光ピックアップ装置、光ディスク装置及び情報再生方法
【課題】多層光ディスクにおける隣接層からのクロストークとなる反射光の影響を軽減すると同時に、光ピックアップの小型化を維持する。
【解決手段】多層光ディスク501の一つの記録層に対する集光レンズ系の焦点位置の前後に、第1の分割波長板731及び第2の分割波長板741を設け、第2の分割波長板と検出器52との間に検光子730を設け、検光子と第1の分割波長板の近傍に無偏光回折格子732を設置することで、他層からの迷光の影響を低減する。
【解決手段】多層光ディスク501の一つの記録層に対する集光レンズ系の焦点位置の前後に、第1の分割波長板731及び第2の分割波長板741を設け、第2の分割波長板と検出器52との間に検光子730を設け、検光子と第1の分割波長板の近傍に無偏光回折格子732を設置することで、他層からの迷光の影響を低減する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ピックアップ装置、光ディスク装置及び情報再生方法に関し、特に光ピックアップ装置の読出し光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクの1層の記録容量は、使用する半導体レーザの波長と対物レンズの開口数(NA)に大きく依存する。半導体レーザの波長が短いほど、あるいはNAが大きいほど、記録密度を大きくでき、1層あたりの容量を増やすことができる。現在市場に流通している光ディスクドライブの主体は、波長650nm付近の赤色光とNA0.6の対物レンズを使用するDVD(Digital Versatile Disc)ドライブであるが、DVDの記録密度を上回るものとして、光波長405nm付近の青紫色の半導体レーザを光源とし、NA0.85の対物レンズを使用する光ディスクドライブが開発され、その市場に占める割合は増加しつつある。現状で達成されている記録密度をさらに増加させる方式として、使用波長の短波長化が考えられるが、この青紫色より短い紫外領域の半導体レーザの開発は困難が予想される。また、対物レンズの高NA化に関しても、空気中での対物レンズのNAの限界は1であるので、対物レンズのNAによる記録密度の向上も困難になってきている。
【0003】
このような状況において、1枚の光ディスクの容量を増加させる方式として2層化が実施されている。非特許文献1には2層の相変化ディスクの技術が紹介されている。レーザ光を2層光ディスクに照射した場合、同時に隣接層を照射することになるので層間のクロストークが問題となる。この問題を低減するために、層間隔を大きくすることが行われる。レーザ光は集光されており、目的とする層(当該層)以外はレーザ光の集光位置からずれるので、クロストークを低減することができる。
【0004】
一方、層間隔を広げると球面収差が問題になってくる。記録層は空気の屈折率と異なるポリカーボネイト中に埋め込まれており、ディスク表面からの深さにより球面収差が異なる。対物レンズはその球面収差が特定の層に対して小さくなるように設計されており、他の層にレーザ光の焦点を移すと、焦点位置の表面からの距離が異なるため、球面収差が発生する。この収差は、通常二枚のレンズで構成されるエクスパンダーレンズ光学系あるいは液晶素子を対物レンズの前に置くことで補正することが可能である。すなわち、二枚のレンズの距離あるいは液晶素子の位相を変えることで収差を補正することができる。しかし、液晶素子の補償可能範囲あるいはレンズの移動機構を小型の光ディスクドライブ装置内で実現することを考慮すると、大きい球面収差を補正することは難しい。従って、多層全体の厚さは制限されることになり、層数の多い多層光ディスクでは層間隔は狭くなってしまう。このため、層間隔の狭い多層ディスクでは層間クロストークが残ることになる。
【0005】
前述のクロストークを低減するために、特許文献1によれば、多層光ディスクからの反射光をレンズで集光したとき、目的とする層と隣接層からの反射光の集光位置が光軸上で異なることを利用する。プラス1/4波長板とマイナス1/4波長板で構成される分割波長板を2枚使用し、分割方向を揃え前後に配置する。目的の層から反射光の集光位置が両分割波長板の間に来るように配置している。一方、迷光となる目的の層以外からの反射光の集光位置は両分割波長板で挟まれた領域の外に来るようになっている。このような配置をとることにより、目的とする層からの反射光とそれ以外の層からの反射光の偏向方向を両波長板の透過後に異なるようにすることができる。目的の層からの反射光のみを取り出すためには、両波長板の後に検光子を設置すればよい。これにより他層からのクロストークを軽減することができる。
【0006】
特許文献2では、3分割された分割波長板を1枚使用し、他層からの反射光を除去する。図4に示す光ピックアップ光学系をしめす。この光学系では通常の光ピックアップ光学系と比較して分割波長板70が付加されている。半導体レーザ101から出射したレーザ光をコリメートレンズ403と三角プリズム102により円形のコリメートされた光ビームに変換する。コリメートされたビームは偏光ビームスプリッタ103を透過し、λ/4板104により円偏光に変換され、対物レンズ404により多層ディスク501(ここでは2層ディスクを図示)に絞り込まれる。読出し対象層は511であり、レーザ光の最小スポットの位置が511上にある。隣接層512からも反射光83が発生し、クロストークの原因である迷光となる。多層ディスクからの反射光は迷光も含めて、対物レンズ404を戻り、λ/4板104により、元の偏光方向に対して直交する方向の直線偏光に変換される。このため、λ/4板104を通過した反射光83は偏光性ビームスプリッタ103で反射され集光レンズ405に向かう。
【0007】
70は半分の領域が所定の光学軸方向に設定されたλ/2板、残りの半分が無偏光領域となった分割波長板、43は反射鏡である。分割波長板70を出射した読出し対象層からの反射光の偏光方向は、当該分割波長板70の異なる領域を透過するので直交方向に変換されるが、隣接層からの反射光の偏光方向は分割波長板の同じ領域を透過するので変化しない。集光レンズ405に戻った反射光のうち、前述したように隣接層からのものは偏光方向が変化していないので、偏光ビームスプリッタ103で反射される。他方、読出し対象層からの反射光は偏光方向が90度回転しているので、偏光ビームスプリッタ103を透過する。したがって、検出レンズ406を透過するのは読出し対象層からの反射光のみである。検出レンズ406を透過した光は検出器52で検出され、トラッキングエラー信号等が電気回路53で作られる。この方式はトラッキングエラー信号を得るために3ビームを使用する差動プッシュプル方式に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006-344344号
【特許文献2】特開2007-310926号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Jpn.J.Appl.Phys.Vol.42 (2003)pp.956-960
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1および2では、層間クロストーク対策を実施するために、光ディスクからの反射光を一旦分割波長板へ集光し、集光前のビームの形状に戻す操作を行うので、光路が増加と新たに付加するレンズが必要になり装置の大型化が避けられない。具体的には、図4で示すように偏光ビームスプリッタ103の下部に光路が増設され、集光レンズ405と分割波長板70、反射板43が新規に付加されている。このため、クロストーク対策の光学系の分、光ピックアップは大きくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一つの記録層に対する集光レンズ系の焦点位置の前後に、第1、第2の分割波長板を設け、第2の分割波長板と検出器との間に検光子を設けた構成とする。
【0012】
具体的には、第1の分割波長板は、前記一つの記録層からの反射光に対する焦点位置と前記一つの記録層より深い位置にある最隣接層からの反射光に対する焦点位置との間に設置され、第2の分割波長板は、前記一つの記録層からの反射光に対する焦点位置と、前記一つの記録層より浅い位置にある最隣接層からの反射光に対する焦点位置との間に設置される。そして、検出器では、検光子を透過した前記無偏光回折格子の0次透過光および回折光を検出する。
【0013】
そして、集光レンズ側の第1の分割波長板の近傍に無偏光回折格子を設置し、回折光を検出して、フォーカスサーボ信号を得る構成とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の分割波長板と第2の分割波長板、検光子の偏光作用を利用することで他層からの迷光の影響を少なくすことができ、多層ディスクの記録再生動作を行った際のクロストークも低減される。また、フォーカスサーボ信号を得るための光学素子は集光光束中に設置するので、光ピックアップを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による光ピックアップを示す図。
【図2】分割されたビームの第1の分割波長板上での照射状態を示す図。
【図3】分割されたビームの第2の分割波長板上での照射状態を示す図。
【図4】分割波長板を使用する従来の光ピックアップの構成を示す図。
【図5】本発明の作用を示す図。
【図6】第1の分割波長板と透過後の当該層からの反射光の偏光方向を示す図。
【図7】第2の分割波長板と透過後の当該層からの反射光の偏光方向を示す図。
【図8】第1の分割波長板と透過後の他層からの反射光の偏光方向を示す図。
【図9】第2の分割波長板と透過後の他層からの反射光の偏光方向を示す図。
【図10】反転させた第2の分割波長板と当該層からの反射光の偏光方向を示す図。
【図11】反転させた第2の分割波長板と他層からの反射光の偏光方向を示す図。
【図12】無偏光回折格子による回折を示す図。
【図13】無偏光回折格子の分割状態を示す図。
【図14】検出器の形状を示す図。
【図15】無偏光回折格子と、第1の分割波長板、第2の分割波長板、検光子を一体化した光学素子の断面を示す図。
【図16】信号処理回路の概略を示す図。
【図17】第2の実施例を示す図。
【図18】2枚のバイプリズムを用いた光束分割光学系を示す図。
【図19】2枚の分割回折格子を用いた光束分割光学系を示す図。
【図20】回折格子の断面を示す図。
【図21】回折格子の断面を示す図。
【図22】2枚の平行平板を用いた光束分割光学系を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明が適用される光ピックアップ装置ないし光ディスクドライブ装置について図を用いて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は実施例1の全体の光学系の概略を示す。半導体レーザ光源101からのレーザ光をコリメートレンズ403により円形のコリメートされた光ビームに変換する。コリメートされたビームは偏光性ビームスプリッタ103とλ/4板104を透過し、円偏光に変換される。円偏光ビームは対物レンズ404により多層ディスク501に絞り込まれる。多層ディスクの中の対象層は511である。多層ディスクからの反射光は対物レンズ404に戻り、λ/4板104を通過後、元の偏光方向に対して直交する方向の直線偏光に変換される。偏光性ビームスプリッタ103はこの偏光方向の光を反射するので、ビームは反射されて、集光レンズ402に入射する。集光レンズ402からは収束光が出射するが、最小スポットが形成される前に分割無偏光回折格子732、第1の分割波長板731が設置される。最小スポットが形成された後には第2の分割波長板741と検光子730が置かれる。検光子730を透過した光は検出器52で検出され、その電気信号をもとに電子回路53でデータ信号、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号が生成される。
【0018】
他層からの迷光除去には第1および第2の分割波長板731、741と検光子730が関与していており、集光ビームの対称性を利用している。図5では第1および第2の分割波長板731、741に多層ディスクからの反射光が入射する状態を示しており、迷光除去の作用について分割波長板にλ/2板を用いた例により説明する。集光レンズ402に入射する反射光の偏光方向は水平方向(横方向)とする。光線811(実線)は当該層からの反射光であり、集光レンズ402により集光されている。第1および第2の分割波長板731、741には光軸に対して同じ方向に2分割された波長板が使用でき、分割波長板731と741は集光点の前後に設置されている。第1の分割波長板731の形状を図6に示す。第1の分割波長板731はλ/2板711と偏光状態を変えない無偏光部分712から構成される。ここで、ビームスポットが第1の分割波長板の分割線(領域711と712の境界線)を跨いで領域711,712の両方を透過するように、光学系の光軸は調整される。以降で述べる第2の分割波長板741に対しても同様である。第1、第2の分割波長板の分割線の方向は、ほぼ一致している。
【0019】
集光レンズ402の左側半分を照射した光は第1の分割波長板731の無偏光領域712を半円形8112の形状で照射するが、透過後の偏光方向は変化しない。図6の無偏光領域の下方に示した61の矢印は偏光方向を表し、矢印61の偏光方向は集光レンズ402への入射光の偏光方向と同等の方向を表している。集光レンズ402の右側半分を照射した光はλ/2板711を半円形8111のビーム形状で照射する。λ/2板の光学軸は図6の紙面上で61の横方向の偏光を縦方向に変えるように設定されているので、半円形8111のビーム形状の光の偏光方向は偏光板711の透過後、矢印62で示した方向に変換される。第1の分割波長板731を透過した当該層からの反射光は最小スポット面521を通過した後、図7の第2の分割波長板741を照射する。図6での半円形ビーム8111は焦点を通過するので、第2の分割波長板741上ではλ/2板722上で8113の半円形状のビームになり、左側を照射する。一方、図6の8112で示された半円形ビームは図7の第2の分割波長板上では右側を照射し、8114の半円形のビームになる。721は無偏光領域とするので、8114で表されるビームが721の領域を透過した後も、偏光方向は61で表される偏光方向であり、変化しない。まとめると、当該層からの反射光の偏光方向は第1および第2の分割波長板を透過した後も変化しない。
【0020】
次に隣接層からの反射光の偏光方向の変化について述べる。図5における光線814(点線)は当該層より深く層間隔が最も狭い隣接層からの反射光であり、当該層からの反射光の最小スポット位置および第1の分割波長板731より集光レンズ402に近い54の位置で最小スポットを形成する。さらに深い層からの反射光は54より集光レンズ402にさらに近い位置に最小スポットを形成し、第1の分割波長板731に最小スポット位置が近づくことはない。また、当該層より浅い層からの反射光の最小スポット位置は第2の分割波長板741の位置を越えた位置にある。これらのことより、当該層以外の層からの反射光の最小スポット位置は第1の分割波長板731と第2の分割波長板741の間に入らないようになっている。このため、第1の分割波長板と第2の分割波長板の間で光線が光軸を横切らない。すなわち、第1の分割波長板の左右それぞれの領域に入射したビームはそのまま第2の分割波長板のそれぞれの左右の領域に入射することになる。説明は当該層より深く層間隔が最も狭い隣接層からの反射光を用いて説明するが、他の層からの反射光も第1の分割波長板731と第2の複合波長板741から同様な作用を受ける。図8の731および図9の741は第1の分割波長板および第2の分割波長板であり、それぞれ図6および図7に示したものと同一のものである。第1の分割波長板731の右の領域はλ/2板711であり、半円領域8141では光の偏光方向は62の偏光方向へ回転する。この部分の光は図9の第2の分割波長板では8144の半円形の照射領域になるが、この領域721は無偏光領域となっているので、偏光方向は変化しない。したがって、第2の分割波長板透過後の偏光方向は62で示す縦方向になる。一方、図8の第1の分割波長板731の左側に入射する8142のビームの偏光方向は712が無偏光領域であるため横方向の入射光の偏光状態61が継続する。このビームは図9の第2の分割波長板741の722のλ/2板に8143の半円形の状態で入射し、偏光方向が62で示す縦方向になる。まとめると、当該層以外からの反射光の偏光方向は第1および第2の分割波長板を透過した後、90度回転し縦方向となる。
【0021】
第2の分割波長板741のあとには、検光子730が設置されている。この検光子の役目は当該層からの反射光のみを検出器52に透過させることである。当該層からの反射光の偏光方向は横方向であり、当該層以外からの反射光の偏光方向は縦方向であるので、横方向の偏光を透過させるように検光子を設定すれば、当該層からの反射光だけを検出器で検出できるようになり、他層からの反射光の影響を低減させることができる。
【0022】
第2の分割波長板を左右反転させた場合は、当該層からの反射光の偏光方向は縦方向になり、他層からの反射光は横方向になる。したがって、検光子は縦方向の偏光が通過できるように設定すれば、当該層からの反射光だけを光検出器に導くことができる。当該層からの反射光の第1の分割波長板731を透過後の偏光方向は図6に既に表されている。この偏光方向が図10の第2の分割波長板741に入射する。図6の8111で表されるビームは図10では8115のビームになり偏光方向は縦方向の状態で変化しない。また、図6の8112で表されるビームは図10の8116のビームになり偏光方向が縦方向に変化する。したがって、当該層からの反射光の偏光方向は縦方向になる。当該層以外からの反射光は、第1の分割波長板からの出射光の偏光方向は図8に示したとおりであり、この偏光方向の光が図11で示す第2の分割波長板に入射する。図8の8142のビームは図11の8146のビームになり、図8の8141のビームは図10の8145のビームになる。8146のビームは偏光方向が変わらず横方向であり、8145のビームは偏光方向が90度回転し、横方向になる。したがって、全体として当該層以外からの反射光の偏光方向は横方向になる。これらより、図の検光子730として縦の偏光方向を透過させるものを使用すると、当該層からの反射光だけを検出器で検出できるようになる。
【0023】
表1に可能な第1の分割波長板と第2の分割波長板、検光子の組み合わせを示す。
【0024】
【表1】
【0025】
合わせて、他層からと当該層からの反射光の第2の分割波長板透過後の偏光方向を示す。1)と2)はλ/2板を使用する方法であり、すでに作用を説明した。3)と4)はλ/4板を使用する方法であり、当該層と他層の通過領域の違いにより両者の偏光方向を異ならせることができる。+λ/4板および−λ/4板は横方向の直線偏光が透過後、それぞれ右円偏光、左円偏光に変換されるものとする。3)において、当該層からの反射光は第1の分割波長板の右の+λ/4板を透過した後は右円偏光となり、次に第2の分割波長板の左側の−λ/4板を通過するので偏光状態は元に戻り、横方向の直線偏光になる。第1の分割波長板の左を通過した光の偏光状態は左円偏光となり、次に第2の分割波長板の右の+λ/4板を通過して、もとの横方向の直線偏光に戻る。まとめると、当該層からの反射光の偏光方向は、第2の分割波長板を通過後、横方向の直線偏光となる。他層からの反射光は第1の分割波長板の右の+λ/4板を透過した後は右円偏光となり、次に第2の分割波長板の右側の+λ/4板を通過して、縦方向の直線偏光となる。また、第1の分割波長板の左を通過した光の偏光状態は左円偏光となり、次に第2の分割波長板の左の−λ/4板を通過するので、縦方向の直線偏光になる。したがって、横方向の直線偏光を透過させる検光子を設置することにより、当該層からの反射光だけを検出器に透過させることが可能となる。4)においては、第1の分割波長板と第2の分割波長板の左右のλ/4板の配置は反転しており、第2の分割波長板を透過した後、他層からの反射光の偏光状態は横方向の直線偏光になり、当該層からの反射光の偏光状態は縦方向の直線偏光になる。この場合の検光子は縦方向の直線偏光を透過させるように設定され、当該層からの反射光のみが検出器に到達する。
【0026】
第1の分割波長板の左右の波長板は互いに直交状態にある偏光状態に直線偏光状態の光を変換する役割をもつ。第2の分割波長板は第1の波長板と同じ作用のものでも、反転したものでも使用可能である。他層からの反射光の偏光方向と当該層からの反射光の偏光方向は互いに直交するので、検光子を当該層からの反射光の偏光方向に合わせることで、他層からの層間クロストークを除去できるようになる。上記の説明では集光レンズ402への入射光の偏光状態を横方向の直線偏光としたが、縦方向とした場合は表1の縦横が入れ替わるだけで、クロストーク除去の効果は変らない。また、1)から4)のすべてにおいて第1の分割波長板と第2の分割波長板の左右を入れ替えても、当該層及び他層からの反射光の第2の分割波長板透過後の偏光状態に変化はなく、効果が変らないことは云うまでもない。
【0027】
以上まとめると、第1の分割波長板と第2の分割波長板を使用することで、当該層からの反射光に対して他層からの反射光の偏光方向を直交させることができる。したがって、検光子により他層からの反射光を遮断しかつ当該層からの反射光を透過させることにより、他層からのクロストークを低減することができる。なお、本説明ではディスクからの反射光の偏光は直線偏光としたが、円偏光でも迷光除去は可能である。だだし、検光子として円偏光に対して選択性を有するものが必要となる。
【0028】
次に、フォーカスエラー信号を得るための方法について説明する。図12に示すように無偏光分割回折格子732を分割波長板731の近傍に設置し、無作用にて透過する0次回折光816とプラス1次回折光817、818を発生させる。ここで、近傍に設置とは、第1の分割波長板と無偏光分割回折格子732の距離を0.3mm程度以内とすることを意味する。なお、図12では、無偏光分割回折格子732を分割波長板731と集光レンズ402との間に設置したが、分割波長板731と最小スポット面521との間に設置しても良い。但し、無偏光分割回折格子732を分割波長板731と集光レンズ402との間に設置した方が、素子の製造上、好ましい。
図13に無偏光分割回折格子732の分割状態を示す。内部に示したボール状の図形は当該層からの反射光の回折格子上での照射状態を示しており、回折格子の分割位置と光ビームとの位置関係を表す。ボールの縫い目に似た部分は、ディスクに案内溝がある場合の回折光の状態を示している。回折格子は全体で3分割されており、回折格子733と734の部分のプラス1次光は図12の818の光線として0次光816と重ならないところに出射する。同様に、回折格子735の部分のプラス1次光は図12の817のように、他の816および818と重ならないところに出射する。また、プラス1次回折光817、818の回折方向は分割波長板の分割線の方向とする。これにより、当該層からの反射光のプラス1次光のみが検出器到達するので、フォーカスエラー信号での他層の迷光の除去が可能となる。
【0029】
図14に光検出器52の形状を示す。光検出器522は回折格子733および734のプラス1次光818を検出し、光検出器523は回折格子735のプラス1次光817を検出する。それぞれの検出器上には検出されるビーム形状が示されている。光検出器524は0次回折光816を検出し、内部が横に2分割、縦方向に4分割、合計で8分割されている。それぞれの検出器に示されたアルファベット記号は出力信号を表すものとする。データ信号RFはRF=A+B+C+D+E+F+G+Hと表され、検出器524への入射光すべてを合算したものとなる。フォーカスエラー信号FEはFE=(B+C+F+G)−(A+D+E+H)−m(I−J)のように表される。mは定数であり、光量バランスにより決められる。
【0030】
次にトラッキング信号の生成について説明する。案内溝を有する多層ディスクを読み書きする場合はプッシュプル信号を利用する。このときのトラッキングエラー信号をTEとすると、TE={(B+C)−(G+F)}−k{(A+D)−(E+H)}と表される。この方法は補償型プッシュプル法といわれるものであり、対物レンズをトラッキングのために移動させても、信号にオフセットが発生しない。kは光量比を考慮して決める定数である。また、案内溝のない場合は、DPD法(Differential Push-Pull method)を使用することになる。この時のトラッキングエラー信号DPDはDPD=phase{(A+B), (H+G)}−phase{(C+D), (E+F)}と表される。phase{(A+B), (H+G)}はA+Bの信号とH+Gの信号の位相差を表しており、phase{(C+D), (E+F)}も同様に信号の位相差を表している。
【0031】
上記のフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号を用いて、対物レンズからの出射光の焦点位置をコントロールする。これらの信号は電気回路53で作られ、対物レンズ404の位置制御ためのアクチュエータを駆動する。
【0032】
なお、ここでは、522、524、523それぞれの大きさは約100X100μm2とし、全体の大きさ52は約300X100μm2とした。これは、従来の3ビームタイプの大きさとほぼ同じである。
【0033】
図12に示した無偏光回折格子732および、第1の分割波長板731、第2の分割波長板741、検光子730は個別の素子となっているが、図15に示すように4個の光学部品を一体化した素子780にすることが液晶材料等を使用することで可能であり、これにより調整が容易になる。図15は光軸に沿った方向の素子断面の略図であり、下方からディスクの反射光が照射される。751が無偏光回折格子、752が第1の分割波長板であり、753が第2の分割波長板、754が検光子である。これらの素子の間には使用レーザ光を透過するガラス部材791、792、793で保持されている。分割波長板の分割形状は図6および図7で示した2分割したものを使用すればよい。
【0034】
図16に本実施例の光ディスクドライブ装置の構成例を示す。211から214までの回路はデータを多層光ディスク501に記録するためのものである。211は誤り訂正用符号化回路であり、データに誤り訂正符号が付加される。212は記録符号化回路であり、1−7PP方式でデータを変調する。213は記録補償回路であり、マーク長に適した書込みのためのパルスを発生する。発生したパルス列に基づき、半導体レーザ駆動回路214により、光ピックアップ60内の半導体レーザを駆動し、対物レンズから出射したレーザ光80を変調する。モータ502によって回転駆動される光ディスク501上には相変化膜が形成されており、レーザ光で熱せられ、急冷されるとアモルファス状態になり、徐冷されると結晶状態になる。これらの二つの状態は反射率が異なり、マークを形成することができる。書き込み状態では、レーザ光のコヒーレンシーを低下させる高周波重畳を行わないため、隣接層からの反射光と当該層からの反射光は干渉しやすい状態になっている。このため、他層からの迷光を除去する対策を行わない場合は、トラッキングがはずれたり、隣接トラックのデータを消したりする不具合が生じる。
【0035】
221から226の回路はデータの読み出しのためのものである。221はイコライザーであり、最短マーク長付近の信号雑音比を改善する。この信号は222のPLL回路に入力され、クロックが抽出される。また、イコライザーで処理されたデータ信号は抽出されたクロックのタイミングで223のA−D変換器でデジタル化される。224はPRML(Partial Response Maximum Likelihood)信号処理回路であり、ビタビ復号を行う。記録復号化回路225では1−7PP方式の変調規則に基づき復号化し、誤り訂正回路226でデータを復元する。
【実施例2】
【0036】
図17に第2の実施例の光学系を示す。本光学系では、実施例1の光学系(図1)において、光束分割素子107が追加されている。この素子は当該層からの反射光を復路において2分割し、光軸上での光強度をなくする特性を有する。分割の方向は分割波長板の分割方向とほぼ同じものとする。この素子により、平行光線になった当該層からの反射光は、光軸に平行でありかつ光軸を通らない2本の平行光線に変換される。2本の平行光線は集光レンズ402で集光され、無偏光回折格子732、第1および第2の分割波長板731、741、検光子730を透過したのち、検出器52で検出される。
【0037】
復路の反射光を分割するための光束分割素子107について説明する。図18は、バイプリズムを二つ使用してビームを分割する光束分割素子の例を示す図である。第1のバイプリズム408に平行光線が入射しており、光軸の垂線を分割線として光軸に対して同角度で対称な進行方向の平行光線が作られる。第2のバイプリズム409は、光軸に対して角度を持った平行光線の進行方向を光軸に対して平行に変える。このようにバイプリズムを二つ使用することにより、通常のビームを分割平行光線に変換することができる。
【0038】
図19は、透過グレーティング41と42を用いて平行分割する光束分割光学系の例を示す図である。グレーティング41及び42はそれぞれグレーティングによる回折光の方向が異なる二つの領域から構成されているが、二つの領域のグレーティングは分割線と同じ溝方向と同じ溝ピッチを有し、なおかつ0次光の発生しない溝深さ1/(n−1)の鋸歯状のグレーティングとなっている。nはグレーティングの屈折率であり、空気中にあるものとした。溝深さはこの整数倍のものでも0次光を発生しない。図20にはグレーティング41の鋸歯の形状を示しており、410と411の領域での鋸歯は互いに反転した形状をしているので、下方からの入射光は光軸に対称な方向に回折される。図21にグレーティング42の鋸歯の形状を示す。421での鋸歯の形状と410での形状、及び420での鋸歯の形状と411での形状はそれぞれ同じであるので、グレーティング41を透過して光軸に対して角度を持った二つのビームはグレーティング42を透過した後、間隔の空いた光軸に対して平行な光になる。
【0039】
図22は、平行平板を使用した光束分割光学系の例を示す図である。分割平板素子44は、2枚の平行平板441と442で構成され、それぞれの平行平板は光軸に対して同じ角度で傾いており、また光軸に対して対称な位置にある。二つの平行平板の接合部がなす稜線は光軸に垂直に交わるものとし、平行平板の接合部がなす稜線あるいは谷線はラジアル方向となっている。紙面上方からの入射平行光は谷線の位置で二つに分けられ、それぞれ別の平行平板に入射する。平行平板は透明ガラスあるいはプラスチックとすると、屈折率が空気より大きいので、入射面で光線が谷線と光軸を含む平面から離れる方向に向かい、出射面で光軸と平行なビームとなる。
【0040】
第1および第2の分割波長板731、741上での当該層からの反射光の照射状態を図2および図3に示す。両図において分割位置を離れた半月状態で波長板を照射することになる。光には必ず回折が伴うので、半月状態の周辺に光が滲みだしている。この滲みだしが、光束分割素子107を使用しない場合、RF信号の光量減少につながることがある。RF信号の光量が減少すると、RF信号の相対的な雑音量が増加し、データの読み間違いにつながる。たとえば、図7に示すように左右の偏光状態が異なる円形状態で第2の分割波長板を照射したとき、左右の光が周辺に滲みだすことになる。たとえば、8113の当該層の光が右の領域721に滲みだすと偏光方向が逆になり、検出器に到達できなくなる。同様に、ビーム8114が左の領域722に滲みだすと、検出器に到達できなくなる。このため、RF信号の光量が低下する可能性がある。しかし、光束分割素子107を使用することにより、図3の示すようにビームが中心の分割線より離れるので、隣の領域に回折で入り込む光量が低下するので、RF信号の光量の減少を避けることが可能になる。
【0041】
他層からの迷光も、当該層のように第1と第2の分割波長板の間でのビームの反転はないが、半月状で第2の分割波長板を照射する。この場合も回折によりビームの周辺近傍に光が滲みだす。光束分割素子を使用しない場合は、第2の複合波長板のそれぞれの領域に滲みだした光が反対の領域に入り、迷光となる。しかし、光束分割素子を使用することにより、それぞれの半月状の照射領域が第2の分割波長板の中心の分割線から離れるので、回折による対面する領域への滲みだしが減少し、結果として検出器に入射する迷光がさらに減少するようにすることができる。
【0042】
以上のように、本願によれば、データ信号自体に混入する他層からの反射光によるクロストークを低減できるので、データ信号の品質を向上することができる。
【0043】
さらに、DPP法によるトラッキング信号の変動およびフォーカス信号の変位を少なくすることが可能となる。多層光ディスクを読み出すときあるいは書き込むとき、光ディスクに対してレーザ光の焦点位置やトラッキング位置の制御を誤差信号により正確に行う必要があるが、隣接層からの反射光が迷光として検出器に入射すると、トラッキング位置および焦点位置に狂いが生じ、データ信号を精度よく読み出したり、あるいは書き込み位置を精度よく定めたりすることができなくなる。本発明では、これらの不具合をなくすることができる。
【符号の説明】
【0044】
52:検出器、53:信号処理回路、101:半導体レーザ、103:偏光性ビームスプリッタ、104:λ/4波長板、107:光束分割素子、402:集光レンズ、404:対物レンズ、501:多層ディスク、730:検光子、731:第1の分割波長板、732:無偏光回折格子、741:第2の分割波長板
【技術分野】
【0001】
本発明は光ピックアップ装置、光ディスク装置及び情報再生方法に関し、特に光ピックアップ装置の読出し光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクの1層の記録容量は、使用する半導体レーザの波長と対物レンズの開口数(NA)に大きく依存する。半導体レーザの波長が短いほど、あるいはNAが大きいほど、記録密度を大きくでき、1層あたりの容量を増やすことができる。現在市場に流通している光ディスクドライブの主体は、波長650nm付近の赤色光とNA0.6の対物レンズを使用するDVD(Digital Versatile Disc)ドライブであるが、DVDの記録密度を上回るものとして、光波長405nm付近の青紫色の半導体レーザを光源とし、NA0.85の対物レンズを使用する光ディスクドライブが開発され、その市場に占める割合は増加しつつある。現状で達成されている記録密度をさらに増加させる方式として、使用波長の短波長化が考えられるが、この青紫色より短い紫外領域の半導体レーザの開発は困難が予想される。また、対物レンズの高NA化に関しても、空気中での対物レンズのNAの限界は1であるので、対物レンズのNAによる記録密度の向上も困難になってきている。
【0003】
このような状況において、1枚の光ディスクの容量を増加させる方式として2層化が実施されている。非特許文献1には2層の相変化ディスクの技術が紹介されている。レーザ光を2層光ディスクに照射した場合、同時に隣接層を照射することになるので層間のクロストークが問題となる。この問題を低減するために、層間隔を大きくすることが行われる。レーザ光は集光されており、目的とする層(当該層)以外はレーザ光の集光位置からずれるので、クロストークを低減することができる。
【0004】
一方、層間隔を広げると球面収差が問題になってくる。記録層は空気の屈折率と異なるポリカーボネイト中に埋め込まれており、ディスク表面からの深さにより球面収差が異なる。対物レンズはその球面収差が特定の層に対して小さくなるように設計されており、他の層にレーザ光の焦点を移すと、焦点位置の表面からの距離が異なるため、球面収差が発生する。この収差は、通常二枚のレンズで構成されるエクスパンダーレンズ光学系あるいは液晶素子を対物レンズの前に置くことで補正することが可能である。すなわち、二枚のレンズの距離あるいは液晶素子の位相を変えることで収差を補正することができる。しかし、液晶素子の補償可能範囲あるいはレンズの移動機構を小型の光ディスクドライブ装置内で実現することを考慮すると、大きい球面収差を補正することは難しい。従って、多層全体の厚さは制限されることになり、層数の多い多層光ディスクでは層間隔は狭くなってしまう。このため、層間隔の狭い多層ディスクでは層間クロストークが残ることになる。
【0005】
前述のクロストークを低減するために、特許文献1によれば、多層光ディスクからの反射光をレンズで集光したとき、目的とする層と隣接層からの反射光の集光位置が光軸上で異なることを利用する。プラス1/4波長板とマイナス1/4波長板で構成される分割波長板を2枚使用し、分割方向を揃え前後に配置する。目的の層から反射光の集光位置が両分割波長板の間に来るように配置している。一方、迷光となる目的の層以外からの反射光の集光位置は両分割波長板で挟まれた領域の外に来るようになっている。このような配置をとることにより、目的とする層からの反射光とそれ以外の層からの反射光の偏向方向を両波長板の透過後に異なるようにすることができる。目的の層からの反射光のみを取り出すためには、両波長板の後に検光子を設置すればよい。これにより他層からのクロストークを軽減することができる。
【0006】
特許文献2では、3分割された分割波長板を1枚使用し、他層からの反射光を除去する。図4に示す光ピックアップ光学系をしめす。この光学系では通常の光ピックアップ光学系と比較して分割波長板70が付加されている。半導体レーザ101から出射したレーザ光をコリメートレンズ403と三角プリズム102により円形のコリメートされた光ビームに変換する。コリメートされたビームは偏光ビームスプリッタ103を透過し、λ/4板104により円偏光に変換され、対物レンズ404により多層ディスク501(ここでは2層ディスクを図示)に絞り込まれる。読出し対象層は511であり、レーザ光の最小スポットの位置が511上にある。隣接層512からも反射光83が発生し、クロストークの原因である迷光となる。多層ディスクからの反射光は迷光も含めて、対物レンズ404を戻り、λ/4板104により、元の偏光方向に対して直交する方向の直線偏光に変換される。このため、λ/4板104を通過した反射光83は偏光性ビームスプリッタ103で反射され集光レンズ405に向かう。
【0007】
70は半分の領域が所定の光学軸方向に設定されたλ/2板、残りの半分が無偏光領域となった分割波長板、43は反射鏡である。分割波長板70を出射した読出し対象層からの反射光の偏光方向は、当該分割波長板70の異なる領域を透過するので直交方向に変換されるが、隣接層からの反射光の偏光方向は分割波長板の同じ領域を透過するので変化しない。集光レンズ405に戻った反射光のうち、前述したように隣接層からのものは偏光方向が変化していないので、偏光ビームスプリッタ103で反射される。他方、読出し対象層からの反射光は偏光方向が90度回転しているので、偏光ビームスプリッタ103を透過する。したがって、検出レンズ406を透過するのは読出し対象層からの反射光のみである。検出レンズ406を透過した光は検出器52で検出され、トラッキングエラー信号等が電気回路53で作られる。この方式はトラッキングエラー信号を得るために3ビームを使用する差動プッシュプル方式に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006-344344号
【特許文献2】特開2007-310926号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Jpn.J.Appl.Phys.Vol.42 (2003)pp.956-960
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1および2では、層間クロストーク対策を実施するために、光ディスクからの反射光を一旦分割波長板へ集光し、集光前のビームの形状に戻す操作を行うので、光路が増加と新たに付加するレンズが必要になり装置の大型化が避けられない。具体的には、図4で示すように偏光ビームスプリッタ103の下部に光路が増設され、集光レンズ405と分割波長板70、反射板43が新規に付加されている。このため、クロストーク対策の光学系の分、光ピックアップは大きくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一つの記録層に対する集光レンズ系の焦点位置の前後に、第1、第2の分割波長板を設け、第2の分割波長板と検出器との間に検光子を設けた構成とする。
【0012】
具体的には、第1の分割波長板は、前記一つの記録層からの反射光に対する焦点位置と前記一つの記録層より深い位置にある最隣接層からの反射光に対する焦点位置との間に設置され、第2の分割波長板は、前記一つの記録層からの反射光に対する焦点位置と、前記一つの記録層より浅い位置にある最隣接層からの反射光に対する焦点位置との間に設置される。そして、検出器では、検光子を透過した前記無偏光回折格子の0次透過光および回折光を検出する。
【0013】
そして、集光レンズ側の第1の分割波長板の近傍に無偏光回折格子を設置し、回折光を検出して、フォーカスサーボ信号を得る構成とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の分割波長板と第2の分割波長板、検光子の偏光作用を利用することで他層からの迷光の影響を少なくすことができ、多層ディスクの記録再生動作を行った際のクロストークも低減される。また、フォーカスサーボ信号を得るための光学素子は集光光束中に設置するので、光ピックアップを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による光ピックアップを示す図。
【図2】分割されたビームの第1の分割波長板上での照射状態を示す図。
【図3】分割されたビームの第2の分割波長板上での照射状態を示す図。
【図4】分割波長板を使用する従来の光ピックアップの構成を示す図。
【図5】本発明の作用を示す図。
【図6】第1の分割波長板と透過後の当該層からの反射光の偏光方向を示す図。
【図7】第2の分割波長板と透過後の当該層からの反射光の偏光方向を示す図。
【図8】第1の分割波長板と透過後の他層からの反射光の偏光方向を示す図。
【図9】第2の分割波長板と透過後の他層からの反射光の偏光方向を示す図。
【図10】反転させた第2の分割波長板と当該層からの反射光の偏光方向を示す図。
【図11】反転させた第2の分割波長板と他層からの反射光の偏光方向を示す図。
【図12】無偏光回折格子による回折を示す図。
【図13】無偏光回折格子の分割状態を示す図。
【図14】検出器の形状を示す図。
【図15】無偏光回折格子と、第1の分割波長板、第2の分割波長板、検光子を一体化した光学素子の断面を示す図。
【図16】信号処理回路の概略を示す図。
【図17】第2の実施例を示す図。
【図18】2枚のバイプリズムを用いた光束分割光学系を示す図。
【図19】2枚の分割回折格子を用いた光束分割光学系を示す図。
【図20】回折格子の断面を示す図。
【図21】回折格子の断面を示す図。
【図22】2枚の平行平板を用いた光束分割光学系を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明が適用される光ピックアップ装置ないし光ディスクドライブ装置について図を用いて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は実施例1の全体の光学系の概略を示す。半導体レーザ光源101からのレーザ光をコリメートレンズ403により円形のコリメートされた光ビームに変換する。コリメートされたビームは偏光性ビームスプリッタ103とλ/4板104を透過し、円偏光に変換される。円偏光ビームは対物レンズ404により多層ディスク501に絞り込まれる。多層ディスクの中の対象層は511である。多層ディスクからの反射光は対物レンズ404に戻り、λ/4板104を通過後、元の偏光方向に対して直交する方向の直線偏光に変換される。偏光性ビームスプリッタ103はこの偏光方向の光を反射するので、ビームは反射されて、集光レンズ402に入射する。集光レンズ402からは収束光が出射するが、最小スポットが形成される前に分割無偏光回折格子732、第1の分割波長板731が設置される。最小スポットが形成された後には第2の分割波長板741と検光子730が置かれる。検光子730を透過した光は検出器52で検出され、その電気信号をもとに電子回路53でデータ信号、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号が生成される。
【0018】
他層からの迷光除去には第1および第2の分割波長板731、741と検光子730が関与していており、集光ビームの対称性を利用している。図5では第1および第2の分割波長板731、741に多層ディスクからの反射光が入射する状態を示しており、迷光除去の作用について分割波長板にλ/2板を用いた例により説明する。集光レンズ402に入射する反射光の偏光方向は水平方向(横方向)とする。光線811(実線)は当該層からの反射光であり、集光レンズ402により集光されている。第1および第2の分割波長板731、741には光軸に対して同じ方向に2分割された波長板が使用でき、分割波長板731と741は集光点の前後に設置されている。第1の分割波長板731の形状を図6に示す。第1の分割波長板731はλ/2板711と偏光状態を変えない無偏光部分712から構成される。ここで、ビームスポットが第1の分割波長板の分割線(領域711と712の境界線)を跨いで領域711,712の両方を透過するように、光学系の光軸は調整される。以降で述べる第2の分割波長板741に対しても同様である。第1、第2の分割波長板の分割線の方向は、ほぼ一致している。
【0019】
集光レンズ402の左側半分を照射した光は第1の分割波長板731の無偏光領域712を半円形8112の形状で照射するが、透過後の偏光方向は変化しない。図6の無偏光領域の下方に示した61の矢印は偏光方向を表し、矢印61の偏光方向は集光レンズ402への入射光の偏光方向と同等の方向を表している。集光レンズ402の右側半分を照射した光はλ/2板711を半円形8111のビーム形状で照射する。λ/2板の光学軸は図6の紙面上で61の横方向の偏光を縦方向に変えるように設定されているので、半円形8111のビーム形状の光の偏光方向は偏光板711の透過後、矢印62で示した方向に変換される。第1の分割波長板731を透過した当該層からの反射光は最小スポット面521を通過した後、図7の第2の分割波長板741を照射する。図6での半円形ビーム8111は焦点を通過するので、第2の分割波長板741上ではλ/2板722上で8113の半円形状のビームになり、左側を照射する。一方、図6の8112で示された半円形ビームは図7の第2の分割波長板上では右側を照射し、8114の半円形のビームになる。721は無偏光領域とするので、8114で表されるビームが721の領域を透過した後も、偏光方向は61で表される偏光方向であり、変化しない。まとめると、当該層からの反射光の偏光方向は第1および第2の分割波長板を透過した後も変化しない。
【0020】
次に隣接層からの反射光の偏光方向の変化について述べる。図5における光線814(点線)は当該層より深く層間隔が最も狭い隣接層からの反射光であり、当該層からの反射光の最小スポット位置および第1の分割波長板731より集光レンズ402に近い54の位置で最小スポットを形成する。さらに深い層からの反射光は54より集光レンズ402にさらに近い位置に最小スポットを形成し、第1の分割波長板731に最小スポット位置が近づくことはない。また、当該層より浅い層からの反射光の最小スポット位置は第2の分割波長板741の位置を越えた位置にある。これらのことより、当該層以外の層からの反射光の最小スポット位置は第1の分割波長板731と第2の分割波長板741の間に入らないようになっている。このため、第1の分割波長板と第2の分割波長板の間で光線が光軸を横切らない。すなわち、第1の分割波長板の左右それぞれの領域に入射したビームはそのまま第2の分割波長板のそれぞれの左右の領域に入射することになる。説明は当該層より深く層間隔が最も狭い隣接層からの反射光を用いて説明するが、他の層からの反射光も第1の分割波長板731と第2の複合波長板741から同様な作用を受ける。図8の731および図9の741は第1の分割波長板および第2の分割波長板であり、それぞれ図6および図7に示したものと同一のものである。第1の分割波長板731の右の領域はλ/2板711であり、半円領域8141では光の偏光方向は62の偏光方向へ回転する。この部分の光は図9の第2の分割波長板では8144の半円形の照射領域になるが、この領域721は無偏光領域となっているので、偏光方向は変化しない。したがって、第2の分割波長板透過後の偏光方向は62で示す縦方向になる。一方、図8の第1の分割波長板731の左側に入射する8142のビームの偏光方向は712が無偏光領域であるため横方向の入射光の偏光状態61が継続する。このビームは図9の第2の分割波長板741の722のλ/2板に8143の半円形の状態で入射し、偏光方向が62で示す縦方向になる。まとめると、当該層以外からの反射光の偏光方向は第1および第2の分割波長板を透過した後、90度回転し縦方向となる。
【0021】
第2の分割波長板741のあとには、検光子730が設置されている。この検光子の役目は当該層からの反射光のみを検出器52に透過させることである。当該層からの反射光の偏光方向は横方向であり、当該層以外からの反射光の偏光方向は縦方向であるので、横方向の偏光を透過させるように検光子を設定すれば、当該層からの反射光だけを検出器で検出できるようになり、他層からの反射光の影響を低減させることができる。
【0022】
第2の分割波長板を左右反転させた場合は、当該層からの反射光の偏光方向は縦方向になり、他層からの反射光は横方向になる。したがって、検光子は縦方向の偏光が通過できるように設定すれば、当該層からの反射光だけを光検出器に導くことができる。当該層からの反射光の第1の分割波長板731を透過後の偏光方向は図6に既に表されている。この偏光方向が図10の第2の分割波長板741に入射する。図6の8111で表されるビームは図10では8115のビームになり偏光方向は縦方向の状態で変化しない。また、図6の8112で表されるビームは図10の8116のビームになり偏光方向が縦方向に変化する。したがって、当該層からの反射光の偏光方向は縦方向になる。当該層以外からの反射光は、第1の分割波長板からの出射光の偏光方向は図8に示したとおりであり、この偏光方向の光が図11で示す第2の分割波長板に入射する。図8の8142のビームは図11の8146のビームになり、図8の8141のビームは図10の8145のビームになる。8146のビームは偏光方向が変わらず横方向であり、8145のビームは偏光方向が90度回転し、横方向になる。したがって、全体として当該層以外からの反射光の偏光方向は横方向になる。これらより、図の検光子730として縦の偏光方向を透過させるものを使用すると、当該層からの反射光だけを検出器で検出できるようになる。
【0023】
表1に可能な第1の分割波長板と第2の分割波長板、検光子の組み合わせを示す。
【0024】
【表1】
【0025】
合わせて、他層からと当該層からの反射光の第2の分割波長板透過後の偏光方向を示す。1)と2)はλ/2板を使用する方法であり、すでに作用を説明した。3)と4)はλ/4板を使用する方法であり、当該層と他層の通過領域の違いにより両者の偏光方向を異ならせることができる。+λ/4板および−λ/4板は横方向の直線偏光が透過後、それぞれ右円偏光、左円偏光に変換されるものとする。3)において、当該層からの反射光は第1の分割波長板の右の+λ/4板を透過した後は右円偏光となり、次に第2の分割波長板の左側の−λ/4板を通過するので偏光状態は元に戻り、横方向の直線偏光になる。第1の分割波長板の左を通過した光の偏光状態は左円偏光となり、次に第2の分割波長板の右の+λ/4板を通過して、もとの横方向の直線偏光に戻る。まとめると、当該層からの反射光の偏光方向は、第2の分割波長板を通過後、横方向の直線偏光となる。他層からの反射光は第1の分割波長板の右の+λ/4板を透過した後は右円偏光となり、次に第2の分割波長板の右側の+λ/4板を通過して、縦方向の直線偏光となる。また、第1の分割波長板の左を通過した光の偏光状態は左円偏光となり、次に第2の分割波長板の左の−λ/4板を通過するので、縦方向の直線偏光になる。したがって、横方向の直線偏光を透過させる検光子を設置することにより、当該層からの反射光だけを検出器に透過させることが可能となる。4)においては、第1の分割波長板と第2の分割波長板の左右のλ/4板の配置は反転しており、第2の分割波長板を透過した後、他層からの反射光の偏光状態は横方向の直線偏光になり、当該層からの反射光の偏光状態は縦方向の直線偏光になる。この場合の検光子は縦方向の直線偏光を透過させるように設定され、当該層からの反射光のみが検出器に到達する。
【0026】
第1の分割波長板の左右の波長板は互いに直交状態にある偏光状態に直線偏光状態の光を変換する役割をもつ。第2の分割波長板は第1の波長板と同じ作用のものでも、反転したものでも使用可能である。他層からの反射光の偏光方向と当該層からの反射光の偏光方向は互いに直交するので、検光子を当該層からの反射光の偏光方向に合わせることで、他層からの層間クロストークを除去できるようになる。上記の説明では集光レンズ402への入射光の偏光状態を横方向の直線偏光としたが、縦方向とした場合は表1の縦横が入れ替わるだけで、クロストーク除去の効果は変らない。また、1)から4)のすべてにおいて第1の分割波長板と第2の分割波長板の左右を入れ替えても、当該層及び他層からの反射光の第2の分割波長板透過後の偏光状態に変化はなく、効果が変らないことは云うまでもない。
【0027】
以上まとめると、第1の分割波長板と第2の分割波長板を使用することで、当該層からの反射光に対して他層からの反射光の偏光方向を直交させることができる。したがって、検光子により他層からの反射光を遮断しかつ当該層からの反射光を透過させることにより、他層からのクロストークを低減することができる。なお、本説明ではディスクからの反射光の偏光は直線偏光としたが、円偏光でも迷光除去は可能である。だだし、検光子として円偏光に対して選択性を有するものが必要となる。
【0028】
次に、フォーカスエラー信号を得るための方法について説明する。図12に示すように無偏光分割回折格子732を分割波長板731の近傍に設置し、無作用にて透過する0次回折光816とプラス1次回折光817、818を発生させる。ここで、近傍に設置とは、第1の分割波長板と無偏光分割回折格子732の距離を0.3mm程度以内とすることを意味する。なお、図12では、無偏光分割回折格子732を分割波長板731と集光レンズ402との間に設置したが、分割波長板731と最小スポット面521との間に設置しても良い。但し、無偏光分割回折格子732を分割波長板731と集光レンズ402との間に設置した方が、素子の製造上、好ましい。
図13に無偏光分割回折格子732の分割状態を示す。内部に示したボール状の図形は当該層からの反射光の回折格子上での照射状態を示しており、回折格子の分割位置と光ビームとの位置関係を表す。ボールの縫い目に似た部分は、ディスクに案内溝がある場合の回折光の状態を示している。回折格子は全体で3分割されており、回折格子733と734の部分のプラス1次光は図12の818の光線として0次光816と重ならないところに出射する。同様に、回折格子735の部分のプラス1次光は図12の817のように、他の816および818と重ならないところに出射する。また、プラス1次回折光817、818の回折方向は分割波長板の分割線の方向とする。これにより、当該層からの反射光のプラス1次光のみが検出器到達するので、フォーカスエラー信号での他層の迷光の除去が可能となる。
【0029】
図14に光検出器52の形状を示す。光検出器522は回折格子733および734のプラス1次光818を検出し、光検出器523は回折格子735のプラス1次光817を検出する。それぞれの検出器上には検出されるビーム形状が示されている。光検出器524は0次回折光816を検出し、内部が横に2分割、縦方向に4分割、合計で8分割されている。それぞれの検出器に示されたアルファベット記号は出力信号を表すものとする。データ信号RFはRF=A+B+C+D+E+F+G+Hと表され、検出器524への入射光すべてを合算したものとなる。フォーカスエラー信号FEはFE=(B+C+F+G)−(A+D+E+H)−m(I−J)のように表される。mは定数であり、光量バランスにより決められる。
【0030】
次にトラッキング信号の生成について説明する。案内溝を有する多層ディスクを読み書きする場合はプッシュプル信号を利用する。このときのトラッキングエラー信号をTEとすると、TE={(B+C)−(G+F)}−k{(A+D)−(E+H)}と表される。この方法は補償型プッシュプル法といわれるものであり、対物レンズをトラッキングのために移動させても、信号にオフセットが発生しない。kは光量比を考慮して決める定数である。また、案内溝のない場合は、DPD法(Differential Push-Pull method)を使用することになる。この時のトラッキングエラー信号DPDはDPD=phase{(A+B), (H+G)}−phase{(C+D), (E+F)}と表される。phase{(A+B), (H+G)}はA+Bの信号とH+Gの信号の位相差を表しており、phase{(C+D), (E+F)}も同様に信号の位相差を表している。
【0031】
上記のフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号を用いて、対物レンズからの出射光の焦点位置をコントロールする。これらの信号は電気回路53で作られ、対物レンズ404の位置制御ためのアクチュエータを駆動する。
【0032】
なお、ここでは、522、524、523それぞれの大きさは約100X100μm2とし、全体の大きさ52は約300X100μm2とした。これは、従来の3ビームタイプの大きさとほぼ同じである。
【0033】
図12に示した無偏光回折格子732および、第1の分割波長板731、第2の分割波長板741、検光子730は個別の素子となっているが、図15に示すように4個の光学部品を一体化した素子780にすることが液晶材料等を使用することで可能であり、これにより調整が容易になる。図15は光軸に沿った方向の素子断面の略図であり、下方からディスクの反射光が照射される。751が無偏光回折格子、752が第1の分割波長板であり、753が第2の分割波長板、754が検光子である。これらの素子の間には使用レーザ光を透過するガラス部材791、792、793で保持されている。分割波長板の分割形状は図6および図7で示した2分割したものを使用すればよい。
【0034】
図16に本実施例の光ディスクドライブ装置の構成例を示す。211から214までの回路はデータを多層光ディスク501に記録するためのものである。211は誤り訂正用符号化回路であり、データに誤り訂正符号が付加される。212は記録符号化回路であり、1−7PP方式でデータを変調する。213は記録補償回路であり、マーク長に適した書込みのためのパルスを発生する。発生したパルス列に基づき、半導体レーザ駆動回路214により、光ピックアップ60内の半導体レーザを駆動し、対物レンズから出射したレーザ光80を変調する。モータ502によって回転駆動される光ディスク501上には相変化膜が形成されており、レーザ光で熱せられ、急冷されるとアモルファス状態になり、徐冷されると結晶状態になる。これらの二つの状態は反射率が異なり、マークを形成することができる。書き込み状態では、レーザ光のコヒーレンシーを低下させる高周波重畳を行わないため、隣接層からの反射光と当該層からの反射光は干渉しやすい状態になっている。このため、他層からの迷光を除去する対策を行わない場合は、トラッキングがはずれたり、隣接トラックのデータを消したりする不具合が生じる。
【0035】
221から226の回路はデータの読み出しのためのものである。221はイコライザーであり、最短マーク長付近の信号雑音比を改善する。この信号は222のPLL回路に入力され、クロックが抽出される。また、イコライザーで処理されたデータ信号は抽出されたクロックのタイミングで223のA−D変換器でデジタル化される。224はPRML(Partial Response Maximum Likelihood)信号処理回路であり、ビタビ復号を行う。記録復号化回路225では1−7PP方式の変調規則に基づき復号化し、誤り訂正回路226でデータを復元する。
【実施例2】
【0036】
図17に第2の実施例の光学系を示す。本光学系では、実施例1の光学系(図1)において、光束分割素子107が追加されている。この素子は当該層からの反射光を復路において2分割し、光軸上での光強度をなくする特性を有する。分割の方向は分割波長板の分割方向とほぼ同じものとする。この素子により、平行光線になった当該層からの反射光は、光軸に平行でありかつ光軸を通らない2本の平行光線に変換される。2本の平行光線は集光レンズ402で集光され、無偏光回折格子732、第1および第2の分割波長板731、741、検光子730を透過したのち、検出器52で検出される。
【0037】
復路の反射光を分割するための光束分割素子107について説明する。図18は、バイプリズムを二つ使用してビームを分割する光束分割素子の例を示す図である。第1のバイプリズム408に平行光線が入射しており、光軸の垂線を分割線として光軸に対して同角度で対称な進行方向の平行光線が作られる。第2のバイプリズム409は、光軸に対して角度を持った平行光線の進行方向を光軸に対して平行に変える。このようにバイプリズムを二つ使用することにより、通常のビームを分割平行光線に変換することができる。
【0038】
図19は、透過グレーティング41と42を用いて平行分割する光束分割光学系の例を示す図である。グレーティング41及び42はそれぞれグレーティングによる回折光の方向が異なる二つの領域から構成されているが、二つの領域のグレーティングは分割線と同じ溝方向と同じ溝ピッチを有し、なおかつ0次光の発生しない溝深さ1/(n−1)の鋸歯状のグレーティングとなっている。nはグレーティングの屈折率であり、空気中にあるものとした。溝深さはこの整数倍のものでも0次光を発生しない。図20にはグレーティング41の鋸歯の形状を示しており、410と411の領域での鋸歯は互いに反転した形状をしているので、下方からの入射光は光軸に対称な方向に回折される。図21にグレーティング42の鋸歯の形状を示す。421での鋸歯の形状と410での形状、及び420での鋸歯の形状と411での形状はそれぞれ同じであるので、グレーティング41を透過して光軸に対して角度を持った二つのビームはグレーティング42を透過した後、間隔の空いた光軸に対して平行な光になる。
【0039】
図22は、平行平板を使用した光束分割光学系の例を示す図である。分割平板素子44は、2枚の平行平板441と442で構成され、それぞれの平行平板は光軸に対して同じ角度で傾いており、また光軸に対して対称な位置にある。二つの平行平板の接合部がなす稜線は光軸に垂直に交わるものとし、平行平板の接合部がなす稜線あるいは谷線はラジアル方向となっている。紙面上方からの入射平行光は谷線の位置で二つに分けられ、それぞれ別の平行平板に入射する。平行平板は透明ガラスあるいはプラスチックとすると、屈折率が空気より大きいので、入射面で光線が谷線と光軸を含む平面から離れる方向に向かい、出射面で光軸と平行なビームとなる。
【0040】
第1および第2の分割波長板731、741上での当該層からの反射光の照射状態を図2および図3に示す。両図において分割位置を離れた半月状態で波長板を照射することになる。光には必ず回折が伴うので、半月状態の周辺に光が滲みだしている。この滲みだしが、光束分割素子107を使用しない場合、RF信号の光量減少につながることがある。RF信号の光量が減少すると、RF信号の相対的な雑音量が増加し、データの読み間違いにつながる。たとえば、図7に示すように左右の偏光状態が異なる円形状態で第2の分割波長板を照射したとき、左右の光が周辺に滲みだすことになる。たとえば、8113の当該層の光が右の領域721に滲みだすと偏光方向が逆になり、検出器に到達できなくなる。同様に、ビーム8114が左の領域722に滲みだすと、検出器に到達できなくなる。このため、RF信号の光量が低下する可能性がある。しかし、光束分割素子107を使用することにより、図3の示すようにビームが中心の分割線より離れるので、隣の領域に回折で入り込む光量が低下するので、RF信号の光量の減少を避けることが可能になる。
【0041】
他層からの迷光も、当該層のように第1と第2の分割波長板の間でのビームの反転はないが、半月状で第2の分割波長板を照射する。この場合も回折によりビームの周辺近傍に光が滲みだす。光束分割素子を使用しない場合は、第2の複合波長板のそれぞれの領域に滲みだした光が反対の領域に入り、迷光となる。しかし、光束分割素子を使用することにより、それぞれの半月状の照射領域が第2の分割波長板の中心の分割線から離れるので、回折による対面する領域への滲みだしが減少し、結果として検出器に入射する迷光がさらに減少するようにすることができる。
【0042】
以上のように、本願によれば、データ信号自体に混入する他層からの反射光によるクロストークを低減できるので、データ信号の品質を向上することができる。
【0043】
さらに、DPP法によるトラッキング信号の変動およびフォーカス信号の変位を少なくすることが可能となる。多層光ディスクを読み出すときあるいは書き込むとき、光ディスクに対してレーザ光の焦点位置やトラッキング位置の制御を誤差信号により正確に行う必要があるが、隣接層からの反射光が迷光として検出器に入射すると、トラッキング位置および焦点位置に狂いが生じ、データ信号を精度よく読み出したり、あるいは書き込み位置を精度よく定めたりすることができなくなる。本発明では、これらの不具合をなくすることができる。
【符号の説明】
【0044】
52:検出器、53:信号処理回路、101:半導体レーザ、103:偏光性ビームスプリッタ、104:λ/4波長板、107:光束分割素子、402:集光レンズ、404:対物レンズ、501:多層ディスク、730:検光子、731:第1の分割波長板、732:無偏光回折格子、741:第2の分割波長板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層媒体に対して使用される光ピックアップ装置であって、
光源と、
前記多層媒体の記録層から反射された反射光に対して集光する集光レンズと、
前記集光レンズを通過した光を検出する検出器と、
前記集光レンズと前記検出器の間に、第1の分割波長板と、前記第1の分割波長板の近傍に設けられた無偏光分割回折格子と、第2の分割波長板と、検光子とを有することを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
前記無偏光分割回折格子は、前記第1の分割波長板と前記集光レンズとの間に設置され、
前記第1の分割波長板は、前記記録層の焦点位置と、前記記録層に隣接する前記集光レンズとは反対側の第1の隣接記録層の焦点位置との間に設置され、
前記第2の分割波長板は、前記記録層の焦点位置と、前記記録層に隣接する前記集光レンズ側の第2の隣接記録層の焦点位置との間に設置されていることを特徴とする請求項1記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
前記第1の分割波長板は、2つの領域に分割されており、前記2つの領域からの透過光の偏光状態を互いに直交状態にし、
前記第2の分割波長板は、2つの領域に分割されており、前記第1の分割波長板と同等かあるいは領域が反転した波長板領域を有し、
前記検光子は、前記第2の分割波長板を透過した所定の偏光方向の光を選択的に透過させることを特徴とする請求項1記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
第1および第2の分割波長板の分割線の方向は、ほぼ一致することを特徴とする請求項1記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】
前記偏光状態の直交状態は直線偏光での直交状態であることを特徴とする請求項3記載の光ピックアップ装置。
【請求項6】
前記偏光状態の直交状態は円偏光での直交状態であることを特徴とする請求項3記載の光ピックアップ装置。
【請求項7】
前記無偏光分割回折格子は、
前記反射光を0次光として透過させ、かつ、ビームの中心を含む領域での第1のプラス1次回折光とビームの周辺を含む領域での第2のプラス1次回折光とに分割させるものであり、第1のプラス1次回折光と第2のプラス1次回折光の回折方向は前記第2の分割波長板の分割線の方向と略一致し、
前記検出器は、前記第1のプラス1次回折光を検出する領域と、前記第2のプラス1次回折光を検出する領域とは、それぞれ別に設けられていることを特徴とする請求項1記載の光ピックアップ装置。
【請求項8】
前記無偏光分割回折格子と、前記第1の分割波長板と、前記第2の分割波長板と、前記検光子とは、一体化した素子として配置されたことを特徴とする請求項7記載の光ピックアップ装置。
【請求項9】
更に、前記反射光を、中心に暗部を設けるように二つに分割する素子を有し、
前記分割する素子の分割の方向が前記第2の分割波長板の分割線の方向と略一致することを特徴とする請求項7記載の光ピックアップ装置。
【請求項10】
前記分割する素子は、2つのバイプリズム、2つのグレーティング、2つの平行平板の何れかであることを特徴とする請求項9記載の光ピックアップ装置。
【請求項11】
光源と、
多層媒体の記録層から反射された反射光に対して集光する集光レンズと、
前記集光レンズを通過した光を検出する検出器と、
前記集光レンズと前記検出器の間に、無偏光分割回折格子と、第1の分割波長板と、第2の分割波長板と、検光子とを有し、
前記光源からの光ビームを駆動するための駆動回路と、
前記検出器で検出した信号を復号化する復号化回路とを有することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項12】
前記無偏光分割回折格子は、前記第1の分割波長板の近傍に設けられ、
前記第1の分割波長板は、前記記録層の焦点位置と、前記記録層に隣接する前記集光レンズとは反対側の第1の隣接記録層の焦点位置との間に設置され、
前記第2の分割波長板は、前記記録層の焦点位置と、前記記録層に隣接する前記集光レンズ側の第2の隣接記録層の焦点位置との間に設置されていることを特徴とする請求項11記載の光ディスク装置。
【請求項13】
光源からの光を多層媒体の第1の記録層に照射し、
前記第1の記録層から反射した反射光は、
前記第1の記録層からの反射光を集光する集光レンズ、
無偏光分割回折格子、
前記第1の記録層の焦点位置と、前記第1の記録層に隣接する前記集光レンズとは反対側の第1の隣接記録層の焦点位置との間に設置された第1の分割波長板、
前記第1の記録層の焦点位置と、前記記録層に隣接する前記集光レンズ側の第2の隣接記録層の焦点位置との間に設置された第2の分割波長板、
所定の偏光方向の光を透過させる検光子、
とを透過して、光検出器に入射し、
前記光検出器にて検出された信号から、フォーカスサーボを行い、
前記第1の記録層に記録された信号を復号化して情報を再生することを特徴とする情報再生方法。
【請求項1】
多層媒体に対して使用される光ピックアップ装置であって、
光源と、
前記多層媒体の記録層から反射された反射光に対して集光する集光レンズと、
前記集光レンズを通過した光を検出する検出器と、
前記集光レンズと前記検出器の間に、第1の分割波長板と、前記第1の分割波長板の近傍に設けられた無偏光分割回折格子と、第2の分割波長板と、検光子とを有することを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
前記無偏光分割回折格子は、前記第1の分割波長板と前記集光レンズとの間に設置され、
前記第1の分割波長板は、前記記録層の焦点位置と、前記記録層に隣接する前記集光レンズとは反対側の第1の隣接記録層の焦点位置との間に設置され、
前記第2の分割波長板は、前記記録層の焦点位置と、前記記録層に隣接する前記集光レンズ側の第2の隣接記録層の焦点位置との間に設置されていることを特徴とする請求項1記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
前記第1の分割波長板は、2つの領域に分割されており、前記2つの領域からの透過光の偏光状態を互いに直交状態にし、
前記第2の分割波長板は、2つの領域に分割されており、前記第1の分割波長板と同等かあるいは領域が反転した波長板領域を有し、
前記検光子は、前記第2の分割波長板を透過した所定の偏光方向の光を選択的に透過させることを特徴とする請求項1記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
第1および第2の分割波長板の分割線の方向は、ほぼ一致することを特徴とする請求項1記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】
前記偏光状態の直交状態は直線偏光での直交状態であることを特徴とする請求項3記載の光ピックアップ装置。
【請求項6】
前記偏光状態の直交状態は円偏光での直交状態であることを特徴とする請求項3記載の光ピックアップ装置。
【請求項7】
前記無偏光分割回折格子は、
前記反射光を0次光として透過させ、かつ、ビームの中心を含む領域での第1のプラス1次回折光とビームの周辺を含む領域での第2のプラス1次回折光とに分割させるものであり、第1のプラス1次回折光と第2のプラス1次回折光の回折方向は前記第2の分割波長板の分割線の方向と略一致し、
前記検出器は、前記第1のプラス1次回折光を検出する領域と、前記第2のプラス1次回折光を検出する領域とは、それぞれ別に設けられていることを特徴とする請求項1記載の光ピックアップ装置。
【請求項8】
前記無偏光分割回折格子と、前記第1の分割波長板と、前記第2の分割波長板と、前記検光子とは、一体化した素子として配置されたことを特徴とする請求項7記載の光ピックアップ装置。
【請求項9】
更に、前記反射光を、中心に暗部を設けるように二つに分割する素子を有し、
前記分割する素子の分割の方向が前記第2の分割波長板の分割線の方向と略一致することを特徴とする請求項7記載の光ピックアップ装置。
【請求項10】
前記分割する素子は、2つのバイプリズム、2つのグレーティング、2つの平行平板の何れかであることを特徴とする請求項9記載の光ピックアップ装置。
【請求項11】
光源と、
多層媒体の記録層から反射された反射光に対して集光する集光レンズと、
前記集光レンズを通過した光を検出する検出器と、
前記集光レンズと前記検出器の間に、無偏光分割回折格子と、第1の分割波長板と、第2の分割波長板と、検光子とを有し、
前記光源からの光ビームを駆動するための駆動回路と、
前記検出器で検出した信号を復号化する復号化回路とを有することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項12】
前記無偏光分割回折格子は、前記第1の分割波長板の近傍に設けられ、
前記第1の分割波長板は、前記記録層の焦点位置と、前記記録層に隣接する前記集光レンズとは反対側の第1の隣接記録層の焦点位置との間に設置され、
前記第2の分割波長板は、前記記録層の焦点位置と、前記記録層に隣接する前記集光レンズ側の第2の隣接記録層の焦点位置との間に設置されていることを特徴とする請求項11記載の光ディスク装置。
【請求項13】
光源からの光を多層媒体の第1の記録層に照射し、
前記第1の記録層から反射した反射光は、
前記第1の記録層からの反射光を集光する集光レンズ、
無偏光分割回折格子、
前記第1の記録層の焦点位置と、前記第1の記録層に隣接する前記集光レンズとは反対側の第1の隣接記録層の焦点位置との間に設置された第1の分割波長板、
前記第1の記録層の焦点位置と、前記記録層に隣接する前記集光レンズ側の第2の隣接記録層の焦点位置との間に設置された第2の分割波長板、
所定の偏光方向の光を透過させる検光子、
とを透過して、光検出器に入射し、
前記光検出器にて検出された信号から、フォーカスサーボを行い、
前記第1の記録層に記録された信号を復号化して情報を再生することを特徴とする情報再生方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−243340(P2012−243340A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110967(P2011−110967)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】
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