説明

光ピックアップ装置に搭載されるレンズ

【課題】光吸収による透過率の低下が小さく、波長405nm付近、波長660nm付近、波長785nm付近の3つの波長の透過率が97%以上を満足する反射防止膜を備えた光ピックアップ装置に搭載されるレンズを提供する。
【解決手段】波長380〜410nm、波長640〜670nm、波長770〜800nmの3つ波長領域で使用する反射防止膜を備えた光ピックアップ装置に搭載されるレンズにおいて、反射防止膜を2層以上の高屈折率材料層と低屈折率材料層との複数層の膜から構成し、光吸収の多い高屈折率材料層が、低屈折率材料層、空気、レンズのいずれかに挟まれており、高屈折率材料層の合計膜厚を50nm以下とし、波長410nm以下の光の吸収率を1%以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置に搭載されるレンズに関し、3波長領域で適切な透過率を有する反射防止膜を備えた光ピックアップ装置に搭載されるレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップ用のコリメータレンズや対物レンズ等の一般的なレンズには、透過率や耐光性を上げる為に反射防止膜をつける。3波長用の反射防止膜など、390〜430nmの波長の光束と630〜800nmの波長の光束との反射を防止する反射防止膜においては、反射率の極小値が、上記390〜430nmと630〜800nm付近の2か所に極小値を持つ反射防止膜が提案されている。また近年では2層構成の反射防止膜でも390〜430nmと630〜800nmの2か所に極小値を持つことが出来ることが示されており、2層のような反射防止膜では製造上有利になる等の利点がある。
【0003】
しかし、このような反射防止膜は、各層の膜が厚くなる。特許文献1では表1から表13において光ピックアップレンズによく使用されるTaやSiOを使用した反射防止膜の例がいくつか紹介されている。TaとSiOを使用した反射防止膜は、耐光性の観点からよく使用されることが多い光学材料である。
【0004】
特許文献1の反射防止膜のTa膜の合計の厚さを調べると、特許文献1の実施例1で121.34nm、実施例3で149.36nm、実施例4では139.6nm、実施例6では127.36nm、実施例7では154.25nm、実施例8では146.56nm、実施例14では152.66と131.13nmとなっており、100nm以上となっている。またレンズは面が2面あるので、これらの反射防止膜を両面につけると、Ta膜の合計の厚さが200nm以上となる。
【0005】
ところで、反射防止膜の材料によっては、材料による光吸収があることが知られている。図13に実験条件1としての反射防止膜の膜厚を示す。光吸収の起こりやすい高屈折率材料のTaの膜厚はR1面で129.68nm、R2面で157.14nmとした。
【0006】
図14には実験条件1の透過率、図15には実験条件1のR1面側の反射率、図16には実験条件1のR2面側の反射率を示した。図14から図16の目盛を読み取った値を図17に示している。図17によると、波長405nmでの反射防止膜の透過率は設計値が98.38%、実測値は91.92%、波長660nmでの透過率は設計値が97.61%、実測値が97.84%、波長780nmでの透過率は設計値が98.15%、実測値が97.90%となっている。波長660nmと波長780nmでは透過率の設計値と実測値との差が、0.3%以内となっており設計通りの透過率の値が出ているが、波長405nmにおいては設計値と実測値の差が6.46%ある。
【0007】
ここで、透過率とR1面側の反射率とR2面側の反射率を足したものは100%となるはずである。波長405nmでの反射率を見てみると、R1面側の反射率の実測値は1.96%、R2面側の反射率の実測値は3.46%となっている。これらを合計すると97.33%となっており、2.67%の不明分がある。これは反射防止膜材料の光吸収による透過率の低下であると考えられる。
【0008】
次に、図18に実験条件2として反射率の膜厚を示す。光吸収の起こりやすい高屈折率材料のTaの膜厚はR1面で50nm、R2面で50nmとしている。
【0009】
図19には実験条件2の透過率、図20には実験条件2のR1面側の反射率、図21には実験条件2のR2面側の反射率を示した。図19から図21の目盛を読み取った値を図22に示している。図22によると、波長405nmでは透過率の設計値が98.92%、実測値は98.26%、波長660nmでは透過率の設計値が98.80%、実測値が98.09%、波長780nmでは透過率の設計値が97.44%、実測値が96.43%となっている。
【0010】
図22において、波長405nm、波長660nm、波長780nmの波長における反射防止膜材料の光吸収による透過率の低下分(吸収率)は、それぞれ、0.85%、0.30%、0.53%となっており、波長405nm、波長660nm、波長780nmのすべての波長で透過率の設計値と実測値との差が、1.0%以内であってほぼ設計通りの透過率を得ることができる。
【0011】
以上の結果から、高屈折率材料の膜厚が厚いレンズでは、短波長の405nmでは光の吸収が起こる。さらに上記の実験条件1と実験条件2の結果をまとめたものを図23に示す。吸収量は膜の厚さに比例すると考えられるので、上記実験1と2からは、
吸収率(%)= 0.0098×高屈折率材料膜厚(nm) (式1)
の関係が成り立つことが分かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−38581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記の従来技術の反射防止膜では、Ta膜の合計の厚さが片面で100nm以上となっている。またレンズは面が2面あるので、これらの反射防止膜を両面につけると、Ta膜の合計の厚さが200nm以上となっており、3波長での透過率が適正な光ピックアップ装置に搭載されるレンズを得ることができない。
【0014】
本発明は、光吸収による透過率の低下が1%以下と小さく、波長405nm付近、波長660nm付近、波長785nm付近の3つの波長の透過率が片面で97%以上を満足する反射防止膜を備えた光ピックアップ装置に搭載されるレンズを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明の光ピックアップ装置に搭載されるレンズは、3つの波長領域で使用する反射防止膜を備えた光ピックアップ装置に搭載されるレンズであって、前記反射防止膜は、2層以上の高屈折率材料層と低屈折率材料層との複数層の膜から構成され、前記高屈折率材料層の合計膜厚を50nm以下とし、波長410nm以下の光の吸収率を1%以下としたことを特徴とする。
なお、高屈折率材料層が1層のみで構成されている反射防止膜で97%以上の透過率を得ようとすると、高屈折率材料の膜厚が100nm以上となる。
【0016】
本発明の光ピックアップ装置に搭載されるレンズは、波長380〜410nm、波長640〜670nm、波長770〜800nmの3つ波長領域で使用する反射防止膜を備えた光ピックアップ装置に搭載されるレンズであって、前記反射防止膜は、2層以上の高屈折率材料層と低屈折率材料層との複数層の膜から構成され、光吸収の多い前記高屈折率材料層は、前記低屈折率材料層、空気、レンズのいずれかに挟まれており、前記高屈折率材料層の合計膜厚が50nm以下とし、波長380〜410nm、波長640〜670nm、波長770〜800nmのそれぞれの領域における光の吸収率を1%以下としたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の光ピックアップ装置に搭載されるレンズは、前記反射防止膜が、前記高屈折率材料層と前記低屈折率材料層との5層以上の膜から構成されていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の光ピックアップ装置に搭載されるレンズは、前記反射防止膜が、低屈折率材料であるSiOの低屈折率材料層、低屈折率材料であるSiOの低屈折率材料層、高屈折材料であるTaの高屈折率材料層の3種類の層から形成されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の光ピックアップ装置に搭載されるレンズは、前記反射防止膜の透過率が、波長405nm、波長660nm、波長785nmの3つ波長において、それぞれ、両面で97%以上であることが望ましい。
【0020】
また、本発明の光ピックアップ装置に搭載されるレンズは、前記反射防止膜の透過率が、波長405nm、波長660nm、波長785nmの3つ波長において、それぞれ、両面で96%以上であることが望ましい。
【0021】
また、本発明の光ピックアップ装置に搭載されるレンズは、コリメータレンズ、または、カップリングレンズであることを特徴とする。
【0022】
反射防止膜においては,一般的に、レンズの第一面とレンズの第二面の両方の面に反射防止膜をつけており、両方の面の膜厚では200nm以上となる。このような反射防止膜では材料による光の吸収が大きくなり、設計で得られている透過率を、実際のレンズにおいて得ることが出来なくなる。
【0023】
そこで、本発明の反射防止膜では、2層以上の高屈折率材料層の合計膜厚が50nm以下となるように設計する。
【0024】
高屈折率材料が1つの層で構成されており、膜厚が50nm以下とすると、波長405nm付近、波長660nm付近、波長785nm付近の3つの波長の透過率を97%以上とすることが出来ない。そこで、レンズ面につけられている光吸収の多い高屈折率材料層を、2つの膜の層以上に構成し、この2つの膜の層から構成されている高屈折率材料層は低屈折率材料層を挟むよう設定しておく。
【0025】
このように構成した反射防止膜は、膜厚の合計が50nm以下の場合でも、容易に97%の透過率を満足するように設計することが出来、更に膜厚も50nm以下と薄いことから吸収による影響は1%以内に抑えられ設計通りの透過率を確保することが出来る。
【0026】
また、本発明の反射防止膜は4層以上の膜から構成されていることが望ましい。本発明の高屈折率材料層は2層以上ある。そして、高屈折率材料層は低屈性率材料層に接している方がより効果を発揮しやすい為、反射防止膜の層数は4層以上が望ましい。
【0027】
また、耐光性や、それぞれの膜の密着性の観点から、例えば、SiO、SiO、Taの3種類から形成されていることが望ましい。
【0028】
本発明では、波長405nm、波長660nm、波長785nmの片面での透過率が98.0%以上、両面での透過率が96%以上であることを特徴としている。さらに望ましくは、波長405nm、波長660nm、波長785nmの透過率が片面での透過率が98.5%以上、両面での透過率が97%以上である。
【0029】
本発明は、コリメータレンズ、または、カップリングレンズで効果を発揮する。これらコリメータレンズまたはカップリングレンズは3波長以上のレーザーを使用され、光ピックアップレンズに記載されるものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、光吸収による透過率の低下が小さく、波長405nm付近、波長660nm付近、波長785nm付近の3つの波長の透過率が97%以上を満足する反射防止膜を備えた光ピックアップ装置に搭載されるレンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は本発明の実施例1から実施例3に示す反射防止膜の膜構成、膜厚、透過率の一覧表である。
【図2】図2は比較例1から比較例6に示す反射防止膜の膜構成、膜厚、透過率の一覧表である。
【図3】図3は、本発明の実施例1についての横軸が波長、縦軸が反射率、のグラフである。
【図4】図4は、本発明の実施例2についての横軸が波長、縦軸が反射率、のグラフである。
【図5】図5は、本発明の実施例3についての横軸が波長、縦軸が反射率、のグラフである。
【図6】図6は、本発明の実施例1から実施例3と、比較例1から比較例6で使用しているレンズ材料の屈折率、反射防止膜R材料の屈折率を示した図である。
【図7】図7は、比較例1についての横軸が波長、縦軸が反射率、のグラフである。
【図8】図8は、比較例2についての横軸が波長、縦軸が反射率、のグラフである。
【図9】図9は、比較例3についての横軸が波長、縦軸が反射率、のグラフである。
【図10】図10は、比較例4についての横軸が波長、縦軸が反射率、のグラフである。
【図11】図11は、比較例5についての横軸が波長、縦軸が反射率、のグラフである。
【図12】図12は、比較例6についての横軸が波長、縦軸が反射率、のグラフである。
【図13】図13は、実験条件1の膜厚を示した図である。
【図14】図14は、実験条件1についての、横軸が波長、縦軸が透過率、のグラフである。
【図15】図15は、実験条件1についての、横軸が波長、縦軸がR1面反射率、のグラフである。点線が設計値、実線が実測値となっている。
【図16】図16は、実験条件1についての、横軸が波長、縦軸がR2面反射率、のグラフである。点線が設計値、実線が実測値となっている。
【図17】図17は、実験条件1の図14から図16を数値化した表である。
【図18】図18は、実験条件2の膜厚を示した図である。
【図19】図19は、実験条件2についての、横軸が波長、縦軸が透過率、のグラフである。
【図20】図20は、実験条件2についての、横軸が波長、縦軸がR1面反射率、のグラフである。点線が設計値、実線が実測値となっている。
【図21】図21は、実験条件2についての、横軸が波長、縦軸がR2面反射率、のグラフである。点線が設計値、実線が実測値となっている。
【図22】図22は、実験条件2の図19から図21を数値化した表である。
【図23】図23は、実験条件1と実験条件2の結果をまとめた膜厚と吸収率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明にかかわるレンズは、複数種類の単色光を用いる多波長用のレンズであって、例えばCDやDVDやブルーレイディスク等種類が異なる光記録媒体に対応できる互換性の記録再生装置に用いる多波長用レンズであり、少なくとも波長405nm付近、波長660nm付近、波長785nm付近の3つの波長で使用される。また本発明は、例えばコリメータレンズやカップリングレンズに使用される。
【0033】
また、本発明に係わる多波長用光学系、光ヘッド、及び光ディスク装置は、このような多波長用レンズを用いたものである。
【0034】
また本発明はレンズに使用されるものであるので、光が入射するレンズ第一面と光が出射するレンズ第二面がある。
【0035】
この時、レンズ第一面に使用される反射防止膜と、レンズ第二面に使用される反射防止膜は、同じ構成の物であっても良いし、異なる構成の物であっても良い。
【0036】
本発明に用いられる反射防止膜は光学部品上に高屈折率材料層と低屈折率材料層を積層した構造からなる。高屈折率材料層の材料としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化マグネシウム等の酸化物、窒化シリコン、窒化ゲルマニウム等の窒化物、炭化シリコン等の炭化物、硫化亜鉛等の硫化物、およびこれらの混合材から選ばれる少なくとも1種を用いることが望ましい。高屈折率材料としては、図7に示すように、例えば、1.9〜2.1の屈折率の材料が望ましい。
【0037】
また、低屈折率材料層の材料としては酸化シリコン、およびフッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化ストロンチウム、フッ化イットリウム、チオライト、クライオライト(氷晶石)などのフッ化物、およびこれらの混合材から選ばれる少なくとも1種がある。また、高温高湿環境下での保存特性向上のためには、酸化物、窒化物、炭化物、フッ化物を用いることが望ましい。低屈折率材料としては、図7に示すように、例えば、1.4〜1.6の屈折率の材料が望ましい。
【0038】
本発明の反射防止膜は、例えば真空成膜法で作製される。真空成膜法には、真空蒸着法、スパッタ法、化学気相成長法、レーザブレイション法など各種成膜法を用いることができる。真空蒸着法を用いる場合、膜質を改善するため蒸気流の一部をイオン化するとともに基板側にバイアスを印加するイオンプレーティング法、クラスタイオンビーム法、別イオン銃を用いて基板にイオンを照射するイオンアシスト蒸着法を用いると有効である。スパッタ法としては、DC反応性スパッタ法、RFスパッタ法、イオンビームスパッタ法などがある。また、化学的気相法としては、プラズマ重合法、光アシスト気相法、熱分解法、有機金属化学気相法などがある。なお、各屈折率膜の膜厚は膜形成時の蒸着時間等を変えることで、所望の膜厚とすることができる。
【0039】
また、光学部品にはポリオレフィン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等のプラスチック以外にも、石英ガラス、硼珪酸ガラスなどの光学ガラス、Al、MgOなどの酸化物単結晶、多結晶基板、CaF、MgF、BaF、LiFなどのフッ化物単結晶基板、多結晶基板、NaCl、KBr、KClなどの塩化物、臭化物単結晶、他結晶基板等の、使用帯域で透明な光学材料であれば、何れでも適用できる。以下、本発明の実施例と比較例について、図面を参照して説明する。
【0040】
図1は、本発明の実施例1から実施例3に示す反射防止膜の膜構成、膜厚、透過率の一覧表であり、図2は比較例1から比較例6に示す反射防止膜の膜構成、膜厚、透過率の一覧表である。各比較例と各実施例では、レンズと接している膜を1層目、その上にある膜を2層目、以下順に3層目、4層目と記載している。
【0041】
図2の一覧表に示す比較例1は、2層構成の反射防止膜である。1層目を低屈折率材料のSiO、2層目を高屈折率材料のTaとした。Taの膜は1層の構成となっている。
【0042】
比較例1では片面透過率の設計透過率は波長405nmで98.66%、波長660nmで99.69%、波長785nmで97.84%、となっており、設計上は、透過率は十分である。しかし、膜厚が120.91nmで吸収による影響が2.37%となることが推測され、設計通りの適切な透過率を得ることができない。
【0043】
比較例2は2層構成の反射防止膜である。1層目を低屈折率材料のSiO、2層目を高屈折率材料のTaとした。Taの膜は1層の構成となっている。膜厚は50.00nmとなっており、吸収による影響は0.98%で吸収による影響は1%以内に抑えられている。
【0044】
しかし、比較例2では透過率は波長405nmで98.72%、波長660nmで90.00%、波長785nmで89.06%、となっており、適切な透過率を得ることが出来ない。
【0045】
比較例3は2層構成の反射防止膜である。1層目を低屈折率材料のSiO、2層目を高屈折率材料のTaとした。Taの膜は1層の構成となっている。膜厚は20.00nmとなっており、吸収による影響は0.39%で吸収による影響は1%以内に抑えられている。
【0046】
しかし、透過率は波長405nmで97.41%、波長660nmで97.02%、波長785nmで95.69%、となっており、適切な透過率を得ることが出来ない。
【0047】
比較例4は3層構成とした。1層目を低屈折率材料のSiO、2層目を高屈折率材料のTa、3層目を低屈折率材料のSiOとした。Taの膜は1層の構成となっている。膜厚は50.00nmとなっており、吸収による影響は0.98%で吸収による影響は1%以内に抑えられている。しかし、透過率は波長405nmで96.19%、波長660nmで93.65%、波長785nmで99.04%、となっており、波長405nmと波長660nmにおいて適切な透過率を得ることが出来ない。
【0048】
比較例5は3層構成とした。1層目を低屈折率材料のSiO、2層目を高屈折率材料のTa、3層目を低屈折率材料のSiOとした。Taの膜は1層の構成となっている。膜厚は50.00nmとなっており、吸収による影響は0.98%で吸収による影響は1%以内に抑えられている。しかし、透過率は波長405nmで95.90%、波長660nmで99.76%、波長785nmで91.34%、となっており、波長405nmと波長785nmにおいて適切な透過率を得ることが出来ない。
【0049】
比較例6は5層構成とした。1層目を低屈折率材料のSiO、2層目を高屈折率材料のTa、3層目を低屈折率材料のSiO、4層目を高屈折率材料のTa、5層目に低屈折率材料のSiOとした。Taの膜は2層の構成となっている。
【0050】
透過率は波長405nmで98.56%、波長660nmで99.77%、波長785nmで98.57%、となっており、設計上は、透過率は十分である。しかし、膜厚が100.00nmで吸収による影響は1.96%となることが推測され、設計通りの適切な透過率を得ることができない。
【実施例1】
【0051】
図1の一覧表に示す本発明の実施例1は、5層構成とした。1層目に低屈折率材料のSiO、2層目に高屈折率材料のTa、3層目に低屈折率材料のSiO、4層目に高屈折率材料のTa、5層目に低屈折率材料のSiOとした。Taの膜は2層の構成となっている。
膜厚は47.82nmとなっており、吸収による影響はほとんどない程度に抑えられている。透過率は波長405nmで99.46%、波長660nmで99.32%、波長785nmで98.64%、となっており、透過率は十分である。
【0052】
また、両面の透過率も、波長405nmで98.92%、波長660nmで98.64%、波長785nmで97.30%、となっており、透過率は十分である。更に、実験条件2で検討した3つの波長ごとの吸収率を考慮しても、波長405nmで97.99%、波長660nmで98.64%、波長785nmで97.30%、となり、3波長で両面透過率97%以上の適切な透過率を得ることができる。
【実施例2】
【0053】
本発明の実施例2は、7層構成とした。1層目に低屈折率材料のSiO、2層目に高屈折率材料のTa、3層目に低屈折率材料のSiO、4層目に高屈折率材料のTa、5層目に低屈折率材料のSiO、6層目に高屈折率材料のTa、7層目に低屈折率材料のSiOとした。Taの膜は3層の構成となっている。
【0054】
膜厚は45.00nmとなっており、吸収による影響はほとんどない程度に抑えられている。透過率は波長405nmで99.62%、波長660nmで99.31%、波長785nmで99.02%、となっており、透過率は十分である。
【0055】
また、両面の透過率も、波長405nmで99.24%、波長660nmで98.62%、波長785nmで98.05%、となっており、透過率は十分である。更に、実験条件2で検討した3つの波長ごとの吸収率を考慮しても、波長405nmで98.36%、波長660nmで98.62%、波長785nmで98.05%、となり、3波長で両面透過率97%以上の適切な透過率を得ることができる。
【実施例3】
【0056】
本発明の実施例3は、5層構成とした。1層目に低屈折率材料のSiO、2層目に高屈折率材料のZrO、3層目に低屈折率材料のSiO、4層目に高屈折率材料のZrO、5層目に低屈折率材料のSiOとした。ZrOの膜は2層の構成となっている。
膜厚は47.80nmとなっており、吸収による影響はほとんどない程度に抑えられている。透過率は波長405nmで98.93%、波長660nmで98.25%、波長785nmで98.04%、となっており、透過率は十分である。
【0057】
また、両面の透過率も、波長405nmで97.87%、波長660nmで96.53%、波長785nmで96.12%、となっており、透過率は十分である。更に、実験条件2で検討した3つの波長ごとの吸収率を考慮しても、波長405nmで96.93%、波長660nmで96.53%、波長785nmで96.12%、となり、高屈折率材料としてZrOを使用した場合でも、3波長で両面透過率96%以上の適切な透過率を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つの波長領域で使用する入射面及び出射面にそれぞれ反射防止膜を備えた光ピックアップ装置に搭載されるレンズにおいて、
前記反射防止膜は、2層以上の高屈折率材料層と低屈折率材料層との複数層の膜から構成され、前記高屈折率材料層の合計膜厚をそれぞれ50nm以下とし、波長410nm以下の光の吸収率を1%以下としたことを特徴とする光ピックアップ装置に搭載されるレンズ。
【請求項2】
波長380〜410nm、波長640〜670nm、波長770〜800nmの3つの波長領域で使用する反射防止膜を備えた光ピックアップ装置に搭載されるレンズにおいて、
前記反射防止膜は、2層以上の高屈折率材料層と低屈折率材料層との複数層の膜から構成され、光吸収の多い前記高屈折率材料層は、前記低屈折率材料層、空気、レンズのいずれかに挟まれており、前記高屈折率材料層の合計膜厚を50nm以下とし、波長380〜410nm、波長640〜670nm、波長770〜800nmのそれぞれの領域における光の吸収率を1%以下としたことを特徴とする光ピックアップ装置に搭載されるレンズ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ピックアップ装置に搭載されるレンズにおいて、
前記反射防止膜が、前記高屈折率材料層と前記低屈折率材料層との5層以上の膜から構成されていることを特徴とする光ピックアップ装置に搭載されるレンズ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の光ピックアップ装置に搭載されるレンズにおいて、
前記反射防止膜が、低屈折率材料であるSiOの低屈折率材料層、低屈折率材料であるSiOの低屈折率材料層、高屈折材料であるTaの高屈折率材料層の3種類の層から形成されていることを特徴とする光ピックアップ装置に搭載されるレンズ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の光ピックアップ装置に搭載されるレンズにおいて、
前記反射防止膜の透過率が、波長405nm、波長660nm、波長785nmの3つの波長において、それぞれ、96%以上であることを特徴とする光ピックアップ装置に搭載されるレンズ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の光ピックアップ装置に搭載されるレンズにおいて、
前記反射防止膜の透過率が、波長405nm、波長660nm、波長785nmの3つの波長において、それぞれ、97%以上であることを特徴とする光ピックアップ装置に搭載されるレンズ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の光ピックアップ装置に搭載されるレンズにおいて、
前記反射防止膜を備えた前記レンズが、前記光ピックアップ装置に搭載されるコリメータレンズ、または、カップリングレンズであることを特徴とする光ピックアップ装置に搭載されるレンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−62010(P2013−62010A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201392(P2011−201392)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】