を用いた場合、周囲温度が設計温度35℃から−15℃変化した際(20℃になった際)のTotal波面収差(rms)は24.0mλとなり、周囲温度が設計温度35℃から+15℃変化した際(50℃になった際)のTotal波面収差(rms)は22.8mλとなり、35mλ以下となっている。なお、実施例3にかかるピックアップレンズ14を用いた場合、周囲温度が35℃である際のTotal波面収差(rms)は1.5mλである。また、温度変化に伴いデフォーカス量が変化しており、周囲温度20℃におけるデフォーカス量は、−4.923μmであり、周囲温度50℃におけるデフォーカス量は、+4.961μmである。
【0133】
また、実施例4にかかるピックアップレンズ14を用いた場合、周囲温度が設計温度35℃から−15℃変化した際(20℃になった際)のTotal波面収差(rms)は17.7mλとなり、周囲温度が設計温度35℃から+15℃変化した際(50℃になった際)のTotal波面収差(rms)は16.5mλとなり、35mλ以下となっている。なお、実施例4にかかるピックアップレンズ14を用いた場合、周囲温度が35℃である際のTotal波面収差(rms)は0.8mλである。また、温度変化に伴いデフォーカス量が変化しており、周囲温度20℃におけるデフォーカス量は、−4.454μmであり、周囲温度50℃におけるデフォーカス量は、+4.486μmである。
【0134】
また、実施例5にかかるピックアップレンズ14を用いた場合、周囲温度が設計温度35℃から−15℃変化した際(20℃になった際)のTotal波面収差(rms)は20.3mλとなり、周囲温度が設計温度35℃から+15℃変化した際(50℃になった際)のTotal波面収差(rms)は21.0mλとなり、35mλ以下となっている。なお、実施例5にかかるピックアップレンズ14を用いた場合、周囲温度が35℃である際のTotal波面収差(rms)は0.9mλである。また、温度変化に伴いデフォーカス量が変化しており、周囲温度20℃におけるデフォーカス量は、−4.019μmであり、周囲温度50℃におけるデフォーカス量は、+4.046μmである。
【0135】
また、実施例6にかかるピックアップレンズ14を用いた場合、周囲温度が設計温度35℃から−15℃変化した際(20℃になった際)のTotal波面収差(rms)は34.3mλとなり、周囲温度が設計温度35℃から+15℃変化した際(50℃になった際)のTotal波面収差(rms)は31.5mλとなり、35mλ以下となっている。なお、実施例6にかかるピックアップレンズ14を用いた場合、周囲温度が35℃である際のTotal波面収差(rms)は0.8mλである。また、温度変化に伴いデフォーカス量が変化しており、周囲温度20℃におけるデフォーカス量は、−4.848μmであり、周囲温度50℃におけるデフォーカス量は、+4.877μmである。
【0136】
次に、実施例1乃至6にかかるピックアップレンズ14の軸外特性について説明する。なお、周囲温度は35℃である。
図48に示す表に、実施例1乃至6における接線角θM、最小肉厚tM、画角0°の範囲の収差項目、画角0.3°の範囲の収差項目を示す。図48において、収差項目として、Total波面収差、COMA5、デフォーカス量を示す。
また、図49〜図54に示すグラフに、実施例1乃至6における画角0°の範囲の波面収差及び画角0.3°の範囲の波面収差を示す。
【0137】
図49(a)に、実施例1にかかるピックアップレンズ14の画角0°の範囲の波面収差を示し、図49(b)に、実施例1にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲の波面収差を示す。図49に示すように、実施例1にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲の波面収差の増大は抑制されている。具体的には、画角0°のおけるTotal波面収差(rms)は0.6mλであり、画角0.3°におけるTotal波面収差(rms)は10.2mλである。従って、実施例1にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°におけるTotal波面収差(rms)は、35mλ以下に抑制されている。よって、実施例1にかかるピックアップレンズ14の軸外特性は良好となっている。
【0138】
図50(a)に、実施例2にかかるピックアップレンズ14の画角0°の範囲の波面収差を示し、図50(b)に、実施例2にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲の波面収差を示す。図50に示すように、実施例2にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲の波面収差の増大は抑制されている。具体的には、画角0°のおけるTotal波面収差(rms)は1.4mλであり、画角0.3°におけるTotal波面収差(rms)は18.6mλである。従って、実施例2にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°におけるTotal波面収差(rms)は、35mλ以下に抑制されている。よって、実施例2にかかるピックアップレンズ14の軸外特性は良好となっている。
【0139】
図51(a)に、実施例3にかかるピックアップレンズ14の画角0°の範囲の波面収差を示し、図51(b)に、実施例3にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲の波面収差を示す。図51に示すように、実施例3にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲の波面収差の増大は抑制されている。具体的には、画角0°のおけるTotal波面収差(rms)は1.3mλであり、画角0.3°におけるTotal波面収差(rms)は18.2mλである。従って、実施例3にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°におけるTotal波面収差(rms)は、35mλ以下に抑制されている。よって、実施例3にかかるピックアップレンズ14の軸外特性は良好となっている。
【0140】
図52(a)に、実施例4にかかるピックアップレンズ14の画角0°の範囲の波面収差を示し、図52(b)に、実施例4にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲の波面収差を示す。図52に示すように、実施例4にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲の波面収差の増大は抑制されている。具体的には、画角0°のおけるTotal波面収差(rms)は0.8mλであり、画角0.3°におけるTotal波面収差(rms)は34.1mλである。従って、実施例1にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°におけるTotal波面収差(rms)は、35mλ以下に抑制されている。よって、実施例4にかかるピックアップレンズ14の軸外特性は良好となっている。
【0141】
図53(a)に、実施例5にかかるピックアップレンズ14の画角0°の範囲の波面収差を示し、図53(b)に、実施例5にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲の波面収差を示す。図53に示すように、実施例5にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲の波面収差は増大している。具体的には、画角0°のおけるTotal波面収差(rms)は0.9mλであり、画角0.3°におけるTotal波面収差(rms)は62.3mλである。従って、実施例5にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°におけるTotal波面収差(rms)は、35mλを超えてしまっている。よって、実施例5にかかるピックアップレンズ14の軸外特性が悪化している。
【0142】
図54(a)に、実施例6にかかるピックアップレンズ14の画角0°の範囲の波面収差を示し、図54(b)に、実施例6にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲の波面収差を示す。図54に示すように、実施例6にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲の波面収差は増大している。具体的には、画角0°のおけるTotal波面収差(rms)は0.8mλであり、画角0.3°におけるTotal波面収差(rms)は45.8mλである。従って、実施例6にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°におけるTotal波面収差(rms)は、35mλを超えてしまっている。よって、実施例6にかかるピックアップレンズ14の軸外特性が悪化している。
【0143】
また、図48に示すように、実施例1乃至3では、画角0.3°の範囲におけるCOMA5の絶対値が0.010λrms以下となっている。これに対し、実施例4乃至6では、画角0.3°の範囲におけるCOMA5の絶対値が0.010λrmsを超えてしまっている。
【0144】
次に、実施例1乃至6にかかるピックアップレンズ14の正弦条件違反量について説明する。
図55に示す表に、実施例1乃至6における正弦条件違反量を示す。なお、正弦条件違反量は、(13)式により求められる。
また、図56〜図61に示すグラフに、実施例1乃至6における正弦条件違反量を示す。図56〜図61において、横軸が正弦条件違反量を示し、縦軸が光線高さを示す。
【0145】
図56〜図58に示すように、実施例1乃至実施例3では、正弦条件違反量が小さく抑えられている。具体的には、実施例1の正弦条件違反量の最大値は0.0016、最小値は−0.0028となっており、正弦条件違反量の絶対値は0.01以下となっている。また、実施例2の正弦条件違反量の最大値は0.0046、最小値は−0.0064となっており、正弦条件違反量の絶対値は0.01以下となっている。また、実施例3の正弦条件違反量の最大値は0.0019、最小値は−0.0082となっており、正弦条件違反量の絶対値は0.01以下となっている。
【0146】
一方、図59〜図61に示すように、実施例4乃至実施例6では、正弦条件違反量が増大している。具体的には、実施例4の正弦条件違反量の最大値は0.0002、最小値は−0.0144となっており、正弦条件違反量の絶対値は0.01より大きくなっている。また、実施例5の正弦条件違反量の最大値は0.0234、最小値は−0.0036となっており、正弦条件違反量の絶対値は0.01より大きくなっている。また、実施例3の正弦条件違反量の最大値は0.0002、最小値は−0.0279となっており、正弦条件違反量の絶対値は0.01より大きくなっている。
【0147】
図48に示すように、実施例1乃至4にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲におけるTotal波面収差(rms)は、35mλ以下となっている。特に、実施例1乃至3にかかるピックアップレンズ14では、実施例4にかかるピックアップレンズ14に比べて、画角0.3°の範囲における全波面収差(rms)が良好になっている。図48に示すように、実施例1乃至3にかかるピックアップレンズ14は、接線角θMが73°以上となっている点が、実施例4にかかるピックアップレンズ14と異なる。また、実施例1乃至3にかかるピックアップレンズ14は、画角0.3°の範囲におけるCOMA5の絶対値が0.010λrms以下となっている点が、実施例4にかかるピックアップレンズ14と異なる。また、図55に示すように、実施例1乃至3にかかるピックアップレンズ14は、正弦条件違反量の絶対値が0.01以下となっている点が、実施例4にかかるピックアップレンズ14と異なる。従って、接線角θMが73°以上、画角0.3°の範囲におけるCOMA5の絶対値が0.010λrms以下、正弦条件違反量の絶対値が0.01以下となるように段差を形成することにより、ピックアップレンズ14の軸外におけるTotal波面収差(rms)をより良好に低減することができる。
【0148】
また、実施例1乃至3にかかるピックアップレンズ14の中で、実施例1にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲におけるTotal波面収差(rms)が最小となっている。実施例1にかかるピックアップレンズ14は、1番目の輪帯領域から中心の輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、中心の輪帯領域から最外周の輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差が形成されている点が、実施例2及び3と異なる。従って、ピックアップレンズ14のレンズ厚が中心の半径位置において最も薄くなるように段差を形成することにより、ピックアップレンズ14の軸外におけるTotal波面収差(rms)をさらに良好に低減することができる。
【0149】
また、実施例4にかかるピックアップレンズ14は、1番目の輪帯領域から中心の輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、中心の輪帯領域から最外周の輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差が形成されている点が、実施例5及び6と異なる。従って、ピックアップレンズ14のレンズ厚が中心の半径位置において最も薄くなるように段差を形成することにより、ピックアップレンズ14の軸外におけるTotal波面収差(rms)を35mλ以下に抑えることができる。特に、実施例4では、接線角θMが73°以上となっておらず、画角0.3°の範囲におけるCOMA5の絶対値が0.010λrms以下となっておらず、正弦条件違反量の絶対値が0.01以下となっていない。しかし、ピックアップレンズ14のレンズ厚が中心の半径位置において最も薄くなるように段差を形成することにより、ピックアップレンズ14の軸外におけるTotal波面収差(rms)を35mλ以下に抑えることができる。
【0150】
次に、実施例1乃至6にかかるピックアップレンズ14の軸上特性について説明する。図62〜図67に示すグラフに、実施例1乃至6にかかる軸上特性を表す波面収差を示す。また、図68に示すグラフに、比較例1にかかる軸上特性を表す波面収差を示す。なお、周囲温度は35℃である。
図62(a)、図63(a)、・・・、図67(a)に、ピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mmの位置(記録層)にレーザ光を集光した際に発生する波面収差を示す。また、図62(b)、図63(b)、・・・、図67(b)に、ピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光した際に発生する波面収差を示す。また、図62(c)、図63(c)、・・・、図67(c)に、ピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.100mmの位置(記録層)にレーザ光を集光した際に発生する波面収差を示す。また、図68(a)、図68(b)、図68(c)に、比較例1に係るピックアップレンズによって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光した際に発生する波面収差を示す。
なお、図62〜図68において、各位置にレーザ光を集光した場合に透明基板厚差に基づいて発生する球面収差を、コリメータレンズ13を光軸に沿って移動させることによって補正している。ここで、コリメータレンズ13を光軸に沿って移動させることによって補正するという事は、ピックアップレンズ14に入射するレーザ光の発散度合いを調整するという事である。これは、ピックアップレンズ14に入射するレーザ光の仮想的な発光点位置(物点の位置)を調整し、仮想的な発光点位置からコリメータレンズ13を介さずにピックアップレンズ14にレーザ光を入射させる事と等価である。換言すれば、図62〜図68において、ピックアップレンズ14の物体距離を調整することにより、当該球面収差を補正している。
【0151】
実施例1にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光する場合の物体距離は、無限遠である。これは、コリメータレンズ13によって、ピックアップレンズ14に平行光が入射されることを意味する。本実施形態にかかるピックアップレンズ14は、透明基板厚0.0875mmの位置に平行光を良好に集光するように設計されている。
当該物体距離、デフォーカス量において、実施例1にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を図62(b)に示す。当該Total波面収差(rms)は0.6mλであり、ピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光が良好に集光されることが分かる。
また、当該物体距離、デフォーカス量において、実施例1にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光した場合のSA5(rms)は、0.0mλであり、5次球面収差はほとんど発生していないことが分かる。
【0152】
また、実施例1にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mmの記録層にレーザ光を集光する場合の物体距離は、−311mmである。これは、コリメータレンズ13によって、ピックアップレンズ14に収束光が入射されることを意味する。具体的には、コリメータレンズ13を光軸に沿って移動させて、さらに、デフォーカス量を+1.569μmとすることにより、ピックアップレンズ14に入射するレーザ光を収束光とする。すなわち、ピックアップレンズ14の物体距離、及び光ディスク15側の面(面番号3)と、光ディスク15の光源11側の面(物体側の面:面番号4)との面間距離(作動距離(WD))を調整することにより、透明基板厚差によって生じる球面収差を補正している。
当該物体距離、デフォーカス量において、実施例1にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を図62(a)に示す。当該Total波面収差(rms)は6.7mλであり、ピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mmの位置にレーザ光が良好に集光されることが分かる。
また、当該物体距離、デフォーカス量において、実施例1にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mmの位置にレーザ光を集光した場合のSA5(rms)は、2.6mλであり、5次球面収差も十分に低減されていることが分かる。
【0153】
同様に、実施例1にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.100mmの記録層にレーザ光を集光する場合の物体距離は、+328mmである。これは、コリメータレンズ13を光軸に沿って移動させ、さらに、デフォーカス量を−1.305μmとすることにより、ピックアップレンズ14に入射するレーザ光を発散光としていることを意味する。これにより、透明基板厚差によって生じる球面収差を補正している。
当該物体距離、デフォーカス量において、実施例1にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を図62(c)に示す。当該Total波面収差(rms)は6.7mλであり、ピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.100mmの位置にレーザ光が良好に集光されることが分かる。
また、当該物体距離、デフォーカス量において、実施例1にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合のSA5(rms)は、−3.0mλであり、5次球面収差も十分に低減されていることが分かる。
【0154】
同様の理由により、実施例2にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する場合の物体距離は、−280mm、無限遠、+295mmである。また、実施例2にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する場合のデフォーカス量は、+1.046μm、約0μm、−1.305μmである。
そして、当該物体距離、デフォーカス量において、実施例2にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差をそれぞれ図63(a)、図63(b)、図63(c)に示す。また、図63(a)、図63(b)、図63(c)に示すTotal波面収差(rms)はそれぞれ13.0mλ、1.3mλ、14.7mλであり、実施例2にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光が良好に集光されることが分かる。
また、当該物体距離、デフォーカス量において、実施例2にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合のSA5(rms)は、それぞれ7.1mλ、0.1mλ、−8.6mλであり、5次球面収差も十分に低減されていることが分かる。
【0155】
また、実施例3にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する場合の物体距離は、−333mm、無限遠、+341mmである。また、実施例3にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する場合のデフォーカス量は、+1.954μm、約0μm、−2.056μmである。
そして、当該物体距離、デフォーカス量において、実施例3にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差をそれぞれ図64(a)、図64(b)、図64(c)に示す。また、図64(a)、図64(b)、図64(c)に示すTotal波面収差(rms)はそれぞれ7.5mλ、1.5mλ、7.9mλであり、実施例3にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光が良好に集光されることが分かる。
また、当該物体距離、デフォーカス量において、実施例3にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合のSA5(rms)は、それぞれ1.8mλ、0.2mλ、−1.9mλであり、5次球面収差も十分に低減されていることが分かる。
【0156】
また、実施例4にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する場合の物体距離は、−254mm、無限遠、+270mmである。また、実施例4にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する場合のデフォーカス量は、+0.583μm、約0μm、−0.908μmである。
そして、当該物体距離、デフォーカス量において、実施例4にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差をそれぞれ図65(a)、図65(b)、図65(c)に示す。また、図65(a)、図65(b)、図65(c)に示すTotal波面収差(rms)はそれぞれ26.2mλ、0.8mλ、25.8mλであり、実施例4にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光が良好に集光されることが分かる。しかし、実施例4にかかるピックアップレンズ14では、透明基板厚0.075mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する際のTotal波面収差が、マレシャル限界の範囲内であるが、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光する場合に比べて、増大している。
また、当該物体距離、デフォーカス量において、実施例4にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合のSA5(rms)は、それぞれ24.8mλ、0.1mλ、−24.4mλである。したがって、実施例4にかかるピックアップレンズ14によって透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光する際の5次球面収差は十分に低減されていることが分かる。しかし、実施例4にかかるピックアップレンズ14によって透明基板厚0.075mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する際の5次球面収差は、マレシャル限界の範囲内であるが、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光する場合に比べて、増大している。そして、実施例4にかかるピックアップレンズ14によって透明基板厚0.075mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する際のTotal波面収差の増大は、SA5の増大によってもたらされていることが分かる。
【0157】
また、実施例5にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する場合の物体距離は、−203mm、無限遠、+211mmである。また、実施例5にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する場合のデフォーカス量は、−1.277μm、約0μm、+0.652μmである。
そして、当該物体距離、デフォーカス量において、実施例5にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差をそれぞれ図66(a)、図66(b)、図66(c)に示す。また、図66(a)、図66(b)、図66(c)に示すTotal波面収差(rms)はそれぞれ29.8mλ、0.9mλ、27.9mλであり、実施例5にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光が良好に集光されることが分かる。しかし、実施例5にかかるピックアップレンズ14では、透明基板厚0.075mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する際のTotal波面収差が、マレシャル限界の範囲内であるが、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光する場合に比べて、増大している。
また、当該物体距離、デフォーカス量において、実施例5にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合のSA5(rms)は、それぞれ27.1mλ、0.1mλ、−25.4mλである。したがって、実施例5にかかるピックアップレンズ14によって透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光する際の5次球面収差は十分に低減されていることが分かる。しかし、実施例5にかかるピックアップレンズ14によって透明基板厚0.075mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する際の5次球面収差は、マレシャル限界の範囲内であるが、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光する場合に比べて、増大している。そして、実施例5にかかるピックアップレンズ14によって透明基板厚0.075mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する際のTotal波面収差の増大は、SA5の増大によってもたらされていることが分かる。
【0158】
また、実施例6にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する場合の物体距離は、−289mm、無限遠、+299mmである。また、実施例6にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する場合のデフォーカス量は、+1.513μm、約0μm、−1.654μmである。
そして、当該物体距離、デフォーカス量において、実施例6にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差をそれぞれ図67(a)、図67(b)、図67(c)に示す。また、図67(a)、図67(b)、図67(c)に示すTotal波面収差(rms)はそれぞれ23.5mλ、0.8mλ、25.3mλであり、実施例6にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光が良好に集光されることが分かる。しかし、実施例6にかかるピックアップレンズ14では、透明基板厚0.075mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する際のTotal波面収差が、マレシャル限界の範囲内であるが、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光する場合に比べて、増大している。
また、当該物体距離、デフォーカス量において、実施例6にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合のSA5(rms)は、それぞれ22.3mλ、0.0mλ、−23.5mλである。したがって、実施例6にかかるピックアップレンズ14によって透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光する際の5次球面収差はほとんど生じていないことが分かる。しかし、実施例6にかかるピックアップレンズ14によって透明基板厚0.075mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する際の5次球面収差は、マレシャル限界の範囲内であるが、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光する場合に比べて、増大している。そして、実施例6にかかるピックアップレンズ14によって透明基板厚0.075mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する際のTotal波面収差の増大は、SA5の増大によってもたらされていることが分かる。
【0159】
また、比較例1にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する場合の物体距離は、−314mm、無限遠、+322mmである。また、比較例1にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する場合のデフォーカス量は、+1.625μm、約0μm、−1.739μmである。
そして、当該物体距離、デフォーカス量において、比較例1にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差をそれぞれ図68(a)、図68(b)、図68(c)に示す。また、図68(a)、図68(b)、図68(c)に示すTotal波面収差(rms)はそれぞれ5.3mλ、1.5mλ、4.8mλであり、比較例1にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光が良好に集光されることが分かる。
また、当該物体距離、デフォーカス量において、比較例1にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合のSA5(rms)は、それぞれ5.1mλ、0.1mλ、−4.5mλであり、5次球面収差も十分に低減されていることが分かる。
【0160】
実施例4乃至6にかかるピックアップレンズ14と、比較例1にかかるピックアップレンズとの比較から、ピックアップレンズ14の少なくとも一方の面に、上述した複数の輪帯領域を設けると、多層光ディスク15の各記録層に集光する際における軸上特性が劣化してしまうことがわかる。しかし、実施例1乃至3にかかるピックアップレンズ14は、光源11側の面に複数の輪帯領域を有しているが、軸上特性が劣化していない。図48に示すように、実施例1乃至3にかかるピックアップレンズ14は、接線角θMが73°以上となっている点が、実施例4及び5にかかるピックアップレンズ14と異なる。また、実施例1乃至3にかかるピックアップレンズ14は、画角0.3°の範囲におけるCOMA5の絶対値が0.010λrms以下となっている点が、実施例4乃至6にかかるピックアップレンズ14と異なる。また、図55に示すように、実施例1乃至3にかかるピックアップレンズ14は、正弦条件違反量の絶対値が0.01以下となっている点が、実施例4乃至6にかかるピックアップレンズ14と異なる。従って、接線角θMが73°以上、画角0.3°の範囲におけるCOMA5の絶対値が0.010λrms以下、正弦条件違反量の絶対値が0.01以下となるように輪帯領域を形成することにより、透明基板厚0.075mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する際のTotal波面収差の増大、すなわち、5次球面収差の増大を抑制することができる。具体的には、接線角θMが73°以上、画角0.3°の範囲におけるCOMA5の絶対値が0.010λrms以下、正弦条件違反量の絶対値が0.01以下となるように輪帯領域を形成することにより、透明基板厚0.075mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する際のSA5の絶対値が0.010λrms以下となっている。
【0161】
換言すれば、(5)式乃至(7)式を満たすことにより、ピックアップレンズ14によってレーザ光源から出射された光束を多層光ディスク15に集光する場合に、多層光ディスク15の記録層間の基板厚差に基づいて発生する3次球面収差を補正しても、SA5が劣化せずにすむ。これにより、多層光ディスク15の各記録層に集光する際における軸上特性の劣化を抑制することができる。
【符号の説明】
【0162】
11 光源(レーザ光源)
14 ピックアップレンズ(光ピックアップ対物レンズ)
15 光ディスク(BD)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブルーレイ等に用いられる光ピックアップ対物レンズ、光ピックアップ装置及び光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置に使用される対物レンズ(光ピックアップ対物レンズ)の硝材として、従来、ガラス又はプラスティックが使用されている。また、対物レンズは、成形により製作される。
また、周囲温度が変化することにより、レーザ光の波長が変化する。また、レーザ光の波長変化によって、ガラス及びプラスティックの屈折率は変化する。従って、周囲温度が変化すると、硝材の屈折率が変化する。そして、対物レンズの屈折率が変化することにより、対物レンズにおいて発生する波面収差が増加する。ここで、硝材の屈折率の一例を図69に示し、硝材の屈折率の変化率を図70に示す。図71に示す表に、20℃、35℃、50℃におけるプラスティック製の単一非球面レンズのrms波面収差を示す。なお、図71において、焦点距離は1.4mmである。図71に示すように、設計温度35℃から±15℃変化すると、rms波面収差が増大し、マレシャル限界(70mλrms)を超えてしまう。
【0003】
一方、ガラス製対物レンズの屈折率の変化による波面収差の増加は、プラスティック製対物レンズの屈折率の変化による波面収差の増加より小さい。しかし、ガラスは、プラスティックより硬く、融点・軟化点が高いため、金型の製作コスト、成形コストが高いという問題点がある。即ち、ガラス製対物レンズの金型として超硬材料を使用するため、ガラス製対物レンズの金型の製作コストが高価となる。また、ガラス製対物レンズの成形においては、金型温度をガラスの融点・軟化点まで上昇させる必要があり、金型温度の上げ下げに時間がかかる。
そのため、プラスティック製であって、周囲温度の変化によって増加する波面収差がマレシャル限界に収まる光ピックアップレンズの開発が望まれている。
【0004】
従来、対物レンズの収差補正方法として2つの方法がよく使用されている。1つ目は、コリメータレンズにより収差を補正する方法である。2つ目は、対物レンズ自身で収差を補正する方法である。
【0005】
コリメータレンズにより収差補正を行う場合、コリメータレンズの片側の面に回折構造を設ける。そして、当該回折構造による回折を利用して収差を補正する。
【0006】
また、対物レンズ自身により収差補正を行う場合、対物レンズの片側の面に複数の回折構造を設ける。そして、当該回折構造による回折を利用して収差を補正する。
【0007】
また、特許文献1には、対物レンズ自身に複数の回折構造を設けることにより、周囲温度が変化して波面収差がマレシャル限界を超えない対物レンズを形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−252135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、コリメータレンズにより収差補正を行う場合、1つの対物レンズに対して専用のコリメータレンズを設計しなくてはならない。そのため、対物レンズを変更する場合には、コリメータレンズも変更しなければならないという無駄が生じる。
【0010】
また、対物レンズ自身に複数の回折構造を設けることにより収差補正を行う場合、対物レンズに設ける段差の数が多くなる。そして、段差の数が多くなると、段差間の傾斜部分の面積が増える。そのため、不要光が多くなり、対物レンズの光利用効率が低下してしまう。
【0011】
また、上記特許文献1に記載の対物レンズでは、焦点距離が短い。そのため、十分な作動距離(WD≧0.30mm)を確保することができない。
【0012】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、十分な作動距離を確保することができ、且つ、周囲温度の変化によって発生する収差を低減することができる光ピックアップ対物レンズ、光ピックアップ装置及び光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明にかかる光ピックアップ対物レンズは、レーザ光源から出射された光束をBD(ブルーレイディスク)に集光するプラスティック製の光ピックアップ対物レンズである。また、前記光ピックアップ対物レンズは、少なくとも一方の面に、複数の輪帯領域を有し、前記複数の輪帯領域間には段差が形成されている。また、複数の前記段差は、周囲温度が変化した場合に前記光ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような位相差を入射光束に発生させる段差量を有している。そして、前記光ピックアップレンズは、前記光ピックアップ対物レンズの開口数をNA、焦点距離をf(mm)、作動距離をWD(mm)、5次球面収差をSA5(λrms)とした場合に、前記光ピックアップ対物レンズによって前記レーザ光源から出射された光束を多層光ディスクに集光する場合に、前記多層光ディスクの記録層間の基板厚差に基づいて発生する3次球面収差を補正した際に、(1)式乃至(4)式を満たすものである。
NA≧0.85 ・・・・・・(1)
1.1≦f≦1.8 ・・・・・・(2)
WD≧0.3 ・・・・・・(3)
|SA5|≦0.020 ・・(4)
【0014】
本発明においては、光ピックアップ対物レンズの少なくとも一方の面に複数の輪帯領域が設けられ、当該複数の輪帯領域間には段差が形成されている。また、複数の段差は、周囲温度が変化した場合に光ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような位相差を入射光束に発生させる段差量を有する。これにより、周囲温度が変化した場合、隣り合う輪帯領域を透過した光束に周囲温度の変化によって発生する収差を低減するような位相差が発生する。そして、当該位相差により、周囲温度の変化によって生じる収差が低減される。
また、焦点距離が1.1mm未満の場合、作動距離(WD)を十分に確保することが難しい。また、焦点距離が1.8mmより大きい場合、周囲温度の変化によって生じる収差が大きくなるため、光ピックアップ対物レンズに形成する段差だけで補正することが難しくなる。よって、焦点距離の範囲を1.1mm以上1.8mm以下とすることにより、十分に作動距離(WD)を確保することができるとともに、周囲温度の変化によって生じる収差を十分に低減することができる。
さらに、(4)式を満たすことにより、多層光ディスクの各記録層に対しても良好に集光することができる。
さらに、以下の(10)式を満たすことがより好ましい。
|SA5|≦0.010 ・・(10)
ここで、SA5は、以下の(11)式で定義される5次球面収差である。
【数1】
(11)式において、A15は、ツェルニケ多項式の係数であり、光線高さをh(mm)とすると、A15=20h6−30h4+12h2−1である。
【0015】
また、マージナル光線が入射する部分における接線角をθM(°)、マージナル光線が入射する部分におけるレンズのレンズ最小肉厚をtM(mm)、前記光ピックアップ対物レンズの屈折率をNとした場合に、(5)式乃至(7)式を満たすことが好ましい。
73≦θM≦75 ・・・・・・(5)
1.5≦N≦1.55 ・・・・・・(6)
tM≧0.35 ・・・・・・(7)
マージナル光線が入射する部分における接線角θMが73°より小さい場合に、光ピックアップ対物レンズに段差を設けると、光ピックアップ対物レンズへの光軸外からの斜入射に対する光ピックアップ対物レンズの特性(以下、軸外特性を称する。)が悪化する。さらに、焦点距離が長くなると軸外特性の悪化が大きくなる。換言すれば、マージナル光線が入射する部分における接線角θMが73°より小さい場合に、十分な作動距離を確保しつつ、且つ、光ピックアップ対物レンズに周囲温度の変化に起因する波面収差の劣化を補正する段差を設けると、軸外特性が劣化してしまう。また、接線角θMが75°より大きいと、光ピックアップ対物レンズの製造が困難となる。したがって、73≦θM≦75を満たすことにより、十分な作動距離を確保しつつ、光ピックアップ対物レンズに段差を設けることによる軸外特性の劣化を防ぐとともに、光ピックアップ対物レンズの製造を容易にすることができる。なお、マージナル光線とは、光ピックアップ対物レンズの有効径内の最も外側を透過する光線である。
また、レンズ最小肉厚tMが、0.35mmより小さいと、光ピックアップ対物レンズのコバ厚が薄くなりすぎてしまう。そのため、光ピックアップ対物レンズの製造が難しくなる。したがって、レンズ最小肉厚tMを0.35mm以上とすることにより、光ピックアップ対物レンズを容易に製造することができる。
また、(5)式乃至(7)式を満たすことにより、(4)式を満たすピックアップ対物レンズを容易に製造することができる。
【0016】
また、光ピックアップ対物レンズの少なくとも一方の面に、上述した複数の輪帯領域を設けると、多層光ディスクの各記録層に集光する際における軸上特性が劣化してしまう。しかし、(5)式乃至(7)式を満たすことにより、光ピックアップ対物レンズによってレーザ光源から出射された光束を多層光ディスクに集光する場合に、多層光ディスクの記録層間の基板厚差に基づいて発生する3次球面収差を補正しても、軸上特性を示す指標の1つであるSA5が劣化せずにすむ。これにより、多層光ディスクの各記録層に集光する際における軸上特性の劣化を抑制することができる。
【0017】
また、5次のコマ収差をCOMA5とした場合に、画角0.3°におけるCOMA5の絶対値が0.025λrms以下であることが好ましい。さらに、画角0.3°におけるCOMA5の絶対値が0.010λrms以下であることがより好ましい。ここで、COMA5は、以下の(12)式により表される。
【数2】
(12)式において、A13、A14はツェルニケ多項式の係数である。具体的には、A13=(10h5−12h3+3h)cosα、A14=(10h5−12h3+3h)sinαである。また、hは光線高さ(mm)である。
COMA5の絶対値が0.025λrmsより大きい場合に、十分な作動距離を確保しつつ、且つ、光ピックアップ対物レンズに周囲温度の変化に起因する波面収差の劣化を補正する段差を設けると、軸外特性が劣化してしまう。したがって、COMA5の絶対値が0.025λrms以下とすることにより、十分な作動距離を確保しつつ、光ピックアップ対物レンズに段差を設けることによる軸外特性の劣化を防ぐことができる。
【0018】
さらに、前記光ピックアップ対物レンズに形成された前記輪帯領域の数がn(nは、n≧3を満たす正の整数)である場合に、前記光ピックアップ対物レンズの光軸から数えて、1番目からi番目(i=2、3、・・・、n−1)までの前記輪帯領域の範囲において前記光ピックアップ対物レンズのレンズ厚が徐々に薄くなり、i+1番目(i+1=3、4、・・・、n)からn番目までの前記輪帯領域の範囲において前記光ピックアップ対物レンズのレンズ厚が徐々に厚くなるように、前記段差が形成されることが好ましい。
換言すれば、光ピックアップ対物レンズの光軸から所定の半径位置まではレンズ厚が薄くなり、所定の半径位置から外縁まではレンズ厚が厚くなるように、段差を形成することが好ましい。
【0019】
また、さらに、全ての光線高さにおける正弦条件違反量の絶対値が0.01以下であることが好ましい。ここで、正弦条件違反量(SC)を、以下の(13)式により表す。
SC=(h/sinθ−f)/f ・・・・・・(13)
(13)式において、hは光線高さ(mm)、θは光軸の垂線と光ピックアップ対物レンズの入射面の接線とのなす角(接線角)、fは焦点距離(mm)である。
正弦条件違反量(SC)の絶対値が0.01より大きい場合に、光ピックアップ対物レンズに段差を設けると、光ピックアップ対物レンズの軸外における特性が悪化する。さらに、焦点距離が長くなると軸外特性の悪化が大きくなる。換言すれば、全ての光線高さにおける正弦条件違反量の絶対値が0.01より大きい場合に、十分な作動距離を確保しつつ、且つ、光ピックアップ対物レンズに周囲温度の変化に起因する波面収差の劣化を補正する段差を設けると、軸外特性が劣化してしまう。したがって、全ての光線高さにおける正弦条件違反量の絶対値を0.01以下とすることにより、十分な作動距離を確保しつつ、光ピックアップ対物レンズに段差を設けることによる軸外特性の劣化を防ぐことができる。
【0020】
また、前記光ピックアップ対物レンズの設計波長は500nm以下であることが好ましい。
さらに、前記段差は、入射光の位相が輪帯領域相互に波長の略整数倍で異なる段差量であって、周囲温度が変化した場合に前記光ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような位相差を光束に発生させる段差量を有することが好ましい。
これにより、周囲温度が変化した場合に、周囲温度の変化によって発生する収差を低減するような位相差が光束に発生する。
【0021】
また、前記段差の隣接段差量をd(mm)、波長をλ(mm)、前記光ピックアップ対物レンズの屈折率をNとした場合に、(8)式を満たすことが好ましい。
4≦(N−1)×d/λ≦28 ・・・・・・(8)
換言すれば、隣接段差量が、波長の4倍以上28倍以下であることが好ましい。隣接段差量が波長の4倍未満である場合、収差を十分補正するためには、光ピックアップ対物レンズに形成する輪帯領域の数を増やす必要がある。そのため、光利用効率が低下してしまう。一方、隣接段差量が波長の28倍より大きい場合、段差量が大きくなるため、光ピックアップ対物レンズの製造が困難となる。従って、(8)式を満たすように段差を形成することにより、光利用効率の低下を防止するとともに、光ピックアップ対物レンズの製造を容易にすることができる。
【0022】
また、前記段差の軸上段差量をd0、波長をλ、前記光ピックアップ対物レンズの屈折率をNとした場合に、(9)式を満たすことが好ましい。
4≦(N−1)×d0/λ≦14 ・・・・・・(9)
換言すれば、軸上段差量が、波長の4倍以上14倍以下であることが好ましい。軸上段差量が波長の4倍未満である場合、収差を十分補正するためには、光ピックアップ対物レンズに形成する輪帯領域の数を増やす必要がある。そのため、光利用効率が低下してしまう。一方、軸上段差量が波長の14倍より大きい場合、段差量が大きくなるため、光ピックアップ対物レンズの製造が困難となる。従って、(9)式を満たすように段差を形成することにより、光利用効率の低下を防止するとともに、光ピックアップ対物レンズの製造を容易にすることができる。
【0023】
また、前記段差の隣接段差量をd(mm)とした場合、前記隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が60λ以上、180λ以下であることが好ましい。
隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が60λ未満の場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を十分に低減することが難しくなる。一方、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が180λより大きい場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を過剰に補正してしまうため、かえって、波面収差が劣化してしまう。また、段差量が大きくなってしまい、光ピックアップ対物レンズの製造が困難となる。
さらに、前記隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が70λ以上、180λ以下であることが好ましい。
これにより、光ピックアップ対物レンズ自体の温度が変化した場合に発生する波面収差も低減することができる。
【0024】
また、前記段差の軸上段差量をd0(mm)とした場合、前記軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が30λ以上、120λ以下であることが好ましい。
軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が30λ未満の場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を十分に低減することが難しくなる。一方、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が120λより大きい場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を過剰に補正してしまうため、かえって、波面収差が劣化してしまう。また、段差量が大きくなってしまい、光ピックアップ対物レンズの製造が困難となる。
さらに、前記軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が40λ以上、120λ以下であることが好ましい。
これにより、光ピックアップ対物レンズ自体の温度が変化した場合に発生する波面収差も低減することができる。
【0025】
また、本発明の他の光ピックアップ対物レンズは、レーザ光源から出射された光束をBD(ブルーレイディスク)に集光するプラスティック製の光ピックアップ対物レンズである。また、前記光ピックアップ対物レンズは、少なくとも一方の面に、複数の輪帯領域を有し、前記複数の輪帯領域間には段差が形成されている。また、複数の前記段差は、周囲温度が変化した場合に前記光ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような位相差を入射光束に発生させる段差量を有している。そして、前記光ピックアップレンズは、前記光ピックアップ対物レンズの開口数をNA、焦点距離をf(mm)とした場合に、(1)式乃至(3)式を満たすものである。
NA≧0.85 ・・・・・・(1)
1.1≦f≦1.8 ・・・・・・(2)
WD≧0.3 ・・・・・・(3)
【0026】
本発明においては、光ピックアップ対物レンズの少なくとも一方の面に複数の輪帯領域が設けられ、当該複数の輪帯領域間には段差が形成されている。また、複数の段差は、周囲温度が変化した場合に光ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような位相差を入射光束に発生させる段差量を有する。これにより、周囲温度が変化した場合、隣り合う輪帯領域を透過した光束に周囲温度の変化によって発生する収差を低減するような位相差が発生する。そして、当該位相差により、周囲温度の変化によって生じる収差が低減される。
また、焦点距離が1.1mm未満の場合、作動距離(WD)を十分に確保することが難しい。また、焦点距離が1.8mmより大きい場合、周囲温度の変化によって生じる収差が大きくなるため、光ピックアップ対物レンズに形成する段差だけで補正することが難しくなる。よって、焦点距離の範囲を1.1mm以上1.8mm以下とすることにより、十分に作動距離(WD)を確保することができるとともに、周囲温度の変化によって生じる収差を十分に低減することができる。
【0027】
また、前記光ピックアップ対物レンズの設計波長は500nm以下であることが好ましい。
さらに、前記段差は、入射光の位相が輪帯領域相互に波長の略整数倍で異なる段差量であって、周囲温度が変化した場合に前記光ピックアップ対物レンズにおいて発生する収差を低減するような位相差を光束に発生させる段差量を有することが好ましい。
これにより、周囲温度が変化した場合に、周囲温度の変化によって発生する収差を低減するような位相差が光束に発生する。
【0028】
また、前記段差の隣接段差量をd(mm)、波長をλ(mm)、前記光ピックアップ対物レンズの屈折率をNとした場合に、(8)式を満たすことが好ましい。
4≦(N−1)×d/λ≦28 ・・・・・・(8)
換言すれば、隣接段差量が、波長の4倍以上28倍以下であることが好ましい。隣接段差量が波長の4倍未満である場合、収差を十分補正するためには、光ピックアップ対物レンズに形成する輪帯領域の数を増やす必要がある。そのため、光利用効率が低下してしまう。一方、隣接段差量が波長の28倍より大きい場合、段差量が大きくなるため、光ピックアップ対物レンズの製造が困難となる。従って、(8)式を満たすように段差を形成することにより、光利用効率の低下を防止するとともに、光ピックアップ対物レンズの製造を容易にすることができる。
【0029】
また、前記段差の軸上段差量をd0、波長をλ、前記光ピックアップ対物レンズの屈折率をNとした場合に、(9)式を満たすことが好ましい。
4≦(N−1)×d0/λ≦14 ・・・・・・(9)
換言すれば、軸上段差量が、波長の4倍以上14倍以下であることが好ましい。軸上段差量が波長の4倍未満である場合、収差を十分補正するためには、光ピックアップ対物レンズに形成する輪帯領域の数を増やす必要がある。そのため、光利用効率が低下してしまう。一方、軸上段差量が波長の14倍より大きい場合、段差量が大きくなるため、光ピックアップ対物レンズの製造が困難となる。従って、(9)式を満たすように段差を形成することにより、光利用効率の低下を防止するとともに、光ピックアップ対物レンズの製造を容易にすることができる。
【0030】
また、前記光ピックアップ対物レンズに形成された前記輪帯領域の数がn(nは正の整数)である場合に、nが偶数であるとき、前記光ピックアップ対物レンズの光軸から数えて、1番目からn/2番目までの前記輪帯領域の範囲において前記光ピックアップ対物レンズのレンズ厚が徐々に薄くなり、((n/2)+1)番目からn番目までの前記輪帯領域の範囲において前記光ピックアップ対物レンズのレンズ厚が徐々に厚くなるように、前記段差が形成され、前記nが奇数であるとき、前記光ピックアップ対物レンズの光軸から数えて、1番目から((n+1)/2)番目までの前記輪帯領域の範囲において前記光ピックアップ対物レンズのレンズ厚が徐々に薄くなり、((n+1)/2)番目からn番目までの前記輪帯領域の範囲において前記光ピックアップ対物レンズのレンズ厚が徐々に厚くなるように、前記段差が形成されることが好ましい。
【0031】
換言すれば、光ピックアップ対物レンズの光軸から所定の半径位置まではレンズ厚が薄くなり、所定の半径位置から外縁まではレンズ厚が厚くなるように、段差を形成する。具体的には、光ピックアップ対物レンズの光軸から所定の半径位置まではレンズ厚が薄くなり、所定の半径位置から外縁まではレンズ厚が厚くなるように、段差を形成する。光ピックアップ対物レンズに段差を設けることによって、光ピックアップ対物レンズの軸外特性が悪化する。さらに、焦点距離が長くなると軸外特性の悪化が大きくなる。しかし、光ピックアップ対物レンズのレンズ厚が所定の半径位置において最も薄くなるように段差を形成することにより、光ピックアップ対物レンズの軸外におけるrms波面収差を0.035λ以下に抑えることができる。
【0032】
また、光ピックアップ対物レンズのレンズ厚が所定の半径位置において最も薄くなるように段差を形成することにより、(5)式乃至(7)式の条件を満たさずとも、作動距離を十分に確保し、且つ、周囲温度の変化に伴う収差を補正する段差を光ピックアップ対物レンズに設けることによる軸外特性の劣化を防ぐことができる。
また、光ピックアップ対物レンズのレンズ厚が所定の半径位置において最も薄くなるように段差を形成することにより、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差及び軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差を小さくすることができる。これにより、光ピックアップ対物レンズの製造がより容易となる。
【0033】
また、前記段差の隣接段差量をd(mm)とした場合、前記隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が60λ以上、90λ以下であることが好ましい。
隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が60λ未満の場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を十分に低減することが難しくなる。一方、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が90λより大きい場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を過剰に補正してしまうため、かえって、波面収差が劣化してしまう。また、段差量が大きくなってしまい、光ピックアップ対物レンズの製造が困難となる。
さらに、前記隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が70λ以上、90λ以下であることが好ましい。
これにより、光ピックアップ対物レンズ自体の温度が変化した場合に発生する波面収差も低減することができる。
【0034】
また、前記段差の軸上段差量をd0(mm)とした場合、前記軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が30λ以上60λ以下であることが好ましい。
軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が30λ未満の場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を十分低減することが難しくなる。一方、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が60λより大きい場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を過剰に補正してしまうため、かえって、波面収差が劣化してしまう。また、段差量が大きくなってしまい、光ピックアップ対物レンズの製造が困難となる。
さらに、前記軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が40λ以上60λ以下であることが好ましい。
これにより、光ピックアップ対物レンズ自体の温度が変化した場合に発生する波面収差も低減することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明により、十分な作動距離を確保することができ、且つ、周囲温度の変化によって発生する収差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態にかかる光ピックアップ光学系の一例を示したものである。
【図2】設計波長及び設計温度時において本実施形態にかかるピックアップレンズを透過するレーザ光の波面(位相)を示す図(図2(a))であり、周囲温度が設計温度より低くなり、レーザ光の波長が設計波長より短くなった場合において本実施形態にかかるピックアップレンズを透過するレーザ光の波面(位相)を示す図(図2(b))、周囲温度が設計温度より高くなり、レーザ光の波長が設計波長より長くなった場合において本実施形態にかかるピックアップレンズを透過するレーザ光の波面(位相)を示す図(図2(c))である。
【図3】周囲温度が20℃である場合に輪帯領域が形成されていないピックアップレンズにおいて発生する波面収差を示す図(図3(a))、周囲温度が20℃である場合に本実施形態にかかるピックアップレンズにおいて発生する波面収差を示す図(図3(b))である。
【図4】周囲温度が50℃である場合に輪帯領域が形成されていないピックアップレンズにおいて発生する波面収差を示す図(図4(a))、周囲温度が50℃である場合に本実施形態にかかるピックアップレンズにおいて発生する波面収差を示す図(図4(b))である。
【図5】本実施形態にかかるピックアップレンズを模式的に表す側面図である。
【図6】本実施形態にかかるピックアップレンズを模式的に表す側面図である。
【図7】本発明にかかるピックアップレンズのレンズ面形状の一例を示す側面図である。
【図8】実施例1にかかるピックアップレンズの輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量及び隣接段差量を示す表である。
【図9】実施例1にかかるピックアップレンズの輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量の累積値及び隣接段差量の累積値を示す表である。
【図10】実施例1にかかる光ピックアップ光学系のデータを示す表である。
【図11】実施例1にかかるピックアップレンズの光ディスク側の面(面番号3)の面形状を規定する係数を示す表である。
【図12】実施例1にかかるピックアップレンズの光源側の面(面番号2)の面形状を規定する係数を示す表である。
【図13】ピックアップレンズのレンズ面形状の一例を示す側面図である。
【図14】実施例2にかかるピックアップレンズの輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量及び隣接段差量を示す表である。
【図15】実施例2にかかるピックアップレンズの輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量の累積値及び隣接段差量の累積値を示す表である。
【図16】実施例2にかかる光ピックアップ光学系のデータを示す表である。
【図17】実施例2にかかるピックアップレンズの光ディスク側の面(面番号3)の面形状を規定する係数を示す表である。
【図18】実施例2にかかるピックアップレンズの光源側の面(面番号2)の面形状を規定する係数を示す表である。
【図19】実施例3にかかるピックアップレンズの輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量及び隣接段差量を示す表である。
【図20】実施例3にかかるピックアップレンズの輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量の累積値及び隣接段差量の累積値を示す表である。
【図21】実施例3にかかる光ピックアップ光学系のデータを示す表である。
【図22】実施例3にかかるピックアップレンズの光ディスク側の面(面番号3)の面形状を規定する係数を示す表である。
【図23】実施例3にかかるピックアップレンズの光源側の面(面番号2)の面形状を規定する係数を示す表である。
【図24】実施例4にかかるピックアップレンズの輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量及び隣接段差量を示す表である。
【図25】実施例4にかかるピックアップレンズの輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量の累積値及び隣接段差量の累積値を示す表である。
【図26】実施例4にかかる光ピックアップ光学系のデータを示す表である。
【図27】実施例4にかかるピックアップレンズの光ディスク側の面(面番号3)の面形状を規定する係数を示す表である。
【図28】実施例4にかかるピックアップレンズの光源側の面(面番号2)の面形状を規定する係数を示す表である。
【図29】実施例5にかかるピックアップレンズの輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量及び隣接段差量を示す表である。
【図30】実施例5にかかるピックアップレンズの輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量の累積値及び隣接段差量の累積値を示す表である。
【図31】実施例5にかかる光ピックアップ光学系のデータを示す表である。
【図32】実施例5にかかるピックアップレンズの光ディスク側の面(面番号3)の面形状を規定する係数を示す表である。
【図33】実施例5にかかるピックアップレンズの光源側の面(面番号2)の面形状を規定する係数を示す表である。
【図34】実施例6にかかるピックアップレンズの輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量及び隣接段差量を示す表である。
【図35】実施例6にかかるピックアップレンズの輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量の累積値及び隣接段差量の累積値を示す表である。
【図36】実施例6にかかる光ピックアップ光学系のデータを示す表である。
【図37】実施例6にかかるピックアップレンズの光ディスク側の面(面番号3)の面形状を規定する係数を示す表である。
【図38】実施例6にかかるピックアップレンズの光源側の面(面番号2)及びの面形状を規定する係数を示す表である。
【図39】比較例1にかかる光ピックアップ光学系のデータを示す表である。
【図40】比較例1にかかるピックアップレンズの光源側の面(面番号2)及び光ディスク側の面(面番号3)の面形状を規定する係数を示す表である。
【図41】比較例1にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が20℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図41(a))、比較例1にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が35℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図41(b))、比較例1にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が50℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図41(c))である。
【図42】実施例1にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が20℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図42(a))、実施例1にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が35℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図42(b))、実施例1にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が50℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図42(c))である。
【図43】実施例2にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が20℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図43(a))、実施例2にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が35℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図43(b))、実施例2にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が50℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図43(c))である。
【図44】実施例3にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が20℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図44(a))、実施例3にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が35℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図44(b))、実施例3にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が50℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図44(c))である。
【図45】実施例4にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が20℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図45(a))、実施例4にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が35℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図45(b))、実施例4にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が50℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図45(c))である。
【図46】実施例5にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が20℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図46(a))、実施例5にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が35℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図46(b))、実施例5にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が50℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図46(c))である。
【図47】実施例6にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が20℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図47(a))、実施例6にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が35℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図47(b))、実施例6にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が50℃のときに発生する波面収差を示すグラフ(図47(c))である。
【図48】実施例1乃至6にかかるピックアップレンズにおける接線角θM、最小肉厚tM、画角0°の範囲の収差項目、画角0.3°の範囲の収差項目を示す表である。
【図49】実施例1にかかるピックアップレンズの画角0°の範囲の波面収差を示すグラフ(図49(a))、実施例1にかかるピックアップレンズの画角0.3°の範囲の波面収差を示すグラフ(図49(b))である。
【図50】実施例2にかかるピックアップレンズの画角0°の範囲の波面収差を示すグラフ(図50(a))、実施例2にかかるピックアップレンズの画角0.3°の範囲の波面収差を示すグラフ(図50(b))である。
【図51】実施例3にかかるピックアップレンズの画角0°の範囲の波面収差を示すグラフ(図51(a))、実施例3にかかるピックアップレンズの画角0.3°の範囲の波面収差を示すグラフ(図51(b))である。
【図52】実施例4にかかるピックアップレンズの画角0°の範囲の波面収差を示すグラフ(図52(a))、実施例4にかかるピックアップレンズの画角0.3°の範囲の波面収差を示すグラフ(図52(b))である。
【図53】実施例5にかかるピックアップレンズの画角0°の範囲の波面収差を示すグラフ(図53(a))、実施例5にかかるピックアップレンズの画角0.3°の範囲の波面収差を示すグラフ(図53(b))である。
【図54】実施例6にかかるピックアップレンズの画角0°の範囲の波面収差を示すグラフ(図54(a))、実施例6にかかるピックアップレンズの画角0.3°の範囲の波面収差を示すグラフ(図54(b))である。
【図55】実施例1乃至6にかかるピックアップレンズの正弦条件違反量を示す表である。
【図56】実施例1にかかるピックアップレンズの正弦条件違反量を示すグラフである。
【図57】実施例2にかかるピックアップレンズの正弦条件違反量を示すグラフである。
【図58】実施例3にかかるピックアップレンズの正弦条件違反量を示すグラフである。
【図59】実施例4にかかるピックアップレンズの正弦条件違反量を示すグラフである。
【図60】実施例5にかかるピックアップレンズの正弦条件違反量を示すグラフである。
【図61】実施例6にかかるピックアップレンズの正弦条件違反量を示すグラフである。
【図62】実施例1にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.075mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図62(a))、実施例1にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図62(b))、実施例1にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図62(c))である。
【図63】実施例2にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.075mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図63(a))、実施例2にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図63(b))、実施例2にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図63(c))である。
【図64】実施例3にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.075mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図64(a))、実施例3にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図64(b))、実施例3にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図64(c))である。
【図65】実施例4にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.075mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図65(a))、実施例4にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図65(b))、実施例4にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図65(c))である。
【図66】実施例5にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.075mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図66(a))、実施例5にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図66(b))、実施例5にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図66(c))である。
【図67】実施例6にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.075mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図67(a))、実施例6にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図67(b))、実施例6にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図67(c))である。
【図68】比較例1にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.075mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図68(a))、比較例1にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図68(b))、比較例1にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を示すグラフ(図68(c))である。
【図69】硝材の屈折率を示す表である。
【図70】硝材の屈折率の変化率をに示す表である。
【図71】20℃、35℃、50℃におけるプラスティック製の単一非球面レンズのrms波面収差を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。図1は、本発明の実施の形態にかかる光ピックアップ光学系1の一例を示したものである。本実施形態にかかる光ピックアップ光学系1は、本発明にかかる光ピックアップ装置又は光ディスク装置に用いられる。光ピックアップ光学系1は、光源11(レーザ光源)、ビームスプリッタ12、コリメータレンズ13、ピックアップレンズ14(光ピックアップ対物レンズ)、検出系16等を備えている。なお、本実施形態では、光ディスク15としてBD(ブルーレイディスク)を用いた。
【0038】
光源11は、BD用に用いられる青色レーザーダイオード等を備えている。
【0039】
光源11から出射されたレーザ光(光束)の光路上にビームスプリッタ12が設けられている。
【0040】
ビームスプリッタ12より出射したレーザ光の光路上にコリメータレンズ13が設けられている。コリメータレンズ13は、ビームスプリッタ12から出射されたレーザ光の発散度合いを調整して、当該レーザ光を出射する。
【0041】
コリメータレンズ13を透過したレーザ光の光路上にピックアップレンズ14が設けられている。
【0042】
ピックアップレンズ14は、入射された光を光ディスク(BD)15の情報記録面に集光させる機能を有する。BDには、記録層を1層のみ有する単層BDと、記録層を複数層有する多層BDとが知られている。単層BDの透明基板厚は0.100mmである。また、記録層を2層有する2層BDの各記録層の透明基板厚は、0.075mmと、0.100mmである。ピックアップレンズ14が2層BDの記録層にレーザ光を集光する場合、各記録層間の基板厚差0.025mmによって、約0.25λrmsの大きな球面収差が発生してしまう。そこで、通常、コリメータレンズ13を光軸に沿って移動させることにより、ピックアップレンズ14に入射する光束の発散度合いを調整することにより、当該球面収差を補正する。ここで、コリメータレンズ13を光軸に沿って移動させることによって補正するという事は、ピックアップレンズ14に入射するレーザ光の発散度合いを調整するという事である。これは、ピックアップレンズ14に入射するレーザ光の仮想的な発光点位置(物点の位置)を調整し、仮想的な発光点位置からコリメータレンズ13を介さずにピックアップレンズ14にレーザ光を入射させる事と等価である。換言すれば、ピックアップレンズ14の物体距離を調整することにより、当該球面収差を補正する。
そこで、本発明の実施の形態にかかるピックアップレンズ14は、2層BDの各記録層の透明基板厚の中間の透明基板厚である0.0875mmに良好に集光するように設計されている。これにより、各記録層間の基板厚差によって生じる球面収差を低減することができる。
なお、本実施の形態では、光ディスク15の透明基板はポリカーボネイトとした。
【0043】
ピックアップレンズ14は、さらに、光ディスク15の情報記録面で反射されたレーザ光を検出系16に導く機能も有する。
また、ピックアップレンズ14の少なくとも一方の面には、ピックアップレンズ14の光軸を同心とする複数の輪帯領域が形成されている。また、隣り合う輪帯領域間には段差が形成されている。換言すれば、ピックアップレンズ14の少なくとも一方の面は、複数の段差により、ピックアップレンズ14の光軸を同心とする複数の輪帯領域に分割されている。また、ピックアップレンズ14は、プラスティック素材から形成されている。
【0044】
後述するように、ピックアップレンズ14に形成された複数の段差の段差量は、設計波長及び設計温度時(レーザ光の波長が設計波長であり、周囲温度が設計温度であるとき)に入射したレーザ光の位相が隣接する輪帯領域相互に波長の略整数倍で異なるように設定されている。
また、ピックアップレンズ14に形成された複数の段差は、周囲温度が変化することによって発生する収差を低減するようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有する。
ここで、波長の略整数倍とは、波長の(整数)×0.999倍〜波長の(整数)×1.001倍であることが好ましい。たとえば、本実施の形態において、波長の略10倍とは、10×0.999=9.99、10×1.001=10.01より、波長の9.99倍〜10.01倍を意味する。なお、波長の略整数倍とは、波長の(整数)×0.995倍〜波長の(整数)×1.005倍であってもよい。この場合においても、ピックアップレンズ14に形成された段差により、周囲温度が変化した場合に発生する波面収差を十分に低減することができる。
【0045】
フォーカスサーボ時、及びトラッキングサーボ時には、ピックアップレンズ14が図示されないアクチュエータにより動作する。
【0046】
次に、光源11から出射されたレーザ光が光ディスク15の情報記録面で反射され検出系16に検出されるまでの挙動について説明する。光源11から出射されたレーザ光はビームスプリッタ12を透過してコリメータレンズ13に入射する。
【0047】
コリメータレンズ13は、ビームスプリッタ12から出射されたレーザ光の発散度合いを調整して、当該レーザ光を出射する。
【0048】
コリメータレンズ13を透過したレーザ光はピックアップレンズ14に入射される。ここで、本実施の形態においては、周囲温度が変化した場合、このピックアップレンズ14に設けられた複数の段差は、周囲温度の変化によって発生する収差を低減するようにレーザ光の位相を補正する。そして、ピックアップレンズ14は、補正後のレーザ光を光ディスク15の情報記録面に集光させる。光ディスク15の情報記録面で反射されたレーザ光は、ピックアップレンズ14を介して検出系16に入射し、検出される。検出系16は、当該レーザ光を検出し、光電変換することによって、フォーカスサーボ信号、トラックサーボ信号、再生信号などを生成する。
【0049】
次に、本発明の実施の形態にかかる光ピックアップ光学系1において用いられるピックアップレンズ14について詳細に説明する。図2は、本実施の形態にかかる光ピックアップ光学系1におけるピックアップレンズ14を示す図である。図2(a)は、設計波長及び設計温度時におけるレーザ光の波面(位相)を示し、図2(b)は、周囲温度が設計温度より低くなりレーザ光の波長が設計波長より短くなった場合におけるレーザ光の波面(位相)を示し、図2(c)は、周囲温度が設計温度より高くなりレーザ光の波長が設計波長より長くなった場合におけるレーザ光の波面(位相)を示している。本実施形態では、ピックアップレンズ14の光源11側の面に、上述した複数の段差を設ける。そして、複数の段差の段差量は、透過したレーザ光の位相が隣接する輪帯領域相互に波長の略整数倍で異なるように設定されている。また、ピックアップレンズ14の段差は、周囲温度が変化した場合に周囲温度の変化によって生じる収差を低減するようにレーザ光に位相差を発生させる段差量を有する。
【0050】
すなわち、設計波長及び設計温度時にレーザ光がピックアップレンズ14に入射する場合、各輪帯領域を透過したレーザ光の位相は相互に波長の整数倍だけ異なる。従って、図2(a)に示されるように、設計波長及び設計温度時には、異なる輪帯領域を透過したレーザ光には位相差が発生しない。そのため、ピックアップレンズ14に入射したレーザ光は、同一位相のまま、出射する。従って、設計波長及び設計温度時において、ピックアップレンズ14により集光されるレーザ光の収差は段差が形成されていない場合と同じとなる。
【0051】
他方、図2(b)、(c)に示されるように、周囲温度が変化し、波長が変化したレーザ光がピックアップレンズ14に入射する場合、各輪帯領域を透過したレーザ光の位相の違いは波長の整数倍とならない。従って、図2(b)、(c)に示されるように、波長が変化した場合には、異なる輪帯領域を透過したレーザ光に位相差が発生する。そして、本発明においては、当該位相差は、周囲温度の変化によって発生する収差を低減するような大きさとなっている。そのため、周囲温度が変化した場合、従来ではピックアップレンズにより集光される収差が増大してしまうが、本発明においては、ピックアップレンズ14の各輪帯領域を透過したレーザ光の位相差により、周囲温度の変化に伴う収差の増大が抑制される。そして、ピックアップレンズ14より出射したレーザ光は、光ディスク15の情報記録面に良好に集光する。
【0052】
図3(a)に、周囲温度が20℃である場合に輪帯領域が形成されていないピックアップレンズにおいて発生する波面収差を示し、図4(a)に、周囲温度が50℃である場合に輪帯領域が形成されていないピックアップレンズにおいて発生する波面収差を示す。また、図3(b)に、周囲温度が20℃である場合にピックアップレンズ14において発生する波面収差を示し、図4(b)に、周囲温度が50℃である場合にピックアップレンズ14において発生する波面収差を示す。なお、図3、図4において、縦軸は波面収差の大きさを表し、横軸はピックアップレンズの径方向における位置を表す。また、輪帯領域が形成されていないピックアップレンズ及びピックアップレンズ14の設計温度は35℃である。
【0053】
図3(a)、図4(a)に示すように、周囲温度が20℃、50℃である場合、輪帯領域が形成されていないピックアップレンズでは、波面収差は非常に大きくなる。
一方、図3(b)、図4(b)に示すように、周囲温度が20℃、50℃であっても、輪帯領域が形成されているピックアップレンズ14では、波面収差を小さく抑えることが出来る。具体的には、ピックアップレンズ14に形成された段差によって各輪帯領域を透過したレーザ光に位相差が発生する。そして、当該位相差が周囲温度の変化によりピックアップレンズ14において発生する収差を低減する。従って、ピックアップレンズ14より出射したレーザ光は、光ディスク15の情報記録面に良好に集光する。
【0054】
また、ピックアップレンズ14は、ピックアップレンズ14の開口数をNA、焦点距離をf(mm)、作動距離をWD(mm)とした場合に、(1)式乃至(3)式を満たすように形成される。
NA≧0.85 ・・・・・・(1)
1.1≦f≦1.8 ・・・・・・(2)
WD≧0.3 ・・・・・・(3)
【0055】
また、ピックアップレンズ14は、5次球面収差をSA5とした場合に、ピックアップレンズ14によってレーザ光を多層光ディスク15に集光する場合に、多層光ディスク15の記録層間の基板厚差に基づいて発生する3次球面収差を補正した際に、(4)式を満たすことが好ましい。
|SA5|≦0.020 ・・(4)
さらに、以下の(10)式を満たすことがより好ましい。
|SA5|≦0.010 ・・(10)
【0056】
(4)式を満たすことにより、多層光ディスク15の各記録層に集光する際における軸上特性の劣化を抑制することができる。通常、ピックアップレンズの少なくとも一方の面に、上述した複数の輪帯領域を設けると、多層光ディスク15の各記録層に集光する際における軸上特性が劣化してしまう。しかし、(4)式を満たすことにより、ピックアップレンズ14によってレーザ光源から出射された光束を多層光ディスク15に集光する場合に、多層光ディスク15の記録層間の基板厚差に基づいて発生する3次球面収差を補正しても、SA5が劣化せずにすむ。これにより、多層光ディスク15の各記録層に集光する際における軸上特性の劣化を抑制することができる。
ここで、SA5は、以下の(11)式で定義される5次球面収差である。
【数3】
(11)式において、A15は、ツェルニケ多項式の係数であり、光線高さをh(mm)とすると、A15=20h6−30h4+12h2−1である。
【0057】
さらに、マージナル光線が入射する部分における接線角をθM(°)、マージナル光線が入射する部分におけるレンズのレンズ最小肉厚をtM(mm)、ピックアップレンズ14の屈折率をNとした場合に、(5)式乃至(7)式を満たすことが好ましい。
73≦θM≦75 ・・・・・・(5)
1.5≦N≦1.55 ・・・・・・(6)
tM≧0.35 ・・・・・・(7)
マージナル光線とは、ピックアップレンズ14の有効径内の最も外側を透過する光線である。図5を参照しながら、接線角θ(°)について説明する。接線角θとは、図5に示すように、ピックアップレンズ14の入射面の接線と入射光線とがなす角である。そして、光軸の垂線と、マージナル光線が入射する部分の入射面の接線とがなす角を接線角θMとする。
マージナル光線が入射する部分における接線角θMが73°より小さい場合に、ピックアップレンズ14に段差を設けると、ピックアップレンズ14への光軸外からの斜入射に対するピックアップレンズ14の特性(以下、軸外特性を称する。)が悪化する。さらに、焦点距離が長くなると軸外特性の悪化が大きくなる。換言すれば、マージナル光線が入射する部分における接線角θMが73°より小さい場合に、十分な作動距離を確保しつつ、且つ、ピックアップレンズ14に周囲温度の変化に起因する波面収差の劣化を補正する段差を設けると、軸外特性が劣化してしまう。また、接線角θMが75°より大きいと、ピックアップレンズ14の製造が困難となる。したがって、73≦θM≦75を満たすことにより、十分な作動距離を確保しつつ、ピックアップレンズ14に段差を設けることによる軸外特性の劣化を防ぐとともに、ピックアップレンズ14の製造を容易にすることができる。
また、(5)式乃至(7)式を満たすことにより、(4)式を満たすピックアップ対物レンズを容易に製造することができる。
【0058】
図5を参照しながら、レンズ最小肉厚をtMについて説明する。レンズ最小肉厚をtMとは、図5に示すように、マージナル光線がピックアップレンズ14の入射面と交わる交点と、マージナル光線がピックアップレンズの出射面と交わる交点との、光軸に平行な距離である。レンズ最小肉厚tMが、0.35mmより小さいと、ピックアップレンズ14のコバ厚が薄くなりすぎてしまう。そのため、ピックアップレンズ14の製造が難しくなる。したがって、レンズ最小肉厚tMを0.35mm以上とすることにより、ピックアップレンズ14を容易に製造することができる。
【0059】
また、5次のコマ収差をCOMA5とした場合に、画角0.3°におけるCOMA5の絶対値が0.025λrms以下であることが好ましい。さらに、画角0.3°におけるCOMA5の絶対値が0.010λrms以下であることがより好ましい。ここで、COMA5は、以下の(12)式により表される。
【数4】
(12)式において、A13、A14はツェルニケ多項式の係数である。具体的には、A13=(10h5−12h3+3h)cosα、A14=(10h5−12h3+3h)sinαである。また、hは光線高さ(mm)である。
COMA5の絶対値が0.025λrmsより大きい場合に、十分な作動距離を確保しつつ、且つ、ピックアップレンズ14に周囲温度の変化に起因する波面収差の劣化を補正する段差を設けると、軸外特性が劣化してしまう。したがって、COMA5の絶対値が0.025λrms以下とすることにより、十分な作動距離を確保しつつ、ピックアップレンズ14に段差を設けることによる軸外特性の劣化を防ぐことができる。
【0060】
また、ピックアップレンズ14に形成された輪帯領域の数がn(nは、n≧3を満たす正の整数)である場合に、ピックアップレンズ14の光軸から数えて、1番目からi番目(i=2、3、・・・、n−1)までの輪帯領域の範囲においてピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、i+1番目(i+1=3、4、・・・、n)からn番目までの輪帯領域の範囲においてピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差が形成されることが好ましい。
換言すれば、ピックアップレンズ14のレンズ厚が光軸から所定の半径位置まで薄くなり、所定の半径位置から外縁まで厚くなるように、段差を形成することが好ましい。
【0061】
また、さらに、全ての光線高さにおける正弦条件違反量の絶対値が0.01以下であることが好ましい。ここで、正弦条件違反量(SC)を、以下の(13)式により表す。
SC=(h/sinθ−f)/f ・・・・・・(13)
(13)式において、hは光線高さ(mm)、θは光軸の垂線とピックアップレンズ14の入射面の接線とのなす角(接線角)、fは焦点距離(mm)である。
正弦条件違反量(SC)の絶対値が0.01より大きい場合に、ピックアップレンズ14に段差を設けると、ピックアップレンズ14の軸外特性が悪化する。さらに、焦点距離が長くなると軸外特性の悪化が大きくなる。換言すれば、全ての光線高さにおける正弦条件違反量の絶対値が0.01より大きい場合に、十分な作動距離を確保しつつ、且つ、ピックアップレンズ14に周囲温度の変化に起因する波面収差の劣化を補正する段差を設けると、軸外特性が劣化してしまう。したがって、全ての光線高さにおける正弦条件違反量の絶対値を0.01以下とすることにより、十分な作動距離を確保しつつ、ピックアップレンズ14に段差を設けることによる軸外特性の劣化を防ぐことができる。
【0062】
また、ピックアップレンズ14の段差の隣接段差量をd(mm)、波長をλ(mm)、ピックアップレンズ14の屈折率をNとした場合に、(8)式を満たすことが好ましい。
4≦(N−1)×d/λ≦28 ・・・・・・(8)
換言すれば、隣接段差量が、波長の4倍以上28倍以下であることが好ましい。図6に、ピックアップレンズ14を模式的に表す側面図を示す。ここで、隣接段差量とは、図6に示すように、各輪帯領域間の段差の段差量である。隣接段差量が波長の4倍未満である場合、収差を十分補正するためには、ピックアップレンズ14に形成する輪帯領域の数を増やす必要がある。そのため、光利用効率が低下してしまう。一方、隣接段差量が波長の28倍より大きい場合、段差量が大きくなるため、ピックアップレンズ14の製造が困難となる。
【0063】
また、ピックアップレンズ14の段差の軸上段差量をd0(mm)、波長をλ(mm)、ピックアップレンズ14の屈折率をNとした場合に、(9)式を満たすことが好ましい。
4≦(N−1)×d0/λ≦14 ・・・・・・(9)
換言すれば、軸上段差量が、波長の4倍以上14倍以下であることが好ましい。ここで、軸上段差量とは、図6に示すように、各輪帯領域の面形状を仮想的に光軸OA側へと延長した場合に、当該面形状が光軸と仮想的に交差する交点と、光軸を含む輪帯領域の面形状が光軸OAに交差する交点との距離である。換言すれば、ピックアップレンズ14の段差の光軸上における段差量である。軸上段差量が波長の4倍未満である場合、収差を十分補正するためには、ピックアップレンズ14に形成する輪帯領域の数を増やす必要がある。そのため、光利用効率が低下してしまう。一方、軸上段差量が波長の14倍より大きい場合、段差量が大きくなるため、ピックアップレンズ14の製造が困難となる。
【0064】
また、段差の隣接段差量をd(mm)とした場合、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が60λ以上、180λ以下であることが好ましい。
隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が60λ未満の場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を十分に低減することが難しくなる。一方、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が180λより大きい場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を過剰に補正してしまうため、かえって、波面収差が劣化してしまう。また、段差量が大きくなってしまい、ピックアップレンズ14の製造が困難となる。
さらに、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が70λ以上、180λ以下であることが好ましい。
これにより、ピックアップレンズ14自体の温度が変化した場合に発生する波面収差も低減することができる。
【0065】
また、段差の軸上段差量をd0(mm)とした場合、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が30λ以上、120λ以下であることが好ましい。
軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が30λ未満の場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を十分に低減することが難しくなる。一方、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が120λより大きい場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を過剰に補正してしまうため、かえって、波面収差が劣化してしまう。また、段差量が大きくなってしまい、ピックアップレンズ14の製造が困難となる。
さらに、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が40λ以上、120λ以下であることが好ましい。
これにより、ピックアップレンズ14自体の温度が変化した場合に発生する波面収差も低減することができる。
【0066】
また、ピックアップレンズ14に形成された輪帯領域の数がn(nは正の整数)である場合に、nが偶数であるとき、ピックアップレンズ14の光軸から数えて、1番目からn/2番目までの輪帯領域の範囲においてピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、((n/2)+1)番目からn番目までの輪帯領域の範囲においてピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差を形成することが好ましい。また、nが奇数であるとき、ピックアップレンズ14の光軸から数えて、1番目から((n+1)/2)番目までの輪帯領域の範囲においてピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、((n+1)/2)番目からn番目までの輪帯領域の範囲においてピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差を形成することが好ましい。
【0067】
換言すれば、ピックアップレンズ14の光軸から所定の半径位置まではレンズ厚が薄くなり、所定の半径位置から外縁まではレンズ厚が厚くなるように、段差を形成することが好ましい。具体的には、ピックアップレンズ14の光軸から所定の半径位置まではレンズ厚が薄くなり、所定の半径位置から外縁まではレンズ厚が厚くなるように、段差を形成する。ピックアップレンズ14に段差を設けることによって、ピックアップレンズ14の軸外特性が悪化する。さらに、焦点距離が長くなると軸外特性の悪化が大きくなる。しかし、ピックアップレンズ14のレンズ厚が所定の半径位置において最も薄くなるように段差を形成することにより、ピックアップレンズ14の軸外におけるrms波面収差を0.035λ以下に抑えることができる。
【0068】
また、ピックアップレンズ14のレンズ厚が所定の半径位置において最も薄くなるように段差を形成することにより、(5)式乃至(7)式の条件を満たさずとも、作動距離を十分に確保し、且つ、周囲温度の変化に伴う収差を補正する段差をピックアップレンズ14に設けることによる軸外特性の劣化を防ぐことができる。
また、ピックアップレンズ14のレンズ厚が所定の半径位置において最も薄くなるように段差を形成することにより、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差及び軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差を小さくすることができる。これにより、ピックアップレンズ14の製造がより容易となる。
【0069】
また、段差の隣接段差量をd(mm)とした場合、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が60λ以上、90λ以下であることが好ましい。
隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が60λ未満の場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を十分に低減することが難しくなる。一方、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が90λより大きい場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を過剰に補正してしまうため、かえって、波面収差が劣化してしまう。また、段差量が大きくなってしまい、ピックアップレンズ14の製造が困難となる。
さらに、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が70λ以上、90λ以下であることが好ましい。
これにより、ピックアップレンズ14自体の温度が変化した場合に発生する波面収差も低減することができる。
【0070】
また、段差の軸上段差量をd0(mm)とした場合、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が30λ以上60λ以下であることが好ましい。
軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が30λ未満の場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を十分低減することが難しくなる。一方、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が60λより大きい場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を過剰に補正してしまうため、かえって、波面収差が劣化してしまう。また、段差量が大きくなってしまい、ピックアップレンズ14の製造が困難となる。
さらに、前記軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が40λ以上60λ以下であることが好ましい。
これにより、ピックアップレンズ14自体の温度が変化した場合に発生する波面収差も低減することができる。
【0071】
このように構成された本実施の形態にかかるピックアップレンズ14及び光ピックアップ光学系1によれば、ピックアップレンズ14の少なくとも一方の面に複数の輪帯領域が設けられ、当該複数の輪帯領域間には段差が形成されている。また、複数の段差は、周囲温度が変化した場合にピックアップレンズ14において発生する収差を低減するような位相差をレーザ光に発生させる段差量を有する。これにより、周囲温度が変化した場合、隣り合う輪帯領域を透過したレーザ光に周囲温度の変化によって発生する収差を低減するような位相差が発生する。そして、当該位相差により、周囲温度の変化によって生じる収差が低減される。
また、焦点距離が1.1mm未満の場合、作動距離(WD)を十分に確保することが難しい。また、焦点距離が1.8mmより大きい場合、周囲温度の変化によって生じる収差が大きくなるため、ピックアップレンズ14に形成する段差だけで補正することが難しくなる。よって、焦点距離の範囲を1.1mm以上1.8mm以下とすることにより、十分に作動距離(WD)を確保することができるとともに、周囲温度の変化によって生じる収差を十分に低減することができる。
さらに、(4)式を満たすことにより、多層光ディスクの各記録層に対しても良好に集光することができる。
ここで、SA5は、以下の(11)式で定義される5次球面収差である。
【数5】
(11)式において、A15は、ツェルニケ多項式の係数であり、光線高さをh(mm)とすると、A15=20h6−30h4+12h2−1である。
【0072】
また、ピックアップレンズの少なくとも一方の面に、上述した複数の輪帯領域を設けると、多層光ディスク15の各記録層に集光する際における軸上特性が劣化してしまう。しかし、(5)式乃至(7)式を満たすことにより、ピックアップレンズ14によってレーザ光源から出射された光束を多層光ディスク15に集光する場合に、多層光ディスク15の記録層間の基板厚差に基づいて発生する3次球面収差を補正しても、軸上特性を示す指標の1つであるSA5が劣化せずにすむ。これにより、多層光ディスク15の各記録層に集光する際における軸上特性の劣化を抑制することができる。
【0073】
また、マージナル光線が入射する部分における接線角をθM(°)、マージナル光線が入射する部分におけるレンズのレンズ最小肉厚をtM(mm)、ピックアップレンズ14の屈折率をNとした場合に、(5)式乃至(7)式を満たすことが好ましい。
73≦θM≦75 ・・・・・・(5)
1.5≦N≦1.55 ・・・・・・(6)
tM≧0.35 ・・・・・・(7)
73≦θM≦75を満たすことにより、十分な作動距離を確保しつつ、ピックアップレンズ14に段差を設けることによる軸外特性の劣化を防ぐとともに、ピックアップレンズ14の製造を容易にすることができる。
また、レンズ最小肉厚tMを0.35mm以上とすることにより、ピックアップレンズ14を容易に製造することができる。
また、(5)式乃至(7)式を満たすことにより、(4)式を満たすピックアップ対物レンズを容易に製造することができる。
【0074】
また、さらに、全ての光線高さにおける正弦条件違反量の絶対値が0.01以下であることが好ましい。
全ての光線高さにおける正弦条件違反量の絶対値を0.01以下とすることにより、十分な作動距離を確保しつつ、ピックアップレンズ14に段差を設けることによる軸外特性の劣化を防ぐことができる。
【0075】
また、5次のコマ収差をCOMA5とした場合に、画角0.3°におけるCOMA5の絶対値が0.025λrms以下であることが好ましい。さらに、画角0.3°におけるCOMA5の絶対値が0.010λrms以下であることがより好ましい。ここで、COMA5は、以下の(12)式により表される。
【数6】
(12)式において、A13、A14はツェルニケ多項式の係数である。具体的には、A13=(10h5−12h3+3h)cosα、A14=(10h5−12h3+3h)sinαである。また、hは光線高さ(mm)である。
COMA5の絶対値が0.025λrms以下とすることにより、十分な作動距離を確保しつつ、ピックアップレンズ14に段差を設けることによる軸外特性の劣化を防ぐことができる。
【0076】
さらに、ピックアップレンズ14に形成された輪帯領域の数がn(nは、n≧3を満たす正の整数)である場合に、ピックアップレンズ14の光軸から数えて、1番目からi番目(i=2、3、・・・、n−1)までの輪帯領域の範囲においてピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、i+1番目(i+1=3、4、・・・、n)からn番目までの輪帯領域の範囲においてピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差が形成されることが好ましい。
換言すれば、光ピックアップ対物レンズの光軸から所定の半径位置まではレンズ厚が薄くなり、所定の半径位置から外縁まではレンズ厚が厚くなるように、段差を形成することが好ましい。
【0077】
また、ピックアップレンズ14の設計波長は500nm以下である。
さらに、段差は、透過光の位相が輪帯領域相互に波長の略整数倍で異なる段差量であって、周囲温度が変化した場合にピックアップレンズ14において発生する収差を低減するような位相差をレーザ光に発生させる段差量を有する。
これにより、周囲温度が変化した場合に、周囲温度の変化によって発生する収差を低減するような位相差がレーザ光に発生する。
【0078】
また、ピックアップレンズ14の段差の隣接段差量をd(mm)、波長をλ(mm)、ピックアップレンズ14の屈折率をNとした場合に、(8)式を満たす。
4≦(N−1)×d/λ≦28 ・・・・・・(8)
また、ピックアップレンズ14の段差の軸上段差量をd0(mm)、波長(mm)をλ、ピックアップレンズ14の屈折率をNとした場合に、(9)式を満たすことが好ましい。
4≦(N−1)×d0/λ≦14 ・・・・・・(9)
隣接段差量が波長の4倍未満、或いは、軸上段差量が波長の4倍未満である場合、収差を十分補正するためには、ピックアップレンズ14に形成する輪帯領域の数を増やす必要がある。そのため、光利用効率が低下してしまう。一方、隣接段差量が波長の28倍より大きい場合、或いは、軸上段差量が波長の14倍より大きい場合、段差量が大きくなるため、ピックアップレンズ14の製造が困難となる。従って、(8)式或いは(9)を満たすように段差を形成することにより、光利用効率の低下を防止するとともに、ピックアップレンズ14の製造を容易にすることができる。
【0079】
また、段差の隣接段差量をd(mm)とした場合、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が60λ以上、180λ以下であることが好ましい。
また、段差の軸上段差量をd0(mm)とした場合、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が30λ以上、120λ以下であることが好ましい。
隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が60λ未満の場合、或いは、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が30λ未満の場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を十分に低減することが難しくなる。一方、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が180λより大きい場合、或いは、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が120λより大きい場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を過剰に補正してしまうため、かえって、波面収差が劣化してしまう。また、段差量が大きくなってしまい、ピックアップレンズ14の製造が困難となる。
【0080】
さらに、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が70λ以上、180λ以下であることが好ましい。
また、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が40λ以上、120λ以下であることが好ましい。
これにより、ピックアップレンズ14自体の温度が変化した場合に発生する波面収差も低減することができる。
【0081】
さらに、また、ピックアップレンズ14に形成された輪帯領域の数がn(nは正の整数)である場合に、nが偶数であるとき、ピックアップレンズ14の光軸から数えて、1番目からn/2番目までの輪帯領域の範囲においてピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、((n/2)+1)番目からn番目までの輪帯領域の範囲においてピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差が形成されることが好ましい。また、nが奇数であるとき、ピックアップレンズ14の光軸から数えて、1番目から((n+1)/2)番目までの輪帯領域の範囲においてピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、((n+1)/2)番目からn番目までの輪帯領域の範囲においてピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差が形成されることが好ましい。
【0082】
換言すれば、ピックアップレンズ14の光軸から所定の半径位置まではレンズ厚が薄くなり、所定の半径位置から外縁まではレンズ厚が厚くなるように、段差を形成する。これにより、ピックアップレンズ14の軸外におけるrms波面収差を0.035λ以下に抑えることができる。
また、ピックアップレンズ14のレンズ厚が所定の半径位置において最も薄くなるように段差を形成することにより、(5)式乃至(7)式の条件を満たさずとも、作動距離を十分に確保し、且つ、周囲温度の変化に伴う収差を補正する段差をピックアップレンズ14に設けることによる軸外特性の劣化を防ぐことができる。
また、ピックアップレンズ14のレンズ厚が所定の半径位置において最も薄くなるように段差を形成することにより、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差及び軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差を小さくすることができる。これにより、ピックアップレンズ14の製造がより容易となる。
【0083】
また、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が60λ以上、90λ以下であることが好ましい。
また、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が30λ以上60λ以下であることが好ましい。
隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が60λ未満の場合、或いは、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が30λ未満の場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を十分に低減することが難しくなる。一方、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が90λより大きい場合、或いは、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が60λより大きい場合、周囲温度の変化によって生じる波面収差を過剰に補正してしまうため、かえって、波面収差が劣化してしまう。また、段差量が大きくなってしまい、ピックアップレンズ14の製造が困難となる。
【0084】
さらに、隣接段差量の累積値Σdの最大値と最小値との差が70λ以上、90λ以下であることが好ましい。
また、軸上段差量の累積値Σd0の最大値と最小値との差が40λ以上60λ以下であることが好ましい。
これにより、ピックアップレンズ14自体の温度が変化した場合に発生する波面収差も低減することができる。
【0085】
[実施例1]
次に、本発明にかかる実施例1について説明する。実施例1にかかるピックアップレンズ14を模式的に示す側面図を図7に示す。実施例1にかかるピックアップレンズ14は、光源11(図示せず)側の面に複数の段差を有する。
図8に示す表に、本実施例1にかかるピックアップレンズ14の輪帯領域の番号、輪帯領域の位置(光軸OAに垂直な方向における輪帯領域が形成される位置)、軸上段差量及び隣接段差量を示す。図8に示す表において、輪帯領域の番号は、ピックアップレンズ14の光軸から外縁に向かって付されている。従って、光軸を含む輪帯領域が1番目の輪帯領域である。
また、図9に、輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量の累積値及び隣接段差量の累積値を示す。
なお、各輪帯領域の曲率、円錐係数、非球面係数がそれぞれ異なっているため、各輪帯領域の面形状は微妙に異なっている。そのため、軸上段差量と隣接段差量とは、一致するとは限らない。軸上段差量が正の値となる場合は、輪帯領域の面形状が光軸と仮想的に交差する交点がピックアップレンズ14の光ディスク15側にあることを意味する。また、軸上段差量が負の値となる場合は、当該交点がピックアップレンズ14の光源11側にあることを意味する。
【0086】
図8に示すように、実施例1にかかるピックアップレンズ14に形成される輪帯領域は9輪帯である。従って、中心の輪帯領域は、5番目の輪帯領域である。そして、1番目の輪帯領域から5番目の輪帯領域まで軸上段差量が約0.007786mmずつ(約10λずつ)増加し、5番目の輪帯領域から9番目の輪帯領域まで軸上段差量が約0.007786mmずつ(約10λずつ)減少している。また、1番目の輪帯領域から5番目の輪帯領域まで隣接段差量が増加し、5番目の輪帯領域から9番目の輪帯領域まで隣接段差量が減少している。換言すれば、1番目の輪帯領域から中心の輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、中心の輪帯領域から9番目の輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差が形成されている。
ここで、約0.007786mm=約10λである。なお、λは、波長である。従って、実施例1にかかるピックアップレンズ14に形成される段差の軸上段差量は、設計波長の約10倍となっている。
【0087】
図9に示すように、軸上段差量の累積値の最大値は40.0λであり、軸上段差量の累積値の最小値は0.0λとなっている。従って、軸上段差量の累積値の最大値と最小値との差が40.0λとなっている。
また、図9に示すように、隣接段差量の累積値の最大値は43.4λであり、隣接段差量の累積値の最小値は−27.4λとなっている。従って、隣接段差量の累積値の最大値と最小値との差が70.8λとなっている。
【0088】
また、図10に示す表に、実施例1にかかる光ピックアップ光学系1のデータを示す。図10において、対物レンズR1面とは、ピックアップレンズ14の光源11側の面である。また、対物レンズR2面とは、ピックアップレンズ14の光ディスク15側の面である。図10に示すように、実施例1にかかるピックアップレンズ14としてプラスティック製レンズを使用した。また、作動距離(WD)は、ピックアップレンズ14の光ディスク15側の面(対物レンズR2面)と光ディスク15の光源11側の面(物体側の面)との距離であり、約0.47mmである。このときの焦点距離は1.4mmである。
【0089】
また、図11に示す表に、実施例1にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面(面番号3)の面形状を規定する係数を示す。図11に示す係数は、後述する(14)式で用いられる。従って、実施例1にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面形状は、図11に示す係数と(14)式により規定される。図11に示すように、実施例1にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面形状は単一の非球面形状となっている。
【0090】
また、図12に示す表に、実施例1にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面(面番号2)の面形状を規定する係数を示す。図12に示す係数は後述する(15)式で用いられる。従って、実施例1にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面の面形状は、図12に示す係数と(15)式により規定される。図12に示すように、実施例1にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面は、輪帯領域毎に異なる非球面形状を有している。
【0091】
図13を用いて、(14)式、(15)式を説明する。図13は、ピックアップレンズの一例である対物レンズを示す側面図である。
まず、対物レンズの光出射面R2の面形状について説明する。図13において、光線の高さをh(mm)、対物レンズの光出射面R2の頂点をe、頂点eと接する接面上における光線高さhの点をc、この点cから光軸OAに平行な方向での光出射面R2上の点をdとすると、任意の光線高さhに対する点c,d間の距離ZB(mm)が
【数7】
で表されるように、光出射面R2の面形状が形成される。
そして、(14)式と図11に示す面番号3の係数の値とにより、実施例1にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面全体の面形状が規定される。
【0092】
なお、(14)式に、上記係数C,K,A4,A6,A8,A10,A12,A14,A16の値を代入して任意の光線高さh(mm)(≠0)に対する距離ZB(mm)を求め、その値が負の値となった場合は、点dが、光出射面R2の光軸OAが通る面頂点eよりも出射面側(図13での左側)に位置することを示している。距離ZB(mm)が正の値である場合には、点dが頂点eよりも右側に位置することを示している。
【0093】
次に、対物レンズの光入射面R1の面形状について説明する。図13において、対物レンズの光入射面R1の頂点をf、頂点fと接する接面上における光線高さhの点をa、この点aから光軸OAに平行な方向での光入射面R1上の点をbとすると、任意の光線高さh(mm)に対する点a,b間の距離ZA(mm)が
【数8】
で表されるように、光入射面R1の面形状が形成される。
【0094】
なお、実施例1にかかるピックアップレンズ14の第1輪帯領域、第2輪帯領域、・・・、第9輪帯領域の面形状を規定する場合、(15)式の光線高さhには、それぞれ、図9の表に示す第1輪帯領域、第2輪帯領域、・・・、第9輪帯領域の輪帯領域位置の値を代入する。また、実施例1にかかるピックアップレンズ14の第1輪帯領域、第2輪帯領域、・・・、第9輪帯領域の面形状を規定する場合、(15)式の係数Bは、それぞれ、図8の表に示す第1輪帯領域、第2輪帯領域、・・・、第9輪帯領域の軸上段差量の値を代入する。そして、(15)式と図12に示す係数の値とにより、実施例1にかかるピックアップレンズ14の第1輪帯領域〜第9輪帯領域の面形状が規定される。
【0095】
[実施例2]
次に、本発明にかかる実施例2について説明する。実施例2にかかるピックアップレンズ14は、光源11(図示せず)側の面に複数の段差を有する。
図14に示す表に、本実施例2にかかるピックアップレンズ14の輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量及び隣接段差量を示す。
また、図15に、輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量の累積値及び隣接段差量の累積値を示す。
【0096】
図14に示すように、実施例2にかかるピックアップレンズ14に形成される輪帯領域は12輪帯である。従って、中心の輪帯領域は、6番目と7番目の輪帯領域である。そして、1番目の輪帯領域から2番目の輪帯領域まで軸上段差量が約0.007786mm(約10λ)増加し、2番目の輪帯領域から12番目の輪帯領域まで軸上段差量が約0.007786mm(約10λずつ)減少している。また、1番目の輪帯領域から2番目の輪帯領域まで隣接段差量が増加し、2番目の輪帯領域から12番目の輪帯領域まで隣接段差量が減少している。換言すれば、1番目から2番目までの輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、2番目から12番目の輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差が形成されている。
ここで、約0.007786mm=約10λである。なお、λは、波長である。従って、実施例2にかかるピックアップレンズ14に形成される段差の軸上段差量は、設計波長の約10倍となっている。
【0097】
図15に示すように、軸上段差量の累積値の最大値は10.0λであり、軸上段差量の累積値の最小値は−90.0λとなっている。従って、軸上段差量の累積値の最大値と最小値との差が100.0λとなっている。
また、図15に示すように、隣接段差量の累積値の最大値は10.6λであり、隣接段差量の累積値の最小値は−161.3λとなっている。従って、隣接段差量の累積値の最大値と最小値との差が171.9λとなっている。
【0098】
また、図16に示す表に、実施例2にかかる光ピックアップ光学系1のデータを示す。図16に示すように、実施例2にかかるピックアップレンズ14としてプラスティック製レンズを使用した。また、作動距離(WD)は、ピックアップレンズ14の光ディスク15側の面(対物レンズR2面)と光ディスク15の光源11側の面(物体側の面)との距離であり、約0.46mmである。このときの焦点距離は1.4mmである。
【0099】
また、図17に示す表に、実施例2にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面(面番号3)の面形状を規定する係数を示す。図17に示す係数は、(14)式で用いられる。従って、実施例2にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面形状は、図17に示す係数と(14)式により規定される。図17に示すように、実施例2にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面形状は単一の非球面形状となっている。
【0100】
また、図18に示す表に、実施例2にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面(面番号2)の面形状を規定する係数を示す。図18に示す係数は(15)式で用いられる。従って、実施例2にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面の面形状は、図18に示す係数と(15)式により規定される。図18に示すように、実施例2にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面は、輪帯領域毎に異なる非球面形状を有している。
【0101】
[実施例3]
次に、本発明にかかる実施例3について説明する。実施例3にかかるピックアップレンズ14は、光源11(図示せず)側の面に複数の段差を有する。
図19に示す表に、本実施例3にかかるピックアップレンズ14の輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量及び隣接段差量を示す。
また、図20に、輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量の累積値及び隣接段差量の累積値を示す。
【0102】
図19に示すように、実施例3にかかるピックアップレンズ14に形成される輪帯領域は11輪帯である。従って、中心の輪帯領域は、5番目の輪帯領域である。そして、1番目の輪帯領域から9番目の輪帯領域まで軸上段差量が約0.009343mmずつ(約12λずつ)増加し、9番目の輪帯領域から11番目の輪帯領域まで軸上段差量が約0.009343mmずつ(約12λずつ)減少している。また、1番目の輪帯領域から9番目の輪帯領域まで隣接段差量が増加し、9番目の輪帯領域から11番目の輪帯領域まで隣接段差量が減少している。換言すれば、1番目から9番目までの輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、9番目から11番目の輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差が形成されている。
ここで、約0.009343mm=約12λである。なお、λは、波長である。従って、実施例3にかかるピックアップレンズ14に形成される段差の軸上段差量は、設計波長の約12倍となっている。
【0103】
図20に示すように、軸上段差量の累積値の最大値は96.0λであり、軸上段差量の累積値の最小値は0.0λとなっている。従って、軸上段差量の累積値の最大値と最小値との差が96.0λとなっている。
また、図20に示すように、隣接段差量の累積値の最大値は110.1λであり、隣接段差量の累積値の最小値は0.0λとなっている。従って、隣接段差量の累積値の最大値と最小値との差が110.1λとなっている。
【0104】
また、図21に示す表に、実施例3にかかる光ピックアップ光学系1のデータを示す。図21に示すように、実施例3にかかるピックアップレンズ14としてプラスティック製レンズを使用した。また、作動距離(WD)は、ピックアップレンズ14の光ディスク15側の面(対物レンズR2面)と光ディスク15の光源11側の面(物体側の面)との距離であり、約0.48mmである。このときの焦点距離は1.4mmである。
【0105】
また、図22に示す表に、実施例3にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面(面番号3)の面形状を規定する係数を示す。図22に示す係数は、(14)式で用いられる。従って、実施例3にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面形状は、図22に示す係数と(14)式により規定される。図22に示すように、実施例3にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面形状は単一の非球面形状となっている。
【0106】
また、図23に示す表に、実施例3にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面(面番号2)の面形状を規定する係数を示す。図23に示す係数は(15)式で用いられる。従って、実施例3にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面の面形状は、図23に示す係数と(15)式により規定される。図23に示すように、実施例3にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面は、輪帯領域毎に異なる非球面形状を有している。
【0107】
[実施例4]
次に、本発明にかかる実施例4について説明する。実施例4にかかるピックアップレンズ14は、光源11(図示せず)側の面に複数の段差を有する。
図24に示す表に、本実施例4にかかるピックアップレンズ14の輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量及び隣接段差量を示す。
また、図25に、輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量の累積値及び隣接段差量の累積値を示す。
【0108】
図24に示すように、実施例4にかかるピックアップレンズ14に形成される輪帯領域は11輪帯である。従って、中心の輪帯領域は、6番目の輪帯領域である。そして、1番目の輪帯領域から6番目の輪帯領域まで軸上段差量が約0.007786mmずつ(約10λずつ)増加し、6番目の輪帯領域から11番目の輪帯領域まで軸上段差量が約0.007786mmずつ(約10λずつ)減少している。また、1番目の輪帯領域から6番目の輪帯領域まで隣接段差量が増加し、6番目の輪帯領域から11番目の輪帯領域まで隣接段差量が減少している。換言すれば、1番目の輪帯領域から中心の輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、中心の輪帯領域から11番目の輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差が形成されている。
ここで、約0.007786mm=約10λである。なお、λは、波長である。従って、実施例4にかかるピックアップレンズ14に形成される段差の軸上段差量は、設計波長の約10倍となっている。
【0109】
図25に示すように、軸上段差量の累積値の最大値は50.0λであり、軸上段差量の累積値の最小値は0.0λとなっている。従って、軸上段差量の累積値の最大値と最小値との差が50.0λとなっている。
また、図25に示すように、隣接段差量の累積値の最大値は55.4λであり、隣接段差量の累積値の最小値は−30.7λとなっている。従って、隣接段差量の累積値の最大値と最小値との差が86.2λとなっている。
【0110】
また、図26に示す表に、実施例4にかかる光ピックアップ光学系1のデータを示す。図26に示すように、実施例4にかかるピックアップレンズ14としてプラスティック製レンズを使用した。また、作動距離(WD)は、ピックアップレンズ14の光ディスク15側の面(対物レンズR2面)と光ディスク15の光源11側の面(物体側の面)との距離であり、約0.46mmである。このときの焦点距離は1.4mmである。
【0111】
また、図27に示す表に、実施例4にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面(面番号3)の面形状を規定する係数を示す。図27に示す係数は、(14)式で用いられる。従って、実施例4にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面形状は、図27に示す係数と(14)式により規定される。図27に示すように、実施例4にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面形状は単一の非球面形状となっている。
【0112】
また、図28に示す表に、実施例4にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面(面番号2)の面形状を規定する係数を示す。図28に示す係数は(15)式で用いられる。従って、実施例4にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面の面形状は、図28に示す係数と(15)式により規定される。図28に示すように、実施例4にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面は、輪帯領域毎に異なる非球面形状を有している。
【0113】
[実施例5]
次に、本発明にかかる実施例5について説明する。実施例5にかかるピックアップレンズ14は、光源11(図示せず)側の面に複数の段差を有する。
図29に示す表に、本実施例5にかかるピックアップレンズ14の輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量及び隣接段差量を示す。
また、図30に、輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量の累積値及び隣接段差量の累積値を示す。
【0114】
図29に示すように、実施例5にかかるピックアップレンズ14に形成される輪帯領域は10輪帯である。従って、中心の輪帯領域は、5番目と6番目の輪帯領域である。そして、1番目の輪帯領域から2番目の輪帯領域まで軸上段差量が約0.009343mm(約12λ)増加し、2番目の輪帯領域から10番目の輪帯領域まで軸上段差量が約0.009343mmずつ(約12λずつ)減少している。また、1番目の輪帯領域から2番目の輪帯領域まで隣接段差量が増加し、2番目の輪帯領域から10番目の輪帯領域まで隣接段差量が減少している。換言すれば、1番目から2番目までの輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、2番目から10番目の輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差が形成されている。
ここで、約0.009343mm=約12λである。なお、λは、波長である。従って、実施例5にかかるピックアップレンズ14に形成される段差の軸上段差量は、設計波長の約12倍となっている。
【0115】
図30に示すように、軸上段差量の累積値の最大値は12.0λであり、軸上段差量の累積値の最小値は−84.0λとなっている。従って、軸上段差量の累積値の最大値と最小値との差が96.0λとなっている。
また、図30に示すように、隣接段差量の累積値の最大値は13.0λであり、隣接段差量の累積値の最小値は−137.8λとなっている。従って、隣接段差量の累積値の最大値と最小値との差が150.8λとなっている。
【0116】
また、図31に示す表に、実施例5にかかる光ピックアップ光学系1のデータを示す。図31に示すように、実施例5にかかるピックアップレンズ14としてプラスティック製レンズを使用した。また、作動距離(WD)は、ピックアップレンズ14の光ディスク15側の面(対物レンズR2面)と光ディスク15の光源11側の面(物体側の面)との距離であり、約0.46mmである。このときの焦点距離は1.4mmである。
【0117】
また、実施例5にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面(面番号3)の面形状は、実施例4にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面と同じであり、図32に示す係数と(14)式により規定される。図32に示すように、実施例5にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面形状は単一の非球面形状となっている。
【0118】
また、図33に示す表に、実施例5にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面(面番号2)の面形状を規定する係数を示す。図33に示す係数は(15)式で用いられる。従って、実施例5にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面の面形状は、図33に示す係数と(15)式により規定される。図33に示すように、実施例5にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面は、輪帯領域毎に異なる非球面形状を有している。
【0119】
[実施例6]
次に、本発明にかかる実施例6について説明する。実施例6にかかるピックアップレンズ14は、光源11(図示せず)側の面に複数の段差を有する。
図34に示す表に、本実施例6にかかるピックアップレンズ14の輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量及び隣接段差量を示す。
また、図35に、輪帯領域の番号、輪帯領域の位置、軸上段差量の累積値及び隣接段差量の累積値を示す。
【0120】
図34に示すように、実施例6にかかるピックアップレンズ14に形成される輪帯領域は10輪帯である。従って、中心の輪帯領域は、5番目と6番目の輪帯領域である。そして、1番目の輪帯領域から8番目の輪帯領域まで軸上段差量が約0.010900mmずつ(約14λずつ)増加し、8番目の輪帯領域から10番目の輪帯領域まで軸上段差量が約0.010900mmずつ(約14λずつ)減少している。また、1番目の輪帯領域から8番目の輪帯領域まで隣接段差量が増加し、8番目の輪帯領域から10番目の輪帯領域まで隣接段差量が減少している。換言すれば、1番目から8番目までの輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、8番目から10番目の輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差が形成されている。
ここで、約0.010900mm=約14λである。なお、λは、波長である。従って、実施例6にかかるピックアップレンズ14に形成される段差の軸上段差量は、設計波長の約14倍となっている。
【0121】
図35に示すように、軸上段差量の累積値の最大値は98.0λであり、軸上段差量の累積値の最小値は0.0λとなっている。従って、軸上段差量の累積値の最大値と最小値との差が98.0λとなっている。
また、図35に示すように、隣接段差量の累積値の最大値は112.0λであり、隣接段差量の累積値の最小値は0.0λとなっている。従って、隣接段差量の累積値の最大値と最小値との差が112.0λとなっている。
【0122】
また、図36に示す表に、実施例6にかかる光ピックアップ光学系1のデータを示す。図36に示すように、実施例6にかかるピックアップレンズ14としてプラスティック製レンズを使用した。また、作動距離(WD)は、ピックアップレンズ14の光ディスク15側の面(対物レンズR2面)と光ディスク15の光源11側の面(物体側の面)との距離であり、約0.46mmである。このときの焦点距離は1.4mmである。
【0123】
また、実施例6にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面(面番号3)の面形状は、実施例4にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面と同じであり、図37に示す係数と(14)式により規定される。図37に示すように、実施例6にかかるピックアップレンズ14の光ディスク15側の面形状は単一の非球面形状となっている。
【0124】
また、図38に示す表に、実施例6にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面(面番号2)の面形状を規定する係数を示す。図38に示す係数は(15)式で用いられる。従って、実施例6にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面の面形状は、図38に示す係数と(15)式により規定される。図38に示すように、実施例6にかかるピックアップレンズ14の光源11側の面は、輪帯領域毎に異なる非球面形状を有している。
【0125】
[比較例1]
次に、比較例1について説明する。比較例1にかかるピックアップレンズは、光源側、光ディスク側の何れの面にも、段差を有さない。
図39に示す表に、比較例1にかかる光ピックアップ光学系のデータを示す。図39に示すように、比較例1にかかるピックアップレンズとしてプラスティック製レンズを使用した。また、作動距離(WD)は、ピックアップレンズの光ディスク側の面(対物レンズR2面)と光ディスクの光源側の面(物体側の面)との距離であり、約0.46mmである。このときの焦点距離は1.4mmである。
【0126】
また、図40に示す表に、比較例1にかかるピックアップレンズの光源11側の面(面番号2)及び光ディスク側の面(面番号3)の面形状を規定する係数を示す。図40に示す係数は(14)式で用いられる。従って、比較例1にかかるピックアップレンズの光源側の面の面形状及び光ディスク側の面の面形状は、図40に示す係数と(14)式により規定される。図40に示すように、比較例1にかかるピックアップレンズの光源側及び光ディスク側の面は、単一の非球面形状を有している。
【0127】
次に、実施例1乃至6にかかるピックアップレンズ14及び比較例1にかかるピックアップレンズを用いた場合における、周囲温度の変化により発生する収差について説明する。なお、実施例1乃至6にかかるピックアップレンズ14及び比較例1にかかるピックアップレンズの設計温度は35℃である。本実施形態では、周囲温度が設計温度35℃から±15℃変化した場合を例にあげて説明する。
図41(a)〜(c)に、比較例1にかかるピックアップレンズを用いた場合に、周囲温度が20℃、35℃、50℃のときに発生する波面収差を示す。図41に示すように、比較例1にかかるピックアップレンズを用いた場合、周囲温度が設計温度35℃から±15℃変化すると、収差がマレシャル限界(70mλrms)を超えてしまう。
【0128】
具体的には、周囲温度が設計温度35℃から−15℃変化し、20℃になった場合、Total波面収差(rms)は91.0mλとなり、周囲温度が設計温度35℃から+15℃変化し、50℃になった場合、Total波面収差(rms)は90.7mλとなり、35mλを超えてしまう。なお、比較例1にかかるピックアップレンズを用いた場合、周囲温度が35℃である際のTotal波面収差(rms)は1.5mλである。また、温度変化に伴いデフォーカス量が変化しており、周囲温度20℃におけるデフォーカス量は、−4.361μmであり、周囲温度50℃におけるデフォーカス量は、+4.391μmである。また、設計温度35℃における光源11の設計波長は408nmである。また、周囲温度が変化することにより光源11の波長が変化しており、周囲温度20℃における光源11の波長は407.1nmであり、周囲温度50℃における光源11の波長は408.9nmである。
ここで、デフォーカス量とは、周囲温度35℃のときの焦点位置からのずれ量のことである。例えば、比較例1にかかるピックアップレンズを用いた場合、周囲温度20℃、波長407.1nmにおけるデフォーカス量は、−4.361μmである。図39に示す表より、周囲温度35℃のとき、ピックアップレンズ14の光ディスク側の面(面番号3)と、光ディスク15の光源11側の面(物体側の面:面番号4)との面間距離(作動距離(WD))は、0.457428mmである。したがって、周囲温度20℃のときの、面番号3と面番号4との面間距離は、0.457428−0.004361=0.453067mmである。すなわち、各条件におけるデフォーカス量から、当該条件における面番号3と面番号4との面間距離を算出することができる。
【0129】
図42(a)〜(c)に、実施例1にかかるピックアップレンズ14を用いた場合に、周囲温度が20℃、35℃、50℃のときに発生する波面収差を示す。また、図43(a)〜(c)に、実施例2にかかるピックアップレンズ14を用いた場合に、周囲温度が20℃、35℃、50℃のときに発生する波面収差を示す。また、図44(a)〜(c)に、実施例3にかかるピックアップレンズ14を用いた場合に、周囲温度が20℃、35℃、50℃のときに発生する波面収差を示す。図45(a)〜(c)に、実施例4にかかるピックアップレンズ14を用いた場合に、周囲温度が20℃、35℃、50℃のときに発生する波面収差を示す。また、図46(a)〜(c)に、実施例5にかかるピックアップレンズ14を用いた場合に、周囲温度が20℃、35℃、50℃のときに発生する波面収差を示す。また、図47(a)〜(c)に、実施例6にかかるピックアップレンズ14を用いた場合に、周囲温度が20℃、35℃、50℃のときに発生する波面収差を示す。
【0130】
具体的には、実施例1にかかるピックアップレンズ14を用いた場合、周囲温度が設計温度35℃から−15℃変化した際(20℃になった際)のTotal波面収差(rms)は16.6mλとなり、周囲温度が設計温度35℃から+15℃変化した際(50℃になった際)のTotal波面収差(rms)は15.7mλとなり、35mλ以下となっている。なお、実施例1にかかるピックアップレンズ14を用いた場合、周囲温度が35℃である際のTotal波面収差(rms)は0.6mλである。また、温度変化に伴いデフォーカス量が変化しており、周囲温度20℃におけるデフォーカス量は、−4.462μmであり、周囲温度50℃におけるデフォーカス量は、+4.494μmである。ここで、ピックアップレンズ14及び光ディスク15の屈折率を図69に示し、屈折率の変化率を図70に示す。
【0131】
また、実施例2にかかるピックアップレンズ14を用いた場合、周囲温度が設計温度35℃から−15℃変化した際(20℃になった際)のTotal波面収差(rms)は17.7mλとなり、周囲温度が設計温度35℃から+15℃変化した際(50℃になった際)のTotal波面収差(rms)は19.3mλとなり、35mλ以下となっている。なお、実施例2にかかるピックアップレンズ14を用いた場合、周囲温度が35℃である際のTotal波面収差(rms)は1.3mλである。また、温度変化に伴いデフォーカス量が変化しており、周囲温度20℃におけるデフォーカス量は、−3.991μmであり、周囲温度50℃におけるデフォーカス量は、+4.032μmである。
【0132】
また、実施例3にかかるピックアップレンズ14を用いた場合、周囲温度が設計温度35℃から−15℃変化した際(20℃になった際)のTotal波面収差(rms)は24.0mλとなり、周囲温度が設計温度35℃から+15℃変化した際(50℃になった際)のTotal波面収差(rms)は22.8mλとなり、35mλ以下となっている。なお、実施例3にかかるピックアップレンズ14を用いた場合、周囲温度が35℃である際のTotal波面収差(rms)は1.5mλである。また、温度変化に伴いデフォーカス量が変化しており、周囲温度20℃におけるデフォーカス量は、−4.923μmであり、周囲温度50℃におけるデフォーカス量は、+4.961μmである。
【0133】
また、実施例4にかかるピックアップレンズ14を用いた場合、周囲温度が設計温度35℃から−15℃変化した際(20℃になった際)のTotal波面収差(rms)は17.7mλとなり、周囲温度が設計温度35℃から+15℃変化した際(50℃になった際)のTotal波面収差(rms)は16.5mλとなり、35mλ以下となっている。なお、実施例4にかかるピックアップレンズ14を用いた場合、周囲温度が35℃である際のTotal波面収差(rms)は0.8mλである。また、温度変化に伴いデフォーカス量が変化しており、周囲温度20℃におけるデフォーカス量は、−4.454μmであり、周囲温度50℃におけるデフォーカス量は、+4.486μmである。
【0134】
また、実施例5にかかるピックアップレンズ14を用いた場合、周囲温度が設計温度35℃から−15℃変化した際(20℃になった際)のTotal波面収差(rms)は20.3mλとなり、周囲温度が設計温度35℃から+15℃変化した際(50℃になった際)のTotal波面収差(rms)は21.0mλとなり、35mλ以下となっている。なお、実施例5にかかるピックアップレンズ14を用いた場合、周囲温度が35℃である際のTotal波面収差(rms)は0.9mλである。また、温度変化に伴いデフォーカス量が変化しており、周囲温度20℃におけるデフォーカス量は、−4.019μmであり、周囲温度50℃におけるデフォーカス量は、+4.046μmである。
【0135】
また、実施例6にかかるピックアップレンズ14を用いた場合、周囲温度が設計温度35℃から−15℃変化した際(20℃になった際)のTotal波面収差(rms)は34.3mλとなり、周囲温度が設計温度35℃から+15℃変化した際(50℃になった際)のTotal波面収差(rms)は31.5mλとなり、35mλ以下となっている。なお、実施例6にかかるピックアップレンズ14を用いた場合、周囲温度が35℃である際のTotal波面収差(rms)は0.8mλである。また、温度変化に伴いデフォーカス量が変化しており、周囲温度20℃におけるデフォーカス量は、−4.848μmであり、周囲温度50℃におけるデフォーカス量は、+4.877μmである。
【0136】
次に、実施例1乃至6にかかるピックアップレンズ14の軸外特性について説明する。なお、周囲温度は35℃である。
図48に示す表に、実施例1乃至6における接線角θM、最小肉厚tM、画角0°の範囲の収差項目、画角0.3°の範囲の収差項目を示す。図48において、収差項目として、Total波面収差、COMA5、デフォーカス量を示す。
また、図49〜図54に示すグラフに、実施例1乃至6における画角0°の範囲の波面収差及び画角0.3°の範囲の波面収差を示す。
【0137】
図49(a)に、実施例1にかかるピックアップレンズ14の画角0°の範囲の波面収差を示し、図49(b)に、実施例1にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲の波面収差を示す。図49に示すように、実施例1にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲の波面収差の増大は抑制されている。具体的には、画角0°のおけるTotal波面収差(rms)は0.6mλであり、画角0.3°におけるTotal波面収差(rms)は10.2mλである。従って、実施例1にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°におけるTotal波面収差(rms)は、35mλ以下に抑制されている。よって、実施例1にかかるピックアップレンズ14の軸外特性は良好となっている。
【0138】
図50(a)に、実施例2にかかるピックアップレンズ14の画角0°の範囲の波面収差を示し、図50(b)に、実施例2にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲の波面収差を示す。図50に示すように、実施例2にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲の波面収差の増大は抑制されている。具体的には、画角0°のおけるTotal波面収差(rms)は1.4mλであり、画角0.3°におけるTotal波面収差(rms)は18.6mλである。従って、実施例2にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°におけるTotal波面収差(rms)は、35mλ以下に抑制されている。よって、実施例2にかかるピックアップレンズ14の軸外特性は良好となっている。
【0139】
図51(a)に、実施例3にかかるピックアップレンズ14の画角0°の範囲の波面収差を示し、図51(b)に、実施例3にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲の波面収差を示す。図51に示すように、実施例3にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲の波面収差の増大は抑制されている。具体的には、画角0°のおけるTotal波面収差(rms)は1.3mλであり、画角0.3°におけるTotal波面収差(rms)は18.2mλである。従って、実施例3にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°におけるTotal波面収差(rms)は、35mλ以下に抑制されている。よって、実施例3にかかるピックアップレンズ14の軸外特性は良好となっている。
【0140】
図52(a)に、実施例4にかかるピックアップレンズ14の画角0°の範囲の波面収差を示し、図52(b)に、実施例4にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲の波面収差を示す。図52に示すように、実施例4にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲の波面収差の増大は抑制されている。具体的には、画角0°のおけるTotal波面収差(rms)は0.8mλであり、画角0.3°におけるTotal波面収差(rms)は34.1mλである。従って、実施例1にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°におけるTotal波面収差(rms)は、35mλ以下に抑制されている。よって、実施例4にかかるピックアップレンズ14の軸外特性は良好となっている。
【0141】
図53(a)に、実施例5にかかるピックアップレンズ14の画角0°の範囲の波面収差を示し、図53(b)に、実施例5にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲の波面収差を示す。図53に示すように、実施例5にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲の波面収差は増大している。具体的には、画角0°のおけるTotal波面収差(rms)は0.9mλであり、画角0.3°におけるTotal波面収差(rms)は62.3mλである。従って、実施例5にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°におけるTotal波面収差(rms)は、35mλを超えてしまっている。よって、実施例5にかかるピックアップレンズ14の軸外特性が悪化している。
【0142】
図54(a)に、実施例6にかかるピックアップレンズ14の画角0°の範囲の波面収差を示し、図54(b)に、実施例6にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲の波面収差を示す。図54に示すように、実施例6にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲の波面収差は増大している。具体的には、画角0°のおけるTotal波面収差(rms)は0.8mλであり、画角0.3°におけるTotal波面収差(rms)は45.8mλである。従って、実施例6にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°におけるTotal波面収差(rms)は、35mλを超えてしまっている。よって、実施例6にかかるピックアップレンズ14の軸外特性が悪化している。
【0143】
また、図48に示すように、実施例1乃至3では、画角0.3°の範囲におけるCOMA5の絶対値が0.010λrms以下となっている。これに対し、実施例4乃至6では、画角0.3°の範囲におけるCOMA5の絶対値が0.010λrmsを超えてしまっている。
【0144】
次に、実施例1乃至6にかかるピックアップレンズ14の正弦条件違反量について説明する。
図55に示す表に、実施例1乃至6における正弦条件違反量を示す。なお、正弦条件違反量は、(13)式により求められる。
また、図56〜図61に示すグラフに、実施例1乃至6における正弦条件違反量を示す。図56〜図61において、横軸が正弦条件違反量を示し、縦軸が光線高さを示す。
【0145】
図56〜図58に示すように、実施例1乃至実施例3では、正弦条件違反量が小さく抑えられている。具体的には、実施例1の正弦条件違反量の最大値は0.0016、最小値は−0.0028となっており、正弦条件違反量の絶対値は0.01以下となっている。また、実施例2の正弦条件違反量の最大値は0.0046、最小値は−0.0064となっており、正弦条件違反量の絶対値は0.01以下となっている。また、実施例3の正弦条件違反量の最大値は0.0019、最小値は−0.0082となっており、正弦条件違反量の絶対値は0.01以下となっている。
【0146】
一方、図59〜図61に示すように、実施例4乃至実施例6では、正弦条件違反量が増大している。具体的には、実施例4の正弦条件違反量の最大値は0.0002、最小値は−0.0144となっており、正弦条件違反量の絶対値は0.01より大きくなっている。また、実施例5の正弦条件違反量の最大値は0.0234、最小値は−0.0036となっており、正弦条件違反量の絶対値は0.01より大きくなっている。また、実施例3の正弦条件違反量の最大値は0.0002、最小値は−0.0279となっており、正弦条件違反量の絶対値は0.01より大きくなっている。
【0147】
図48に示すように、実施例1乃至4にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲におけるTotal波面収差(rms)は、35mλ以下となっている。特に、実施例1乃至3にかかるピックアップレンズ14では、実施例4にかかるピックアップレンズ14に比べて、画角0.3°の範囲における全波面収差(rms)が良好になっている。図48に示すように、実施例1乃至3にかかるピックアップレンズ14は、接線角θMが73°以上となっている点が、実施例4にかかるピックアップレンズ14と異なる。また、実施例1乃至3にかかるピックアップレンズ14は、画角0.3°の範囲におけるCOMA5の絶対値が0.010λrms以下となっている点が、実施例4にかかるピックアップレンズ14と異なる。また、図55に示すように、実施例1乃至3にかかるピックアップレンズ14は、正弦条件違反量の絶対値が0.01以下となっている点が、実施例4にかかるピックアップレンズ14と異なる。従って、接線角θMが73°以上、画角0.3°の範囲におけるCOMA5の絶対値が0.010λrms以下、正弦条件違反量の絶対値が0.01以下となるように段差を形成することにより、ピックアップレンズ14の軸外におけるTotal波面収差(rms)をより良好に低減することができる。
【0148】
また、実施例1乃至3にかかるピックアップレンズ14の中で、実施例1にかかるピックアップレンズ14の画角0.3°の範囲におけるTotal波面収差(rms)が最小となっている。実施例1にかかるピックアップレンズ14は、1番目の輪帯領域から中心の輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、中心の輪帯領域から最外周の輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差が形成されている点が、実施例2及び3と異なる。従って、ピックアップレンズ14のレンズ厚が中心の半径位置において最も薄くなるように段差を形成することにより、ピックアップレンズ14の軸外におけるTotal波面収差(rms)をさらに良好に低減することができる。
【0149】
また、実施例4にかかるピックアップレンズ14は、1番目の輪帯領域から中心の輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に薄くなり、中心の輪帯領域から最外周の輪帯領域の範囲において、ピックアップレンズ14のレンズ厚が徐々に厚くなるように、段差が形成されている点が、実施例5及び6と異なる。従って、ピックアップレンズ14のレンズ厚が中心の半径位置において最も薄くなるように段差を形成することにより、ピックアップレンズ14の軸外におけるTotal波面収差(rms)を35mλ以下に抑えることができる。特に、実施例4では、接線角θMが73°以上となっておらず、画角0.3°の範囲におけるCOMA5の絶対値が0.010λrms以下となっておらず、正弦条件違反量の絶対値が0.01以下となっていない。しかし、ピックアップレンズ14のレンズ厚が中心の半径位置において最も薄くなるように段差を形成することにより、ピックアップレンズ14の軸外におけるTotal波面収差(rms)を35mλ以下に抑えることができる。
【0150】
次に、実施例1乃至6にかかるピックアップレンズ14の軸上特性について説明する。図62〜図67に示すグラフに、実施例1乃至6にかかる軸上特性を表す波面収差を示す。また、図68に示すグラフに、比較例1にかかる軸上特性を表す波面収差を示す。なお、周囲温度は35℃である。
図62(a)、図63(a)、・・・、図67(a)に、ピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mmの位置(記録層)にレーザ光を集光した際に発生する波面収差を示す。また、図62(b)、図63(b)、・・・、図67(b)に、ピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光した際に発生する波面収差を示す。また、図62(c)、図63(c)、・・・、図67(c)に、ピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.100mmの位置(記録層)にレーザ光を集光した際に発生する波面収差を示す。また、図68(a)、図68(b)、図68(c)に、比較例1に係るピックアップレンズによって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光した際に発生する波面収差を示す。
なお、図62〜図68において、各位置にレーザ光を集光した場合に透明基板厚差に基づいて発生する球面収差を、コリメータレンズ13を光軸に沿って移動させることによって補正している。ここで、コリメータレンズ13を光軸に沿って移動させることによって補正するという事は、ピックアップレンズ14に入射するレーザ光の発散度合いを調整するという事である。これは、ピックアップレンズ14に入射するレーザ光の仮想的な発光点位置(物点の位置)を調整し、仮想的な発光点位置からコリメータレンズ13を介さずにピックアップレンズ14にレーザ光を入射させる事と等価である。換言すれば、図62〜図68において、ピックアップレンズ14の物体距離を調整することにより、当該球面収差を補正している。
【0151】
実施例1にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光する場合の物体距離は、無限遠である。これは、コリメータレンズ13によって、ピックアップレンズ14に平行光が入射されることを意味する。本実施形態にかかるピックアップレンズ14は、透明基板厚0.0875mmの位置に平行光を良好に集光するように設計されている。
当該物体距離、デフォーカス量において、実施例1にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を図62(b)に示す。当該Total波面収差(rms)は0.6mλであり、ピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光が良好に集光されることが分かる。
また、当該物体距離、デフォーカス量において、実施例1にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光した場合のSA5(rms)は、0.0mλであり、5次球面収差はほとんど発生していないことが分かる。
【0152】
また、実施例1にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mmの記録層にレーザ光を集光する場合の物体距離は、−311mmである。これは、コリメータレンズ13によって、ピックアップレンズ14に収束光が入射されることを意味する。具体的には、コリメータレンズ13を光軸に沿って移動させて、さらに、デフォーカス量を+1.569μmとすることにより、ピックアップレンズ14に入射するレーザ光を収束光とする。すなわち、ピックアップレンズ14の物体距離、及び光ディスク15側の面(面番号3)と、光ディスク15の光源11側の面(物体側の面:面番号4)との面間距離(作動距離(WD))を調整することにより、透明基板厚差によって生じる球面収差を補正している。
当該物体距離、デフォーカス量において、実施例1にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を図62(a)に示す。当該Total波面収差(rms)は6.7mλであり、ピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mmの位置にレーザ光が良好に集光されることが分かる。
また、当該物体距離、デフォーカス量において、実施例1にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mmの位置にレーザ光を集光した場合のSA5(rms)は、2.6mλであり、5次球面収差も十分に低減されていることが分かる。
【0153】
同様に、実施例1にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.100mmの記録層にレーザ光を集光する場合の物体距離は、+328mmである。これは、コリメータレンズ13を光軸に沿って移動させ、さらに、デフォーカス量を−1.305μmとすることにより、ピックアップレンズ14に入射するレーザ光を発散光としていることを意味する。これにより、透明基板厚差によって生じる球面収差を補正している。
当該物体距離、デフォーカス量において、実施例1にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差を図62(c)に示す。当該Total波面収差(rms)は6.7mλであり、ピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.100mmの位置にレーザ光が良好に集光されることが分かる。
また、当該物体距離、デフォーカス量において、実施例1にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合のSA5(rms)は、−3.0mλであり、5次球面収差も十分に低減されていることが分かる。
【0154】
同様の理由により、実施例2にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する場合の物体距離は、−280mm、無限遠、+295mmである。また、実施例2にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する場合のデフォーカス量は、+1.046μm、約0μm、−1.305μmである。
そして、当該物体距離、デフォーカス量において、実施例2にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差をそれぞれ図63(a)、図63(b)、図63(c)に示す。また、図63(a)、図63(b)、図63(c)に示すTotal波面収差(rms)はそれぞれ13.0mλ、1.3mλ、14.7mλであり、実施例2にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光が良好に集光されることが分かる。
また、当該物体距離、デフォーカス量において、実施例2にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合のSA5(rms)は、それぞれ7.1mλ、0.1mλ、−8.6mλであり、5次球面収差も十分に低減されていることが分かる。
【0155】
また、実施例3にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する場合の物体距離は、−333mm、無限遠、+341mmである。また、実施例3にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する場合のデフォーカス量は、+1.954μm、約0μm、−2.056μmである。
そして、当該物体距離、デフォーカス量において、実施例3にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差をそれぞれ図64(a)、図64(b)、図64(c)に示す。また、図64(a)、図64(b)、図64(c)に示すTotal波面収差(rms)はそれぞれ7.5mλ、1.5mλ、7.9mλであり、実施例3にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光が良好に集光されることが分かる。
また、当該物体距離、デフォーカス量において、実施例3にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合のSA5(rms)は、それぞれ1.8mλ、0.2mλ、−1.9mλであり、5次球面収差も十分に低減されていることが分かる。
【0156】
また、実施例4にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する場合の物体距離は、−254mm、無限遠、+270mmである。また、実施例4にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する場合のデフォーカス量は、+0.583μm、約0μm、−0.908μmである。
そして、当該物体距離、デフォーカス量において、実施例4にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差をそれぞれ図65(a)、図65(b)、図65(c)に示す。また、図65(a)、図65(b)、図65(c)に示すTotal波面収差(rms)はそれぞれ26.2mλ、0.8mλ、25.8mλであり、実施例4にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光が良好に集光されることが分かる。しかし、実施例4にかかるピックアップレンズ14では、透明基板厚0.075mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する際のTotal波面収差が、マレシャル限界の範囲内であるが、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光する場合に比べて、増大している。
また、当該物体距離、デフォーカス量において、実施例4にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合のSA5(rms)は、それぞれ24.8mλ、0.1mλ、−24.4mλである。したがって、実施例4にかかるピックアップレンズ14によって透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光する際の5次球面収差は十分に低減されていることが分かる。しかし、実施例4にかかるピックアップレンズ14によって透明基板厚0.075mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する際の5次球面収差は、マレシャル限界の範囲内であるが、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光する場合に比べて、増大している。そして、実施例4にかかるピックアップレンズ14によって透明基板厚0.075mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する際のTotal波面収差の増大は、SA5の増大によってもたらされていることが分かる。
【0157】
また、実施例5にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する場合の物体距離は、−203mm、無限遠、+211mmである。また、実施例5にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する場合のデフォーカス量は、−1.277μm、約0μm、+0.652μmである。
そして、当該物体距離、デフォーカス量において、実施例5にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差をそれぞれ図66(a)、図66(b)、図66(c)に示す。また、図66(a)、図66(b)、図66(c)に示すTotal波面収差(rms)はそれぞれ29.8mλ、0.9mλ、27.9mλであり、実施例5にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光が良好に集光されることが分かる。しかし、実施例5にかかるピックアップレンズ14では、透明基板厚0.075mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する際のTotal波面収差が、マレシャル限界の範囲内であるが、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光する場合に比べて、増大している。
また、当該物体距離、デフォーカス量において、実施例5にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合のSA5(rms)は、それぞれ27.1mλ、0.1mλ、−25.4mλである。したがって、実施例5にかかるピックアップレンズ14によって透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光する際の5次球面収差は十分に低減されていることが分かる。しかし、実施例5にかかるピックアップレンズ14によって透明基板厚0.075mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する際の5次球面収差は、マレシャル限界の範囲内であるが、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光する場合に比べて、増大している。そして、実施例5にかかるピックアップレンズ14によって透明基板厚0.075mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する際のTotal波面収差の増大は、SA5の増大によってもたらされていることが分かる。
【0158】
また、実施例6にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する場合の物体距離は、−289mm、無限遠、+299mmである。また、実施例6にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する場合のデフォーカス量は、+1.513μm、約0μm、−1.654μmである。
そして、当該物体距離、デフォーカス量において、実施例6にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差をそれぞれ図67(a)、図67(b)、図67(c)に示す。また、図67(a)、図67(b)、図67(c)に示すTotal波面収差(rms)はそれぞれ23.5mλ、0.8mλ、25.3mλであり、実施例6にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光が良好に集光されることが分かる。しかし、実施例6にかかるピックアップレンズ14では、透明基板厚0.075mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する際のTotal波面収差が、マレシャル限界の範囲内であるが、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光する場合に比べて、増大している。
また、当該物体距離、デフォーカス量において、実施例6にかかるピックアップレンズ14によって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合のSA5(rms)は、それぞれ22.3mλ、0.0mλ、−23.5mλである。したがって、実施例6にかかるピックアップレンズ14によって透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光する際の5次球面収差はほとんど生じていないことが分かる。しかし、実施例6にかかるピックアップレンズ14によって透明基板厚0.075mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する際の5次球面収差は、マレシャル限界の範囲内であるが、透明基板厚0.0875mmの位置にレーザ光を集光する場合に比べて、増大している。そして、実施例6にかかるピックアップレンズ14によって透明基板厚0.075mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する際のTotal波面収差の増大は、SA5の増大によってもたらされていることが分かる。
【0159】
また、比較例1にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する場合の物体距離は、−314mm、無限遠、+322mmである。また、比較例1にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する場合のデフォーカス量は、+1.625μm、約0μm、−1.739μmである。
そして、当該物体距離、デフォーカス量において、比較例1にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合の波面収差をそれぞれ図68(a)、図68(b)、図68(c)に示す。また、図68(a)、図68(b)、図68(c)に示すTotal波面収差(rms)はそれぞれ5.3mλ、1.5mλ、4.8mλであり、比較例1にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光が良好に集光されることが分かる。
また、当該物体距離、デフォーカス量において、比較例1にかかるピックアップレンズによって、透明基板厚0.075mm、0.0875mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光した場合のSA5(rms)は、それぞれ5.1mλ、0.1mλ、−4.5mλであり、5次球面収差も十分に低減されていることが分かる。
【0160】
実施例4乃至6にかかるピックアップレンズ14と、比較例1にかかるピックアップレンズとの比較から、ピックアップレンズ14の少なくとも一方の面に、上述した複数の輪帯領域を設けると、多層光ディスク15の各記録層に集光する際における軸上特性が劣化してしまうことがわかる。しかし、実施例1乃至3にかかるピックアップレンズ14は、光源11側の面に複数の輪帯領域を有しているが、軸上特性が劣化していない。図48に示すように、実施例1乃至3にかかるピックアップレンズ14は、接線角θMが73°以上となっている点が、実施例4及び5にかかるピックアップレンズ14と異なる。また、実施例1乃至3にかかるピックアップレンズ14は、画角0.3°の範囲におけるCOMA5の絶対値が0.010λrms以下となっている点が、実施例4乃至6にかかるピックアップレンズ14と異なる。また、図55に示すように、実施例1乃至3にかかるピックアップレンズ14は、正弦条件違反量の絶対値が0.01以下となっている点が、実施例4乃至6にかかるピックアップレンズ14と異なる。従って、接線角θMが73°以上、画角0.3°の範囲におけるCOMA5の絶対値が0.010λrms以下、正弦条件違反量の絶対値が0.01以下となるように輪帯領域を形成することにより、透明基板厚0.075mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する際のTotal波面収差の増大、すなわち、5次球面収差の増大を抑制することができる。具体的には、接線角θMが73°以上、画角0.3°の範囲におけるCOMA5の絶対値が0.010λrms以下、正弦条件違反量の絶対値が0.01以下となるように輪帯領域を形成することにより、透明基板厚0.075mm、0.100mmの位置にレーザ光を集光する際のSA5の絶対値が0.010λrms以下となっている。
【0161】
換言すれば、(5)式乃至(7)式を満たすことにより、ピックアップレンズ14によってレーザ光源から出射された光束を多層光ディスク15に集光する場合に、多層光ディスク15の記録層間の基板厚差に基づいて発生する3次球面収差を補正しても、SA5が劣化せずにすむ。これにより、多層光ディスク15の各記録層に集光する際における軸上特性の劣化を抑制することができる。
【符号の説明】
【0162】
11 光源(レーザ光源)
14 ピックアップレンズ(光ピックアップ対物レンズ)
15 光ディスク(BD)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源から出射された光束をBD(ブルーレイディスク)に集光するプラスティック製の光ピックアップ対物レンズであって、
前記光ピックアップ対物レンズによって前記レーザ光源から出射された光束を多層光ディスクに集光する場合に、前記多層光ディスクの記録層間の基板厚差に基づいて発生する3次球面収差を補正した際に、(1)式乃至(4)式を満たす光ピックアップ対物レンズ。
NA≧0.85 ・・・・・・(1)
1.1≦f≦1.8 ・・・・・・(2)
WD≧0.3 ・・・・・・(3)
|SA5|≦0.020 ・・(4)
ただし、前記光ピックアップ対物レンズの開口数をNA、焦点距離をf(mm)、作動距離をWD(mm)、各記録層における5次球面収差をSA5(λrms)とする。
【請求項1】
レーザ光源から出射された光束をBD(ブルーレイディスク)に集光するプラスティック製の光ピックアップ対物レンズであって、
前記光ピックアップ対物レンズによって前記レーザ光源から出射された光束を多層光ディスクに集光する場合に、前記多層光ディスクの記録層間の基板厚差に基づいて発生する3次球面収差を補正した際に、(1)式乃至(4)式を満たす光ピックアップ対物レンズ。
NA≧0.85 ・・・・・・(1)
1.1≦f≦1.8 ・・・・・・(2)
WD≧0.3 ・・・・・・(3)
|SA5|≦0.020 ・・(4)
ただし、前記光ピックアップ対物レンズの開口数をNA、焦点距離をf(mm)、作動距離をWD(mm)、各記録層における5次球面収差をSA5(λrms)とする。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69】
【図70】
【図71】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69】
【図70】
【図71】
【公開番号】特開2013−109825(P2013−109825A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−19643(P2013−19643)
【出願日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【分割の表示】特願2009−19176(P2009−19176)の分割
【原出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【分割の表示】特願2009−19176(P2009−19176)の分割
【原出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】
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