説明

光ピックアップ移送機構

【課題】 外部から衝撃が加わったときに、スクリューシャフトの螺旋状溝から係合突起が外れないようにして、光ピックアップの他部材との衝突事故が回避できる光ピックアップ移送機構を提供する。
【解決手段】 光ピックアップの取付台18に固定される板ばね部材20の一部をスクリューシャフト15の螺旋状溝15a内に圧入させて係合突起21となすとともに、この光ピックアップに、該係合突起21の螺旋状溝15aからの離脱を不能となす遊挿部(第1の規制部)13および規制壁(第2の規制部)18aを設ける構成とした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、CD−ROMドライブなどに用いて好適な光ピックアップ移送機構に関する。
【0002】
【従来の技術】スクリューシャフトをステッピングモータにて回転駆動することによりヘッド部材を往復直線移動させる方式の移送機構は、従来より磁気ディスクドライブなどで広く採用されているが、近時はCD−ROMドライブのように光ディスクを駆動する装置にも採用されるようになっている。すなわち、かかる光ディスクドライブにおいては、光ディスクに対して情報の読み取りや書き込みを行う光ピックアップを往復直線移動させるために、この光ピックアップに設けた係合突起をスクリューシャフトの螺旋状溝に摺動自在に係合させており、スクリューシャフトをステッピングモータにて正逆回転させることにより、該係合突起を介して光ピックアップをスクリューシャフトの軸線方向に沿って移送できるようになっている。
【0003】図10は、この種の光ピックアップ移送機構の従来技術を説明するための概略図で、光ピックアップ1の一側部をガイドシャフト2にて摺動自在に支持し、かつ該光ピックアップ1の他側部に、スクリューシャフト3の螺旋状溝3aに摺動自在に係合させるための係合突起4と、この係合突起4とは逆側からスクリューシャフト3に弾接させるためのフォロワばね5とが突設してある。そして、このフォロワばね5がスクリューシャフト3から受ける反力を利用して係合突起4を螺旋状溝3a内に圧入させているので、図示せぬステッピングモータにてスクリューシャフト3を正逆回転させると、係合突起4が螺旋状溝3aに案内されながら図10の紙面と直交する方向へ往復直線移動することとなり、それゆえ、この係合突起4を介して光ピックアップ1を同方向へ移送できるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来の光ピックアップ移送機構は、外部から衝撃が加わると、光ピックアップ1がフォロワばね5の弾発力に抗して図10の反時計回りの向きに跳ね上がってしまうので、係合突起4がスクリューシャフト3の螺旋状溝3aから外れやすく、それゆえ光ピックアップ1に対して図10の紙面と直交する方向へ衝撃力が作用したときに、ガイドシャフト2のみに支持された状態となる該光ピックアップ1が移送範囲の限界点まで滑動して他部材に衝突してしまう虞がある。そして、レンズ群等を内蔵した精密機器である光ピックアップ1がこのような衝突を起こすと、光軸がずれるなどの故障や破損事故を招来しやすいので、製品の信頼性が損なわれる危険性がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、スクリューシャフトの螺旋状溝から係合突起が外れそうになるとこれを規制する部材を光ピックアップに付設することにより、外部から衝撃が加わったときにも該係合突起が該螺旋状溝から外れないようにして、光ピックアップの他部材との衝突事故を回避することとした。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の光ピックアップ移送機構では、光ディスクに対して情報の読み取りや書き込みを行う光ピックアップの一側部をガイドシャフトにて摺動自在に支持するとともに、該光ピックアップの他側部に設けた係合突起をスクリューシャフトの螺旋状溝に摺動自在に係合させて、このスクリューシャフトをステッピングモータにて回転駆動することにより前記係合突起を介して前記光ピックアップを往復直線移動させる移送機構において、前記光ピックアップに、前記係合突起の前記螺旋状溝からの離脱を不能となす規制部を設ける構成とした。
【0007】このように構成される光ピックアップ移送機構は、外部から衝撃が加わって前記係合突起がスクリューシャフトの螺旋状溝内で所定量跳ね上がると、それ以上の跳ね上り動作を前記規制部が規制して、該係合突起が螺旋状溝から外れないようになっているので、衝撃力により光ピックアップが滑動して他部材に衝突してしまうという不測の事故が回避できる。
【0008】なお、上述した構成において、前記光ピックアップの所定部位に固定される板ばね部材の一部を前記螺旋状溝内に圧入させて前記係合突起となすとともに、前記規制部として、前記スクリューシャフトを遊挿せしめる第1の規制部と、前記所定部位を前記係合突起の背面と至近距離で対向する位置まで延ばしてなる第2の規制部とを設ければ、光ピックアップに衝撃が加わったとき、第1の規制部がスクリューシャフトに当接して第2の規制部の該スクリューシャフトからの離間量を規制し、かつ該第2の規制部は係合突起を背面側から位置規制することになるので、該係合突起の跳ね上がり量を螺旋状溝から離脱しない程度に抑えることができる。
【0009】あるいはまた、前記係合突起と一体の合成樹脂部材に、スクリューシャフトを挟んで該係合突起とは逆側に位置し該スクリューシャフトと至近距離で対向する部位を突出形成し、この突出部位を前記規制部となせば、前記螺旋状溝内で係合突起が所定量跳ね上がったときに該規制部をスクリューシャフトに当接させて、該係合突起のそれ以上の跳ね上がりを防止することができる。
【0010】
【実施例】実施例を図面を参照して説明すると、図1は本発明による光ピックアップ移送機構の一実施例を示す光ディスクドライブ(CD−ROMドライブ)の内部構造説明図、図2は図1に示す光ピックアップ移送機構の要部断面図、図3は図1,2に示す係合突起付きの板ばね部材の平面図、図4は図3に示す係合突起のスクリューシャフトとの係合状態を説明するための要部断面図である。
【0011】図1に示す光ディスクドライブのシャーシ10上には、光ディスクに対して情報の読み取りを行うヘッド部材を搭載したキャリッジである光ピックアップ11や、この光ピックアップ11の一側部を摺動自在に支持するガイドシャフト12や、光ピックアップ11の他側部に突設したモールド品である一対の筒状の遊挿部13,14に遊挿されるスクリューシャフト15や、このスクリューシャフト15を間欠的に回転駆動するステッピングモータ16や、光ディスクがローディングされるとこれを回転駆動するスピンドルモータ17等が配設されている。また、光ピックアップ11には、シャーシ10とスクリューシャフト15間の隙間に向かって平板状に延びて遊挿部13,14と一体化されたモールド品である取付台18が突設してあり、この取付台18上にねじ19にて固定した金属薄板製の板ばね部材20の先端部には、一対の遊挿部13,14の間に位置してスクリューシャフト15の螺旋状溝15a内に圧入される係合突起21が形成されている。ここで、係合突起21は螺旋状溝15aの内壁面と線接触するように圧入されて、該螺旋状溝15aと摺動自在に係合する(図4参照)。したがって、ステッピングモータ16にてスクリューシャフト15を回転駆動することにより、係合突起21を介して光ピックアップ11を、ガイドシャフト12やスクリューシャフト15の軸線方向に沿って移送できるようになっている。
【0012】なお、前記板ばね部材20の基端部には、この板ばね部材20をつまんで取付台18上へ容易に組み付けられるようにするためのつまみ片である起立片20aや、取付台18の凹所18bに嵌入させて回り止めとして機能させるための係止片20bや、ねじ19を挿通するためのねじ孔20c(図3参照)等が形成されている。また、取付台18のうちシャーシ10とスクリューシャフト15間の隙間に位置する個所は、図2に示すように、上部に凹状の逃げ溝を設けて係合突起21の背面と至近距離で対向する規制壁18aとなっている。
【0013】上述した光ピックアップ移送機構は、光ピックアップ11に外部から衝撃が加わって係合突起21がスクリューシャフト15の螺旋状溝15a内で所定量跳ね上がると、遊挿部13,14によりスクリューシャフト15からの離間量が予め規制されている規制壁18aが、係合突起21を背面側から位置規制することになるので、この係合突起21が螺旋状溝15aから外れるほど大きく跳ね上がることはない。そして、このように係合突起21が螺旋状溝15aから外れないように設計してあると、衝撃力により光ピックアップ11が滑動して他部材に衝突してしまうという不測の事故が回避できるので、レンズ群等を内蔵した精密機器である該光ピックアップ11が衝撃に起因する故障や破損事故を起こす危険性が激減して、製品の信頼性が大幅に高まる。
【0014】図5は本発明による光ピックアップ移送機構の他の実施例を示す要部断面図、図6は図5に示す係合突起付きの遊嵌部材の平面図であって、図1,2と対応する部分には同一符号が付してある。
【0015】図5,6に示す光ピックアップ移送機構は、光ピックアップの取付台18上に設けたスペーサ部22に、リーフスプリング23を介して、モールド品である遊嵌部材24が取り付けてあり、この遊嵌部材24には、スクリューシャフト15の螺旋状溝15a内に圧入される係合突起21が天井面から下向きに突出形成してあるとともに、スクリューシャフト15を挟んで係合突起21とは逆側に位置して該スクリューシャフト15と至近距離で対向する一対の規制片25,25が横向きに突出形成してある。したがって、光ピックアップに外部から衝撃が加わって係合突起21がスクリューシャフト15の螺旋状溝15aから離脱しそうになると、各規制片25がスクリューシャフト15に当接して係合突起21の離脱動作が阻止されるようになっており、それゆえ本実施例も前記実施例と同様に、係合突起21が螺旋状溝15aから外れるほど大きく跳ね上がることはなく、外部から衝撃が加わっても光ピックアップが故障したり破損事故を起こす心配はほとんどない。
【0016】なお、この実施例では図6に示すように、1つの係合突起21と2つの規制片25,25とを有する遊嵌部材24を用いているが、図7に示すように、2つの係合突起21,21と1つの規制片25とを有する遊嵌部材26を用いても、ほぼ同様の効果が期待できる。
【0017】図8は本発明による光ピックアップ移送機構のさらに他の実施例を示す要部平面図、図9は該光ピックアップ移送機構の断面図であって、図1,2と対応する部分には同一符号が付してある。
【0018】図8,9に示す光ピックアップ移送機構は、光ピックアップの取付台18上にモールド品である支持部材27がねじ止めしてあり、この支持部材27の相対向する側壁には支軸28が形成してあるとともに、底面に規制片29が形成してある。両支軸28にはコイルスプリング30が保持してあり、このコイルスプリング30の両端から延びる一対の係合突起31,32はスクリューシャフト15を挟んでその螺旋状溝15a内に弾接し、支持部材27の規制片29が下側の係合突起32と至近距離で対向してある。したがって、光ピックアップに外部から衝撃が加わって係合突起31,32がスクリューシャフト15の螺旋状溝15aから離脱しそうになると、規制片29が下側の係合突起32を位置規制するようになっており、それゆえ本実施例も前記各実施例と同様に、係合突起31,32が螺旋状溝15aから外れるほど大きく跳ね上がることはなく、外部から衝撃が加わっても光ピックアップが故障したり破損事故を起こす心配はほとんどない。
【0019】
【発明の効果】以上説明したように、本発明による光ピックアップ移送機構は、外部から衝撃が加わって光ピックアップの係合突起がスクリューシャフトの螺旋状溝内で所定量跳ね上がると、この光ピックアップに設けた規制部がそれ以上の跳ね上り動作を規制して、該係合突起が螺旋状溝から外れないようになっているので、衝撃力により光ピックアップが滑動して他部材に衝突してしまうという不測の事故が回避でき、それゆえ光ピックアップが衝撃に起因する故障や破損事故を起こす危険性が激減して、製品の信頼性が大幅に高まるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による光ピックアップ移送機構を採用した光ディスクドライブの内部構成を示す平面図である。
【図2】図1に示す光ピックアップ移送機構の要部断面図である。
【図3】図1,2に示す係合突起付きの板ばね部材の平面図である。
【図4】図3に示す係合突起のスクリューシャフトとの係合状態を説明するための要部断面図である。
【図5】本発明による光ピックアップ移送機構の他の実施例を示す要部断面図である。
【図6】図5に示す係合突起付きの遊嵌部材の平面図である。
【図7】該遊嵌部材の変形例を示す平面図である。
【図8】本発明による光ピックアップ移送機構のさらに他の実施例を示す要部平面図である。
【図9】図8に示す光ピックアップ移送機構の断面図である。
【図10】従来技術を説明するための概略図である。
【符号の説明】
10 シャーシ
11 光ピックアップ
12 ガイドシャフト
13,14 遊挿部(第1の規制部)
15 スクリューシャフト
15a 螺旋状溝
16 ステッピングモータ
17 スピンドルモータ
18 取付台
18a 規制壁(第2の規制部)
20 板ばね部材
21 係合突起
24,26 遊嵌部材
25 規制片(規制部)
27 支持部材
28 支軸
29 規制片(規制部)
30 コイルスプリング
31,32 係合突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】 光ディスクに対して情報の読み取りや書き込みを行う光ピックアップの一側部をガイドシャフトにて摺動自在に支持するとともに、該光ピックアップの他側部に設けた係合突起をスクリューシャフトの螺旋状溝に摺動自在に係合させて、このスクリューシャフトをステッピングモータにて回転駆動することにより前記係合突起を介して前記光ピックアップを往復直線移動させる移送機構であって、前記光ピックアップに、前記係合突起の前記螺旋状溝からの離脱を不能となす規制部を設けたことを特徴とする光ピックアップ移送機構。
【請求項2】 請求項1の記載において、前記光ピックアップの所定部位に固定される板ばね部材の一部を前記螺旋状溝内に圧入させて前記係合突起となすとともに、前記規制部として、前記スクリューシャフトを遊挿せしめる第1の規制部と、前記所定部位を前記係合突起の背面と至近距離で対向する位置まで延ばしてなる第2の規制部とを設けたことを特徴とする光ピックアップ移送機構。
【請求項3】 請求項1の記載において、前記係合突起と一体の合成樹脂部材に、前記スクリューシャフトを挟んで該係合突起とは逆側に位置し該スクリューシャフトと至近距離で対向する部位を突出形成し、この突出部位を前記規制部となしたことを特徴とする光ピックアップ移送機構。

【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開平9−213025
【公開日】平成9年(1997)8月15日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−22698
【出願日】平成8年(1996)2月8日
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)