説明

光ピックアップ装置、光ディスク装置および情報記録方法

【課題】多層ディスクにおいて全ての記録層に予め案内溝を形成しておく必要がなく、これに情報を記録する場合に、安定したサーボ信号が得られること。
【解決手段】半導体レーザ50から出射した光ビームを、回折格子11で少なくともメインビームと第1、第2のサブビームとに分岐し、対物レンズ2により光ディスクの記録層に照射し少なくとも3つのスポットを形成する。第1、第2のサブビームのスポット20d,20eは記録層の記録済み領域に位置し、それらの反射ビームを光検出器10で検出し、サブプッシュプル信号の差動信号をトラッキング誤差信号としてトラッキング制御を行う。一方メインビームのスポット20aにて記録層の未記録領域に情報を記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに情報を記録/再生する光ピックアップ装置、光ディスク装置および情報記録方法に係り、特に案内溝を有していない光ディスクにおいて安定したサーボ信号を得るための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクではBD(Blu-ray Disc)などに代表されるように記録層数を2層以上とすることで記録容量を増やしており、更なる多層化が進められている。
【0003】
多層ディスクの一般的な製造方法は、各記録層ごとにトラッキング用のピットや案内溝を形成するために、紫外線硬化型樹脂に樹脂スタンパーを押圧してピットや案内溝を転写する高度で複雑な作業が必要とされる。また、形成するピット形状や案内溝形状は全ての記録層で基準を満足させる必要があるが、ディスク偏心の影響もあり、記録層数が多くなるほど製造工程での歩留まりが悪くなってしまう。
【0004】
この問題に関し例えば特許文献1では、「多層記録のトラッキングを形成するためにすべての層にトラッキング用のパターンを転写しようとすると媒体の製造コストが増大する」ことを課題とし、「媒体の一部にのみあらかじめサーボ用のパターンを形成しておき、2つの光スポットのうちひとつをサーボパターンに照射してトラッキングを行いもう一方の光スポットでサーボパターンを追記する」トラック形成方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−302085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるトラック形成方法では、光ディスク上に第1の光スポットと第2の光スポットを照射し、第1の光スポットを用いてトラッキングを行いながら第2のスポットを用いてトラッキングのためのマークあるいは案内溝を形成している。これにより、多層ディスクにおいて、すべての記録層に案内溝をあらかじめ形成しておく必要がなくなるため、媒体製造コストの低減が図れると記載している。
【0007】
ところが、特許文献1の構成では、記録中に安定したトラッキング誤差信号を生成できないという課題がある。特許文献1のように1つのビームから生成する一般的なトラッキング誤差信号検出方式として、プッシュプル(PP:Push Pull)方式やDPD(Differential Phase Detection)方式がある。PP方式は、案内溝によって回折した回折光の干渉領域を2分割受光面で検出する方式である。しかし、特許文献1の構成では、ディスク上のトラックにスポットが追従するために対物レンズがディスク半径方向(Rad方向)に変位する際、プッシュプル信号にDCオフセットが発生する。DCオフセットが発生すると、小さい場合にはオフトラックが生じ、大きい場合にはトラッキング制御ができなくなってしまう。
【0008】
また、DPD方式についても課題がある。DPD方式は、ディスク上のマーク上を走査したときにスポットがマークのセンタ位置からずれると、少なくとも2分割された受光部からの検出信号にマークの位相差が生じることを利用する。その際、マークの位相差を検出するために高周波成分を比較する必要がある。一方記録動作のためには、記録用のマーク/スペースを形成するためレーザを高周波で明滅させる。このため、特許文献1のように第1の光スポットと第2の光スポットが同じレーザから出射される場合には、レーザから出射された記録用の高周波明滅信号が第2の光スポットに混入し、DPD信号のような高周波信号を同時に安定して検出することが困難になる。これを避けるため、例えば、第1の光スポットと第2の光スポットを別のレーザから出射させる方式も考えられるが、装置の構成が複雑化し高コスト化は避けられない。また、第2のスポットの光量を大きくすると、記録または記録消去してしまうため、パワーを上げることができず、S/Nについても課題がある。
【0009】
本発明の目的は、多層ディスクにおいて全ての記録層に予め案内溝を形成しておく必要がなく、これに情報を記録する場合に、安定したサーボ信号を得ることが可能な光ピックアップ装置とこれを搭載した光ディスク装置および情報記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は光ディスクの記録層に情報を記録する光ピックアップ装置であって、光ビームを出射する半導体レーザと、該半導体レーザから出射した光ビームを少なくともメインビームと第1のサブビームと第2のサブビームとに分岐する回折格子と、該回折格子で分岐された各ビームを前記光ディスクの記録層に照射して少なくとも3つのスポットを形成する対物レンズと、該対物レンズを前記光ディスクの半径方向に駆動するアクチュエータと、前記光ディスクの記録層を反射した少なくとも3つのビームを検出する光検出器と、を備え、前記光ディスクの記録層に形成される各スポットに関し、前記第1のサブビームのスポットと前記第2のサブビームのスポットは、両方とも前記メインビームのスポットに対し光ディスクの内周側または外周側に位置し、前記光ディスクの記録層に形成する記録マークの半径方向の間隔をTとし、n、mを自然数としたとき、前記第1のサブビームのスポットと前記第2のサブビームのスポットの間隔が略(n−1/2)Tであり、かつ前記第1のサブビームのスポットと前記第2のサブビームのスポットの中心と前記メインビームのスポットとの間隔が略(2m+1)T/4であることを特徴とする。
【0011】
さらに前記光検出器は、前記各ビームをそれぞれ分割された受光面で受光し各領域から検出信号を出力する構成であり、前記光検出器から出力される信号のうち、前記第1のサブビームから得られる第1のサブプッシュプル信号と前記第2のサブビームから得られる第2のサブプッシュプル信号の差動信号をトラッキング誤差信号として、前記アクチュエータを駆動して前記対物レンズのトラッキング制御を行い、前記メインビームのスポットにより前記光ディスクの記録層に情報を記録することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、多層ディスクにおいて全ての記録層に予め案内溝を形成しておく必要がなく、ディスクの製造コストが大幅に低減する。またこのような多層ディスクから安定したサーボ信号を得ることができ、各記録層に安定した情報を記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図。
【図2A】回折格子11のパターン(タイプA)を示す図。
【図2B】回折格子11のパターン(タイプB)を示す図。
【図3】ディスク上の記録マーク列と照射スポットの関係を示す図。
【図4】光検出器10の受光面と光ビームの関係を示す図。
【図5A】サブビームのスポットが変位したときの記録マーク列と照射スポットの関係を示す図。
【図5B】サブビームのスポットが変位したときのトラッキング誤差信号を示す図。
【図6】対物レンズ2が変位したときのトラッキング誤差信号を示す図。
【図7】ディスク上に記録マークを追記する方法を説明する図。
【図8】実施例2における記録マーク列と照射スポットの関係を示す図。
【図9】実施例2における光検出器10の受光面と光ビームの関係を示す図。
【図10】実施例3における記録マーク列と照射スポットの関係を示す図。
【図11】実施例3における光検出器10の受光面と光ビームの関係を示す図。
【図12】実施例4における記録マーク列と照射スポットの関係を示す図。
【図13】実施例4における光検出器10の受光面と光ビームの関係を示す図。
【図14】実施例5に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図。
【図15】実施例5における光ディスクの記録層構成と光ビームの関係を示す図。
【図16】実施例5における情報記録方法の手順を示すフローチャート。
【図17】実施例6に係る光ディスク装置の概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明の各実施例について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の第1の実施例に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図である。本実施例では波長略405nmのレーザを使用するNA0.85の多層ディスクの記録システムを対象とするが、それ以外の光ディスクであってもよい。
【0016】
半導体レーザ50からは、波長略405nmの光ビームが発散光として出射される。半導体レーザ50から出射した光ビームは回折格子11に入射して回折され、メインビームとサブビームに分岐される。
【0017】
回折格子11を回折した光ビームはビームスプリッタ52を反射する。なお、一部の光ビームはビームスプリッタ52を透過しフロントモニタ23に入射する。フロントモニタ23は半導体レーザ50の光量の変化を検出し、半導体レーザ50の駆動回路(図示せず)にフィードバックする。これにより光ディスクの記録層に所定の光量の光ビームを照射させ、光ディスクに安定に信号を記録する。
【0018】
ビームスプリッタ52を反射した光ビームはコリメートレンズ51に入射する。コリメートレンズ51は光軸方向に駆動する機構を有しており、コリメートレンズ51が光軸方向に駆動することで、対物レンズ2に入射する光ビームの発散・収束状態を変え、光ディスクのカバー層の厚み誤差による球面収差を補正する。コリメートレンズ51を出射した光ビームは立ち上げミラー55、1/4波長板56を経て、アクチュエータ5に搭載された対物レンズ2により光ディスク上に集光される。なお、ここでの対物レンズ2の開口数はBDと同じ0.85であるとする。
【0019】
光ディスクを反射した光ビームは、対物レンズ2、1/4波長板56、立ち上げミラー55、コリメートレンズ51、ビームスプリッタ52、検出レンズ12を経て、光検出器10上の受光面に入射する。光検出器10では複数の受光面に分割されており、各受光面の検出信号を光ディスク装置に出力し、これよりトラッキング誤差信号、フォーカス誤差信号、RF信号が生成される。なお、検出レンズ12では非点収差が与えられるため、フォーカス誤差信号は非点収差方式により検出される。
【0020】
以下、各部の構成と動作を詳細に説明する。
図2Aと図2Bは、回折格子11の2つの格子パターン(タイプA、タイプB)を示す図である。以下、ディスク接線方向をTan方向、ディスク半径方向をRad方向と記述する。回折格子11は入射した光ビームをメインビーム(0次回折光)とサブビーム(+1次回折光、−1次回折光)に回折する。さらに回折格子11は、境界線800によりディスク接線方向(Tan方向)に領域Iと領域IIに2分割されており、各領域での格子パターンの傾斜角度θ1、θ2を異ならせているため、領域I、領域IIで回折されるサブビームは異なる角度で出射する。
【0021】
図2Aのパターン(タイプA)は、領域I、IIにおける格子パターンの傾斜角度θ1とθ2が同符号であるため、サブビームの方向はメインビームに関して同じ側で異なる角度となる。図2Bのパターン(タイプB)は、領域I、IIにおける格子パターンの傾斜角度θ1とθ2が逆符号であるため、サブビームの方向はメインビームに関して互いに反対側で異なる角度となる。
【0022】
本実施例では、図2Aに示すタイプAの回折格子11を使用し、その回折効率を、例えば0次回折光:+1次回折光:−1次回折光=10:0:1とし、1つのメインビーム(0次回折光)と2つのサブビーム(領域Iの−1次回折光、領域IIの−1次回折光)を用いるものとする。
【0023】
図3は、ディスク上の記録マーク列と照射スポットの関係を示す図である。ディスクには記録マーク列が形成されていて、その半径方向(Rad方向)の間隔をTとする。これに回折格子11で分岐された3つの光ビームが照射され、スポット20aは0次回折光(メインビーム)、スポット20dは領域Iからの−1次回折光(第1のサブビーム)、スポット20eは領域IIからの−1次回折光(第2のサブビーム)を示している。ここで、2つのスポット20d、20eのRad方向の間隔D1は、略(n−1/2)T(nは自然数)となるように配置する。また、スポット20d、20eの中心とスポット20aのRad方向の間隔D2は、略(2m+1)T/4(mは自然数)となるように配置する。これらの間隔D1、D2は回折格子11のパターン形状(傾斜角度)で決定され、図3ではn=1、m=2の場合を示し、D1=0.16μm、D2=0.4μmである。
【0024】
図4は、光検出器10の受光面と光ビームの関係を示す図である。光検出器10は4分割受光面(領域a、b、c、d)と、4分割受光面(領域e、f、g、h)で構成する。これに入射する光ビーム20a、20d、20eは、図3で示した各光ビームの符号に対応する。なお、図4における各光ビームに対するレンズ変位方向(Rad方向)が図2や図3のRad方向に対して略90度回転しているのは、非点収差方式を用いているためである。
【0025】
メインビーム20aは4分割受光面の領域a、b、c、dに、第1のサブビーム20dは領域e、fに、第2のサブビーム20eは領域g、hに入射する。そして、各領域a〜hから得られる信号をそれぞれA〜Hとするとき、(1a)〜(1c)式の演算によりトラッキング誤差信号(TES)、フォーカス誤差信号(FES)、RF信号(RFS)を生成する。
TES=(E−F)−(H−G) ・・・(1a)
FES=(A+C)−(B+D) ・・・(1b)
RFS=A+B+C+D ・・・(1c)
各領域からの検出信号A〜Hは光検出器10から光ディスク装置に送られ、光ディスク装置では上記の演算を行い、トラッキング制御信号を始め各種のサーボ制御信号を生成する。なお、光検出器10からの信号出力数を少なくするために、図4の受光領域の場合には、例えば領域fとh、領域eとgを結線して出力してもよい。
【0026】
次に、トラッキング誤差信号(TES)の生成方法について説明する。
図5A,図5Bは、サブビームのスポットが変位したときのトラッキング誤差信号を示す図であり、図5Aはディスク上の記録マーク列とスポット20d、20eの位置関係を示し、図5Bはスポット20d、20eから得られるプッシュプル信号波形を示す。ここでは、対物レンズ2の変位はない状態を示す。
【0027】
図5Aにおいて、ディスク上のトラックに対し、スポット20d、20eがRad方向に変位すると、図5Bのようなプッシュプル信号が検出される。ここに本実施例では、スポット20d、20eはRad方向に略(n−1/2)Tだけずれて照射しているので、スポット20dから検出されるプッシュプル信号PPd(=E−F)とスポット20eから検出されるプッシュプル信号PPe(=H−G)は、位相が180度ずれている。このため、信号PPdと信号PPeの差動演算(PPd−PPe)を行うことでトラッキング誤差信号TESが検出可能となる。
【0028】
図6は、対物レンズ2が変位したときのトラッキング誤差信号を示す図である。トラッキング制御のためトラッキング誤差信号に基づき対物レンズをRad方向に変位させると、受光部上の光ビームもRad方向に変位する。すなわち、対物レンズの変位に伴って図4のスポット20d、20eは同様にRad方向に変化する。このため、スポット20d、20eから検出されるプッシュプル信号PPd、PPeには、DCオフセットが同じ方向に発生する。ただし本実施例では、信号PPdと信号PPeの差動演算(PPd−PPe)を行っているので、同じ方向のDCオフセット成分がキャンセルされ、トラッキング誤差信号のみを検出することができる。
【0029】
以上のように本実施例では、ディスク上に3つのスポットを形成し、記録マークの半径方向間隔をTとしたとき、2つのサブビームのスポット20d、20eのRad方向の間隔D1を略(n−1/2)Tとなるよう配置している。これにより、トラッキング誤差信号生成において対物レンズの変位に伴うDCオフセットを抑制し、安定したトラッキング制御が可能となる。
【0030】
図7は、本実施例の光ピックアップ装置を用いてディスク上に記録マークを追記する方法を説明する図である。ここでは、ディスク100の内周の一部の領域に、実線100aで示す記録マーク列が予め記録されているとする。光ビームの3つのスポットのうち、内周側にあるサブビームのスポット20d、20eをこの記録済領域に照射する。そして、2つのサブビームのプッシュプル信号の差動演算によりトラッキング誤差信号を検出し、記録マーク列100aに追従させてトラッキング制御を行う。一方、トラッキング制御を行った状態で、外周側にあるメインビームのスポット20aにより未記録領域に点線100bで示す新たなマーク列を記録(追記)する。その後、追記したマーク列をもとに同様にトラッキング制御できるため、一旦記録を始めるとディスク外周方向の未記録領域に対し継続して記録することが可能となる。その際新たにマーク列が記録されるRad方向位置は、2つのスポット20d、20eの中心から間隔D2、すなわち(2m+1)T/4だけ外周方向に離れた位置となるので、予め記録されているマーク列に連続し、Rad方向に間隔Tを保ちながらマーク列を形成することができる。
【0031】
また図7では、メインビームとサブビームのRad方向の間隔D2がm=2の場合であり、トラッキング誤差信号を1つ内周側のトラック(記録マーク)から検出するものとした。記録マークがさらに内周側に存在すれば、mを変えてさらに内周側の記録マークからトラッキング誤差信号を検出してもよい。
【0032】
なお、図7では内周から外周方向に記録する場合を示しているが、サブビームのスポット20d、20eとメインビームのスポット20aの配置を入れ替えて、スポット20aをスポット20d、20eよりも内周側に配置すれば、ディスク外周側から内周方向に記録することもできる。
【0033】
このように本実施例の光ピックアップ装置を用いて情報記録を行うことで、多層ディスクの全ての記録層に予め案内溝等を形成しておく必要がなく、光ディスクの構造が単純化し、多層ディスクの製造コストが大幅に低減する。なお、ディスク上に予め記録マーク等を記録しておく作業は、例えばディスク出荷時に行えばよい。
【0034】
また本実施例のトラッキング誤差信号検出方法では、DPD信号検出のように高周波の信号比較をする必要がなく、サーボの周波数帯域でよいため、記録を行っているときのレーザの高周波の明滅は影響することがなく、安定したトラッキング制御を行うことができる。
【0035】
なお、本実施例の光ピックアップ装置において、半導体レーザの波長や対物レンズの開口数は、ディスクの記録媒体の種類に応じて適宜設定すればよい。球面収差補正のために例えばビームエキスパンダを組み入れてもよい。また、フォーカス誤差信号検出方式として、例えばナイフエッジ方式やスポットサイズ方式などと組み合わせてもよい。
【実施例2】
【0036】
前記実施例1では3つの光ビームを用いてトラッキング制御と記録動作を行う構成であるため、記録方向は、ディスクの内周から外周方向、または外周から内周方向の一方向に限られるものであった。これに対し第2の実施例では、5つの光ビームを配置して両方向の記録を可能とする構成である。前記実施例1とは、回折格子11と光検出器10の構成と動作が異なる。
【0037】
回折格子11は前記図2Aのパターン(タイプA)を用いるが、回折効率を、例えば0次回折光:+1次回折光:−1次回折光=10:1:1として、+1次回折光を追加する。これにより、1つのメインビーム(0次回折光)と4つのサブビーム(領域Iの+1次回折光、領域IIの+1次回折光、領域Iの−1次回折光、領域IIの−1次回折光)に分岐し、5つの光ビームを利用する。
【0038】
図8は、ディスク上の記録マーク列と照射スポットの関係を示す図である。ディスクには5つの光ビームが照射され、スポット20aは0次回折光(メインビーム)、スポット20bは領域Iからの+1次回折光(第1のサブビーム)、スポット20cは領域IIからの+1次回折光(第2のサブビーム)、スポット20dは領域Iからの−1次回折光(第3のサブビーム)、スポット20eは領域IIからの−1次回折光(第4のサブビーム)を示している。追加されたスポット20b、20c(第1、第2のサブビーム)は、既述のスポット20d、20e(第3、第4のサブビーム)に対し、スポット20a(メインビーム)を挟んで外周側の点対称の位置に配置される。
【0039】
そして、Rad方向の記録マーク間隔をTとすると、追加したスポット20b、20cのRad方向の間隔D1は、略(n−1/2)T(nは自然数)となるよう配置する。また、スポット20b、20cの中心とスポット20aのRad方向の間隔D2は、略(2m+1)T/4(mは自然数)となるように配置する。これらの条件は図3のスポット20d、20eにおける間隔D1、D2と同様である。
【0040】
図9は、光検出器10の受光面と光ビームの関係を示す図である。光検出器10は4分割受光面(領域a、b、c、d)と、4分割受光面(領域e1、f1、g1、h1)と、4分割受光面(領域e2、f2、g2、h2)で構成する。ここで、メインビーム20aは4分割受光面の領域a、b、c、dに、第1のサブビーム20bは領域e1、f1に、第2のサブビーム20cは領域g1、h1に、第3のサブビーム20dは領域e2、f2に、第4のサブビーム20eは領域g2、h2に入射する。
【0041】
各領域a〜d、e1〜h1、e2〜h2から得られる信号をそれぞれA〜D、E1〜H1、E2〜H2とするとき、トラッキング誤差信号(TES)は、(2)または(3)式の演算により生成する。(2)式は内周から外周方向に記録する場合で、第3、第4のサブビームを利用する。(3)式は外周から内周方向に記録する場合で、第1、第2のサブビームを利用する。
TES=(E2−F2)−(H2−G2) ・・・(2)
TES=(E1−F1)−(H1−G1) ・・・(3)
なお、フォーカス誤差信号(FES)とRF信号(RFS)は前記(1b)(1c)式と同様の演算となる。
【0042】
以上のように、記録方向(内周→外周、外周→内周)に合わせて演算式(2)(3)を切り替えることで、両方向の記録に対応することが可能となる。この演算式の切り替えは光ディスク装置にて行うものとするが、光ディスク装置から光ピックアップ装置に記録方向を示す制御信号を送り、光ピックアップ装置から出力する信号を切り替えるようにすれば、光ディスク装置では共通の演算式で処理することができる。
【0043】
なお、光検出器10からの信号出力数を少なくするために、図9の受光領域の場合には、例えば領域f1とh1、領域e1とg1、領域f2とh2、領域e2とg2を結線して出力してもよい。さらには、例えば領域e1とe2、領域f1とf2、領域g1とg2、領域h1とh2を結線して出力すれば、記録方向に合わせて演算式(2)(3)を切り替える必要がなくなる。
【実施例3】
【0044】
前記実施例1では1つのメインビームと2つのサブビームをディスクに照射し、2つのサブビームのスポットをディスク半径方向に所定間隔D1だけずらして配置するものであった。これに対し本実施例では、2つのサブビームのスポットをさらにディスク接線方向にもずらして配置する構成とした。前記実施例1とは、回折格子11と光検出器10の構成と動作が異なる。
【0045】
まず回折格子11は前記図2Bの格子パターン(タイプB)を用いる。そして回折効率を、例えば0次回折光:+1次回折光:−1次回折光=10:0:1として、3つの光ビームに分岐する。タイプBでは、領域I、IIから出射されるサブビーム(−1次回折光)の方向は、メインビーム(0次回折光)に関して互いに反対側で異なる角度となる。
【0046】
図10は、ディスク上の記録マーク列と照射スポットの関係を示す図である。スポット20aは0次回折光(メインビーム)、スポット20dは領域Iからの−1次回折光(第1のサブビーム)、スポット20eは領域IIからの−1次回折光(第2のサブビーム)を示す。ここでサブビームの2つのスポット20b、20cは、メインビームのスポット20aを挟んでTan方向に離れて配置される。
【0047】
ここで、Rad方向の記録マーク間隔をTとすると、スポット20d、20eのRad方向の間隔D1は、略(n−1/2)T(nは自然数)となるよう配置する。また、スポット20d、20eの中心とスポット20aのRad方向の間隔D2は、略(2m+1)T/4(mは自然数)となるように配置する。Rad方向の間隔D1、D2は実施例1と同様である。なお、図10ではn=1、m=2としている。
【0048】
図11は、光検出器10の受光面と光ビームの関係を示す図である。光検出器10は4分割受光面(領域a、b、c、d)と、2分割受光面(領域eh1、fg1)と、2分割受光面(領域eh2、fg2)で構成する。
【0049】
メインビーム20aは4分割受光面の領域a、b、c、dに、第1のサブビーム20dは2分割受光面の領域eh2、fg2に、第2のサブビーム20eは2分割受光面の領域eh1、fg1に入射する。そして、各領域a〜d、eh1、fg1、eh2、fg2から得られる信号をそれぞれA〜D、EH1、FG1、EH2、FG2とするとき、トラッキング誤差信号(TES)は(4)式の演算により生成する。
TES=(EH2−FG2)−(EH1−FG1) ・・・(4)
なお、フォーカス誤差信号(FES)とRF信号(RFS)は前記(1b)(1c)式と同様の演算となる。
【0050】
本実施例においても、2つのサブビームのスポット20d、20eの位置は、ディスクTan方向にずれているものの、Rad方向の間隔D1が略(n−1/2)Tとなるよう配置している。そして、各スポットから検出されるプッシュプル信号である、PPd(=EH2−FG2)とPPe(=EH1−FG1)の差動演算(PPd−PPe)を行うことにより、トラッキング誤差信号生成において対物レンズの変位に伴うDCオフセットを抑制し、安定したトラッキング制御が可能となる。
【0051】
また、スポット20d、20eの中心とメインビームのスポット20aのRad方向の間隔D2が略(2m+1)T/4となるよう配置している。これより、内周側に予め記録されたマーク列に追従してトラッキング制御しながら、外周側にあるメインビームのスポット20aにより新たなマーク列を記録することができる。
【0052】
なお、図10では内周から外周方向に記録する場合を示しているが、サブビームのスポット20d、20eとメインビームのスポット20aの配置を入れ替えて、スポット20aをスポット20d、20eよりも内周側に配置すれば、ディスク外周側から内周方向に記録することもできる。
【実施例4】
【0053】
前記実施例3では3つの光ビームを用いてトラッキング制御と記録動作を行う構成であるため、記録方向は、ディスクの内周から外周方向、または外周から内周方向の一方向に限られるものであった。これに対し第4の実施例では、5つの光ビームを配置して両方向の記録が可能とする構成である。前記実施例3とは、回折格子11と光検出器10の構成と動作が異なる。
【0054】
回折格子11は前記図2Bのパターン(タイプB)を用いるが、回折効率を、例えば0次回折光:+1次回折光:−1次回折光=10:1:1として、+1次回折光を追加する。これにより、1つのメインビーム(0次回折光)と4つのサブビーム(領域Iの+1次回折光、領域IIの+1次回折光、領域Iの−1次回折光、領域IIの−1次回折光)に分岐し、5つの光ビームを利用する。
【0055】
図12は、ディスク上の記録マーク列と照射スポットの関係を示す図である。ディスクには5つの光ビームが照射され、スポット20aは0次回折光(メインビーム)、スポット20bは領域Iからの+1次回折光(第1のサブビーム)、スポット20cは領域IIからの+1次回折光(第2のサブビーム)、スポット20dは領域Iからの−1次回折光(第3のサブビーム)、スポット20eは領域IIからの−1次回折光(第4のサブビーム)を示す。追加されたスポット20b、20c(第1、第2のサブビーム)は、既述のスポット20d、20e(第3、第4のサブビーム)に対し、スポット20a(メインビーム)を挟んで外周側の点対称の位置に配置される。
【0056】
そして、Rad方向の記録マーク間隔をTとすると、追加したスポット20b、20cのRad方向の間隔D1は、略(n−1/2)T(nは自然数)となるよう配置する。また、スポット20b、20cの中心とスポット20aのRad方向の間隔D2は、略(2m+1)T/4(mは自然数)となるように配置する。これらの条件は図10のスポット20d、20eにおける間隔D1、D2と同様である。
【0057】
図13は、光検出器10の受光面と光ビームの関係を示す図である。光検出器10は図9と同様に、4分割受光面(領域a、b、c、d)と、4分割受光面(領域e1、f1、g1、h1)と、4分割受光面(領域e2、f2、g2、h2)で構成する。ここで、メインビーム20aは4分割受光面の領域a、b、c、dに、第1のサブビーム20bは領域e1、f1に、第2のサブビーム20cは領域g2、h2に、第3のサブビーム20dは領域e2、f2に、第4のサブビーム20eは領域g1、h1に入射する。
【0058】
各領域a〜d、e1〜h1、e2〜h2から得られる信号をそれぞれA〜D、E1〜H1、E2〜H2とするとき、トラッキング誤差信号(TES)は、(5)または(6)式の演算により生成する。(5)式は内周から外周方向に記録する場合で、第3、第4のサブビームを利用する。(6)式は外周から内周方向に記録する場合で、第1、第2のサブビームを利用する。
TES=(E2−F2)−(H1−G1) ・・・(5)
TES=(E1−F1)−(H2−G2) ・・・(6)
なお、フォーカス誤差信号(FES)とRF信号(RFS)は前記(1b)(1c)式と同様の演算となる。
【0059】
以上のように、記録方向(内周→外周、外周→内周)に合わせて演算式(5)(6)を切り替えることで、両方向の記録に対応することが可能となる。この場合の演算式の切り替えは、前記実施例2と同様に行う。
【0060】
なお、光検出器10からの信号出力数を少なくするために、図13の受光領域の場合には、例えば領域h1とf2、領域g1とe2、領域e1とg2、領域f1とh2を結線して出力してもよい。さらには、例えば領域e1とe2、領域f1とf2、領域g1とg2、領域h1とh2を結線して出力すれば、記録方向に合わせて演算式(5)(6)を切り替える必要がなくなる。
【実施例5】
【0061】
図14は、本発明の第5の実施例に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図である。本実施例で対象とする光ディスクは、多層ディスクにおいて、各記録層とは別に案内溝が形成された層(ガイド層)を設け、ガイド層を用いて各記録層のサーボ制御を行う方式(ガイド層分離型方式)に対応するものである。
【0062】
光ピックアップ装置は2つの半導体レーザ50,60を有し、第1の光ビームを記録層に照射する第1の光学系と、第2の光ビームをガイド層に照射する第2の光学系を備える。
【0063】
まず、光ディスクの記録層に照射する第1の光学系について説明する。第1の光学系は、前記実施例1に準じた構成としており簡略に説明する。第1の半導体レーザ50からは、波長略405nmの第1の光ビームが発散光として出射され、回折格子11に入射する。回折格子11は前記図2Aのパターン構造とし、回折効率を0次回折光:+1次回折光:−1次回折光=10:0:1とする。これにより第1の光ビームは、1つのメインビーム(0次回折光)と2つのサブビーム(領域I、IIからの−1次回折光)の計3つの光ビームに分岐される。
【0064】
回折格子11を回折した第1の光ビームは、コリメートレンズ51により略平行光に変換され、ビームスプリッタ52、レンズ53、ダイクロイックプリズム74、レンズ75を経て、立上げミラー55に入射する。立上げミラー55を反射した光ビームは、1/4波長板56を透過し、アクチュエータ5に搭載された対物レンズ2により光ディスクの所定の記録層に集光される。
この場合の記録層における記録マーク列と照射スポットの関係は前記図3と同様であり、各スポット20a〜20eは、前記した間隔D1、D2で配置する。
【0065】
ここで、ビームスプリッタ52は、半導体レーザ50から出射した第1の光ビームを透過し、ディスクから反射した光ビームを反射する。ダイクロイックプリズム74は波長選択性があり、本実施例では、第1の半導体レーザ50から出射した第1の光ビームを反射し、後述する第2の半導体レーザ60から出射した第2の光ビームを透過する。レンズ53は光軸方向に移動可能であり、レンズ75と組み合わせることで、複数の記録層のディスク表面からの距離の違いにより発生する球面収差を補正する。
【0066】
光ディスクの所定の記録層を反射した光ビームは、対物レンズ2、1/4波長板56、立上げミラー55、レンズ75、ダイクロイックプリズム74、レンズ53、ビームスプリッタ52、検出レンズ12を経て、第1の光検出器10上の受光面に入射する。第1の光検出器10は複数の受光面に分割されており、各受光面の検出信号を光ディスク装置に出力し、これよりトラッキング誤差信号、フォーカス誤差信号、RF信号が生成される。
【0067】
この場合の第1の光検出器10の受光面構成と光ビームの関係は前記図4と同様である。これより、前記(1a)〜(1c)式の演算により、トラッキング誤差信号(TES)、フォーカス誤差信号(FES)、RF信号(RFS)を生成することができる。このうちトラッキング誤差信号は、2つのサブビームから得られるサブプッシュプル信号の差動演算から求めることで、DCオフセットを抑制し安定したトラッキング制御が可能となる。
【0068】
次に光ディスクのガイド層に照射する第2の光学系について説明する。第2の半導体レーザ60から第2の光ビーム(サーボ用)が出射される。第2の光ビームの波長は前記第1の光ビームの波長と異なり、例えば650nmとする。第2の光ビームは、回折格子111により3つの光ビームに分岐される。そしてコリメータレンズ61により略平行光に変換され、ビームスプリッタ62、レンズ63、ダイクロイックプリズム74、レンズ75を経て、立上げミラー55に入射する。立上げミラー55を反射した光ビームは、1/4波長板56を透過し、アクチュエータ5に搭載された対物レンズ2を経て、光ディスクのガイド層に集光する。ダイクロイックプリズム74から対物レンズ2までは、前記第1の光学系と光学部品を共有している。
【0069】
ここにビームスプリッタ62は、第2の半導体レーザ60から出射した第2の光ビームを透過し、ディスクから反射した光ビームを反射する。レンズ63は光軸方向に駆動可能であり、レンズ75と組み合わせることで、複数の記録層とガイド層から発生する相対デフォーカスを補正する。
【0070】
光ディスクのガイド層を反射した光ビームは、対物レンズ2、1/4波長板56、立上げミラー55、レンズ75、ダイクロイックプリズム74、レンズ63、ビームスプリッタ62、検出レンズ64を経て、第2の光検出器65の受光面に入射する。検出レンズ64では光ビームに非点収差が与えられる。光検出器65は複数の受光面に分割されており、各受光面の検出信号を光ディスク装置に出力し、これよりトラッキング誤差信号とフォーカス誤差信号が生成される。なお、本実施例のガイド層の光学系は、非点収差方式を用いたフォーカス誤差信号、DPP方式を用いたトラキング誤差信号でサーボ信号を生成するがこれには限定されない。
【0071】
これより、前記(1a)(1b)式の演算により、トラッキング誤差信号(TES)、フォーカス誤差信号(FES)を生成することができる。このうちトラッキング誤差信号は、2つのサブビームから得られるサブプッシュプル信号の差動演算から求めることで、DCオフセットを抑制し安定したトラッキング制御が可能となる。
【0072】
図15は、光ディスクの記録層構成と光ビームの関係を示す図である。
光ディスクの一例として、案内溝を有していない3層の記録層400A、400B、400Cと、案内溝を有するガイド層500を有する構造を示す。記録層の層数は、8層や16層などさらに多層化してもよい。対物レンズ2から出射された第1の光ビームは、例えば記録層400A上の符号600で示す位置に集光され、反射される。第1の光ビームには、1つのメインビームと2つのサブビームが含まれるが、図15ではメインビーム410のみ表示している。また、対物レンズ2から出射された第2の光ビームは、ガイド層500に集光され、反射される。図15ではメインビーム510のみ表示している。
【0073】
本実施例による記録動作では、2つのトラッキング制御が可能である。1つは、第1の光ビームの2つのサブビームを記録層400Aの記録済領域に照射し、記録済マークに追従させてトラッキング制御を行いながら、第1の光ビームのメインビーム410にて記録層400Aの未記録領域に記録マークを形成する動作である。もう1つは、第2の光ビームをガイド層500の案内溝に照射し、案内溝に追従させてトラッキング制御を行いながら、第1の光ビームのメインビーム410にて記録層400Aに記録マークを形成する動作である。上記2つの動作を組み合わせることで、記録層に記録マークが形成されていない多層ディスクに対して情報の記録が可能となる。
【0074】
図16は、本実施例による情報記録方法の手順を示すフローチャートである。対象とする多層ディスクは、ガイド層500にはトラッキング用の案内溝が形成されている。記録層400には記録マークが記録されておらず未記録状態である。以下、ステップ順に説明する。
【0075】
(S1)ディスクを回転駆動し、第1の半導体レーザ50と第2の半導体レーザ60を点灯し、記録層への第1の光ビームとガイド層への第2の光ビームを出射する。
(S2)第1の光ビームを用いて対物レンズ2を光軸方向に駆動し、記録層400にフォーカス制御する。
(S3)第2の光ビームを用いてレンズ63を光軸方向に駆動し、ガイド層500にフォーカス制御する。さらに対物レンズ2を半径方向に駆動し、ガイド層500の案内溝にトラッキング制御する。このときトラッキング制御のため、光検出器65から得られる複数の検出信号に基づくトラッキング誤差信号を利用する。
(S4)ディスクの記録層400のテスト領域において、第1の光ビームの記録パワー、レンズ53による球面収差補正、デフォーカス、対物レンズ2の傾き等の記録条件の最適化を行う。
(S5)第1の光ビームをディスクの記録層400の記録領域(例えば内周側領域)に移動し、最適記録条件の下、所定数(少なくとも1周以上)のマーク列の記録を行う。このときのトラッキング制御は、第2の光ビームによりガイド層500の案内溝に追従させている。
【0076】
(S6)第2の半導体レーザ60を消灯し、第2の光ビームの出射を停止する。
(S7)第1の光ビームを用いて対物レンズ2を半径方向(外周側)に駆動し、S5で記録した記録層400のマーク列にトラッキング制御する。このときトラッキング制御のため、光検出器10から得られる複数の検出信号に基づくトラッキング誤差信号を利用する。
(S8)内周側の記録マーク列でトラッキング制御を行いながら、記録層400の未記録領域に記録を行う。
【0077】
本実施例の工程は、前半(S1)〜(S5)においてガイド層500の案内溝に追従させて記録層400の一部にマーク列を形成し、後半(S6)〜(S8)において記録層400に形成したマーク列に追従させて残りの記録層400に情報を記録するものである。
【0078】
前記実施例1と比較すると、本実施例では、多層ディスクの記録層に予めマーク等を記録しておく必要がなく、案内溝を有するガイド層を少なくとも1層有していればよい。また、記録層の一部にマーク列を形成した後は、残りの領域は形成したマーク列を用いてトラッキング制御が可能となるので、記録層の全領域においてガイド層の案内溝の情報を用いる必要がない。すなわち、ガイド層の案内溝を全面に渡り形成する必要がない。よって、光ディスクの構造が簡単になり、多層ディスクのコストが大幅に低減する。
【0079】
本実施例では、記録層の記録方向は内周から外周方向(または外周から内周方向)の一方向に限られる。これに関し両方向の記録を可能とするためには次のようにすればよい。
まず、光ディスクのガイド層を例えば2層構成とし、各層の案内溝の螺旋形状を互いに反対向きにして、両方向のトラッキングに対応させる。また前記実施例2のように、回折格子11の回折効率を0次回折光:+1次回折光:−1次回折光=10:1:1とすることで、第1の光ビームを5つの光ビームに分岐し、図9に示した光検出器10で検出する。そして、前記(2)、(3)の演算式を切り替えることで、両方向のトラッキング誤差信号(TES)を生成すればよい。
【0080】
本実施例に対し、次の変形が可能である。ガイド層からトラッキング誤差信号を検出するため2つのサブプッシュプル信号の差動信号を用いることで説明したが、これには限定されない。例えば、ガイド層の層構造を案内溝でなくマーク列とし、DPD方式で検出してもよい。また、第2の光ビームをガイド層に照射して、案内溝から回転の同期信号を検出して記録時に利用すれば、ディスク回転に同期した安定した記録が行える。
【実施例6】
【0081】
実施例6では、前記した各実施例1〜実施例5による光ピックアップ装置170を搭載した光ディスク装置について説明する。
図17は、第6の実施例に係る光ディスク装置の概略構成を示す図である。光ピックアップ装置170は、前記の各実施例1〜5のいずれかの構成を有する。光ディスク100はスピンドルモータ180により回転させ、光ピックアップ装置170からレーザ光を照射して情報の記録再生を行う。光ピックアップ装置170には、光ディスク100の半径方向に移動する機構が設けられ、アクセス制御回路172からの制御信号に応じて位置決めされる。
【0082】
レーザ点灯回路177は、光ピックアップ装置170内の半導体レーザ50、60に所定のレーザ駆動電流を供給し、半導体レーザ50、60からは記録または再生に応じて所定の光量でレーザ光が出射される。なお、レーザ点灯回路177は光ピックアップ装置170内に組み込むこともできる。
【0083】
光ピックアップ装置170内の光検出器10から出力された信号は、サーボ信号生成回路174および情報信号再生回路175に送られる。サーボ信号生成回路174では、光検出器10、65からの検出信号を用いて演算し、トラッキング制御信号、フォーカス制御信号、ならびにチルト制御信号などのサーボ信号を生成する。また、サーボ信号生成回路174では、前記実施例2,4で述べたように、記録方向(内周から外周方向、または外周から内周方向)に応じて、トラッキング誤差信号の演算式を切り替える機能を有する。アクチュエータ駆動回路173は、サーボ信号をもとに光ピックアップ装置170内のアクチュエータ5を駆動して、対物レンズ2の位置制御を行う。
【0084】
情報信号再生回路175では、光検出器10からの検出信号(RF信号)に基づいて、光ディスク100に記録されている情報の再生信号を生成しコントロール回路176に送る。情報信号記録回路178は、コントロール回路176から受けた情報に基づき記録制御信号を生成し、レーザ点灯回路177を制御して光ディスク100へ所望の情報を記録する。
【0085】
サーボ信号生成回路174および情報信号再生回路175で生成された信号の一部は、コントロール回路176に送られる。コントロール回路176は、スピンドルモータ駆動回路171、アクセス制御回路172、サーボ信号生成回路174、レーザ点灯回路177、球面収差補正素子駆動回路179を指令し、スピンドルモータ180の回転制御、光ピックアップ装置170のアクセス位置の制御、対物レンズ2のサーボ制御、半導体レーザ50、60の発光光量の制御、球面収差の補正などを行う。
【0086】
本実施例の光ディスク装置では、前記した各実施例1〜5による光ピックアップ装置を搭載しているので、全ての記録層に予め案内溝を有していない多層ディスクにおいても安定したサーボ信号を生成することができ、よって各記録層に情報を安定に記録することができる。
【0087】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した各実施例は本発明を分かりやすく説明するために説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成で置き換え、他の実施例の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0088】
2:対物レンズ、
5:アクチュエータ、
10,65:光検出器、
11,111:回折格子、
12,64:検出レンズ、
20a:メインビーム、
20b,20c,20d,20e:サブビーム、
50,60:半導体レーザ、
51,61:コリメートレンズ、
52,62:ビームスプリッタ、
53,63,75:レンズ、
55:立ち上げミラー、
56:1/4波長板、
74:ダイクロイックプリズム、
100:光ディスク、
170:光ピックアップ装置、
173:アクチュエータ駆動回路、
174:サーボ信号生成回路、
175:情報信号再生回路、
176:コントロール回路、
177:レーザ点灯回路、
178:情報信号記録回路、
180:スピンドルモータ、
400:記録層、
500:ガイド層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクの記録層に情報を記録する光ピックアップ装置であって、
光ビームを出射する半導体レーザと、
該半導体レーザから出射した光ビームを少なくともメインビームと第1のサブビームと第2のサブビームとに分岐する回折格子と、
該回折格子で分岐された各ビームを前記光ディスクの記録層に照射して少なくとも3つのスポットを形成する対物レンズと、
該対物レンズを前記光ディスクの半径方向に駆動するアクチュエータと、
前記光ディスクの記録層を反射した少なくとも3つのビームを検出する光検出器と、
を備え、
前記光ディスクの記録層に形成される各スポットに関し、前記第1のサブビームのスポットと前記第2のサブビームのスポットは、両方とも前記メインビームのスポットに対し光ディスクの内周側または外周側に位置し、
前記光ディスクの記録層に形成する記録マークの半径方向の間隔をTとし、n、mを自然数としたとき、前記第1のサブビームのスポットと前記第2のサブビームのスポットの間隔が略(n−1/2)Tであり、かつ前記第1のサブビームのスポットと前記第2のサブビームのスポットの中心と前記メインビームのスポットとの間隔が略(2m+1)T/4であることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
請求項1記載の光ピックアップ装置において、
前記光検出器は、前記各ビームをそれぞれ分割された受光面で受光し各領域から検出信号を出力する構成であり、
前記光検出器から出力される信号のうち、前記第1のサブビームから得られる第1のサブプッシュプル信号と前記第2のサブビームから得られる第2のサブプッシュプル信号の差動信号をトラッキング誤差信号として、前記アクチュエータを駆動して前記対物レンズのトラッキング制御を行い、
前記メインビームのスポットにより前記光ディスクの記録層に情報を記録することを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項3】
光ディスクの記録層に情報を記録または再生する光ピックアップ装置であって、
光ビームを出射する半導体レーザと、
前記半導体レーザから出射した光ビームを少なくともメインビームと第1のサブビーム、第2のサブビーム、第3のサブビームおよび第4のサブビームとに分岐する回折格子と、
該回折格子で分岐された各ビームを前記光ディスクの記録層に照射して少なくとも5つのスポットを形成する対物レンズと、
該対物レンズを前記光ディスクの半径方向に駆動するアクチュエータと、
前記光ディスクの記録層を反射した少なくとも5つのビームを検出する光検出器と、
を備え、
前記光ディスクの記録層に形成される各スポットに関し、前記第1のサブビームのスポットと前記第2のサブビームのスポットは、両方とも前記メインビームのスポットに対し光ディスクの内周側に位置し、前記第3のサブビームのスポットと前記第4のサブビームのスポットは、両方とも前記メインビームのスポットに対し光ディスクの外周側に位置し、
前記光ディスクの記録層に形成する記録マークの半径方向の間隔をTとし、n、mを自然数としたとき、前記第1のサブビームのスポットと前記第2のサブビームのスポットの間隔、および前記第3のサブビームのスポットと前記第4のサブビームのスポットの間隔が略(n−1/2)Tであり、かつ前記第1のサブビームのスポットと前記第2のサブビームのスポットの中心と前記メインビームのスポットとの間隔、および前記第3のサブビームのスポットと前記第4のサブビームのスポットの中心と前記メインビームのスポットとの間隔が略(2m+1)T/4であることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項4】
請求項3記載の光ピックアップ装置において、
前記光検出器は、前記各ビームをそれぞれ分割された受光面で受光し各領域から検出信号を出力する構成であり、
前記光検出器から出力される信号のうち、前記第1のサブビームから得られる第1のサブプッシュプル信号と前記第2のサブビームから得られる第2のサブプッシュプル信号の差動信号、または前記第3のサブビームから得られる第3のサブプッシュプル信号と前記第4のサブビームから得られる第4のサブプッシュプル信号の差動信号をトラッキング誤差信号として、前記アクチュエータを駆動して前記対物レンズのトラッキング制御を行い、
前記メインビームのスポットにより前記光ディスクの記録層に情報を記録することを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項5】
請求項4記載の光ピックアップ装置において、
前記メインビームにより前記記録層を外周側に向かって記録する場合には、前記第1のサブプッシュプル信号と前記第2のサブプッシュプル信号の差動信号をトラッキング誤差信号として前記対物レンズのトラッキング制御を行い、
前記メインビームにより前記記録層を内周側に向かって記録または再生する場合には、前記第3のサブプッシュプル信号と前記第4のサブプッシュプル信号の差動信号をトラッキング誤差信号として前記対物レンズのトラッキング制御を行うことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項6】
請求項5記載の光ピックアップ装置において、
前記光検出器の検出信号を光ディスク装置に出力し、該光ディスク装置から制御信号を受けて前記アクチュエータが前記対物レンズを駆動するものであって、
前記記録層に記録する方向が外周方向か内周方向かに応じて、前記光検出器から光ディスク装置へ出力する検出信号を切り替えることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項7】
情報を記録する記録層と案内溝が形成されたガイド層とを有する光ディスクに情報を記録する光ピックアップ装置であって、
第1の光ビームを出射する第1の半導体レーザと、
該第1の光ビームを少なくともメインビームと第1のサブビーム、第2のサブビームとに分岐する回折格子と、
第2の光ビームを出射する第2の半導体レーザと、
前記第1の光ビームから分岐された各ビームを前記光ディスクの記録層に照射して少なくとも3つのスポットを形成するとともに、前記第2の光ビームを前記光ディスクのガイド層に照射する対物レンズと、
該対物レンズを前記光ディスクの半径方向に駆動するアクチュエータと、
前記光ディスクの記録層を反射した前記第1の光ビームを検出する第1の光検出器と、
前記光ディスクのガイド層を反射した前記第2の光ビームを検出する第2の光検出器と、
を備え、
前記第1の光ビームにより前記光ディスクの記録層に形成される各スポットに関し、前記第1のサブビームのスポットと前記第2のサブビームのスポットは、両方とも前記メインビームのスポットに対し光ディスクの内周側または外周側に位置し、
前記光ディスクの記録層に形成する記録マークの半径方向の間隔をTとし、n、mを自然数としたとき、前記第1のサブビームのスポットと前記第2のサブビームのスポットの間隔が略(n−1/2)Tであり、かつ前記第1のサブビームのスポットと前記第2のサブビームのスポットの中心と前記メインビームのスポットとの間隔が略(2m+1)T/4であることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項記載の光ピックアップ装置において、
前記回折格子は格子パターンが異なる少なくとも2つの領域に分割されていることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項記載の光ピックアップ装置を搭載した光ディスク装置であって、
前記半導体レーザを駆動するレーザ点灯回路と、
前記光ディスクに記録する情報の記録制御信号を生成し該レーザ点灯回路に送る情報信号記録回路と、
前記光検出器からの検出信号を用いてトラッキング制御信号を生成するサーボ信号生成回路と、
該トラッキング制御信号をもとに前記アクチュエータを駆動するアクチュエータ駆動回路と、
を備えたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項10】
請求項9記載の光ディスク装置であって、
前記サーボ信号生成回路は、前記光ディスクに記録する方向が外周方向か内周方向かに応じて、トラッキング誤差信号の演算式を切り替えることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項11】
記録層に案内溝が形成されていない光ディスクに情報を記録する情報記録方法であって、
半導体レーザから出射した光ビームを少なくともメインビームと第1のサブビームと第2のサブビームとに分岐し、
該分岐された第1、第2のサブビームを前記光ディスクの記録層の記録済領域に照射して2つのスポットを形成し、
前記記録済領域を反射した第1、第2のサブビームから第1、第2のサブプッシュプル信号の差動信号を生成し、
該差動信号を用いてトラッキング制御を行った状態で、前記分岐したメインビームのスポットで前記記録層の未記録領域に情報を記録することを特徴とする情報記録方法。
【請求項12】
情報を記録する記録層と案内溝が形成されたガイド層とを有する光ディスクに情報を記録する情報記録方法であって、
第1の半導体レーザと第2の半導体レーザからそれぞれ第1の光ビームと第2の光ビームを出射し、
該第1の光ビームを少なくともメインビームと第1のサブビームと第2のサブビームとに分岐し、
前記第2の光ビームを前記ガイド層に照射してトラッキング制御を行い、
前記第1の光ビームを前記記録層に照射し前記分岐したメインビームのスポットにて情報の記録を開始し、
前記記録層に所定量の情報を記録した後、前記分岐した第1、第2のサブビームを前記記録層の記録済領域に照射して2つのスポットを形成し、
前記記録済領域を反射した第1、第2のサブビームから第1、第2のサブプッシュプル信号の差動信号を生成し、
該差動信号によりトラッキング制御を行った状態で、前記分岐したメインビームのスポットにて前記記録層の未記録領域に情報の記録を継続することを特徴とする情報記録方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−97851(P2013−97851A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243136(P2011−243136)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】